説明

ペンダント複素環含有基を有するポリマーおよびこれらのポリマーを含有する潤滑油組成物

本開示発明は、複素環含有基を有するポリマー、ならびに該ポリマーを含有する濃縮物および潤滑油組成物に関する。本発明はまた、本発明に開示されるポリマーを含む濃縮物および潤滑油組成物にも関する。本発明のポリマーは、潤滑油組成物におけるZDDPの部分的または完全な代替品として使用されることができ、それによって、所望のEPおよび/または耐摩耗特性を有し、同時にリン汚染の低減または除去を考慮するそのような潤滑油組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンダント複素環含有基を有するポリマー、ならびにこれらのポリマーを含有する濃縮物および潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
数十年間、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)が、極圧(EP)添加剤および耐摩耗添加剤としてエンジンオイル中で使用されてきた。しかしながら、これらの化合物の使用に伴う問題は、排気ガス処理装置において使用される触媒をリンが汚染し、それによりそれらの装置の効率を低下させることである。この問題に対応して、リン濃度は、いくつかのSociety of Automotive Engineers(SAE)乗用車エンジンオイル分類について低減されてきた。ILSAC GF−1の導入に伴い、リンレベルは、1200百万分率(ppm)以下に制限され、GF−3の導入に伴い、1000ppmに制限された。しかしながら、これらのレベルのリンであっても、触媒汚染がいまだに問題である。従って、問題は、適切なエンジン潤滑を提供し、同時に、触媒汚染を低減することである。本開示発明は、少なくとも1つの実施形態において、この問題に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、以下の式により表される単位
【0004】
【化1】

および以下の式により表される単位を含むポリマーに関する
【0005】
【化2】

式中:R、R、RおよびRは独立して、ヒドロカルビル基であり、RおよびRは独立して、水素であってもよく;XおよびXの一方はSであり、XおよびXの他方はOであり;xは、ポリマー中の式(I)により表される単位の数であり;yは、ポリマー中の式(II)により表される単位の数であり;yのxに対する比は、約0.1〜約20の範囲にあり;ポリマーは、約5,000〜約1,000,000の範囲の重量平均分子量、および約1〜約15の範囲の多分散性を有する。
【0006】
本発明はまた、上記のポリマーを含む濃縮物および潤滑油組成物にも関する。本発明のポリマーは、潤滑油組成物におけるZDDPの部分的または完全な代替品として使用されることができ、それによって、所望のEPおよび/または耐摩耗特性を有し、同時にリン汚染の低減または除去を考慮するそのような潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
用語「ヒドロカルビル」は、分子の残部に結合された基を表す場合、本発明の文脈内において、純粋に炭化水素の、または主に炭化水素の特性を有する基を表し得る。これらの基としては以下のものが含まれる:
(1)純粋な炭化水素基;すなわち、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、脂肪族−および脂環式−置換芳香族基、芳香族−置換脂肪族基および芳香族置換脂環式基など、ならびに、環が分子の別の部分を介して完結されている環状基(すなわち、任意の2つの指定された置換基が一緒になって脂環式基を形成し得る)。これらには、アルキル基、アルキレン基などが含まれ得る。例としては、メチル、メチレン、オクチル、シクロヘキシル、フェニル等が含まれ得る。
【0008】
(2)置換炭化水素基;すなわち、その基の主な炭化水素の特徴を変えない非炭化水素置換基を含有する基。例としては、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アシル等が含まれる。
【0009】
(3)ヘテロ基;すなわち、特徴においては炭化水素が主であるが、炭素以外の原子を、それ以外は炭素原子で構成される鎖または環内に含有する基。例としては、窒素、酸素および硫黄が含まれる。
【0010】
一般に、約3個以下の、1つの実施形態においては1個以下の、置換基またはヘテロ原子が、ヒドロカルビル基中の各10個の炭素原子について存在し得る。
【0011】
用語「ヒドロカルビル」は、上述のタイプの多価基も包含し、これは−R−と書かれ得る。このような基は、「ヒドロカルビレン」基と呼ばれることもある。
【0012】
ヒドロカルビル、アルキル、アルケニルなどの用語と共に本明細書中において用いられる用語「低級」は、合計で7個までの炭素原子を含有する基を表し得る。
【0013】
用語「油溶性」は、鉱油中に25℃でリットル当たり少なくとも約0.5グラム程度まで溶解可能な物質を表し得る。
【0014】
用語「TBN」は、全塩基価を表し得る。これは、物質の塩基性の全てまたは一部を中和するのに必要とされる酸(過塩素酸または塩酸)の量であり、試料1グラム当たりのKOHのミリグラムとして表される。
【0015】
ランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたは星形ポリマーの形であり得る本発明のポリマーは、以下の式により表される単位
【0016】
【化3】

および以下の式により表される単位を含み得る
【0017】
【化4】

Rは、1〜約22個の炭素原子、1つの実施形態においては約12〜約18個の炭素原子、1つの実施形態においては約16〜約18個の炭素原子のヒドロカルビル(例えば、アルキル)基を含み得る。1つの実施形態において、Rは、2−エチルヘキシルを含み得る。1つの実施形態において、Rは、約12〜約15個の炭素原子のアルキル基を含み得る。1つの実施形態において、Rは、C12〜C18アルキル基、2−エチルヘキシル基、ブチル基、メチル基、またはそれらのうちの2つ以上の混合を含み得る。1つの実施形態において、Rは、2−エチルヘキシルとC12〜C15アルキルとの混合を含み得る。
【0018】
式(Ia)において、Xは原子を表しており、その一方は硫黄であり、他方は酸素である。(Ia)に対応するモノマーの通常の合成条件下で、この物質は、以下の式に対応する物質を含むか、あるいは大部分または主にその物質であり
【0019】
【化5】

