説明

ペンタフルオロフェニルイミドアニオンからなる塩、及びイオン性液体としてのそれの使用

本発明の対象は、以下の一般式
【化1】


[式中、R1は、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状のフッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアルキル基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアリール基、2−ニトロアリール基、4−ニトロアリール基、2,4−ジニトロアリール基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたベンジル基を表すか、CN、CO−H、CO−アリール基、またはCO−アルキル基を表すか、R1は、−SO2−R2であり、この際、R2は、炭素原子数1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基、またはアリール基、またはベンジル基を表し、これらのアルキル基、ベンジル基またはアリール基はフッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されている]
で表される、イオン性液体中にアニオンとして使用できる新規の弱塩基性フッ素化ペンタフルオロフェニルイミドアニオンである。本発明によりイオン性液体は、
例えば、合成用の溶媒として、クロマトグラフィの移動相及び/または固定相として、バッテリー、ガルバニー電気、燃料電池及び蓄電池のための電解質システムとして適している。代替的な本発明の方法は、ケテン−N,N−ジアセタールまたはアルキル−もしくはアリール−アルキリデン−ホスホランと酸との反応によってイオン性液体を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタフルオロフェニルイミド−アニオンと任意のカチオンからなる塩、それの製造方法、及び疎水性イオン性液体としてのそれの使用に関する。
【0002】
本発明は、電気化学、材料化学、有機化学及び反応技術の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン性液体は、有機カチオンと、無機もしくは有機アニオンとからなる化合物である。これらは中性の分子を含まず、そして100℃以下の融点を有する。イオン性液体として使用される多数の化合物が従来技術から既知である。これらは特に、一連の特許及び特許出願の対象でもある。
【0004】
これらの刊行物の一部は、疎水性イオン性液体を開示しており、この際、アニオンまたはカチオン中にハロゲン原子または長鎖アルキル鎖を導入することによってその疎水性を高める試みがしばしば行われている。例えば、特開2005-14 332 A1号公報は、フルオロアルキルスルフェートを含むアニオンを有するイオン性液体を開示している。独国特許出願公開第103 33 239 A1号明細書は、アニオンが、中でもビス−パーパーフルオロアルキルスルホニルイミド[N(SO2Rf)2-またはトリス−パーフルオロアルキルスルホニルメチド[C(SO2Rf)3-であることができるイオン性液体を記載している。独国特許出願公開第102 58 671 A1号明細書は、ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオンを有するイオン性液体を開示している。
【0005】
ジペンタフルオロフェニルアミンは非常に疎水性が高く、塩基性が低いことが当業者には既知である。この化合物は、R Koppang, Acta Chem. Scand 1971, 3067-3071に従い、次の反応式(ワンポット反応としても可能)によりC66と金属アミド、好ましくはLiNH2とを反応させることによって製造することができる。
【0006】
【化1】

【0007】
この際、Xは、例えば、ハロゲン原子、硝酸イオン、硫酸水素イオンまたはリン酸二水素イオンを表す。
【0008】
しかし、従来技術には、イオン性液体の製造のためのジペンタフルオロフェニルアミン及びそれの対応するアニオン(ジペンタフルオロフェニルアニリドまたはデカフルオロジフェニルイミド)の適性についての示唆はない。
【0009】
イオン性液体は、例えば、バッテリー、蓄電池、ガルバーニ電池及び燃料電池中の電解質システムの成分としてまたは合成用の溶剤として使用される。
【0010】
幾つかの既知のイオン性液体は、イミダゾリウムカチオンを含む。これらのイオン性液体は、貴金属で触媒した合成のための溶剤として特に有利に使用することができる。例えば、ドイツ特許出願公開第10 2004 034 543 A1号明細書は、イオン性液体中のカチオンとして使用するためのクロライド含有率が低いオニウム塩の製造方法を記載している。これらのカチオンは、中でもイミダゾリニウムカチオンであり、例えば2H−イミダゾリニウムカチオンである。更に、国際公開第01/77081 A1号パンフレットは、酸またはアルコールを求核性N−ヘテロ環式カルベン前駆体と反応させることによって、2H−イミダゾリニウム塩に基づくイオン性液体の製造方法を開示している。2H−イミダゾリウムカチオンに基づくイオン性液体は、一方では、貴金属で触媒する合成用の非常に良好な溶媒であるが、他方では、特に白金触媒の存在下に、貴金属中心への酸化的付加及びカルベン錯体の形成を伴いながら、イミダゾリウムカチオンのC2原子のC−H活性化を招きやすい。これは、しばしば、触媒活性の不所望な損失を招く。2−アルキル−イミダゾリウムに基づくイオン性液体はこの点ではより安定している。
【0011】
イオン性液体の性質、例えば融点、熱的及び電気化学的安定性及び粘度は、アニオンの性質に強く影響される。これに対し、極性及び親水性もしくは親油性は、カチオン/アニオンの対の適当な選択によって変化させることができる。
【0012】
イオン性液体の使用の際は、それの純度は非常に重要である。イオン性液体中の不純物は、例えば、化学反応の進行に不利に影響を与える恐れがある。それ故、イオン交換の際の平衡の移動によってではなく、定量的な化学反応によってアニオンを導入することを可能する方法に対する要望がある。更に、多相触媒反応(水との非混合性)での使用または電気化学及び分析の応用分野での使用に関して新しい可能性を供する、最大の極性を有する新規の極めて疎水性/親油性の高いイオン性液体に対する大きな要望がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、イオン性液体中にアニオンとして使用できる、新規の弱塩基性のフッ素化イミドアニオンを含む塩、並びにそれの製造方法を提供することである。この際、上記の弱塩基性とは、対応する酸のpKA値が、DMSO中で測定して15またはそれ未満であるアニオンのことである。本発明の更に別の課題の一つは、上記の新規の弱塩基性フッ素化イミドイオンをアニオンとして、そしてイミダゾリウムイオン、イミダゾリジニウムイオン、ベンズイミダゾリウムイオン、アルキル−アルキリデン−ホスホランまたはアリール−アルキリデン−ホスホランをカチオンとして含むイオン性液体、並びにそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
弱塩基性フッ素化イミドアニオンを含む塩を提供する上記課題は、
a) 以下の一般式
【0015】
【化2】

