説明

ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法並びに管状断熱材及びそれを用いた断熱配管

【課題】 十分な難燃性等を有するポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法、十分な難燃性を有し、断熱性等に優れる管状断熱材、及びこれを用いた断熱配管を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂発泡体の製造方法は、ポリエチレン系樹脂と有機難燃剤とを含有する混練物に発泡剤を供給し、押出成形して発泡させる製造方法であり、示差熱分析による、ポリエチレン系樹脂の融解ピーク(RTm)と、有機難燃剤の融解範囲の上限値(ATm)とが特定の相関を有する。また、本発明の管状断熱材5は、管状発泡体51と、ポリエチレン系発泡層521及びポリエチレン系樹脂層522からなり、且つ管状発泡体に被覆されている積層シート52と、を備える。更に、本発明の断熱配管Pは、空調機器の銅配管6と、銅配管に外装された管状断熱材5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法並びに管状断熱材及びそれを用いた断熱配管に関する。更に詳しくは、原料となる樹脂組成物を押出成形機により安定に押し出すことができるとともに発泡させることができ、十分な難燃性を有し、寸法安定性に優れ、且つ表面が平滑な発泡体を得ることができるポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法に関する。また、この方法により製造され、多くの難燃剤を含有させることができ、十分な難燃性を有するとともに、断熱性に優れ、且つ外径が安定し、シームレスであるため割れ等を生じることのない管状断熱材、及びこの管状断熱材が銅配管に外装されてなり、銅の腐食が防止される断熱配管に関する。
本発明は、家電及び建築等の分野において特に断熱を必要とする配管の断熱材などの技術分野において用いることができる。
【背景技術】
【0002】
家電及び建築等の分野における配管、特に住宅等の空調機器の配管などでは、断熱性とともに、近年、難燃化の必要性が高くなっている。更に、この空調機器の配管として銅管が用いられることが多いが、発泡剤の種類等によっては断熱材により銅管の腐食が促進されることがあり、この腐食防止も必要とされている。このような状況に鑑み、シラン変性ポリエチレン樹脂に、有機難燃剤であるデカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモベンゼン等と、難燃助剤である三酸化アンチモン及び五酸化アンチモン等とを配合し、揮発性発泡剤を用いて押出発泡させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
更に、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等を多量に配合したエチレン系発泡性樹脂組成物シートに含有される樹脂を架橋させ、その後、架橋時よりも高温に加熱し、アゾジカルボンアミドに代表される熱分解型発泡剤を分解させて樹脂を発泡させ、次いで、この架橋発泡シートを管状とし、端面を接合して管状の断熱材を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−55036号公報
【特許文献2】特開平11−170447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
押出発泡法では、良好な発泡体を得るためには、樹脂に揮発性発泡剤を分散、含有せしめ、樹脂を可塑化し、通常、樹脂温を樹脂の融点近傍にまで低下させて押出成形する必要がある。しかし、特許文献1に記載された方法において難燃剤として用いられているデカブロモジフェニルエーテル及びヘキサブロモベンゼンは、その融点がそれぞれ307℃及び325℃であり、これらの難燃剤は樹脂の押出時には固体の粉末の状態で樹脂に分散している。このように樹脂に分散している固体粒子は、発泡時に気泡生成の核となり易く、多くの核が存在するため吐出時に急速に発泡する。そのため、発泡体に下記のような欠陥を生じることがある。
(1)発泡体が管状である場合、径方向に変形して断面が円形になり難い。
(2)生成した気泡が破泡し、所定の発泡倍率の発泡体が得られないことがある。
更に、より多くの核が存在するときは、
(3)吐出前に金型内で発泡が開始され、発泡体の表面の平滑性が損なわれたり、メルトフラクチァーが生じて発泡体が吐出方向に波打つことがある。
また、デカブロモジフェニルエーテル及びヘキサブロモベンゼンの配合量を少なくすることにより、上記の欠陥を抑えることができる。しかし、その場合は難燃性が低下する傾向にある。
【0006】
更に、特許文献2に記載の難燃性被覆断熱管では、発泡剤としてアゾジカルボンアミド等が用いられているが、発泡剤の分解にともなって生成するアンモニア等の副生物、及び発泡時の熱による樹脂の酸化分解で発生する低分子量の有機酸(例えば、ギ酸等)などが発泡体に少量残留し、空調機器の配管として用いられることが多い銅管を腐蝕することがある。また、発泡シートを丸めて突き合わせた端面を熱融着してパイプ状にしているため、断面を円形にし難く、挿入される金属管との密着性が低下することもある。更に、発泡体の形成に用いられる樹脂に比較的多くの無機物が含有されているため、相対的に樹脂量が少なくなり、熱融着した面のシール強度が低下する傾向がある。そのため、この断熱管を屈曲させて施工する際、及び施工後の経時等によってシール面が剥離することがある。また、無機物の含有量が多いため、圧縮力を受けたときに発泡体が圧縮永久歪を生じ易く、輸送時及び在庫時等に発泡体の厚さが減少し、断熱性が低下することがある。
【0007】
