マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械
【課題】マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械、特に、材料関連光学特性、例えば、光学要素の容積にわたって変化する屈折率又は複屈折性を有する屈折光学要素を有する投影対物器械を提供する。
【解決手段】1.6よりも大きい屈折率を有する高屈折率屈折光学要素(L3)を有するマイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械。この要素(L3)は、ある一定の容積、及びこの容積にわたって変化する材料関連光学特性を有する。この光学特性の変化は、対物器械の収差を引き起こす。一実施形態では、少なくとも4つの光学面が設けられ、これらの光学面は、屈折光学要素の容積と光学的に共役である少なくとも1つの容積(L3’)内に配列される。各光学面は、少なくとも1つの補正手段、例えば、局所的に変化する特性を有する表面変形又は複屈折層を含み、これらの補正手段は、光学特性の変化によって引き起こされる収差を少なくとも部分的に補正する。
【解決手段】1.6よりも大きい屈折率を有する高屈折率屈折光学要素(L3)を有するマイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械。この要素(L3)は、ある一定の容積、及びこの容積にわたって変化する材料関連光学特性を有する。この光学特性の変化は、対物器械の収差を引き起こす。一実施形態では、少なくとも4つの光学面が設けられ、これらの光学面は、屈折光学要素の容積と光学的に共役である少なくとも1つの容積(L3’)内に配列される。各光学面は、少なくとも1つの補正手段、例えば、局所的に変化する特性を有する表面変形又は複屈折層を含み、これらの補正手段は、光学特性の変化によって引き起こされる収差を少なくとも部分的に補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2006年6月16日出願の米国特許仮出願出願番号第60/814、385号の恩典を請求する。上記先行出願の全開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械に関する。そのような装置は、集積回路及び他の微細構造構成要素の生産に用いられる。特に、本発明は、材料関連光学特性、例えば、光学要素の容積にわたって変化する屈折率又は複屈折性を有する屈折光学要素を有する投影対物器械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積電気回路及び他の微細構造構成要素は、例えば、シリコンウェーハとすることができる適切な基板上に複数の構造化された層を適用することによって生成される。層を構造化するために、まずこれらの基板は、特定の波長、例えば、248nm、193nm、又は157nmの光に感受性を有するフォトレジストで覆われる。次に、この手法で被覆したウェーハは、投影露光装置内で露光される。露光中に、マスク上の構造のパターンが、投影対物器械の助けを得てフォトレジスト上に投影される。結像縮尺は、一般的に1よりも小さいので、そのような投影対物器械は、多くの場合に縮小対物器械とも呼ばれる。
【0003】
フォトレジストが現像された後に、層がマスク上のパターンに従って構造化されるように、ウェーハは、エッチング処理を受ける。その後、尚も残留するフォトレジストは、層の他の部分から除去される。この処理は、全ての層がウェーハ上に付加され終わるまで繰り返される。
投影露光装置の開発において極めて重要な目的の1つは、益々小さくなる寸法の構造をウェーハ上にリソグラフィによって形成することができることである。小さい構造は、そのような装置の助けを得て生成される微細構造構成要素の性能に対して好ましい効果を一般的に有する高い集積密度をもたらす。
【0004】
構造の最小サイズは、主に投影対物器械の分解能に依存する。投影対物器械の分解能は、投影光の波長に比例するので、分解能を小さくする1つの手法は、益々短くなる波長を有する投影光を用いることである。現在用いられている最短波長は、深紫外線(DUV)スペクトル範囲に存在し、193nmに等しいか、又は時には157nmにも等しくなる。
【0005】
分解能は、更に投影対物器械の物体側の開口数に逆比例するので、分解能を小さくする別の手法は、高い屈折率を有する液浸液を液浸空間の中に導入するという考えに基づいており、この液浸液は、投影対物器械の像側の最後の光学要素と、露光されるフォトレジスト又は別の感光層との間に留まる。液浸作動に向けて設計され、従って液浸対物器械とも呼ばれる投影対物器械は、1よりも大きい開口数、例えば、1.3又は1.4の開口数を達成することができる。
【0006】
従来的に、液浸対物器械の像側の最後の光学要素における材料として、アモルファス石英ガラス又はフッ化カルシウム(CaF2)が主に用いられている。石英ガラスは、波長λ=193nmにおいて、ほぼ1.56の屈折率を有し、CaF2は、ほぼ1.50の屈折率を有する。像側の最後の光学要素の屈折率は、液浸対物器械の開口数を制限するので、特に投影対物器械の像側の最後のレンズにおいて、更に高い屈折率を有する材料の使用が考慮されている。例えば、フッ化バリウム(BaF2)又はフッ化ランタン(LaF3)のようなある一定のフッ化物、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)のようなある一定の塩化物、又はマグネシウムスピネル(MgAl2O4)、カルシウムスピネル(CaAl2O4)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12)、又はマグネシウム過スピネル(MgO・3Al2O3)のようなある一定の酸化物が想定されている。
【0007】
しかし、依然として、そのような高屈折率光学材料の生産及び処理に関して多くの問題を解決すべきである。特に、現在これらの材料の重要な光学特性、特に屈折率、複屈折性の均一性、及び時として吸収及び散乱の均一性も、これまで主に用いられてきたアモルファス及び結晶レンズ材料のものよりも劣る。投影光は、特に広範な角度スペクトルでこの要素を通過するので、像側の最後の光学要素における複屈折性は、特に重要である。
【0008】
生産及び処理の問題が早急に解決されることになる見込は低いので、近い将来利用可能になる高屈折率レンズ材料は、これまでに用いられてきたレンズ材料において通常的になっているものよりも均一性及び等方性が低い光学特性しか持たないことになる。
しかし、高分解能液浸対物器械では、像側の最後のレンズにおける不均一かつ異方的な光学特性は、新しい高屈折率材料を直ぐには使用することができないほどの許容できない収差を引き起こす可能性がある。
【0009】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/814、385号