【0016】
[式中、
1は、線状もしくは分枝状で、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化された炭素原子数1〜20のアルキル基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアリール基、2−ニトロアリール基、4−ニトロアリール基、2,4−ジニトロアリール基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたベンジル基を表すか、あるいは
CN、CO−H、CO−アリール基またはCO−アルキル基を表すか、あるいは
1は、−SO2−R2を表し、この際、
2は、分枝状かもしくは非分枝状の炭素原子数1〜20のアルキル基、またはアリール基もしくはベンジル基を表し、これらのアルキル基、ベンジル基またはアリール基は、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されている]
で表されるアニオン、及び
b) アルカリ金属カチオン及びアルカリ土類金属カチオンの群からの無機カチオン、または第四有機カチオンから選択される、カチオン、
を含む化合物によって解決される。
【0017】
驚くべきことに、ペンタフルオロフェニル基を含むフッ素化イミドアニオンIを含む塩が、これまで既知のイミドアニオンを比べて、弱塩基性であり、そして遊離のイオンの形で安定していることが見出された。この際、解離のイオンとは、結晶性もしくは溶融した状態で、アニオン−カチオン対に完全に解離して存在するイオンのことである。対応する酸のpKA値が15またはそれ以下であるイミドアニオンが弱塩基性として見なされる。それによって、本発明のイミドアニオンは、イオン性液体の製造に適している。
【0018】
本発明によるアニオンN(C65)R1[式中、R1及びR2は上に定義した通りである]は、好ましくは二置換以上フッ素化されている。特に好ましいものは、R1及びR2が上に定義した通りであり、そしてアルキル基、アリール基またはベンジル基が過フッ素化されている、アニオン-N(C65)R1である。
【0019】
場合により、R1及びR2に挙げた上記の基は、これらがアルキル基、アリール基またはベンジル基の場合には、それらの側に、アルキル基及びアリール基から選択される一つ乃至二つの置換基を有する。
【0020】
1またはR2がアルキル基、アリール基またはベンジル基であり、そしてこれらのアルキル基、アリール基またはベンジル基に更に別のアルキル基が結合する場合には、これらの更に別のアルキル基は、線状または分枝状であることができ、そして1〜20個の炭素原子を含むことができる。
【0021】
1またはR2がアルキル基、アリール基またはベンジル基であり、そしてこれらのアルキル基、アリール基またはベンジル基に更に別のアルキル基またはアリール基が結合している場合には、これらの更に別のアルキル基またはアリール基は、更に、部分的にもしくは完全にフッ素化されていることができる。
【0022】
1またはR2がアルキル基、アリール基またはベンジル基を表し、そしてこれらのアルキル基、アリール基またはベンジル基に更に別の二つのアルキル基または更に別の二つのアリール基が結合している場合には、これらの更に別の両アルキル基または更に別の両アリール基は同一かまたは異なることができる。
【0023】
HN(C652の化合物は確かに既知のものであるが、イオン性液体の製造にそれを使用することは新規であることを強調しておく。
【0024】
-N(C65)R1アニオン[式中、R1は上に定義した通りである]を含むイオン性液体は、従来技術のものと比べて、より低い粘度及びより低い融点を有する。更に、これらは揮発性がより低く、そして有機物質に対する高い固有の親油性及び溶解性を持つか、または高い疎水性、すなわち水との非混合性または低い飽和濃度を有する。
【0025】
これらの有利な性質の原因は、パーフルオロアルキル−及びパーフルオロアルキルスルホニル基と比べて、より分極(polarisierbar)し易いペンタフルオロフェニル基にある。
【0026】
第四アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、グアニジニウムイオン、イミダゾリニウムイオン、イミダゾリジニウムイオン、ベンズイミダゾリウムイオン及びN−オルガノ−ピリジニウムイオンの群から選択される有機カチオンが好ましい。
【0027】
アンモニウムイオンは、特に好ましくは、次式
[NR3456+ (II)
[式中、R3、R4及びR5は、互いに独立して、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、またはアリール基、またはベンジル基を表し、そして
6は、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基を表す]
で表される化合物から選択される。
【0028】
ホスホニウムイオンは、特に好ましくは、次式
[PR3457+ (III)
[式中、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、そしてR7は、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、またはアリール基、またはベンジル基を表す]
で表される化合物から選択される。
【0029】
グアニジニウムイオンは、特に好ましくは、次式
【0030】
【化3】

【0031】
[式中、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、互いに独立して、H原子、または炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、またはアリール基を表す]
で表される化合物から選択される。
【0032】
本発明の枠内において、特に好ましいものは、R8、R9、R10、R11、R12及びR13が、互いに独立して、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基を表すグアニジニウムイオンである。
【0033】
イミダゾリウムイオンは、特に好ましくは、以下の一般式
【0034】
【化4】

【0035】
[式中、R3及びR4は上に定義した通りであり、そして
14、R15、R16及びR17は、互いに独立して、それぞれH原子、炭素原子数1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基、アリール基、またはベンジル基を表す]
で表されるイオンから選択される。
【0036】
イミダゾリジニウムイオンは、好ましくは、以下の一般式
【0037】
【化5】

【0038】
[R3、R4、R14、R15、R16及びR17は上に定義した通りである]
で表されるイオンから選択される。
【0039】
ベンズイミダゾリニウムカチオンは、好ましくは、以下の一般式
【0040】
【化6】

【0041】
[式中、R3、R4、R14及びR15は上に定義した通りであり、そして
18及びR19は、互い独立して、H原子、F、Cl、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、アリール基またはベンジル基を表す]
で表されるイオンから選択される。
【0042】
N−オルガノ−ピリジニウムイオンは、好ましくは、以下の一般式
【0043】
【化7】

【0044】
[式中、R20は、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、アリール基またはベンジル基を表し、そして
21、R22、R23、R24及びR25は、互いに独立して、H原子、F、Clまたは炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基を表す]
で表されるカチオンから選択される。
【0045】
本発明の枠内において、特に好ましいものは、R20が、炭素原子数1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基を表すN−オルガノ−ピリジニウムイオンである。
【0046】
好ましくは、上記の定義に従う-N(C65)R1アニオンのR1が、フッ素化されたフェニル−、ナフチル−、アリールスルホニル−またはアルキルスルホニル基である本発明による塩がイオン性液体に使用される。本発明のイオン性液体のカチオンとして、イミダゾリウム−、イミダゾリジニウム−またはベンズイミダゾリニウムイオンが選択される場合には、R3及びR4基が上記の定義に従い異なるカチオンが好ましい。
【0047】
これに対して、カチオンとしてアンモニウムイオンまたはホスホニウムイオンが選択される場合には、上記の式(II)または(III)に従う非対称に置換されたイオンが好ましい。この際、非対称に置換されたとは、R3、R4、R5、R6 またはR7基が上記の定義に従い、カチオンが分子面に対して垂直な鏡面対称軸を持たないように選択されたアンモニウムイオンまたはホスホニウムイオンのことである。
【0048】
非塩基性過フッ素化ビスオルガニルアミドの製造方法を提供するという課題は、本発明に従い、ペンタフルオロフェニルアニリド(2−)合成要素[N−C652-を、
a) C−求電子体としてのフッ素化芳香族類(この際、フッ化物が脱離基となる)、または
b) スルホン酸誘導体、
と、有機溶剤中で反応させることによって解決される。
【0049】
これは、本発明では、H2N−C65と金属化剤(金属アミド、金属ヒドリド、金属アルキル、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属(元素状)/金属、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属)との反応によって行われる。それに次いで、金属化されたアニリドM−NH−C65(式中、“M”は金属を表す)を、求電子体、すなわち
− R2で置換されたスルホン酸−塩化物、−フッ化物、−エステル、−酸無水物(R2は上に定義した通りである)の群からの求電子体、または
− 部分的にもしくは完全にフッ素で置換された芳香族類、例えば(以下のものが全てではないが)C66、C108(パーフルオロナフタレン)、1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(サンガー試薬)、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン、1−フルオロ−2−ニトロベンゼン、
と、少なくともアニオンXと同程度の塩基性を持つ補助塩基Bの存在下に、反応させる。
【0050】
【化8】

【0051】
1は上に定義した通りである。
根拠: 上記反応は、以下の化学量論に従い非常に高い収率で行われる:
【0052】
【化9】

【0053】
Bは、中性の塩基、例えば(次のものが全てではないが)アルキルアミンNH3-x1x、グアニジンか、または金属化剤(金属アミド、金属ヒドリド、金属アルキル、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属(元素状)/金属、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属)の部類から選択される塩様の塩基であることができ、特に好ましいものは、求核性がそれほど強くない強塩基、例えばNa[N(SiMe32]またはK[OtBu]である。
【0054】
この際、典型的には、2当量のNa−ビス−トリメチルシリルアミドNa[N(SiMe32]の存在下でのトリフルオロメチルスルホン酸無水物とペンタフルオロフェニルアニリンとの反応が挙げられる。
【0055】
この場合は、当量のペンタフルオロフェニルアニリンをTHF中に溶解し、−80℃において二倍当量のNa[N(SiMe32]と反応させ、そしてこの反応混合物を、当量の求電子体(トリフルオロメチルスルホン酸無水物)と反応させる。この反応は、R1がSO2CF3のアニオンIのリチウム塩を与え、2〜5のpH値でHCl水溶液で仕上げ処理をすると、このアニオンの対応するNH塩が生ずる。
【0056】
他の本発明によるアニオン(I)を類似の方法で製造できることは当業者には非常に明らかである。これらの他の本発明によるアニオンは、専門知識を用いてかつ特許請求の範囲の保護範囲を逸脱することなく使用することができる。対応する酸(X)は、0〜6のpH値でプロトン化することによって得ることができる。
【0057】
本明細書に記載のR1〜R25の全ての基は、記載した通り、中でも炭素原子数1〜20の線状または分枝状アルキル基を表すことができる。これらの全ての場合において、1〜4個の炭素原子を含むこのようなアルキル基、すなわちメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、2−ブチル及びtert−ブチルが特に好ましいことが強調される。
【0058】
本発明のイオン性液体は、以下の式
【0059】
【化10】

