説明

ベンジル置換キノロンM1受容体ポジティブアロステリックモジュレーター

本発明は、M1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターであり、M1受容体が関与する疾患(例えば、アルツハイマー病、疼痛または睡眠障害)の治療において有用な一般式(I)
【化22】


を有するベンジル置換キノロン化合物に関する。本発明はまた、前記化合物を含む医薬組成物、並びに前記した化合物及び組成物のM1受容体が関与する疾患の治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンジル置換キノロン化合物類、その塩、前記化合物を含む医薬組成物及びヒト身体の治療におけるその使用に関する。特に、本発明は、ムスカリン性M1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターであり、アルツハイマー病及びムスカリン性M1受容体が媒介する他の疾患の治療において有用なベンジル置換キノロン化合物類に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、段階的記憶障害、言語及び視空間スキルの喪失及び行動欠陥を生じさせる高齢者を襲う一般的な神経変性疾患である。この疾患の特徴は大脳皮質、海馬、基底前脳及び脳の他の領域におけるコリン作動性ニューロンの変性、神経原線維変化及びアミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積を含む。Aβは、β−アミロイド前駆体タンパク質(APP)をβ−アミロイドタンパク質切断酵素(“β−セクレターゼ”または“BACE”)及びγ−セクレターゼによりプロセシングすることにより脳において産生される39−43アミノ酸である。APPがプロセシングされると、脳中にAβが蓄積する。
【0003】
コリン作動性神経伝達は、アセチルコリンのニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)またはムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)のいずれかへの結合を含む。コリン作動性機能低下がアルツハイマー病を患っている患者の認知欠陥の原因となると仮定されている。従って、アセチルコリン加水分解を阻害するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は米国においてアルツハイマー病患者の認知障害の治療に使用するために承認されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はアルツハイマー病患者で若干の認知強化を与えるが、この治療が根底の病気の症状を変化させるとは分かっていない。
【0004】
コリン作動性機能低下説を無効にする第2の可能性ある薬物療法の標的はムスカリン性受容体の活性化である。ムスカリン性受容体は身体全体に広く存在しており、中枢神経系では認知、挙動、感覚、運動及び自律神経性機能に関与している。5つの異なるムスカリン性受容体(M1〜M5)が哺乳動物において同定されている。
【0005】
大脳皮脂、海馬及び線条体中に広く存在しているムスカリン性M1受容体が認知プロセシングにおいて主要な役割を有していることは判明しており、アルツハイマー病の病態生理において役割を有していると考えられている。Eglenら,TRENDS in Pharmacological Sciences,2001,22:8,409−414を参照されたい。しかしながら、アルツハイマー病のために開発、研究されているM1リガンドは他のムスカリン性受容体リガンドに共通の副作用(例えば、発汗、嘔吐及び下痢)を生じる。Spaldingら,Mol.Pharmacol.,2002,61:6,1297−1302を参照されたい。
【0006】
加えて、対症治療を与えると知られているアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とは異なり、M1アゴニストはアルツハイマー病の根底にある疾患メカニズムを治療する可能性をも有している。アルツハイマー病のコリン作動性仮説はβ−アミロイド及び過リン酸化タウタンパク質の両方に結びついている。β−アミロイドが形成されると、ムスカリン性受容体とG−タンパク質のカップリングが損なわれる恐れがある。M1ムスカリン性受容体を刺激すると、神経保護性αAPP断片の形成が増加し、これによりAβペプチドの形成が防止されることが判明している。よって、M1アゴニストはAPPプロセシングを変更し、αAPP分泌を強化し得る。Fisher,Jpn.J.Pharmacol.,2000,84:101−112を参照されたい。
【0007】
ムスカリン性受容体が1つ以上のアロステリック部位を含むことが知られており、前記アロステリック部位は一次結合またはオルトステリック部位に結合するムスカリン性リガンドとの親和性を変化させ得る。例えば、S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2002,62:6,1491−1505;S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2000,58,194−207を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Eglenら,TRENDS in Pharmacological Sciences,2001,22:8,409−414
【非特許文献2】Spaldingら,Mol.Pharmacol.,2002,61:6,1297−1302
【非特許文献3】Fisher,Jpn.J.Pharmacol.,2000,84:101−112
【非特許文献4】S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2002,62:6,1491−1505;S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2000,58,194−207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、ムスカリン性M1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターである本発明の化合物はアルツハイマー病及びムスカリン性M1受容体が媒介する他の疾患の治療において有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、M1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターとして有用な一般式(I)
【0011】
【化1】

を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩またはそのエナンチオマーまたはジアステレオマーに関する。前記化合物は、M1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、疼痛障害及び睡眠障害)の治療を要する患者に対して一般式(I)を有する化合物を投与することによる哺乳動物の前記疾患または障害を治療するために有用である。
【0012】
本発明はまた、有効量の式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩またはそのエナンチオマーまたはジアステレオマー及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物、並びに本発明の化合物及び医薬組成物の前記疾患の治療における使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つの実施態様で、本発明は、一般式(I)
【0014】
【化2】

[式中、

(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノ及び(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている。)で置換されており;
、R、R及びRは独立して
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C3−7シクロアルキル、
(4)ハロゲン、
(5)シアノ、
(6)−O−R10、及び
(7)−S(O)−R11
(8)−NR1011
からなる群から選択され、前記したR、R、R及びRアルキルまたはシクロアルキルは場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)ヒドロキシ及び(c)−O−C1−6アルキルで置換されており;
、R、R及びRは独立して
(1)水素、
(2)−O−C1−6アルキル、
(3)−C1−6アルキル、
(4)ハロゲン、及び
(5)シアノ
からなる群から選択され;
10及びR11
(1)−C1−6アルキル、及び
(2)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記R10及びR11アルキルまたはアリール部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノ及び(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている。)で置換されており、
ただしR10及びR11が1つの窒素原子に結合しているとき、R10及びR11は一緒に連結して、環炭素原子の1個以上が窒素または酸素原子で置換されていてもよい4、5または6原子炭素環式鎖を形成してもよく;
HETは
(1)
【0015】
【化3】

(式中、X、X、X、X及びXは一緒になって5または6員芳香族環を形成し、X、X、X、X及びXの各々は独立して(1)CR12、(2)N、(3)NR13、(4)O及び(5)Sからなる群から選択され、
ただしXは結合であってもよく、
更に2つのR12基、または1つのR12基と1つのR13基が環上の隣接X原子に位置しているときには、これらは一緒に連結して(1)−O−CH−CH−O−、(2)−CR14=CR14−CR14=CR14−及び(3)−NR15−CR14=CR14−から選択される基を形成してもよい。)、または
(2)
【0016】
【化4】

(式中、Xは(1)CR1414’、(2)NR15及び(3)Oからなる群から選択され、ただしpが0のときにはXはCR1414’である。)
からなる群から選択され;
12及びR12’は
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)−O−C1−6アルキル、
(4)シアノ、
(5)ハロゲン、及び
(6)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記R12及びR12’アルキルまたはアリール部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノ、(c)−C1−6アルキル及び(d)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキル部分は場合により1個以上のハロで置換されている。)で置換されており;
13
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C3−8シクロアルキル
からなる群から選択され前記したアルキル及びシクロアルキルR13部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノまたは(c)ヒドロキシで置換されており;
14及びR14’は独立してR12及びR12’と同一の基から選択され;
15はR13と同一の基から選択され;
mは1、2、3または4であり;
nは0、1または2であり;
pは0、1または2である。]
を有する化合物並びにその医薬的に許容され得る塩及びそのエナンチオマー及びジアステレオマーに関する。
【0017】
本発明はまた、M1受容体が関与する疾患(例えば、アルツハイマー病、認知障害、疼痛障害及び睡眠障害)の治療を要する患者に対して有効量の一般式(I)を有する化合物を投与することによる哺乳動物の前記疾患の治療方法に関する。
【0018】
本発明はまた、有効量の式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0019】
本発明は更に、本発明の化合物を医薬的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わせることを含むM1受容体が関与する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、認知障害、疼痛障害及び睡眠障害)の治療用薬剤または組成物の製造方法に関する。
【0020】
式(I)を有する化合物の1つの実施態様では、Rは水素または−C1−6アルキルである。より好ましくは、Rは水素である。
【0021】
式(I)を有する化合物の好ましい実施態様では、R、R、R及びRは独立して水素及びハロゲンからなる群から選択される。好ましいR、R,R4及びRハロゲンはフルオロまたはブロモである。
【0022】
式(I)を有する化合物の好ましい実施態様では、R、R、R及びRは独立して水素及びハロゲンからなる群から選択される。好ましいR、R、R及びRハロゲンはフルオロまたはブロモである。1つの実施態様では、R、R、R及びRの各々は水素である。別の実施態様では、Rはハロゲンであり、R、R及びRは水素である。
【0023】
本発明の1つの亜群では、HETは構造:
【0024】
【化5】

