説明

ベルト装置及び画像形成装置

【課題】ベルト部材の交換をおこなった場合等であっても、画像形成装置を無駄に休止させたり無駄なメンテナンス作業を生じさせたりすることなく、ベルト部材の蛇行や破損が確実に抑止される、ベルト装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】ベルト部材8の幅方向の変位量を検知する第1検知手段80と、ベルト部材8が幅方向に所定距離を超えて変位するのを検知する第2検知手段88と、ベルト部材8の幅方向の変位を補正する補正手段13と、を備える。そして、電源が投入されてからベルト部材8の走行準備が完了するまでの間に、第1検知手段80の検知結果に基いて補正手段13によってベルト部材8の幅方向の変位が補正されるとともに、第2検知手段88によってベルト部材8の所定距離を超えた変位を検知したときにのみベルト部材8の走行が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機等の画像形成装置と、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、感光体ベルト等のベルト部材が設置されたベルト装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、中間転写ベルト(ベルト装置)を備えたタンデム型のカラー画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。
詳しくは、4つの感光体ドラム(像担持体)が中間転写ベルト(ベルト部材)に対向するように並設されている。これらの4つの感光体ドラムでは、それぞれ、ブラック(黒色)、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー像が形成される。そして、各感光体ドラムで形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト上に重ねて転写される。さらに、中間転写ベルト上に担持された複数色のトナー像は、カラー画像として記録媒体上に転写される。
【0003】
このような画像形成装置では、中間転写ベルトの幅方向の変位を検知して、その検知結果に基づいて中間転写ベルトの幅方向の変位を補正する技術が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。このような技術は、中間転写ベルトが蛇行することによりカラー画像の品質が低下する不具合や、中間転写ベルトが幅方向に大きく変位(ベルト寄り)した後に他の部材に接触して中間転写ベルトが破損する不具合、等を抑止することを目的としている。
【0004】
具体的に、特許文献1等では、中間転写ベルト(無端状ベルト)の幅方向端部に当接してその変位に追従して揺動する接触子の変位量を、第1検知手段(変位センサ)で検知している。そして、第1検知手段の検知結果に基づいて、補正手段(蛇行補正ローラ)によって、中間転写ベルトの変位(蛇行)を補正している。また、中間転写ベルトが第1検知手段の検知範囲(異常検出境界線)を超えて蛇行したときには、装置に異常が生じたものとして、中間転写ベルトの駆動が停止される。
さらに、特許文献1等では、第1検知手段(変位センサ)よりも幅方向外側に離れた位置に第2検知手段(エッジセンサ)を設置している。そして、第2検知手段によって中間転写ベルトのエッジが検知されたときにも、装置の異常により中間転写ベルトがさらに大きく蛇行したものとして、中間転写ベルトの駆動が停止される。
【0005】
一方、特許文献3等には、第1検知手段(エッジセンサ)の検知結果に基づいて補正手段(ステアリングロール)によって中間転写ベルトの変位(蛇行)を補正する画像形成装置であって、装置の電源が投入されてから所定時間の間、第1検知手段(エッジセンサ)による異常検知をおこなわない技術が開示されている。この技術は、中間転写ベルトの交換をおこなった直後に、中間転写ベルトが正常に走行しているにもかかわらず蛇行しているものとして異常検知される不具合を抑止することを目的としたものである。
【0006】
【特許文献1】特開2006−343629号公報
【特許文献2】特開2001−83840号公報
【特許文献3】特許第3755356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1等の技術は、メンテナンス等により中間転写ベルト等のベルト部材の交換をおこなった直後に、ベルト部材が正常に走行しているにもかかわらず蛇行しているものとして異常検知される場合があった。
詳しくは、作業者の熟練度によって、交換されたベルト部材が狙いの位置から幅方向にずれて組み付けられてしまうことがあった。このような場合には、本来的にベルト装置に異常がなければ電源投入後のイニシャライズ時に補正手段によってベルト部材は狙いの位置に補正されるにもかかわらず、装置の異常によりベルト部材が第1検知手段の検知範囲を超えて蛇行したものとして、中間転写ベルトの駆動が停止されていた。したがって、画像形成装置を無駄に休止させたり、無駄なメンテナンス作業を生じさせたりしていた。
【0008】
これに対して、上述した特許文献3等の技術は、装置の電源が投入されてから所定時間の間だけ第1検知手段による異常検知をおこなわないために、ベルト部材の交換をおこなった直後にベルト部材が正常に走行しているにもかかわらず蛇行しているものとして異常検知される不具合を抑止する効果が期待できる。
しかし、特許文献3等の技術は、第1検知手段とは別に、ベルト部材の大きな蛇行を検知する第2検知手段が設置されていないために、ベルト部材の組み付け精度によるものではなくて本来的にベルト装置に異常があったときに、その異常を検知できずに、交換されたばかりの新品のベルト部材を破損させてしまう可能性が高かった。
【0009】
このような問題は、特に、ベルト部材が高速で走行する高速機(プロセス線速が速い画像形成装置である。)において無視できないものになっていた。
また、このような問題は、ベルト部材として中間転写ベルトを用いたベルト装置に限定されることなく、ベルト部材の変位の検知・補正をおこなうベルト装置であれば、ベルト部材として転写搬送ベルトを用いたベルト装置や、ベルト部材として感光体ベルトを用いたベルト装置でも共通するものである。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ベルト部材の交換をおこなった場合等であっても、画像形成装置を無駄に休止させたり無駄なメンテナンス作業を生じさせたりすることなく、ベルト部材の蛇行や破損が確実に抑止される、ベルト装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の請求項1記載の発明にかかるベルト装置は、画像形成装置に設置されるベルト装置であって、所定方向に走行する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の幅方向の変位量を検知する第1検知手段と、前記ベルト部材が幅方向に所定距離を超えて変位するのを検知する第2検知手段と、前記ベルト部材の幅方向の変位を補正する補正手段と、を備え、電源が投入されてから前記ベルト部材の走行準備が完了するするまでの間に、前記第1検知手段の検知結果に基いて前記補正手段によって前記ベルト部材の幅方向の変位が補正されるとともに、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときにのみ当該ベルト部材の走行が停止されるものである。