【0060】
のアニオンIの以下の式
【0061】
【化11】

【0062】
[式中、
1は、炭素原子数が1〜20の線状もしくは分枝状でフッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアルキル基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアリール基、2−ニトロアリール基、4−ニトロアリール基、2,4−ジニトロアリール基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたベンジル基を表すか、
あるいは、CN、CO−H、CO−アリール基またはCO−アルキル基を表すか、
あるいは、R1は−SO2−R2を表し、この際、R2は、炭素原子数が1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基、またはアリール−もしくはベンジル基を表し、そしてこれらのアルキル−、ベンジル−またはアリール基は、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されている]
の然るべき対応する酸を、
所望のカチオンの対応する化合物、詳しくは
− 上記の定義に従う第四アンモニウムカチオンがカチオンとして望ましい場合は、第四アンモニウム水酸化物類;
− 第四グアニジウムイオンがカチオンとして望ましい場合は、上記の定義に従うグアニジニウムイオン(イオン交換を介する);
− 上記の定義に従うホスホニウムカチオンがカチオンとして望ましい場合は、アルキル−アルキリデン−ホスホラン類またはアリール−アルキリデン−ホスホラン類(P−イリデン); または
− 上記の定義に従う2−アルキル置換イミダゾリウム−、イミダゾリジニウム−またはベンズイミダゾリウム−カチオンがカチオンとして望ましい場合は、ケテン−N,N−ジアセタール;
− N−オルガノ−ピリジニウムカチオンが望ましい場合は、上記の定義に従うN−オルガノ−ピリジニウムの塩、
と、有機溶剤中で反応させることによって製造される。
【0063】
上記反応のための溶剤は、好ましくは、純粋な脂肪族、不飽和もしくは芳香族炭化水素、例えばトルエン、部分的にもしくは完全にハロゲン化された炭化水素(例えばクロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、FCKW、FKW、フリゲン(Frigene))、有機アミン、エーテル、アルコール(場合により水との混合物)、ケトン、DMF、DMSO、HMPT、有機カーボネート、カルボン酸アミド及びカルボン酸エステル、及びテトラアルキル尿素の群から選択される。
【0064】
従来技術から、第四2−アルキル置換イミダゾリウム−、イミダゾリジニウム−及びベンズイミダゾリウムカチオンを含むイオン性液体が知られている。しかし、これらのイオン性液体の既知の製造方法においては、イオン性液体が、直接、定量的及び水不含に製造できないというのが欠点である。
【0065】
ケテン−N,N−ジアセタール類は当業者には既知であり、これらが、2−アルキル置換イミダゾリウム−、イミダゾリジニウム−及びベンズイミダゾリウム塩に再プロトン化し得ることも知られている。更に、求核性カルベンが、対応する2H−置換イミダゾリウム−、イミダゾリジニウム−及びベンズイミダゾリウム塩に再プロトン化し得ることも技術水準である。
【0066】
しかし、ケテン−N,N−ジアセタール類を、本発明のアニオン[N(C65)R1-の対応する酸H[N(C65)R1]と有機溶剤中で反応させると、直接及び定量的に、対応する水不含のイオン性液体が得られることは新規であり、かつ驚くべきことである。これを、以下に典型例として及び概略的に、ケテン−N,N−ジアセタールの代表物としての1,3−ジアルキル−2−メチレンイミダゾールについて示す。
【0067】
【化12】

【0068】
この際、R1、R3及びR4は上に定義した通りである。上記の反応が、対応する1,3−ジアルキル−2−アルキレン−イミダゾリン類、1,3−ジアリール−2−アルキレン−イミダゾリン類、1,3−ジアルキル−2−アルキレン−ベンズイミダゾール類、1,3−ジアルキル−2−ベンジリデン−イミダゾール類及びケテン−N,N−ジアセタール類の部類の更に別の代表物を用いた場合にも同様の方法で実施可能であることは当業者には非常に明らかである。
【0069】
同様に、本発明のアニオン(I)の対応する酸(X)を、有機溶剤中でアルキル−アルキリデン−ホスホラン類またはアリール−アルキリデン−ホスホラン類と、直接及び定量的に反応させて対応するイオン性液体とすることができる。この方法は、典型例として、メチルトリフェニルホスホニウム−デカフルオロジフェニルアミドの製造についての実施例15に示され、そしてこれは、特許請求の範囲の保護範囲を逸脱することなく、他のオルガノホスホニウム−イミド塩の製造にも使用できる。
【0070】
更に、上記ケテン−N,N−ジアセタール類を、DMSO中で測定して15またはそれ未満のpKA値を有する他のO−H−、C−H−及びN−H−、ハロゲン化水素酸並びにフルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロリン酸、フルオロヒ酸、フルオロアンチモン酸、フルオロ硫酸、更に非金属及び金属の全ての鉱酸及びオキソ酸と有機溶剤中で反応させてイオン性液体とすることができることも当業者には非常に明らかである。
【0071】
以下のものが全てではないが、酸としては、例えば、HC(SO2CF33、HN(SO2CF32、ペンタフルオロフェノール、HBF4、H2SiF6、HPF6、HAsF6、HSbF6、HSO3F、HF、HCl、HBr、HI、並びに次のもの、すなわち硝酸、硫酸、塩酸、臭素酸、リン酸、クロム酸、チタン酸及びタングステン酸、バナジウム酸、モリブデン酸から選択されるオキソ酸が挙げられる。
【0072】
当業者は、上記の部類のプロトン酸を、一般的な専門知識に基づきかつ特許請求の範囲を逸脱することなく、ケテン−N,N−ジアセタール類と反応させて2−アルキル−イミダゾリウムに基づくイオン性液体にすること、及びアルキル−アルキリデン−ホスホラン類もしくはアリール−アルキリデン−ホスホラン類と反応させてオルガノホスホニウムに基づくイオン性液体にすることができる。
【0073】
2−アルキル置換第四イミダゾリウム−、イミダゾリジニウム−及びベンズイミダゾリニウム塩が、イオン性液体中の特に有利なカチオンである。なぜならば、これらは、周知のようにカルベンを介して得ることができる対応する2−H−イミダゾリウム塩と比べて、CH酸性がより低く、それ故、求核的な攻撃に対してより安定しているからである。
【0074】
上記反応のための溶剤は、純粋な脂肪族、不飽和または芳香族炭化水素、例えばトルエン、部分的にもしくは完全にハロゲン化された炭化水素(例えばクロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、FCKW、FKW、フリゲン(Frigene))、有機アミン、エーテル、アルコール(場合により水との混合物)、ケトン、DMF、DMSO、HMPT、有機カーボネート、カルボン酸アミド及びカルボン酸エステル、及びテトラアルキル尿素の群から選択される。
【0075】
本発明によるイオン性液体は、大規模な合成において有機溶剤の代用品として使用することができる。それの低い蒸気圧の故に、ガス状の放出物が避けられる。イオン性液体が溶剤として使用される方法は、作業者の潜在被爆がより低いこと、及び爆発の危険性がより低いことを特徴とする。それらの優れた溶剤特性の故に、イオン性液体は、慣用の有機溶剤では溶液にするのが困難な物質、例えばセルロースの溶剤として使用される。
【0076】
更に、それらの溶解性及び吸収性の故に、イオン性液体は抽出剤として適している。これらは、共沸混合物を分離するために使用することができる。更に、これらは、クロマトグラフィ、例えばGC、LC、HPLC、イオンクロマトグラフィの移動相及び/または固定相としても有利に使用できる。
【0077】
更に、イオン性液体は、電気化学的に不活性なフッ素化アニオンと一緒に、バッテリー、ガルバーニ電池、燃料電池及び蓄電池(例えば、リチウムイオン蓄電池及びリチウムイオン電解質)のための電解質システムとして使用される。
【0078】
また、これらはソーラー技術装置において伝熱剤としても使用できる。かなりの数の第四イミダゾリウム塩が殺菌剤として使用されている。幾つかの第四アンモニウム塩がカチオン界面活性剤として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】1,3−ジ(イソプロピル)イミダゾリウム−デカフルオロジフェニルアミドの構造モデル
【図2】Bu4N[N(C652]の構造モデル
【図3】1−n−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−デカフルオロ−ジフェニルアミドの構造モデル
【実施例】
【0080】
1. 1−n−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロライド
この物質は文献公知である。V. Farmer, T. Welton, Green Chemistry 2002, 4, 97-102を参照されたい。
【0081】
【化13】