を有する5または6員芳香族環である。
【0025】
この亜群の1つの実施態様では、X、X、X、X及びXの各々はCR12(ここで、R12は好ましくは水素、ハロゲン、シアノ、−O−C1−6アルキル、または場合により置換されている−C1−6アルキルからなる群から選択される。)である。
【0026】
別の実施態様では、X、X、X、X及びXの1つはNであり、他は各々CR12(ここで、各R12は好ましくは水素、ハロゲン、シアノ、または場合により置換されているC1−6アルキルからなる群から選択される。)である。
【0027】
別の実施態様では、X、X、X、X及びXの2つはNであり、他は各々CR12(ここで、各R12は好ましくは水素、ハロゲン、シアノ、または場合により置換されているC1−6アルキルからなる群から選択される。)である。
【0028】
これらの実施態様におけるX、X、X、X、X基の例には
【0029】
【化6】

が含まれる。
【0030】
別の実施態様では、Xは結合であり、X及びXの1つはNであり、1つはNR13であり、他は各々CR12(ここで、各R12は好ましくは水素、ハロゲン、シアノ、または場合により置換されているC1−6アルキルからなる群から選択される。)である。この実施態様におけるX、X、X、X、X基の例には
【0031】
【化7】

が含まれる。
【0032】
別の実施態様では、2つのR12基、または1つのR12基と1つのR13基が環上の隣接X原子に位置しているときには、これらは一緒に連結して
(1)−O−CH−CH−O−、
(2)−CR14=CR14−CR14=CR14−、及び
(3)−NR15−CR14=CR14
から選択される基を形成する。
【0033】
この実施態様におけるX、X、X、X、X基の例には
【0034】
【化8】

が含まれる。
【0035】
本発明の別の亜群では、HETは構造:
【0036】
【化9】

を有する5または6員ヘテロ環式環である。
【0037】
この亜群の1つの実施態様では、pは2であり、X
(1)CR1414’(ここで、R14及びR14’は好ましくは水素、または場合により置換されているアルキルである。)、
(2)NR15(ここで、R15は好ましくは場合により置換されているアルキルである。)、または
(3)O
からなる群から選択される。
【0038】
変数が式(I)またはその置換基中に2回以上現れる場合、別段の記載がない限り変数は毎回相互に独立している。
【0039】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アルキル」は、指定されている炭素原子数を有する飽和直鎖または分岐状炭化水素基を意味する(例えば、C1−10アルキルは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。)。本発明で使用するのに好ましいアルキル基は1〜6個の原子を有するC1−6アルキル基である。アルキル基の例にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。Cアルキルは結合を意味する。
【0040】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「シクロアルキル」は、指定されている炭素原子数を有する飽和環式炭化水素基を意味する(例えば、C3−12シクロアルキルは3〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。)。本明細書中で使用されている用語「シクロアルキル」には単環式、二環式及び三環式飽和炭素環、並びに架橋及び縮合炭素環系(例えば、スピロ縮合環系)が含まれる。
【0041】
本発明で使用するのに好ましいシクロアルキル基は3〜8個の炭素原子を有する単環式C3−8シクロアルキル基である。単環式シクロアルキル基の例にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれる。架橋シクロアルキル基の例にはアダマンチル及びノルボルニルが含まれる。縮合シクロアルキル基の例にはデカヒドロナフタレンが含まれる。
【0042】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アリール」は芳香族環式炭化水素基を意味する。好ましいアリール基は6〜10個の炭素原子を有する。用語「アリール」には多環系及び単環系が含まれる。本発明で使用するのに好ましいアリール基にはフェニル及びナフチルが含まれる。
【0043】
用語「アリール」には、部分的に芳香族である(すなわち、縮合環の1つが芳香族であり、他が非芳香族である。)縮合環式炭化水素環も含まれる。部分的に芳香族であるアリール基の例はインダニルである。
【0044】
用語「ハロ」または「ハロゲン」にはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。
【0045】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「ヘテロアリール」は、環炭素原子及び少なくとも1個の環ヘテロ原子(O、NまたはS)を有し、構成環の少なくとも1つが芳香族である環式または多環式基を意味する。好ましいヘテロアリール基は5〜12個の環原子を有する。より好ましいヘテロアリール基は5または6個の環原子を有する。本発明で使用するためのヘテロアリール基の例にはカルバゾイル、カルボリニル、クロメニル、シンノリニル、フラニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、イソベンゾフラニル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドラジニル、インジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ベンゾピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、トリアジニル及びトリアゾリル、並びにそのN−オキシドが含まれる。
【0046】
用語「ヘテロアリール」は、部分的に芳香族(すなわち、縮合環の1つが芳香族であり、他が非芳香族である。)である縮合環式ヘテロ環式環をも含む。部分的に芳香族であるヘテロアリール基の例はベンゾジオキソールである。
【0047】
本明細書中で定義されているヘテロアリール基が置換されている場合、置換基は、ヘテロアリール基の環炭素原子にまたは置換を可能とする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)に結合され得る。好ましくは、置換基は環炭素原子に結合している。また、ヘテロアリール基が明細書中に置換基として定義されている場合、結合点はヘテロアリール基の環炭素原子または結合を可能とする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)上にあり得る。好ましくは、結合は環炭素原子にある。
【0048】
本発明の化合物の幾つかは少なくとも1つの不斉中心を有する。分子上の各種置換基の種類に応じて追加の不斉中心が存在することがある。不斉中心を有する化合物によりエナンチオマー(光学異性体)及び/またはジアステレオマー(立体配置異性体)が生じ、混合物の形態及び純粋なまたは部分的に精製されている化合物としての考えられるエナンチオマー及びジアステレオマーのすべてが本発明の範囲に含まれると意図される。本発明は上記化合物のすべての異性体を包含すると意味する。
【0049】
本明細書中に記載されている化合物は1つ以上の二重結合を含み得、よってシス/トランス異性体及び他の配座異性体が生じ得る。本発明は上記した考えられる異性体のすべて及び前記異性体の混合物を含む。
【0050】
式(I)は、特定位置での明確な立体化学なしに上に示されている。本発明は式(I)を有するすべての立体異性体及びその医薬的に許容され得る塩を含む。
【0051】
エナンチオマー的またはジアステレオマー的に富む化合物の独立的合成またはそのクロマトグラフ分離は、本明細書中に記載されている方法を適当に修飾することにより当業界で公知のようになされ得る。その絶対立体化学は、結晶性生成物または所要により公知の絶対配置を有する不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化される結晶性中間体をX線結晶学にかけることにより決定され得る。
【0052】
所望により、化合物のラセミ混合物は、個々のエナンチオマーが単離されるように分離され得る。この分離は、当業界で公知の方法により、例えば化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物にカップリングさせてジアステレオマー混合物を形成した後、標準方法(例えば、分別結晶またはクロマトグラフィー)により個々のジアステレオマーを分離する。カップリング反応はしばしばエナンチオマー的に純粋な酸または塩基を用いる塩の形成である。次いで、ジアステレオマー誘導体は、付加したキラル残基を切断することにより純粋なエナンチオマーに変換され得る。これらの化合物のラセミ混合物は、キラル固定相を用いるクロマトグラフ方法によっても直接分離され得、この方法は当業界で公知である。
【0053】
或いは、化合物のエナンチオマーは、公知の立体配置を有する光学的に純粋な出発物質または試薬を用いて当業界で公知の方法により立体選択的に合成することにより得られ得る。
【0054】
一般的製造
本発明の化合物は、スキーム1に概説されている一般的手順に従って製造され得る。
【0055】
【化10】

