説明

ポジ型感光性組成物、並びに透明導電膜、表示素子及び集積型太陽電池

【課題】簡略プロセスによりパターニングされた樹脂皮膜を形成可能であり、高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、及び下地との密着性等に優れ、かつ高い導電性をも兼ね備えるポジ型感光性組成物、並びに透明導電膜、表示素子、及び集積型太陽電池の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体を含有するポジ型感光性組成物である。


前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数であり、mは、1〜7の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、EL表示素子、集積型太陽電池等を製造するためのポジ型感光性組成物、並びに該ポジ型感光性組成物を用いた透明導電膜、表示素子、及び集積型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
パターニングされた透明膜は、スペーサー、絶縁膜、保護膜など表示素子の多くの部分で使用されており、これまでに多くのポジ型感光性組成物(以下、ポジレジストと称することもある)がこの用途に提案されている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【0003】
一般に、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や集積型太陽電池などには、層状、平面状に配置される配線の間を絶縁するために絶縁膜、メカニカルスクライブ、又はレーザースクライブによって形成されたパターンが設けられている。絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状の絶縁膜を得るための工程数が少ないポジ型感光性組成物が幅広く使用されている。ポジ型感光性組成物は、絶縁膜を形成する過程において広いプロセスマージンを有することが必要である。
更に、ポジ型感光性組成物を用いた絶縁膜や表示素子は、製造後工程において、溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬等によって接触すること、及び熱処理されることが不可欠である。昨今の半導体技術の発展に伴い、ポジ型感光性組成物に対する要求性能も年々厳しいものとなっており、様々な検討がなされてはいるが、高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等を全て満足できる材料は得られておらず、その出現が強く望まれている。
【0004】
また、配線に関しては、光透過部においては、要求される特性、主に導電性、透明性、パターニング特性などから、もっぱら酸化インジウム錫(以下、「ITO」と称することもある)、酸化亜鉛を蒸着やスパッタなどのドライプロセスにより形成し、その後、ネガ型レジストを併用し、透明導電パターンを作製するという製造方法となっている。しかし、この製造方法においては、透明導電パターン形成のため、ネガ型レジスト塗布とその現像、導電材料のエッチングなど、多数の工程、及び真空を必要とする大掛かりな設備、多段階の薬液処理が不可欠であり、最終性能の更なる向上のみならず、昨今の環境・エネルギーの観点からもプロセス簡略化が強く望まれている。
【0005】
したがって簡略プロセスによりパターニングされた透明導電膜を形成可能であり、高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、及び下地との密着性等に優れ、かつ高い導電性をも兼ね備えるポジ型感光性組成物、並びに該ポジ型感光性組成物を用いた高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等に優れた透明導電膜、該透明導電膜を用いた表示素子、集積型太陽電池等の速やかな提供が、プロセスコスト、環境、及びエネルギーの観点から求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−34711号公報
【特許文献2】特開昭56−122031号公報
【特許文献3】特開平5−165214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、簡略プロセスによりパターニングされた透明導電膜を形成可能であり、高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、及び下地との密着性等に優れ、かつ高い導電性をも兼ね備えるポジ型感光性組成物、並びに該ポジ型感光性組成物を用いた高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等に優れた透明導電膜、該透明導電膜を用いた表示素子、及び集積型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式(I)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物である。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数であり、mは、1〜7の整数である。
<2> 下記一般式(II)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物である。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数である。
<3> アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)とモノマー(B)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を1質量%〜80質量%%、及びモノマー(B)を20質量%〜99質量%共重合して得られる前記<1>から<2>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<4> 他のラジカル重合性モノマー(B)が、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーを含まない前記<1>から<3>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<5> 他のラジカル重合性モノマー(B)が、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)及び水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)から選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<6> 他のラジカル重合性モノマー(B)が、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)及び水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<7> アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)、モノマー(b1)、モノマー(b2)及びモノマー(b3)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を0.5質量%〜85質量%、前記モノマー(b1)を1質量%〜80質量%、前記モノマー(b2)を5質量%〜50質量%、前記モノマー(b3)を1質量%〜60質量%共重合して得られる前記<6>に記載のポジ型感光性組成物である。
<8> アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)、モノマー(b1)、モノマー(b2)及びモノマー(b3)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を1質量%〜80質量%、前記モノマー(b1)を5質量%〜30質量%、前記モノマー(b2)を10質量%〜30質量%、前記モノマー(b3)を5質量%〜50質量%共重合して得られる前記<6>に記載のポジ型感光性組成物である。
<9> モノマー(b1)が、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタニ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン及び4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタンから選択される少なくとも1種を含有する前記<5>から<8>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<10> モノマー(b1)が、下記一般式(III)及び下記一般式(IV)のいずれかで表されるモノマーである前記<5>から<8>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
【化3】

【化4】

ただし、前記一般式(III)及び(IV)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数2〜5のアルキニル基であり、nは、1〜5の整数である。
<11> 一般式(III)で表されるオキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)が、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート及び(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する前記<10>に記載のポジ型感光性組成物である。
<12> 一般式(IV)で表されるオキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)が、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート及び(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する前記<10>に記載のポジ型感光性組成物である。
<13> モノマー(b2)が、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有する前記<5>から<12>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<14> モノマー(b2)が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する前記<5>から<12>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<15> モノマー(b3)が、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有する前記<5>から<14>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<16> モノマー(b3)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する前記<5>から<14>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<17> 1,2−キノンジアジド化合物が、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル及び4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルから選択される少なくとも1種である前記<1>から<16>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<18> 下記一般式(II)で表されるモノマー(A)と、
【化5】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数である。
オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)として、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート及び(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートからなる群から選ばれる1種以上、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種、並びに、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体と、
1,2−キノンジアジド化合物として4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルと、
ナノワイヤー構造体と、を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物である。
<19> 下記一般式(II)で表されるモノマー(A)と、
【化6】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数である。
オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)として、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート及び(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1種、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種、並びに、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体と、
1,2−キノンジアジド化合物として、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルと、
ナノワイヤー構造体と、を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物である。
<20> アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)、モノマー(b1)、モノマー(b2)及び前記モノマー(b3)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を1質量%〜80質量%、前記モノマー(b1)を5質量%〜30質量%、前記モノマー(b2)を10質量%〜30質量%、前記モノマー(b3)を5質量%〜50質量%共重合して得られる前記<18>から<19>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<21> ナノワイヤー構造体が、金属ナノワイヤーである前記<1>から<20>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物である。
<22> 金属ナノワイヤーが直径50nm以下であり、かつ長さ5μm以上であり、該金属ナノワイヤーを全金属粒子中に金属量で50質量%以上含む前記<21>に記載のポジ型感光性組成物である。
<23> 前記<1>から<22>のいずれかに記載のポジ型感光性組成物を含有することを特徴とする透明導電膜である。
<24> 前記<23>に記載の透明導電膜を有することを特徴とする表示素子である。
<25> 前記<23>に記載の透明導電膜を有することを特徴とする集積型太陽電池である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、簡略プロセスによりパターニングされた透明導電膜を形成可能であり、高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、及び下地との密着性等に優れ、かつ高い導電性をも兼ね備えるポジ型感光性組成物、並びに該ポジ型感光性組成物を用いた高耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等に優れた透明導電膜、該透明導電膜を用いた表示素子、及び集積型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、金属ナノワイヤーの鋭利度を求める方法を示す説明図である。
【図2A】図2Aは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2B】図2Bは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2C】図2Cは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2D】図2Dは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】図3は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポジ型感光性組成物について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中、アクリル酸とメタクリル酸の両者を示すために「(メタ)アクリル酸」のように表記することがある。また同様にアクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【0012】
(ポジ型感光性組成物)
本発明のポジ型感光性組成物は、第1形態では、下記一般式(I)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【化7】

ただし、前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1〜5の整数であり、mは1〜7の整数である。
前記一般式(I)において、Rの炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチルなどが挙げられる。
【0013】
本発明のポジ型感光性組成物は、第2形態では、下記一般式(II)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【化8】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1〜5の整数である。