および本明細書中でのこの構造の使用は、より一般的な構造(Ia)の物質の存在を除外することを一般的に意図するものではないないと考えられる。以下でより具体的な構造により表される物質が、OおよびS原子が同様に反対にされた物質も含有し得ることも意図される。
【0020】
は、1〜約20個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約8個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約4個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約2個の炭素原子のアルキレン基を含み得る。1つの実施形態において、Rは、メチレン基を含み得る。
【0021】
およびRは独立して、水素または1〜約22個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約15個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約8個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約4個の炭素原子のアルキル基を含み得る。1つの実施形態において、RおよびRは各々、メチルを含み得る。
【0022】
xは、ポリマー中の式(Ia)または(I)により表される単位の数である。yは、式(II)により表される単位の数である。当該単位は、「モノマー単位」または「反復単位」と呼ばれることがあるが、後者の術語または式(Ia)、(I)、もしくは(II)の構造は、そのような単位のブロックまたは連続した鎖の一部であること、または必然的にそうであることを要求することを意図しない。すなわち、ポリマーは、ランダムポリマーまたはブロックコポリマーもしくは任意の他の構成あるいはそれらの変形(例えば、ジブロック、トリブロック、テーパードブロック、星形)であり得る。xとyの比は、約0.1〜約20、1つの実施形態において約0.3〜約20、1つの実施形態において約0.5〜約20、1つの実施形態において約0.7〜約20、1つの実施形態において約0.9〜約20、1つの実施形態において約1〜約20、1つの実施形態において約1〜約5、1つの実施形態において約2〜約4、1つの実施形態において約3〜約4.5の範囲にあり得る。
【0023】
ポリマーは、約5,000〜約1,000,000の範囲、1つの実施形態において約5,000〜約500,000の範囲、1つの実施形態において約200,000〜約300,000の範囲、1つの実施形態において約20,000〜約60,000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。ポリマーは、約1〜約15、1つの実施形態において約1〜約7の範囲の多分散性(Mw/Mn)を有し得る。
【0024】
1つの実施形態において、ポリマーは、以下の式により表される単位
【0025】
【化6】

および以下の式により表される単位を含み得る
【0026】
【化7】

式中、R、xおよびyは、上記で定義された通りである。
【0027】
1つの実施形態において、ポリマーは、約15,000〜約25,000の範囲、1つの実施形態において約19,000〜約23,000の範囲、1つの実施形態において約21,000〜約22,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有し得る。ポリマーは、約200,000〜約300,000の範囲、1つの実施形態において約240,000〜約260,000の範囲、1つの実施形態において約250,000のMwを有し得る。ポリマーは、約7〜約15、1つの実施形態において約10〜約13の範囲の多分散性を有し得る。yのxに対するの比は、約3〜約4.5、1つの実施形態において約3.5〜約4.2、1つの実施形態において約3.8〜約3.9または約4.0の範囲にあり得る。
【0028】
1つの実施形態において、ポリマーは、約5000〜約15,000の範囲、および1つの実施形態において約9000〜約12,000の範囲のMnを有し得る。Mwは、約20,000〜約60,000の範囲、1つの実施形態において約35,000〜約45,000の範囲にあり得る。多分散性は、約1〜約7の範囲、1つの実施形態において約3〜約5の範囲にあり得る。yのxに対する比は、約1.5〜約4の範囲、1つの実施形態において約1.5〜約2.5の範囲にあり得る。
【0029】
本発明のポリマーは、以下の式(I−1)により表される複素環式モノマーを、以下の式(II−1)により表されるアクリレートまたはメタクリレートモノマーと共重合させることにより製造され得る:
【0030】
【化8】

式(I−1)および(II−1)において、R、R、RおよびRは、上記で示された意味を有する。アクリレートまたはメタクリレートモノマーと複素環式モノマーのモル比は、yのxに対する比について上記で示された範囲にあり得る。反応は、連鎖移動剤(例えば、N−ドデシルメルカプタン)有りまたは無しで、触媒または開始剤(例えば、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートまたはアゾビス(イソブチロニトリル))を用いて実施され得る。
【0031】
1つの実施形態において、本発明のポリマーは、式(I−A−I)により表される複素環式モノマーを、式(II−A−I)により表されるアクリレートモノマーと共重合させることにより製造され得る:
【0032】
【化9】

式(I−1)および(I−A−1)により表される複素環式モノマーは、触媒(例えば、LiBrのようなアルカリ金属ハロゲン化物)の存在下でオキシランをCSと反応させることにより製造され得る。反応は、以下の反応式に従って進行し得る:
【0033】
【化10】