【0082】
50mlのトルエン中の59.43g(0.618モル)の1,2−ジメチルイミダゾールの溶液に、71.05ml(0.680モル)のn−ブチルクロライドを添加する。この反応混合物を還流下に24時間加熱する。この際、二相系が形成する。この混合物を8時間の間、−30℃の温度で貯蔵すると、白色の固形物が生ずる。得られた白色の固形物を温かいアセトニトリルから再結晶化する。収量:70.00g(60%)(白色の吸湿性固形物)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ = 1.30 (s, 3 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.74 (sext, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 2.16 (quint, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 3.20 (s, 3 H, NCH3), 4.42 (s, 3 H, CCH3), 4.62 (t, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 8.01 (d, 1 H, BuNCH), 8.25 (d, 1 H, (MeNCH)。
【0083】
2. 1−n−ブチル−3−メチル−2−メチレンイミダゾリン
【0084】
【化14】

【0085】
グローブボックス内で、250mlのフラスコ中で、9.43g(49.60mmol)の1−n−ブチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロライド及び4.97g(123.91mmol)のKHを混合する。この溶液を100mlのTHFと混合し、そして室温下に60時間攪拌する。得られた反応混合物を、セライトに通して濾過し、室温下に揮発性の全ての成分をこの溶液から凝縮させて除去する。次いで、生成物を、160℃/0.1mbar下に、窒素で冷却したシュレンク管中で蒸留する。収率:約70%(無色の極めて湿気に敏感な液体。これは室温下に部分的に分解して急速に黄色に着色する)。
1H-NMR (C6D6, 300 MHz): δ= 0.92 (t, 3 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.30 (sext, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.60 (quint, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 2.75 (s, 3 H, NCH3), 2.77 (s, 1 H, CCH2), 2.83 (s, 1 H, CCH2), 3.22 (t, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 5.75 (s, 1 H, BuNCH), 5.80 (s, 1 H, MeNCH)。
13C-NMR (C6D6, 50 MHz): δ = 13.88 (NCH2CH2CH2CH3), 20.21 (NCH2CH2CH2CH3), 29.65 (NCH2CH2CH2CH3), 32.52 (NCH3), 39.84 (CCH2), 45.80 (NCH2CH2CH2CH3), 112.07 (BuNCH), 113.06 (MeNCH), 151.98 (NCN)。
【0086】
3. 1−エチル−3−メチル−2−メチレンイミダゾリン
【0087】
【化15】

【0088】
グローブボックス内で、250mlのフラスコ中で、5.96g(37.12mmol)の1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロライド及び2.98g(74.24mmol)のKHを混合する。この溶液を100mlのTHFと混合し、そして室温下に60時間攪拌する。得られた反応混合物をセライトに通して濾過し、そして室温下に揮発性の全ての成分をこの溶液から凝縮させて除去する。次いで、160℃/0.1mbar下に、生成物を、窒素で冷却したシュレンク管中で蒸留する。収率:約70%(無色の極めて湿気に敏感な液体。これは室温下に急速に黄色に着色する)。
1H-NMR (C6D6, 200 MHz): δ = 0.92 (t, 3 H, NCH2CH3), 2.56 (s, 3 H, NCH3), 2.65 (s, 2 H, CCH2), 3.00 (q, 2 H, NCH2CH3), 5.56 (d, 1 H, EtNCH), 5.61 (d, 1 H, MeNCH)。
13C-NMR (C6D6, 50 MHz): δ = 12.64 (NCH2CH3), 32.49 (CCH2), 39.82 (NCH3), 40.42 (NCH2CH3), 110.94 (EtNCH), 113.27 (MeNCH), 151.80 (NCN)。
【0089】
4. 1,3−ジ(iso−プロピル)イミダゾリウム−ペンタフルオロフェノレート
N−複素環式カルベン、並びに2−H−イミダゾールに基づくイオン性液体の製造法は、国際公開第01/77081 A1号パンフレットから既知である。
【0090】
【化16】

【0091】
ジエチルエーテル中の1.50g(8.15mmol)のペンタフルオロフェノールの−78℃に冷却した溶液に、シリンジを用いて、1.25ml(8.15mmol)の1,3−ジ(iso−プロピル)イミダゾール−2−イリデンを加える。この反応混合物を5時間の間、室温に加温し、そして室温で8時間攪拌する。次いで、全ての揮発性成分を減圧下に除去し、残留物を20mlのヘキサンで洗浄し、次いで減圧乾燥する。目的の生成物が白色の固形物として得られる。この生成物は、−30℃でジクロロメタンから再結晶化することができる。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 1.50 (d, 12 H, NCH(CH3)2), 4.60 (sept, 2 H, NCH), 7.50 (s, 2 H, NCHCHN), 9.40 (s, 1 H, NCHN)。
13C-NMR (D3CCN, 50 MHz): 22.79 ppm (NCH(CH3)2), 53.98 ppm (NCH(CH3)2), 121.31 ppm (NCHCHN), 135.11 ppm (NCN)。
19F-NMR (D3CCN, 282 MHz): δ = -197.11 (t, 1 F, p-F), -174.06 (2 F, m-F), -173.99 (2 F, o-F)。
【0092】
5. 1,3−ジ(iso−プロピル)イミダゾリウム−デカフルオロジフェニルイミド
【0093】
【化17】