【0056】
アニリンとエトキシメチレンマロン酸ジエチルのニート混合物を180℃でマイクロ波照射すると、エナミンが生ずる。混合物をフェニルエーテルで希釈し、250℃で照射すると、キノロンコアが生ずる。アルキル化剤の存在下で塩基で処理すると、N−置換キノロンが生じ、これを水酸化リチウムを用いて加水分解し、酸性後処理した後、カルボン酸が生ずる。化合物は、遷移金属触媒の存在下で適切なボロン酸とクロスカップリングすることにより本発明の化合物に変換される。
【0057】
上記合成シーケンスの間、関係する分子上の感受性または反応性基のいずれかを保護することが必要であったりまたは望ましいことがある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry,J.F.W.McOmie編,Plenum Press,1973;及びT.W.Greene & P/G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991に記載されているような慣用の保護基を用いてなされ得る。保護基は当業界で公知の方法により都合のよい後続段階で除去され得る。
【0058】
本発明の化合物及びその製造方法の具体的実施態様は本明細書中の実施例に記載されている。
【0059】
用語「実質的に純粋」は、単離物質が当業界で公知の分析技術により検定して少なくとも90%の純度、好ましくは95%の純度、より好ましくは99%の純度を有していることを意味する。
【0060】
本明細書中で使用されている用語「ムスカリン性M1受容体」は、Gタンパク質共役受容体のスーパーファミリーに由来するムスカリン性アセチルコリン受容体の5つのサブタイプの1つを指す。ムスカリン性受容体のファミリーは、例えばPharmacol.Ther.,1993,58:319−379;Eur.J.Pharmacol.,1996,295:93−102;及びMol.Pharmacol.,2002,61:1297−1302に記載されている。ムスカリン性受容体が1つ以上のアロステリック部位を含み、一次結合またはオルソステリック部位に結合するムスカリン性リガンドとのアフィニテイーを変更し得ることは知られている。例えば、S.Lazarenoら,Mol.Pharmacol.,2002,62:6,1491−1505を参照されたい。
【0061】
本明細書中で使用されている用語「ポジティブアロステリックモジュレーター」及び「アロステリック増強剤」は互換可能に使用され、受容体のアロステリック部位と相互作用して一次結合部位を活性化するリガンドを指す。本発明の化合物はムスカリン性M1受容体のポジティブアロステリックモジュレーターである。例えば、モジュレーターまたは増強剤は動物、特にヒトにおけるムスカリン性M1受容体のオルソステリック部位で内因性リガンド(例えば、アセチルコリンまたはキサノメリン)により生ずる応答を直接または間接的に増大させ得る。
【0062】
アロステリック受容体部位でのリガンドの作用は、当業者に公知のように「アロステリック三元複合体モデル」に従っても理解され得る。アロステリック三元複合体モデルは、ムスカリン性受容体のファミリーに関連してBirdsallら,Life Sciences,2001,68:2517−2524に記載されている。アロステリック結合部位の役割に関する一般的記載については、Christopoulos,Nature Reviews:Drug Discovery,2002,1:198−210を参照されたい。
【0063】
本発明の化合物はムスカリン性M1受容体のオルソステリックアセチルコリン部位とは異なるアロステリック結合部位に結合して、M1受容体のオルソステリック部位での内因性リガンドアセチルコリンにより生ずる応答を増大させると考えられている。また、本発明の化合物はムスカリン性M1受容体のキサノメリン部位とは異なるアロステリック部位に結合して、M1受容体のオルソステリック部位での外因性リガンドキサノメリンにより生ずる応答を増大させるとも考えられている。
【0064】
用語「医薬的に許容され得る塩」は、無機または有機の塩基及び無機または有機の酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性の塩基または酸から製造される塩を指す。本発明の化合物は、遊離塩基形態の化合物中に存在する酸官能基の数に応じてモノ、ジまたはトリ塩であり得る。遊離塩基及び無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、第一マンガン、第二マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は2つ以上の結晶構造で存在し得、水和物の形態もとり得る。医薬的に許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が含まれる。本発明の化合物が塩基性の場合、塩は無機酸及び有機酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性酸から製造され得る。前記酸には、酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸,グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸及び酒石酸が特に好ましい。
【0065】
本発明は、有効量の本明細書中に開示されている式(I)を有する化合物を投与することを含む前記活性を要する患者または被験者(例えば、哺乳動物)におけるM1アロステリックモジュレーターとしての前記化合物の使用に関する。ヒトに加えて、各種の他の哺乳動物が本発明の方法に従って治療され得る。
【0066】
本発明の化合物はアルツハイマー病の治療または回復において有用である。本発明の化合物はムスカリン性M1受容体が媒介する他の疾患、例えば睡眠障害、(急性疼痛、炎症性疼痛及び神経障害性疼痛を含めた)疼痛障害、及び(軽度認知障害を含めた)認知障害の治療または回復においても有用であり得る。本発明の化合物により治療され得る他の状態には、パーキンソン病、肺性高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、尿失禁、緑内障、(統合失調症による認知欠陥を含めた)統合失調症、21トリソミー(ダウン症候群)、脳アミロイドアンギオパチー、退行性認知症、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性大脳出血(HCHWA−D)、クロイツフェルト・ヤコブ疾患、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、頭部外傷、卒中、膵炎、封入体筋炎、他の末梢アミロイドーシス、糖尿病及びアテローム性動脈硬化症が含まれる。
【0067】
好ましい実施態様において、本発明の化合物はアルツハイマー病、認知障害、疼痛障害及び睡眠障害の治療において有用である。例えば、本発明の化合物は、アルツハイマー型認知症を予防するため、アルツハイマー型の早期、中期または後期認知症を治療するために有用であり得る。
【0068】
本発明の化合物が有用であり得る潜在的睡眠状態または障害には、睡眠の質の強化;睡眠の質の向上;睡眠維持の増大;被験者が眠ろうと試みた時間で割った被験者が眠っている時間から計算される値の上昇;睡眠の潜伏または開始の減少(寝入るのにかかる時間);寝入り難さの減少;睡眠連続性の増加;睡眠中に覚醒する回数の減少;夜間覚醒の減少;寝始めた後覚醒するまでの時間の減少;全睡眠量の増加;睡眠の細分化の減少;REM睡眠発作のタイミング、頻度または期間の変化;ステージ2睡眠の量及び%の増加;徐波睡眠の促進;睡眠中のEEG−デルタ活性の強化;昼間機敏さの増加;昼間傾眠の減少;過度の昼間眠気の治療または抑制;不眠;過眠症;ナルコレプシー;睡眠の中断;睡眠時無呼吸;覚醒;夜間ミオクローヌス;REM睡眠中断;時差ぼけ;交替勤務者の睡眠障害;睡眠異常;夜鷹症;うつ病、情緒/気分障害、並びに夢遊病及び夜尿症に関連する不眠、並びに老化に伴う睡眠障害;アルツハイマーの日没症候群;日周期リズムに関連する状態、並びに時間帯を横切る旅行及び交替勤務のローテーションスケジュールに関連する精神的及び肉体的障害;副作用としてREM睡眠を減少させる薬物に帰因する状態;非元気回復睡眠及び筋肉痛により発現される症候群、または睡眠中の呼吸異常に関連する睡眠時無呼吸;及び睡眠の質の低下により生ずる状態が含まれる。
【0069】
本発明の化合物が有用であり得る疼痛障害には、神経障害性疼痛(例えば、帯状疱疹後神経痛、神経損傷、“ジニア”(例:陰部神経痛)、幻肢痛、根引き抜き損傷、有痛性糖尿病性ニューロパシー、有痛性外傷モノニューロパシー、有痛性多発性ニューロパシー);(可能性として中枢神経系の任意のレベルの病巣に帰因する)中枢痛症候群;術後痛症候群(例えば、乳房切除術後症候群、開胸術後症候群、断端痛);骨及び関節痛(変形性関節症)、反復運動痛、歯痛、癌痛、筋筋膜痛(筋肉損傷、線維筋痛);術中痛(一般手術、婦人科手術)、慢性痛、月経困難症、並びに狭心症に関連する疼痛及び異なる起源の炎症性疼痛(例えば、変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性疾患、腱鞘炎及び痛風)、頭痛、偏頭痛及び群発頭痛、一次痛覚過敏、二次痛覚過敏、一次アロディニア、二次アロディニア、或いは中枢感作に帰因する他の疼痛が含まれる。
【0070】
本発明の化合物はジスキネジアを治療または予防するためにも使用され得る。更に、本発明の化合物は疼痛のオピオイド治療に対する耐性及び/または依存性を低下させるため、及び例えばアルコール、オピオイド及びコカインの禁断症状を治療するために使用され得る。
【0071】
本発明の化合物が投与される被験者または患者は通常、M1アロステリックモジュレーションを望んでいる男性または女性のヒトであるが、上記した障害の治療を望んでいる他の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、家兎、サル、チンパンジーまたは他の類人猿、或いは霊長類も含まれ得る。
【0072】
本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患または状態の治療において1つ以上の他の薬物と併用され得、こうした併用はいずれかの薬物の単独よりもより安全であるまたはより有効である。加えて、本発明の化合物は、本発明の化合物の副作用または毒性のリスクを治療、予防、コントロール、回復または軽減させる他の薬物の1つ以上と併用され得る。前記した他の薬物は、当該薬物について一般的に使用されているルート及び量で本発明の化合物と同時または順次投与され得る。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1つ以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。配合剤は、単位投与形態の配合品の一部として、または1つ以上の追加薬物を治療レジメンの一部として別々の剤形で投与するキットまたは治療プロトコルとして投与され得る。
【0073】
本発明の化合物の配合剤の例には、抗アルツハイマー病剤、例えばβ−セクレターゼ阻害剤;アルファ7ニコチンアゴニスト、例えばABT089、SSR180711及びMEM63908;γ−セクレターゼ阻害剤、例えばLY450139及びTAK 070;タウリン酸化阻害剤;Aβオリゴマー形成のブロッカー;5−HT4アゴニスト、例えばPRX−03140;5−HT6アンタゴニスト、例えばGSK 742467、SGS−518、FK−962、SL−65.0155、SRA−333及びキサリプロデン;5−HT1aアンタゴニスト、例えばレコゾタン;p25/CDK5阻害剤;NK1/NK3受容体アンタゴニスト;COX−2阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;イブプロフェンを含めたNSAID;ビタミンE;(抗アミロイドヒト化モノクローナル抗体を含めた)抗アミロイド抗体、例えばバピネズマブ、ACC001、CAD106、AZD3102、H12A11V1;抗炎症性化合物、例えば(R)−フルルビプロフェン、ニトロフルルビプロフェン、ロシグリタゾン、ND−1251、VP−025、HT−0712及びEHT−202;CB−1受容体アンタゴニストまたはCB−1受容体逆アゴニスト、例えばAVE1625;抗生物質、例えばドキシサイクリン及びリファンピン;N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト、例えばメマンティン、ネラメキサン及びEVT101;コリンエステラーゼ阻害剤、例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル、タクリン、フェンセリン、ラドスチギル及びABT−089;成長ホルモン分泌促進物質、例えばイブタモレン、メシル酸イブタモレン及びカプロモレリン;ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、例えばABT−834、ABT 829、GSK 189254及びCEP16795;AMPAアゴニストまたはAMPAモジュレーター、例えばCX−717、LY 451395、LY404187及びS−18986;MEM1414、HT0712及びAVE8112を含めたPDE IV阻害剤;GABA逆アゴニスト;AZD1080、SAR502250及びCEP16805を含めたGSK3β阻害剤;ニューロンニコチンアゴニスト;選択的M1アゴニスト;並びに微小管アフィニティー調節キナーゼ(MARK)リガンド;或いは、本発明の化合物の効果、安全性、便宜性を高めるかまたは本発明の化合物の望ましくない副作用または毒性を低下させる受容体または酵素に作用する他の薬物との配合剤が含まれる。
【0074】
本発明の化合物の配合剤の例には、疼痛治療用物質、例えば非ステロイド系抗炎症性物質、例えばアスピリン、ジンロフェナク、ジフルニサル、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク及びトルメチン;COX−2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシ、バルデコキシブ、406381及び644784;CB−2アゴニスト、例えば842166及びSAB378;VR−1アンタゴニスト、例えばAMG517、705498、782443、PAC20030、V114380及びA425619;ブラジキニンB1受容体アンタゴニスト、例えばSSR240612及びNVPSAA164;ナトリウムチャネルブロッカー及びアンタゴニスト、例えばVX409及びSPI860;(iNOS及びnNOS阻害剤を含めた)一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤、例えばSD6010及び274150;ラコサミドを含めたグリシン部位アンタゴニスト;ニューロンニコチンアゴニスト、例えばABT 894;NMDAアンタゴニスト、例えばAZD4282;カリウムチャネルオープナー;AMPA/カイニン酸受容体アンタゴニスト;カルシウムチャネルブロッカー、例えばジコノチド及びNMED160;GABA−A受容体IOモジュレーター(例えば、GABA−A受容体アゴニスト);マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤;血栓溶解剤;オピオイド鎮痛剤、例えばコデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン;好中球阻害因子(NIF);プラミペキソール、ロピニロール;抗コリン作動薬;アマンタジン;モノアミンオキシダーゼB15(“MAO−B”)阻害剤;5HT受容体アゴニストまたはアンタゴニスト;mGlu5アンタゴニスト、例えばAZD9272;アルファアゴニスト、例えばAGNXX/YY;ニューロンニコチンアゴニスト、例えばABT894;NMDA受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、例えばAZD4282;NKIアンタゴニスト;選択的セロトニン再取込み阻害剤(“SSRI”)及び/または選択的セロトニン及びノルエピネフリン再取込み阻害剤(“SSNRI”)、例えばデュロキセチン;三環式抗うつ作用薬、ノルエピネフリンモジュレーター;リチウム;バルプロエート;ガバペンチン;プレガバリン;リザトリプタン;ゾルミトリプタン;ナラトリプタン及びスマトリプタンとの配合剤が含まれる。
【0075】
本発明の化合物は、睡眠の質を高めるためにおよび睡眠障害や睡眠妨害を予防及び治療するために有用な化合物、例えば鎮静薬、催眠薬、不安除去薬、抗精神病薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、シクロピロロン、オレキシンアンタゴニスト、アルファ−1アンタゴニスト、GABAアゴニスト、5HT−2Aアンタゴニスト及び5HT−2A/2Cアンタゴニストを含めた5HT−2アンタゴニスト、ヒスタミンH3アンタゴニストを含めたヒスタミンアンタゴニスト、ヒスタミンH3逆アゴニスト、イミダゾピリジン、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン作動薬、他のオレキシンアンタゴニスト、オレキシンアゴニスト、プロキネチシンアゴニスト及びアンタゴニスト、ピラゾロピリミジン、T型カルシウムチャネルアンタゴニスト、トリアゾロピリジン等と一緒に投与され得、前記薬物としてアジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アルモダフィニル、APD−125、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスピロン、ブタバルビタール、ブタルバルビタール、カプロモレリン、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、水和クロラール、クロルジアゼポキシド、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼペート、クロレテート、クロザピン、クロナゼパム、シプラゼパム、デシプラミン、デキスクラモール、ジアゼパム、ジクロラールフェナゾン、ダイバルプロエックス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、EMD−281014、エプリバンセリン、エスタゾラム、エスゾピクロン、エスクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、ガボクサドール、グルテチミド、ハラゼパム、ヒドロキシジン、イブタモレン、イミプラミン、インディプロン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、LY−156735、マプロチリン、MDL−100907、メクロクアロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、メチプリロン、ミダフルル、ミダゾラム、モダフィニル、ネファゾドン、NGD−2−73、ニソバメート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォール、プロトリプチリン、クアゼパム、ラメルテオン、レクラゼパム、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、TAK−375、テマゼパム、チオリダジン、チアガビン、トラカゾレート、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフロペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ゾラゼパム、ゾピクロン、ゾルピデム及びその塩、並びにその組合せ等が例示される。或いは、本発明の化合物は物理的方法(例えば、光線治療または電気刺激)の使用と一緒に使用され得る。
【0076】
別の実施態様では、本発明の化合物は、レボドーパ(場合により、カルビドパまたはベンセラジドのような選択的脳外デカルボキシラーゼ阻害剤を含む。)、抗コリン作動薬、例えばビペリドン(場合により、塩酸塩または乳酸塩として)及び塩酸トリヘキシフェニジル(ベンズヘキソール)、COMT阻害剤、例えばエンタカポン、MOA−B阻害剤、抗酸化剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト及びドパーミン受容体アゴニスト、例えばアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリド及びプラミペキサールと一緒に使用され得る。
【0077】
本明細書中で使用されている用語「組成物」は、所定の量または比率で特定成分を含む製品及び特定量の特定成分の組合せから直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。医薬組成物に関連するこの用語は、1つ以上の活性成分及び不活性成分からなる担体を含む製品;及び2つ以上の成分の組合せ、複合体化または集合から、1つ以上の成分の解離から、または1つ以上の成分の他のタイプの反応または相互作用から直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。
【0078】
通常、医薬組成物は活性成分を液体担体及び/または微細な固体担体と均一及び均密に混合した後、必要ならば生成物を所望製剤に成形することにより製造される。式(I)を有する化合物である活性成分は、疾患のプロセスまたは状態に対して所望の効果を生じさせるのに十分な量で医薬組成物中に含まれている。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を医薬的に許容され得る担体と混合することにより製造される組成物を包含する。
【0079】
担体は、投与、例えば経口または(静脈内を含めた)非経口のために所望する製剤の形態に応じて広範囲の各種形態をとり得る。よって、本発明の医薬組成物は経口投与に適したばらばらの単位、例えば各々が所定量の活性成分を含有しているカプセル剤、カシェ剤または錠剤として提供され得る。更に、組成物は散剤、顆粒剤、溶液剤または水性液体中懸濁液剤、非水性液剤、水中油型エマルジョン剤もしくは油中水型エマルジョン剤として提供され得る。上記した一般的な剤形に加えて、式(I)で表される化合物またはその医薬的に許容され得る塩は制御放出手段及び/またはデリバリーデバイスによっても投与され得る。
【0080】
経口投与用医薬組成物は医薬組成物を製造するために当業界で公知の方法に従って製造され得る。医薬組成物は、医薬的に上品で口にあう製剤を提供するために甘味料、着香料、着色料及び保存料からなる群から選択される1つ以上の物質を含み得る。錠剤は、活性成分を錠剤の製造に適した非毒性の医薬的に許容され得る賦形剤と混合して含み得る。賦形剤の例は、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア;及び滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤にコーティングを被せていなくても、胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせて、長期間にわたり持続作用を与えるためにコーティングを公知技術により被せてもよい。
【0081】
本発明の化合物を含有する錠剤は、場合により1つ以上の補助成分または佐剤と一緒に圧縮または成形することにより製造され得る。圧縮錠は、適当な機械において自由流動形態(例えば、粉末または顆粒状)の活性成分を場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性または分散剤と混合して圧縮することにより製造され得る。成形錠は、適当な機械において不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を成形することにより製造され得る。各錠剤は約0.1〜約500mgの活性成分を含有していることが好ましく、各カシェ剤またはカプセル剤は約0.1〜約500mgの活性成分を含有していることが好ましい。
【0082】
経口投与用組成物は、活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合されてなる硬ゼラチンカプセル剤として、または活性成分が水または油性媒体(例えば、落花生油、流動パラフィンまたはオリーブ油)と混合されてなる軟ゼラチンカプセル剤としても提供され得る。
【0083】
他の医薬組成物には、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して活性物質を含有している水性懸濁液剤が含まれる。加えて、油性懸濁液剤は、活性成分を植物油(例えば、アラキス油、オリーブ油、ゴマ油または落花生油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に懸濁させることにより製剤化され得る。油性懸濁液剤は各種賦形剤をも含み得る。本発明の医薬組成物は、賦形剤(例えば、甘味料及び着香料)をも含んでいてもよい水中油型エマルション剤の形態をもとり得る。
【0084】
医薬組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液の形態、または前記した滅菌注射用溶液剤または分散液剤を即時調合するための滅菌散剤の形態であり得る。いずれの場合も、最終注射形態は滅菌でなければならず、容易に注射し得るように十分に流動性でなければならない。医薬組成物は製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない。好ましくは、医薬組成物は微生物(例えば、細菌及び真菌)の汚染作用から保護されていなければならない。
【0085】
本発明の医薬組成物は、エアゾール剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ダスティングパウダー等のような局所使用に適した形態であり得る。更に、組成物は経皮デバイスで使用するのに適した形態であり得る。これらの製剤は慣用の加工方法により製造され得る。例えば、クリーム剤または軟膏剤は、所望のコンシステンシーを有するクリーム剤または軟膏剤を作成すべく親水性材料及び水を約5〜約10重量%の化合物と混合することにより製造される。
【0086】
本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸内投与に適した形態でもあり得る。混合物が単位投与座剤を形成することが好ましい。適当な担体にはカカオ脂及び当業界で一般的に使用されている他の材料が含まれる。
【0087】
「医薬的に許容される」とは、担体、希釈剤または賦形剤が製剤の他の成分と相容性でなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならないことを意味する。
【0088】
用語「化合物の投与」または「化合物を投与する」は、治療を要する個人に対して本発明の化合物を個人の身体に導入され得る形態で治療有用な形態及び治療有用な量で与えることを意味する。前記形態には経口剤形、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液剤等;注入可能剤形、例えばIV、IM、IP等;経皮剤形、例えばクリーム剤、ゼリー剤、散剤またはパッチ剤;口腔内剤形;吸入用散剤、スプレー剤、懸濁液剤等;及び直腸内座剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
用語「有効量」または「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き出す当該化合物の量を意味する。
【0090】
本明細書中で使用されている用語「治療」または「治療する」は本発明の化合物の投与を意味し、(1)疾患の症状または徴候を患っているまたは呈している動物における疾患の抑制(すなわち、症状及び/または徴候の更なる発生の停止)、または(2)疾患の病理または徴候を患っているまたは呈している動物における疾患の回復(すなわち、症状及び/または徴候の逆転)が含まれる。
【0091】
本発明の化合物を含有する組成物は、有利には単位投与形態で提供され得、製薬業界に公知の方法により製造され得る。用語「単位投与形態」は、患者または患者に対して薬物を投与する人が全投与成分が収容されている1つの容器またはパッケージを開けるだけですみ、2つ以上の容器またはパッケージから成分を一緒に混合する必要がないようにすべての活性成分及び不活性成分が適当なシステム中で組み合わされている1つの用量を意味する。単位投与形態の典型的な例は、経口投与用錠剤またはカプセル剤、注射用1回投与バイアル、直腸内投与用座剤である。この単位投与形態のリストは決して限定するものと意図されず、単位投与形態の典型例を表しているにすぎない。
【0092】
本発明の化合物を含有する組成物は有利には、患者または患者に対して薬物を投与する人が実際の投与形態を作成するための説明書と一緒に活性成分または不活性成分、担体、希釈剤等であり得る2つ以上の成分が備えられているキットとして提供され得る。前記キットには必要なすべての物質及び成分が収容されており、または患者または患者に対して薬物を投与する人が独立して入手しなければならない材料または成分を使用または作成するための説明書を含んでいてよい。
【0093】
本発明の化合物が適応される障害または疾患を治療または回復させる場合、通常本発明の化合物を動物の体重1kgあたり約0.1〜約100mgの一日用量で投与すると満足な結果が得られ、前記した1日用量を1日1回で、2〜6回/日に分割して、または持続放出形態で投与することが好ましい。全1日用量は約1.0〜約2000mg/kg体重、好ましくは約0.1〜約20mg/kg体重である。70kgの成人の場合、全1日用量は通常約7〜約1,400mgである。この投与レジメンは最適の治療応答を与えるように調節され得る。化合物は1〜4回/日、好ましくは1〜2回/日のレジメンで投与され得る。
【0094】
単一投与形態を生ずるように担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、治療対象の宿主及び具体的投与モードに応じて異なる。例えば、ヒトに対して経口投与しようとする製剤は有利には約0.005mg〜約2.5gの活性物質を含有し、これは適切で有用な量の担体材料と配合されている。単位投与形態は通常約0.005〜約1000mgの活性成分、典型的には0.005mg、0.01mg、0.05mg、0.25mg、1mg、5mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgを含有し、1日1〜3回投与される。
【0095】
しかしながら、特定患者に対する具体的な用量レベル及び投与頻度は、変更可能であり、使用する具体的化合物の活性、該化合物の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与モード及び時間、排泄率、薬物の組合せ、具体的状態の重症度及び治療を受ける宿主を含めた各種要因に依存している。
【0096】
化合物のM1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターとしての有用性は下記するアッセイを含めた当業界で公知の方法により示され得る。このアッセイは、細胞内カルシウムをFLIPR384蛍光イメージグプレート読取機を用いて測定することによりアセチルコリンムスカリン性M1受容体またはCHOnfat細胞において発現させた他のムスカリン性受容体でモジュレーター活性を有する化合物を選択するように設計されている。このアッセイは、FLIPRを用いて基礎またはアセチルコリン刺激Ca2+レベルに対する1つまたは幾つかの濃度の試験化合物の効果を研究する。
【0097】
化合物を製造し、4分間予備温置する。その後、1つのEC20濃度のアセチルコリンを各ウェル(最終3nM)に添加する。各サンプルの細胞内Ca2+レベルを測定し、アセチルコリン対照と比較して、モジュレーター活性を調べる。
【0098】
細胞:CHOnfat/hM1、hM2、hM3またはhM4細胞を384ウェルプレートにおいて18,000細胞/ウェル(100μL)の密度でアッセイの前24時間平板培養する。CHOnfat/hM1及びCHOnfat/hM3増殖培地:90% DMEM(Hi Glucose);10% HI FBS;2mM L−グルタミン;0.1mM NEAA;Pen−Strep;及び1mg/ml ジェネテシンを添加する。M2Gqi5CHOnfat及びM4Gqi5CHOnfat細胞の場合、追加の600ug/mlのハイグロマイシンを添加する。
【0099】
装置:384ウェルプレート、120μL 添加プレート;96ウェルのWhatman 2ml Uniplateインキュベーター、37℃、5% CO;Skatron EMBLA−384プレート洗浄機;Multimekピペッティングシステム;Genesis Freedom 200システム;Mosquitoシステム;Temo Nanolitteピペッティングシステム;及びFLTPR384蛍光イメージプレート読取機を使用する。
【0100】
緩衝液:アッセイ緩衝液:20mM Hepes、1N NaOH中にまず溶解させた2.5mM プロベネシド(Sigma P−8761)、1% ウシ血清アルブミン(Sigma A−9647)を含むハンクス平衡塩類溶液。染料充填緩衝液:アッセイ緩衝液+1% ウシ胎児血清及びFluo−4AM/プルロニック酸混合物。DMSO(Molecular Probes F−14202)中2mM Fluo−4AMエステルストック。アッセイ中1μMの最終濃度のために緩衝液中の2uMの濃度。緩衝液中0.04%、アッセイ中0.02%の濃度の20% プルロニック酸溶液ストック。
【0101】
2mM Fluo−4AM(65μL)を20% プルロニック酸(130μL)と混合する。65mLの全容量に対して生じた溶液及びFBS(650μL)をアッセイ緩衝液を添加する。ポジティブ対照:4−Br−A23187:DMSO中10mM;最終濃度10μM。アセチルコリン:水中10mM、アッセイ緩衝液中20uM及び30uMの作業ストック、10μMの最終濃度。これを使用して、CHOK1/hM1細胞の最大刺激を調べる。アッセイの予備温置部分に20uM(2×)アセチルコリンを添加し、第2の部分に30uM(3×)ストックを添加する。(EC20)アセチルコリン:水中10mM、9nM(3×)の作業ストック、アッセイ中の最終濃度は3nMである。試験化合物で予備温置した後これを使用する。試験化合物を含む各ウェルにEC20アセチルコリンを添加して、モジュレーター活性を確認する。24ウェルは対照として3nM アセチルコリンのみを含有している。
【0102】
推定される化合物の活性の測定:
スクリーニングプレート:化合物をGenesis Freedom 200システムを用いて96ウェルプレート(カラム2−11)において滴定し、100% DMSO、15mMの濃度(150×ストック濃度)で始め、3倍連続希釈物を用いる。連続希釈化合物(1ul)を各ウェルに移すことにより4つの96ウェルプレートをMosquito Nanolitreピペッティングシステムを用いて384ウェルプレートと組み合わせ、1mM アセチルコリン(100×ストック濃度)を対照として添加する。アッセイ直前に、Temoを用いてアッセイ緩衝液(49μl)を384ウェルプレートの各ウェルに添加する。
【0103】
96ウェルのWhatman 2ml Uniplateにおいて、9nM アセチルコリン(3×)をスクリーニング化合物に対応するウェル及び対照ウェルにピペットで入れる。30uM アセチルコリン対照(3×)を対照ウェルに添加し、3×アゴニストプレートを384ウェルプレートに移す。
【0104】
細胞を緩衝液(3×100μL)で洗浄して、各ウェルに30μLの緩衝液を残す。Multimekを用いて、各ウェルに染料充填緩衝液(30μL)を添加し、37℃、5% COで最長1時間温置する。
【0105】
60分後、細胞を緩衝液(3×100μL)で洗浄して、各ウェルに30μLの緩衝液を残す。細胞プレート、スクリーニングプレート及びアゴニスト添加プレートをFLIPRのプラットフォーム上に載せ、ドアを閉じる。バッグランウンド蛍光及び基礎蛍光シグナルを調べるためのシグナル試験を実施する。所要によりレーザー強度を調節する。
【0106】
試験化合物と4分間予備温置すると、1mM アセチルコリン対照と比較することによりM1受容体に対するアゴニスト活性が調べられる。予備温置後、アセチルコリンのEC20値(最終3nM)を添加して、モジュレーター活性を調べる。
【0107】
ムスカリン性FLIPRアッセイの更なる記載は国際特許出願WO 2004/073639中に見つけることができる。
【0108】
特に、以下の実施例の化合物は上記アッセイにおいて活性を有しており、EC50値は通常10μM以下であった。この結果は、化合物のM1アロステリックモジュレーターとして使用する際の固有活性を示している。
【0109】
本発明の化合物を製造するための幾つかの方法が本明細書中のスキーム及び実施例に示されている。出発物質は、当業界で公知の手順に従って、または本明細書中に例示されているように作成される。本発明がより十分に理解されるように以下の実施例を提示する。これらの実施例は、例示にすぎず、決して本発明を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0110】
1−[4−(6−クロロピリジン−3−イル)−2−フルオロベンジル]−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸
【0111】
【化11】