【特許文献2】WO2005/121899A1
【特許文献3】米国特許出願出願番号第11/570、263号
【特許文献4】WO2005/111689
【特許文献5】WO2005/069055
【非特許文献1】A.C.Kak及びM.Slaney著「コンピュータ断層撮影画像生成の原理」、IEEE出版、ニューヨーク、1987年、http://www.slaney.org/pct/
【非特許文献2】H.Hammer他著「光学断層撮影による空間的に不均一な誘電テンソルの復元」、J.Opt.Soc.Am.A、第22巻、第2部、2005年2月、250から255頁
【非特許文献3】E.Delano著「1次設計及びy、ダイアグラム」、「Applied Optics」、1963年、第2巻、第12号、1251〜1256頁
【発明の開示】
【0010】
従って、高屈折率光学材料によって引き起こされる収差が低減されたマイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を達成することが本発明の目的である。
本発明の一態様によると、上述の目的は、193nmの波長において1.6よりも大きい屈折率を有する高屈折率屈折光学要素を有するマイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械によって達成される。この要素は、ある一定の容積、及びこの容積にわたって変化する材料関連光学特性を有する。この光学特性の変化は、対物器械の収差を引き起こす。一実施形態では、少なくとも4つ、好ましくは、少なくとも6つ、更に一層好ましくは、少なくとも8つの光学面が設けられ、これらの光学面は、屈折光学要素の容積と光学的に共役である1つの連続容積内に配列される(又は複数の別々の容積にわたって分布している)。各光学面は、少なくとも1つの補正手段、例えば、局所的に変化する特性を有する表面変形又は複屈折層を含み、これらの補正手段は、光学特性の変化によって引き起こされる収差を少なくとも部分的に補正する。
【0011】
本発明は、内部に適切な補正手段が配列された空間的に十分に分解された共役容積を設けることにより、空間的に不均一な光学特性を確実に補正することができるという考えに基づいている。
補正手段の位置及び配置状態を判断するために、まず屈折光学要素を多数の小さい容積要素に概念的に細分化することができる。次の段階では、容積要素に対して、関連する1つの光学特性(又はいくつかの光学特性)が判断される。更に、別の段階では、これらの容積要素が対物器械の別の部分内へと結像される場所が判断され、すなわち、屈折光学要素の容積と共役である全体の容積が判断される。
【0012】
屈折光学要素が像表面の最後の要素である場合には、照明システムとマスク平面の間に必ず少なくとも1つの共役容積が存在する。しかし、これでは、不均一な屈折率分布によって引き起こされる収差の角度非依存補正という限られた補正しか得ることができない。従って、投影対物器械内に、少なくとも1つの中間像を有することが好ましい。そのような中間像の前部には、内部に補正手段を配列することができる更に別の共役容積が存在する。この場合、角度依存光学特性の不均一性によって引き起こされる収差も、これらの補正手段によって補正することができる。
【0013】
次に、補正要素上の補正手段は、この補正手段が最後の光学要素内で注目している容積要素によって引き起こされる収差成分を少なくとも部分的に補正するように判断される。
一般的に、任意に多くの個数の光学面を屈折光学要素と共役な容積内に含むことは可能でないことになる。従って、最適化処理を実施することができ、その結果として、屈折光学要素内の不均一性に起因する収差を少なくとも実質的に補正する補正手段を含む少数の表面のみが残る。
【0014】
高屈折率屈折光学要素は、この関連では、λ=193nmの波長において1.6を超える屈折率を有するものとして定められる。この値を著しく超える、例えば、1.8よりも大きい、又は更に2.0よりも大きい屈折率を有する屈折要素では、通常そのような材料が、投影対物器械内で収差を引き起こすある一定の光学特性のより一層大きい変化を有するので、本発明は、更に一層有利である。
多くの場合に、対物器械の最後の光学要素では、そのような高屈折率屈折光学要素は、投影対物器械の開口数NAに対して非常に有利な効果を有するので、そのような高屈折率屈折光学要素は、対物器械の最後の光学要素になる。更に、通常、屈折光学要素は、少なくとも1つの湾曲表面を通常はその物体側に有する。作動中に液浸液が対物器械の像平面内に配列された感光層を少なくとも部分的に覆う液浸作動に向けて対物器械が設計される場合には、屈折光学要素は、液浸作動中に液浸液に接触することができる。
【0015】
光学特性の望ましくない変化が屈折光学要素の容積にわたって分布する場合には、対物器械の光軸に対して平行な方向に5mmよりも短い分だけ、好ましくは、2.5mmよりも短い分だけ分離した共役表面を屈折率の容積内に配列することが有利であると考えられる。それにより、ミリメートル領域の寸法を有する屈折光学要素材料内の欠陥に確実に対処することができるような十分な空間分解能が保証される。
ここで注目している不均一光学特性は、屈折率、複屈折性、吸収度、又は散乱量を含むが、これらに限定されない。
【0016】
屈折要素内の不均一な屈折率分布によって引き起こされる波面変形を補正するために、光学面のうちの少なくとも1つは、この少なくとも1つの光学面の非軸対称変形によって形成された補正手段を含むことができる。この変形は、収差に関連する波面変形を補正するように構成される。そのような表面変形は、上記少なくとも1つの表面への局所的材料付加、又はこの表面からの材料除去によって生成することができる。
【0017】
空間的に不均一な複屈折を補正するためには、補正手段は、この補正手段を通過する光の偏光状態を修正すべきである。この目的に対して、補正手段は、複屈折材料、例えば、少なくとも1つの補正手段を含む光学面にわたって局所的に変化する厚みを有する層又は板で作られる構造を含むことができる。追加的又は代替的に、少なくとも1つの補正手段において複屈折構造を用いることができる。
【0018】
不均一な光学特性が吸収度である場合には、少なくとも1つの光学面は、局所的に変化する透過率又は反射率を有するこの少なくとも1つの光学面の一部分又はこの少なくとも1つの光学面に隣接する容積で形成された補正手段を含むことができる。
不均一な光学特性が散乱光量である場合には、少なくとも1つの光学面は、局所的に変化する散乱効果を有するこの少なくとも1つの光学面の一部分又はこの少なくとも1つの光学面に隣接する容積で形成された補正手段を含むことができる。例えば、高屈折率屈折光学要素の一部分の範囲内では、周辺部分よりも散乱が強い可能性がある。従って、補正手段は、屈折光学要素内で強い散乱が発生する部分と光学的に共役である区域内で最小の散乱効果を有する表面によって形成することができる。全体として、それによって補償効果が得られることになる。異なる散乱度は、例えば、局所的に変化する表面粗度を有する光学面を設けることによって生成することができる。