もしくはそれらの混合物。反応は通常、発熱を伴うので、反応物は、攪拌しつつかつ一般的には加熱せずに反応器に充填され得る。ひとたび反応が発熱温度(典型的には最高約50℃)に達すると、反応混合物は、完全反応を確実にするため、その温度で保持され得る。典型的には約1〜8時間の反応時間の後、揮発性物質が減圧下で除去され、残留物が濾過されて最終生成物がもたらされ得る。この反応は、溶媒の存在下で実施されてもよく、溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが含まれる。このタイプの反応は、参照により本明細書中に組み込まれるKihara et al,“Preparation of 1,3−Oxathiolane−2−thiones by the Reaction of Oxirane and Carbon Disulfide,”J.Org.Chem.1995,60,473−475に開示されている。式(I−A−1)によって表される複素環式モノマーの調製は、以下の実施例1に示してある。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
282グラムのグリシジルメタクリレート、8.7グラムのLiBr、および200mlのテトラヒドロフランをフラスコに充填することにより複素環式モノマーを調製する。温度を25℃未満に保ちつつ、185グラムのCSを添加漏斗を介して2時間にわたり添加する。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次に一晩放置する。反応混合物を真空にかけて揮発性物質を除去する。反応混合物に空気を通して泡立たせることにより重合を防止する。ストリッピングの間、温度を20℃未満に保つ。反応混合物を2リットルのメタノールで抽出し、次に濾過して固形物を除去する。濾液を収集し、15℃で減圧下でメタノールを除去し、黄色残留物の形状の340グラムのモノマーが残される。
【0035】
以下の実施例は、本発明のポリマーの調製を示す。
【0036】
(実施例2)
52グラムの実施例1の複素環式モノマー、249グラムのC12〜C15アルキルメタクリレート、175グラムのトルエン、および10グラムのアゾビス(イソブチロニトリル)をフラスコに充填する。フラスコの内容物を窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃に加熱する。温度が60℃に達すると、重合が開始される。反応温度を、60℃で1時間維持する。次に反応混合物を濾過する。生成物を90グラムの希釈油と混合する。60〜70℃で減圧下で溶媒を除去する。生成物を単離したところ、生成物は、濃厚で粘着性の黄色ポリマー混合物の形状である。このポリマー混合物は、ポリマーAと呼ばれ得る。このポリマーは、Mn=21394、Mw=249409、および多分散性=11.66を有する。
【0037】
(実施例3)
50グラムの実施例1の複素環式モノマー、186グラムのC12〜C15アルキルメタクリレートおよび240グラムのトルエンを40℃に加熱する。混合物を濾過して、存在し得るLiBrおよびどのようなオリゴマーも除去する。次に混合物をフラスコに充填し、4.72グラムのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートおよび4.72グラムのN−ドデシルメルカプタンを添加する。温度を100℃で4時間維持する。60グラムの希釈油を添加する。反応混合物を100℃で1時間、真空ストリップして揮発性物質を除去する。生成物を濃厚な橙色油として単離する。この生成物は、ポリマーBと呼ばれ得る。このポリマーは、GPCにより測定した場合、Mn=10785、Mw=41522、および多分散性=3.85を有する。
【0038】
潤滑油組成物中の本発明のポリマーの濃度は、約1〜約99重量%、1つの実施形態において約70〜約95重量%の範囲にあり得る。
【0039】
潤滑油組成物は、過半量で存在し得る1つ以上の基油を含み得る。基油は、潤滑油組成物の約60重量%超、1つの実施形態において約70重量%超、1つの実施形態において約80重量%超、1つの実施形態において約85重量%超の量で存在し得る。潤滑油組成物は、上記ポリマーのうちの1つ以上を含み得る。潤滑油組成物は、1つ以上のジアルキルジチオリン酸亜鉛、1つ以上のアルカリまたはアルカリ土類金属含有清浄剤、分散剤として機能し得る1つ以上のアシル化窒素含有化合物、および/または1つ以上のホウ素含有化合物をさらに含み得る。潤滑油組成物は、当該技術分野において知られた1つ以上の他の添加物を含み得る。
【0040】
潤滑油組成物は、100℃で最大約16.3mm/sec、1つの実施形態において100℃で約5〜約16.3mm/secの範囲、1つの実施形態において100“Cで約6〜約13mm/secの範囲の粘度を有し得る。
【0041】
潤滑油組成は、0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W−40、15W−50、20Wまたは30WのSAE粘度グレードを有し得る。
【0042】
潤滑油組成物は、最大約1重量%、1つの実施形態において最大約0.5重量%、1つの実施形態において約0.01重量%〜約1重量%の範囲、1つの実施形態において約0.01重量%〜約0.5重量%の範囲の硫黄含有量によって特徴付けられ得る。
【0043】
潤滑油組成物は、最大約0.12%、1つの実施形態において最大約0.10%、1つの実施形態において最大約0.08%、1つの実施形態において最大約0.05重量%、1つの実施形態において約0.01〜約0.12%の範囲、1つの実施形態において約0.01〜約0.10%の範囲、1つの実施形態において約0.01〜約0.08%の範囲、1つの実施形態において約0.01〜約0.06%の範囲、1つの実施形態において約0.02〜約0.12%の範囲、1つの実施形態において約0.02〜約0.10%の範囲、1つの実施形態において約0.02〜約0.08%の範囲、1つの実施形態において約0.02〜約0.06%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.12重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.10重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.08重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.06重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03重量%〜約0.05重量%の範囲のリン含有量によって特徴付けられ得る。
【0044】
潤滑油組成物は、最大約0.2重量%の範囲、1つの実施形態において約0.01〜約0.2重量%の範囲、1つの実施形態において約0.02〜約0.12重量%の範囲、1つの実施形態において約0.05〜約0.1重量%の範囲のホウ素含有量を有し得る。
【0045】
ASTM D−874−96の手順により決定される潤滑油組成物の灰分含有量は、約0.3〜約1.4重量%の範囲、1つの実施形態において約0.3〜約1.2重量%の範囲、1つの実施形態において約0.3〜約1.0重量%の範囲、あるいは約0.2〜約0.6または約0.1〜約0.5重量%の範囲にあり得る。
【0046】
潤滑油組成物は、最大約100ppm、1つの実施形態において最大約50ppm、1つの実施形態において最大約10ppmの塩素含有量によって特徴付けられ得る。
【0047】
潤滑油組成物中で使用される基油は、American Petroleum Institute(API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)で定められているグループI〜Vの中の基油のいずれかを含み得る。5つの基油グループは以下の通りである:
【0048】
【数1】