本発明は、原料である樹脂組成物を押出成形機により安定に押し出すことができるとともに発泡させることができ、十分な難燃性を有し、寸法安定性に優れ、且つ表面が平滑な発泡体を得ることができるポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、多くの難燃剤を含有させることができ、十分な難燃性を有するとともに、断熱性に優れ、且つ外径が安定し、シームレスであるため割れ等を生じることのない管状断熱材、及びこの管状断熱材が銅配管に外装されてなり、銅の腐食が防止される断熱配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
1.ポリエチレン系樹脂と有機難燃剤とを含有する混練物に発泡剤を供給し、押出成形して発泡させるポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法において、示差熱分析による、該ポリエチレン系樹脂の融解ピーク(RTm)と、該有機難燃剤の融解範囲の上限値(ATm)とが、下記式(1)の関係を有することを特徴とするポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
0≦RTm−ATm≦40 (1)
2.上記ポリエチレン系樹脂が、ビニルアルコキシシランをグラフト結合させた低密度ポリエチレンである上記1.に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
3.上記有機難燃剤が、臭素及び/又は塩素を含む有機ハロゲン化合物である上記1.又は2.に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
4.上記有機ハロゲン化合物が、分子量800以上の塩素化パラフィンである上記3.に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
5.上記混練物は、更に三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを含有し、該三酸化アンチモン及び/又は該五酸化アンチモンの上記有機難燃剤に対する質量比が1/7〜2/3である上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
6.上記ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体が管状発泡体である上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
7.上記6.に記載の方法により製造された管状発泡体と、ポリエチレン系発泡層とポリエチレン系樹脂層とからなり、且つ該ポリエチレン系発泡層が該管状発泡体に接して被覆されている積層シートと、を備えることを特徴とする管状断熱材。
8.上記管状発泡体の密度が0.065g/cm以下である上記7.に記載の管状断熱材。
9.外表面側にエンボス加工面を有する上記7.又は8.に記載の管状断熱材。
10.空調機器の銅配管と、該銅配管に外装された上記7.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の管状断熱材と、を備えることを特徴とする断熱配管。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法によれば、十分な難燃性を有し、且つ外観に優れ、所定の発泡倍率の発泡体を容易に製造することができる。
また、ポリエチレン系樹脂が、ビニルアルコキシシランをグラフト結合させた低密度ポリエチレンである場合は、成形後、容易に架橋発泡体とすることができ、より耐熱性の高い発泡体を製造することができる。
更に、有機難燃剤が、臭素及び/又は塩素を含む有機ハロゲン化合物である場合は、ポリエチレン系樹脂への分散性及び相溶性が良好であるため、十分な難燃性が得られ、且つ所定の発泡倍率の発泡体を製造することができる。
特に、有機ハロゲン化合物が、分子量800以上の塩素化パラフィンである場合は、十分な難燃性と所定の発泡倍率とを有する発泡体を容易に得ることができる。
更に、混練物が、三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを含有し、三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンの有機難燃剤に対する質量比が1/7〜2/3である場合は、より優れた難燃性を有する発泡体を製造することができる。
また、ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体が管状発泡体である場合は、空調機器等の配管に用いられる断熱材を容易に製造することができる。
本発明の管状断熱材は、空調機器等の配管の断熱に用いられる断熱材として有用である。
更に、管状発泡体の密度が0.065g/cm以下である場合は、より優れた断熱性能を有する管状断熱材とすることができる。
また、外表面側にエンボス加工面を有する場合は、配管を曲げ加工又は曲げ施工するときに、表面に皺等が発生し難く、施工後の外観がより優れた管状断熱材とすることができる。
本発明の断熱配管は、銅配管が十分に断熱被覆され、且つ化学発泡剤を用いていないため、銅配管の腐食を促進する物質が残留せず、腐食の心配がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、例えば、図1〜6を用いて本発明を詳しく説明する。
[1]ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法
本発明のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体(以下、「樹脂発泡体」ということもある。)の製造方法は、ポリエチレン系樹脂と有機難燃剤とを含有する混練物に発泡剤を供給し、押出成形して発泡させるものであり、示差熱分析による、ポリエチレン系樹脂の融解ピーク(RTm)と、有機難燃剤の融解範囲の上限値(ATm)とが、前記式(1)の関係を有することを特徴とする。