【0012】
また、請求項2記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記ベルト部材の走行準備が完了した後に、前記第1検知手段の検知結果に基いて前記補正手段によって前記ベルト部材の幅方向の変位が補正され、前記ベルト部材が前記第1検知手段の検知範囲を超えて変位したときに当該ベルト部材の走行が停止されるとともに、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに当該ベルト部材の走行が停止されるものである。
【0013】
また、請求項3記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、画像形成動作が開始された後に、前記第1検知手段の検知結果に基いて前記補正手段によって前記ベルト部材の幅方向の変位が補正され、前記ベルト部材が前記第1検知手段の検知範囲を超えて変位したときに当該ベルト部材の走行が停止されるとともに、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに当該ベルト部材の走行が停止されるものである。
【0014】
また、請求項4記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記ベルト部材が前記第1検知手段の前記検知範囲を超えて変位したときに、前記ベルト部材に当接する回転部材の回転駆動が停止されるものである。
【0015】
また、請求項5記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項2〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記ベルト部材が前記第1検知手段の前記検知範囲を超えて変位したときに、前記ベルト部材に当接する当接部材に対して当該ベルト部材が相対的に離間されるものである。
【0016】
また、請求項6記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項2〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記ベルト部材が前記第1検知手段の前記検知範囲を超えて変位したときに、前記ベルト部材又はその周囲に配設された部材に対する電圧印加が切断されるものである。
【0017】
また、請求項7記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに、前記ベルト部材に当接する回転部材の回転駆動が停止されるものである。
【0018】
また、請求項8記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに、前記ベルト部材に当接する当接部材に対して当該ベルト部材が相対的に離間されるものである。
【0019】
また、請求項9記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに、前記ベルト部材又はその周囲に配設された部材に対する電圧印加が切断されるものである。
【0020】
また、請求項10記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項1〜請求項9のいずれかに記載の発明において、前記第2検知手段に係わる前記所定距離は、前記第1検知手段の検知範囲よりも大きく設定されたものである。
【0021】
また、請求項11記載の発明にかかるベルト装置は、前記請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、前記ベルト部材を、複数の像担持体にそれぞれ担持されたトナー像が転写される中間転写ベルトとしたものである。
【0022】
また、この発明の請求項12記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項11のいずれかに記載のベルト装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、装置の電源が投入されてからベルト部材の走行準備が完了するまでの間に、第1検知手段の検知結果に基いてベルト部材の蛇行を補正するとともに、第1検知手段による異常検知はおこなわずに、第2検知手段によってベルト部材の大きな蛇行が検知されたときにのみベルト部材の走行を強制的に停止している。これにより、ベルト部材の交換をおこなった場合等であっても、画像形成装置を無駄に休止させたり無駄なメンテナンス作業を生じさせたりすることなく、ベルト部材の蛇行や破損が確実かつ効率的に抑止される、ベルト装置及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0025】
まず、図1及び図2にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1は画像形成装置としてのプリンタを示す構成図であり、図2はその作像部を示す拡大図である。
図1に示すように、画像形成装置本体100の中央には、ベルト装置としての中間転写ベルト装置15が設置されている。また、中間転写ベルト装置15の中間転写ベルト8(ベルト部材)に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部6Y、6M、6C、6Kが並設されている。
【0026】
図2を参照して、イエローに対応した作像部6Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yと、感光体ドラム1Yの周囲に配設された帯電部4Y、現像部5Y、クリーニング部2Y、除電部(不図示である。)等で構成されている。そして、感光体ドラム1Y上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、感光体ドラム1Y上にイエロー画像が形成されることになる。
【0027】
なお、他の3つの作像部6M、6C、6Kも、使用されるトナーの色が異なる以外は、イエローに対応した作像部6Yとほぼ同様の構成となっていて、それぞれのトナー色に対応した画像が形成される。以下、他の3つの作像部6M、6C、6Kの説明を適宜に省略して、イエローに対応した作像部6Yのみの説明をおこなうことにする。
【0028】
図2を参照して、感光体ドラム1Yは、不図示の駆動モータによって図2中の反時計方向に回転駆動される。そして、帯電部4Yの位置で、感光体ドラム1Yの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、露光部7から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によってイエローに対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0029】
その後、感光体ドラム1Yの表面は、現像部5Yとの対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、イエローのトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、中間転写ベルト8(ベルト部材)及び転写ローラ9Y(1次転写ローラ)との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上のトナー像が中間転写ベルト8上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム1Y上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0030】