基油は、天然油、合成油またはそれらの混合物であり得る。天然油としては、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)ならびに、液体石油のような鉱物性潤滑油およびパラフィン系、ナフテン系または混合パラフィン−ナフテン系タイプの溶媒処理または酸処理された鉱物性潤滑油が含まれる。石炭または頁岩から誘導される油も有用である。
【0049】
合成油としては、炭化水素油、例えば、重合およびインターポリマー化されたオレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体および同族体が含まれ得る。合成油としては、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等により変性されているアルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーならびにそれらの誘導体;ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸等)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール等)とのエステル;ならびにC〜C12モノカルボン酸およびポリオールまたはポリオールエーテルから製造されるエステルが含まれる。
【0050】
1つの実施形態において、基油は、ポリアルファオレフィン(PAO)、フィッシャー−トロプシュ合成炭化水素から誘導される油、あるいは、水素異性化フィッシャー−トロプシュ炭化水素油またはワックスが含まれ得る。1つの実施形態において、グループIIまたはグループIIIの油、あるいはそれらの混合物が使用され得る。1つの実施形態において、グループIIIおよびグループIVの油の混合物が使用され得る。
【0051】
本明細書中で上記で開示されたタイプの天然または合成のいずれかの未精製、精製および再精製油(ならびに、これらのうちの任意の2つ以上の混合物)が基油として使用され得る。
【0052】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、以下の式により表される1つ以上のジチオリン酸
【0053】
【化11】

および/またはその金属塩から誘導することができ、式(III)において:RおよびRは独立して、ヒドロカルビル基である。式IにおけるRおよびRの炭素原子の平均総数は、最大で約100個または最大で約50個、1つの実施形態において約4〜約100個の範囲、1つの実施形態において約4〜約60個の範囲、1つの実施形態において約4〜約50個の範囲にあり得る。他の実施例において、RおよびRの炭素原子の総数は、約6〜約40個または約6〜約20個もしくは約6〜約16個の範囲にあり得る。RおよびRは独立して、アルキル基、アルケニル基、芳香族基、またはそれらのうちの2つ以上の混合であり得る。RおよびRは、1つ以上の第1アルコール、1つ以上の第2アルコール、または少なくとも1つの第1アルコールと少なくとも1つの第2アルコールとの混合物から誘導され得る。RおよびRは互いに同じであってもよいが、それらは異なってもいてもよく、一方または両方が混合であってもよい。RおよびRの例としては、イソプロピル、1,3−ジメチルブチル、イソオクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ドデセニル、フェニル、ナフチル、アルキルフェニル、アルキルナフチル、フェニルアルキル、ナフチルアルキル、アルキルフェニルアルキル、アルキルナフチルアルキル、およびそれらの混合が含まれ得る。リン含有化合物は、4−メチル−2−ペンタノールから誘導されるジアルキルジチオリン酸塩であり得る。
【0054】
1つの実施形態において、2つ以上のリン含有化合物を潤滑油組成物中で使用することができ、潤滑油組成物がエンジンに添加される時点で潤滑油組成物中に存在するリンの少なくとも約80重量%、1つの実施形態において少なくとも約90重量%、1つの実施形態において少なくとも約95重量%、1つの実施形態において少なくとも約98重量%が、式(III)により表される化合物中に存在し得る。
【0055】
1つの実施形態において、リン含有化合物の以下の混合物を使用することができる:4−メチル−2−ペンタノールから誘導されたジアルキルジチオリン酸塩、約70〜約99モルパーセント;および約60重量%イソプロピルアルコールと約40重量%4−メチル−2−ペンタノールとのアルコール混合物から誘導されたジアルキルジチオリン酸塩、約1〜約30モルパーセント。
【0056】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、中性または過塩基性であり得る。過塩基性ジアルキルジチオリン酸亜鉛の金属比は、少なくとも約1.15:1、1つの実施形態において約1.15:1〜約1.5:1の範囲、1つの実施形態において約1.2:1〜約1.4:1の範囲にあり得る。1:1〜1.07:1の範囲の金属比、または最大約1.12のZn/P重量比は、中性または実質的に中性であると呼ばれることがある。
【0057】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、最大約0.12重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.12重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.10重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.08重量%の範囲、1つの実施形態において約0.03〜約0.05重量%の範囲のリン濃度を有する潤滑油組成物を提供するのに十分な濃度で、潤滑油組成物中で用いられ得る。
【0058】
アシル化窒素含有化合物は、少なくとも約30個の脂肪族炭素原子を含む置換基を含むことができ、少なくとも1つのカルボン酸アシル化剤を少なくとも1つのアミノ化合物と反応させることによって製造され得る。アシル化剤は、イミド、アミド、アミジンまたは塩結合を介してアミノ化合物に連結され得る。少なくとも約30個の脂肪族炭素原子を含む置換基は、分子のカルボン酸アシル化剤由来部分、または分子のアミノ化合物由来部分のいずれにあってもよい。
【0059】
これらの置換基は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセン、1−オクテン等のような、2〜約10個の炭素原子を有するモノ−またはジ−オレフィンのホモ−またはインターポリマー(例えば、コポリマー、ターポリマー)から製造されるヒドロカルビル基であり得る。典型的には、これらのオレフィンは、1−モノオレフィンである。置換基はまた、このようなホモ−またはインターポリマーのハロゲン化(例えば、塩素化または臭素化)類似体からも誘導され得る。
【0060】
置換基の有用な供給源は、約35〜約75重量パーセントのブテン含有量および約30〜約60重量パーセントのイソブテン含有量を有するC精製流の、三塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素のようなルイス酸触媒の存在下での重合により得られるポリ(イソブテン)を含み得る。これらのポリブテンは、主にイソブテン反復単位を含み得る。
【0061】
置換基は、高メチルビニリデン異性体含有量、すなわち、少なくとも約50%のメチルビニリデン、1つの実施形態において少なくとも約70%のメチルビニリデンを有するポリイソブテンから誘導されたポリイソブテン基を含み得る。これらの高メチルビニリデンポリイソブテンとしては、三フッ化ホウ素触媒を用いて調製されたものが含まれ得る。
【0062】
アシル化剤の数平均分子量は、約300から約5,000、10,000または20,000まで変わり得る。1つの実施形態において、アシル化剤は、置換基がポリイソブテンのようなポリアルケンから誘導されるヒドロカルビル置換基およびコハク酸基を含有するヒドロカルビル置換コハク酸または無水物であり得る。この酸または無水物は、その構造内における、置換基の各当量に対して平均で少なくとも約1個のコハク酸基、1つの実施形態において置換基の各当量に対して約1〜約2.5個のコハク酸基の存在によって特徴付けられ得る。ポリアルケンは、少なくとも約700、1つの実施形態において約700〜約3000、1つの実施形態において約900〜約2200の数平均分子量
【0063】
【数2】