【0011】
この製造方法において用いられる装置、及び具体的な製造条件等は特に限定されないが、例えば、図1のように、ポリエチレン系樹脂と有機難燃剤とを押出成形機1に供給して混練し、その後、混練物に、押出成形機1に配設された発泡剤圧入器12より発泡剤を圧入し、次いで、成形用ダイス21から混練物を吐出させるとともに発泡させることで、ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体を製造することができる。
【0012】
押出成形機としてはポリエチレン系樹脂を溶融混練し、押出成形することができるものを用いることができ、一軸押出機でも二軸押出機でもよく、スクリューの種類等も特に限定されない。また、ポリエチレン系樹脂、有機難燃剤及び必要に応じて配合される他の成分は、各々を別個に用いてもよく、予めドライブレンドしたものを用いてもよく、予め溶融混練した混練物をペレタイズしたものを用いてもよい。これらの原料は、通常、押出成形機のホッパー11に投入し、押出成形することができる。使用する原料は、コーンブレンダー等により予めドライブレンドする、又は押出成形機により予め混練しておくことが好ましい。このドライブレンド及び溶融混練の際には、ポリエチレン系樹脂、有機難燃剤及び他の成分のすべてを混合してもよく、特にポリエチレン系樹脂に分散混合させ難い成分を混合してもよい。このようにドライブレンド又は溶融混練することにより原料を調製した場合は、それぞれの成分をより均一に分散させることができる。
【0013】
更に、有機難燃剤及び必要に応じて配合される他の成分を、予め高濃度でポリエチレン系樹脂に配合した、所謂、マスターバッチを調製し、このマスターバッチを用いることで、有機難燃剤等をポリエチレン系樹脂により均一に分散混合させることもできる。マスターバッチにおける有機難燃剤等の含有量は特に限定されず、成分の種類等によって調整することが好ましい。この含有量は、通常、20〜90質量%、特に30〜60質量%とすることができる。
【0014】
マスターバッチの原料樹脂として用いるポリエチレン系樹脂は、樹脂発泡体の製造に用いるポリエチレン系樹脂と同一でもよく、異なっていてもよいが、樹脂発泡体の製造に用いるポリエチレン系樹脂と同一の樹脂を用いることが好ましい。更に、樹脂発泡体の製造に用いるポリエチレン系樹脂と異なる樹脂を用いる場合は、樹脂発泡体の製造に用いるポリエチレン系樹脂と、単量体単位の種類及び量比、並びにメルトインデックス等に大差のないものであることが好ましい。
【0015】
上記「混練物」を調製する温度は、原料となる樹脂組成物を溶融、混練し、押出成形することができればよく、特に限定されないが、押出成形機の混練ゾーンの設定温度を130〜180℃、好ましくは140〜160℃に設定することができる。この温度範囲で樹脂組成物を溶融、混練し、その後、押出成形機に配設された発泡剤圧入器より発泡剤を圧入する。発泡剤は、通常、内部の樹脂圧力より高い圧力で圧入される。
【0016】
発泡剤が供給された位置より下流側では、発泡剤の樹脂への分散及び溶解と、樹脂温度を低下させることとを目的として、押出成形機の温度は低く設定される。より具体的には、発泡剤圧入部から押出機先端に向かって徐々に低下させ、先端部付近では、樹脂の融点近傍、特に融点以下に設定される(場合によっては融点から融点を30℃下回る程度の低温に設定される。)。尚、このように温度を低く設定しても、発泡剤が樹脂に溶解し、可塑化及び粘度低下の作用がもたらされるため、モーター等に過大な負荷を生じることはない。
その後、成形用ダイスで、吐出される樹脂の温度を融点近傍の均一な温度として押出成形する。一般的には、ダイスの温度は、樹脂の融点から融点を10℃下回る温度範囲、特に融点を2〜7℃下回る温度範囲に設定されることが多い。
【0017】
上記のようにして成形用ダイスから吐出された混練物の温度は、吐出時の混練物の温度が低く設定されていることと、発泡剤の気化による潜熱との相乗効果により急速に低下する。これにより、吐出された混練物の粘度が急激に上昇し、生成した気泡の破泡が防止され、且つ樹脂の結晶化が促進されることにより気泡が安定化される。
【0018】
上記「ポリエチレン系樹脂」は、エチレン単位を80モル%以上、特に85モル%以上、更に90モル%以上(100モル%であってもよい。)含有する樹脂である。このポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体及びエチレン−エチルアクリレート共重合体等のエチレン−アクリレート系共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−エチルメタクリレート共重合体等のエチレン−メタクリレート系共重合体などが挙げられる。ポリエチレン系樹脂の種類は特に限定されないが、樹脂発泡体を配管の断熱材等として用いるときは、ポリエチレン系樹脂として、優れた弾性及び硬さ等を有する低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレン系樹脂は1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。但し、2種以上の場合は、融点が同一か、融点が異なるときは、主たるポリエチレン系樹脂に対する他のポリエチレン系樹脂の合計量を30質量%未満にする必要がある。この合計量が30質量%以上であると、良好な発泡が可能な温度領域に設定することができないことがある。
【0019】
