説明

ボイドネットワークを有する化学機械的平坦化パッド

研磨パッドであり、また研磨パッドを作製する方法。該方法は第1の空洞と第2の空洞とを有する金型を用意するステップであって、該第1の空洞は凹部を画定するステップと、該凹部にボイド形成要素を含むポリマーマトリクス材料を供給するステップと、研磨パッドを形成するステップと、化学的/機械的平坦化工程で使用される前に、研磨パッドから該要素の少なくとも一部を取り除き、化学的方法あるいは機械的方法のどちらか一方によって研磨パッドの中にボイドスペースを形成するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は2008年4月11日に出願された米国仮出願番号第61/044,210号の出願日に基づく権利を要求し、その教示は参照により本願に組み込まれる。
【発明の詳細な説明】
【0002】
[発明の分野]
本開示は概して化学機械的平坦化(CPM)パッド、特にパッドマトリクス内にボイド(void)のネットワークを含むCMPパッドに関する。該ボイドに関し、ポリマーマトリクス中に分散した複数の要素をパッドに供給し、該要素を取り除いて、対応するボイドが設けられても良い。
[背景]
CMP(化学機械的平坦化)を、半導体ウェハー、ブランケットシリコンウェハーおよびコンピュータのハードディスクなどの超小型電子機器の製造における加工段階として適用するにあたり、研磨パッドは、研磨剤を含んだあるいは研磨剤を含まないスラリーと共に使用されて、装置の表面が平坦化されてもよい。一般にはオングストロームのオーダーで測定されるが、装置の表面の平坦化を高いレベルで実現するためには、スラリーの流れが装置の表面とパッドとの間で均一に分散される必要がある。このようなスラリーの均一な分散を促進するために、研磨パッドに複数の溝あるいはくぼみ構造を設けてもよい。該複数の溝は、個々に0.010インチから0.050インチの溝幅、0.010インチから0.080インチの深さを有し、隣接する溝との間で0.12インチから0.25インチの間隔をそれぞれ有していてもよい。
【0003】
該溝は上記のような利点をもたらすことが可能であるが、半導体ウェハー上のダイ(あるいは単一のマイクロチップ)レベルでの局所的な平坦化を達成させるには十分ではないかもしれない。これは、マイクロチップ上の溝と例えば相互接続部のような個々のフィーチャとの間に比較的大きな差があるからかもしれない。例えば先進的なULSIおよびVLSIマイクロチップは約0.35マイクロメートル(0.000014インチ)のフィーチャサイズを有していてもよく、これは研磨パッドの各溝の幅および深さより何倍も小さいものである。また、マイクロチップ上のフィーチャサイズは隣接する溝との距離よりも何千倍も小さいものであり、これによってスラリーがフィーチャサイズレベルにおいて非均一に分散されてしまう可能性がある。
【0004】
局所的なフィーチャスケールの平坦化において均一性を向上させる試みとして、CMPパッドメーカーがパッドの表面に凹凸あるいは高低差のある領域を設ける場合もある。これらの凹凸は、20から100マイクロメートル超の範囲のサイズを有していてもよい。このような凹凸は、溝に比べてマイクロチップフィーチャのサイズにより近いサイズを有するものの、その形状およびサイズは研磨工程中に変化する可能性もあり、ダイヤモンド研磨粒子が取り付けられた調整器を用いて研磨パッドの表面を継続的に再生させる必要があるかもしれない。調整器に取り付けられたダイヤモンド研磨粒子は、パッド、スラリーおよび装置の表面の摩擦接触によって変形した表面の凹凸を連続的に削り落し、新たな凹凸を露出させて平坦度の一貫性を保持する。しかし、該調整工程は、鋭いダイヤモンド粒子を用いて変形した凹凸を切断するため、安定的ではないかもしれない。変形した凹凸の切断は良好に制御ができない可能性があり、凹凸のサイズ、形状および分布を変化させてしまうかもしれず、それが平坦度の均一性に変化をもたらしてしまうかもしれない。さらに、調整によって発せられる摩擦熱が、剛性率、硬度および圧縮率などを含むパッドの表面特性を変化させ、平坦度を非均一にしてしまうかもしれない。
[概要]
本開示の一側面は、研磨パッドを作製する方法に関する。該方法は、第1の空洞と第2の空洞とを有する金型を用意するステップを含み、該第1の空洞は凹部を画定する。ボイド形成要素を含むポリマーマトリクス材料は、該凹部に供給されてもよい。研磨パッドが形成され、化学的/機械的平坦化工程で使用される前に、化学的方法あるいは機械的方法のどちらか一方によって、該要素の少なくとも一部が研磨パッドから取り除かれ、ボイドスペースが研磨パッド内に形成されてもよい。