を有し得る。重量平均分子量
【0064】
【数3】


【0065】
【数4】

の比(すなわち、
【0066】
【数5】

)は、約1〜約10、1つの実施形態において約1.5〜約5、1つの実施形態において約2.5〜約5の範囲にあり得る。置換基の当量数は、その置換基が誘導されるポリアルケンの
【0067】
【数6】

の値で、置換コハク酸または無水物中に存在する置換基の全重量を割ることによって得られる商に相当する数であると見なされ得る。
【0068】
アミノ化合物は、その構造内における、少なくとも1つのNH<基の存在によって特徴付けることができ、モノアミンまたはポリアミンであり得る。2つ以上のアミノ化合物の混合物が1つ以上のアシル化試薬との反応おいて使用され得る。1つの実施形態において、アミノ化合物は少なくとも1つの第1アミノ基(すなわち、−NH)を含み得る。1つの実施形態において、アミンは、ポリアミン、例えば、いずれか一方または両方が第1または第2アミンである少なくとも2つの−NH−基を含むポリアミンであり得る。アミンは、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式アミンであり得る。ヒドロキシ置換アミン、例えば、アルカノールアミン(例えば、モノ−またはジエタノールアミン)、およびそのようなアルカノールアミンのヒドロキシ(ポリヒドロカルビルオキシ)類似体が使用され得る。
【0069】
有用なアミンの中には、ポリアルキレンポリアミンを含む、アルキレンポリアミンがある。アルキレンポリアミンとしては、以下の式により表されるものが含まれ得る
【0070】
【化12】

式(IV)中、nは、1〜約14であり;各Rは独立して、水素原子、最大約30個の原子を有するヒドロカルビル基またはヒドロキシ置換もしくはアミン置換ヒドロカルビル基であるか、あるいは、異なる窒素原子上の2つのR基が一緒に結合されてU基を形成していてもよいが、ただし、少なくとも1つのR基は水素原子であり、Uは約2〜約10個の炭素原子のアルキレン基である。Uはエチレンまたはプロピレンであり得る。各Rが、水素、またはエチレンポリアミンおよびエチレンポリアミンの混合を伴うアミノ置換ヒドロカルビル基である、アルキレンポリアミンが有用である。通常、nは、約2〜約10の平均値を有する。このようなアルキレンポリアミンとしては、メチレンポリアミン、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミン、ペンチレンポリアミン、ヘキシレンポリアミン、ヘプチレンポリアミン、アミノプロピル化エチレンポリアミン等が含まれる。このようなアミンの高級同族体および関連するアミノアルキル置換ピペラジンが含まれ得る。
【0071】
有用であり得るアルキレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、トリメチレンジアミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジンなどが含まれ得る。上記で例示したアルキレンアミンの2つ以上を縮合することによって得られるもののような高級同族体が使用され得る。上記のポリアミンの任意の2つ以上の混合物が使用され得る。
【0072】
有用なポリアミンとしては、ポリアミン混合物のストリッピングの結果として生じるものが含まれ得る。この場合、低分子量ポリアミンおよび揮発性汚染物質がアルキレンポリアミン混合物から除去されて、「ポリアミンボトム」としばしば呼ばれるものが残留物として残される。一般に、アルキレンポリアミンボトムは、約2重量%未満、1つの実施形態において約1重量%未満の約200℃未満で沸騰する物質を含むとして特徴付けられ得る。
【0073】
アシル化窒素含有化合物としては、アミン塩、アミド、イミド、アミジン、アミド酸、アミド塩およびイミダゾリン類ならびにそれらの混合物が含まれ得る。アシル化窒素含有化合物をアシル化剤およびアミノ化合物から調製するため、1つ以上のアシル化剤および1つ以上のアミノ化合物が、任意選択的に通常は液体の実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下で、80℃から反応物または生成物のいずれかの分解温度までの範囲の温度であるが、通常は約100℃〜約300℃の範囲の温度で、ただし300℃が反応物または生成物のいずれかの分解点を超えないという条件で、加熱され得る。約125℃〜約250℃の温度が用いられ得る。アシル化剤およびアミノ化合物は、アシル化剤1当量当たり、約0.5〜約3モルのアミノ化合物をもたらすのに十分な量で反応させられ得る。アシル化剤の当量数は、アシル化剤中に存在するカルボキシ基の数により変わり得る。アシル化剤の当量数を決定する際、カルボン酸アシル化剤として反応できないカルボキシル官能基は除外される。しかしながら、一般に、アシル化剤中の各カルボキシ基について1当量のアシル化剤が存在する。
【0074】
潤滑油組成物における比較的高TBNを有するアシル化窒素含有化合物の使用は、過塩基性低分子量ジアルキルジチオリン酸亜鉛中のリンの揮発性を低下させる傾向があり得る。従って、1つの実施形態において、アシル化窒素含有化合物は、少なくとも約2、1つの実施形態において約2〜約60の範囲、1つの実施形態において約5〜約30の範囲、1つの実施形態において約10〜約20の範囲のTBN(油を含まないで)を有し得る。
【0075】
アシル化窒素含有化合物は、潤滑油組成物中で、約1重量%〜約20重量%の範囲、1つの実施形態において約1重量%〜約10重量%の範囲、1つの実施形態において約1重量%〜約5重量%の範囲の濃度で用いられ得る。
【0076】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属含有清浄剤は、酸性有機化合物のアルカリまたはアルカリ土類金属塩であり得る。酸性有機化合物は、有機硫黄酸、フェノール、カルボン酸、サリキサレート、またはこれらのうちの2つ以上の混合物であり得る。清浄剤は、サリチル酸および/またはサリチレート部分を含む少なくとも1つの基質の少なくとも1つの塩を含み得る。これらの塩は、中性または過塩基性であり得る。前者は、塩陰イオン中に存在する酸性基を中和するのに丁度十分な量の金属陽イオンを含有し;後者は過剰の金属陽イオンを含有し、塩基性、過塩基性、多過塩基性または超塩基性塩としばしば呼ばれる。これらの塩は、約30〜約460の範囲、1つの実施形態において約100〜約400の範囲、1つの実施形態において約200〜約400の範囲、1つの実施形態において約300〜約400の範囲のTBNを有し得る。
【0077】
有機硫黄酸は、スルホン酸、スルファミン酸、チオスルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、部分エステル硫酸、亜硫酸およびチオ硫酸のような油溶性有機硫黄酸であり得る。一般的に、それらは、脂肪族または芳香族スルホン酸の塩である。スルホン酸としては、単核もしくは多核の芳香族または脂環式化合物が含まれる。
【0078】
カルボン酸としては、脂肪族、脂環式、および芳香族の一塩基性および多塩基性カルボン酸、例えば、ナフテン酸、アルキル−またはアルケニル置換シクロペンタン酸、アルキル−またはアルケニル置換シクロヘキサン酸、アルキル−またはアルケニル置換芳香族カルボン酸が含まれ得る。脂肪族酸は、少なくとも約8個の炭素原子、1つの実施形態において少なくとも約12個の炭素原子を含み得る。通常、それらは、約400個以下の炭素原子を有する。脂環式および脂肪族カルボン酸は、飽和または不飽和であり得る。
【0079】
カルボン酸の有用なグループは、油溶性芳香族カルボン酸であり得る。これらの酸は、次の式によって表すことができる:
(R−Ar(CXXH) (V)
式(V)中、Rは、約4〜約400個の炭素原子の脂肪族ヒドロカルビル基であり、aは、1〜4の整数であり、Arは、最大約14個の炭素原子の多価芳香族炭化水素核であり、各Xは独立して、硫黄または酸素原子であり、mは、1〜4の整数であるが、ただし、Rおよびaは、各酸分子についてR基により提供される脂肪族炭素原子が平均で少なくとも約8個あるようなものであることが条件である。
【0080】
カルボン酸の有用なグループは、脂肪族炭化水素置換サリチル酸であり、各脂肪族炭化水素置換基は、平均で少なくとも約8個の炭素原子、1つの実施形態において1置換基当たり少なくとも約16個の炭素原子を含み、それらの酸は1分子当たり1〜3個の置換基を含む。有用な脂肪族炭化水素置換サリチル酸は、C16〜C18アルキルサリチル酸である。有用であるカルボン酸誘導体のグループは、以下の式により表されるラクトンである
【0081】
【化13】

