説明

プロポリス抽出物

【課題】プロポリス原塊の溶媒抽出物からなるプロポリス抽出物において、抗酸化活性を向上させたプロポリス抽出物を提供する。
【解決手段】本発明のプロポリス抽出物は、ポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として作られるプロポリス原塊から水と親水性有機溶媒としてのエタノール等の混合液を用いて抽出される溶媒抽出物よりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロポリス抽出物に係り、詳しくは特定の植物を主要起源植物として作られたプロポリス原塊の溶媒抽出物であるプロポリス抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロポリスは、巣の防御及び補強等を目的として、ミツバチが採取した植物の滲出液、新芽、及び樹脂等にミツロウを混ぜて作られる膠状ないしは蝋状の物質である。このプロポリスは、ミツバチが原料として巣箱周辺の種々の植物を採取して生産されるため、多種多様な成分を含有している。
【0003】
プロポリス原塊は、紀元前4世紀に編纂されたアリストテレスの動物誌に「皮膚疾患、切り傷、感染症の治療薬」として記載されているように、抗菌効果や抗炎症効果を有していることが古くから知られている。また、プロポリスの主要な生理活性として、抗酸化作用及び免疫賦活作用が知られている。そのため、プロポリスは、ヨーロッパにおいては医薬品或いは健康食品の素材として古くから用いられてきたが、1985年以降から日本においても健康食品や化粧品の素材の他、疾病の予防や治療等の多くの製品に使用されるようになった。
【0004】
近年、プロポリスに著しい抗癌・抗腫瘍作用があることが学会において報告され、複数の新しい殺癌物質が成分中から発見報告されたことからプロポリスの優れた効能が一躍世の注目を集めることとなった。プロポリス中に含まれる有効成分としては、極性の高い有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、さらには極性の低いテルペノイド類等の非常に多様な種類の有効成分が確認されている。これら多様な種類の有効成分の生理活性が複雑に作用しあって、プロポリスの優れた生理活性を形成しているものと考えられる。プロポリス原塊は、p−クマル酸やアルテピリンC等の桂皮酸誘導体、フラボノイド、その他各種のミネラル、ビタミン等の多種多様な有用成分を含有している。
【0005】
ところで、プロポリスの産地としては、中国、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ等の南米諸国、ハンガリー、ブルガリア等のヨーロッパ、カナダ等の北米、オーストラリア、ニュージーランド等のオセアニアが産地となっている。近年、非特許文献1に開示されるように多くの研究者により産地別プロポリスの含有成分に関する研究が進められている。例えば、ブラジル産プロポリスの主成分として、p−クマル酸、アルテピリンC、ドゥルパニンなどの桂皮酸誘導体が多く検出される。一方、中国産等のそれ以外の産地のプロポリスの主成分は、クリシン、ガランギンなどのフラボノイド類が多く検出される。これらの主成分の違いから、ブラジル産プロポリスは桂皮酸誘導体中心のタイプであり、中国産などそれ以外のプロポリスはフラボノイド中心のタイプであることが定性的に示されている。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に開示されるように、これまでにブラジル産プロポリスと中国産など他のプロポリスに含まれる成分が異なることに着目して、これら産地の異なるプロポリスをブレンドして多数の有効成分を含有させたプロポリス組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2004−159563号公報(第2頁、第4頁及び第10頁)
【非特許文献1】田澤茂実ら:生薬学雑誌、54(6), 306−313, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの産地ごとにおける成分の相違は起源植物材料の配合比率の相違によって異なってくるものと考えられている。プロポリスの起源植物としては、例えばヤナギ科、カバノキ科、マツ科、マメ科、ウルシ科、フトモモ科等の植物が考えられている。また、同じ産地でも地域、生産者、時期等により外見、物性、成分組成が多少異なることが知られている。プロポリスは、通常ミツバチの巣箱を数日〜数ヶ月野外に放置することにより産生される。そのため、季節により周辺植物が変化することが考えられ、また中国等の養蜂業者は季節変化ごとにセイヨウミツバチの蜜源植物の開花に合わせて巣箱を移動させながら産生させるためプロポリスを構成する植物起源は多種多様のものを含んでいることが考えられる。