【0112】
1−2
2−((2,5−ジフルオロフェニルアミノ)メチレン)マロン酸ジエチル
アニリン1−1(1.07g,0.835mL,8.3ミリモル)及びエトキシメチレンマロン酸ジエチル(2.7g,2.5mL,12.5ミリモル)を5mLバイアル中で合わせた。混合物にBiotage Initiatorマイクロ波で180℃で20分間照射した。周囲温度まで冷却した後、付加物1−2が混合物から沈殿した。固体を濾過により集め、ヘキサンで洗浄して、1−2(1.83g,73%)を結晶性白色固体として得た。エナミン1−2はヘキサン中に僅かしか溶解しないので、最少容量(〜10mL)の溶媒を洗浄するために使用した。物質を更に精製することなく次ステップで使用した。H NMR(CDCl,300MHz):11.07(br d,J=12.3Hz,1H),8.39(d,J=13.5Hz,1H),7.11(m,1H),7.02(m,1H),6.78(m,1H),4.33(q,2H),4.27(q,2H),1.38(t,3H),1.32(t,3H);MS(エレクトロスプレー):m/z 300.2(MH)。
【0113】
1−3
5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸エチル
エナミン1−2(0.46g,1.54ミリモル)を5mLバイアル中に装入し、ジフェニルエーテル(2.5mL)中に溶解した。混合物にBiotage Initiatorマイクロ波で250℃で6時間照射した。周囲温度まで冷却した後、環化生成物1−3が混合物から沈殿した。固体を濾過により集め、ヘキサンで洗浄して、1−3(115mg,30%)を結晶性白色固体として得た。キノロン1−3はヘキサン中に溶解しなかったので、大量(〜100mL)の溶媒を洗浄のために使用した。回収された高純度のエナミン1−2を再び加熱すると、更に1−3を得ることができた。H NMR(CDCl,300MHz):9.14(s,1H),7.44(m,1H),7.15(m,1H),4.53(q,2H),1.49(t,3H);MS(エレクトロスプレー):m/z 254.1(MH)。
【0114】
1−4
1−(4−ブロモ−2−フルオロベンジル)−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸エチル
キノロン1−3(2.03g,8.0ミリモル)を無水DMF(40mL)中に懸濁し、炭酸カリウム(3.32g,24.0ミリモル)、ヨウ化カリウム(66mg,0.4ミリモル)及び4−ブロモ−1−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼン(2.36g,8.8ミリモル)で処理した。周囲温度で24時間後、反応物を酢酸エチルと飽和水性NHCl溶液に分配した。層を分離し、水性層を酢酸エチルで1回抽出した。酢酸エチル層を合わせ、溶媒を真空中で除去した。冷MeOHで2回洗浄後、1−4を純粋な白色固体(2.28g,65%)として得た。H NMR(CDCl,300MHz):8.39(s,1H),7.31(dd,1H),7.28−7.20(m,2H),6.98(m,1H),6.85(app t,1H),5.49(app d,2H),4.39(q,2H),1.40(t,3H);MS(エレクトロスプレー):m/z 441.1(MH)。
【0115】
1−5
1−(4−ブロモ−2−フルオロベンジル)−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸
エチルエステル1−4(880mg,2.0ミリモル)をジオキサン(10mL)中に懸濁し、飽和水性LiOH溶液(2.0mL)で処理した。16時間後、反応物を酢酸エチル(20mL)を収容している分液漏斗中に注ぎ、3N 水性HClで酸性化した。生成物はいずれの層にも明らかに溶解し得なかったが、酢酸エチル層中に懸濁したままであった。層を分離し、水性層をEtOAc(2×20mL)で抽出した。有機層を合わせ、溶媒を真空中で除去して、カルボン酸1−5(810mg,98%)を白色粉末として得た。H NMR(CDCl,300MHz):14.28(s,1H),8.76(s,1H)7.44(m,1H),7.38−7.24(m,2H),7.16(m,1H),6.87(app t,1H),5.63(app d,2H);MS(エレクトロスプレー):m/z 413.0(MH)。
【0116】
1−6(実施例1)
1−[4−(6−クロロピリジン−3−イル)−2−フルオロベンジル]−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸
バイアルに臭化アリール1−5(150mg,0.364ミリモル)、ボロネートエステル(105mg,0.437ミリモル)、1M 炭酸セシウム溶液(0.73mL)及びTHF(2mL)を装入した。触媒のPd(PBu(4mg)を添加し、反応物をマイクロ波照射で160℃で10分間加熱した。冷却後、反応混合物をCHCl(〜60mL)、pH7緩衝液(〜30mL)及び水(30mL)を収容している分液漏斗に移した。CHCl層を除去し、水性層をCHCl(2×以上)で抽出した。合わせたCHCl層をセライトパッドを介して濾過し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、クロロピリジン1−6(108mg,67%)を黄色固体として得た。H NMRは異性体混合物を示している。H NMR(CDCl,300MHz):14.29(s,1H),8.78(s,1H),8.56(m,1H),7.79(m,1H),7.45(m,2H),7.33(m,1H),7.16(m,2H),6.87(app t,1H),5.68(br d,J=3.0Hz,2H);MS(エレクトロスプレー):m/z 445.1(MH)。
【実施例2】
【0117】
1−(2−フルオロ−4−(1−プロピル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル−5−フルオロ−1,4−ジヒドロオキソキノリン−3−カルボン酸
【0118】
【化12】

