説明

ポリイミド除去用洗浄剤組成物

【課題】室温でもポリイミドを良好に除去することができ、アルミニウム及びアルミニウム合金配線の腐食防止効果にも優れるだけでなく、長期間使っても析出の問題がないポリイミド除去用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】組成物の総重量に対し、(A)0.1〜10重量%の下記化学式1で示される第4級アンモニウム水酸化物、(B)50〜90重量%のグリコールエーテル系化合物、(C)7〜30重量%のグリセリン、及び(D)残量の水を含むポリイミド除去用洗浄剤組成物を提供する。
[化学式1]
[N−(R)・OH
前記式で、Rは炭素数が1〜5のアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド除去用洗浄剤組成物に関し、より詳しくは半導体素子及び液晶表示素子の製造工程において、基板からポリイミド膜を効果的に除去するための洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルカリ洗浄剤は、中性洗浄剤に比べ、有機物、無機物及びパーティクルなどを除去する能力に優れるので、電子部品、金属部品及びセラミック部品などの生産現場で幅広く使われている。しかし、アルカリ洗浄剤は、アルミニウムなどの非鉄金属を容易に腐食させるため、アルミニウムが部品の一部または全部に使われている電子部品などの洗浄に、アルカリ洗浄剤を使うことができないことが現状である。
【0003】
例えば、電子部品、特に液晶パネルのポリイミド配向膜は、今まで水平配向タイプであったが、広視野角の液晶パネルの要求が高くなるにつれて垂直配向タイプのポリイミド配向膜が増加する趨勢にある。水平配向タイプのポリイミド配向膜ガラス基板は、完全塑性(塑性温度:約180℃)前の半塑性状態(約80℃で脱溶剤した半硬化膜)であれば、その不良品に対してN−メチルピロリドンなどの溶剤を使ってアルミニウム薄膜(配線)を腐食させずに配向膜を分離することができる。しかしながら、垂直配向タイプのポリイミド配向膜の場合には、前記半塑性状態であっても溶剤によってはポリイミド配向膜(半塑性)を剥離することができないため、アルカリ洗浄剤を使って配向膜の剥離を行っている(特許文献1)。
【0004】
しかし、アルカリ洗浄剤を使う場合には、ガラス基板のアルミニウム薄膜(配線)が腐食されるため、アルミニウム薄膜部分をワックスなどで保護して洗浄し、ついで炭化水素などの溶剤でワックスを除去して基板を再生させるか、または配向膜と同時にアルミニウム薄膜を完全に剥離及び溶解させてからガラス基板のみを再生させる方法が取られているため、原材料の浪費及び生産性の低下を引き起こす原因となっている。
【0005】
一方、特許文献2は、フォトレジスト残留物を効果的に除去しながらもILD(inter layer dielectrics)材料には損傷を与えないフォトレジスト除去用湿式洗浄組成物として、強塩基、酸化剤及び極性溶媒を含む組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−306661号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許2005−0094409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の組成物はポリイミドを室温で除去することができず、アルミニウム薄膜(配線)の腐食防止も卓越しないし、長期間使用時には過炭酸塩、過硫酸塩などが析出する問題が発生する。
【0008】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、室温でもポリイミドを良好に除去することができ、アルミニウム及びアルミニウム合金配線の腐食防止効果にも優れるだけでなく、長期間使っても析出の問題がないポリイミド除去用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、組成物の総重量に対し、(A)0.1〜10重量%の下記化学式1で示される第4級アンモニウム水酸化物、(B)50〜90重量%のグリコールエーテル系化合物、(C)7〜30重量%のグリセリン、及び(D)残量の水を含むポリイミド除去用洗浄剤組成物を提供する。
【0010】
[化学式1]
[N−(R)・OH
前記式で、Rは炭素数が1〜5のアルキル基である。
【0011】
また、本発明は、前記ポリイミド除去用洗浄剤組成物を使って基板を洗浄する工程を含む液晶表示装置用アレイ基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリイミド除去用洗浄剤組成物は、基板、例えばフラットパネルディスプレイ基板上に塗布されたポリイミド膜、または塗布後に高温で硬化過程を経たポリイミド膜を室温で短時間に容易に除去することができるだけでなく、基板上に形成されているアルミニウム及びアルミニウム合金配線の腐食防止効果に優れ、長期間使っても析出の問題がないので、簡便にかつ効果的にポリイミド膜または基板上に残っている有機物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1の洗浄剤組成物を使ってポリイミド膜を除去した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、組成物の総重量に対し、(A)0.1〜10重量%の下記化学式1で示される第4級アンモニウム水酸化物、(B)50〜90重量%のグリコールエーテル系化合物、(C)7〜30重量%のグリセリン、及び(D)残量の水を含むポリイミド除去用洗浄剤組成物に関する。