その後、感光体ドラム1Yの表面は、クリーニング部2Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上に残存した未転写トナーがクリーニングブレード2aによってクリーニング部2Y内に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム1Yの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム1Y上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0031】
なお、上述した作像プロセスは、他の作像部6M、6C、6Kでも、イエロー作像部6Yと同様におこなわれる。すなわち、作像部の上方に配設された露光部7から、画像情報に基いたレーザ光Lが、各作像部6M、6C、6Kの感光体ドラム1M、1C、1K上に向けて照射される。詳しくは、露光部7は、光源からレーザ光Lを発して、そのレーザ光Lを回転駆動されたポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学素子を介して感光体ドラム上に照射する。
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト8上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。
【0032】
ここで、中間転写ベルト装置15(ベルト装置)は、図3を参照して、中間転写ベルト8、4つの転写ローラ9Y、9M、9C、9K 、駆動ローラ12A、テンションローラ12B、12C、補正ローラ13(補正手段)、規制ローラ14、第1検知部80(第1検知手段)、第2検知部88(第2検知手段)、フォトセンサ90、中間転写クリーニング部10、等で構成される。中間転写ベルト8は、複数のローラ部材12A〜12C、13、14によって張架・支持されるとともに、1つのローラ部材(駆動ローラ)12Aの回転駆動によって図3中の矢印方向に無端移動される。
【0033】
4つの転写ローラ9Y、9M、9C、9K(1次転写ローラ)は、それぞれ、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y 、1M 、1C 、1K との間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、転写ローラ9Y、9M、9C、9Kに、トナーの極性とは逆の高圧電圧(転写バイアス)が印加される。
そして、中間転写ベルト8は、矢印方向に走行して、転写ローラ9Y、9M、9C、9Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム1Y 、1M 、1C 、1K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に重ねて1次転写される。
【0034】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト8は、2次転写ローラ19との対向位置に達する。この位置では、テンションローラ12Bが、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、2次転写ローラ19に、トナーの極性とは逆の高圧電圧(2次転写バイアス)が印加される。これにより、中間転写ベルト8上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された転写紙等の記録媒体P上に転写される(2次転写工程である。)。このとき、中間転写ベルト8には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
【0035】
その後、中間転写ベルト8は、中間転写クリーニング部10の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト8上の未転写トナーが除去される。
こうして、中間転写ベルト8上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。なお、ベルト装置としての中間転写ベルト装置15の構成・動作については、後で図3〜図10を用いてさらに詳しく説明する。
【0036】
ここで、図1を参照して、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体100の下方に配設された給紙部26(又は、側方に配設された給紙部)から、給紙ローラ27やレジストローラ対28等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部26には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ27が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対28のローラ間に向けて給送される。
【0037】
レジストローラ対28に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト8上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0038】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着部20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ローラ及び圧力ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対(不図示である。)によって装置外へと排出される。排紙ローラ対によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0039】
次に、図2にて、作像部における現像部の構成・動作について、さらに詳しく説明する。
現像部5Yは、感光体ドラム1Yに対向する現像ローラ51Yと、現像ローラ51Yに対向するドクターブレード52Yと、現像剤収容部内に配設された2つの搬送スクリュ55Yと、現像剤収容部に開口を介して連通するトナー補給経路43Yと、現像剤中のトナー濃度を検知する濃度検知センサ56Yと、等で構成される。現像ローラ51Yは、内部に固設されたマグネットや、マグネットの周囲を回転するスリーブ等で構成される。現像剤収容部内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤が収容されている。
【0040】
このように構成された現像部5Yは、次のように動作する。
現像ローラ51Yのスリーブは、図2の矢印方向に回転している。そして、マグネットにより形成された磁界によって現像ローラ51Y上に担持された現像剤は、スリーブの回転にともない現像ローラ51Y上を移動する。ここで、現像装置5Y内の現像剤は、現像剤中のトナーの割合(トナー濃度)が所定の範囲内になるように調整される。