【0019】
対物器械が、N=0、1、2、...であるN個の中間像表面、及びN+1個の瞳表面を有する場合には、少なくとも4つの光学面をk=0、1、2、...、Nであるk個の中間像表面、及びk個の瞳表面で分離することができる。それにより、共役容積要素を通過する光束が奇数の瞳平面又は中間像平面によって反転されないことが保証される。
当然ながら補正要素は、上述の光学特性、又は更に本明細書では明確に言及しない光学特性のうちのいくつか又は全てのものの不均一性によって発生する収差を補正することができるいくつかの異なる種類の補正手段を含むことができる。
【0020】
原理的には、補正手段を含む光学面は、事実上あらゆる軸対称形状を有する支持体上に形成することができる。しかし、これらの表面のうちの1つ、いくつか、又は全てを平行平面板上に形成することが特に有利である。これらの板は、互いに異なる厚み及び異なる距離を有することができる。板のうちの一部又は全ては、これらの板が投影対物器械の光軸に沿って変位可能であるように配列することができる。
【0021】
液浸対物器械の光学設計中には、その後の最適化中に複数の個々の板に分割されるただ1つの肉厚な板を最初に設けることができるので、これらの表面を平行平面板上に形成することが特に好ましい。複数の任意的に変位可能な個々の板への分割は、光学効果を変化させず、又は若干しか変化させず、従って、液浸対物器械の他の光学要素を調整する必要がないか、又は若干しか調整する必要がない。更に、波面変形の補正に適切である非軸対称表面変形を平行平面板上に特に有利に局所的に生成することができる。
代替的に、複数のより肉薄の板を設けることができる。そのような板は、投影対物器械の光学特性に著しい影響を与えることなく、光軸に沿って変位させることができる。
【0022】
両方の場合に、1つの肉厚な板又は複数のより肉薄な板を含む初期設計から始めて、初期設計を別途修正することなく、必要な軸上位置により肉薄な板を位置決めすることができるので(肉厚な板の場合には、肉厚な板を2つ又はそれよりも多くのより肉薄な板に概念的に分割した後に)、投影対物器械の設計は大幅に容易になる。
異なる作動状態、例えば、異なる照明角度分布又は異なるマスクへの適応を可能にするために、1つ又はそれよりも多くの板は、交換ホルダ内に保持することができる。通常は、照明角度分布及びマスクの両方は、光線が屈折光学要素を通過する位置に影響を及ぼすので、照明角度分布及び/又はマスクを変更する時には、屈折光学要素の投影光が実際に通過する部分に特別に適応させた補正手段を有する板を採用することが有利であると考えられる。更に、屈折光学要素の光学特性は、装置を作動させる間の光トリガ劣化現象の結果として変化する可能性があり、従って、補正効果の調整も同様に必要である可能性がある。
補正手段を含む光学面は、必ずしも互いに隣接して配列する必要はない。多くの場合に、これらの表面は、収差を補正しない少なくとも1つのレンズ又は他の光学要素によって分離することがより有利であると考えられる。
【0023】
本発明の別の態様によると、マイクロリソグラフィ露光装置を設計する方法は、
a)−屈折光学要素、及び
−いかなる光学要素も存在せず、かつ高屈折率屈折光学要素の全容積と光学的に共役である共役容積内に少なくとも部分的に配列されるように、対物器械の光軸に沿って概念的にシフトすることができる少なくとも2つの透明な平行平面補正板、
を含む、対物器械の初期設計を判断する段階と、
b)材料関連光学特性が変化し、容積要素内の光学特性の変動が収差を引き起こす、屈折光学要素内の容積要素を判断する段階と、
c)段階b)で判断された容積要素に対して光学的に共役であり、かついかなる光学要素も存在しない共役容積内に位置する共役容積要素を判断する段階と、
d)補正板のうちの少なくとも1つの板の表面が、段階c)で判断された共役容積要素内に配列されるように、この少なくとも1つの板を概念的に位置決めする段階と、
e)収差を少なくとも部分的に低減するこの少なくとも1つの補正板の表面に補正手段を設計する段階と、
を含む。
【0024】
段階a)で言及した少なくとも2つの透明な平行平面補正板は、必要に応じて2つ又はそれよりも多くの個々の板に分割することができる単一のより肉厚な平行平面補正板として形成するように概念的に考えることができる点に注意すべきである。
本発明の様々な特徴及び利点は、添付図面と共に以下の詳細説明を参照することによってより容易に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、全体を10で表しているマイクロリソグラフィ投影露光装置を通る概略的子午断面である。投影露光装置10は、光源14、16で示している照明光学器具、及びフィールドストップ18を含む投影光13を発生させるための照明システム12を含む。図示の実施形態では、投影光は、193nmの波長を有する。当然ながら、他の波長、例えば、156nm又は248nmも同様に想定されている。
【0026】
更に、投影露光装置10は、レンズ、ミラー、又はフィルタ要素のような複数の光学要素を収容する投影対物器械20を含む。簡易化のために、投影対物器械20は、レンズL1、L2、及びL3のみを有するように示されており、投影対物器械のより現実的な実施形態は、図6及び7に示している。投影対物器械20は、投影対物器械20のマスク平面22内に配列されたマスク24を例えばフォトレジストで構成することができる感光層26上へと結像するのに用いられる。層26は、投影対物器械20の像平面28内に配列され、ウェーハ30上に付加される。
【0027】
この実施形態では、支持体30は、変位デバイスの助けを得て像平面28に対して平行に変位させることができる(詳細には表していない手法で)溝状の上開き容器32の底部上に固定される。容器32は、投影露光装置10の作動中に投影対物器械20が像側の最後のレンズL3を液浸液34内に液浸するように液浸液34で満たされる。
給送ライン36及び排出ライン32を通じて、容器32は、循環ポンプ、液浸液34を洗浄するためのフィルタ、及び温度制御ユニットを収容する(それ自体公知であり、従って、詳細には表していない方法で)処理ユニット40に接続される。上述の代わりに、投影対物器械20を液浸するための他の機構を用いることができることを理解すべきである。例えば、液浸液34は、容器内に収容されなくてもよく、その代わりにこの当業技術で公知のように、感光層26に対して直接放流及び吸出することができる。
【0028】
図2は、概略拡大図で図1の投影対物器械20を示している。ここでは、レンズL1が、マスク平面22を中間像平面42上へと結像することが分る。この中間像平面42内に形成されたマスク24の像は、著しい収差によって影響を受ける場合がある。レンズL2及びL3は、中間像42を像平面28上へと結像する。従って、マスク平面22、中間像42、及び像平面28は、互いに光学的に共役である。