【0008】
本発明は、プロポリス原塊の溶媒抽出物からなるプロポリス抽出物において、プロポリス原塊の起源植物に着目し、特定の植物を主要起源植物として産生されるプロポリス原塊を抽出対象として使用することにより従来のプロポリス抽出物に比べて特に抗酸化活性が高くなることを発見したことに基づくものである。
【0009】
本発明の目的とするところは、プロポリス原塊の溶媒抽出物からなるプロポリス抽出物において、抗酸化活性を向上させたプロポリス抽出物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明のプロポリス抽出物は、ポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として作られるプロポリス原塊の溶媒抽出物よりなることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のプロポリス抽出物において、親水性有機溶媒又は水/親水性有機溶媒の混合液であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載のプロポリス抽出物において、前記溶媒は、エタノールが60〜100容量%である水/エタノール溶媒であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載のプロポリス抽出物において、前記プロポリス原塊は、CIE L色空間表示系において、a値が5以上、b値が15以上であって、彩度(C)が20以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プロポリス原塊の溶媒抽出物からなるプロポリス抽出物において、抗酸化活性を向上させたプロポリス抽出物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のプロポリス抽出物を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態のプロポリス抽出物は、ポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として作成されるプロポリス原塊の溶媒抽出物から構成される。
【0015】
プロポリスは、巣の防御及び補強等を目的として、セイヨウミツバチ等のミツバチが採取した植物の滲出液、新芽及び樹皮等に唾液を混ぜて作られる膠状ないしは蝋状の物質である。本実施形態において、「主要起源植物」とはプロポリスを構成する植物原料中において好ましくは50重量%以上その植物を含有することをいう。つまり、本実施形態では、プロポリス原塊の原料植物中においてポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を好ましくは50重量%以上含有する。より好ましくは、80重量%以上含有され、さらに好ましくは90%以上含有する。
【0016】
通常、市販のプロポリスの主要起源植物としては、例えばヤナギ科、カバノキ科、マツ科、マメ科、ウルシ科、フトモモ科、ナンヨウスギ科、オトギリソウ科、キク科、クマツヅラ科、ヒルギ科、イギス科、ザントルロエア科等が知られている。本実施形態のプロポリス抽出物においては、ハコヤナギ科のポプラ、クロウメモドキ科のナツメ(夏目)及びバラ科のサンザシ(山査子)から選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として作られるプロポリス原塊が用いられる。ミツバチはそれらの植物の滲出液、新芽、及び樹脂等を原料とし、ミツロウを混ぜて膠状ないしは蝋状のプロポリスを産生する。
【0017】
プロポリス原塊中の主要起源植物をポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物とするためは、例えばセイヨウミツバチの巣箱をそれらの植物農園内及び野生の群生地等に配置することにより達成することができる。セイヨウミツバチの蜜及び植物を採取する範囲は数キロ(半径約2〜3キロ以内)であるためその範囲内を特定植物で占めることが好ましい。また、ハウス等の密閉空間内において特定植物と巣箱を共存させることにより、プロポリス原塊の主要起源植物をポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物とすることができる。