【0015】
[化学式1]
[N−(R)・OH
前記式で、Rは炭素数が1〜5のアルキル基である。
【0016】
以下、本発明のポリイミド除去用洗浄剤組成物の構成成分について詳細に説明する。
【0017】
(A)第4級アンモニウム水酸化物
本発明で使われる第4級アンモニウム水酸化物の例としては、下記化学式1の化合物を挙げることができる。
【0018】
[化学式1]
[N−(R)・OH
前記式で、Rは炭素数が1〜5のアルキル基である。
【0019】
ここで、化学式1のアルキル基は、線状、分岐状または環状であってもよく、好ましくは線状のアルキル基である。
【0020】
前記化学式1で示される第4級アンモニウム水酸化物の具体的な例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウムなどを挙げることができる。これらのうち、特に水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと呼ぶ。)が好ましい。
【0021】
本発明の組成物において、第4級アンモニウム水酸化物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使うことができる。
【0022】
本発明の組成物において、第4級アンモニウム水酸化物は、組成物総重量に対し、0.1〜10重量%含まれることが好ましく、1〜2重量%含まれることがより好ましい。前記第4級アンモニウム水酸化物が0.1重量%未満含まれる場合は、ポリイミドの剥離速度が遅く、10重量%を超えて含まれる場合は、配線材料の腐食を防止することができない。
【0023】
(B)グリコールエーテル系化合物
本発明の組成物に使われるグリコールエーテル系化合物の例としては、下記化学式2で示される化合物を挙げることができる。
【0024】
[化学式2]
R−O−(CHCHO)
前記式で、Rは炭素数が1〜5のアルキル基であり、nは1〜5の整数である。
【0025】
前記炭素数が1〜5のアルキル基は、線状、分岐状または環状であってもよく、好ましくは線状のアルキル基である。
【0026】
前記化学式2で示されるグリコールエーテル系化合物の具体的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。これらのうち、特にジエチレングリコールモノメチルエーテル(以下、MDGと呼ぶ。)が好ましい。
【0027】
本発明の組成物において、グリコールエーテル系化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使うことができる。
【0028】
本発明の組成物において、グリコールエーテル系化合物は、組成物総重量に対し、50〜90重量%含まれることが好ましく、60〜80重量%含まれることがより好ましい。グリコールエーテル系化合物が50重量%未満含まれる場合は配線材料の腐食が増加し、90重量%を超える場合は他の成分の含量が不足になる。
【0029】
(C)グリセリン
本発明の組成物において、グリセリンは、組成物総重量に対し、7〜30重量%含まれることが好ましく、10〜20重量%含まれることがより好ましい。グリセリンが7重量%未満含まれる場合は配線材料の腐食が増加し、30重量%を超える場合はポリイミド膜の除去性が落ちる。
【0030】
(D)水
本発明で使われる水は特別に限定されるものではないが、半導体工程用の水で、比抵抗値が18MΩ/cm以上の脱イオン水を使うことが好ましい。前記水は全組成物の総重量が100重量%となるような残量で含まれるので、他の構成成分の含量によって調整できる。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物は、当該分野で通常使われる界面活性剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、別途にアゾール類及び糖アルコールのような腐食防止剤を含まないことが好ましい。アゾール類及び糖アルコールのような腐食防止剤が含まれる場合、リンス性の低下及び配線吸着などの問題により、後工程で問題が引き起こされるおそれがある。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物は、別途に含フッ素化合物を含まないことが好ましい。イオン化が可能な含フッ素化合物を含む場合、フッ素イオンの腐食作用によって基板腐食を引き起こすおそれがある。
【0034】
また、本発明は、前記ポリイミド除去用洗浄剤組成物を使って基板を洗浄する工程を含む液晶表示装置用アレイ基板の製造方法に関する。