マスク平面22のある一定の点から出射する光線は、収差の影響を受ける中間像を通じて像平面28内のある一定の点で収束する。
【0029】
像側の最終レンズL3は、図示の実施形態では平凸レンズであるが、当然ながら他の形状、例えば、凸凹又は更に平行平面も可能である。この実施形態では、像側の最後のレンズL3は、マグネシウムスピネル(MgAl2O4)から成る。
マグネシウムスピネルは、不十分な光学均一性及び純度に起因して、以下に提案する補正手段なしには、そのような投影対物器械において未だ用いることはできない。従って、レンズL3の1つ又はそれよりも多くの光学特性は、僅かであったとしても、レンズL3の容積にわたって変化する。この光学特性は、例えば、屈折率とすることができる。特に短い波形を有する時には、シュリーレンとも呼ばれる不均一な屈折率分布は、通過する投影光において波面変形を引き起こす。光学異方性材料では、屈折率は、依然として、スカラー量、例えば、正常屈折率と異常屈折率の間の平均値として定めることができる。
【0030】
光学異方性レンズ材料、従って、複屈折性レンズ材料の場合には、等しく偏光した互いに平行な光線が、レンズL3を通過する位置の関数として異なる偏光状態変化を受けるように、複屈折テンソルは、更に、位置の関数とすることができる。
レンズL3は、均一的に透明ではなく、すなわち、空間的に変化する透過係数を有するか、又は局所的に変化する散乱特性を有する可能性もある。
【0031】
上述の全ての不均一性の影響は、感光層26上のマスク22の結像が収差によって摂動することである。
これらの収差を補正するために、この実施形態では、4つの補正要素46a、46b、46c、46dを含む補正デバイス44が、レンズL1と中間像平面42の間に配列される。補正要素46a、46b、46c、46dは、好ましくは、投影露光装置10の作動波長において高度に反射防止が為された平行平面透明板である。代替的に、補正要素46a、46b、46c、46dは、望ましくない光反射を低減するために、片方又は両方の側に液体を隣接させることができる。補正要素46a、46b、46c、46dの構造の詳細を図3を参照して以下により詳細に説明する。
【0032】
像側の最後のレンズL3の容積と共役な容積L3’の内側に、補正デバイス44の補正要素46a、46b、46c、46dを示している。
補正要素46a、46b、46c、46dの厚み、配置状態、及びデザインは、以下の方法に従って判断することができる。
最初に、像側の最終レンズL3の光学特性が、3次元位置分解能を用いて測定される。この測定は、例えば、レンズ幾何学形状が計算によって転写される円柱レンズプレフォームに対して実施することができる。その後のレンズ生成及びプレフォームの助けを得て得られたデータのレンズへの計算による転写中には、結晶の外面の方位的配置状態及び配向に特別の注意を払うべきである。一方を結晶からの測定データとし、他方をコンピュータにおける複製とし、これらの間の100μmよりも小さい空間精度は、目的にかなうものである。これに対して適切な方法は、断層撮影型のものである。これらの方法の概論は、A.C.Kak及びM.Slaney著「コンピュータ断層撮影画像生成の原理」、IEEE出版、ニューヨーク、1987年において見ることができ、この文献は、http://www.slaney.org/pct/においてインターネット上でも公開されている。複屈折分布を判断するための断層撮影法は、H.Hammer他著「光学断層撮影による空間的に不均一な誘電テンソルの復元」、J.Opt.Soc.Am.A、第22巻、第2部、2005年2月、250から255頁において説明されている。これらの2つの刊行文献の全開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0033】
次の段階では、像側の最後のレンズL3によって占有される容積は、均一な光学特性を有する複数の容積要素であり、容積要素の屈折率nが、レンズL3内の容積要素のそれぞれの位置に依存する要素へと細分化される。材料が光学異方性材料である場合には、各容積要素に対して、追加的又は代替的に、複屈折の方向を示す空間的配向を有し、複屈折の大きさΔnに応じる短対称軸に対する長対称軸の比率を有する屈折率楕円体を割り当てることができる。各容積要素に対しては、追加的又は代替的に、透過係数、及び/又は補足的なスカラー量として散乱特性を表す量を割り当てることができる。図2では、一例として、単一の容積要素(ここでは立方体形状にある)を点線で示し、48で表している。
【0034】
更に別の段階では、各容積要素に対して、共役容積L3’内の共役容積要素を割り当てる。図2における像側の最後のレンズL3内の容積要素48に対して、容積要素48と共役な容積要素を48’で表している。各容積要素は、レンズL2及びレンズL3の結像に寄与する部分により、共役容積要素上に結像され、この場合の結像縮尺は、横方向及び縦方向に変化する可能性がある。歪曲なしの結像は実際には必要ではない。容積要素48の歪曲像の形成は、容積要素48内のある一定の点から出射する光線が、共役容積要素48’内の単一点において如何に正確には合致しないかを示している図11に概略的に例示している。更に、投影光線は、実際には、図2の光線50、52によって示すように、共役容積要素48’を通過するものとは異なる角度でレンズL3内の容積要素48を通過する。しかし、収差の少なくとも部分補正のためには、同じ光線が共役容積要素48’とレンズL3内の容積要素48との両方を通過するだけで十分である。
【0035】
図12は、ここでは光軸に対して直角に正弦曲線強度分布を有し、空間周波数Fsを有すると仮定する物体が、容積要素48から共役容積要素48’内へと非コヒーレントに結像される場合に、形成された容積要素48の歪曲像の結果として、透過比T=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)が低下することを示している。良好な補正効果では、比Tは、空間周波数Fs=0.5線対毎ミリメートル(Lp/mm)、好ましくは、空間周波数Fs=0.7Lp/mm、更に一層好ましくは、空間周波数Fs=1.0Lp/mmに対して少なくとも30%であるべきである。
【0036】
結像に対するペツヴァル和も非ゼロの場合があるから、最後のレンズL3内の平断面は、共役容積L3’内で任意の湾曲、更には変化する湾曲さえも有しながら結像されると考えられる。この理由から、図2の共役容積要素48’の境界は立方体形状ではなく、不規則に湾曲している。一般的に、より複雑な光学システムを表すレンズL2は、接線及び矢状像シェルがほぼ同じ形状を有し、軸外球面収差に関して接線方向と矢状方向の両方にある程度均一な像位置を可能にするように構成される。
【0037】