前記一般式(II)において、Rの炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチルなどが挙げられる。
【0014】
本発明のポジ型感光性組成物は、第3形態では、上記一般式(II)で表されるモノマー(A)と、
オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)として、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート及び(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートからなる群から選ばれる1種以上、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種、並びに、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体と、
1,2−キノンジアジド化合物として4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルと、
ナノワイヤー構造体と、を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0015】
本発明のポジ型感光性組成物は、第4形態では、上記一般式(II)で表されるモノマー(A)と、
オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)として、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート及び(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1種、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種、並びに、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体と、
1,2−キノンジアジド化合物として、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルと、
ナノワイヤー構造体と、を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0016】
以下、アルカリ可溶性重合体、各モノマー、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体について説明する。
【0017】
<アルカリ可溶性重合体>
前記アルカリ可溶性重合体は、ラジカル重合性モノマーとして前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表される(A)と、他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られる重合体である。即ち、このアルカリ可溶性重合体は、モノマーの混合物を重合させて得られる共重合体である。また、前記一般式(I)又は一般式(II)で表されるモノマー(A)の含有量が、1質量%〜80質量%、他のラジカル重合性モノマーの含有量が20質量%〜99質量%であるアルカリ可溶性重合体が好ましい。
前記他のラジカル重合性モノマー(B)は、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーを含まないことが好ましい。他のラジカル重合性モノマー(B)は、例えば、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)及び水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)から選択される1種以上含む、又はこれらのモノマー(b1)〜(b3)を全て含むことが好ましい。
【0018】
以下、ここで用いられる前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表される化合物(A)、及び他のラジカル重合性モノマー(B)(それぞれ「モノマーA」、「モノマーB」という)について説明する。
更に、モノマーBとして具体的に含まれるオキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)及びその他のラジカル重合性モノマー(b4)(それぞれ、「モノマーb1」、「モノマーb2」、「モノマーb3」、「モノマーb4」という)についても、以下に説明する。
【0019】
−前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表されるモノマー(A)−
本発明で用いられる前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表されるモノマーAは、テトラヒドロフルフリルアルコールの水酸基をε−カプロラクトンと付加反応させ、それとアクリル酸、あるいはメタクリル酸とを脱水反応によりエステル化して得られる。これらのラジカル重合性モノマーから選ばれる少なくとも1つを使用したアルカリ可溶性重合体を用いると、現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く、即ち、現像性が高く、容易にパターン状透明導電膜が得られ、かつ耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性が高くなる。
前記一般式(II)で表される化合物としては、R及びRが水素原子であり、n=約1のアクリル酸エステル化合物である、日本化薬株式会社製KAYARAD TC−110Sが市販されているので、これを使用してもよい。
【0020】
本発明のポジ型感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、モノマーAを、好ましくは、全モノマーの総質量に対して0.5質量%〜85質量%用いることが好ましく、1質量%〜80質量%であることがより好ましい。このような範囲でモノマーAを用いると、前記アルカリ可溶性重合体にはカルボキシルを有するラジカル重合性モノマーの使用量を大幅に減らす又は0にすることが可能となる。これによって、本発明のポジ型感光性組成物から得られる透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。
【0021】
−オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)−
本発明で用いられるモノマーBとして、具体的に含めることができるオキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)は、そのような官能性基を有する限り特に限定されないが、下記一般式(III)又は下記一般式(IV)で表されるモノマーである。
【化9】

【化10】

ただし、前記一般式(III)及び(IV)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数2〜5のアルキニル基であり、nは、1〜5の整数である。
前記炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチルなどが挙げられる。
前記炭素数2〜5のアルケニル基は、1〜3個の2重結合を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられ、具体的には、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニルなどが挙げられる。
前記炭素数2〜5のアルキニル基は、1〜3個の3重結合を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニル基が挙げられ、具体的には、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、4−ペンチニル、などが挙げられる。
【0022】
前記モノマーb1の具体例としては、例えば(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタニル−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのラジカル重合性モノマーから選ばれる少なくとも1つを使用したアルカリ可溶性重合体を用いると、アルカリ水溶液による溶解性が高く、即ち、現像性が高く、容易にパターン状透明導電膜が得られ、かつ耐溶剤性、高耐水性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性が高くなるので好ましい。
【0023】
前記具体例の中でも、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートは入手が容易であり、また現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーが不要となるので特に好ましい。モノマーb1は1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0024】
本発明のポジ型感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、前記オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)の含有量は、全てのモノマーの合計質量に対して1質量%〜80質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。このような範囲でモノマーb1を用いると、前記アルカリ可溶性重合体にはカルボキシルを有するラジカル重合性モノマーの使用量を大幅に減らす又は0にすることが可能となる。これによって、本発明のポジ型感光性組成物から得られる透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。
【0025】
−オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)−
本発明で用いられるモノマーBとして具体的に含めることができる、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)は、そのような官能性基を有する限り特に限定されない。
前記モノマーb2としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】
上記具体例の中でも、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート又はメチルグリシジルメタクリレート又は3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートは入手が容易であり、得られたパターン状透明導電膜の耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等が高くなるので好ましい。
モノマーb2は1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0027】
本発明のポジ型感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、前記オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)の含有量は、全てのモノマーの合計質量に対して5質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。このような範囲でモノマーb2を用いると、前記アルカリ可溶性重合体において、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーの使用量を大幅に減らす又は0にすることが可能となる。これによって、本発明のポジ型感光性組成物から得られる透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。
【0028】
−水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)−
本発明で用いられるモノマーBとして具体的に含めることができる、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)は、そのような官能性基を有する限り特に限定されない。
前記モノマーb3としては、例えばヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
前記具体例の中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシプロピルアクリレート又は2−ヒドロキシプロピルメタクリレートは入手が容易であり、また水酸基の親水性により、現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーが不要となるので好ましい。これらのモノマーb3は1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0030】
本発明のポジ型感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、前記水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)の含有量は、全てのモノマーの合計質量に対して1質量%〜60質量%が好ましく、5質量%〜50質量%がより好ましい。このような範囲でモノマーb3を用いると、前記アルカリ可溶性重合体において、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーの使用量を大幅に減らす又は0にすることが可能となる。これによって、本発明のポジ型感光性組成物から得られる透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。
【0031】
−その他のラジカル重合性モノマー(b4)−
モノマーAと他のラジカル重合性モノマー(B)(例えば、モノマーb1、モノマーb2、モノマーb3等)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体に、前述のように現像性等の工程マージン等を考慮して、得られるパターン状透明導電膜の耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等に大きな影響を与えない範囲で、モノマーA、モノマーb1、モノマーb2及びモノマーb3以外の、その他のラジカル重合性モノマー(b4)を使用することができる。
【0032】
前記モノマーb4としては、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン、インデンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記具体例の中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル(メタ)アクリレート、N−フェニルマレイミド及びポリスチレンマクロモノマーから選ばれる少なくとも1つを共重合したアルカリ可溶性重合体を用いたポジ型感光性組成物は現像性が良好であり、極めて耐溶剤性、耐水性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性が高く好ましい。
【0034】
本発明のポジ型感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、モノマーb4を、全てのモノマーの合計質量に対して10質量%以下で用いることが好ましく、4質量%以下であることが更に好ましい。
また、モノマーb4には、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーが、全てのモノマーの合計質量に対して4質量%以下であることが好ましく、全く含まれていないことが更に好ましい。
【0035】
−アルカリ可溶性重合体の重合方法−
前記アルカリ可溶性重合体は、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との混合物を重合させて得ることができる。
前記アルカリ可溶性重合体の重合方法については、特に制限されないが、溶媒を用いた溶液中でのラジカル重合が好ましい。重合温度は使用する重合開始剤からラジカルが十分発生する温度であれば特に制限はなく、50℃〜150℃が好ましい。重合時間も特に制限はなく、3〜24時間の範囲である。また、前記重合は、加圧、減圧又は大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。
【0036】
前記重合反応に使用する溶媒は、モノマーA、モノマーB及び生成するアルカリ可溶性重合体を溶解する溶媒が好ましい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記アルカリ可溶性重合体を合成する際用いる重合開始剤は、熱によりラジカルを発生する化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤を使用することができる。分子量を調節するために、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を適量添加してもよい。
【0038】
前記アルカリ可溶性重合体は、ポリエチレンオキシドを標準としたGPC分析で求めた質量平均分子量が1,000〜100,000の範囲であると、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒れにくくなり好ましい。更に、質量平均分子量が1,500〜50,000の範囲であると、未露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒にくく、現像残渣も極めて少なくなるので、一層好ましい。同様の理由により、質量平均分子量が2,000〜20,000の範囲であると、特に一層好ましい。
【0039】
前記アルカリ可溶性重合体の前記ポジ型感光性組成物における含有量は、0.01質量%〜90質量%であることが好ましく、0.1量%〜85質量%であることがより好ましい。