【0119】
2−2
{[(2−ブロモ−5−フルオロフェニル)アミノ]メチレン}マロン酸ジエチル
2−1(200g,1053ミリモル)及びエトキシメチレンマロン酸ジエチル(228g,1053ミリモル)をニートで合わせ、120℃に加熱した。2時間後、反応物を熱メタノール(2L)に注いだ。生じた混合物を10℃まで冷却し、濾過し、メタノールで洗浄した。生成物をN下、フィルター上で乾燥して、2−2(320g,84%)を2生成物で得た。MS(エレクトロスプレー):m/z 315.9(MH−CO)。
【0120】
2−3
8−ブロモ−5−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸エチル
ジフェニルエーテル(3.5L)を250℃に加熱し、2−2(320g,888ミリモル)を添加した。2時間後、反応物を室温まで冷却し、ヘプタン(2L)を添加した。混合物を濾過し、ヘプタンで洗浄した。生成物をN下、フィルター上で乾燥して、2−3(215g,77%)を得た。MS(エレクトロスプレー):m/z 313.9(MH)。
【0121】
2−4
5−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸エチル
2L容量のパール反応器において炭素担持パラジウム(14g,13.2ミリモル)、酢酸ナトリウム3水和物(30.3g,223ミリモル)及び2−3(70g,223ミリモル)を合わせた。混合物を真空/Nで3回脱ガスした後、100psiのHを充填した。反応物を室温で一晩攪拌した後、反応が完了した。混合物をセライトパッドを介して濾過し、酢酸で洗浄した。濾液を濃縮して酢酸を除去し、残渣を酢酸エチル中に溶解し、飽和水性NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥した。次いで、混合物を濾過し、濃縮して、2−4(19g,36%)を褐色固体として得た。H NMR(DMSO−d,300MHz):12.27(br s,1H),8.42(s,1H),7.62(m,1H),7.39(m,1H),7.09(m,1H),4.20(q,2H),1.24(t,3H);MS(エレクトロスプレー):m/z 236.1(MH)。
【0122】
2−5
1−(4−ブロモ−2−フルオロベンジル)−5−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸エチル
キノロン2−4(3g,12.7ミリモル)を無水DMF(40mL)中に懸濁し、炭酸カリウム(4.2g,15.0ミリモル)及び4−ブロモ−2−フルオロ−1−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼン(3.5g,12.7ミリモル)で処理した。周囲温度で24時間後、反応物を酢酸エチルと飽和水性NHCl溶液に分配した。層を分離し、水性層を酢酸エチルで1回抽出した。酢酸エチル層を合わせ、溶媒を真空中で除去した。冷MeOHで2回洗浄した後、2−5を純粋な白色固体(3.75g,70%)として得た。H NMR(CDCl,300MHz):8.50(s,1H),7.41(m,1H),7.34(dd,2H),7.25(s,1H),7.05(m,2H),6.86(m,1H),5.49(s,2H),4.39(q,2H),1.40(t,3H);MS(エレクトロスプレー):m/z 422.1(MH)。
【0123】
2−6
1−(2−フルオロ−4−(1−プロピル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル)−5−フルオロ−1,4−ジヒドロ−オキソキノリン−3−カルボン酸
マイクロ波バイアルにおいて臭化アリール2−5(100mg,0.23ミリモル)、ピラゾールボロン酸(35mg,0.23ミリモル)、1M CsCO溶液(0.5mL)及び触媒のPd(t−BuP)(3mg)をTHF(1mL)中で合わせた。混合物をマイクロ波照射下で160℃で10分間加熱した後、溶媒を蒸発させた。粗な生成物をジオキサン(10mL)中に懸濁し、飽和水性LiOH溶液(2.0mL)で処理した。16時間後、反応物を酢酸エチル(20mL)を収容している分液漏斗中に注ぎ、3N 水性HClで酸性化した。生成物はいずれの層にも明らかに溶解し得なかったが、酢酸エチル層中に懸濁したままであった。層を分離し、水性層をEtOAc(2×20mL)で抽出した。有機層を合わせ、溶媒を真空中で除去して、カルボン酸2−6(70mg.72%)を白色粉末として得た。H NMR(DMSO−d,300MHz):8.97(s,1H),8.2(s,1H),7.88(s,1H),7.65(m,1H),7.46(m,2H),7.32(m,1H),7.11(m,3H),5.64(s,1H),4.0(q2H),1.77(m2H),0.81(t,3H);MS(エレクトロスプレー):m/z 424.1(MH)。
【実施例3】
【0124】
8−フルオロ−1−{4−[6−(ジメチルアミノ)ピリジン−3−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸
【0125】
【化13】