複雑な光学システムの開発に用いられる公知のシミュレーションプログラムの助けを得ると、共役容積要素を容易に判断することができる。しかし、像側の最後のレンズL3の容積要素への細分化は、より分り易い表現という理由のみから選択したものであることは理解されるものとする。コンピュータにおける上述の方法の計算上の実施では、レンズL3を支持点の3次元格子網として表すのが最も単純であり、各点に対して、関連する格子位置において測定された1組の光学特性を割り当てる。次に、この3次元支持点網は、中間に存在する光学要素の結像を説明する転写関数の助けを得てレンズL3の共役容積L3’へと変換される。この後、立方格子は、一般的に、空間的に揺らぎのある支持点の非立方格子になる。ここで、容積の重心は、中間像の収差にも関わらず、明瞭に相関し、歪曲した格子を定めるのに役立たせることができる。
【0038】
更に別の段階では、像側の最後のレンズL3の物体空間内の共役容積L3’は、この時点で、個数Nの平行平面板で実質的に充填される。投影対物器械20の初期設計においても設けることができたN個の板は、間隙なく互いに隣接させることができる。N個の板の仮想表面変形により、この時点で、像側の最後のレンズL3内の容積要素内の異なる屈折率によって引き起こされる波面変形を補正することをコンピュータにおいて試みる。可能な限り完全な補正を得るために、板の個数Nは、最初は非常に大きく、例えば、N=20又はN=50になるように選択すべきである。
【0039】
この時点で、N個の板のうちのどれが補正に対して大きな寄与をなさないかに関して分析を行う。これらの板では、その表面を除去し、その光学厚みを隣接する板に加算することができ、又はこれらの板を完全に除去することができ、これは、投影対物器械20の他の光学要素の僅かな適応を必要とするであろう。
表面を完全に除去した場合には、図2に例示的に46a、46b、46c、46dで表した板形状補正要素の配列が導かれる。
異なる厚みの要素の代わりに、光軸OAに沿って等しい厚みの要素を異なる縦方向位置に配列することができる。最も単純な場合には、全ての補正要素は、等しい厚みであり、互いに等しい距離で配列される。
【0040】
最後のレンズL3の全ての部分における変化に対処することができるためには、全共役容積L3’にいかなる光学要素も存在してはならないことに注意すべきである。そうである時にのみ、補正要素の表面は、いずれか任意の軸上位置に配列することができる。しかし、投影対物器械20の初期設計中は、全ての補正板46aから46dを共役容積L3’内又はその近くにおいて考慮に入れる必要がある。平行平面補正要素46aから46dの光軸に沿ったシフトは、これらの要素の光学特性を修正しないので、最後のレンズL3内のある一定の光学特性の変化が上述の方法で判断されると、補正要素46aから46dの最終軸上位置を判断することができる。
【0041】
波面誤差を補正するためには、当業技術で公知のように、各補正要素46a、46b、46c、46dの片方又は両方の光学面を局所的に変形することができる。拡大縮尺で補正デバイス44を示している図3では、そのような局所表面変形を拡大詳細図の補正要素46aの上側に見ることができ、54、56、及び58で表している。
【0042】
像側の最後のレンズL3が異方性を有する場合には、更に別の最適化において、補正デバイス44に、直交する偏光状態の間の望ましくない位相差を補正することができる構造を補足することができる。図3では、これらの構造は、複屈折層として形成され、60a、60b、60c、及び60dで表している。補正デバイス44内の複屈折層60a、60b、60c、60dは、補正要素46a、46b、46c、46dの下側に付加され、連続する厚み分布、又は図示の実施形態において表しているように光軸OAに対して直角に変化する離散厚み分布を有する。
【0043】
図4は、144で表している補正デバイスを示しており、ここでは、複屈折層は、同様に補正要素146a、146b、146c、及び146dの下側に付加された複屈折構造160a、160b、160c、160によって置換されている。複屈折構造160a、160b、160c、160dでは、複屈折構造160a、160b、160c、160dを形成する部分構造の異なる寸法及び配列により、異なる複屈折効果を得ることができる。
【0044】
図5は、位相差補正のための板260a、260b、260c、260dが、補正要素246a、246b、246c、246dの間で自己支持するように配列された別の実施形態による補正デバイス244を示している。
また、位相差値を補正するのに、通過する光の偏光状態を修正する構造の非常に大きな個数Mを最初に仮定することができる。最適化において、結像特性の小さな改善しか得ることができない構造は、徐々に除去される。このために必要とされる最適化は、スカラー計算ではなく、ベクトル計算に基づいている。
すなわち、補正ユニット44を用いて、共役容積48’内で、スカラー位相補正と、更にベクトル位相差補正とを同時に得ることができる。
【0045】
像側の最後のレンズL3における不均一な透過係数によって引き起こされる収差を補正する必要がある場合には(代替的又は付加的に)、局所的に変化する透過度又は反射度を有する反射又は屈折補正要素を用いることができる。この場合、局所的に変化する透過度又は反射度は、反射(防止)コーティングによって達成することができる。
図4に示している補正デバイス144では、垂直に整列した矢印Aは、複屈折構造160a、160b、160c、160dが付加された補正要素146a、146b、146c、146dをマニピュレータ(詳細には表していない)によって垂直方向に変位させることができることを示している。このようにして、一方では微調節が可能である。他方では、補正デバイス144は、逆を辿って像側の最後のレンズL3において修正される光学特性に適応させることができる。そのような変化は、例えば、高エネルギ投影光13に起因する劣化現象によって引き起こされる可能性がある。
【0046】
図5に示している補正デバイス244では、横に延びる矢印Bは、補正要素246a、246b、246c、246dをビーム経路から取り出し(詳細には表していない方法で)、他の補正要素と交換することができることを示している。このようにして、像側の最後のレンズL3の光学特性の相当量の変化が発生したとしても、他の補正要素を用いて良好な補正を得ることができる。投影対物器械20の寿命の間に最後のレンズL3の特性が変化する場合にも、補正要素を交換することは、同様に有利であると考えられる。
【0047】
図2に示す実施形態では、補正デバイス44の補正要素46a、46b、46c、46dが、像側の最後のレンズL3の容積と共役である容積L3’内で互いに隣接して配列されることを仮定している。