【0018】
前記プロポリス原塊は、目視において赤〜黄色を呈することが好ましい。具体的には、CIE(国際照明委員会)L色空間表示系において、a値が5以上、b値が15以上であって、彩度(C)が20以上であることが好ましい。プロポリス原塊のa値、b値、及び彩度(C)がかかる範囲内に存在するとプロポリスからフラボノイド類及びフェノール酸類等の抗酸化成分が多く含有される傾向がある。またかかるプロポリス原塊から抽出された溶媒抽出物も抗酸化成分が多く含有される傾向がある。尚、CIE L色空間表示系におけるa値及びb値はJISZ8729にも規定され、物体を色に表わす指数を示すものである。a値は赤方向を示し、b値は黄方向を示し、数値が大きくなるにつれて色鮮やかになる。市販の色差計(例えば、日本電色工業株式会社製ZE2000)を使用することにより、容易に測定することができる。また、彩度(C)は色の鮮やかさを示し、数値が大きくなるにつれ色鮮やかになる。彩度(C)は((a+(b1/2によって求めることができる。
【0019】
本実施形態において、好ましくはa値5以上、b値15以上であって、より好ましくは、a値<b値である。さらに好ましくは、a値は10以上、b値は20以上である。上限は特に規定されないが、好ましくはa値は20以下、b値は30以下である。本実施形態において、好ましくは彩度(C)20以上、より好ましくは25以上である。上限は特に規定されないが、好ましくは40以下である。
【0020】
プロポリス原塊からの有効成分の抽出方法は、親水性有機溶媒又は水/親水性有機溶媒の混合液が用いられる。これらの中でフラボノイド類やフェノール酸類を効率よく抽出することができる水/親水性有機溶媒の混合液が好ましく適用される。本実施形態において用いられる親水性有機溶媒としては、水に溶解する性質を有するエタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコールのほか、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類を適宜選択して使用することができる。これらの親水性有機溶媒を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、プロポリス抽出物を経口摂取することを考えればエタノールが最も好ましい。エタノール以外のメタノール等を溶媒として用いる場合は、後処理工程において溶媒を完全除去することが好ましい。
【0021】
例えば、水/親水性有機溶媒の混合液においてエタノールを用いる場合、その濃度は、好ましくは60〜100容量%、より好ましくは70〜100容量%、最も好ましくは95容量%である。エタノール濃度が60容量%未満の場合には、有効成分の抽出率が悪いので好ましくない。一方、エタノールの配合割合を高めることによりフラボノイド類やフェノール酸類の抽出効率を高めることができる。エタノール溶媒の使用容量は、プロポリス原塊の質量に対して好ましくは1〜20倍量、より好ましくは2〜10倍量、さらに好ましくは3〜8倍量である。エタノール溶媒の使用容量が1倍量未満の場合には、有効成分の抽出率が悪いので好ましくない。逆にエタノール溶媒の使用容量が20倍量を超える場合には、不必要に大きな装置が必要となるばかりでなく、濃縮等の工程に時間を要し、作業性が著しく低下するので好ましくない。
【0022】
また、前記親水性有機溶媒としてエタノールを用いて抽出する場合、有効成分の抽出効率を向上させるために、抽出処理前に採取時に混入するゴミ等の夾雑物を除去し、粉砕することが好ましい。抽出温度は5〜40℃であることが好ましい。抽出温度が5℃未満の場合には、有効成分の抽出率が悪いので好ましくない。逆に抽出温度が40℃を超える場合には、ロウ成分が抽出されて、抽出後の濾過性が悪くなるおそれがある。また、抽出溶媒(エタノール)が蒸発するため好ましくない。なお、抽出操作は、前記抽出温度で攪拌しながら4時間以上行えばよい。そして、上記の抽出条件で有効成分を十分に抽出した後、濾紙濾過、珪藻土濾過などの濾過処理を行なうことによりプロポリスの親水性有機溶媒抽出物を得ることができる。
【0023】