線状低密度ポリエチレンは、エチレンとエチレンを除くα−オレフィンとの共重合体であり、通常、エチレン単位が80モル%以上、特に85モル%以上含有される。共重合に用いられるα−オレフィンとしては、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンなどが挙げられ、ブテン、ヘキセン、オクタンが用いられることが多い。α−オレフィンとしてブテン、ヘキセン、オクテンを用いた線状低密度ポリエチレンは、可撓性に優れ、且つ圧縮永久歪が小さく、特に配管の断熱材等として用いられる管状の樹脂発泡体の製造に用いる樹脂として特に好ましい。
【0020】
更に、樹脂発泡体が、例えば、空調配管や給湯配管のように内部を流動する媒体が高温になる場合の断熱材として用いられるときは、樹脂発泡体に耐熱性が要求される。その場合は、樹脂発泡体を架橋させることが好ましい。この架橋構造は、予めビニルトリメトキシシランやビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシランをグラフト結合させたポリエチレン系樹脂を用いることで導入することができる。このシラン架橋ポリエチレン系樹脂におけるアルコキシシランのグラフト量は特に限定されないが、後記の必要とされるゲル分率(架橋度の指標)に合わせて調整される。
これらのポリエチレン系樹脂の、示差熱分析による融点ピーク(RTm)は、通常、100〜130℃であるが、樹脂発泡体の柔軟性と耐熱性とのバランスから105〜120℃が望ましい。
【0021】
シラン架橋性ポリエチレンを用いるときは、架橋を促進するため、樹脂組成物に、ジブチルチンジラウレート及びテトラブチルチタネート等の架橋促進剤を配合することが好ましい。この架橋促進剤の配合量は、シラン架橋性ポリエチレンを100質量部とした場合に、0.1〜2質量部、特に0.3〜1質量部とすることが好ましい。また、このシラン架橋性ポリエチレンを用いてなる樹脂発泡体は、特に調温、調湿されていない雰囲気(例えば、温度20〜30℃、湿度50〜70%RH)に静置することでも架橋させることができるが、高温、多湿(例えば、温度50〜70℃、湿度70〜95%RH)に調整した雰囲気におくことで架橋を促進することもできる。
樹脂発泡体の架橋度は特に限定されず、後記の実施例における方法により測定されるゲル分率で表したときに、一般には35〜90%に設定されるが、特に50〜75%とすることが望ましい。ゲル分率が50%以上であれば、十分に高い耐熱性を有する樹脂発泡体とすることができる。一方、ゲル分率が35%未満であると、耐熱性が不十分になる傾向があり、90%を越える場合は、押出機内で一部架橋が発生し、発泡異常を起こすことがある。
【0022】
上記「有機系難燃剤」は、示差熱分析による融解範囲の上限値(ATm)と、前記の主たるポリエチレン系樹脂の融解ピーク(RTm)とが、前記式(1)のように、0≦RTm−ATm≦40の関係を有し、望ましくは3≦RTm−ATm≦20の関係を有する有機系難燃剤である。RTmとATmとが前記式(1)の関係を有しておれば、混練物が吐出される際に、有機系難燃剤は液状又は軟化した状態でほとんど凝固しておらず、気泡の核となる作用を有していない。従って、気泡の急速な生成が抑えられ、破泡及び発泡体の表面の平滑性の低下等の問題を生じることがない。また、揮発性発泡剤の供給量に見合った発泡倍率を有し、且つ所定形状の発泡体とすることができる。更に、ポリエチレン系樹脂の溶融と同時若しくは近傍の温度で、有機系難燃剤も溶融、又は軟化し、押出機内での溶融点が同一且つ一定となって押出量がばらつくことなく一定となり、発泡体の寸法精度が向上する。
【0023】
上記のような有機難燃剤としては、臭素及び/又は塩素を含む有機ハロゲン化合物を用いることができる。この有機ハロゲン化合物としては、塩素化パラフィン(ATmは分子量等によって異なり、通常、65〜125℃)、テトラブロモビスフェノールA(ATmは110℃)、2,4,6−トリブロモフェノール(ATmは93℃)、トリブロモフェニルアリルエーテル(ATmは76℃)等が挙げられる。これらの有機難燃剤のうちでは、ポリエチレン系樹脂との相溶性に優れる塩素化パラフィンが好ましい。この塩素化パラフィンとしては、分子量が800以上のものがより好ましい。このように比較的分子量の高い塩素化パラフィンはポリエチレン系樹脂とより相溶し易く、且つ樹脂発泡体の物性低下が抑えられるため特に好ましい。尚、この塩素化パラフィンの分子量は、例えば、ゲルパーミェーションクロマトグラフィにより測定される重量平均分子量である。
【0024】
RTm−ATmが0未満であると、混練物が吐出される際に、有機難燃剤は液状又は軟化した状態となっておらず、気泡の核となる作用を有している。従って、気泡の生成が過度に促進され、破泡及び発泡体の表面の平滑性の低下等の問題を生じる。一方、RTm−ATmが40℃を越えると、押出成形機の内部で、ポリエチレン系樹脂が溶融しないうちに有機難燃剤の溶融、又は軟化が開始され、特に押出成形機のホッパーの側で樹脂組成物がスリップし易く、押出量が変動して発泡体の寸法精度が低下することが多い。更に、融点が低いため、吐出時に液状の微粒子の状態で散逸し易く、且つ樹脂発泡体を温水等の高温媒体が流通する配管の断熱材等として用いた場合など、使用時に温度が高くなったときに有機難燃剤が発泡体からブリードアウトし、製品の難燃性を維持することができないことがある。
【0025】
有機難燃剤の配合量は特に限定されず、難燃剤の種類及び必要とする難燃性等によって設定することが好ましい。この有機難燃剤の配合量は、ポリエチレン系樹脂を100質量部とした場合に、3〜30質量部、特に3〜25質量部、更に5〜20質量部とすることができる。難燃剤の配合量が3質量部未満であると、十分に難燃化することができず、30質量部を越えると、吐出時に生成した気泡膜の強度が低く、気泡が破泡し易いため、十分な発泡倍率を有する樹脂発泡体とすることができない場合がある。
【0026】