式(VI)中、R、R、R、R、RおよびRは独立して、H、1〜約30個の炭素原子のヒドロカルビル基またはヒドロキシ置換ヒドロカルビル基であるが、ただし、炭素原子の総数はラクトンを脂溶性にするのに十分でなければならないことが条件であり;RおよびRは、一緒に連結されて脂肪族または芳香族環を形成することができ;さらに、aは、0〜4の範囲の数である。有用なラクトンは、アルキル(例えば、ドデシル)フェノールをグリオキシル酸と約2:1のモル比で反応させることによって調製できる。
【0082】
フェノールの中性および塩基性塩(一般的にフェナートとして知られる)もまた、本発明の組成物において有用であり、当業者によく知られている。これらのフェナートが形成されるフェノールは、以下の一般式のものである
(R−(Ar)−(OH) (VII)
式(VII)中、R、a、Ar、およびmは、式(V)に関して本明細書中で上記で説明されたものと同じ意味を有する。
【0083】
サリキサレートは、式(VIII)または式(IX)の単位を少なくとも1つ含む実質的に線状の化合物であり得る:
【0084】
【化14】

【0085】
【化15】

化合物の各端は、式(X)または式(XI)の末端基を有する:
【0086】
【化16】

このような基は、2価の架橋基Aによって連結されており、この架橋基は各連結について同じであっても異なっていてもよく;式(VIII)〜(XI)において、Rは、水素またはヒドロカルビル基であり;Rは、ヒドロキシルまたはヒドロカルビル基であり、jは、0、1、または2であり;Rは、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であり;RがヒドロキシルでありかつRおよびRが独立して、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基のいずれかであるか、さもなければ、RおよびRが両方ともヒドロキシルでありかつRが水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であるかのいずれかであり;ただし、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つが、少なくとも8個の炭素原子を含むヒドロカルビルであり;これらの分子が平均して、単位(VIII)または(X)の少なくとも1つおよび単位(IX)または(XI)の少なくとも1つを含みかつ組成物中の単位(VIII)および(X)の総数と単位(IX)および(XI)の総数の比が約0.1:1〜約2:1である。
【0087】
各出現ごとに同じであっても異なっていてもよい2価の架橋基「A」としては、−CH−(メチレン架橋)および−CHOCH−(エーテル架橋)が含まれ、これらのいずれかが、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価物(例えば、パラホルム、ホルマリン)から誘導され得る。
【0088】
サリキサレート誘導体およびそれらの調製方法は、米国特許第6,200,936号および国際公開第01/56968号においてより詳細に記載されている。サリキサレート誘導体は、大環状ではなくむしろ主として線状の構造を有するが、双方の構造とも用語「サリキサレート」に包含されるものと考えられる。
【0089】
本明細書において上記で記載された酸性有機化合物の2つ以上の中性または塩基性金属塩の混合物は、潤滑油組成物において使用され得る。
【0090】
有用であり得るアルカリおよびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびバリウムが含まれ得る。ナトリウム、リチウムおよびカルシウムが特に有用であり得る。
【0091】
潤滑油組成物におけるナトリウムの使用は、潤滑油組成物中で使用されるリンの揮発性を大きく低下させる傾向があり得る。従って、本発明の1つの実施形態において、清浄剤金属としてのナトリウムの使用は特に有用であり得る。
【0092】
アルカリまたはアルカリ土類金属含有清浄剤は、潤滑油組成物中で、約0.1〜約10重量%の範囲、1つの実施形態において約0.2〜約5重量%パーセントの範囲、1つの実施形態において約0.3重量%〜約3重量%の範囲、1つの実施形態において約0.5〜約2重量%の範囲の濃度で使用され得る。
【0093】
ホウ素含有化合物は、以下の式のうちの1つ以上によって表される化合物であり得る
【0094】
【化17】