【0005】
本開示の別の側面は研磨のための装置に関する。該装置は、ポリマーマトリクス内に複数のボイドが画定されたポリマーマトリクスを備えるパッドを含んでいてもよく、該ボイドは4:1あるいはそれより大きな長さ対直径の割合を有し、該ボイドは少なくとも部分的に相互接続されている。
【0006】
本開示のもう一つの側面は、研磨の方法に関する。該方法は表面を有する基板であって研磨のための基板を用意するステップと、該基板の該表面の少なくとも一部に水性のスラリーを供給するステップと、ポリマー(polymeric)マトリクス内に複数のボイドが画定されたポリマーマトリクスを備えるパッドを供給するステップであって、該ボイドは4:1あるいはそれより大きな長さ対直径の割合を有し、該ボイドは少なくとも部分的に相互接続されているステップと、該基板、該水性スラリーおよび該パッドの相互作用によって該表面を研磨するステップとを含んでいてもよい。
【0007】
本開示の更にもう一つの側面は、電子基板の表面を研磨するための研磨パッドに関する。このようなパッドは、ボイドを含むポリマーマトリクスを含んでいてもよく、該パッドは研磨のための第1の作業面と第2の面とを有する。また該パッドは該パッドの作業面から該第2のパッド面まで延出する厚さTを有し、該ボイドは該パッド表面から厚さ0.95(T)までの領域にのみ配置されているものとして特徴づけられていてもよい。
【0008】
最後に、本開示のまたもう一つの側面は、ボイドを含むポリマーマトリクスを有し、電子基板の表面を研磨するための研磨パッドであって、ボイドを含むポリマーマトリクスを有する該パッドが研磨のための第1の作業面と第2の面とを有する研磨パッドに関する。また該パッドは、パッド作業面から第2のパッド面まで延出している厚さTによって特徴づけられてもよい。該研磨パッドは、ボイドが均一に分散されている領域と、ボイドが存在しない領域とを含んでもよく、ボイドが存在しない領域は、パッド体積の少なくとも5.0%を占めていてもよい。
【0009】
本開示の上記のおよびその他の特徴、またそれらを実現する方法は、付随の図面と共に、本明細書中で説明される以下の実施例の記載を参照することによって、より明確にかつより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】本明細書中で検討されているCMPパッドに含まれるボイドネットワークの一例を示す。
【図1b】ボイドネットワークを含むCMPパッドの断面図を示す。
【図1c】パッドの厚みの中に選択的に配置されているボイドネットワークを含むCMPパッドの断面図を示す。
【図1d】パッドの一領域に選択されて配置されたボイドネットワークを含むCMPパッドの断面図を示す。
【図2】CMPパッドの中にボイドを形成するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[詳細な説明]
本開示は以下に記述された説明、あるいは図の中において示された構成の詳細および構成要素の配置への応用において限定されるものではないということは理解されるべきである。本明細書中における実施例は他の実施例を可能にしており、様々な様態で実行あるいは実施が可能である。また、本明細書中で使用される表現及び用語は説明の目的で使用されているものであって、限定するものであるとみなされるべきではないということは理解されるべきである。本明細書中における「含む(including)」、「備える(comprising)」あるいは「有する(having)」、およびこれらの語尾変化形態は、その語の後に挙げられた事項またはそれと同等のもの、および付加的な事項を含むということを意味する。別段の限定がない限り、本明細書中の「接続された(connected)」「連結された(coupled)」および「取り付けられた(mounted)」という語およびその語尾変化形態は広義に使われており、直接的および間接的な接続、連結、および取り付けを含んでいる。また、「接続された(connected)」および「連結された(coupled)」という語およびその語尾変化形態は、物理的あるいは機械的な接続あるいは連結に限定されない。
【0012】
本開示は化学機械的平坦化(CMP)パッド、特にボイドネットワークを含み得る化学機械的平坦化パッドに関する。該化学機械的平坦化パッドは、半導体製造工程においてウェハーあるいはその他の基板を平坦化するために用いられてもよい。該CMPパッドは、研磨剤を含んでいるものでも含んでいないものでもよいスラリー、潤滑油および/あるいはその他の添加物と共に用いられてもよい。
【0013】
