説明

ポリウレタンプライマーを有する自動車用窓パネル

自動車用窓パネル/窓ガラスにおいて、透明のポリカーボネートベース層と、該ポリカーボネートベース層上に被覆された水性ポリウレタンプライマーと、該水性ポリウレタンプライマー上に施用されている耐候性コーティングとを有する、上記窓パネル/窓ガラス。該水性ポリウレタンプライマーは、ポリウレタン約10重量%未満、及び2−ブトキシエタノール約30重量%未満を含有し、残部が脱イオン水である。該プライマーは、紫外線吸収剤、流動添加剤、酸化防止剤のような添加剤を含有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、自動車用プラスチック窓パネル又は自動車用プラスチック透明部材(plastic glazings)に関する。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
長年、自動車産業において、ガラス(glass)は、窓に使用される構成要素であった。周知のように、ガラスは、車両窓用として消費者に受け入れられる一定レベルの耐摩耗性と紫外線抵抗性とを提供する。その点に関しては十分であるものの、ガラス基材(glass substrates)は、特質上比較的重く、そのことによって、運搬及び取り付けが高コストになっている。更に、ガラスの重量は最終的に、車両の全重量に影響を及ぼし、それは車両の燃料効率に悪影響を及ぼしている。プラスチック材料は、ガラスを代替するために多くの自動車技術用途に使用されており、車両のスタイルを向上し、車両の全重量及びコストを低下させてきた。透明プラスチック材料の新たな用途は、自動車用透明部材又は自動車用窓システム(automotive glazings or window systems)である。
【0003】
プラスチック透明部材に水性コーティングを使用する方法は、従来の溶媒ベース系に典型的であるひび割れ及び欠陥を引き起こすことなく、高い応力が加えられているポリカーボネート部材の上に直接被覆することができるという利点を有する。加えて、主として水性の組成物を使用すれば、製造中の溶媒の放出が減少し、結果的に、対応する経済的利点と伴に環境により優しいプロセスが得られる。
【0004】
残念ながら、水性ベースポリマーコーティングは、溶媒ベース有機コーティングと異なり、加速試験及び現実世界での試験の間、吸湿(moisture uptake)を引き起こす。このことは、加速試験と現実世界での試験(短期試験)の両方の浸水試験、湿潤暴露及び耐候性試験において見られる。吸湿は、部品が全体的に白化(blushing)又は曇り(haziness)を生じることで明らかとなり、コーティングの均一性に依って、均一となるか、又はある模様を成すことがある。
【0005】
現行のプライマー系は、40℃より高い水に暴露されたとき、約1%より大きい均一な曇り(haze)及びある模様を成す曇りの両方を形成する。この製剤では、プライマーの吸湿は、約10容積%であり、アクリルエマルジョンポリマーに起因するものと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車産業には、ガラス代替窓システムを改善して、例えば、耐候性、接着性、耐摩耗性及び紫外線抵抗性のような改善された機能性を得る必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明の要約〕
本発明は概して、改善されたガラス代替窓システムであって、例えば、耐候性、接着性、耐摩耗性及び紫外線抵抗性のような改善された機能性を備えた窓システムを提供する。
【0008】
本発明の実施形態では、水性ベースコーティング系が提供される。この水性ベースコーティング系は水に対して無反応性(water insensitive)であり、且つポリカーボネート(PC)透明部材の利点を有しており、運転者及び乗客は、欠陥が全くなく、且つ約1%未満の低い全体的曇り度(haze)を有する該透明部材を通して見ることが可能となる。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、自動車用透明部材が提供される。この透明部材は、ポリカーボネートベースの層又は基体と、該ポリカーボネートベース層上に被覆された水性ポリウレタンプライマーと、該水性ポリウレタンプライマー上に施用されている耐候性コーティング(weatherable coating)とを有する。この水性ポリウレタンプライマーは、ポリウレタン約10重量%未満と、2−ブトキシエタノール約30重量%未満とを含有し、残部が脱イオン水である。
【0010】
本発明は、他の実施の形態において、約20mgKOH/乾燥樹脂1gの酸価を有する水性ポリウレタンプライマーを含み、その一方、ポリウレタンを約10重量%未満、2−ブトキシエタノールを約25重量%未満、脱イオン水を残部として含む自動車用パネルを提供する。このパネルは、耐候性コーティングに接着される耐摩耗性層であって、該パネルを、摩耗によって生じる損傷から保護するための耐摩耗性層を更に有する。
【0011】
40未満の酸価と5%未満の水膨潤比(water swell ratio)とを有する有機ポリマー分散系の水性ベース製剤は、驚くべきことに、ポリカーボネート透明部材システムに、実質的に水に対して無反応性の疎水性コーティングを生じる。これらの製剤は、シリコンハードコーティングをポリカーボネートに結合させるための接着促進剤として作用するのにとりわけ有用である。加えて、これらのシステムは、ベーク・オン・ベークシステム(bake-on-bake system)ではなく、いわゆるウェット・オン・ウェットシステム(wet-on-wet system)で被覆することができる。このことによって、結果的に、製造ライン設計の資本コストが低減する。