図6は、図2と同様の別の実施形態による投影対物器械320を通る子午断面図である。投影対物器械320は、4つの視野表面、すなわち、マスク平面22、第1の中間像表面342−1、第2の中間像表面342−2、及び像平面28を有する。隣接する視野平面対の間には、第1の瞳表面343−1、第2の瞳表面343−2、及び第3の瞳表面343−3が形成される。単一のレンズによって表している光学システムL301、L302、L303、L304、L305、及びL306は、隣接する視野表面と瞳表面の間に配列される。最後の光学システムL306は、いくつかの個々のレンズを含むことができるが、好ましくは、1つの湾曲レンズのみ、例えば、図2に示すような平凹レンズ又はメニスカスレンズを含む。投影対物器械320の一般設計に関する限り、図2に示している投影対物器械20との主な相違点は、投影対物器械320が、別の中間像表面及び別の瞳表面を含むことである。
【0048】
中間像表面342−1、342−2、及び瞳表面343−1、343−2、343−3は、平面とすることができるが、一般的に、表面は規則的又は不規則に湾曲している。中間像表面342−1、342−2に関しては、これらの表面内に形成される像は、非常に著しい収差を受ける可能性があることを説明しておかねばならない。2つの中間像を有する投影対物器械の現実的な実施形態を図8及び9を参照して以下に説明する。
【0049】
補正要素に関する限り、投影対物器械320は、平行平面板によって形成される2つの補正要素346a、346bが、光学システムL306によって生成される収差の補正に寄与しない他の光学要素によって分離されるように配列される点で、図2に示している投影対物器械20と異なる。2つの補正要素346a、346bの間に配列された光学システムL304は、単一のレンズで構成することができ、又は複数のレンズ及び/又はミラーのような他の光学構成要素を含むことができる。
【0050】
最後の光学システムL306内に像平面28から異なる距離のところに配列された2つの容積要素348a、348bを概略的に例示する。第3の瞳表面343−3は、最後のレンズ系L306の近くに位置するので、第1の容積要素348aは、像平面28により近く位置し、第2の容積要素348bは、第3の瞳表面343−3により近く位置する。
それぞれ、第1の容積要素348a及び第2の容積要素348bと共役である第1及び第2の共役容積要素348a’及び348b’に対しても同じことが当て嵌まる。より具体的には、第1の共役容積要素348a’は、第2の中間像表面342−2により近く配列された第2の補正要素346内に位置する。第2の共役容積要素348b’は、第2の瞳表面343−2により近く位置した第1の補正要素346a内に含まれる。
【0051】
すなわち、最後のレンズ系L306内に含まれる容積要素348a、348bは、投影対物器械320のより大きな部分にわたって分布する共役容積要素348a’、348b’を有する。上述のことは、これがこの特定のレンズ系内の異なる容積要素が、像平面28及び第3の瞳表面343−3との近接性に関して著しく異なることを意味するので、最後のレンズ系L306内で発生する大きい角度の結果である。すなわち、像平面28の近くに位置した容積要素内では、像平面28内の小さい区域に向って収束する光束が通過する。最後のレンズ系L306の物体側表面により近くに位置する他の容積要素内では、かなり大きい区域にわたって分布する像点に収束する光束が通過する。
当然ながら、付加的な補正要素を設けることができ、又は光学システムL304内に含まれる光学構成要素を補正要素として用いることができる。例えば、そのような光学構成要素の光学面には、非回転対称表面変形を与えることができ、又はこの光学面は、図3及び4を参照して上述したように、複屈折(性)層を支持することができる。
【0052】
図7は、更に別の実施形態による投影対物器械420の図6と同様の子午断面図である。図7では、図6に示しているものに対応する構成要素を100だけ増した同じ参照番号で表しており、これらの構成要素の殆どは再度説明しないことにする。投影対物器械420は、第1の補正要素448aが、第2の瞳表面443−2の近くではなく、第1の瞳表面443−1の近くに位置している点においてのみ、図6に示している投影対物器械320とは異なる。第2の共役容積要素448b’は、ここでも最後のレンズ系L406内に含まれる第2の容積要素448bと光学的に共役である。
【0053】
第2の容積要素448bによって引き起こされる収差を補正する補正要素を位置決めするのに適切ではない他の共役容積が瞳表面の近くに存在することに注意すべきである。より具体的には、共役容積要素は、k=0、1、2、...、Nであり、Nが中間像表面の合計数であるk個の中間像表面及びk個の瞳表面により、最後のレンズ系L406内の容積要素から分離すべきである。そうでなければ、各中間像表面及び各瞳表面が、マスク平面22内の特定の点から出射する光束を反転させ、像平面28内の共役点に収束させるので、低質の補正効果しか得ることができない。上述のことは、本出願人に譲渡されたWO2005/121899A1に対応する米国特許出願出願番号第11/570、263号においてより詳細に説明されている。この先行出願の全開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。当然ながら、上述の他の実施形態にも同じ考えが当て嵌まる。
【0054】
図8は、図6に示している投影対物器械320と同様に、2つの中間像表面542−1、542−2、及び3つの瞳表面543−1、543−2、及び543−3を有する現実的な投影対物器械520を通る子午断面図である。最後のレンズL523は、CaF2結晶で作られる。ここでは、この結晶が廉価な処理で成長させられており、そのために様々な結晶欠陥を示し、結果として不均一な材料関連光学特性を有すると仮定する。それにより、ある一定の光学特性の著しい変化が光学要素の容積内で発生するようなより低い品質を有する低屈折率屈折光学要素にも上述の概念を当て嵌めることができることが明らかになる。
【0055】
容積要素548a、548bを投影対物器械520の最後のレンズL523内に概略的に表している。共役容積要素は、548a’、548b’で表している。この特定的な実施形態では、2つの共役容積要素548a’、548b’は、2つのレンズによって分離される。更に、容積要素548a’、548b’は、付加的な補正要素内ではなく、いずれにしても、投影対物器械520の一般設計によって必要とされるレンズ内に収容される。
投影対物器械520は、開口数NA=1.2を有する液浸対物器械として設計される。これは、投影露光装置の作動中に、最後のレンズL523と像平面28の間の空間が液浸液534によって満たされることを意味する。投影対物器械520は、同じく本出願人に譲渡されたWO2005/111689の図3に示す投影対物器械に等しい。
【0056】
図9は、更に別の実施形態による現実的な投影対物器械620を通る子午断面図である。投影対物器械620は、同じく本出願人に譲渡されたWO2005/069055の図21に示す投影対物器械に等しい。