その後、現像剤収容部内に補給されたトナーは、2つの搬送スクリュ55Yによって、現像剤とともに混合・撹拌されながら、隔絶された2つの現像剤収容部を循環する(図2の紙面垂直方向の移動である。)。そして、現像剤中のトナーは、キャリアとの摩擦帯電によりキャリアに吸着して、現像ローラ51Y上に形成された磁力によりキャリアとともに現像ローラ51Y上に担持される。
【0041】
現像ローラ51Y上に担持された現像剤は、図2中の矢印方向に搬送されて、ドクターブレード52Yの位置に達する。そして、現像ローラ51Y上の現像剤は、この位置で現像剤量が適量化された後に、感光体ドラム1Yとの対向位置(現像領域である。)まで搬送される。そして、現像領域に形成された電界によって、感光体ドラム1Y上に形成された潜像にトナーが吸着される。その後、現像ローラ51Y上に残った現像剤はスリーブの回転にともない現像剤収容部の上方に達して、この位置で現像ローラ51Yから離脱される。
【0042】
次に、図3〜図10にて、本実施の形態における画像形成装置において特徴的な中間転写ベルト装置15(ベルト装置)について詳述する。
図3は、ベルト装置としての中間転写ベルト装置15を示す構成図である。図4は、中間転写ベルト装置15の一部を幅方向にみた概略図である。図5は、中間転写ベルト装置15における第1検知部80の近傍を示す斜視図である。図6は、中間転写ベルト8の位置ずれ量(変位量)と、第1検知部80の出力電圧と、の関係を示すグラフである。図7は、中間転写ベルト装置15における第2検知部88の近傍を示す斜視図である。図8〜図10は、電源投入直後のイニシャライズ時に、中間転写ベルト装置15でおこなわれる制御を示すフローチャートである。
【0043】
図3及び図4を参照して、中間転写ベルト装置15(ベルト装置)は、ベルト部材としての中間転写ベルト8、4つの転写ローラ9Y、9M、9C、9K 、駆動ローラ12A、テンションローラ12B、12C、補正手段としての補正ローラ13、規制ローラ14、第1検知手段としての第1検知部80、第2検知手段としての第2検知部88、フォトセンサ90、中間転写クリーニング部10、等で構成される。
【0044】
ベルト部材としての中間転写ベルト8は、各色のトナー像をそれぞれ担持する4つの像担持体としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向するように配設されている。中間転写ベルト8は、主として5つのローラ部材(駆動ローラ12、テンションローラ12B、12C、補正ローラ13、規制ローラ14である。)によって張架・支持されている。
【0045】
本実施の形態において、中間転写ベルト8は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、等を単層又は複数層に構成して、カーボンブラック等の導電性材料を分散させたものである。中間転写ベルト8は、体積抵抗率が107〜1012Ωcm、ベルト裏面側の表面抵抗率が108〜1012Ωcmの範囲になるように調整されている。また、中間転写ベルト8は、厚さが80〜100μmの範囲となるように設定されている。本実施の形態では、中間転写ベルト8の厚さが90μmに設定されている。
なお、必要に応じて中間転写ベルト8の表面に離型層をコートすることもできる。その際、コートに用いる材料として、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)、等のフッ素樹脂を使用できるが、これに限定されるものではない。
また、中間転写ベルト8の製造方法としては、注型法、遠心成形法、等があり、必要に応じてその表面を研磨する工程がおこなわれる。
【0046】
転写ローラ9Y、9M、9C、9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を介して対応する感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向している。詳しくは、イエロー用の転写ローラ9Yは中間転写ベルト8を介してイエロー用の感光体ドラム1Yに対向し、マゼンタ用の転写ローラ9Mは中間転写ベルト8を介してマゼンタ用の感光体ドラム1Mに対向し、シアン用の転写ローラ9Cは中間転写ベルト8を介してシアン用の感光体ドラム1Cに対向し、ブラック用(黒色用)の転写ローラ9Kは中間転写ベルト8を介してブラック用(黒色用)の感光体ドラム1Kに対向している。
【0047】
4つの転写ローラ9Y、9M、9C、9Kは、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kから離間させるように構成されている。
具体的に、4つの転写ローラ9Y、9M、9C、9Kのうち、カラー用の3つの転写ローラ9Y、9M、9Cは、不図示の保持部材に一体的に保持されていて、上下方向に一体的に移動可能に構成されている。また、黒色用の転写ローラ9Kは、単独で上下方向に移動可能に構成されている。そして、4つの転写ローラ9Y、9M、9C、9Kが図3中の破線の位置に移動することで、中間転写ベルト8が感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kから離間する(破線位置への移動である。)。このような中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kから離間させる動作は、中間転写ベルト8の磨耗劣化を軽減するためにおこなわれるものであって、主として非画像形成時におこなわれる。なお、黒色用の転写ローラ9Kを単独で上下方向に移動可能に構成したのは、モノクロ画像形成時に、カラー用の3つの転写ローラ9Y、9M、9Cを下方に移動してカラー用の感光体ドラム1Y、1M、1Cを中間転写ベルト8から離間させるためである。
【0048】
駆動ローラ12Aは、不図示の駆動モータによって回転駆動される。これにより、中間転写ベルト8は所定の走行方向(図3の時計方向である。)に走行することになる。
1つのテンションローラ12Bは、中間転写ベルト8を介して2次転写ローラ19に当接している。もう1つのテンションローラ12Cは、中間転写ベルト8の外周面に当接している。双方のテンションローラ12B、12Cの間に、中間転写クリーニング部10(クリーニングブレード)が設置されている。
【0049】
ここで、本実施の形態における中間転写ベルト装置15には、中間転写ベルト8の幅方向(図3の紙面垂直方向である。)の変位量を検知する第1検知手段としての第1検知部80が設置されている。
詳しくは、図5を参照して、第1検知部80は、中間転写ベルト8の幅方向端部に当接する揺動部材82、揺動部材82の変位量を検知する測距センサ81、揺動部材82を中間転写ベルト8に当接させる方向に付勢するスプリング83、等で構成されている。
【0050】
揺動部材82は、第1アーム部82a、回転支軸82b、第2アーム部82c等で構成されている。第1アーム部82aは、一端が中間転写ベルト8の幅方向端部に当接して、他端が回転支軸82bに固設されている。回転支軸82bは、中間転写ベルト装置15の筐体(不図示である。)に回転自在に支持されている。第2アーム部82cは、一端が回転支軸82bに固設されている。第2アーム部82cの中央には、スプリング83の一端が接続されている。スプリング83の他端は筐体に接続されている。
このような構成により、揺動部材82は、中間転写ベルト8の幅方向の変位(図5中の破線両矢印方向のベルト寄りである。)に追従して揺動することになる(図5中の実線両矢印方向の揺動である。)。なお、本実施の形態では、中間転写ベルト8は、走行方向(図5の矢印方向である。)に440mm/秒で走行するように設定されている。