【0126】
3−2
8−フルオロ−1−{4−[6−(ジメチルアミノ)ピリジン−3−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸
スキーム2に従って製造したフルオロピリジン3−1(200mg,0.51ミリモル)及びジメチルアミンの40重量%水溶液(1mL)を合わせ、マイクロ波照射下で150℃で5分間加熱した。溶媒を窒素流下で除去し、粗な生成物をmass−guided HPLCにより精製して、3−2(152mg,71%)を淡褐色固体として得た。H NMR(CDCl,300MHz):8.84(s,1H),8.50(d,J=2.1Hz,1H),8.40(m,1H),8.01(dd,J=9.3,2.1Hz,1H),7.54−7.48(m,5H),7.24(d,J=8.7Hz,1H),6.93(d,J=8.7Hz,1H),5.71(br d,J=2.4Hz2H),3.36(s,6H);MS(エレクトロスプレー):m/z 418.2(MH)。
【0127】
水溶液として入手できなかった幾つかの第1級及び第2級アミンもスキーム4に記載されている置換化学と適合であった。これらの場合、過剰のアミンを単にフルオロピリジン及び水(1mL)に添加し、同一の手順を適用して、3−2の各種アナログを得た。
【0128】
下記実施例の化合物は上記実施例に記載されているのと同様にして製造した。
【0129】
【表1】






