前記含有量が、この範囲にあることが、現像性と導電性の両立の観点から好ましい。
【0040】
<1,2−キノンジアジド化合物>
前記1,2−キノンジアジド化合物としては、例えば1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホンアミド、1,2−ナフトキノンジアジドスルホンアミド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記1,2−ベンゾキノンジアジドスルホンアミドとしては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホンアミド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記1,2−ナフトキノンジアジドスルホンアミドとしては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンアミド、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンアミド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
これらの中でも、1,2−キノンジアジド化合物として、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルから選択される少なくとも1種を用いると、ポジ型感光性組成物の透明性が高くなるため特に好ましい。
【0046】
前記1,2−キノンジアジド化合物の前記ポジ型感光性組成物における含有量は、前記アルカリ可溶性重合体100質量部に対して1質量部〜100質量部であることが好ましく、3質量部〜80質量部であることがより好ましい。
前記含有量が、1質量部未満であると、露光によって生成する酸量が少ないため、該組成物から形成される塗膜は露光部と未露光部との現像液に対する溶解度差が小さくなってパターニングが困難になることがあり、100質量部を超えると、短時間の光照射では1,2−キノンジアジド化合物が充分に分解されず残存するため、感度が低下してしまうことがある。
【0047】
<ナノワイヤー構造体>
前記ナノワイヤー構造体としては、導電性を有し、ナノワイヤー構造を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばITO、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物;カーボンナノチューブ、金属元素単体、複数金属元素からなるコアシェル構造、アロイ、鍍金された金属ナノワイヤー、などが挙げられる。これらの中でも、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブが好ましく、金属ナノワイヤーが特に好ましい。
本発明において、前記ナノワイヤー構造体とは、アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)が30以上である構造体を意味する。
【0048】
−カーボンナノチューブ−
前記カーボンナノチューブは、繊維径が1nm〜1,000nm、長さが0.1μm〜1,000μm、アスペクト比が100〜10,000の細長い炭素からなるチューブ状の炭素である。
前記カーボンナノチューブの作製方法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法などが知られている。前記アーク放電法及びレーザー蒸発法により得られるカーボンナノチューブには、グラフェンシートが一層のみの単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single Wall Nanotube)と、複数のグラフェンシートからなる多層カーボンナノチューブ(MWNT:Multi Wall Nanotube)とが存在する。
また、熱CVD法及びプラズマCVD法では、主としてMWNTが作製できる。前記SWNTは、炭素原子同士がSP2結合と呼ばれる最も強い結合により6角形状につながったグラフェンシート一枚が筒状に巻かれた構造を有する。
【0049】
前記カーボンナノチューブ(SWNT、MWNT)は、グラフェンシート1枚〜数枚を筒状に丸めた構造を有する直径0.4nm〜10nm、長さ0.1μm〜数100μmのチューブ状物質である。グラフェンシートをどの方向に丸めるかによって、金属になったり半導体になったりするというユニークな性質を有する。
【0050】
−金属ナノワイヤー−
前記金属ナノワイヤーの直径(短軸長さ)は、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。なお、直径が小さすぎると耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあるため、直径は5nm以上であることが好ましい。前記直径が300nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じるためか、十分な透明性を得ることができないことがある。
前記金属ナノワイヤーの長さ(長軸長さ)は、5μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。なお、金属ナノワイヤーの長軸の長さが長すぎると金属ナノワイヤー製造時に絡まるためか、製造過程で凝集物が生じてしまうことがあるため、前記長軸の長さは1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。前記長軸長さが、5μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しいためか、十分な導電性を得ることができないことがある。
ここで、前記金属ナノワイヤーの直径及び長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、金属ナノワイヤーの直径及び長軸の長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から求めたものである。
【0051】
本発明においては、直径が50nm以下であり、かつ長さが5μm以上である金属ナノワイヤーが、全金属粒子中に金属量で50質量%以上含まれていることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
前記直径が50nm以下であり、長さが5μm以上である金属ナノワイヤーの割合(以下、「適切ワイヤー化率」と称することもある)が、50質量%未満であると、伝導に寄与する金属量が減少するためか伝導性が低下してしまうことがあり、同時に密なワイヤーネットワークを形成できないために電圧集中が生じるためか、耐久性が低下してしまうことがある。また、ナノワイヤー以外の形状の粒子が球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度を悪化してしまうことがある。
ここで、前記適切ワイヤー化率は、例えば金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っているAg量と、ろ紙を透過したAg量を各々測定することで、適切ワイヤー化率を求めることができる。ろ紙に残っている金属ナノワイヤーをTEMで観察し、300個の金属ナノワイヤーの直径を観察し、その分布を調べることにより、直径が50nm以下であり、かつ長さが5μm以上である金属ナノワイヤーであることを確認する。なお、ろ紙は、TEM像で直径が50nm以下であり、かつ長さが5μm以上である金属ナノワイヤー以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の5倍以上であり、かつワイヤー長軸の最短長の1/2以下の径のものを用いることが好ましい。
【0052】
前記金属ナノワイヤーの直径の変動係数は40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
前記変動係数が40%を超えると、直径の細いワイヤーに電圧が集中してしまうためか、耐久性が悪化することがある。
前記金属ナノワイヤーの直径の変動係数は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)像から300個のナノワイヤーの直径を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより、求めることができる。
【0053】
前記金属ナノワイヤーの形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面の多角形の角が丸まっている断面形状であることが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
前記金属ナノワイヤーの断面の角とは、断面の各辺を延長し、隣り合う辺から降ろされた垂線と交わる点の周辺部を意味する。また、「断面の各辺」とはこれらの隣り合う角と角を結んだ直線とする。この場合、前記「断面の各辺」の合計長さに対する前記「断面の外周長さ」との割合を鋭利度とした。鋭利度は、例えば図1に示したような金属ナノワイヤー断面では、実線で示した断面の外周長さと点線で示した五角形の外周長さとの割合で表すことができる。この鋭利度が75%以下の断面形状を角の丸い断面形状と定義する。前記鋭利度は60%以下が好ましく、50%以下であることが更に好ましい。前記鋭利度が75%を超えると、該角に電子が局在し、プラズモン吸収が増加するためか、黄色みが残るなどして透明性が悪化してしまうことがある。
【0054】
前記金属ナノワイヤーにおける金属としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、1種の金属以外にも2種以上の金属を組み合わせて用いてもよく、合金として用いることも可能である。これらの中でも、金属又は金属化合物から形成されるものが好ましく、金属から形成されるものがより好ましい。
前記金属としては、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0055】
前記金属としては、具体的には銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金が好ましく、パラジウム、銅、銀、金、白金、錫及びこれらの合金がより好ましく、銀又は銀を含有する合金が特に好ましい。
【0056】
−金属ナノワイヤーの製造方法−
前記金属ナノワイヤーは、特に制限はなく、いかなる方法で作製してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散剤を溶解した溶媒中で金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
【0057】
前記溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン等のケトン類、などが挙げられる。
加熱温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が更に好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましい。必要であれば、粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
前記加熱温度が250℃を超えると、金属ナノワイヤーの断面の角が急峻になるためか、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。また、前記加熱温度が低くなる程、核形成確率が下がり金属ナノワイヤーが長くなりすぎたためか、金属ナノワイヤーが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがある。この傾向は20℃以下で顕著となる。
【0058】
前記加熱の際には還元剤を添加して行うことが好ましい。該還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩等;ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミン;プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、ピロリジン、Nメチルピロリジン、モルホリン等のヘテロ環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミン等のアラルキルアミン;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、グルタチオン、有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)、還元糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオース等)、糖アルコール類(ソルビトール等)などが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
【0059】
前記還元剤種によっては機能として分散剤、溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
前記還元剤の添加のタイミングは、分散剤の添加前でも添加後でもよく、ハロゲン化合物あるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよい。
【0060】
前記金属ナノワイヤー製造の際には分散剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を添加して行うことが好ましい。
分散剤とハロゲン化合物の添加のタイミングは、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよいナノワイヤーを得るためには、核形成と成長を制御できるためか、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0061】
前記分散剤を添加する段階は、粒子調製する前に添加し、分散ポリマー存在下で添加してもよいし、粒子調整後に分散状態の制御のために添加しても構わない。分散剤の添加を2段階以上に分けるときには、その量は必要とする金属ワイヤーの長さにより変更する必要がある。これは核となる金属粒子量の制御による金属ワイヤーの長さに起因しているためと考えられる。
【0062】
前記分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子類、などが挙げられる。
【0063】
前記高分子類としては、例えば保護コロイド性のあるポリマーでゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、などが挙げられる。
前記分散剤として使用可能な構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることができる。
【0064】
前記ハロゲン化合物としては、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリハライドや下記の分散剤と併用できる物質が好ましい。ハロゲン化合物の添加タイミングは、分散剤の添加前でも添加後でもよく、還元剤の添加前でも添加後でもよい。
ハロゲン化合物種によっては、分散剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
【0065】
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0066】
前記分散剤とハロゲン化合物あるいはハロゲン化銀微粒子は同一物質で併用してもよい。分散剤とハロゲン化合物を併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。
【0067】
前記脱塩処理は、金属ナノワイヤーを形成した後、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0068】
前記金属ナノワイヤーは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンをなるべく含まないことが好ましい。前記金属ナノワイヤーを純水にて分散させたときの電気伝導度は1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が更に好ましい。
前記金属ナノワイヤーを純水にて分散させたときの20℃における粘度は、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
【0069】
前記ナノワイヤー構造体の前記ポジ型感光性組成物における含有量は、前記アルカリ可溶性重合体100質量部に対して10質量部〜500質量部であることが好ましく、20質量部〜300質量部であることがより好ましい。
前記含有量が、10質量部未満であると、導電性を得るために必要な塗布量が多くなり、乾燥、現像工程での負荷が大きくなることがあり、500質量部を超えると、現像性、特に解像度が悪くなることがある。
【0070】
本発明のポジ型感光性組成物には、アルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、ナノワイヤー構造体の他に、更に必要に応じて、各種添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤などを含有することができる。
【0071】
前記金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類が好適である。
前記アゾール類としては、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾテトラゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸などが挙げられる。
前記チオール類としては、アルカンチオール類、フッ化アルカンチオール類が挙げられ、例えばドデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、フルオロデカンチオール及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。該金属腐食防止剤を含有することで、一段と優れた防錆効果を発揮することができる。前記金属腐食防止剤はポジ型感光性組成物を溶媒に溶解した中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、後述するポジ型感光性組成物によるパターン状透明導電膜を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