図1aおよび1bに示されるように、該CMPパッドはポリマーマトリクスで形成されていてもよい。CMPパッド100のポリマーマトリクス102は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブタジエンアクリル酸スチレン共重合体、およびそれらの組み合わせおよび/あるいはそれらの共重合体を含んでいてもよい。また、プレポリマーあるいは前駆体ポリマーを用意し、該前駆体ポリマーが硬化により凝固して、CMPパッドが形成されてもよい。一例において、CMPパッドは、ウレタンプレポリマーと、ウレタンプレポリマーを架橋させるあるいは重合させるために供給された硬化剤とを含んでいてもよい。
【0014】
CMPパッドは、相互接続するボイド104を複数含んでいてもよい。該複数のボイドは、ポリマーマトリクスの中に画定されたあるいは含まれたボイドネットワークでもよい。該ボイドネットワークは相互接続されていても、非相互接続であってもよい。また、ネットワーク内のボイドはパッド内に均一に分散されていても、ランダムに分散されていても、あるいはパターン状あるいは傾斜状に分散されていてもよい。一例において、ボイドの大部分はCMPパッドの作業面106に最も近い位置に配置されていてもよく、ボイドの体積がパッドの反対側の(非作業)面108に向かって減少していてもよく、あるいはその反対になっていてもよい。つまり、大部分のボイドが反対側の面108の近くに位置しており、ボイドの体積が作業面106に向かって減少していてもよいということである。CMPパッドの作業面とは、CMPパッドの面であって、平坦化されるあるいは研磨される表面に接触するCMPパッドの面であると理解されてもよい。別の例において、ボイドは比較的均一に分散されていてもよく、パッドマトリクスの所定の体積中に、比較的近似した体積のボイドが含まれていてもよい。
【0015】
例えば、パッドの作業面(つまり研磨に使用される面)とパッドの非作業面との間に延出する厚さT(図1c参照)を有するパッドでは、ボイドを含む領域は、パッドの厚さの95%あるいは0.95Tまで延出するパッドの領域にのみ分離されていてもよい。例えば、ボイドはパッドの厚さの10%(0.10T)、あるいは20%(0.20T)、あるいは30%(0.30T),あるいは40%(0.40T)、あるいは50%(0.50T)、など95%まで延出していてもよい。図1cに示されるように、パッドは、ボイドが全く存在しない領域103(すなわち研磨に適したボイド)を含んでいてもよいのである。例えば0.50インチの厚さを有するパッドでは、ボイドはパッドの上部0.475インチの部分にのみ存在してもよく、パッドの下部0.025インチの部分にはボイドが全く含まれていなくてもよく、ボイド非含有領域として理解されてもよい。当然のことながら、ボイドは研磨が行われるパッド厚の部分にのみ選択されて配置されているため、より効率のよいパッド構成を供給することができる。
【0016】
当然のことながら、ここでCMPパッドに形成されたボイドは、パッドの作業面に形成されることに限定されず、パッド体積における選択された部分に三次元的に形成されてもよい。つまり、ボイドは、パッドが研磨作業に用いられてパッドの表面が徐々に摩耗した時にそのボイドが即座に利用可能となるよう、作業面からいくらか離れたところに形成されてもよい。すなわちこのような研磨パッドを用いることで、CMP作業においてパッドを利用して最初にボイドを作製する必要がない。ボイドは既に存在し、CMP作業を最適化するよう選択的に配置されているので、パッドと相互作用して1つあるいはそれ以上のボイドを形成するよう所定の研磨スラリーに依存するなどの必要がない。
【0017】
ボイドのスペースは、全ての値および範囲を含んで、直径あるいは断面(すなわち最大断面軸)で0.1μmあるいはそれよりも大きくてもよく、例えば0.1μmから1.0μm単位で500μmまでであってもよい。従ってボイドは有効にスラリーを収め得る。すなわち、このようなボイド構造は、研磨面への擦り傷を抑えながらも、スラリーに含まれる研磨粒子の可動性を高めることによって、研磨率や均一性を向上させる穴を提供することが可能である。言い換えると、穴は研磨粒子の一次的な保存領域としての役目を務め、これにより研磨粒子と研磨が行われる面との高い摩擦接触が抑えられ得る。好ましい範囲は20μmから200μmである。また、ボイドスペースは長さ対直径の割合(L:D)が4:1あるいはそれより大きな割合を示す。該割合は4:1から1000:1の範囲のいかなる割合も含み、整数と同様に少数も含む。例えば、本実施例におけるボイドは25:1から1000:1のL:Dの割合を有していてもよい。
【0018】