投影対物器械620は、第1及び第2の中間像表面、それぞれ、642−1及び642−2、並びに第1、第2、及び第3の瞳表面、それぞれ、643−1、643−2、及び643−3を有する。第2の瞳表面643−2は、2つの凹ミラー672、674の間に形成され、ミラー672、674は球面表面を有し、ミラー672、674の前部に位置した第1及び第2の中間像表面642−1、642−2の間に配列される。ミラー672、674の直前部には、投影対物器械620の光軸OAのそれぞれ隣接するミラー672及び674が位置決めされた側だけに配列された切頭レンズ要素として設計された負のメニスカスレンズL610、L611が位置決めされる。従って、投影光は、各メニスカスレンズL610、L611を2度通過する。
【0057】
投影対物器械620は、開口数NA=1.2を有する液浸対物器械として設計される。これは、投影露光装置の作動中に、最後のレンズと像平面28の間の空間が液浸液634によって満たされることを意味する。
最後のレンズL620を除いて、全てのレンズは石英ガラスで作られる。最後のレンズL620は、[111]CaF2結晶で作られる。ここでは前と同様に、この結晶が廉価な処理で成長させられており、そのために様々な結晶欠陥を示し、結果として不均一な材料関連光学特性を有すると仮定する。
最後のレンズL620内に含まれる容積要素648a、648bと共役である共役容積要素648a’、648b’は、それぞれ、切頭メニスカスレンズL611及びレンズL607内に含まれ、従って、全体の構成は、図7を参照して上述した投影対物器械420と同様である。
【0058】
以下では、共役平面を判断する非常に直接的な手法を図10を参照してより詳細に説明する。
図10は、720で全体を表している投影対物器械を通る子午断面図である。投影対物器械720は、7つのレンズL701からL707を含み、1つの中間像表面742、及び2つの瞳表面743−1、743−2を有する。
最後のレンズL707は、破線で示している平面770と交わる。投影対物器械720は、平面770と光学的に共役である平面770’を1つのみ含む。第1の瞳表面743−1と中間像表面742の間に配列された共役平面770’の正確な軸上位置は、ある一定のアルゴリズムに従って判断することができる。このアルゴリズムは、2つの特定の光線、すなわち、周囲光線772及び主光線774を利用する。周囲光線772は、投影対物器械720の光軸OAがマスク平面22と交わる点から出射する光線である。主光線774は、マスク平面22内の視野境界上の点から出射する。結像することができる視野が広い程、主光線774が出射する点は光軸OAから遠くに離れる。
【0059】
上述のアルゴリズムによると、一方で光軸OAと、他方でそれぞれ周囲光線772及び主光線774との間の距離Dm及びDpは、平面770の軸上位置において判断される。従って、比R=Dm/Dpが計算される。平面770と共役であるあらゆる平面は、その軸上位置において対応する比R’=Dm’/Dp’が等しい(すなわち、R=R’)ことで特徴付けられる。投影対物器械720では、共役平面770’においてこれが成り立つ。
【0060】
投影対物器械720は、中間像平面を1つのみ有するので、最終レンズL707と交わる各平面に対して共役平面が1つのみ存在する。従って、最後のレンズL707の容積と共役である連続容積が1つのみ存在する。この共役容積の軸上延伸範囲は、最後のレンズL707の頂点と交わる平面と共役である平面の距離によって判断される。最後のレンズL707と交わる複数の平面に対してこのアルゴリズムを繰り返すことにより、光学共役に関して最後のレンズL707の容積を軸上で分解することができる。
【0061】
共役平面及び定数比Rの概念に関する更なる情報は、E.Delano著「1次設計及びy、ダイアグラム」、「Applied Optics」、1963年、第2巻、第12号、1251〜1256頁から収集することができる。
上述のアルゴリズムは、厳密には、近軸領域においてのみ有効である。この領域の外側では、平面は、上記により詳しく説明したように共役の(一般的に湾曲した)不鮮明な表面しか持たない。
【0062】
好ましい実施形態の上記説明は、例として提供したものである。当業者は、提供した開示内容から、本発明及びそれに伴う利点を理解するだけではなく、開示した構造及び方法への明らかな様々な変更及び修正を見出すであろう。従って、本出願人は、全てのそのような変更及び修正を特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の精神及び範囲に収まるものとして含めるように求めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による投影対物器械を有する投影露光装置を通る概略的な子午断面図である。
【図2】図1に示す投影対物器械を通る非常に概略的な子午断面図である。
【図3】第1の実施形態による図2に示す投影対物器械内に配列することができる補正デバイスの側面図である。
【図4】第2の実施形態による図2に示す投影対物器械内に配列することができる補正デバイスの側面図である。
【図5】第3の実施形態による図2に示す投影対物器械内に配列することができる補正デバイスの側面図である。
【図6】別の実施形態による2つの中間像表面を有する投影対物器械を通る概略的子午断面図である。
【図7】図6に示す対物器械と同様ではあるが異なる配列の補正板を有する投影対物器械を通る概略的子午断面図である。
【図8】2つの中間像表面及び3つのミラーを有する別の実施形態による現実的な投影対物器械を通る子午断面図である。
【図9】2つの中間像表面及び2つのミラーを有する更に別の実施形態による現実的な投影対物器械を通る子午断面図である。
【図10】共役平面の概念を示すための更に別の実施形態による投影対物器械を通る概略的子午断面図である。
【図11】投影対物器械内での共役容積の結像を示すための投影対物器械の一部分を通る概略的子午断面図である。
【図12】図11に示す共役容積において光学透過比が如何に低下するかを示すグラフである。
【符号の説明】
【0064】
20 投影対物器械
22 マスク平面
28 像平面
L3 高屈折率屈折光学要素
L3’ 光学的共役な容積
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2006年6月16日出願の米国特許仮出願出願番号第60/814、385号の恩典を請求する。上記先行出願の全開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械に関する。そのような装置は、集積回路及び他の微細構造構成要素の生産に用いられる。特に、本発明は、材料関連光学特性、例えば、光学要素の容積にわたって変化する屈折率又は複屈折性を有する屈折光学要素を有する投影対物器械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積電気回路及び他の微細構造構成要素は、例えば、シリコンウェーハとすることができる適切な基板上に複数の構造化された層を適用することによって生成される。層を構造化するために、まずこれらの基板は、特定の波長、例えば、248nm、193nm、又は157nmの光に感受性を有するフォトレジストで覆われる。次に、この手法で被覆したウェーハは、投影露光装置内で露光される。露光中に、マスク上の構造のパターンが、投影対物器械の助けを得てフォトレジスト上に投影される。結像縮尺は、一般的に1よりも小さいので、そのような投影対物器械は、多くの場合に縮小対物器械とも呼ばれる。