【0012】
そのようなコーティングは、それらに添加された機能性添加物を含有することもできる。そのような添加物の例は、ポリカーボネートを有害な紫外線から保護するための紫外線吸着種であってもよい。紫外線吸着種が存在する場合、その膜の厚さは、従来のシリコンハードコート紫外線障壁層の一部又は全てに取って代わるのに実質的に十分なほど厚くすることができる。有機コーティングは、1ガロン当りのコストがシリコンハードコート系よりも実質的に低いように思われる。
【0013】
これらのコーティングは、吹付け塗装系、流し塗り系(flow coating stystem)、浸漬塗装系、及び/又はカーテンコーティング系(curtain coating system)によって施用することができる。これらの種類のコーティングは、それらが室温で且つ/又はより短い時間で硬化し、そうすることによって、製造過程における硬化時間を短縮することができるという更なる利点を有する。結果的に、このことによって経費が低減し、収益が増大する。
【0014】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、次の記述、及び特許請求の範囲を斟酌することによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔発明の詳細な記述〕
本発明の実施形態において、概して、ベース層と、該ベース層上に施用された水性ポリウレタンプライマーと、該プライマー上に被覆された耐候性コーティングとを有する自動車用パネルが提供される。1つの実施形態において、ベース層は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの混合物、ポリカーボネート/ポリエステルの混合物、ポリアクリレート及びポリスルホン、並びにこれらの共重合体及び混合物を含有することができるが、これらに限定されない。ベース層は、ビスフェノールAポリカーボネート、及び他の樹脂品種(例えば、枝分かれ又は置換されたもの)、並びに他のポリマー〔例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)若しくはポリエチレン)〕と共重合されたもの、又は混合されたものを含有することが好ましい。ベース層は、様々な添加物、例えば、着色剤、離型剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を更に含有することができる。
【0016】
前述のように、ベース層上に、水性ポリウレタンプライマーを施用する。この水性ポリウレタンプライマーは、約10重量%未満のポリウレタン、及び約30重量%未満の2−ブトキシエタノールを含有し、残部が脱イオン水である。1つの例において、水性ポリウレタンプライマーは、約20mgKOH/乾燥樹脂1gの酸価を有し、且つ、約1μm未満の厚さを有する。水性ポリウレタンプライマーは、紫外線を吸収するための紫外線吸収性分子を含有することが好ましい。この例において、紫外線吸収性分子は、無機酸化物、ベンゾフェノン、ベンゾイルレゾルシノール、シアノアクリレート、トリアジン、オキサニリド及びベンゾトリアゾールの1種類の成分を含有する。紫外線吸収性分子は、約295〜約345nmの間の波長で、約1吸収単位(absorption unit)より大きい紫外線吸収を示すことが好ましい。
【0017】
もう1つの例において、水性ポリウレタンプライマーは、約7重量%未満のポリウレタン、及び約25重量%未満の2−ブトキシエタノールを含有し、残部が脱イオン水である。この例において、水性ポリウレタンプライマーは、トリエチルアミンを更に含有することができる。
【0018】
水性ポリウレタンプライマーは、ベース層上に被覆され、次いで、20〜45分間空気乾燥することによって硬化させるか、又は、約50℃〜100℃の間で約20〜80分間熱硬化させる。
【0019】
1つの例において、水性ポリウレタンプライマーは、第1の溶媒としての水と、第2の共溶媒としての有機液体とを含有する。第1の溶媒である水は、好ましくは該水性ポリウレタンプライマーの10重量%より多く含有され、より好ましくは該プライマーの約50重量%より多く含有され、最も好ましくは該プライマーの少なくとも60重量%より多く含有される。該プライマー中に存在する第2の共溶媒に関連する一般的化学製品の種類には、グリコールエーテル、ケトン、アルコール及び酢酸塩が包含され、該共溶媒は、該プライマーの90重量%未満で存在し、より好ましくは該プライマーの約50重量%未満で存在し、最も好ましくは該プライマーの約30重量%未満で存在する。
【0020】
例えば、水性ポリウレタンプライマー中に存在する第2の共溶媒は、(エチレングリコールモノブチルエーテルとも称される)2−ブトキシエタノールである。このプライマー中の樹脂の含有率は、該プライマーの約2〜7重量%であり、該プライマーの残部は、第1の溶媒及び第2の共溶媒で構成されてもよい。これらプライマー中のアミンは、トリエチルアミンであることが好ましい。樹脂は、水溶性樹脂、分散性樹脂、又は希釈可能な樹脂(reducible resin)として存在することができる。他の樹脂は、このプライマーのための溶媒系が上述の溶媒系に類似するのであれば、該プライマーに利用することができる。プライマーは、他の添加物を含有することができる。それら添加物は、とりわけ、界面活性剤、酸化防止剤、殺生物剤及び乾燥剤を包含するが、それらに限定されない。