【0072】
−溶媒−
前記溶媒としては、アルカリ可溶性重合体と1,2−キノンジアジド化合物とを溶解可能な溶媒が好ましい。また、前記溶媒は、沸点が100℃〜200℃である化合物の少なくとも1つ、又はこの化合物を20質量%以上含有する混合溶媒であることが好ましい。沸点が100℃〜200℃であることが好ましい。
前記溶媒としては、例えば水、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
これらの溶媒の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル及び酢酸ブチルから選ばれる少なくとも1つを用いると、塗布均一性が高くなるのでより好ましい。更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル及び酢酸ブチルから選ばれる少なくとも1つを用いると、ポジ型感光性組成物は塗布均一性が高く、人体への安全性が高くなるため、より一層好ましい。
【0074】
本発明のポジ型感光性組成物においては、前記アルカリ可溶性重合体100質量部に対し、固形分濃度が5質量部〜50質量部となるように溶媒が配合されることが好ましい。
【0075】
本発明のポジ型感光性組成物には、解像度、塗布均一性、現像性、接着性を向上させるために、各種の添加剤を添加することができる。前記添加剤としては、例えばアクリル系、スチレン系、ポリエチレンイミン系、又はウレタン系の高分子分散剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系もしくはフッ素系の界面活性剤、シリコーン樹脂系塗布性向上剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、エポキシ化合物、メラミン化合物もしくはビスアジド化合物等の熱架橋剤、有機カルボン酸等のアルカリ溶解性促進剤、などが挙げられる。
【0076】
前記添加剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えばEFKA−745、EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(以上いずれも商品名、森下産業株式会社製)、ソルスパーズ3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、20000、24000、24000GR、26000、28000、32000(以上いずれも商品名、ルーブリゾール社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(以上いずれも商品名、サンノプコ社製)、ポリフローNo.45、同ポリフローKL−245ポリフロー、No.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商品名、共栄社化学工業社製)、ディスパービック(Disperbyk)161、Disperbyk162、Disperbyk163、Disperbyk164、Disperbyk166、Disperbyk170、Disperbyk180、Disperbyk181、Disperbyk182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK344、BYK346(以上いずれも商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商品名、セイミケミカル社製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商品名、ネオス社製)、EFTOP EF−351、同EF−352、同EF−601、同EF−801、同EF−802(以上いずれも商品名、三菱マテリアル株式会社製)、メガファックF−171、同F−177、同F−475、同R−08、同R−30(以上いずれも商品名、DIC社製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
これらの添加剤の中でも、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩等のフッ素系の界面活性剤、同BYK306、同BYK344、同BYK346等のシリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種が添加されると、ポジ型感光性組成物の塗布均一性が高くなるので特に好ましい。
【0078】
−その他のポリマー−
本発明のポジ型感光性組成物には、耐熱性、耐薬品性等を向上させるために上記アルカリ可溶性重合体以外のポリマーを添加することができる。ここで添加されるポリマーは、カルボキシルを有しないエポキシ含有ポリマーやカルボキシルを有しないオキセタニル含有ポリマーが好ましい。
前記カルボキシルを有しないエポキシ含有ポリマーやカルボキシルを有しないオキセタニル含有ポリマーとしては、例えばグリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートと他のラジカル重合可能な単官能モノマーとの共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンのホモポリマー及び3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンと他のラジカル重合可能な単官能モノマーとの共重合体、などが挙げられる。これらのポリマーを本発明のポジ型感光性組成物に添加すると、耐熱性、耐薬品性、現像性等が向上して好ましい。これらの中でも、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンのホモポリマー、グリシジルメタクリレートとN−フェニルマレイミドの共重合体、グリシジルメタクリレートと3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンの共重合体を本発明のポジ型感光性組成物に添加すると、耐熱性、耐薬品性、現像性大きく向上するので一層好ましい。
【0079】
また、耐熱性、耐薬品性を低下させない程度に、カルボキシルを有するエポキシ含有ポリマーやカルボキシルを有するオキセタニル含有ポリマーを少量、ブレンドして使用することもできる。このようなポリマーの例としては、特開平4−198937号公報に記載のグリシジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体やメタクリル酸単独重合体、又はグリシジルメタクリレートとモノメタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート共重合体が挙げられるが、そのような官能基を有する限り特に限定されない。
これらのポリマーの原料となるカルボキシルを有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、けい皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]等を挙げることができる。また、これらのポリマーの原料となるエポキシを有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのカルボキシル又はエポキシを有するラジカル重合モノマーは1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0080】
−多価カルボン酸−
本発明のポジ型感光性組成物には、無水トリメリット酸、無水フタル酸、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物等の多価カルボン酸を添加してもよい。これらの多価カルボン酸の中でも無水トリメリット酸が好ましい。
本発明のポジ型感光性組成物に前記多価カルボン酸が添加されて加熱されると、多価カルボン酸のカルボキシルは、ポジ型感光性組成物のオキセタニル及びエポキシと反応して、耐熱性、耐薬品性を向上させることができる。また、本発明のポジ型感光性組成物に前記多価カルボン酸が添加されると、保存時に、1,2−キノンジアジド化合物の分解が抑制され、ポジ型感光性組成物の着色を防ぐことができる。
本発明のポジ型感光性組成物において、多価カルボン酸を添加する場合には、アルカリ可溶性重合体100質量部に対し、多価カルボン酸が1質量部〜30質量部であることが好ましく、2質量部〜20質量部であることがより好ましい。
【0081】
本発明のポジ型感光性組成物は、温度−30℃〜25℃の範囲で遮光して保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。保存温度が−20℃〜10℃であれば、析出物もなく一層好ましい。
【0082】
<現像液>
本発明のポジ型感光性組成物を露光後に現像する場合の現像液としては、アルカリ溶液が好ましい。前記アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。また、現像液としては、これらのアルカリの水溶液が好適に用いられる。
更に具体的には、現像液としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどの有機アルカリ類など、及び、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類の水溶液を挙げることができる。
【0083】
現像液には現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノールや界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、例えばアニオン系、カチオン系、ノニオン系から選択して使用することができる。これらの中でも、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度が高くなるので特に好ましい。
【0084】
前記現像方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばディップ現像、パドル現像、シャワー現像のいずれも用いることができる。
【0085】
(透明導電膜)
本発明の透明導電膜は、パターニングの際の解像度が比較的高く、パターン状導電膜を形成するのに最適である。ここで、導電膜とは、例えば、同一層内はもちろん、層状に配置される素子間を導通するために設ける膜(層間導電膜)等をいう。
【0086】
前記透明導電膜は以下のようにして形成される。
本発明のポジ型感光性組成物を、スピンコート、ロールコート、スリットコート等など公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布する。このとき、先にナノワイヤー構造体を塗布しておき、その上にポジ型感光性組成物を塗布し、乾燥後に本発明のポジ型感光性組成物としてもよいが、より好ましくは樹脂塗布液中にナノワイヤー構造体を分散させておき、一回塗布にて形成したポジ型感光性組成物である。
【0087】
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板;ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂製シート、フィルム又は基板;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板;その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などを挙げることができる。これらの基板には所望により、シランカップリング剤などの薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
【0088】
次に、ホットプレート又はオーブンで、通常、60℃〜120℃で1〜5分間乾燥する。乾燥した基板に、所望のパターン形状のマスクを介して紫外線を照射する。照射条件は、i線で5mJ/cm〜1,000mJ/cmが好ましい。紫外線の当たった部分の1,2−キノンジアジド化合物はインデンカルボン酸となり速やかに現像液に溶解する。
一般的な現像方法(シャワー現像、スプレー現像、パドル現像、ディップ現像等)を用いて現像してから、純水で十分すすいだ後、再度紫外線を基板全面に100〜1,000mJ/cmの強度で照射し、最後に180℃〜250℃で10分間〜120分間焼成すると、所望のパターニングされた透明膜を得ることができる。
【0089】
このようにして得られたパターン状透明導電膜は、パターン状導電膜として用いることもできる。導電膜に形成された穴の形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形又は楕円形であることが好ましい。更に、該パターン状導電膜上に、配向処理を行う膜を形成させてもよい。該導電膜は、耐溶剤性、耐熱性が高いため、配向処理を行う膜を形成しても導電膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0090】
(本発明の透明導電膜を含む表示素子)
本発明の表示素子における液晶表示素子は、上記のようにして基板上にパターニングされた透明導電膜が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着後、熱処理して組み合わせ、液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。このとき、カラーフィルター上に形成される透明導電膜も、本発明のポジ型感光性組成物にて形成されることが好ましい。
また、前記素子基板上に液晶を散布した後、基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封して液晶表示素子が製作されてもよい。
このようにして、本発明のポジ型感光性組成物で形成された、優れた透明性を有する導電膜を液晶表示素子に用いることができる。
なお、前記液晶表示素子に用いられる液晶、即ち液晶化合物及び液晶組成物については特に限定されず、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0091】
(本発明の透明導電膜を含む集積型太陽電池)
本発明に用いられる太陽電池デバイスとしては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイス等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。
【0092】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【0093】
〔透明導電層の製造方法〕
本発明の太陽電池に用いられる前記透明導電層は、前記全ての太陽電池デバイスに関して適用できる。前記透明導電層は、太陽電池デバイスのどの部分に含まれてもよいが、光電変換層に隣接していることが好ましい。光電変換層との位置関係に関しては下記の構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、下記に記した構成は太陽電池デバイスを構成する全ての部分を記載しておらず、前記透明導電層の位置関係が分かる範囲の記載としている。
(A)基板−透明導電層(本発明品)−光電変換層
(B)基板−透明導電層(本発明品)−光電変換層−透明導電層(本発明品)
(C)基板−電極−光電変換層−透明導電層(本発明品)
(D)裏面電極−光電変換層−透明導電層(本発明品)
【0094】
前記透明導電層の形成方法は、前記ナノワイヤー構造体を分散させた塗工液を、基板上へ塗設し、乾燥する。
前記塗工液を塗設後に加熱によるアニールを行ってもよい。この際、加熱温度は、50℃以上300℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましい。
前記塗工液の塗設方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばウェブコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ドクターブレードコーティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、インクジェット法などが挙げられる。特に、ウェブコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット法に関しては、フレキシブルな基板へのロールトゥロール製造が可能である。
【0095】
前記基板には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、サファイア等のガラス
(2)ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、PET、PEN、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂
(3)エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂
【0096】
前記基板の表面は親水化処理を施してもよい。また、前記基板表面に親水性ポリマーを塗設したものが好ましい。これらにより水性分散物の基板への塗布性及び密着性が良化する。
【0097】
前記親水化処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば薬品処理、機械的粗面化処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理などが挙げられる。これらの親水化処理により表面の表面張力を30dyne/cm以上にすることが好ましい。
【0098】
前記基板表面に塗設する親水性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン、などが挙げられる。
前記親水性ポリマー層の層厚(乾燥時)は、0.001μm〜100μmが好ましく、0.01μm〜20μmがより好ましい。