【0035】
本発明のポリイミド除去用洗浄剤組成物を使ってポリイミド膜を除去する方法としては浸漬法が一般的であるが、その他の方法、例えば噴霧法による方法を使うこともできる。本発明による組成物で処理した後に、洗浄剤としてアルコールのような有機溶媒を使う必要はなく、水で洗浄するだけでも十分である。
【0036】
本発明のポリイミド除去用洗浄剤組成物は、半導体または電子製品、特に液晶パネルのポリイミド膜の除去工程に有用に使われることができる。
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳しく説明する。しかし、下記実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。下記実施例は本発明の範囲内で当業者によって適当に修正及び変更が可能である。
【0038】
実施例1〜6及び比較例1〜6:ポリイミド除去用洗浄剤組成物の製造
下記表1に記載された成分を該当組成比で混合して実施例1〜6及び比較例1〜6のポリイミド除去用洗浄剤組成物を製造した。
【0039】
【表1】

【0040】
試験例:洗浄剤組成物の特性評価
1)ポリイミド除去力の評価
ポリイミド除去力の評価のために、サイズが1.5cm×6cmのポリイミドがコートされたガラス基板を準備した。準備した基板を実施例1〜6及び比較例1〜6の組成物に1分間または3分間室温で浸漬して洗浄した。洗浄後、基板を超純水で30秒間洗浄し、窒素を用いて乾燥した。評価結果を下記表2に示した。
【0041】
<評価基準>
○:ポリイミドが除去された場合
△:50%程度除去された場合
×:除去されなかった場合
また、実施例1の洗浄剤組成物でポリイミドを除去した結果を図1に示した。
【0042】
2)アルミニウムエッチング速度の測定
まず、アルミニウムが2500Åの厚さに形成されたガラス基板を実施例1〜6及び比較例1〜6の組成物に10分間浸漬させた。この際、洗浄液の温度は25℃であった。アルミニウム膜の厚さを浸漬の前及び後に測定し、アルミニウム膜の溶解速度をアルミニウム膜の厚さの変化から計算して測定した。その結果を下記表2に示した。
【0043】
【表2】

【0044】
前記表2の試験結果から、本発明の洗浄剤組成物である実施例1〜6の組成物は比較例1〜6の組成物に比べ、室温でのポリイミド除去力に優れ、アルミニウムに対する防食性も優れていることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、半導体素子及び液晶表示素子の製造工程において基板からポリイミド膜を効果的に除去することに適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に対し、(A)0.1〜10重量%の下記化学式1で示される第4級アンモニウム水酸化物、(B)50〜90重量%のグリコールエーテル系化合物、(C)7〜30重量%のグリセリン、及び(D)残量の水を含むポリイミド除去用洗浄剤組成物。
[化学式1]
[N−(R)・OH
前記式で、Rは炭素数が1〜5のアルキル基である。
【請求項2】
前記(A)第4級アンモニウム水酸化物は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド除去用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(B)グリコールエーテル系化合物は下記化学式2で示されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド除去用洗浄剤組成物。
[化学式2]
R−O−(CHCHO)
前記式で、Rは炭素数が1〜5のアルキル基であり、nは1〜5の整数である。
【請求項4】
前記化学式2の化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項3に記載のポリイミド除去用洗浄剤組成物。
【請求項5】
腐食防止剤を含まないことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド除去用洗浄剤組成物。
【請求項6】
含フッ素化合物を含まないことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド除去用洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項の洗浄剤組成物を使って基板を洗浄する工程を含む液晶表示装置用アレイ基板の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−17465(P2012−17465A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149504(P2011−149504)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(506171277)ドンウー ファイン−ケム カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】