式XIII〜XV中、各Rは独立して、有機基であってもよく、任意の2つの隣接R基は、一緒に環状基を形成してもよい。上記のものの2つ以上の混合物が使用され得る。1つの実施形態において、各Rは独立して、ヒドロカルビル基であり得る。各式におけるR基中の炭素原子の総数は、化合物を基油に可溶にするのに十分であり得る。一般的に、R基中の炭素原子の総数は、少なくとも約8個、1つの実施形態において少なくとも約10個、1つの実施形態において少なくとも約12個であり得る。必要とされる、R基中の炭素原子の総数に対する制限は全くないが、実際的な上限は、約400または約500個の炭素原子であり得る。1つの実施形態において、各R基は独立して、1〜約100個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約50個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約30個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約10個の炭素原子のヒドロカルビル基であり得るが、ただし、R基中の炭素の総数は少なくとも約8個であり得るというのが条件である。各R基は、他と同じであってもよいが、それらは異なっていてもよい。有用なR基の例としては、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、アミル、1,3ジメチル−ブチル、2−エチル−1−ヘキシル、イソオクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、2−ペンテニル、ドデセニル、フェニル、ナフチル、アルキルフェニル、アルキルナフチル、フェニルアルキル、ナフチルアルキル、アルキルフェニルアルキル、アルキルナフチルアルキルなどが含まれ得る。
【0095】
1つの実施形態において、ホウ素含有化合物は、以下の式によって表される化合物であり得る
【0096】
【化18】

式(XVI)中:R、R、RおよびRは独立して、1〜約12個の炭素原子のヒドロカルビル基であり;RおよびRは独立して、1〜約6個の炭素原子、1つの実施形態において約2〜約4個の炭素原子、1つの実施形態において約2〜約3個の炭素原子のアルキレン基である。1つの実施形態において、RおよびRは独立して、1〜約6個の炭素原子を含むことができ、1つの実施形態において、各々がt−ブチル基であり得る。1つの実施形態において、RおよびRは独立して、約2〜約12個の炭素原子、1つの実施形態において約8〜約10個の炭素原子のヒドロカルビル基である。1つの実施形態において、RおよびRは独立して、−CHCH−または−CHCHCH−である。
【0097】
1つの実施形態において、ホウ素含有化合物は、以下の式によって表される化合物であり得る:
【0098】
【化19】

式(XVII)中:R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、水素またはヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基の各々は、1〜約12個の炭素原子、1つの実施形態において1〜約4個の炭素原子を含み得る。1つの例は、2,2’−オキシ−ビス−(4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)である。
【0099】
有用なホウ素含有化合物は、Crompton Corporationから商品名LA−2607で入手可能である。この材料は、RおよびRが各々t−ブチルであり、RおよびRが2〜約12個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、Rが−CHCH−であり、Rが−CHCHCH−である式(XVI)によって表される構造を有するフェノールボラートと認定され得る。
【0100】
1つの実施形態において、ホウ素含有化合物は、式B(OC11またはB(OCによって表される化合物であり得る。有用なホウ素含有化合物は、Mobilから商品名MCP−1286で入手可能であり;この材料は、ホウ酸エステルと認定され得る。
【0101】
ホウ素含有化合物は、潤滑油組成物中で、最大約0.2重量%の範囲、1つの実施形態において約0.01重量%〜約0.2重量%の範囲、1つの実施形態において約0.02重量%〜約0.12重量%の範囲、1つの実施形態において約0.05重量%〜約0.1重量%の範囲のホウ素濃度の潤滑油組成物を提供するのに十分な濃度で使用され得る。これらの化合物は、潤滑油組成物に直接添加され得る。しかしながら、1つの実施形態において、それらを、鉱油、合成油(例えば、ジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化(例えば、C10〜C13アルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレンのような実質的に不活性で、通常は液体の有機希釈剤で希釈して添加濃縮物を形成してもよい。これらの濃縮物は、約1重量%〜約99重量%および1つの実施形態において約10重量%〜約90重量%の希釈剤を含み得る。
【0102】
潤滑油組成物はまた、他の潤滑添加剤も含み得る。これらの添加剤としては、例えば、腐蝕抑制剤、酸化防止剤、粘度調整剤、分散性粘度指数調整剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、上記で論じられたもの以外の耐磨耗剤、上記で論じられたもの以外のEP剤、上記で論じられたもの以外の分散剤、上記で論じられたもの以外の清浄剤、流動性調整剤、銅不動態化剤、消泡剤等が含まれ得る。上記の添加剤の各々は、使用時、潤滑油に所望の特性を付与するのに機能上効果のある量で使用され得る。一般的に、これらの添加剤の各々の濃度は、使用時、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%〜約20重量%の範囲、1つの実施形態において約0.01重量%〜約10重量%の範囲にあり得る。
【0103】
上記の潤滑油添加剤は、潤滑油組成物を形成するために基油に直接添加されてもよい。しかしながら、1つの実施形態において、添加剤濃縮物を形成するために、1つ以上の添加剤が、鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化(例えば、C10〜C13アルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレンのような、実質的に不活性な通常は液体の有機希釈剤で希釈されてもよい。これらの濃縮物は、約1重量%〜約99重量%、1つの実施形態において約10重量%〜約90重量%の上記のような希釈剤を含み得る。濃縮物は、潤滑油組成物を形成するために、基油に添加され得る。
【0104】
(実施例4)
以下の表1および表2に示される潤滑油組成物は、ポリマーAまたはBを使用して調製され、鉱油中で調製される。ポリマーAまたはBを用いる配合物1〜3は、本発明の範囲内にある。配合物C−1、C−2およびC−3は、どちらのポリマーも含有せず、比較目的のために提供される。潤滑油組成物は、高周波数往復運動リグ(HFFR)、Cameron Plint(商標)リグ、および#1324 SRVを使用して摩耗痕径および摩擦係数について試験される。
【0105】
高周波数往復運動リグ(HFRR)試験方法は、摩擦および摩耗試験結果を提供する。この方法は、ボール−オン−ディスク試験構成を使用して、完全配合された潤滑油組成物の磨耗、平均摩擦係数およびパーセント油膜形成傾向を定量的に測定する。
【0106】
Cameron Plint試験法は、Cameron Plint(商標)往復運動リグを用いて、摩擦係数、摩耗痕および膜厚について、完全配合された潤滑油組成物を評価する。
【0107】
#1324 SRVは、平坦な幾何形状の上でシリンダを用いて摩擦/燃費を測定するための試験法である。温度は、40℃から120℃まで45分間にわたって傾斜される。最後の15分間についての平均摩擦係数が報告される。
【0108】
圧力示差走査熱量測定(PDSC)は、酸化開始が生じるまでの時間間隔を測定することによって、流体の酸化安定性を測定するように設計された試験である。より高い数値は、より良好な酸化安定性を示す。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