本実施例におけるボイドスペースは、多数の所望の形状をとっていてもよく、これが本実施例における方法のもう一つの利点である。例えば、ボイドは腓骨状、チューブ状、円筒状、球状、楕円状、立法状、矩形状、台形状、またその他の三次元の形状あるいは多面形状であってもよい。すなわち、研磨パッドからボイド形成要素を取り除くための状態を制御することによって(以下でより詳細に説明される)、様々な形状、特に円形状あるいは球状以外の形状、が得られうる。さらに、各ボイドスペースは、部分的にあるいは全体的に他のボイドスペースと接続していてもよい。CMPパッドにおけるボイドは全部で、すべての値と増加量とを含んで、パッド体積の0.1から95%の範囲内であってもよい。
【0019】
ボイドはCMPパッドマトリクスの中に配置された要素によって形成されてもよい。該要素は、パッドがいったん形成されると、その要素の全てあるいは一部がパッドから選択的に排出あるいは取り除かれ得る例えば繊維あるいは粒子を含んでいてもよい。例えば、該繊維は織物の布あるいは不織の布あるいはマットの形状に形成されていてもよい。不織マットを形成する工程は、スパンボンディング(spunbonding)、メルトスピニング(melt spinning)、メルトブローイング(melt blowing)、ニードルパンチング(needle punching)等の工程を含んでいてもよい。ボイド形成要素は、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、アルギネート、ポリエチレングリコール、あるいはそれらの組み合わせの材料などで形成されてもよい。また、ボイド形成要素は、ボイドを形成するために選択された溶媒の中で十分に溶解可能な材料であると理解される、可溶性物質から形成されてもよい。さらに、該要素は中空繊維で形成されてもよい。
【0020】
選択的に形成されたボイドスペースを含むCMPパッドを製造する方法の一例は、ボイド形成要素、すなわち例えば布あるいはマットあるいは粒子などの形態の繊維を、金型に配置させることから始まっていてもよい。ポリマーマトリクス材料は繊維の周辺に樹脂の形態で注がれ、あるいは配置され、成型あるいは加熱されてもよい。任意のスタンピング操作が行われてもよく、CMPパッドは該要素の周辺にマトリクスを形成するよう硬化されてもよい。その場合、繊維の一部は溶解されるか、あるいはCMPパッドマトリクスから取り除かれてもよい。例えば10%から100%の繊維がパッドマトリクスから取り除かれてもよい。また、上で示唆されている通り、ボイドはCMPパッドの選択された領域に形成されてもよい。例えば、ボイドはCMPパッドの上半分(例えば鉛直断面の上部)、あるいは作業部分に選択的に形成され、パッドの残りの部分はボイドを全く含まないというように形成されてもよい。ボイドを形成する前あるいは形成後に、CMPパッドを研いだり磨いたりしてパッドの表面の膜を取り除いてもよく、それによってボイドを露出させてもよい。また、CMPパッドの表面には溝が設けられたり、および/あるいは穿孔されてもよく、CMPパッドはサブパッドに取り付けられたりおよび/あるいは感圧接着剤でラミネート加工されてもよい。
【0021】
また、ボイドが部分的に相互接続されているようにするという特徴付けによって、相互接続されたボイド構成を提供するためのボイド形成要素の除去が促進されるということは十分に理解されるべきである。言い換えると、ボイド形成要素をパッドから取り除き相互接続されたボイドを形成させる際に、部分的に相互接続されたボイドを形成する要素を有するという特徴が、所定のパッド体積の選択された領域全体にわたってボイドが形成されることを可能にしている。
【0022】
その意味で、選択された厚みにボイドを有する(図1cを再度参照)というだけでなく、ボイドを含む領域をパッドのどの部分にも、またボイドを含まない領域をパッドのどの部分にも備えることができ、該ボイドがパッドの中に均一には分散されていないパッドを作製することが可能であるということが理解され得る。従って図1dに示されるように、ボイド(すなわち、CMP研磨において用いられるのに適したボイド)が全く存在しない領域であって、パッド内において横にも縦にも任意の位置に画定された領域110を含むパッドが作製されることが可能である。
【0023】
所定のパッド厚におけるボイドの配置を制御することに関する上記の考えと同様に、所定のパッド体積に対して、パッドの中のボイドが存在しない領域は、本実施例中では、全ての値および増加量を含んで、利用可能なパッドの体積の5〜95%の範囲で選択されることが可能である。あるいは、言い換えると、本実施例中のパッドは、ボイドが均一に分散され得るパッドの体積の所定の割合においてボイドを含んでいてもよく、また、ボイド(すなわち研磨において使用されるのに適したボイド)が存在しない領域を含んでいてもよい。例えば、ボイドが存在しないこのような領域は、パッドの体積の5%、10%、15%など、95%までであってもよい。