親水性有機溶媒としてエタノールを用いて抽出した場合、溶媒抽出液は抽出された有効成分により黄色〜オレンジを呈することが好ましく、黄色を呈することがより好ましい。具体的には可視光領域における吸収スペクトルにおいて、435〜490nm(補色:黄色〜オレンジ)の間にピークを有することが好ましく、435〜480nm(補色:黄色)の間にピークを有することがより好ましく、450〜470nmの範囲にピークを有することが最も好ましい。溶媒抽出物の吸収ピークがかかる範囲内に存在するとプロポリスからフラボノイド類及びフェノール酸類等の抗酸化成分が多く含有されている傾向がある。また溶媒抽出物のピーク吸収波長における吸光度が高い方がプロポリスから抗酸化成分が多く含有される傾向がある。
【0024】
上記抽出法により主要起源植物がポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物であるプロポリス原塊から抽出されたプロポリス抽出物は、抗酸化作用を有するフラボノイド類及びフェノール酸類を主成分として含有する。フラボノイド類として多く含有される成分として具体的には、ピノセンブリン、クリシン及びガランギン等が挙げられる。フェノール酸類として多く含有される成分として具体的には、カフェ酸、p−クマル酸、フェルラ酸、カフェ酸フェネチルエステル(CAPE)等が挙げられる。特に一般的に市販されているブラジル産及び中国産のプロポリス原塊から抽出されたプロポリス抽出物に比べフラボノイド類の含有量が豊富である。
【0025】
プロポリス抽出物は、フラボノイド類により抗酸化作用、抗アレルギー作用を発揮する。また、フェノール酸類により抗アレルギー作用、抗酸化作用、抗癌作用、抗菌作用、免疫賦活作用、抗炎症作用等が発揮される。本実施形態のプロポリス抽出物は、他のプロポリス抽出物に比べフラボノイド類が特に豊富に含まれているため、より強い抗酸化作用及び抗アレルギー作用を発揮することができる。したがって、本実施形態のプロポリス抽出物はそれらの作用・効能の発揮を目的とした飲食品、医薬品等に好ましく適用することができる。
【0026】
上記のように抽出されたプロポリス抽出物は、そのままドリンク剤及びチンキ剤のような液状の製品として適用してもよい。また、プロポリス抽出物に澱粉やデキストリン等の賦形剤を混合した後、熱風乾燥や凍結乾燥することにより、プロポリス抽出物の粉末を得てもよい。粉末化されて粉末剤や顆粒剤等の剤形で供給されたり、粉末や顆粒を圧縮成形した錠剤として供給されたり、ゼラチン製のカプセルに充填されたカプセル剤として供給してもよい。
【0027】
本実施形態のプロポリス抽出物は、健康食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等に含有されて利用される。例えば、プロポリス抽出物を健康食品に含有させて利用する場合、含有成分の生理活性を損なわない範囲内で、賦形剤、光沢剤、ゲル化剤、増粘剤、甘味剤、乳化剤、香味料、色素、pH調整剤等を添加してもよい。なお、具体的には、賦形剤としては、デキストリン、セルロース、乳糖、還元麦芽糖水飴、コーンスターチが、光沢剤としては、カルナバロウ、シェラック、ミツロウが、ゲル化剤としては、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カンテン、デンプンが、増粘剤としてはアルギン酸、カラギナン、キサンタンガム、キトサンが、甘味料としては、砂糖、蜂蜜、カンゾウ抽出物、ステビア、サッカリンナトリウム、オリゴ糖、エリスリトール、水飴、異性化糖が、乳化剤としては、キラヤ抽出物、レシチン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、大豆サポニンが、香味料としてはシナモン精油、ジャスミン精油、ローズマリー精油、ライム精油が、色素としてはカラメル、アカキャベツ、クチナシ、ムラサキイモ、ブドウ、ウコンが、pH調整剤としては、乳酸、乳酸塩、クエン酸、リンゴ酸、炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0028】
健康食品の形態としては、特に限定されず、液状、粉末状、ゲル状、固形状のいずれであってもよく、また剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤のいずれであってもよい。その中でも、吸湿性が抑えられ、独特な味を感じることなく摂取可能であることから、カプセル剤であることが好ましい。
【0029】
本実施形態のプロポリス抽出物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、プロポリス抽出物の原料としてポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として作られるプロポリス原塊を用いた。したがって、一般的に市販されているブラジル産、中国産等の多数の植物が起源として産生されるプロポリスと比べ、フラボノイド類及びフェノール酸類を多く含有させることができる。