本発明は、様々な実施形態と関連して説明されてきたが、本明細書を読めば、実施形態の様々な変更が当業者に明らかになり得ることが理解されるはずである。従って、添付の特許請求の範囲内に含まれ得るそのような変更を本発明が含むことが理解されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式により表される単位
【化20】

および以下の式により表される単位を含むポリマーであって、
【化21】

式中:R、R、RおよびRは独立して、ヒドロカルビル基であり、RおよびRは独立して、水素であってもよく;XおよびXの一方はSであり、XおよびXの他方はOであり;xは、前記ポリマー中の式(I)により表される単位の数であり;yは、前記ポリマー中の式(II)により表される単位の数であり;yのxに対するの比は、約0.1〜約20の範囲にあり;前記ポリマーは、約5,000〜約1,000,000の範囲の重量平均分子量を有する、ポリマー。
【請求項2】
式(Ia)の前記単位が、以下の式により表される単位を含む
【化22】

請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーがランダムコポリマーである、請求項1または請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーがブロックコポリマーである、請求項1または請求項2に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが星形ポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
Rが、約1〜約22個の炭素原子のヒドロカルビル基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
Rが、約12〜約18個の炭素原子のアルキル基、2−エチルヘキシル基、ブチル基、メチル基、またはそれらのうちの2つ以上の混合を含み;Rがメチレンであり;さらにRおよびRが各々メチルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーの前記重量平均分子量が、約200,000〜約300,000の範囲にあり、yのxに対する前記比が、約3〜約4.5の範囲にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリマーの前記重量平均分子量が、約20,000〜約60,000の範囲にあり、yのxに対する前記比が、約1.5〜約4の範囲にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
以下の式により表される単位
【化23】

および以下の式により表される単位を含むポリマーであって、
【化24】

式中、Rは、約1〜約22個の炭素原子のヒドロカルビル基であり;xは、前記ポリマー中の式(I)により表される単位の数であり;yは、前記ポリマー中の式(II)により表される単位の数であり;yのxに対するの比は、約0.1〜約20の範囲にあり;前記ポリマーは、約5,000〜約1,000,000の範囲の重量平均分子量を有する、ポリマー。
【請求項11】
約1重量%〜約99重量%の少なくとも1つの希釈剤と、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマーとを含む、濃縮物。
【請求項12】
過半量の少なくとも1つの基油と、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマーとを含む、潤滑油組成物。
【請求項13】
前記基油が、鉱油を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記基油が、ポリ−アルファ−オレフィン、フィッシャー−トロプシュ合成炭化水素から誘導される油、または水素異性化フィッシャー−トロプシュ炭化水素油もしくはワックスを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記潤滑油組成物が、少なくとも1つのジアルキルジチオリン酸亜鉛をさらに含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記潤滑油組成物が、約0.02重量%〜約0.08重量%のリン濃度を有する、請求項12〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記潤滑油組成物が、少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類金属含有清浄剤をさらに含む、請求項12〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記アルカリまたはアルカリ土類金属含有清浄剤が、サリチル酸および/またはサリチレート部分を含む少なくとも1つの基質の少なくとも1つの塩を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記潤滑油組成物が、少なくとも30個の脂肪族炭素原子を有する少なくとも1つのアシル化窒素含有化合物をさらに含む、請求項12〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、以下の式により表される少なくとも1つのホウ素含有化合物をさらに含み
【化25】

式(XIII)、(XIV)および(XV)において、各Rが独立して、有機基であり、任意の2つの隣接R基が、一緒に環状基を形成してもよい、請求項12〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記潤滑油組成物が、分散剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、粘度調整剤、分散性粘度指数調整剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、極圧剤、流動性調整剤、銅不動態化剤、消泡剤、またはそれらのうちの2つ以上の混合物、のうちの1つ以上をさらに含む、請求項11〜19のいずれか1項に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−536997(P2010−536997A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521959(P2010−521959)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/073434
【国際公開番号】WO2009/026201
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】