前記親水性ポリマー層には、硬膜剤を添加して膜強度を高めることが好ましい。前記硬膜剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン化合物;ジビニルスルホン等のビニルスルホン化合物;2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物;米国特許第3,103,437号明細書等に記載のイソシアネート化合物、などが挙げられる。
前記親水性ポリマー層は、上記化合物を水等の溶媒に溶解乃至分散させて塗布液を調製し、得られた塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコート、ダイコート等の塗布法を利用して親水化処理した基板表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。前記乾燥温度は120℃以下が好ましく、30℃〜100℃がより好ましく、40℃〜80℃が更に好ましい。
更に、基板と上記親水性ポリマー層の間に、密着性の改善を目的として必要により下引き層を形成してもよい。
【0099】
−CIGS系の太陽電池−
以下に、CIGS系の太陽電池について詳細に説明する。
−−光電変換層の構成−−
Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる、カルコパイライト構造の半導体薄膜であるCuInSe(CIS系薄膜)、あるいは、これにGaを固溶したCu(In,Ga)Se(CIGS系薄膜)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化が少ないという利点を有している。図2A乃至図2Dは、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
図2Aに示すように、まず、基板100上にプラス側の下部電極となるMo(モリブデン)電極層200が形成される。次に、図2Bに示すように、Mo電極層200上に、組成制御により、p型を示す、CIGS系薄膜からなる光吸収層300が形成される。次に、図2Cに示すように、その光吸収層300上に、CdSなどのバッファ層400を形成し、そのバッファ層400上に、不純物がドーピングされてn型を示す、マイナス側の上部電極となるZnO(酸化亜鉛)からなる透光性電極層500を形成する。このとき、このZnO上に本発明の透明導電体を積層させるか、ZnOの代わりに本発明の透明導電体を用いることで、本発明の太陽電池デバイスを得ることができる。次に、図2Dに示すように、メカニカルスクライブ装置によって、ZnOからなる透光性電極層500からMo電極層200までを、一括してスクライブ加工する。これによって、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(即ち、各セルが個別化)される。本実施態様の製造装置で好適に成膜することのできる物質を以下に示す。
【0100】
(1)常温で液相又は加熱により液相となる元素、化合物又は合金を含む物質
【0101】
(2)カルコゲン化合物(S、Se、Teを含む化合物)
・II−VI化合物:ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTeなど
・I−III−VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)など
・I−III−VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Seなど
【0102】
(3)カルコパイライト型構造の化合物及び欠陥スタナイト型構造の化合物
・I−III−VI族化合物:CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se、CuInS、CuGaSe、Cu(In,Ga)(S,Se)など
・I−III−VI族化合物:CuIn3Se5、CuGaSe、Cu(In,Ga)Seなど
【0103】
ただし、上の記載において、(In,Ga)、(S,Se)は、それぞれ、(In1−xGa)、(S1−ySe)(ただし、x=0〜1、y=0〜1)を示す。
【0104】
以下に、代表的なCIGS層の形成方法を示すが、これに限定されるものではない。
1)多源同時蒸着法
多源同時蒸着法の代表的な方法としては、米国のNREL(National Renewable Energy Laboratory)が開発した3段階法とECグループの同時蒸着法がある。3段階法は、例えば、J.R.Tuttle,J.S.Ward,A.Duda,T.A.Berens,M.A.Contreras,K.R.Ramanathan,A.L.Tennant,J.Keane,E.D.Cole,K.Emery and R.Noufi:Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.426(1996)p.143.に記載されている。また、同時蒸着法は、例えば、L.Stolt et al.:Proc.13th ECPVSEC(1995,Nice)1451.に記載されている。
【0105】
3段階法は、高真空中で最初にIn、Ga、Seを基板温度300℃で同時蒸着し、次に500〜560℃に昇温してCu、Seを同時蒸着後、In、Ga、Seを更に同時蒸着する方法で、禁制帯幅が傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS膜が得られる。ECグループの方法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着するBoeing社の開発したバイレーヤー法をインラインプロセスに適用できるように改良したものである。バイレーヤー法は、W.E.Devaney,W.S.Chen,J.M.Stewart,and R.A.Mickelsen:IEEE Trans.Electron.Devices 37(1990)428.に記載されている。
【0106】
3段階法及びECグループの同時蒸着法は共に、膜成長過程でCu過剰なCIGS膜組成とし、相分離した液相Cu2−xSe(x=0〜1)による液相焼結を利用するため、
大粒径化が起こり、結晶性に優れたCIGS膜が形成されるという利点がある。
更に、近年CIGS膜の結晶性を向上させるため、この方法に加えた種々の方法に関する検討が行われており、これらを用いてもよい。
【0107】
(a)イオン化したGaを使用する方法
蒸発したGaをフィラメントによって発生した熱電子イオンが存在するグリッドを通過させ、Gaと熱電子が衝突することでGaをイオン化する方法である。イオン化したGaは引き出し電圧により加速され基板に供給される。詳細は、H.Miyazaki,T.Miyake,Y.Chiba,A.Yamada,M.Konagai,phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p.2603.に記載されている。
【0108】
(b)クラッキングしたSeを使用する方法
蒸発したSeは通常クラスターとなっているが、更に高温ヒーターにより熱的にSeクラスターを分解することでSeクラスターを低分子化する方法である(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年秋、北海道工業大学)7P−L−6)。
【0109】
(c)ラジカル化したSeを用いる方法
バルブトラッキング装置により発生したSeラジカルを用いる方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年春、青山学院大学)29P−ZW−10)。
【0110】
(d)光励起プロセスを利用した方法
3段階蒸着中にKrFエキシマレーザー(例えば波長248nm、100Hz)、又はYAGレーザー(例えば、波長266nm、10Hz)を基板表面に照射する方法である(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007年春、青山学院大学)29P−ZW−14)。
【0111】
2)セレン化法
セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初にCu層/In層や(Cu−Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、電着法などで製膜し、これをセレン蒸気又はセレン化水素中で450℃〜550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1−xGa)Se等のセレン化合物を作製する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶが、このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。現在、唯一、大面積量産化に成功しているのは、金属プリカーサ膜を大面積化に適したスパッタ法で製膜し、これをセレン化水素中でセレン化する方法である。
【0112】
しかし、この方法ではセレン化の際に膜が約2倍に体積膨張するため、内部歪みが生じ、また、生成膜内に数μm程度のボイドが発生し、これらが膜の基板に対する密着性や太陽電池特性に悪影響を及ぼし、光電変換効率の制限要因になっているという問題がある(B.M.Basol,V.K.Kapur,C.R.Leidholm,R.Roe,A.Halani,and G.Norsworthy:NREL/SNL Photovoltaics Prog.Rev.Proc.14th Conf.-A Joint Meeting(1996)AIP Conf.Proc.394.)。
【0113】
このようなセレン化の際に生ずる急激な体積膨張を回避するために、金属プリカーサ膜に予めセレンをある割合で混合しておく方法(T.Nakada,R.Ohnishi,and A.kunioka:"CuInSe2-Based Solar Cells by Se-Vapor Selenization from Se-Containing Precursors" Solar Energy Materials and Solar Cells 35(1994)204-214.)や、金属薄層間にセレンを挟み(例えばCu層/In層/Se層・・・Cu層/In層/Se層と積層する)多層化プリカーサ膜の使用が提案されている(T.Nakada,K.Yuda,and A.Kunioka:"Thin Films of CuInSe2 Produced by Thermal Annealing of Multilayers with Ultra-Thin stacked Elemental Layers" Proc.of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference(1991)887-890.)。これらにより、上述の堆積膨張の問題はある程度回避されている。
【0114】
しかし、このような手法を含めて、すべてのセレン化法に当てはまる問題点がある。それは、最初にある決まった組成の金属積層膜を用い、これをセレン化するため、膜組成制御の自由度が極めて低いという点である。例えば現在、高効率CIGS系太陽電池では、Ga濃度が膜厚方向で傾斜したグレーデッドバンドギャップCIGS薄膜を使用するが、このような薄膜をセレン化法で作製するには、最初にCu−Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法がある(K.Kushiya,I.Sugiyama,M.Tachiyuki,T.Kase,Y.Nagoya,O.Okumura,M.Sato,O.Yamase and H.Takeshita:Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf.Miyazaki,1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.)。
【0115】
3)スパッタ法
スパッタ法は大面積化に適するため、これまでCuInSe薄膜形成法として多くの手法が試みられてきた。例えば、CuInSe多結晶をターゲットとした方法や、CuSeとInSeをターゲットとし、スパッタガスにHSeとAr混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,R.B.Love,A.K.Khanna,S.C.Lewis and F.Cohen:"CdS/CuInSe2 Junctions Fabricated by DC Magnetron Sputtering of Cu2Se and In2Se3" Proc.18th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1985)1655-1658.)が開示されている。また、Cuターゲット,Inターゲット,Se又はCuSeターゲットをArガス中でスパッタする3源スパッタ法などが報告されている(T.Nakada,K.Migita,A.Kunioka:"Polycrystalline CuInSe2 Thin Films for Solar Cells by Three-Source Magnetron Sputtering" Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.ならびに、T.Nakada,M.Nishioka,and A.Kunioka:"CuInSe2 Films for Solar Cells by Multi-Source Sputtering of Cu,In,and Se-Cu Binary Alloy" Proc.4th Photovoltaic Science and Engineering Conf.(1989)371-375.)。
【0116】
4)ハイブリッドスパッタ法
前述したスパッタ法の問題点が、Se負イオン又は高エネルギーSe粒子による膜表面損傷であるとするなら、Seのみを熱蒸発に変えることで、これを回避できるはずである。中田らは、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法で、欠陥の少ないCIS薄膜を形成し、変換効率10%を超すCIS太陽電池を作製した(T.Nakada,K.Migita,S.Niki,and A.Kunioka:"Microstructural Characterization for Sputter-Deposited CuInSe2 Films and Photovoltaic Devices" Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.)。また、Rockettらは、これに先立ち、有毒のH2Seガスの代わりにSe蒸気を用いることを目的としたハイブリッドスパッタ法を報告している(A.Rockett,T.C.Lommasson,L.C.Yang,H.Talieh,P.Campos and J.A.Thornton:Proc.20th IEEE Photovoltaic Specialists Conf.(1988)1505.)。更に古くは膜中のSe不足を補うためSe蒸気中でスパッタする方法も報告されている(S.Isomura,H.Kaneko,S.Tomioka,I.Nakatani,and K.Masumoto:Jpn.J.Appl.Phys.19(Suppl.19-3)(1980)23.)。
【0117】
5)メカノケミカルプロセス法
CIGSの各組成の原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得る。その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施しCIGSの膜を得る方法である(T.Wada,Y.Matsuo,S.Nomura,Y.Nakamura,A.Miyamura,Y.Chia,A.Yamada,M.Konagai,Phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p2593)。
【0118】
6)その他の方法
その他のCIGS製膜法としては、例えばスクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、スプレー法などが挙げられる。スクリーン印刷法、スプレー法等で、成分となるIb族元素、IIIb族元素、VIb族元素とそれらの化合物からなる微粒子から構成される薄膜を基板上に形成し、熱処理、VIb族元素雰囲気での熱処理などにより所望の組成の結晶を得る。例えば酸化物微粒子を塗布にて薄膜を形成した後、セレン化水素雰囲気中で加熱する。PVSEC−17 PL5−3あるいは、金属−VIb族元素結合を含む有機金属化合物の薄膜を基板上にスプレー・印刷などで形成し、熱分解することによって、所望の無機薄膜を得る。例えば、Sの場合には、金属メルカプチド、金属のチオ酸塩、金属のジチオ酸塩、金属のチオカルボナート塩、金属のジチオカルボナート塩、金属のトリチオカルボナート塩、金属のチオカルバミン酸塩もしくは金属のジチオカルバミン酸塩(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報)などが挙げられる。
【0119】
−バンドギャップの値と分布制御−
太陽電池の光吸収層としては、I族元素−III族元素−VI族元素の各種組合せからなる半導体が好ましく利用できる。よく知られているものを図3に示す。この図3は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。組成比を変えることにより様々な禁制帯幅(バンドギャップ)を得ることができる。バンドギャップよりエネルギーの大きな光子が半導体に入射した場合、バンドギャップを超える分のエネルギーは熱損失となる。太陽光のスペクトルとバンドギャップの組合せで変換効率が最大になるのがおよそ1.4eV〜1.5eVであることが理論計算で分かっている。CIGS太陽電池の変換効率を上げるため、例えばCu(InGa1−x)SのGa濃度を上げたり、Cu(InAl)SのAlを上げたり、CuInGa(S,Se)のS濃度を上げたりしてバンドギャップを大きくすることで、変換効率の高いバンドギャップを得る。Cu(InGa1−x)Sの場合1eV〜1.68eVの範囲で調整できる。
【0120】