【0021】
次いで、前記プライマー上に、耐候性のコーティング又はハードコート(hard-coat)を施用し、空気乾燥し、次いで、好ましくは約80℃〜約130℃で約20〜80分間、より好ましくは約100℃で約30分間、硬化させる。耐候性コーティングは、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリウレタン・アクリレート共重合体、シロキサン、シリコーンハードコート、アイオノマー、フルオロポリマー、及びそれらの混合物の少なくとも1種類を含有することができる。シリコーンハードコートは、耐候性コーティングとして使用することが好ましく、Exatec LLCから入手可能であり、Exatec(登録商標)SHXとしてMomentive Performance Materialsによって販売されている。
【0022】
代替的には、耐候性コーティングは、ポリウレタン及びポリウレタン−アクリレートの1つである。この具体例において、プラスチック基体上に印刷され硬化された該コーティングを有する系は、好ましくは約10〜65μmの厚さを有することができ、且つ、約1〜5デルタヘイズ%(percent delta haze)の間のテーバー(Taber)(デルタヘイズ%)、好ましくは約2デルタヘイズ%のテーバーを有することができる。
【0023】
ポリウレタンコーティングは、シリコーンハードコートに比べてかなり低い価格であり、しかもかなり厚い膜厚で施用することができ、これによって、下層のポリカーボネートに対する改善された紫外線保護が提供される。ポリウレタンコーティングは、当初は、ポリイソシアネートとポリオールとから作られる生成物として定義されたが、今日では、該コーティングは、広義に定義されており、ポリオールとの反応であろうと、ポリアミンとの反応であろうと、水との反応であろうと、ポリイソシアネートに基づくあらゆる系を包含する。このことは、ポリウレタン(PU)コーティングが、ウレタン結合、尿素結合、アロファネート(allophanate)結合及びビウレット結合を有することがあることを意味する。ポリウレタンコーティングは、用途の広い化学的性質と、優れた特性(とりわけ、靭性、耐摩耗性及び耐薬品性に関する優れた特性)とを有し、その一方で可撓性であり、あらゆる種類の基体に対して十分に接着するため、該コーティングが数十年前に初めて導入されて以来、急速に成長してきた。
【0024】
耐摩耗性の層又はトップコートは、耐候性コーティング上に施用することが好ましく、自動車用パネルに追加的機能又は強化機能(例えば、改善された耐摩耗性)を加える。好ましいことであるが、耐摩耗性層は任意的に耐候性コーティング上に施用し得ることが理解される。そのようなコーティングの一例は、Exatec(登録商標)900透明部材系〔Exatec, LLC、ミシガン州ウィクソム〕で使用されている耐摩耗性トップコートである。耐摩耗性層は、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素(silicon oxy-nitride)、酸炭化ケイ素(silicon oxy-carbide)、水素化酸炭化ケイ素(hydrogenated silicon oxy-carbide)、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、インジウム錫酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、及びそれらの混合物の少なくとも1種類を含有することが好ましい。
【0025】
耐摩耗性層は、当業者に知られている如何なる技術によって施用してもよい。これらの技術には、反応種〔例えば、真空蒸着法、及び常圧被覆法(例えば、基体にゾルゲルコーティングを施すのに使用される被覆法)で用いられる反応種〕によって堆積することが包含される。真空蒸着法の諸例は、プラズマ化学気相成長法(plasma enhanced chemical vapor deposition)、イオン支援プラズマ堆積法(ion assisted plasma deposition)、マグネトロンスパッタリング(magnetron sputtering)、電子ビーム蒸着法(electron beam evaporation)、イオンビームスパッタリング法(ion-beam sputtering)を包含するが、それらに限定されない。常圧被覆法の例は、カーテン被覆法(curtain coating)、噴霧被覆法、回転被覆法(spin coating)、浸漬被覆法(dip coating)及び流し塗り法(flow coating)を包含するが、それらに限定されない。
【0026】
本発明の自動車用パネルは、例えば、押出し、成形(molding)又は熱成形(thermoforming)のような、当業者に知られている如何なる技術を使用しても窓に形成することができる。成形には、射出成形、吹込み成形及び圧縮成形が包含される。熱成形には、熱成形(thermal forming)、真空成形及び冷間成形が包含される。透明プラスチック基体を用いて窓を形成する工程は、印刷工程の前、印刷工程の後、又は、プライマー/ハードコート系を施用した後に行うことができる。
【実施例1】
【0027】
多数種類の水性ポリマーを、プライマー層を得るのに可能性のあるポリマー系として評価した。目的は、様々な水性ベースポリマーを(例えば、高分子量のラテックスポリマーだけでなく、比較的小さい分子量のポリウレタンをも)検討することであった。下の表1に、検討されたか又は評価された様々なポリマーを列挙する。
【表1】