有機難燃剤には難燃助剤を併用して難燃性を向上させることができる。この難燃助剤としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の無機アンチモン化合物が用いられることが多く、これらの難燃助剤は、有機ハロゲン系難燃剤と併用した場合に特に難燃性を向上させる相乗効果が大きい。難燃助剤の配合量は特に限定されないが、気泡を生成する核が多く発生しない範囲の配合量とすることが好ましい。難燃助剤として三酸化アンチモンを用いる場合の有機難燃剤に対する質量比、五酸化アンチモンを用いる場合の有機難燃剤に対する質量比、及び三酸化アンチモンと五酸化アンチモンとを併用する場合の合計量の有機難燃剤に対する質量比は、いずれも1/7〜2/3であることが好ましく、1/3〜1/2であることがより好ましい。この質量比が1/7未満であると、難燃助剤を併用する効果が小さく、2/3を越えると、吐出時に、固体粉末であるアンチモン化合物等が気泡の核を生成し、破泡及び発泡体の表面の平滑性の低下等の問題を生じることがある。
【0027】
ポリエチレン系樹脂の融解ピーク(RTm)、及び有機難燃剤の融解範囲の上限値(ATm)は、いずれも示差熱分析装置により測定することができる。ポリエチレン系樹脂の示差熱分析では、図2のような融解吸熱曲線が得られ、この図2に図示するように、RTmは融解吸熱曲線のピークに対応する温度である。一方、ATmは、特に塩素化パラフィンのようにポリマーである場合、図3のような融解吸熱曲線が得られ、この図3に図示するように、融解吸熱曲線のピーク以降の高温側のラインに接する接線とベースラインとの交点に対応する温度である。
【0028】
上記「発泡剤」は、押出機内では樹脂に分子状で溶解した状態であり、成形用ダイスから吐出されたときに気化し、気体分子として集合し、又は分離して、気泡を形成する、所謂、揮発性発泡剤である。この発泡剤としては、直鎖又は分岐脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及びハロゲン化炭化水素等が挙げられる。直鎖又は分岐脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘプタン等が挙げられる。脂環式炭化水素としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、クロロジフルオロメタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフロオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタン等が挙げられる。これらのうちでは、環境への影響の観点から直鎖又は分岐脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素を用いることが好ましい。
【0029】
発泡剤の供給量は特に限定されず、発泡剤の種類と所望の発泡倍率とにより適宜設定することができる。一例として、発泡剤がブタンである場合は、ポリエチレン系樹脂を100質量部とした場合に、5〜25質量部、一般的には6〜15質量部とすることができる。発泡剤の供給量が6〜15質量部であるときは、吐出される樹脂の温度や吐出時に発泡体の表面から逸散する発泡剤により若干差異を生じるが、発泡体密度は0.05〜0.02g/cm[発泡倍率(密度の逆数)は20〜50倍]とすることができる。配管用の断熱材の場合は、断熱性能と発泡体の物性とのバランスより、発泡体密度は0.033〜0.024g/cm(発泡倍率は30〜40倍)であることが多いが、その場合の発泡剤の供給量は8〜12質量部である。
【0030】
混練物には、前記の有機難燃剤や難燃助剤の他に必要に応じて種々の添加剤を含有させることもできる。このような添加剤としては、例えば、収縮防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料等が挙げられる。収縮防止剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド等の高級脂肪酸エステル、及びステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の高級脂肪酸アミドなどが挙げられ、この収縮防止剤は、樹脂発泡体の気泡に含有されるガスの透過、逸散による収縮を防止するために配合される。
【0031】
本発明の方法により製造されるポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の形状及び寸法等は特に限定されない。この樹脂発泡体は、押出成形機の先端部に取り付けられた成形用ダイにより、管状、シート状、丸棒状、角棒状等の種々の形状とすることができ、その寸法も成形用ダイにより所定の寸法(管状であるときは外径及び内径、シート状であるときは幅と厚さ、丸棒状及び角棒状であるときは外径)に調整とすることができる。更に、この樹脂発泡体は、家電及び建築等の分野において断熱を必要とする配管、例えば、空調配管及び給湯配管等の断熱材や住宅における床暖配管の断熱材、また、住宅の外壁と内壁との間に充填される断熱材等として用いることができる。
【0032】
[2]管状断熱材
本発明の方法により製造されるポリエチレン系難燃性樹脂発泡体は、上記のように種々の形状とすることができ、且つ多くの用途において用いることができるが、特に管状発泡体は管状断熱材として有用である。尚、一般に、管状発泡体の径方向の寸法は18〜100mmであり、管状発泡体の成形壁の厚さは7〜20mmである。
【0033】
十分な断熱性を有する管状断熱材とするためには、管状発泡体の密度が0.065g/cm以下(発泡倍率で表すと約15.4倍以上となる。)であることが好ましい。この密度は0.015〜0.05g/cm(発泡倍率で表すと20〜約66.7倍となる。)であることがより好ましく、0.02〜0.04g/cm(発泡倍率で表すと25〜50倍となる。)であることがより好ましい。管状発泡体の密度が0.065g/cm以下(発泡倍率が約15.4倍以上)であれば、十分な断熱性を有する管状断熱材とすることができ、管状断熱材が柔軟であるため、曲線状の配管であっても密着させることができる。