【0030】
(2)また、本実施形態のプロポリス抽出物は、他のプロポリスと比べ、フラボノイド類及びフェノール酸類を多く含有させることができるため、それらの成分によって発揮される抗酸化作用、抗アレルギー作用等を特に効率よく発揮させることができる。
【0031】
(3)また、フラボノイド類及びフェノール酸類の配合量を多く含有させることができるため、それらの成分を濃縮等の配合量増加処理を行なうことなく、高い抗酸化作用及び抗アレルギー作用等の効能を発揮させることができる。
【0032】
(4)また、高い抗酸化作用及び抗アレルギー作用等の効能発揮を目的とする飲食品、医薬品等に容易に適用することができる。
(5)本実施形態では、抽出溶媒として、親水性有機溶媒又は水/親水性有機溶媒の混合液が好ましく使用される。したがって、抗酸化作用等の効能を有するフラボノイド類及びフェノール酸類は極性の低い成分が多いため、それらの成分を効率よく抽出することができる。
【0033】
(6)本実施形態では、抽出溶媒としてエタノールが60〜100容量%である水/エタノール混合溶媒が好ましく使用される。したがって、フラボノイド類及びフェノール酸類等の有効成分をより効率よく抽出することができる。
【0034】
(7)また、親水性有機溶媒としてエタノールを使用することにより、人体に直接適用される飲食品、医薬品、化粧品の分野に容易に適用することができる。
(8)本実施形態のプロポリス抽出物は、プロポリス原塊としてL色空間表示系において、a値が5以上、b値が15以上であって、彩度(C)が20以上のものが好ましく使用される。プロポリス原塊のa値、b値、及び彩度(C)が高いとプロポリスからフラボノイド類及びフェノール酸類等の抗酸化成分が多く含有される傾向がある。本願規定のa値、b値及び彩度(C)を有するプロポリス原塊は、プロポリス抽出物の原料としてポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として作られることにより得ることができる。また、本願規定のa値、b値及び彩度(C)を測定することによって、他のプロポリス原塊と容易に区別することができる。
【0035】
(9)本実施形態のプロポリス抽出物は、可視光領域における吸収ピークが、435nm〜490nm(補色:黄色〜オレンジ)の範囲にある。したがって、他のプロポリス抽出物と吸収ピークを測定及び比較することにより容易に区別することができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、プロポリス抽出物の原料としてのプロポリス原塊にはポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物が主要起源植物の成分として含有されていればよい。したがって、例えばその他のヤナギ科、カバノキ科、マツ科、マメ科、ウルシ科、フトモモ科、ナンヨウスギ科、オトギリソウ科、キク科、クマツヅラ科、ヒルギ科、イギス科、ザントルロエア科等の植物が一部含有されていてもよい。
【0037】
・上記実施形態におけるプロポリス抽出物は、そのまま飲食品、医薬品等に適用してもよく、溶媒を蒸発させて濃縮処理して適用してもよい。
・上記プロポリス抽出物を得た後の抽出残渣をさらに水抽出法、超臨界抽出法、ミセル化抽出法等の公知の方法を用いて抽出処理することにより、再利用してもよい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
セイヨウミツバチの巣箱を半径数キロ以内の周辺植物がサンザシ及びナツメである農園と野生(群生地)に数ヶ月放置することによりプロポリス原塊を得た。そのプロポリス原塊の粉砕物5kgに、抽出溶媒としての95容量%エタノール/水15リットルを加えて室温(約25℃)で24時間攪拌して抽出した。そして、前記プロポリス粉砕物の攪拌抽出液を濾紙(アドバンテック東洋株式会社製のNo.2)で濾過して残渣を除去することによって、本実施例のプロポリス抽出液16.2kg(固形分17.9質量%)を得た。
【0039】
(実施例2)
セイヨウミツバチの巣箱を半径数キロ以内の周辺植物がポプラ及びサンザシである農園に数ヶ月放置することによりプロポリス原塊を得た。そのプロポリス原塊の粉砕物5kgに、抽出溶媒としての95容量%エタノール/水15リットルを加えて室温(約25℃)で24時間攪拌して抽出した。そして、前記プロポリス粉砕物の攪拌抽出液を濾紙(アドバンテック東洋株式会社製のNo.2)で濾過して残渣を除去することによって、本実施例の10.8kg(固形分19.4質量%)を得た。