【0028】
評価した諸ポリマーのうち、DMM(ジプロピレングリコールジメチルエーテル)溶媒に入れた水性ポリウレタン樹脂HD−2503(登録商標)及びそれの同等品L−2896(登録商標)〔それぞれ、C. L. Hauthaway & Sons Corp.からのもの〕は、低ヘイズ(low haze)、優れた接着性、及び他の機械特性を満たすことについて相対的に最も好都合に機能した。それらポリマーの環境上の利点に起因して、水性ポリウレタン樹脂を使用しようとする動機が存在する。オータンポリウレタン樹脂(Hauthane polyurethanes)等のポリウレタン樹脂は、自然状態では疎水性である。オータンポリウレタン樹脂〔例えば、HD−2503(登録商標)又はL−2896(登録商標)〕は、木材、プラスチック及び金属のために開発された、ポリカーボネートベース、脂肪族の水性分散系であって、熱機械的堅牢性(thermal-mechanical robustness)を有している。それは、約20mgKOH/乾燥樹脂1gの酸価を有し、且つ、約10℃のTg(ガラス転移温度)を有する。オータンポリウレタン樹脂は、中性アミン(例えば、トリエチルアミン)を含有する。
【0029】
1つの例において、(DMM溶媒に入れた)HD−2503及びそれの同等品L−2896は、2.4重量%溶液として作成し、下の表2に規定される通りに試験を行った。
【0030】
【表2−1】