また、組成比を膜厚方向に変えることでバンド構造に傾斜を付けることができる。光の入射窓側から反対側の電極方向にバンドギャップを大きくするシングルグレーデットバンドギャップ、あるいは、光の入射窓からPN接合部に向かってバンドギャップが小さくなりPN接合部を過ぎるとバンドギャップが大きくなるダブルグレーデッドバンドギャップの2種類が考えられる。このような太陽電池は、例えば、T.Dullweber,A new approach to high−efficiency solar cells by band gap grading in Cu(In,Ga)Se chalcopyrite semiconductors,Solar Energy Materials & Solar Cells,Vol.67,p.145−150(2001)などに開示されている。いずれもバンド構造の傾斜によって内部に発生する電界のため、光に誘起されたキャリアが加速され電極に到達しやすくなり、再結合中心との結合確率を下げるため、発電効率を向上する(国際公開第2004/090995号パンフレット参照)。
【0121】
−タンデム型−
スペクトルの範囲別にバンドギャップの異なる半導体を複数使うと、光子エネルギーとバンドギャップの乖離による熱損失を小さくし、発電効率を向上することができる。このようなこのような複数の光電変換層を重ねて用いるものをタンデム型という。2層タンデムの場合には、例えば1.1eVと1.7eVの組合せを用いることにより発電効率を向上することができる。
【0122】
−−光電変換層以外の構成−−
I−III−VI族化合物半導体と接合を形成するn形半導体には、例えば、CdSやZnO、ZnS、Zn(O,S,OH)などのII−VI族の化合物を用いることができる。これらの化合物は、光電変換層とキャリアの再結合のない接合界面を形成することができ、好ましい(特開2002−343987号公報参照)。
【0123】
〔基板〕
前記基板としては、例えば、ソーダライムガラス等のガラス板;ポリイミド系、ポリエチレンナフタレート系、ポリエーテルサルフォン系、ポリエチレンテレフタレート系、アラミド系等のフィルム;ステンレス、チタン、アルミニウム、銅等の金属板;特開2005−317728号公報記載の集成マイカ基板などを用いることができる。これらの中でも、本発明においては、上記素子用基板としては、フィルム状、又は箔状が好ましい。
【0124】
〔裏面電極〕
前記裏面電極としては、例えばモリブデン、クロム、タングステンなどの金属を用いることができる。これらの金属材料は熱処理を行っても他の層と混じりにくく好ましい。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、モリブデン層を用いることが好ましい。また、裏面電極において、光吸収層CIGSと裏面電極との境界面には再結合中心が存在する。したがって、裏面電極と光吸収層との接続面積は電気伝導に必要となる以上の面積があると、発電効率が低下する。接触面積を少なくするために、例えば、電極層を絶縁材料と金属がストライプ状に並んだ構造を用いるとよい(特開平9−219530号公報参照)。
層構造としては、スーパーストレート型、サブストレート型が挙げられる。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、サブストレート型構造を用いるほうが、変換効率が高く好ましい。
【0125】
〔バッファ層〕
前記バッファ層としては、例えばCdS、ZnS、ZnS(O,OH)、ZnMgOなどを使うことができる。例えば、CIGSのGa濃度を上げて光吸収層のバンドギャップを広くすると、伝導帯がZnOの伝導帯より大きくなり過ぎるため、バッファ層には伝導帯のエネルギーが大きいZnMgOが好ましい。
【0126】
〔透明導電層〕
前記バッファ層を形成後、本発明の太陽電池で用いられる透明導電層は、前記ナノワイヤー構造体含有分散物を用いて塗設されることが好ましいが、バッファ層形成後にZnO層を形成した後、前記ナノワイヤー構造体含有分散物を塗設してもよい。
前記透明導電層の製造方法は、前記分散物を、基板上へ塗設し、乾燥することにより得られる。前記分散物を塗設後に加熱によるアニールを行ってもよい。この際、加熱温度は、50℃以上300℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましい。
【0127】
前記透明導電層は、あらゆる太陽電池の透明電極に使用することができる。また、集電用電極としては透明電極を用いない結晶系(単結晶、多結晶など)シリコン太陽電池に対しても適用できる。結晶系シリコン太陽電池は、集電電極としては、一般的に銀蒸着電線、又は銀ペーストによる電線が用いられるが、本発明で用いられる透明導電層を適用することでこれらに対しても高い光電変換効率が得られる。
また、本発明の太陽電池に用いられる透明導電層は、赤外波長の透過率が高く、かつシート抵抗が小さいため、赤外波長に対する吸収の大きな太陽電池、例えばタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池などに好適に用いられる。
【実施例】
【0128】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の例において、ナノワイヤー構造体としての金属ナノワイヤーの直径及び長軸長さ、ナノワイヤー構造体としての金属ナノワイヤー直径の変動係数、適切ワイヤー化率、及びナノワイヤー構造体としての金属ナノワイヤーの断面角の鋭利度は、以下のようにして測定した。
【0129】
<金属ナノワイヤーの直径及び長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの直径及び長軸長さ求めた。
【0130】
<金属ナノワイヤー直径の変動係数>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの直径を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより変動係数を求めた。
【0131】
<適切ワイヤー化率>
各銀ナノワイヤー水分散物をろ過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いてろ紙に残っているAg量と、ろ紙を透過したAg量を各々測定し、直径が50nm以下であり、かつ長さが5μm以上である金属ナノワイヤー(適切なワイヤー)の全金属粒子中の金属量(質量%)を求めた。
なお、適切ワイヤー比率を求める際の適切なワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0132】
<金属ナノワイヤーの断面角の鋭利度>
金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)で観察し、300個の断面について、断面の外周長さと断面の各辺の合計長さを計測し、「断面の各辺」の合計長さに対する前記「断面の外周長さ」との比率である鋭利度を求めた。この鋭利度が75%以下の場合には角の丸い断面形状であるとした。
【0133】
(合成例1)
−アルカリ可溶性重合体(1)の合成−
攪拌器付4つ口フラスコ内に、モノマーAとして日本化薬株式会社製KAYARAD TC−110S、モノマーb1として(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、モノマーb2としてグリシジルアクリレート、モノマーb3として2−ヒドロキシエチルアクリレートを下記の組成で仕込み、2−ブタノンの還流温度で4時間加熱して重合を行った。重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を用いた。
・2−ブタノン・・・200.0g
・TC−110S・・・1.0g
・(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート・・・19.0g
・グリシジルアクリレート・・・30.0g
・2−ヒドロキシエチルアクリレート・・・50.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0134】
次に、反応液を室温まで冷却し、大量のヘキサンに投入した。生成した沈殿を3−メトキシプロピオン酸メチル(以下、「MMP」という)に溶解し、1.33×10Paの減圧下100℃にて重合溶媒であるヘキサンを留去し、アルカリ可溶性重合体(1)のMMP溶液を得た。
得られたMMP溶液の一部をサンプリングし、220℃で30分間乾燥して減少した質量を求め、その質量値をもとに重合体濃度が30質量%となるようにMMPを加え、溶液を調製して測定したところ、得られたアルカリ可溶性重合体(1)の収率は78%であった。また、得られたアルカリ可溶性重合体(1)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は5,800であった。
【0135】
(合成例2)
−アルカリ可溶性重合体(2)の合成−
モノマーb1として(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、モノマーb2としてグリシジルメタクリレート、モノマーb3として2−ヒドロキシエチルメタクリレートを使用した以外は、合成例1と同様の成分を、下記の質量で仕込み、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・TC−110S・・・20.0g
・(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート・・・15.0g
・グリシジルメタクリレート・・・30.0g
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート・・・35.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0136】
次に、合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(2)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は75%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(2)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は5,200であった。
【0137】
(合成例3)
−アルカリ可溶性重合体(3)の合成−
モノマーb1として(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート、モノマーb2としてメチルグリシジルメタクリレート、モノマーb3として2−ヒドロキシプロピルアクリレートを使用した以外は、合成例1と同様の成分を、下記の質量で仕込み、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・TC−110S・・・65.0g
・(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート・・・15.0g
・メチルグリシジルメタクリレート・・・10.0g
・2−ヒドロキシプロピルアクリレート・・・10.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0138】
次に、合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(3)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は69%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(3)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は5,000であった。
【0139】
(合成例4)
−アルカリ可溶性重合体(4)の合成−
モノマーb1として(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレート、モノマーb2として3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、モノマーb3として2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを使用した以外は、合成例1と同様の成分を、下記の質量で仕込み、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・TC−110S・・・80.0g
・(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレート・・・5.0g
・3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート・・・10.0g
・2−ヒドロキシプロピルメタクリレート・・・5.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0140】
次に、合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(4)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は68%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(4)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は5,100であった。
【0141】
(合成例5)
−アルカリ可溶性重合体(5)の合成−
合成例1と同様の装置で、下記組成にて2−ブタノンを溶剤として70℃の温度で0.5時間加熱し、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・グリシジルメタクリレート・・・90.0g
・メタクリル酸・・・10.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・4.0g
【0142】
次に、合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(5)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は85%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(5)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は8,900であった。
【0143】
(合成例6)
−アルカリ可溶性重合体(6)の合成−
モノマーb1として(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、モノマーb2としてメチルグリシジルメタクリレート、モノマーb3として2−ヒドロキシエチルメタクリレート、モノマーb4としてメタクリル酸を使用した以外は、合成例1と同様の成分を、下記の質量で仕込み、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・TC−110S・・・30.0g
・(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート・・・30.0g
・メチルグリシジルメタクリレート・・・30.0g
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート・・・6.0g
・メタクリル酸・・・4.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0144】
次に、合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(6)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は74%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(6)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は5,200であった。
【0145】
(合成例7)
−アルカリ可溶性重合体(7)の合成−
モノマーb1として(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、モノマーb2としてメチルグリシジルメタクリレート、モノマーb3として2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、モノマーb4としてトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニルメタクリレートを使用した以外は、合成例1と同様の成分を、下記の質量で仕込み、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・TC−110S・・・20.0g
・(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート・・・15.0g
・メチルグリシジルメタクリレート・・・30.0g
・2−ヒドロキシプロピルメタクリレート・・・25.0g
・トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニルメタクリレート・・・10.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0146】
次に、合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(7)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は77%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(7)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は5,600であった。
【0147】
(比較合成例1)
−比較共重合体(1)の合成−
合成例1と同様にして、下記成分を下記の質量で仕込み、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート・・・19.0g
・グリシジルアクリレート・・・31.0g
・2−ヒドロキシエチルアクリレート・・・50.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0148】
次に、合成例1と同様の処理を行い、比較共重合体(1)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は80%であった。得られた比較共重合体(1)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は6,200であった。