【0024】
さらに、ボイドが全く存在しない領域(図1dの領域110を再度参照)は、ボイドが存在するパッドの体積には影響を及ぼさない領域である。さらに、ボイドが均一に分散されているということは、ボイドがパッドの所定の体積に存在しているときには、概してボイドは所定のポリマーマトリクス全体に分散されており、穴と穴の間の相対距離は+/−10%あるいはそれより小さい、例えば+/−9%、+/−8%、+/−7%、+/−0.1%までの値より大きく変化しない状況にあると理解することができる。
【0025】
CMPパッドから該要素を取り除くために様々な方法を用い得る。該要素は研磨スラリーにさらす前に、化学的な方法によって取り除くことが可能であり、このような方法は流体(液体および/あるいはガス)による溶解と理解され得る。このような溶解は選択された流体の温度、圧力および/あるいは流量が上昇した時に起こる。従って該流体は水および/あるいは有機溶媒を含んでいてもよい。ここでは水と有機溶媒は調節された量の要素を取り除き(選択的に溶解し)、それに付随してボイドを形成するために選択されてもよい。
【0026】
化学的な方法の使用と併せて、あるいはそれとは別に、CMPパッドをパッドの前処理中にそして研磨スラリーにさらす前に再度、例えば振動、脈動、超音波、あるいは圧縮(加圧)および/あるいは緩和(減圧)などの機械的方法にさらして、所望のボイドネットワークを作製してもよい。従って本開示の内容において、ボイドは、所定のパッド研磨工程においてスラリーにさらされる前に、化学的および/あるいは機械的な方法を用いることによってパッドの選択された位置に選択的に形成されてもよい。
【0027】
また、上記の化学的あるいは機械的方法の一方あるいは両方に関して、ボイドが形成される際に加えられる熱(温度)を調整するようにしてもよい。従って、本実施例で説明されている化学的および/あるいは機械的方法は、研磨環境の外で起こるボイド形成の方法であって、独自の変数集合を用いてボイドの形成を制御し、どのボイドが研磨効率を向上させるのに用いられるかを決める方法であると理解される。
【0028】
該化学的方法に関して、要素の溶解度は調整されてもよく、ひいてはこのことが、研磨作業の前に、流体にさらされたうえで、再度、最終的なボイドの形成を制御すると考えられてもよい。また、外部パラメータ(化学的あるいは機械的)に要素の溶解性に影響を与え得る付加的な成分を加え、作製され得るボイドのサイズおよび数に同様に影響を与えてもよい。例えば、上記のとおり、一つの溶媒がボイド形成要素を溶解することができ、一つの溶媒がボイド形成要素を溶解することができない混合溶媒システムに相当する流体を使用してもよい。従って、この工程によって、パッドがウェハー研磨に使用される前に、選択された期間、パッドを処理するために用いられる2つの溶媒の相対量を所定の温度範囲で制御することによって、所定のパッドに形成されるボイドの数およびサイズを制御することが可能になる。
【0029】
図2に示されるように、中に要素を含む典型的なCMPパッド200は、加圧可能なタンク202の中に配置されてもよい。ポンプ204は加熱された流体(水および/あるいは有機溶媒あるいは混合溶媒)206を、タンクを介してCMPパッドの中に様々な圧力で押し入れ、CMPパッドから水溶性繊維マットを取り除き、ボイドを形成する。その後パッドはタンクから取り除かれ、脱イオン水あるいは他の流体の中で超音波で洗浄され、乾燥されてもよい。ボイドを形成するために用いられる流体は、溶解度を増加させるために様々な添加剤を含んでいてもよい。例えば流体には界面活性剤が加えられてもよく、こうすることで繊維、ポリマーマトリクスおよび/あるいは流体の間の表面張力を下げることができる。別の例において、再循環水よりも新鮮な水(すなわち前にパッドにさらされていない水)を、CMPパッドがタンク内に配置されている状態でタンクに流してもよい。その他の溶媒には、有機アルコール、ケトン(アセトンなど)などの有機溶媒が含まれていてもよい。従って溶媒は、パッドの中の要素であって溶解されることが意図された要素を溶解させて、ボイドの位置を供給することが可能なものが選択されてもよい。
【0030】