【0051】
そして、揺動部材82の第2アーム部82cの他端の上方には、測距センサ81が設置されている(筐体に固設されている。)。測距センサ81は、主として、水平方向に離間して並設された発光素子(赤外発光ダイオード)と位置検出素子(PSD)とで構成されている。発光素子から射出された赤外光は、第2アーム部82c表面にて反射して、反射光となって位置検出素子に入射する。このとき、測距センサ81と第2アーム部82c表面との距離によって、位置検出素子に入射する反射光の入射位置が変化して、それに比例して受光素子(測距センサ81)の出力値が変化する(図6を参照できる。)。これにより、中間転写ベルト8の幅方向の変位量(第2アーム部82c表面との距離)を検知することができる。具体的に、図6を参照して、測距センサ81の出力値が所定値(電圧V0)よりも小さい場合には中間転写ベルト8は狙いの位置に対してプラス方向に変位(図5の右側への位置ずれである。)していることになり、測距センサ81の出力値が所定値(電圧V0)よりも大きい場合には中間転写ベルト8は狙いの位置に対してマイナス方向に変位(図5の左側への位置ずれである。)に変位していることになる。
【0052】
また、本実施の形態では、通常の画像形成時(プリント時)等に、第1検知部80によって、異常なベルト寄りをも検知(異常検知)する。
詳しくは、図6を参照して、狙いの位置(位置ずれ0mm)に対して±0.5mmのベルト寄り(位置ずれ)を許容範囲(プリント許容範囲)として、第1検知部80の検知結果に基いて補正ローラ13によるベルト位置ずれ補正をおこなう。そして、中間転写ベルト8のベルト寄り(位置ずれ)が第1検知部80の検知範囲(±1mm)外になったときに、比較的大きなベルト寄りが生じているものとして、装置を強制的に停止するとともに、装置本体100の表示部(不図示である。)に異常検知の表示をおこなう。
なお、このような第1検知部80による異常検知とは別に、第2検知部88による異常検知もおこなわれる。このようにベルト寄りの異常検知を2重でおこなっているのは、第1検知部80の故障や制御ソフトの暴走等が生じても確実に異常検知をおこなうためである。
また、第1検知部80による異常検知は、電源投入後のイニシャライズ時にはおこなわれない。これについては、後で詳しく説明する。
【0053】
ここで、第1検知部80(第1検知手段)の近傍には、中間転写ベルト8の幅方向及び走行方向とは異なる方向の変位を規制する規制ローラ14が設置されている。具体的に、規制ローラ14は、揺動部材82(第1アーム部82a)と中間転写ベルト8との当接位置に近接されている(当接位置に対して中間転写ベルト8の走行方向上流側である。)。
このような構成により、第1検知部80(揺動部材82と中間転写ベルト8との当接位置)における、中間転写ベルト8の幅方向に直交する方向(図4の紙面垂直方向である。)の変位(振れ)が軽減される。すなわち、中間転写ベルト8は、規制ローラ14によってベルト張力が高められるために、第1検知部80の位置の直交方向の変位が規制される。したがって、第1検知部80によって、本来的に検知されるべき検知成分(幅方向の検知成分である。)の他に、幅方向及び走行方向とは異なる方向の変位成分も検知されてしまう不具合が軽減される。すなわち、第1検知部80による、中間転写ベルト8のベルト寄りに対する検知精度が向上する。
【0054】
そして、第1検知部80によって中間転写ベルト8の変位(変位量)が検知されると、その検知結果に基いて補正手段としての補正ローラ13によって中間転写ベルト8の幅方向の変位が補正される。
ここで、補正ローラ13は、図3を参照して、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに対して中間転写ベルト8の走行方向上流側であって、中間転写ベルト8の内周面に接するように配設されている。そして、補正ローラ13は、図4を参照して、不図示の駆動カムが所定角度動作することにより、揺動中心13aを中心にしてX1、X2方向に揺動するように構成されている。
このような構成により、図4において、中間転写ベルト8が右側に変位(ベルト寄り)したときには、その検知結果に基いて、補正ローラ13がX2方向に揺動されて中間転写ベルト8の変位補正がおこなわれる。これに対して、中間転写ベルト8が左側に変位したときには、その検知結果に基いて、補正ローラ13がX1方向に揺動されて中間転写ベルト8の変位補正がおこなわれる。これにより、中間転写ベルト8が蛇行することによりカラー画像の品質が低下する不具合や、中間転写ベルト8が幅方向に大きく変位(ベルト寄り)して他の部材に接触して中間転写ベルト8が破損する不具合、等が抑止される。
【0055】
また、本実施の形態における中間転写ベルト装置15は、図4を参照して、中間転写ベルト8の幅方向両端から所定距離離れた位置に、第2検知手段としての第2検知部88が設置されている。
図7に示すように、第2検知部88は、大きくベルト寄りした中間転写ベルト8に接触するアーム部材90、中間転写ベルト8の接触によるアーム部材の回転支軸90bを中心にした移動を光学的に検知するオーバラン検知センサ89(光学センサ)、アーム部材90の姿勢を維持するためのスプリング91、等で構成されている。
【0056】
詳しくは、図7を参照して、アーム部材90は、第1アーム部90a、回転支軸90b、第2アーム部90c等で構成されている。第1アーム部90aは、一端が正常位置にある中間転写ベルト8の幅方向端部から5mm離れた位置に配設されていて、他端が回転支軸90bに固設されている。回転支軸90bは、中間転写ベルト装置15の筐体(不図示である。)に回転自在に支持されている。第2アーム部90cは、一端が回転支軸90bに固設され、他端がオーバラン検知センサ89の発光部89aと受光部89bとの間に配設されている。第2アーム部90cの中央には、スプリング91の一端が接続されている。スプリング91の他端は筐体に接続されている。また、図示は省略するが、第2アーム部90cの一部は、スプリング91の付勢力によって筐体の位置決め部に当接している。
【0057】
このような構成により、アーム部材90は、中間転写ベルト8に5mmを超える大きなベルト寄りが生じたときに、中間転写ベルト8に当接して揺動することになる(図7中の実線矢印方向の揺動である。)。
そして、そのような状態が、オーバラン検知センサ89によって検知される。すなわち、第2アーム部90cの先端が発光部89aと受光部89bとの間から離間する状態を、発光部89aから発光された光が受光部89bで受光されることによって認識する。
そして、このように第2検知部88(オーバラン検知センサ89)によって異常検知がされたときに、中間転写ベルト8(駆動ローラ12A)の駆動の停止、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び第2転写ローラ19の駆動の停止、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び第2転写ローラ19に対する中間転写ベルト8の相対的な離間動作、等を強制的におこない、装置本体100の表示部にサービスマン・コールの表示(サービスマンによる修理を要する旨の表示である。)をおこなう。
なお、本実施の形態では、図3を参照して、2次転写ローラ19が中間転写ベルト8に対して接離自在に移動(矢印方向の移動である。)するように構成されている。
【0058】