【0034】
管状発泡体は、これのみで管状断熱材とすることができる。また、図4のように、管状発泡体と、ポリエチレン系発泡層及びポリエチレン系樹脂層からなり、且つポリエチレン系発泡層が管状発泡体に接して被覆されている積層シートと、を備える管状断熱材とすることもできる。この管状断熱材では、積層シートを、ポリエチレン系発泡層が管状発泡体と接するようにして巻き付け、突き合わされた端面を接合することで、優れた意匠性を有する管状断熱材とすることができ、表面の引裂強度及び耐候性等の物性を向上させることもできる。
【0035】
内層のポリエチレン系発泡層は、ポリエチレン系発泡シートにより形成される。この発泡シートの製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系管状発泡体と同様にして、シート発泡成形のための円形ダイス(サーキュラーダイス)を用いて押出発泡せしめてもよく、又化学分解型発泡剤を含有する発泡性樹脂シートを、電子線照射や化学架橋剤により架橋せしめ、その後、発泡剤を熱分解させて発泡させてもよい。この発泡シートの厚さは特に限定されないが、1〜30mm、一般的には2〜6mmである。
外層のポリエチレン系樹脂層は、樹脂フィルムにより形成される。この樹脂フィルムは、Tダイ法やインフレーション押出法により製造することができるが、ポリエチレン系樹脂層は、ポリエチレン系発泡シートの表面に押出ラミネーション法により直接形成することもできる。この樹脂フィルムの厚さも特に限定されないが、50〜300μm、一般的には80〜150μmである。
【0036】
ポリエチレン系発泡シートとポリエチレン系樹脂フィルムとは、各々を成形し、その後、接着剤等を用いて接合してもよいし、上記の押出ラミネーション法により、ポリエチレン系発泡シートの表面に、溶融したポリエチレン系樹脂フィルムを流下させ、融着させてもよい。このようにして得られた積層シートを、管状発泡体の周面の長さによって所定の幅に切断し、ポリエチレン系発泡層を内面として、管状発泡体の外周面に巻き付ける。この際、ポリエチレン系発泡層の表面及び/又は管状発泡体の表面を加熱し、溶融させて熱融着させ、更に付き合わされた端面を熱融着させることで管状断熱材を形成することができる。
このポリエチレン系発泡シート及びポリエチレン系樹脂フィルムは、ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造に用いる前記の各種のポリエチレン系樹脂を使用して製造することができる。このポリエチレン系発泡シート及びポリエチレン系樹脂フィルムの各々の製造に用いるポリエチレン系樹脂は、それぞれポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造に用いるポリエチレン系樹脂と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0037】
この管状断熱材では、ポリエチレン系発泡層とポリエチレン系樹脂層とからなり、管状発泡体に外装された管状体が、図5のように、その外表面側にエンボス加工面を有することが好ましい。このように、管状体にエンボス加工が施されておれば、この管状断熱材に銅管等が挿通された断熱配管を曲げ加工又は曲げ施工する際に管状断熱材の表面側における皺等の発生を抑えることができる。
【0038】
管状体を構成するポリエチレン系発泡層及びポリエチレン系樹脂層は、難燃処理されていてもよく、されていなくてもよいが、少なくともポリエチレン系発泡層は難燃処理されていることが好ましい。このように、少なくともポリエチレン系発泡層を難燃性とすることで、管状断熱材全体の難燃性を十分に向上させることができる。
【0039】
この管状断熱材は、断熱を必要とする種々の用途において用いることができる。この用途としては、例えば、給湯配管用断熱材、水道配管用断熱材、床暖配管用断熱材等が挙げられる。この管状断熱材は、特に、空調機器の銅配管に外装して用いる用途において有用であり、図6のような断熱配管とすることができる。この管状断熱材では、発泡剤として、銅の腐食を促進するガスが発生するアゾジカルボンアミド等を用いていないため、銅の腐食が防止される。尚、管状断熱材が外装される金属配管等の内部を、例えば、80℃以上、特に100〜120℃の高温の液体が流通する場合は、前記のように、管状発泡体が架橋されていることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]管状発泡体の製造
表1及び表2に記載の各々の成分を用いてポリエチレン系難燃性樹脂発泡体(管状発泡体)を製造した。
実施例1〜11及び比較例1〜10
有機難燃剤の詳細は以下のとおりである。
(1)塩素化パラフィン;ATm 105℃(融解温度範囲 95〜105℃)、味の素ファインテクノ社製、商品名「エンパラ70」
(2)テトラブロモビスフェノールA;ATm 110℃(融解温度範囲 95〜110℃)、東ソー社製、商品名「フレームカット120G」
(3)トリブロモフェニルアリルエーテル;ATm 76℃(融解温度範囲 74〜76℃)、味の素ファインテクノ社製、商品名「PHE65」
(4)テトラブロビスフェノールAビスジブロモジプロピルエステル;ATm 120℃(融解温度範囲 106〜120℃)、味の素ファインテクノ社製、商品名「PE−68」
(5)エチレンジブロマイド−2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニルプロパン縮合物;ATm 70℃(融解温度範囲 60〜70℃)、帝人化成社製、商品名「ファイヤーガード3000」
【0041】
また、有機難燃剤を除く他の成分の詳細は以下のとおりである。
(1)難燃助剤;三酸化アンチモン、鈴粉化学社製、商品名「ファイヤカットAT−3」
(2)シラン架橋性ポリエチレン;低密度ポリエチレン(RTm 118.5℃、東ソー社製)にゲル分率が55%となるようにシラングラフトさせた架橋性ポリエチレン