【表2−2】

【0031】
本明細書で解説される手順を用いて、ポリウレタン樹脂の水性製剤を作成した。脱イオン水約67重量%を秤量し、水性ポリウレタン樹脂〔(上記で解説された)PUR HD−2896〕約7重量%を秤量して脱イオン水と混合し、PUR−水の混合物を確定した。2−ブトキシエタノール約25重量%を秤量して該混合物に添加し、ポリウレタン溶液を確定した。該溶液は、低速度で約15分間混合した。下の表3に、その手順をまとめる。
【表3】

【0032】
5ガロンの水性ポリウレタンプライマーを作成し、このプライマーを、ポリカーボネートベース層上に被覆した。それらの層は、次いで、上記に記載の試験にかけた。その液体プライマーの貯蔵安定性を監視した。3ヵ月後、沈降の兆しは全く示されなかった。該水性ポリウレタンプライマーは、浸水試験の後、水性アクリルプライマーに比べて、著しく小さいヘイズを示した。
【0033】
前記浸水試験には、ASTM D3359−95による初期クロスハッチ接着試験(initial cross-hatch adhesion test:)(テープ引張り)が含まれ、次いで、印刷済みポリカーボネートを、約65℃の高温の蒸留水に約10日間浸漬する。インク及びコーティングの接着性は、ほぼ1日おきに最大10日間まで試験する。インクが95%より多く保持された場合のみ、インクは試験に合格する。あらゆるコーティング及び層の最終試験は、10日目に実施する。この試験は、ASTM D−3359によるクロスハッチテープ試験(cross hatch tape test)を用いて検査する。
【0034】
前記水性ポリウレタン製剤で、10枚の730飾り版(plaques)(730mm×730mm)を被覆した。5枚の飾り版は、室温で約40分間フラッシュを行い(flashed)、次いで、それら飾り版の上にトップコートを施した。他の5枚の飾り版は、約20分間フラッシュを行い、次いで、約125℃で約15分間焼付けを行った。いずれの組においても、ポリウレタンコーティングは、10日間の浸水試験に合格した。該トップコートを施用し、標準条件下、約125℃で約60分間焼付けを行った。
ポリウレタン製剤は、水及び2−ブトキシエタノールと共に、前述のL−2896のような水性ポリウレタン樹脂を含有することができる。このポリウレタン製剤は、流し塗装(flow application)によって施用することができる。更に、ポリウレタン製剤は、L−2896等の水性ポリウレタン製剤、水、2−ブトキシエタノール、及びTin479を含有することができる。これもまた、流し塗装によって施用することができる。また、同製剤は、噴霧塗装によって仕上げることができる。下の表4に、例えば、ベース製剤及び試験手順を規定する。
【0035】
【表4】

【0036】
下の表5及び表6に、前記ポリウレタンプライマーで使用したポリウレタン分散系の特性を規定する。
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
下の表7に、前記の水性ポリウレタン製剤及び手順をまとめる。
【0040】
【表7】

【0041】
下の表8に、この例の水性ポリウレタンの特性をまとめる。
【0042】
【表8】

【0043】
下の表9に、水性ポリウレタンの特性を更にまとめる。ヘイズ外観結果(30日後)を示す。具体的には、30日後の試験結果は、50℃で30日間の水浸漬試験の後、意外にも低いヘイズ外観を示しているデルタ値を示す。
【0044】
【表9】

【0045】
下の表10に、水性ポリウレタンの特性を更にまとめる。具体的には、水性ポリウレタン分散系(L−2896)に対する、10日後の接着試験結果を、下にまとめる。これらの例において、1組の20枚の730飾り版(730mm×730mm)を、各々の条件で水性ポリウレタン製剤で被覆した。40分間フラッシュを行ったウェット・オン・ウェット法(wet-on-wet process)によると、接着性は一貫して100%であった。
【0046】
【表10】