また、本実施の形態における中間転写ベルト装置15は、図3及び図4を参照して、フォトセンサ90が設置されている。ここで、フォトセンサ90は、中間転写ベルト8上に担持されるトナー像(パッチパターン)の位置や濃度を検知するものであって、作像条件を最適化するためのものである。具体的に、上述した作像プロセスを経て中間転写ベルト8上に形成した各色のトナー像(パッチパターン)の位置ズレをフォトセンサ90のよって光学的に検知して、その検知結果に基いて露光部7による各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kへの露光タイミングを調整する。さらには、上述した作像プロセスを経て中間転写ベルト8上に形成したトナー像(パッチパターン)の濃度(トナー濃度)をフォトセンサ90のよって光学的に検知して、その検知結果に基いて現像部5内に収容された現像剤のトナー濃度を調整する。
【0059】
以下、図8〜図10にて、中間転写ベルト装置15でおこなわれる、特徴的な制御について詳述する。
図8を参照して、装置本体100の電源が投入(メインスイッチ・オン)されると(ステップS1)、まず、回転部材としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19の駆動が開始される(ステップS2)。さらに、中間転写ベルト8の駆動が開始される(ステップS3)。
その後、オーバラン検知センサ89(第2検知部88)による、中間転写ベルト8のベルト位置に対する異常検知が開始される(ステップS4)。このオーバラン検知センサ89による異常検知の制御フローについては、後で図9を用いて詳述する。
【0060】
その後、測距センサ81(第1検知部80)による、中間転写ベルト8の蛇行の検知(ベルト位置検知)が開始される(ステップS5)。そして、その検知結果に基いて、中間転写ベルト8の蛇行補正が開始される(ステップS6)。具体的には、補正ローラ13の傾斜角が調整制御される。
その後、中間転写ベルト8に対して、当接部材としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19が当接される(ステップS7)。具体的には、転写ローラ9Y、9M、9C、9Kが上方に移動して感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに中間転写ベルト8が当接するとともに、2次転写ローラ19が上方に移動して中間転写ベルト8に当接する(図3の状態である。)。
さらに、不図示の高圧電源から、中間転写ベルト8の周囲に配設された部材としての転写ローラ9Y、9M、9C、9K(1次転写ローラ)及び2次転写ローラ19に、それぞれ、高圧電圧が供給される(ステップS8)。
【0061】
その後、ベルト蛇行レディ判定がおこなわれ(ステップS9)、その判定結果が否でない場合に限り、測距センサ81(第1検知部80)による、中間転写ベルト8のベルト位置に対する異常検知が開始される(ステップS10)。以上で、本フローは終了する(ステップS11)。ただし、その後に、中間転写ベルト8上に担持されるトナー像の位置や濃度を検知して作像条件を最適化するなどの制御をおこなう場合がある。
なお、ステップS9の「ベルト蛇行レディ判定」の合否は、中間転写ベルト8の走行準備が完了したか否かの確認であって、(1)中間転写ベルト8の蛇行速度が±19.5(μm/秒)以内、(2)中間転写ベルト8の走行位置(幅方向の位置)が±0.5(mm)以内、の2つの条件が15秒間連続して満足されるかにより判定される。また、ベルト蛇行レディ判定は、イニシャライズ時のみおこなわれ、プリント開始後にはおこなわれない。
また、ステップS10の測距センサ81による異常検知の制御フローについては、後で図10を用いて詳述する。
【0062】
図9を参照して、オーバラン検知センサ89(第2検知部88)による異常検知(図8のステップS4である。)について詳述する。
まず、オーバラン検知センサ89がオンされているかが判別される(ステップS41)。そして、オーバラン検知センサ89がオンされている場合には、中間転写ベルト8の所定距離(5mm)を超えたベルト寄りが生じているものとして、中間転写ベルト8の駆動が停止されるとともに、回転部材としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19の駆動が停止される(ステップS42)。具体的に、中間転写ベルト8(駆動ローラ12A)を駆動するステッピングモータや、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを駆動するステッピングモータの、モータクロックが強制的に停止され、その後に各モータの励磁もオフされる。また、2次転写ローラ19を駆動するDCモータに対する電流供給が強制的に停止される。
【0063】
さらに、測距センサ81(第1検知部80)によるベルト位置検知が終了されて(ステップS43)、中間転写ベルト8の蛇行補正も終了される(ステップS44)。そして、測距センサ81(第1検知部80)による異常検知も終了される(ステップS45)。そして、転写ローラ9Y、9M、9C、9K(1次転写ローラ)及び2次転写ローラ19への、高圧電源からの電圧印加も切断(停止)される(ステップS46)。
さらに、中間転写ベルト8に対して、当接部材としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19が相対的に離間される(ステップS47)。具体的には、転写ローラ9Y、9M、9C、9Kが下方に移動して感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに対して中間転写ベルト8が離間するとともに、2次転写ローラ19が下方に移動して中間転写ベルト8に対して離間する。そして、本フローを終了する(ステップS48)。
【0064】
図10を参照して、測距センサ81(第1検知部80)による異常検知(図8のステップS10である。)について詳述する。
まず、中間転写ベルト8のベルト位置が測距センサ81の検知範囲外であるかが判別される(ステップS101)。なお、本実施の形態では、測距センサ81の検知範囲を、狙いのベルト位置に対して±1(mm)以内に設定している。
そして、中間転写ベルト8のベルト位置が測距センサ81の検知範囲外である場合には、中間転写ベルト8に第1検知部80の検知範囲を超えたベルト寄りが生じているものとして、転写ローラ9Y、9M、9C、9K及び2次転写ローラ19への、高圧電源からの電圧印加が切断(停止)される(ステップS102)。
【0065】
さらに、中間転写ベルト8に対して、当接部材としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19が相対的に離間される(ステップS103)。そして、中間転写ベルト8の駆動が停止され(ステップS104)、中間転写ベルト8の蛇行補正も終了される(ステップS105)。
さらに、オーバラン検知センサ89(第2検知部88)による異常検知も終了され(ステップS106)、測距センサ81(第1検知部80)による異常検知も終了される(ステップS107)。
そして、回転部材としての感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19の駆動が停止され(ステップS108)、本フローを終了する(ステップS109)。