【0094】
シュレンク管中、−78℃で、5mlのEt2O中の0.524g(2.86mmol)のデカフルオロジフェニルアミンの溶液に攪拌しながら0.2ml(1.31mmol)の1,3−ジ(iso−プロピル)イミダゾール−2−イリデンを加える。この混合物を19時間のうちに室温にし、そして溶剤を減圧下に除去する。残留物を10mlのn−ヘキサンで浸出し、濾過し、10mlのn−ペンタンで洗浄し、そして減圧下に乾燥する。0.530mg(1.06mmol、80.9%)のジ(iso−プロピル)イミダゾリウム−デカフルオロジフェニルイミドが淡く黄色帯びた固形物の形で得られる。−30℃で10mlのEt2Oから再結晶化することによって、無色の結晶が得られる。これは、X線構造決定に適している。
融点:109℃
マススペクトル(EI):
m/z = 43 (27.72, i-Pr+), 110 (12.51, ImiPr-H - i-Pr), 152 (11.13, ImiPrH+), 349 (28.42, (C6F5)2NH+ )。
C, H, N-分析: 測定値(計算値)
C: 50.14%(50.31%), H: 3.43%(3.42%), N. 8.72%(8.38%)。
IR: cm-1: 30.46s, 2723.66s, 2362.95s, 1618.38s, 1305.89s, 1263.45s, 1018.48m, 968.33m, 939.39s, 814.01s, 740.71s, 557.46m。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 0.83 ppm (d, 12 H, NCH(CH3)2), 3.90 ppm (sept, 2 H, NCH),, 5.85 ppm (s, 2 H, NCHCHN), 9.40 (s, 1 H, NCHN)。
13C-NMR (D3CCN, 50 MHz): 21.96 ppm (NCH(CH3)2), 52.79 ppm (NCH(CH3)2), 118.40 ppm (NCHCHN), 137.98 ppm (NCN)。
19F-NMR (D3CCN, 282 MHz): δ = -183.35 ppm (t, 1 F, p-F), -169.80 ppm (2 F, m-F), -160.94 ppm (d, 1 F, o-F)。
X線構造分析:
Mo-Kα-線(波長: 71.069 nm), 20 ℃
総合式: C21H17F10N3
分子量: 501.38 g/mol
式単位数: 4
単位胞: a = 14.1670(16) Å, b = 11.0290(10) Å, c = 13.6160(14) Å
α = 90.00°, β = 91.0680(10) °
結晶システム: 単斜晶
空間群: C2/c
X線密度: 1.566 g/ml
吸光係数: 0.155 mm-1
融点: 109 °C
測定反射量: 10551
観測反射量: 1626
独立反射数:2269
測定範囲(θ): 2.34 〜 26.76°
パラメータ数: 190
R1; R2 : 0.0351; 0.0934
残留電子密度 (最小, 最大): -0.235, 0.211
13C-NMR (D3CCN, 50 MHz): δ= 10.07 (NCH2CH2CH2CH3), 13.78 (NCH2CH2CH2CH3), 20.12 (CCH3), 32.33 (NCH3), 35.72 (NCH2CH2CH2CH3), 48.97 (NCH2CH2CH2CH3), 121.92 (BuNCH), 123.38 (MeNCH), 121.70 (q, COO), 145.42 (NCN), 160.27 (q, CF3)。
19F-NMR (D3CCN, 282 MHz): d = -75.58 (s, 3 F, OOCCF3)。
【0095】
6. 1−n−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−トリフルオロアセテート
【0096】
【化18】

【0097】
ジエチルエーテル中の1.38g(12.09mmol)のトリフルオロ酢酸の−78℃に冷却した溶液に、シリンジを用いて、1.84ml(12.09mmol)の1−n−ブチル−3−メチル−2−メチレンイミダゾリンを加える。この反応混合物を、ゆっくりと室温まで加温する。この際、白色の固形物が生じ、一晩、室温で攪拌する。次いで、全ての揮発性成分を減圧下に除去し、残留物を20mlのヘキサンで洗浄し、次いで減圧下に乾燥する。目的の生成物が白色の固形物として得られ、これはジクロロメタンから再結晶化することができる。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 0.92 (t, 3 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.33 (sext, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.72 (quint, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 2.51 (s, 3 H, NCH3), 3.71 (s, 3 H, CCH3), 4.04 (t, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 7.23 (d, 1 H, BuNCH), 7.47 (d, 1 H, MeNCH)。
13C-NMR (D3CCN, 50 MHz): δ = 10.07 (NCH2CH2CH2CH3), 13.78 (NCH2CH2CH2CH3), 20.12 (CCH3), 32.33 (NCH3), 35.72 (NCH2CH2CH2CH3), 48.97 (NCH2CH2CH2CH3), 121.92 (BuNCH), 123.38 (MeNCH), 121.70 (q, COO), 145.42 (NCN), 160.27 (q, CF3)。
19F-NMR (D3CCN, 282 MHz): δ = -75.58 (s, 3 F, OOCCF3)、
【0098】
7. 1−n−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−デカフルオロジフェニルイミド
【0099】
【化19】

【0100】
ジエチルエーテル中の4.49g(12.85mmol)のデカフルオロジフェニルアミンの−78℃に冷却した溶液に、シリンジを用いて、1.96ml(12.85mmol)の1−n−ブチル−3−メチル−2−メチレンイミダゾリンを加える。この反応混合物を5時間で室温まで加温し、そして室温下に8時間攪拌する。この際、暗褐色の溶液が生じる。次いで、全ての揮発性成分を減圧下に除去し、残留物を20mlのペンタンで洗浄し、次いで減圧下に乾燥する。目的の生成物が褐色の油状物として得られる。
1H-NMR (C6D6, 300 MHz): δ = 0.73 (t, 3 H, NCH2CH2CH2CH3), 0.89 (sext, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.14 (quint, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.59 (s, 3 H, NCH3), 2.86 (s, 3 H, CCH3), 3.19 (t, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 6.63 (s, 1 H, BuNCH), 6.67 (s, 1 H, MeNCH)。
13C-NMR (C6D6, 50 MHz): d = 7.87 (NCH2CH2CH2CH3), 13.10 (NCH2CH2CH2CH3), 19.46 (CCH3), 31.32 (NCH3), 33.91 (NCH2CH2CH2CH3), 47.97 (NCH2CH2CH2CH3), 120.66 (BuNCH), 122.27 (MeNCH), 142.84 (NCN), 130.83 - 140.5 (m, C(ArF))。
19F-NMR (C6D6, 282 MHz): d = -185.64 (m, 2 F, p-F), -170.45 (t, 4 F, o-F), -161.12 (dd, 4 F, m-F)。
X線構造分析:
Mo-Kα-線(波長: 71.069 nm), 20 ℃
総合式: C21H17F10N3
分子量: 501.38 g/mol
式単位数: 2
単位胞a = 9.8625(11) Å, b = 10.3192(12) Å, c = 10.8965(12) Å
α = 81.843(13)°, β = 80.651(13)°, γ = 75.228(13)°
結晶システム: 三斜晶
【0101】
【化20】

【0102】
X線密度: 1.583 g/ml
吸光係数: 0.157 mm-1
融点: 109 ℃
測定反射量: 10424
使用反射量: 8000
独立反射数:3839
測定範囲 (θ): 2.05〜26.01°
パラメータ数: 375
R1; R2 : 0.0337; 0.0914
残留電子密度 (最小, 最大): -0.158, 0.193
【0103】
8. 1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−ペンタフルオロフェノレート
【0104】
【化21】

【0105】
ジエチルエーテル中の2.20g(11.95mmol)のペンタフルオロフェノールの−78℃に冷却した溶液に、シリンジを用いて、1.48ml(11.95mmol)の1−エチル−3−メチル−2−メチレンイミダゾリンを加える。この反応混合物を5時間で室温まで加温し、そして室温下に8時間攪拌する。析出した無色の固形物を濾別し、20mlのジエチルエーテルで二度洗浄し、次いで減圧下に乾燥する。目的の生成物が無色の固形物として得られ、これは144℃で溶融する。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 1.3/ (t, 3 H, NCH2CH3), 2.50(s, 3 H, NCH3), 3.70 (s, 3 H, CCH3), 4.08 (q, 2 H, NCH2CH3), 7.33 (d, 1 H, EtNCH), 7.35 (d, 1 H, MeNCH)。
13C-NMR (D3CCN, 75 MHz): δ = 9.90 (NCH2CH3), 15.16 (CCH3), 35.63 (NCH3), 44.37 (NCH2CH3), 121.28 (EtNCH), 123.42 (MeNCH), 145.22 (NCN)。
19F-NMR (D3CCN, 282 MHz): δ = -197.97 (br, 1 F, p-F), 174.40-174.12 (m, 4 F, o-F + m-F)。
C, H, N-分析: 測定値 (計算値)
C: 50.19%(50.65%), H: 4.59%(4.22%), N. 9.08%(9.09%)
【0106】
9. 1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−デカフルオロジフェニルイミド
【0107】
【化22】