(3)低密度ポリエチレン;RTm 112.5℃、日本ポリケム社製、商品名「LF440HB」
(4)ジブチルチンジラウレートMB;上記(1)のシラン架橋性ポリエチレンにジブチルチンジラウレートを10質量%配合した架橋促進剤MB
(5)核剤MB;上記(1)のシラン架橋性ポリエチレンにタルクを20質量%配合した核剤MB
(6)収縮防止剤MB;上記(1)のシラン架橋性ポリエチレンにステアリン酸モノグリセリドを20質量%配合した収縮防止剤MB
尚、上記「MB」及び表1、2における「MB」は「マスターバッチ」の略である。
【0042】
上記の各々の成分を用いて管状発泡体を製造した。
表1及び表2に記載の配合割合でコーンブレンダーにより5分間ドライブレンドして樹脂混合物を調製し、その後、この樹脂混合物を一軸押出機(スクリュー径;65mm、L/D=45)のホッパーに投入し、設定温度150℃で溶融、混練し、次いで、押出機の長さ方向の中間部に配設された発泡剤圧入器から発泡剤としてイソブタンを表1及び表2に記載の配合割合になるように圧入し、溶融、混練物の温度をシラン架橋ポリエチレン(実施例1〜5及び比較例1〜5)及び低密度ポリエチレン(実施例6〜11及び比較例6〜10)の各々の融点とほぼ同じ温度まで降温させ、その後、16kg/時間の押出速度で押出機の先端に取り付けられた二重管スリットを有するダイスから吐出させて発泡させ、外径18.8mm、管壁の厚さ5mmの管状発泡体を製造した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
上記のようにして製造した管状発泡体について下記のようにして品質を評価した。
(1)寸法(外径)安定性;光センサー外径測定機により発泡体の外径の安定性を評価した。表1、2における「〇」は変動範囲±0.2mm以内であって外径が安定しており、「△」は変動範囲±0.5〜1.0mmであって外径が不安定であり、「変動」は外径が1mmを越えて変化して外径が変動していることを表す。
(2)表面平滑性;目視により発泡体の表面の平滑性を評価した。表1、2における「〇」は表面が平滑であり、「×」は表面に凹凸があることを表す。
(3)最高発泡倍率(cm/g);発泡体の重量を秤量し、水置換法により体積を測定し、この重量と体積とから密度を求め、その逆数である最高発泡倍率を算出した。
(4)ゲル分率(%);樹脂発泡体を50℃、80%RHの雰囲気で3日間静置し、その後、100gの発泡体を細片に切断し、これを30ccのキシレンに投入し、120℃で24時間加熱し、次いで、ろ過し、不溶分を120℃で3時間乾燥させ、その重量を測定し、下記の式に従ってゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(測定後の樹脂発泡体の質量/測定前の樹脂発泡体の質量)×100
(5)難燃性;発泡体を20℃で10日間静置し、その後、UL94の「発泡材料の水平燃焼試験」によって評価した。表1、2の「UL94HBFランク合否」の欄の「〇」は合格、「−」は不合格である。
上記(1)〜(5)の評価結果を表1及び表2に併記する。
【0046】
表1の結果によれば、RTm(118.5℃、シラン架橋性ポリエチレン)と、ATm(120℃、テトラブロビスフェノールAビスジブロモジプロピルエステル)との差(RTm−ATm)が−1.5℃であり、下限値である0℃を下回っている比較例1〜3では、組成によって最高発泡倍率に差はあるものの、いずれも寸法安定性が十分ではなく、表面平滑性も劣っている。また、RTm(118.5℃、シラン架橋性ポリエチレン)と、ATm(70℃、エチレンジブロマイド−2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニルプロパン縮合物)との差(RTm−ATm)が48.5℃であり、上限値である40℃を越えている比較例4〜5では、最高発泡倍率は大きいものの、いずれも寸法安定性及び表面平滑性ともに劣っている。
【0047】
一方、RTm(118.5℃、シラン架橋性ポリエチレン)と、ATm(105℃、塩素化パラフィン)との差(RTm−ATm)が13.5℃である実施例1〜3、及びRTm(118.5℃、シラン架橋性ポリエチレン)と、ATm(110℃、テトラブロモビスフェノールA)との差(RTm−ATm)が8.5℃である実施例4〜5では、最高発泡倍率はいずれも45cm/gと十分に大きく、且つ寸法安定性に優れ、表面の平滑性も良好である。
尚、ゲル分率は、実施例で54〜60%、比較例で54〜62%であり、いずれも適度に架橋されていた。また、難燃性は、有機難燃剤の種類及び配合量、並びに難燃助剤である三酸化アンチモンの配合量等によって差があり、UL94HBFランクに合格するものもしないものもあるが、実施例と比較例とで差はなかった。更に、UL94HBFランクに合格でなくても、前記の各種の用途に用いることができる。
【0048】
また、表2の結果によれば、RTm(112.5℃、低密度ポリエチレン)と、ATm(120℃、テトラブロビスフェノールAビスジブロモジプロピルエステル)との差(RTm−ATm)が−7.5℃であり、下限値である0℃をかなり下回っている比較例6〜8では、組成によって最高発泡倍率に差はあるものの、いずれも寸法安定性及び表面平滑性ともに劣っている。更に、RTm(112.5℃、低密度ポリエチレン)と、ATm(70℃、エチレンジブロマイド−2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニルプロパン縮合物)との差(RTm−ATm)が42.5℃であり、上限値である40℃を越えている比較例9〜10では、最高発泡倍率は大きいものの、比較例9の表面平滑性が良好であることを除いて、寸法安定性に劣り、表面の平滑性は十分ではない。
【0049】