【0040】
(比較例1)
プロポリス原塊として市販のブラジル産のものを使用した。上記実施例と同様の方法を用いてプロポリス原塊5kgからプロポリス抽出物12.4kg(固形分14.2質量%)を得た。尚、ブラジル産のプロポリス原塊の起源植物はアレクリン等の複数種類の植物を含有している。
【0041】
(比較例2)
プロポリス原塊として市販の中国産のものを使用した。上記実施例と同様の方法を用いてプロポリス原塊5kgからプロポリス抽出物15.4kg(固形分10.1質量%)を得た。尚、中国産のプロポリス原塊の起源植物は、養蜂業者が季節変化ごとにセイヨウミツバチの蜜源植物の開花に合わせて巣箱の設置を移動させながら産生させるため、マツ、ケイジョウ、リンデン、ポプラの他、さらに複数種類の植物からなる。
【0042】
<抗酸化活性としてのラジカル捕捉能試験>
プロポリスの生理活性作用の一つである抗酸化作用をラジカル捕捉能試験によって比較した。各実施例及び各比較例の各プロポリス抽出物を無水エタノール中に各々0.001質量%の濃度で溶解させて試料溶液を調製した。前記各試料溶液2mlに、170μMのDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)エタノール溶液2mlを加えて混合し、DPPHエタノール試料溶液とした後、室温で15分間反応させた。そして、分光光度計(島津製作所製UV-1200)を用いて、各DPPHエタノール試料溶液の光の波長519nmにおける吸光度を測定した。なお、対照としてエタノールを用いて同操作を行い、各DPPHエタノール試料溶液(20μg/ml)のラジカル捕捉活性率(%)を求めた。そして、検量線を作成して50%阻害濃度IC50(g/ml)を算出した(試験はn=3で測定)。その結果を表1に示す。なお、表1においてIC50の値が低いほど抗酸化作用が強いことを示している。
【0043】
【表1】

表1に示されるように各実施例のプロポリス抽出物は、市販のブラジル産及び中国産のプロポリス原塊から抽出された比較例1、2のプロポリス抽出物と比較して抗酸化活性が大幅に高いことが確認される。実施例1、2の中でもサンザシ及びナツメが主要起源植物である実施例1の抗酸化活性がより高いことが確認される。活性酸素は、老化現象のあらゆる病気の元凶として注目を集めている。活性酸素は生体に損傷を与え、疾病、発ガン老化と深い関係があると言われている。また、プロポリスに含まれているフラボノイド類がスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を作り、活性酸素を除去することが分かってきた。したがって、本実施例のプロポリス抽出物はそれらの疾患の予防及び治療のための有効な成分になり得るものと思料される。
【0044】
<成分分析>
各プロポリス抽出物中の下記フラボノイド類及びフェノール酸類の各成分について定性及び定量を行なった。各実施例及び各比較例の各プロポリス抽出物を無水エタノール中に各々0.001質量%の濃度で溶解させて試料溶液を調製した。これらの試料溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析し、カフェ酸、p−クマル酸、フェルラ酸、ピノセンブリン、クリシン、ガランギン、カフェ酸プレニルエステル、カフェ酸フェネチルエステル(CAPE)、アルテピリンC、及びドゥルパニンの濃度(w/v%)を測定した。そして、該エタノール抽出液中の全固形分濃度を測定し、エタノール抽出液中に含まれる各成分の固形分あたりの含有量(w/w%)に換算した。HPLCの分析条件は、カラム:Shim−Pack CLC−ODS 6.0mmI.D.×150mm(島津製作所社製)、溶媒:70%メタノール+1%酢酸及び55%メタノール+1%酢酸、検出波長:280nm及び325nm、カラム温度:40℃である。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

表2に示されるように、各実施例のプロポリス抽出物は各比較例のプロポリス抽出物に比べ、フラボノイド類であるピノセンブリン、クリシン及びガランギンの含有量が高いことが確認される。ブラジル産のプロポリス原塊が由来である比較例1のプロポリス抽出物はアルテピリンC等の桂皮酸誘導体が含有されているが、一方で各フラボノイド成分が含有されていないことが示される。同じく比較例1は、抗癌作用を有することが知られているフェノール酸類としてCAPEが含有されていないことが示される。また、中国産のプロポリス原塊が由来である比較例2のプロポリス抽出物は、フェノール酸類の含有量は各実施例とそれほど変わりないが、各フラボノイド成分の含有量が少ないことが示される。したがって、各実施例のプロポリス抽出物は、フラボノイド類及びフェノール酸類の含有量に優れるため、各比較例のプロポリス抽出物に比べて抗酸化作用、抗アレルギー作用及び抗癌作用に優れるものと思料される。