なお、図10に示した、測距センサ81(第1検知部80)による異常検知の制御フローは、プリント時(画像形成時)にもおこなわれる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態では、装置本体100の電源が投入(メインスイッチ・オン)されてから所定時間が経過するまでの間(イニシャライズ時であって、中間転写ベルト8の走行準備が完了するまでである。)に、第1検知部80の検知結果に基いて補正ローラ13によって中間転写ベルト8の幅方向の変位を補正するとともに、第2検知部88によって中間転写ベルト8の所定距離(5mm)を超えた変位を検知したときには中間転写ベルト8の駆動(走行)を停止するように制御している。すなわち、イニシャライズ時であって中間転写ベルト8の走行準備の完了を確認するまで(イニシャライズ初期時である。)は、第1検知部80による異常検知をおこなわずに、第2検知部88による異常検知のみをおこなっている。
これにより、メンテナンス等により中間転写ベルト8の交換をおこなった場合に、作業者によって交換された中間転写ベルト8が狙いの位置から幅方向にずれて組み付けられてしまっても、本来的に中間転写ベルト装置15(又は画像形成装置100)に異常がなければ、電源投入後のイニシャライズ時に補正ローラ13(補正手段)によって中間転写ベルト8は狙いの位置に確実に補正されることになる。これに対して、本来的に中間転写ベルト装置15(又は画像形成装置100)に異常があったときには、その異常を第2検知部88にて確実に検知して装置100の稼動を強制的に停止するために、交換されたばかりの比較的高価な中間転写ベルト8を破損させる不具合を確実に抑止することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、イニシャライズ初期時に第2検知部88にて異常検知されたときに、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19(中間転写ベルト8に当接する回転部材である。)の回転駆動を停止するように制御している。これにより、強制的に駆動停止された中間転写ベルト8が、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19との摺動により破損する不具合が抑止される。同時に、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19が中間転写ベルト8との摺動により破損する不具合も抑止される。なお、上述の制御は、中間転写ベルト8の走行準備完了を確認した後やプリント時に第2検知部88にて異常検知されたときにもおこなわれるが、その場合にも中間転写ベルト8、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、2次転写ローラ19の破損が抑止される。
【0068】
また、本実施の形態では、イニシャライズ初期時に第2検知部88にて異常検知されたときに、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19(中間転写ベルト8に当接する当接部材である。)に対して中間転写ベルト8が相対的に離間するように制御している。これにより、交換されたばかりの中間転写ベルト8が、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19との摺動により破損する不具合が抑止される。同時に、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19が中間転写ベルト8との摺動により破損する不具合も抑止される。特に、第2検知部88による異常検知がされた後には、中間転写ベルト8の取り外し等をともなうメンテナンスがおこなわれるために、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19を中間転写ベルト8から退避させることにより、そのメンテナンス性が向上することになる。なお、上述の制御は、中間転写ベルト8の走行準備完了を確認した後やプリント時に第2検知部88にて異常検知されたときにもおこなわれるが、その場合にも中間転写ベルト8、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、2次転写ローラ19の破損が抑止される。
【0069】
また、本実施の形態では、イニシャライズ初期時に第2検知部88にて異常検知されたときに、転写ローラ9Y、9M、9C、9K及び2次転写ローラ19(中間転写ベルト8の周囲された部材である。)に対する電圧印加が切断されるように制御している。これにより、強制的に駆動停止された中間転写ベルト8に局所的に高圧電圧がかかり破損する不具合が抑止される。同時に、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19に局所的に高圧電圧がかかり破損する不具合も抑止される。なお、中間転写ベルト8に直接的に電圧を印加している場合には、第2検知部88にて異常検知されたときに、その電圧を切断することが好ましい。また、上述の制御は、中間転写ベルト8の走行準備完了を確認した後やプリント時に第2検知部88にて異常検知されたときにもおこなわれるが、その場合にも中間転写ベルト8、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、2次転写ローラ19の破損が抑止される。
【0070】
さらに、本実施の形態では、中間転写ベルト8の走行準備の完了を確認した後や、画像形成動作(プリント動作)が開始された後に、第1検知部80の検知結果に基いて補正ローラ13によって中間転写ベルト8の幅方向の変位を補正し、中間転写ベルト8が第1検知部80の検知範囲を超えて変位したときに中間転写ベルト8の走行を停止するとともに、第2検知部88によって中間転写ベルト8の所定距離を超えた変位が検知されたときに中間転写ベルト8の走行を停止するように制御している。すなわち、中間転写ベルト8の走行準備の完了を確認した後や、通常のプリント時には、第1検知部80による異常検知とともに、第2検知部88による異常検知をおこなっている(2段階の異常検知をおこなっている。)。
これにより、第1検知部80の故障や制御ソフトの暴走等が生じても、中間転写ベルト8の大きなベルト寄りを確実に検知(異常検知)することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、中間転写ベルト8の走行準備の完了を確認した後や、プリント時に、第1検知部80にて異常検知されたときに、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19の回転駆動を停止するように制御している。また、中間転写ベルト8の走行準備の完了を確認した後や、プリント時に、第1検知部80にて異常検知されたときに、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K及び2次転写ローラ19に対して中間転写ベルト8が相対的に離間するように制御している。さらに、中間転写ベルト8の走行準備の完了を確認した後や、プリント時に、第1検知部80にて異常検知されたときに、転写ローラ9Y、9M、9C、9K及び2次転写ローラ19に対する電圧印加が切断されるように制御している。これにより、中間転写ベルト8、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、2次転写ローラ19の破損が確実に抑止される。