【0130】
明細書中、以下の略号を使用している。
Me:メチル
Et:エチル
t−Bu:tert−ブチル
Ar:アリール
Ph:フェニル
Bn:ベンジル
Ac:アセチル
aq:水性
h:時
min:分
MOH:金属水酸化物
THF:テトラヒドロフラン
MH:金属水素化物
MWI:マイクロ波照射
rt:室温
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
【0131】
本発明をある具体的実施態様を参照して記載し、説明してきたが、当業者は本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく手順及びプロトコルに各種の改変、変化、修飾、置換、削除または付加を加え得ることを認識している。従って、本発明は請求の範囲を合理的な限り広く解釈されるように請求の範囲により規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化14】

[式中、

(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、及び
(3)−CH−アリール
からなる群から選択され、前記したRアルキルまたはアリール部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノ及び(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている。)で置換されており;
、R、R及びRは独立して
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C3−7シクロアルキル、
(4)ハロゲン、
(5)シアノ、
(6)−O−R10、及び
(7)−S(O)−R11
からなる群から選択され、前記したR、R、R及びRアルキルまたはシクロアルキルは場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)ヒドロキシ及び(c)−O−C1−6アルキルで置換されており;
、R、R及びRは独立して
(1)水素、
(2)−O−C1−6アルキル、
(3)−C1−6アルキル、
(4)ハロゲン、及び
(5)シアノ
からなる群から選択され;
10及びR11
(1)−C1−6アルキル、及び
(2)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記R10及びR11アルキルまたはアリール部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノ及び(c)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている。)で置換されており、
ただしR10及びR11が1つの窒素原子に結合しているとき、R10及びR11は一緒に連結して、環炭素原子の1個以上が窒素または酸素原子で置換されていてもよい4、5または6原子炭素環式鎖を形成してもよく;
HETは
(1)
【化15】