一方、RTm(112.5℃、低密度ポリエチレン)と、ATm(105℃、塩素化パラフィン)との差が7.5℃である実施例6〜7、RTm(112.5℃、低密度ポリエチレン)と、ATm(110℃、テトラブロモビスフェノールA)との差(RTm−ATm)が2.5℃である実施例8〜9、及びRTm(112.5℃、低密度ポリエチレン)と、ATm(76℃、トリブロモフェニルアリルエーテル)との差(RTm−ATm)が36.5℃である実施例10〜11では、最高発泡倍率はいずれも45cm/gと十分に大きく、且つ寸法安定性に優れ、表面の平滑性も十分である。
尚、難燃性は、有機難燃剤の種類及び配合量、並びに難燃助剤である三酸化アンチモンの配合量等によって差があり、UL94HBFランクに合格するものもしないものもあるが、実施例と比較例とで差はなかった。また、UL94HBFランクに合格でなくても、前記の各種の用途に用いることができる。
【0050】
[2]断熱配管
ポリエチレン系発泡シート(発泡倍率30倍、厚さ3mm)に厚さ100μmのポリエチレンフィルムを押出ラミネーション法により貼着させ、同時にポリエチレンフィルム面の側からエンボス加工を施し、積層シートを得た。その後、この積層シートを実施例1の管状発泡体の外周長さに合うように幅70mmにスリット加工し、エンボス面の反対面を加熱し、この加熱された面を実施例1の管状発泡体の外周に巻き付けて熱融着させて管状断熱材を得た。次いで、この管状断熱材に外径6.35mm、管壁の厚さ0.8mmの空調配管用銅配管を挿入して断熱配管を得た。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体を押出成形機を用いて製造する工程の一例を示す説明図である。
【図2】示差熱分析の融解曲線においてRTmを求める方法を示す説明図である。
【図3】示差熱分析の融解曲線においてATmを求める方法を示す説明図である。
【図4】ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体からなる管状体に、ポリエチレン系発泡シートとポリエチレン系樹脂シートが積層された積層シートが巻回されている管状断熱材の断面を示す模式図である。
【図5】積層シートにエンボス加工が施された管状断熱材の断面を示す模式図である。
【図6】積層シートにエンボス加工が施された管状断熱材に銅配管を挿入してなる断熱配管の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1;押出成形機、11;ホッパー、12;発泡剤圧入器、2;成形用金型、21;成形用ダイス、3;外径計測器、4;引き取り機、5;管状断熱材、51;管状発泡体(ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体)、52;管状体、521;ポリエチレン系発泡層、522;ポリエチレン系樹脂層、523;エンボス加工部、524;融着シール部、6;銅配管、P;断熱配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂と有機難燃剤とを含有する混練物に発泡剤を供給し、押出成形して発泡させるポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法において、
示差熱分析による、該ポリエチレン系樹脂の融解ピーク(RTm)と、該有機難燃剤の融解範囲の上限値(ATm)とが、下記式(1)の関係を有することを特徴とするポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
0≦RTm−ATm≦40 (1)
【請求項2】
上記ポリエチレン系樹脂が、ビニルアルコキシシランをグラフト結合させた低密度ポリエチレンである請求項1に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
上記有機難燃剤が、臭素及び/又は塩素を含む有機ハロゲン化合物である請求項1又は2に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
上記有機ハロゲン化合物が、分子量800以上の塩素化パラフィンである請求項3に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
上記混練物は、更に三酸化アンチモン及び/又は五酸化アンチモンを含有し、該三酸化アンチモン及び/又は該五酸化アンチモンの上記有機難燃剤に対する質量比が1/7〜2/3である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
上記ポリエチレン系難燃性樹脂発泡体が管状発泡体である請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のポリエチレン系難燃性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により製造された管状発泡体と、ポリエチレン系発泡層及びポリエチレン系樹脂層からなり、且つ該ポリエチレン系発泡層が該管状発泡体に接して被覆されている積層シートと、を備えることを特徴とする管状断熱材。
【請求項8】
上記管状発泡体の密度が0.065g/cm以下である請求項7に記載の管状断熱材。
【請求項9】
外表面側にエンボス加工面を有する請求項7又は8に記載の管状断熱材。
【請求項10】
空調機器の銅配管と、該銅配管に外装された請求項7乃至9のうちのいずれか1項に記載の管状断熱材と、を備えることを特徴とする断熱配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−199760(P2006−199760A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10894(P2005−10894)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(399028632)株式会社中央物産 (5)
【Fターム(参考)】