【0047】
下の表11に、前記730飾り版上の水性ポリウレタンプライマーの厚さをまとめる。生物生存圏(ecosphere)での試験結果に関し、前記諸試料は、クロスハッチ試験(cross hatch test)に合格した。即ち、12サイクルにおいて、亀裂も剥離も全く観察されなかった。前記水性ポリウレタンの試験結果は、SHP−3Xの試験結果に匹敵した。耐候性試験結果に関し、DMM(ジプロピレングリコールジメチルエーテル)に入れた諸試料であって、0.70ワット/mの放射照度でCIRAコーティングを有するGMOD60キセノン・アーク・ボロ/ボロ(xenon arc boro/boro)の1.03MJに暴露された諸試料は、比較的好ましい外観を示し、欠陥は全く示さなかった。NPM(N−メチルピロリドン)に入れた諸試料は、0.70ワット/mの放射照度でCIRAコーティングを有するGMOD60キセノン・アーク・ボロ/ボロ(xenon arc boro/boro)の4.1MJに暴露し、これらの試料も、比較的好ましい外観を示し、欠陥は全く示さなかった。
【0048】
【表11】

【0049】
下の表12に、129℃/60分の追加の焼付けサイクルを行った10日後の接着試験結果と、追加の焼付けサイクルを行わなかった10日後の接着試験結果とをまとめる。追加の焼付けサイクルを行えば、接着性は良好となることが分かった。
【0050】
【表12】

【0051】
下の表13に、1組の730飾り版に被覆した水性ポリウレタンプライマー(上述のL−2503)に対するデルタヘイズの試験結果を、アクリルプライマーの場合と比べてまとめる。この例において、ベース層は、約50℃の水に浸漬した。10日間の接着試験結果は、除霜サイクル(defroster cycle)を行ったもの、及び、除霜サイクルを行わなかったものが提供されている。過剰の除霜サイクルを行った場合、接着性も良好であることが分かった(部品ID8313−1;8314−1及び8481−1)。示されるように、30日間の試験結果は、標準偏差が0.15未満でデルタヘイズが0.25%未満であることを示している。この例で使用したポリウレタンプライマーは、30日後のヘイズの状態はより小さく、1日後のアクリルプライマーに相当するようであった。
【0052】
【表13】

【0053】
もう1つの例において、脱イオン水及び2−ブトキシエタノールの他に、水性ポリウレタンHD−2503、紫外線吸収剤−Uvinul 3039(登録商標)〔BASF社による(2−エチルヘキシル)−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート〕を含有する水性塗料を作成し、730サイズのポリカーボネート飾り版に流し塗りを行った(flow coated)。それを、約125℃で約15分間焼付けした。被覆した飾り版を、直接プラズマ反応器に移動して、様々なプラズマ条件にかけた。試行したそれら様々な条件のうち幾つかの条件では、プラズマコーティングに対する良好な接着性が提供された。下の表14に、この例の手順をまとめる。
【0054】
【表14】

【0055】
前記諸試料の耐衝撃性を調べた。下の表15に示されるように、水性プライマーを含有するそれら試料は、延性であることが認められた。
【0056】
【表15】