【0108】
ジエチルエーテル中の0.80g(2.29mmol)のデカフルオロジフェニルアミンの−78℃に冷却された溶液に、シリンジを用いて、0.28ml(2.29mmol)の1−エチル−3−メチル−2−メチレンイミダゾリンを加える。この反応混合物を5時間で室温まで加温し、そして室温下に8時間攪拌する。析出した淡黄色の固形物を濾別し、20mlのジエチルエーテルで二度洗浄し、次いで減圧下に乾燥する。目的の生成物が無色の固形物として得られ、これは98℃で溶融する。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 1.37 (t, 3 H, NCH2CH3), 2.47 (s, 3 H, NCH3), 3.68 (s, 3 H, CCH3), 4.06 (q, 2 H, NCH2CH3), 7.24 (d, 1 H, EtNCH), 7.27 (d, 1 H, MeNCH)。
13C-NMR (D3CCN, 75 MHz): δ = 9.92 (NCH2CH3), 15.14 (CCH3), 35.68 (NCH3), 44.42 (NCH2CH3), 121.22 (EtNCH), 123.35 (MeNCH), 145.26 (NCN)。
19F-NMR (D3CCN, 282 MHz): δ = -187.66 (m, 2 F, p-F), -172.16 (t, 4 F, o-F), -162.86(dd, 4 F, m-F)。
C, H, N-分析: 測定値(計算値)
C: 47.59%(48.20%), H: 2.75%(3.42%), N. 8.96%(8.88%)
【0109】
10. 1−n−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム−ペンタフルオロフェニル−ノナフルオロブチルスルホニルイミド
【0110】
【化23】

【0111】
ジエチルエーテル中の1.57g(3.37mmol)のペンタフルオロフェニル−ノナフルオロブチルスルホニルアミンの−78℃に冷却した溶液に、シリンジを用いて、0.51ml(3.37mmol)の1−n−ブチル−3−メチル−2−メチレンイミダゾリンを加える。この反応混合物を5時間で室温まで加温し、そして室温下に8時間攪拌する。次いで、全ての揮発性成分を減圧下に除去する。目的の生成物が褐色の油状物として得られる。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 0.92 (t, 3 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.32 (sext, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.72 (quint, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 2.50 (s, 3 H, NCH3), 3.69 (s, 3 H, CCH3), 4.02 (t, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 7.25 (s, 1 H, BuNCH), 7.27 (s, 1 H, MeNCH)。
13C-NMR (D3CCN, 75 MHz): δ = 8.78 (NCH2CH2CH2CH3), 12.42 (NCH2CH2CH2CH3), 18.84 (CCH3), 31.03 (NCH3), 34.45 (NCH2CH2CH2CH3), 47.74 (NCH2CH2CH2CH3), 120.53 (BuNCH), 121.99 (MeNCH), 144.80 (NCN), 118.83 - 123.55 (m, C(AlkF)). 133.86 - 144.92 (m, C(ArF))。
19F-NMR (D3CCN, 188 MHz): δ = -165.17 (m, 1 F, p-F), -163.79 (t, 2 F, m-F), -146.56 (d, 4 F, m-F), -121.82 (2 F,CF2SO2), -116.74 (2 F, CF2CF2SO2), -109.97 (2 F, CF2CF3), -76.88 (3 F, CF3)。
【0112】
11. ペンタフルオロフェニル−ノナフルオロブチルスルホニルイミン
【0113】
【化24】

【0114】
先ず、50mlのTHF中の22.27ml(106.78mmol)のヘキサメチルジシラザンの−78℃に冷却した溶液に、ヘキサン中のn−ブチルリチウムの1.6モル溶液66.74ml(106.78mmolに相当)を加える。この溶液を室温に加温し、そしてこの温度で1時間攪拌する。次いで、再び−78℃に冷却し、そして100mlのTHF中の7.82g(42.71mmol)のペンタフルオロアニリンの溶液を加える。この反応混合物を0℃の温度にし、そしてこの温度に2時間維持する。再度、−78℃に冷却し、そしてシリンジを用いて7.67mlのノナフルオロブチルスルホニルフルオライドを加える。この反応混合物を8時間で室温にし、次いで室温下に二日間攪拌する。次いで、200mlの水と混合し、そして半濃縮HClを用いてその水相のpHを6に調節する。この混合物を100mlのジエチルエーテルで三回抽出し、一緒にした有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで全ての揮発性化合物をロータリーエバポレータで除去する。得られた粗製生成物を、沸騰しているトルエン中で再結晶化する。ベージュ色の粉末が得られる。
19F-NMR (D3CCN, 188 MHz): δ = -169.40 (m, 1 F, p-F), -168.53 (t, 2 F,m-F), -151.21 (d, 2 F, m-F), -126.62 (2 F,CF2SO2), -121.56 (2 F, CF2CF2SO2), -114.74 (2 F, CF2CF3), -81.70 (3 F, CF3)。
【0115】
12. 1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム−ペンタフルオロフェニル−ノナフルオロブチルスルホニルイミド
【0116】
【化25】

【0117】
ジエチルエーテル中の1.34g(2.877mmol)のペンタフルオロフェニル−ノナフルオロブチルスルホニルアミンの−78℃に冷却した溶液に、シリンジを用いて、0.51ml(3.37mmol)の1−n−ブチル−3−メチル−イミダゾール−2−イリデンを加える。この反応混合物を5時間で室温に加温し、そして室温下に8時間攪拌する。次いで、全ての揮発性成分を減圧下に除去する。目的の生成物が褐色の油状物として得られる。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 0.93 (t, 3 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.31 (sext, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.78 (quint, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 3.81 (s, 3 H, NCH3), 4.11 (t, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 7.33 (s, 1 H, BuNCH), 7.36 (s, 1 H, MeNCH), 8.44 (s, 1 H, N2CH)。
13C-NMR (D3CCN, 75 MHz): δ = 13.63 (NCH2CH2CH2CH3), 19.98 (NCH2CH2CH2CH3), 32.61 (NCH2CH2CH2CH3), 36.86 (NCH3), 50.32 (NCH2CH2CH2CH3), 123.32 (BuNCH), 124.68 (MeNCH), 137.00 (NCN)。
19F-NMR (D3CCN, 188 MHz): δ = -165.28 (m, 1 F, p-F), -163.82 (t, 2 F, m-F), -146.64 (d, 2 F, m-F), -121.76 (2 F,CF2SO2), -116.72 (2 F, CF2CF2SO2), -109.99 (2 F, CF2CF3), -76.85 (3 F, CF3)。
【0118】
13. 1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム−デカフルオロジフェニルイミド
【0119】
【化26】