上記のものを展開し、所定の流体と、溶解してボイドを供給するよう構成されたパッド内の所定の要素との相互作用を向上させるあるいは調整するように構成し、タンク202内の相対圧力応力を増加あるいは減少させてもよい。例えば、圧力が上昇して、作製されるボイドの数の増加がもたらされてもよく、圧力が減少して作製されるボイドの相対数を減少させてもよい。ここで意図されている圧力は、全ての値および増加量を含み、1〜1000psiの範囲の圧力を含んでいてもよい。
【0031】
更なる例において、超音波のような機械的方法は、単独であるいは圧力と組み合わせて、CMPパッドから要素を取り除いてボイドを供給するよう使用されてもよい。例えば、超音波振動がタンク内にあるいはCMPパッドに直接供給あるいは誘発され、所定の周波数あるいは周波数域の振動を起こすようにしてもよい。十分な量のボイドが形成されると(これは流体の選択と振動のレベルとを合わせた効果によってもたらされてもよいが)、CMPパッドは、選択されたサイズおよびパッドの中における選択された配置のボイドの選択された濃度を有する状態でタンクから取り除かれ、乾燥されてもよい。超音波の周波数帯は、全ての値および増加量が含み、15〜70KHzの範囲を含んでいてもよい。
【0032】
別の例においてボイドスペースは、パッドに、例えばパッドマトリクスを形成するために用いられる樹脂の配合などに、揮発可能な添加物を供給することによって作られてもよい。該揮発可能な添加物は、熱あるいはその他のエネルギー源にさらされることによってガスを発してもよい。従って、分解可能および/あるいは第二化合物に変換可能で、ガスを生じさせ、そのガスが上記のボイド構造を形成させることが可能な無機あるいは有機物質であると理解される、発泡剤のような固形の化合物を使用してもよい。よって該発泡剤は、最初は固形の粒子および/あるいは液体として存在していてもよい。発泡剤の例としてはアゾジカーボンアミドが含まれていてもよく、液体の発泡剤は、比較的高い蒸気圧を有する比較的低い分子量の化合物を含んでいてもよい。またこのような発泡剤はパッドマトリクスの前駆体と混合され、概して硬化の際に起こる重合に関連する発熱反応によって、パッドが硬化すると揮発するようになっていてもよい。該パッドマトリクス前駆体は、モノマーおよび/あるいはオリゴマーに相当し、その後硬化して比較的高い分子量に重合可能であると理解され得る。
【0033】
前述のいくつかの方法および実施例に関する説明は、説明のために提示されており、完全なものでも、開示されている厳密な手順および/あるいは形態に請求項を限定するものではなく、上記の教示を踏まえた多数の改良例や変形例が可能であることは明らかである。本発明の範囲はここに添付された請求項によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを作製する方法であって、
第1の空洞と第2の空洞とを有する金型を用意するステップであり、前記第1の空洞は凹部を画定するステップと、
ボイド形成要素を含むポリマーマトリクス材料を前記凹部に供給するステップと、
研磨パッドを形成し、化学的/機械的平坦化工程で使用される前に、化学的な方法あるいは機械的な方法の一方によって、前記要素の少なくとも一部を前記研磨パッドから取り除いて前記研磨パッド内にボイドスペースを形成するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリマーマトリクス材料は、ポリマーマトリクス前駆体を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記要素の少なくとも一部を取り除くステップは、前記要素を溶解させることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記要素は圧力をかけられて取り除かれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記要素は粒子を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記要素は繊維を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記要素はファブリックを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記要素は水溶性材料を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記要素は中空繊維から形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ボイドスペースは0.1μmあるいはそれより大きな直径を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ボイドスペース同士は少なくとも部分的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ボイドスペースは4:1あるいはそれより大きな長さ対直径の割合を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