【0046】
<プロポリス原塊における色相と彩度の測定>
実施例1,2及び比較例1,2のプロポリス原塊について色差計(日本電色工業株式会社製ZE2000)を用いて、CIE(国際照明委員会)L色空間表示系において、a値、b値、及び彩度(C)を測定した。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

表3に示されるように、本実施例1,2のプロポリス原塊は、比較例1,2のプロポリス原塊と比較して、a値、b値、及び彩度(C)のいずれの比較においても数値が高いことが確認された。つまり、本実施例のポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として産出されるプロポリス原塊は、黄色及び赤色の鮮やかさが公知の(各比較例)プロポリス原塊より高いことが確認された。以上の試験結果より、プロポリス原塊のa値、b値、及び彩度(C)の数値が高いとプロポリスからフラボノイド類及びフェノール酸類等の抗酸化成分が多く含有される傾向があるものと思料される。
【0048】
<可視光領域における最大吸収波長の測定>
実施例1及び比較例1,2のプロポリス抽出物について分光光度計(島津製作所社製UV-1200)を用いて可視光領域における吸収スペクトルを測定した。結果を図1〜3に示す。縦軸が吸光度[A]、横軸が波長(wavelength[nm])を示す。
【0049】
図1に示されるように実施例1のプロポリス抽出物は460nm付近(450nmから470nmの間)に吸収ピークが確認された。ブラジル産のプロポリス原塊が由来である比較例1のプロポリス抽出物は、610nm及び660nm付近に吸収ピークが確認された。また中国産のプロポリス原塊が由来である比較例2のプロポリス抽出物は、可視光領域において吸収ピークは確認されなかった。したがって、本実施例のプロポリス抽出物は、ブラジル産及び中国産のプロポリス抽出物と外観色が相違することが示された。
【0050】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)健康食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧品に適用される前記プロポリス抽出物。
【0051】
(b)抗癌剤、抗酸化剤、及び抗アレルギー剤として適用される前記プロポリス抽出物。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1のプロポリス抽出物の吸収スペクトルを示す。
【図2】比較例1のブラジル産のプロポリス原塊から抽出されたプロポリス抽出物の吸収スペクトルを示す。
【図3】比較例2の中国産のプロポリス原塊から抽出されたプロポリス抽出物の吸収スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポプラ、ナツメ及びサンザシから選ばれる少なくとも一種の植物を主要起源植物として作られるプロポリス原塊の溶媒抽出物よりなることを特徴とするプロポリス抽出物。
【請求項2】
前記溶媒は、親水性有機溶媒又は水/親水性有機溶媒の混合液であることを特徴とする請求項1記載のプロポリス抽出物。
【請求項3】
前記溶媒は、エタノールが60〜100容量%である水/エタノール溶媒であることを特徴とする請求項2記載のプロポリス抽出物。
【請求項4】
前記プロポリス原塊は、CIE L色空間表示系において、a値が5以上、b値が15以上であって、彩度(C)が20以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載のプロポリス抽出物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−184427(P2008−184427A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19371(P2007−19371)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【Fターム(参考)】