【0120】
ジエチルエーテル中の0.88g(2.52mmol)のデカフルオロジフェニルアミンの−78℃に冷却した溶液に、シリンジを用いて、0.31ml(2.52mmol)の1−n−ブチル−3−メチル−イミダゾール−2−イリデンを加える。この反応混合物を5時間で室温に加温し、そして室温下に8時間攪拌する。次いで、全ての揮発性成分を減圧下に除去する。目的の生成物が褐色の油状物として得られる。
1H-NMR (D3CCN, 300 MHz): δ = 0.88 (t, 3 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.27 (sext, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 1.75 (quint, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 3.80 (s, 3 H, NCH3), 4.09 (t, 2 H, NCH2CH2CH2CH3), 7.34 (s, 1 H, BuNCH), 7.39 (s, 1 H, MeNCH), 8.87 (s, 1 H, N2CH)。
13C-NMR (D3CCN, 75 MHz): δ = 13.63 (NCH2CH2CH2CH3), 20.07 (NCH2CH2CH2CH3), 32.69 (NCH2CH2CH2CH3), 36.78 (NCH3), 50.38 (NCH2CH2CH2CH3), 123.34 (BuNCH), 124.69 (MeNCH), 137.60 (NCN), 131.92 - 143.18 (m, C(ArF))。
19F-NMR (D3CCN, 282 MHz): δ = -186.18 ppm (t, 1 F, p-F), -171.60 ppm (2 F, m-F), -162.22 ppm (d, 1 F, o-F)。
【0121】
14. nBu4N[N(C652]の合成
【0122】
【化27】

【0123】
5mlのメタノール中の0.40g(1.15mmol)のDFDPA−Hの溶液に、メタノール中の1.15mlのテトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(Aldrich社; 1M,1.15mmol)を室温で加える。この反応混合物を室温で2時間攪拌する。この溶剤を減圧下に除去し、その残留物をジエチルエーテルから再結晶化し、そして減圧下に乾燥する。白色の針状物。収量:0.55g(81%)。
融点 97.6℃
C28H36F10N2O (590.58 g/mol). 計算値(測定値) C 56.94 (56.92); N 4.74 (5.11); H 6.14 (6.67)。
1H-NMR (400.0 MHz, THF-d8): δ = 0.95 (t, 3H, CH3, 3JH-H =7.36 Hz), 1.30 - 1.40 (m, 2H, CH2), 1.62 - 1.70 (m, 2H, CH2), 3.21 - 3.25 (m, 2H, CH2) ppm。
13C-NMR (125.7 MHz, THF-d8): δ = 13.7 (s, CH3), 20.4 (s, CH2), 24.4 (s, CH2), 59.2 (s, NCH2), 129.2 (dm, 1JC-F =231.3 Hz, C6F5), 134.4 (t, 2JC-F =12.1 Hz, C6F5), 138.8 (dm, 1JC-F =241.1 Hz, C6F5), 141.3 (dm, 1JC-F=233.8 Hz, C6F5) ppm。
19F-NMR (188.2 MHz, THF-d8): δ = -183.6 (m, 1F, CFpara), -167.5 (t, 3JF-F = 20 Hz, 2F, CFmeta), -156.8 (m, 2F, CFortho) ppm。
【0124】
【化28】

【0125】
Bu4N[N(C652]の結晶構造分析
【0126】
【化29】

【0127】
形, 色 針状, 無色
結晶サイズ 0.30 x 0.10 x 0.06 mm3
結晶システム 三斜晶
【0128】
【化30】

【0129】
単位胞 a = 8.6597(12)Å α= 75.023(11)°
b = 12.0615(16)Å β= 88.185(11)°
c = 14.383(2)Å γ= 74.643(10)°
体積 1398.4(3)Å3
単位胞決定 10121 回の反射
実験式 C28 H36F10N2
分子量 590.59
密度(計算値) 1.403 Mg/m3
吸光係数 0.129 mm-1
F(000) 616
回折器タイプ IPDS2
波長 0.71073Å
温度 193(2) K
データ取得のためのシータ範囲 1.47〜26.23°
インデックス範囲 -10<=h<=10, -14<=k<=14, -17<=l<=17
データ取得ソフトウェア STOE ウィン−エックスポーズ Xエリア)
セル精密化ソフトウェア STOE ウィン−セル (Xエリア)
データリダクションソフトウェア STOE ウィン−インテグレート (Xエリア)
補足反射数 18043
独立反射数 5590 [R(int) = 0.0544]
シータ=26.23°の一致率99.4 %
観測反射数 3269[I>2シグマ(I)]
微同調に使用した反射数 5590
減衰係数 X = 0.0160(16)
吸収補正 なし
最大及び最小透過 0.9923及び0.9625
最大回折ピーク及び体積 0.189及び-0.172 e.Å-3
解析法 直接法
精密化 フルマトリクス最小二乗法(F2
水素原子 計算位置
U(H)=1.2(1.5)*Ueq(C)
使用プログラム SHELXS-97 (Sheldrick, 1997)
SHELXL-97 (Sheldrick, 1997)
DIAMOND 2.1, STOE IPDSソフトウェア
データ数/リストレイン数/パラメータ数 5590 / 0 / 366
F2の適合度 0.875
Rインデックス(全データ)wR2 = 0.0976
Rインデックスコンベンショナル [I>2sigma(I)] R1 = 0.0396
【0130】
15. メチルトリフェニルホスホニウム−デカフルオロジフェニルイミド
【0131】
【化31】

【0132】
20mlのトルエン中の1.00g(2.87mmol)のデカフルオロジフェニルアミンの溶液に、室温下に、10mlのトルエン中の0.79g(2.87mmol)のトリフェニルホスホニウムメチリドの溶液を加える。直ちに無色の沈殿物が生ずる。この反応混合物を更に1時間室温下に、後攪拌し、次いでリバースフリットに通して濾別する。得られた固形物を20mlのヘキサンで洗浄し、そして減圧下に乾燥する。目的の生成物が無色の固形物として得られる。
1H-NMR (D3CCN, 200 MHz): δ = 2.81 (d, 2 H, PCH3), 7.60-7.90 (m, 15 H, Ar-H)。
13C-NMR (D3CCN, 50 MHz): δ = 9.28 (d, PCH3), 120.37 (d, i-C), 131.15 (d, o-C), 134.24 (d, m-C), 136.08 (d, p-C)。
19F-NMR (D3CCN, 188 MHz): δ = -182.48 (t, 2 F, p-F), -167.12 (4 F, m-F), -157.77 (d, 4 F, o-F)。
31P-NMR (D3CCN, 81 MHz): δ = 31.37 (Ph3PCH3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 以下の一般式
【化1】

[式中、
1は、炭素原子数が1〜20の線状もしくは分枝状のフッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアルキル基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアリール基、2−ニトロアリール基、4−ニトロアリール基、2,4−ジニトロアリール基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたベンジル基を表すか、
あるいは、
CN、CO−H、CO−アリール基またはCO−アルキル基を表し、
あるいは、
1は、−SO2−R2であり、この際、R2は、炭素原子数1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基、またはアリールもしくはベンジル基を表し、そしてこれらのアルキル基、ベンジル基またはアリール基は、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されている]
で表されるアニオン、及び
b) アルカリ金属カチオン及びアルカリ土類金属カチオンの群からの無機カチオン及び第四有機カチオンから選択される、カチオン、
を含む塩。
【請求項2】
カチオンが、第四アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、グアニジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、イミダゾリジニウムイオン、ベンズイミダゾリウムイオン及びN−オルガノ−ピリジニウムイオンの群から選択されることを特徴とする、請求項1の塩。
【請求項3】
カチオンが、以下の一般式
[NR3456+ (II)
[式中、R3、R4及びR5は、互いに独立して、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、またはアリール基、またはベンジル基を表し、そして
6は、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基を表す]
で表されるアンモニウムイオンであることを特徴とする、請求項2の塩。
【請求項4】
カチオンが、以下の一般式
[PR3457+ (III)
[式中、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、そしてR7は炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、またはアリール基、またはベンジル基を表す]
で表されるホスホニウムイオンであることを特徴とする、請求項2の塩。
【請求項5】
カチオンが、以下の一般式
【化2】