【0149】
(比較合成例2)
−比較共重合体(2)の合成−
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の質量で仕込み、重合を行った。
・2−ブタノン・・・200.0g
・(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート・・・15.0g
・グリシジルアクリレート・・・30.0g
・2−ヒドロキシエチルアクリレート・・・45.0g
・メタクリル酸・・・10.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・2.0g
【0150】
次に、合成例1と同様の処理を行い、比較共重合体(2)の30質量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は78%であった。得られた比較共重合体(2)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は5,900であった。
【0151】
(比較合成例3)
−比較共重合体(3)の合成−
攪拌器付4つ口フラスコ内を窒素置換した後、下記の成分を下記の質量で仕込んだ。
・ジエチレングリコールジメチルエーテル・・・204.0g
・スチレン・・・10.0g
・ジシクロペンタニルメタクリレート・・・35.0g
・グリシジルメタクリレート・・・40.0g
・メタクリル酸・・・15.0g
・2,2’−アゾビスイソブチロニトリル・・・4.0g
【0152】
次に、上記溶液を撹拌しながら、80℃に上昇させこの温度で5時間保持した後、90℃で1時間加熱し重合を終了した。反応液を室温まで冷却し、大量の水に滴下した。生成した沈殿物を水洗後、テトラヒドロフラン90gに再溶解し、大量の水で再度、沈殿させた。この再溶解−沈殿操作を計3回行った後、得られた沈殿物を60℃で48時間真空乾燥し、目的とする共重合体を得た。その後、固形分濃度が30質量%となるようにMMPを用いて調整し比較共重合体(3)を得た。ポリマーの収率は65%であった。得られた比較共重合体(3)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は4,200であった。
【0153】
(比較合成例4)
−比較共重合体(4)の合成−
攪拌器付4つ口フラスコ内を窒素置換した後、下記成分を下記の質量で仕込んだ。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート・・・220.0g
・スチレン・・・20.0g
・メタクリル酸・・・15.0g
・N−フェニルマレイミド・・・20.0g
・(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート・・・45.0g
・α−メチルスチレンダイマー・・・1.5g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・7.0g
【0154】
次に、上記溶液を窒素置換しながら撹拌を行った。溶液の温度を70℃に上昇させこの温度で5時間保持した。得られた比較重合体(4)の固形分濃度は31.0%であり、GPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は10,600であった。
【0155】
(比較合成例5)
−比較共重合体(5)の合成−
攪拌器付4つ口フラスコ内を窒素置換した後、下記成分を下記の質量で仕込んだ。
・ジエチレングリコールジメチルエーテル・・・220.0g
・スチレン・・・20.0g
・メタクリル酸・・・15.0g
・グリシジルメタアクリレート・・・40.0g
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート・・・25.0g
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)・・・8.0g
【0156】
次に、上記溶液を窒素置換しながら撹拌を行った。溶液の温度を70℃に上昇させこの温度で5時間保持した。得られた比較重合体(5)の固形分濃度は30.6%であり、GPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた質量平均分子量は9,800であった。
【0157】
<銀ナノワイヤー分散物の調製>
−銀ナノワイヤー分散物(1)の調製−
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した。その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0158】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー水分散物を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加液H 82.5mL、及び添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分後、添加液Hを82.5mL添加した。その後、3℃/分で内温75℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5時間加熱した。
得られた水分散物を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー分散液(水溶液)をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。上記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、銀ナノ粒子の水分散物を得た。
得られた銀ナノ粒子は、平均短軸長さ18nm、平均長軸長さ38μmのワイヤー状であった。
この銀ナノ粒子の水分散物へ、ポリビニルピロリドン(K−30)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を添加し、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの水を除去し、PGMEを添加し、再分散を行い、その操作を3回繰り返し、銀ナノワイヤーのPGME分散液(1)を得た。この分散液における銀の含有量は、銀2質量%であった。
得られた銀ナノワイヤー(1)の直径の変動係数は22.3%、適切ワイヤー化率は78.6%、銀ナノワイヤーの断面角の鋭利度は44.2であった。
【0159】
−銀ナノワイヤー分散物(2)の調製−
エチレングリコール30mlを三口フラスコに入れ160℃に加熱した。その後、36mMのPVP(K−55)、3μMのアセチルアセトナート鉄、60μMの塩化ナトリウムエチレングリコール溶液18mlと、24mMの硝酸銀エチレングリコール溶液18mlを毎分1mlの速度で添加した。160℃で60分加熱後室温まで冷却した。水を加えて遠心分離し、伝導度が50μS/cm以下になるまで精製し、銀ナノ粒子の水分散物を得た。
得られた銀ナノ粒子は、平均短軸長さ110nm、平均長軸長さ32μmのワイヤー状であった。
得られた銀ナノ粒子の水分散物を遠心分離の後、デカンテーションにより水を除去し、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を添加し、再分散を行い、その操作を3回繰り返し、銀ナノワイヤーのPGME分散液(2)を得た。この分散液における銀の含有量は、銀2質量%であった。
得られた銀ナノワイヤー(2)の直径の変動係数は86.3%、適切ワイヤー化率は75.4%、銀ナノワイヤーの断面角の鋭利度は45.6であった。
【0160】
(実施例1)
−ポジ型感光性組成物の作製−
合成例1のアルカリ可溶性重合体(1)、1,2−キノンジアジド化合物である4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとの縮合物(平均エステル化率58%、以下「PAD」と称することもある)、添加剤としてフッ素系界面活性剤である大日本インキ化学工業株式会社製メガファックR−08(以下「R−08」と称することもある)、及び溶媒としてMMPを下記の質量で混合溶解した。
・MMP・・・50.00g
・アルカリ可溶性重合体(1)の30質量%溶液・・・10.00g
・PAD・・・0.60g
・R−08・・・0.006g
次に、アルカリ可溶性重合体(1)に対して銀の固形分質量比率が2:1になるように、MMP溶液に銀ナノワイヤーPGME分散物(1)を添加し、ポジ型感光性組成物を作製した。
【0161】
作製した実施例1のポジ型感光性組成物について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0162】
<(1)パターン状透明導電膜の形成>
ガラス基板上に、実施例1で合成されたポジ型感光性組成物をスリット塗布し、90℃のホットプレート上で2分間乾燥し、プリベークした。この基板にマスク上から、高圧水銀灯i線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)露光を行った。露光後のガラス基板を、0.4質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間ディップ現像し、露光部を除去した。現像後の基板を純水で60秒間洗ってから100℃のホットプレートで2分間乾燥した。この基板を前記露光機にてマスクを介さずに露光量300mJ/cmで全面露光した後、オーブン中230℃で30分間ベイクし、パターン状透明導電膜を形成した。
【0163】
<(2)導電性>
上記(1)で得られたポストベーク後のパターン状透明導電膜の表面抵抗を、三菱化学株式会社製Loresta−GP MCP−T600を用いて測定した。
【0164】
<(3)解像度>
上記(1)で得られたポストベーク後のパターン状透明導電膜の基板を光学顕微鏡で400倍にて観察し、ホールパターンの底にガラスが露出しているマスクサイズを確認した。溶解性が悪く、ホールパターンが解像しない場合、NG(No Good)と判定した。
【0165】
<(4)透明性>
ガードナー社製ヘイズガードプラスを使用して、上記(1)で得られたパターン状透明導電膜の全光透過率(%)を測定した。
【0166】
<(5)耐溶剤性>
上記(1)で得られたパターン状透明導電膜の基板を100℃のN−メチル−2−ピロリドン中に5分間浸漬し、ガラスが露出しているマスクサイズを確認した。耐溶剤性が悪く、ホールパターンに乱れが生じた場合、NG(No Good)と判定した。
【0167】
<(6)耐アルカリ性>
上記(1)で得られたパターン状透明導電膜の基板を60℃の5%水酸化カリウム水溶液に10分間浸漬し、ガラスが露出しているマスクサイズを確認した。耐アルカリ性が悪く、ホールパターンに乱れが生じた場合、NG(No Good)と判定した。
【0168】
<(7)耐熱性>
上記(1)で得られたパターン状透明導電膜の基板を230℃のオーブンで1時間加熱し、上記(4)と同様に全光透過率(%)の測定を行った。
【0169】
<(8)密着性>
上記(1)で得られたパターン状透明導電膜の基板を碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は1mm角の碁盤目100個中のテープ剥離後の残存碁盤目数が95以上で良好と判断し、それ以下はNG(No Good)とした。
【0170】
(実施例2)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例2のアルカリ可溶性重合体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0171】
(実施例3)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例3のアルカリ可溶性重合体(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0172】
(実施例4)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例4のアルカリ可溶性重合体(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0173】
(実施例5)
実施例1において、合成例1のアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例4のアルカリ可溶性重合体(4)と合成例5のアルカリ可溶性重合体(5)を用い、下記組成とした以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
・MMP・・・1.40g
・アルカリ可溶性重合体(4)の30質量%溶液・・・6.00g
・アルカリ可溶性重合体(5)の30質量%溶液・・・4.00g
・PAD・・・0.60g
・R−08・・・0.006g
【0174】
(実施例6)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例6のアルカリ可溶性重合体(6)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0175】
(実施例7)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例7のアルカリ可溶性重合体(7)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0176】
(実施例8)
実施例1において、銀ナノワイヤーPGME分散液(1)の代わりに、銀ナノワイヤーPGME分散液(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0177】
(実施例9)
実施例1において、銀ナノワイヤーPGME分散液(1)をアルカリ可溶性重合体(1)が溶解したMMP液と混合せず、先に基板へ塗布し、その後アルカリ可溶性重合体(1)が溶解したMMP液を塗布し、乾燥の後に基板上で実施例1と同様のポジ型感光性組成物を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0178】
(実施例10)
実施例1において、銀ナノワイヤーPGME分散液(1)の代わりに、下記方法にて作製した単層カーボンナノチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
−単層カーボンナノチューブの作製−
特許第3903159号公報の実施例1を参考にして単層カーボンナノチューブ分散液を調製した。
単層カーボンナノチューブ(文献Chemical Physics Letters,323(2000)P580−585に基づき合成)と、分散剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を、溶媒としてのイソプロピルアルコール/水混合物(混合比3:1)中に加えた。カーボンナノチューブの含有量は0.003質量%、分散剤の含有量は0.05質量%であった。
得られたカーボンナノチューブの長軸長さは1〜3μm、短軸長さは1〜2nm、アスペクト比は1,000〜1,500であった。
【0179】
(比較例1)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、比較合成例1の比較共重合体(1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0180】
(比較例2)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、比較合成例2の比較共重合体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0181】
(比較例3)
実施例1において、アルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、比較合成例3の比較共重合体(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0182】
(比較例4)
比較合成例4の比較重合体(4)、1,2−キノンジアジド化合物であるPAD、添加剤としてフッ素系界面活性剤であるR−08(大日本インキ化学工業株式会社製)、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、下記の質量で混合溶解し、ポジ型感光性組成物を調製した。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート・・・1.72g
・比較重合体(4)の31質量%溶液・・・9.68g
・PAD・・・0.60g
・R−08・・・0.006g
得られたポジ型感光性組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0183】
(比較例5)
比較合成例5の比較重合体(5)、1,2−キノンジアジド化合物であるPAD、添加剤としてフッ素系界面活性剤であるセイミケミカル株式会社製サーフロンSC−101、及び溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテルを、下記の質量で混合溶解し、ポジ型感光性組成物を調製した。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート・・・1.60g
・比較重合体(5)の30.6質量%溶液・・・9.80g
・PAD・・・0.60g
・SC−101・・・0.006g
得られたポジ型感光性組成物を用いて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0184】
(比較例6)
実施例1において、銀ナノワイヤーPGME分散液(1)の代わりに、The Journal of Physical Chemistry(2005) vol.109、p5497記載の方法にて作製した球状銀粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。得られた球状銀粒子の直径は26nmであった。
【0185】
(比較例7)