(式中、X、X、X、X及びXは一緒になって5または6員芳香族環を形成し、X、X、X、X及びXの各々は独立して(1)CR12、(2)N、(3)NR13、(4)O及び(5)Sからなる群から選択され、
ただしXは結合であってもよく、
更に2つのR12基、または1つのR12基と1つのR13基が環上の隣接X原子に位置しているときには、これらは一緒に連結して(1)−O−CH−CH−O−、(2)−CR14=CR14−CR14=CR14−、及び(3)−NR15−CR14=CR14−から選択される基を形成してもよい。)、または
(2)
【化16】

(式中、Xは(1)CR1414’、(2)NR15及び(3)Oからなる群から選択され、ただしpが0のときにはXはCR1414’である。)
からなる群から選択され;
12及びR12’は
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)−O−C1−6アルキル、
(4)シアノ、
(5)ハロゲン、及び
(6)−(CH−アリール
からなる群から選択され、前記R12及びR12’アルキルまたはアリール部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノ、(c)−C1−6アルキル及び(d)−O−C1−6アルキル(ここで、アルキル部分は場合により1個以上のハロで置換されている。)で置換されており;
13
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル
からなる群から選択され前記アルキル及びシクロアルキルR13部分は場合により1個またはそれ以上の(a)ハロゲン、(b)シアノまたは(c)ヒドロキシで置換されており;
14及びR14’は独立してR12及びR12’と同一の基から選択され;
15はR13と同一の基から選択され;
mは1、2、3または4であり;
nは0、1または2であり;
pは0、1または2である。]
を有する化合物並びにその医薬的に許容され得る塩及びそのエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項2】
が水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R、R及びRが独立して水素及びハロゲンからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
、R、R及びRが独立して水素及びハロゲンからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
、R、R及びRが水素である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がハロゲンであり、R、R及びRが水素である請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
HETが
【化17】

である請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
、X、X、X及びXの各々がCR12(ここで、R12は水素、ハロゲン、シアノ、−O−C1−6アルキル、または場合により置換されているC1−6アルキルからなる群から選択される。)である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
、X、X、X及びXの1つがNであり、他は各々CR12(ここで、R12は水素、ハロゲン、シアノ、または場合により置換されているC1−6アルキルからなる群から選択される。)である請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
、X、X、X及びXの2つがNであり、他は各々CR12(ここで、R12は水素、ハロゲン、シアノ、または場合により置換されているC1−6アルキルからなる群から選択される。)である請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
、X、X、X、X基が
【化18】

から選択される請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
が結合であり、X、X、X及びXの1つがNであり、1つがNR13であり、他は各々CR12(ここで、R12は水素、ハロゲン、シアノ、または場合により置換されているC1−6アルキルからなる群から選択される。)である請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
、X、X、X、X基が
【化19】

からなる群から選択される請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
2つのR12基がまたは1つのR12基と1つのR13基とが環上の隣接X原子に位置しているとき、これらは一緒に連結して(1)−O−CH−CH−O−、(2)−CR14=CR14−CR14=CR14−、及び(3)−NR15−CR14=CR14−から選択される基を形成する請求項7に記載の化合物。
【請求項15】
、X、X、X、X基が
【化20】

からなる群から選択される請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
HETが
(2)
【化21】

である請求項1に記載の化合物
【請求項17】
pが2であり、Xが(1)CRHR14’、(2)NR15または(3)Oからなる群から選択される請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
1−[4−(6−クロロピリジン−3−イル)−2−フルオロベンジル]−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−(2−フルオロ−4−(1−プロピル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル)−5−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−{4−[6−(ジメチルアミノ)ピリジン−3−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−(ビフェニル−4−イルメチル)−8−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−(ビフェニル−4−イルメチル)−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−(ビフェニル−4−イルメチル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−(ビフェニル−4−イルメチル)−5−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[(2’−フルオロビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[(3’−フルオロビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1−{[4’−(トリフルオロメチル)ビフェニル−4−イル]メチル}−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(5−フルオロピリジン−2−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[(3−クロロビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[(3−フルオロビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[(2’−シアノビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[(3−フルオロビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[(3−フルオロビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[2−フルオロ−4−(6−メトキシピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[2−フルオロ−4−(5−フルオロ−6−メチルピリジン−2−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[2−フルオロ−4−(1−メチル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(3−5−ジメチル−1H−ピラゾル−4−イル)−2−フルオロベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[2−フルオロ−4−(1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[2−フルオロ−4−(2−フルオロピリジン−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[2−フルオロ−4−(3−フルオロピリジン−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[2−フルオロ−4−(2−メトキシピリミジン−5−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)−2−フルオロベンジル]−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(1−ベンゾフラン−2−イル)−2−フルオロベンジル]−5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1H−インドル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−{2−フルオロ−4−[6−(ジメチルアミノ)ピリジン−3−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[2−フルオロ−4−(3−フルオロピリジン−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[2−フルオロ−4−(6−フルオロピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−(2−フルオロ−4−ピリミジン−5−イルベンジル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[2−フルオロ−4−(2−フルオロピリジン−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−[2−フルオロ−4−(5−メトキシピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−1−(2−フルオロ−4−ピリジン−3−イルベンジル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−[(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1−イソブチル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1−プロピル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1−メチル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メチル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5,8−ジフルオロ−4−オキソ−1−[4−(1,2,3−チアジアゾル−4−イル)ベンジル]−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
4−オキソ−1−[4−(1,2,3−チアジアゾル−4−イル)ベンジル]−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−4−オキソ−1−[4−(1,2,3−チアジアゾル−4−イル)ベンジル]−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−4−オキソ−1−[4−(1,2,3−チアジアゾル−4−イル)ベンジル]−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[4−(1−イソブチル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−{4−[6−(4−メチルピペラジン−1−イル)ピリジン−3−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[4−(6−メトキシピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1−プロピル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(6−メトキシピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−(4−{6−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ピリジン−3−イル}ベンジル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[4−(1−メチル−1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−4−オキソ−1−(4−ピリジン−3−イルベンジル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[4−(6−モルホリン−4−イルピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1H−ピラゾル−4−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(1−ベンジル−1H−ピラゾル−4−イル)−2−フルオロベンジル]−8−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[4−(6−フルオロピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(6−クロロピリジン−3−イル)ベンジル]−8−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−{4−[6−(ジメチルアミノ)ピリジン−3−イル]ベンジル}−8−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(6−アゼチジン−1−イルピリジン−3−イル)ベンジル]−8−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
1−[4−(6−クロロピリジン−3−イル)ベンジル]−5−フルオロ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−{2−フルオロ−4−[1−(3−メチルブチル)−1H−ピラゾル−4−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−[4−(6−フルオロピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−4−オキソ−1−[4−(6−ピロリジン−1−イルピリジン−3−イル)ベンジル]−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
8−フルオロ−1−[2−フルオロ−4−(1−メチル−1H−ピラゾル−5−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
4−オキソ−5−ピペラジン−1−イル−1−[4−(6−ピペラジン−1−イルピリジン−3−イル)ベンジル]−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−モルホリン−4−イル−1−[4−(6−モルホリン−4−イルピリジン−3−イル)ベンジル]−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−(メチルアミノ)−1−{4−[6−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−{4−[6−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル]ベンジル}−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−1−(4−{6−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ピリジン−3−イル}ベンジル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸、
5−フルオロ−4−オキソ−1−(4−ピリジン−3−イルベンジル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物並びにそのエナンチオマー及びジアステレオマー及びその医薬的に許容され得る塩。
【請求項19】
有効量の請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
アルツハイマー病、認知障害、疼痛障害または睡眠障害の治療を要する患者に対して有効量の請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む前記患者におけるアルツハイマー病、認知障害、疼痛障害または睡眠障害の治療方法。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物を医薬用担体または希釈剤と組み合わせることを含むアルツハイマー病、認知障害、疼痛障害または睡眠障害の治療用薬剤の製造方法。

【公表番号】特表2009−542663(P2009−542663A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518253(P2009−518253)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/014943
【国際公開番号】WO2008/002621
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】