[式中、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、互いに独立して、H原子、または炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、またはアリール基を表す]
で表されるグアニジニウムイオンであることを特徴とする、請求項2の塩。
【請求項6】
カチオンが、以下の一般式
【化3】

[式中、R3及びR4は上に定義した通りであり、そして
14、R15、R16及びR17は、互いに独立して、それぞれH原子、炭素原子数1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基、アリール基、またはベンジル基を表す]
で表されるイミダゾリウムイオンであることを特徴とする、請求項2の塩。
【請求項7】
カチオンが、次の一般式
【化4】

[式中、R3、R4、R14、R15、R16及びR17は上に定義した通りである]
で表されるイミダゾリジニウムイオンであることを特徴とする、請求項2の塩。
【請求項8】
カチオンが、以下の一般式
【化5】

[式中、R3、R4、R14及びR15は上に定義した通りであり、そしてR18及びR19は、互いに独立して、H原子、F、Cl、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、アリール基、またはベンジル基を表す]
で表されるベンズイミダゾリジニウムカチオンであることを特徴とする、請求項2の塩。
【請求項9】
3及びR4基が異なることを特徴とする、請求項6、7及び8のいずれか一つの塩。
【請求項10】
カチオンが、次の一般式
【化6】

[式中、R20は、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基、アリール基またはベンジル基を表し、そして
21、R22、R23、R24及びR25は、互いに独立して、H原子、F、Clまたは炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状アルキル基を表す]
で表されるN−オルガノ−ピリジニウムイオンであることを特徴とする、請求項2の塩。
【請求項11】
次の一般式
【化7】

[式中、R1は、炭素原子数1〜20の線状もしくは分枝状のフッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアルキル基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアリール基、2−ニトロアリール基、4−ニトロアリール基、2,4−ジニトロアリール基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたベンジル基を表すか、あるいは
CN、CO−H、CO−アリール基、またはCO−アルキル基を表すか、
あるいは
1は−SO2−R2であり、この際、R2は、炭素原子数1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基、またはアリール基、またはベンジル基を表し、これらのアルキル基、ベンジル基またはアリール基はフッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されている]
で表されるアニオンを含む塩の製造方法であって、上記式(I)のアニオンの次式
【化8】

で表される対応する酸を、対応するカチオンの化合物と有機溶剤中で反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
有機溶剤が、純粋な脂肪族、不飽和もしくは芳香族炭化水素、例えばトルエン、部分的にもしくは完全にハロゲン化された炭化水素(例えば、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、FCKW、FKW、フリゲン)、有機アミン、エーテル、アルコール(場合により水との混合物)、ケトン、DMF、DMSO、HMPT、有機カーボネート、カルボン酸アミド及びカルボン酸エステル、及びテトラアルキル尿素の群から選択されることを特徴とする、請求項11の方法。
【請求項13】
カチオンが第四アンモニウムカチオンであり、そしてアンモニウム塩が、前記アニオンの対応する酸と、第四アンモニウム水酸化物類との反応によって製造されることを特徴とする、請求項11または12の方法。
【請求項14】
カチオンがグアニジニウムイオンであり、そしてグアニジニウム塩が、イオン交換を介した前記アニオンの対応する酸とグアニジニウムイオンとの反応によって製造されることを特徴とする、請求項11または12の方法。
【請求項15】
カチオンがホスホニウムイオンであり、そしてホスホニウム塩が、前記アニオンの対応する酸と、アルキル−アルキリデン−ホスホランまたはアリール−アルキリデン−ホスホランとの反応によって製造されることを特徴とする、請求項11または12の方法。
【請求項16】
カチオンが2−アルキル置換イミダゾリウム−、イミダゾリジニウム−またはベンズイミダゾリウム−カチオンであり、そしてその塩が、前記アニオンの対応する酸と、1,3−ジアルキル−2−アルキレン−イミダゾリン、1,3−ジアリール−2−アルキレン−イミダゾリン、1,3−ジアルキル−2−アルキレン−ベンズイミダゾール及び1,3−ジアルキル−2−ベンジリデン−イミダゾールの群から選択されるケテン−N,N−ジアセタールと反応させることによって製造されることを特徴とする、請求項11または12の方法。
【請求項17】
カチオンがN−オルガノ−ピリジニウムカチオンであり、そしてその塩が、前記アニオンの対応する酸と、N−オルガノ−ピリジニウムカチオンを含む塩との反応によって製造されることを特徴とする、請求項11または12の方法。
【請求項18】
バッテリー、ガルバニー電池及び蓄電池の電解質システムのためのイオン性液体の成分としての、請求項1〜10のいずれか一つに記載の塩の使用。
【請求項19】
リチウムイオン蓄電池における、請求項18の塩の使用。
【請求項20】
多相系触媒反応のための溶媒としての、請求項1〜10のいずれか一つに記載の塩の使用。
【請求項21】
非水系電解質としての、請求項1〜10のいずれか一つに記載の塩の使用。
【請求項22】
クロマトグラフィにおける移動相及び/または固定相としての、請求項1〜10のいずれか一つに記載の塩の使用。
【請求項23】
ケテン−N,N−ジアセタールを、N−H酸、O−H酸、C−H酸またはハロゲン化水素酸と有機溶剤中で反応させることを特徴とする、イオン性液体の製造方法。
【請求項24】
酸が、DMSO中で測定して15またはそれ未満のpKA値を有するハロゲン化水素酸並びにフルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロリン酸、フルオロヒ酸、フルオロアンチモン酸、フルオロ硫酸、非金属もしくは金属の鉱酸及びオキソ酸; HC(SO2CF33、HN(SO2CF32、ペンタフルオロフェノール、HBF4、H2SiF6、HPF6、HAsF6、HSbF6、HSO3F、HF、HCl、HBr、HI、並びにオキソ酸、すなわち硝酸、硫酸、塩酸、臭素酸、リン酸、クロム酸、チタン酸、タングステン酸、バナジン酸及びモリブデン酸から選択されるオキソ酸から選択されることを特徴とする、請求項23の方法。
【請求項25】
アルキル−アルキリデン−ホスホランまたはアリール−アルキリデン−ホスホランを、以下の一般式
【化9】

[式中、R1は、炭素原子数が1〜20の線状もしくは分枝状のフッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアルキル基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたアリール基、2−ニトロアリール基、4−ニトロアリール基、2,4−ジニトロアリール基、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されたベンジル基を表すか、あるいは
CN、CO−H、CO−アリール基またはCO−アルキル基を表すか、あるいは
1は−SO2−R2であり、この際、R2は、炭素原子数が1〜20の分枝状もしくは非分枝状アルキル基、またはアリール基、またはベンジル基を表し、これらのアルキル基、ベンジル基またはアリール基は、フッ素化されていないかまたは部分的にもしくは完全にフッ素化されている]
で表される酸と、有機溶剤中で反応させることを特徴とする、イオン性液体の製造方法。
【請求項26】
有機溶剤が、純粋な脂肪族炭化水素、不飽和炭化水素及び芳香族炭化水素、例えばトルエン、部分的にもしくは完全にハロゲン化された炭化水素(例えばクロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、FCKW、FKW、フリゲン)、有機アミン、エーテル、アルコール(場合により水との混合物)、ケトン、DMF、DMSO、HMPT、有機カーボネート、カルボン酸アミド及びカルボン酸エステル、及びテトラアルキル尿素から選択されることを特徴とする、請求項23〜25のいずれか一つの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−537463(P2009−537463A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510278(P2009−510278)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000892
【国際公開番号】WO2007/131498
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(506110690)フィリップス−ウニベルジテート・マールブルク (8)
【Fターム(参考)】