CMPパッドにおけるボイド体積は、パッドの全体積の0.1から95%の範囲であり得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
化学的/機械的平坦化工程で使用される前とは、研磨スラリーにさらす前ということを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
研磨のための装置であって、
ポリマーマトリクスを有するパッドを備え、前記ポリマーマトリクス内には複数のボイドが画定され、前記ボイドは4:1あるいはそれより大きな長さ対直径の割合を有し、前記ボイドは少なくとも部分的に相互接続されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
前記ボイドの体積は、パッドの全体積の0.1から90%の範囲であることを特徴とする請求項15に記載の研磨のための装置。
【請求項17】
さらに要素を備えることを特徴とする請求項15に記載の研磨のための装置。
【請求項18】
前記ボイドは、前記パッドの体積全体にわたって比較的均一に分散されていることを特徴とする請求項15に記載の研磨のための装置。
【請求項19】
前記ボイドは、前記パッドの体積全体にわたって傾斜した状態で分散していることを特徴とする請求項15に記載の研磨のための装置。
【請求項20】
研磨の方法であって、
表面を有する基板であって研磨のための基板を用意するステップと、
前記基板の前記表面の少なくとも一部に水性のスラリーを供給するステップと、
ポリマーマトリクスを有するパッドを用意するステップであって、前記ポリマーマトリクス内には複数のボイドが画定され、前記ボイドは4:1あるいはそれより大きな長さ対直径の割合を有し、前記ボイドは少なくとも部分的に相互接続されているステップと、
前記基板、前記水性スラリーおよび前記パッドの相互作用により、前記表面を研磨するステップと、
を備えた方法。
【請求項21】
電子基板の表面を研磨するための研磨パッドであって、
ボイドを含むポリマーマトリクスを備え、前記パッドは作業面を研磨するための第1の作業面と第2の面とを有し、
前記パッドは前記作業面から前記第2の面まで延出する厚さTを有し、
前記ボイドは前記パッド面から厚さ0.95(T)までの領域にのみ配置されていることを特徴とする研磨パッド。
【請求項22】
前記ボイドは4:1あるいはそれより大きな長さ対直径の割合を有し、前記ボイドは少なくとも部分的に相互接続されていることを特徴とする請求項21に記載の研磨パッド。
【請求項23】
前記ボイドは前記パッド面から厚さ0.50(T)までの領域にのみ配置されていることを特徴とする請求項21に記載の研磨パッド。
【請求項24】
前記ボイドは0.1μmあるいはそれより大きな直径を有することを特徴とする請求項21に記載の研磨パッド。
【請求項25】
前記ボイドは前記ボイドが配置されている領域において均一に分散されていることを特徴とする請求項21に記載の研磨パッド。
【請求項26】
電子基板の表面を研磨するための研磨パッドであって、
ボイドを含むポリマーマトリクスを備え、当該パッドは作業面を研磨するための第1の作業面と第2の面とを有し、
当該パッドは前記作業面から前記第2の面まで延出する厚さTを有し、
当該研磨パッドは、前記ボイドが均一に分散されている領域と、前記ボイドが存在しない領域とを含み、前記ボイドが存在しない前記領域は当該パッドの体積の少なくとも5.0%を占めることを特徴とする研磨パッド。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−517111(P2011−517111A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503960(P2011−503960)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/072144
【国際公開番号】WO2009/126171
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(507255732)イノパッド,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】