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態では、装置の電源が投入されてから中間転写ベルト8の走行準備が完了するまでの間に、第1検知部80(第1検知手段)の検知結果に基いて中間転写ベルト8(ベルト部材)の蛇行を補正するとともに、第1検知部80による異常検知はおこなわずに、第2検知部88(第2検知手段)によって中間転写ベルト8の大きな蛇行が検知されたときにのみ中間転写ベルト8の走行を強制的に停止している。これにより、中間転写ベルト8の交換をおこなった場合等であっても、画像形成装置を無駄に休止させたり無駄なメンテナンス作業を生じさせたりすることなく、中間転写ベルト8の蛇行や破損を確実かつ効率的に抑止することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、ベルト部材として中間転写ベルト8を用いたベルト装置(中間転写ベルト装置15)に対して本発明を適用した。これに対して、ベルト部材として転写搬送ベルトを用いたベルト装置(ベルト部材上で記録媒体を搬送しながら記録媒体上に複数色のトナー像を転写するベルト装置である。)に対しても本発明を適用することができる。さらに、ベルト部材として感光体ベルト(本実施の形態における感光体ドラムと同等に機能するものであって、無端ベルト形状の感光体である。)を用いたベルト装置に対しても本発明を適用することができる。これらの場合にも、第1検知手段及び第2検知手段を設置してイニシャライズ初期時に同様の制御をおこなうことで、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の画像形成装置における作像部を示す断面図である。
【図3】図1の画像形成装置に設置されるベルト装置を示す構成図である。
【図4】ベルト装置の一部を幅方向にみた概略図である。
【図5】第1検知手段を示す斜視図である。
【図6】ベルト部材の位置ずれ量と、第1検知手段の出力電圧と、の関係を示すグラフである。
【図7】第2検知手段を示す斜視図である。
【図8】ベルト装置でおこなわれる制御を示すフローチャートである。
【図9】図8に続く制御を示すフローチャートである。
【図10】図9に続く制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1Y、1M、1C、1K 感光体ドラム(像担持体)、
8 中間転写ベルト(ベルト部材)、
12A〜12C ローラ部材、
13 補正ローラ(補正手段)、
14 規制ローラ、
15 中間転写ベルト装置(ベルト装置)、
80 第1検知部(第1検知手段)、
81 測距センサ、
82 揺動部材、
83 スプリング、
88 第2検知部(第2検知手段)、
89 オーバラン検知センサ、
90 フォトセンサ、
100 画像形成装置本体(装置本体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に設置されるベルト装置であって、
所定方向に走行する無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材の幅方向の変位量を検知する第1検知手段と、
前記ベルト部材が幅方向に所定距離を超えて変位するのを検知する第2検知手段と、
前記ベルト部材の幅方向の変位を補正する補正手段と、
を備え、
電源が投入されてから前記ベルト部材の走行準備が完了するまでの間に、前記第1検知手段の検知結果に基いて前記補正手段によって前記ベルト部材の幅方向の変位が補正されるとともに、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときにのみ当該ベルト部材の走行が停止されることを特徴とするベルト装置。
【請求項2】
前記ベルト部材の走行準備が完了した後に、前記第1検知手段の検知結果に基いて前記補正手段によって前記ベルト部材の幅方向の変位が補正され、前記ベルト部材が前記第1検知手段の検知範囲を超えて変位したときに当該ベルト部材の走行が停止されるとともに、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに当該ベルト部材の走行が停止されることを特徴とする請求項1に記載のベルト装置。
【請求項3】
画像形成動作が開始された後に、前記第1検知手段の検知結果に基いて前記補正手段によって前記ベルト部材の幅方向の変位が補正され、前記ベルト部材が前記第1検知手段の検知範囲を超えて変位したときに当該ベルト部材の走行が停止されるとともに、前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに当該ベルト部材の走行が停止されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト装置。
【請求項4】
前記ベルト部材が前記第1検知手段の前記検知範囲を超えて変位したときに、前記ベルト部材に当接する回転部材の回転駆動が停止されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のベルト装置。
【請求項5】
前記ベルト部材が前記第1検知手段の前記検知範囲を超えて変位したときに、前記ベルト部材に当接する当接部材に対して当該ベルト部材が相対的に離間されることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項6】
前記ベルト部材が前記第1検知手段の前記検知範囲を超えて変位したときに、前記ベルト部材又はその周囲に配設された部材に対する電圧印加が切断されることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項7】
前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに、前記ベルト部材に当接する回転部材の回転駆動が停止されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項8】
前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに、前記ベルト部材に当接する当接部材に対して当該ベルト部材が相対的に離間されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項9】
前記第2検知手段によって前記ベルト部材の前記所定距離を超えた変位を検知したときに、前記ベルト部材又はその周囲に配設された部材に対する電圧印加が切断されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項10】
前記第2検知手段に係わる前記所定距離は、前記第1検知手段の検知範囲よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項11】
前記ベルト部材は、複数の像担持体にそれぞれ担持されたトナー像が転写される中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載のベルト装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−275800(P2008−275800A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117841(P2007−117841)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】