実施例1において、銀ナノワイヤーPGME分散液(1)の代わりに、針状導電性微粒子(FS−10、石原産業株式会社製、長軸長さ平均0.5μm、短軸長さ0.02μm、アスペクト比25)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0186】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜10の本発明のポジ型感光性組成物は、優れた耐溶剤性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性、下地との密着性、及び導電性を兼ね備え、更に、それが一回塗布にて形成され、銀ナノワイヤーを併用したときに特に顕著な効果が現れることが分かった。
なお、実施例9では、評価結果は良好であったが、銀ナノワイヤー分散液のみを塗布した場合は、その時点でバインダーポリマーが存在しないためか、凝集が観察され、透過率が劣る結果となった。
なお、実施例10では、銀ナノワイヤーの代わりに単層カーボンナノチューブを用いても結果は概ね良好であったが、銀ナノワイヤー分散物を用いたときと比較して透明性と導電性においては劣る結果となった。
これに対し、比較合成ポリマーを使用した比較例1〜5は、銀ナノワイヤーを使用しても、実施例と同様の優れた耐溶剤性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性、下地との密着性、及び導電性は確認できなかった。
また、銀ナノワイヤーに対し、球状銀粒子、針状導電性粒子を用いた比較例6、7では、導通させるために多量の銀粒子、又は針状導電性粒子を塗布したために、大きく透明性が劣り、また解像度、耐溶剤性がNGとなった。
耐溶剤性、解像度が、本発明の合成ポリマーとナノワイヤー構造体の組合せで得られたことは、本発明において初めて明らかになったことであり、予測できない驚くべき結果であった。
【0187】
(実施例11及び比較例8)
−表示素子の作製−
本発明のポジ型感光性組成物を用い、以下のようにして表示素子を作製した。
まず、ガラス基板上にボトムゲート型のTFTを形成し、このTFTを覆う状態でSiからなる絶縁膜を形成した。次に、この絶縁膜に、コンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線(高さ1.0μm)を絶縁膜上に形成した。
次いで、配線の形成による凹凸を平坦化するために、配線による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜上へ平坦化層を形成し、コンタクトホールを形成し、平坦膜Aを得た。
次に、平坦膜A上に、実施例1のポジ型感光性組成物をスリット塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃×2分)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)照射した後、アルカリ現像液(TMAH水溶液0.4%)にて現像して露光部分を除去し、220℃/1hrの加熱処理を行い、TFT-Aを得た(実施例11)。TFT動作の確認を行ったところ、良好な作動を確認できた。
比較例8として、平坦膜A上にITOのパターン導電膜を形成し、TFT-Bを得た(比較例8)。この比較例8は、TFT動作は同様に確認できたが、実施例1のポジ型感光性組成物を用いた場合に対し、透過率が劣り、斜め方向の干渉ムラが確認され、表示素子として実用上問題ありと判断した。
【0188】
(比較例9及び実施例12)
<集積型太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の製作−
ガラス基板上にMOCVDにて膜厚700nmのフッ素添加酸化錫(透明導電膜)を形成した。その上部にプラズマCVD法により膜厚約15nmのp型、膜厚約350nmのi型、膜厚約30nmのn型アモルファスシリコンを形成し、裏面反射電極としてガリウム添加酸化亜鉛層20nm、銀層200nmを形成し、光電変換素子101(比較例9)を作製した。
透明電極としてフッ素添加酸化錫の代わりにガラス基板上に、実施例1で作製したポジ型感光性組成物をAg換算で0.1g/mになるように塗布し、その後150℃で10分間加熱した以外は、光電変換素子101と同様にして、光電変換素子102(実施例12)を作製した。
【0189】
(比較例10及び実施例13)
−CIGS太陽電池(サブストレート型)の製作−
ソーダライムガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により膜厚500nm程度のモリブデン電極、真空蒸着法により膜厚約2.5μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、溶液析出法により膜厚約50nmの硫化カドミニウム薄膜、MOCVDにより膜厚約50nmの酸化亜鉛薄膜を形成し、その上に直流マグネトロンスパッタ法により膜厚約100nmのホウ素添加酸化亜鉛薄膜(透明導電層)を形成し、光電変換素子201(比較例10)を作製した。
透明電極としてホウ素添加酸化亜鉛の代わりに、実施例1のポジ型感光性組成物を用いた以外は、光電変換素子201と同様に光電変換素子202を作製した。硫化カドミウム薄膜形成後、実施例1のポジ型感光性組成物をAg換算で0.1g/mになるように硫化カドミウム薄膜上に塗布した。塗布後に150℃で10分間加熱することにより光電変換素子202(実施例13)を作製した。
【0190】
次に、作製した各太陽電池において、以下のようにして変換効率を評価した。結果を表2に示す。
【0191】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
各太陽電池について、ソーラーシミュレーターによりAM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで太陽電池特性(変換効率)を測定した。
【0192】
【表2】

表2の結果から、本発明のポジ型感光性組成物を透明導電層に用いることで、いずれの集積型太陽電池方式においても高い変換効率が得られることが分かった。
ただし、変換効率に関しては、比較例に対して本発明による効果は、数字上は1〜2%の差であるが、この差は当業界では周知の通り重要な差である。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明のポジ型感光性組成物は、例えば、パターン状透明導電膜、表示素子、集積型太陽電池などの作製に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0194】
200 Mo電極層
300 光吸収層
400 バッファ層
500 透光性電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化11】

ただし、前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数であり、mは、1〜7の整数である。
【請求項2】
下記一般式(II)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体、1,2−キノンジアジド化合物、及びナノワイヤー構造体を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化12】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数である。
【請求項3】
アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)とモノマー(B)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を1質量%〜80質量%%、及びモノマー(B)を20質量%〜99質量%共重合して得られる請求項1から2のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項4】
他のラジカル重合性モノマー(B)が、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーを含まない請求項1から3のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項5】
他のラジカル重合性モノマー(B)が、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)及び水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)から選択される少なくとも1種を含む請求項1から4のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項6】
他のラジカル重合性モノマー(B)が、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)及び水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)を含む請求項1から5のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項7】
アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)、モノマー(b1)、モノマー(b2)及びモノマー(b3)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を0.5質量%〜85質量%、前記モノマー(b1)を1質量%〜80質量%、前記モノマー(b2)を5質量%〜50質量%、前記モノマー(b3)を1質量%〜60質量%共重合して得られる請求項6に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項8】
アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)、モノマー(b1)、モノマー(b2)及びモノマー(b3)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を1質量%〜80質量%、前記モノマー(b1)を5質量%〜30質量%、前記モノマー(b2)を10質量%〜30質量%、前記モノマー(b3)を5質量%〜50質量%共重合して得られる請求項6に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項9】
モノマー(b1)が、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタニ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン及び4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタンから選択される少なくとも1種を含有する請求項5から8のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項10】
モノマー(b1)が、下記一般式(III)及び下記一般式(IV)のいずれかで表されるモノマーである請求項5から8のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【化13】

【化14】

ただし、前記一般式(III)及び(IV)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は炭素数2〜5のアルキニル基であり、nは、1〜5の整数である。
【請求項11】
一般式(III)で表されるオキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)が、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート及び(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する請求項10に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項12】
一般式(IV)で表されるオキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)が、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート及び(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する請求項10に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項13】
モノマー(b2)が、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有する請求項5から12のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項14】
モノマー(b2)が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する請求項5から12のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項15】
モノマー(b3)が、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有する請求項5から14のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項16】
モノマー(b3)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を含有する請求項5から14のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項17】
1,2−キノンジアジド化合物が、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル及び4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルから選択される少なくとも1種である請求項1から16のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項18】
下記一般式(II)で表されるモノマー(A)と、
【化15】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数である。
オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)として、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート及び(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートからなる群から選ばれる1種以上、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種、並びに、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体と、
1,2−キノンジアジド化合物として4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルと、
ナノワイヤー構造体と、を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【請求項19】
下記一般式(II)で表されるモノマー(A)と、
【化16】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜5の整数である。
オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)として、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート及び(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1種、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル及び3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種、並びに、水酸基を有するラジカル重合性モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレートから選択される少なくとも1種を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体と、
1,2−キノンジアジド化合物として、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルと、
ナノワイヤー構造体と、を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【請求項20】
アルカリ可溶性重合体が、モノマー(A)、モノマー(b1)、モノマー(b2)及び前記モノマー(b3)の合計質量に対して、前記モノマー(A)を1質量%〜80質量%、前記モノマー(b1)を5質量%〜30質量%、前記モノマー(b2)を10質量%〜30質量%、前記モノマー(b3)を5質量%〜50質量%共重合して得られる請求項18から19のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項21】
ナノワイヤー構造体が、金属ナノワイヤーである請求項1から20のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【請求項22】
金属ナノワイヤーが短軸長さ50nm以下であり、かつ長軸長さ5μm以上であり、該金属ナノワイヤーを全金属粒子中に金属量で50質量%以上含む請求項21に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかに記載のポジ型感光性組成物を含有することを特徴とする透明導電膜。
【請求項24】
請求項23に記載の透明導電膜を有することを特徴とする表示素子。
【請求項25】
請求項23に記載の透明導電膜を有することを特徴とする集積型太陽電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−250109(P2010−250109A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100088(P2009−100088)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】