【0057】
本発明は、好ましい諸具体例について記述されてきたが、当業者は、とりわけ前述の教示を考慮して、部分的変更を行い得るのであるから、本発明がそれらに限定されないことは、当然ながら、理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用窓パネルにおいて、
透明のポリカーボネートベース層と、
前記ポリカーボネートベース層上に被覆された水性ポリウレタンプライマーであって、約10重量%未満のポリウレタン、及び約30重量%未満の2−ブトキシエタノールを含有し、残部が脱イオン水である水性ポリウレタンプライマーと、
前記水性ポリウレタンプライマー上に施用されている耐候性コーティングと、
を有する、上記パネル。
【請求項2】
前記ベース層は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの混合物、及び、ポリカーボネート/ポリエステルの混合物の少なくとも1種類を含有している、請求項1記載のパネル。
【請求項3】
前記耐候性コーティングを保護するために前記耐候性コーティングに接着されている耐摩耗性層を更に有している、請求項1記載のパネル。
【請求項4】
前記耐摩耗性層は、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、水素化酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、インジウム錫酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム及びチタン酸ジルコニウムの少なくとも1種類の成分を含有している、請求項3記載のパネル。
【請求項5】
前記水性ポリウレタンプライマーは、約7重量%未満のポリウレタン、及び約25重量%未満の2−ブトキシエタノールを含有し、残部が脱イオン水である、請求項1記載のパネル。
【請求項6】
前記水性ポリウレタンプライマーは、トリエチルアミンを含有している、請求項1記載のパネル。
【請求項7】
前記水性ポリウレタンプライマーは、紫外線吸収のための紫外線吸収性分子を含有している、請求項1記載のパネル。
【請求項8】
前記紫外線吸収性分子は、約295〜約345nmの間の波長で、約1吸収単位(absorption unit)より大きい紫外線吸収を示す、請求項7記載のパネル。
【請求項9】
前記紫外線吸収性分子は、無機酸化物、ベンゾフェノン、ベンゾイルレゾルシノール、シアノアクリレート、トリアジン、オキサニリド及びベンゾトリアゾール、の1種類の成分を含む、請求項7記載のパネル。
【請求項10】
前記水性ポリウレタンプライマーは、0.2〜7μmの厚さを有している、請求項1記載のパネル。
【請求項11】
前記耐候性コーティングは、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリウレタン・アクリレート共重合体、シロキサン、シリコーンハードコート、アイオノマー及びフルオロポリマー、の少なくとも1種類の成分を含有している、請求項1記載のパネル。
【請求項12】
前記水性ポリウレタンプライマーは、約20mgKOH/乾燥樹脂1gの酸価を有している、請求項1記載のパネル。
【請求項13】
自動車用窓パネルにおいて、
透明のポリカーボネートベース層と、
前記ポリカーボネートベース層の上に被覆された水性ポリウレタンプライマーであって、約20mgKOH/乾燥樹脂1gの酸価を有しており、且つ、約10重量%未満のポリウレタン、及び約25重量%未満の2−ブトキシエタノールを含有し、残部が脱イオン水である水性ポリウレタンプライマーと、
前記水性ポリウレタンプライマー上に施用されている耐候性コーティングと、
前記の耐候性コーティング及びベース層を、摩耗によって生じる損傷から保護するために前記耐候性コーティングに接着されている耐摩耗性層と、
を有する、上記パネル。
【請求項14】
前記ベース層は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの混合物、及びポリカーボネート/ポリエステルの混合物の1種類を含有している、請求項13記載のパネル。
【請求項15】
前記プライマーは、トリエチルアミンを含有している、請求項1記載のパネル。
【請求項16】
前記プライマーは、約295〜約345nmの間の波長で、約1吸収単位より大きい紫外線吸収を示す紫外線吸収性分子を含有している、請求項13記載のパネル。
【請求項17】
前記紫外線吸収性分子は、無機酸化物、ベンゾフェノン、ベンゾイルレゾルシノール、シアノアクリレート、トリアジン、オキサニリド及びベンゾトリアゾールから成る群から選ばれる、請求項16記載のパネル。
【請求項18】
前記プライマーは、約0.2〜7μmの厚さである、請求項13記載のパネル。
【請求項19】
前記耐候性コーティングは、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリウレタン−アクリレート、シロキサン、シリコーンハードコート、アイオノマー及びフルオロポリマー、の少なくとも1種類の成分を含有している、請求項13記載のパネル。
【請求項20】
前記耐摩耗性層は、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、水素化酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、インジウム錫酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム及びチタン酸ジルコニウムの少なくとも1種類の成分を含有している、請求項13記載のパネル。

【公表番号】特表2009−544825(P2009−544825A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522025(P2009−522025)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/074632
【国際公開番号】WO2008/014476
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】