【0003】
フォトレジストが現像された後に、層がマスク上のパターンに従って構造化されるように、ウェーハは、エッチング処理を受ける。その後、尚も残留するフォトレジストは、層の他の部分から除去される。この処理は、全ての層がウェーハ上に付加され終わるまで繰り返される。
投影露光装置の開発において極めて重要な目的の1つは、益々小さくなる寸法の構造をウェーハ上にリソグラフィによって形成することができることである。小さい構造は、そのような装置の助けを得て生成される微細構造構成要素の性能に対して好ましい効果を一般的に有する高い集積密度をもたらす。
【0004】
構造の最小サイズは、主に投影対物器械の分解能に依存する。投影対物器械の分解能は、投影光の波長に比例するので、分解能を小さくする1つの手法は、益々短くなる波長を有する投影光を用いることである。現在用いられている最短波長は、深紫外線(DUV)スペクトル範囲に存在し、193nmに等しいか、又は時には157nmにも等しくなる。
【0005】
分解能は、更に投影対物器械の物体側の開口数に逆比例するので、分解能を小さくする別の手法は、高い屈折率を有する液浸液を液浸空間の中に導入するという考えに基づいており、この液浸液は、投影対物器械の像側の最後の光学要素と、露光されるフォトレジスト又は別の感光層との間に留まる。液浸作動に向けて設計され、従って液浸対物器械とも呼ばれる投影対物器械は、1よりも大きい開口数、例えば、1.3又は1.4の開口数を達成することができる。
【0006】
従来的に、液浸対物器械の像側の最後の光学要素における材料として、アモルファス石英ガラス又はフッ化カルシウム(CaF2)が主に用いられている。石英ガラスは、波長λ=193nmにおいて、ほぼ1.56の屈折率を有し、CaF2は、ほぼ1.50の屈折率を有する。像側の最後の光学要素の屈折率は、液浸対物器械の開口数を制限するので、特に投影対物器械の像側の最後のレンズにおいて、更に高い屈折率を有する材料の使用が考慮されている。例えば、フッ化バリウム(BaF2)又はフッ化ランタン(LaF3)のようなある一定のフッ化物、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)のようなある一定の塩化物、又はマグネシウムスピネル(MgAl2O4)、カルシウムスピネル(CaAl2O4)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12)、又はマグネシウム過スピネル(MgO・3Al2O3)のようなある一定の酸化物が想定されている。
【0007】
しかし、依然として、そのような高屈折率光学材料の生産及び処理に関して多くの問題を解決すべきである。特に、現在これらの材料の重要な光学特性、特に屈折率、複屈折性の均一性、及び時として吸収及び散乱の均一性も、これまで主に用いられてきたアモルファス及び結晶レンズ材料のものよりも劣る。投影光は、特に広範な角度スペクトルでこの要素を通過するので、像側の最後の光学要素における複屈折性は、特に重要である。
【0008】
生産及び処理の問題が早急に解決されることになる見込は低いので、近い将来利用可能になる高屈折率レンズ材料は、これまでに用いられてきたレンズ材料において通常的になっているものよりも均一性及び等方性が低い光学特性しか持たないことになる。
しかし、高分解能液浸対物器械では、像側の最後のレンズにおける不均一かつ異方的な光学特性は、新しい高屈折率材料を直ぐには使用することができないほどの許容できない収差を引き起こす可能性がある。
【0009】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/814、385号
【特許文献2】WO2005/121899A1
【特許文献3】米国特許出願出願番号第11/570、263号
【特許文献4】WO2005/111689
【特許文献5】WO2005/069055
【非特許文献1】A.C.Kak及びM.Slaney著「コンピュータ断層撮影画像生成の原理」、IEEE出版、ニューヨーク、1987年、http://www.slaney.org/pct/
【非特許文献2】H.Hammer他著「光学断層撮影による空間的に不均一な誘電テンソルの復元」、J.Opt.Soc.Am.A、第22巻、第2部、2005年2月、250から255頁
【非特許文献3】E.Delano著「1次設計及びy、ダイアグラム」、「Applied Optics」、1963年、第2巻、第12号、1251〜1256頁
【発明の開示】
【0010】
従って、高屈折率光学材料によって引き起こされる収差が低減されたマイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を達成することが本発明の目的である。
本発明の一態様によると、上述の目的は、193nmの波長において1.6よりも大きい屈折率を有する高屈折率屈折光学要素を有するマイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械によって達成される。この要素は、ある一定の容積、及びこの容積にわたって変化する材料関連光学特性を有する。この光学特性の変化は、対物器械の収差を引き起こす。一実施形態では、少なくとも4つ、好ましくは、少なくとも6つ、更に一層好ましくは、少なくとも8つの光学面が設けられ、これらの光学面は、屈折光学要素の容積と光学的に共役である1つの連続容積内に配列される(又は複数の別々の容積にわたって分布している)。各光学面は、少なくとも1つの補正手段、例えば、局所的に変化する特性を有する表面変形又は複屈折層を含み、これらの補正手段は、光学特性の変化によって引き起こされる収差を少なくとも部分的に補正する。
【0011】
本発明は、内部に適切な補正手段が配列された空間的に十分に分解された共役容積を設けることにより、空間的に不均一な光学特性を確実に補正することができるという考えに基づいている。
補正手段の位置及び配置状態を判断するために、まず屈折光学要素を多数の小さい容積要素に概念的に細分化することができる。次の段階では、容積要素に対して、関連する1つの光学特性(又はいくつかの光学特性)が判断される。更に、別の段階では、これらの容積要素が対物器械の別の部分内へと結像される場所が判断され、すなわち、屈折光学要素の容積と共役である全体の容積が判断される。
【0012】
屈折光学要素が像表面の最後の要素である場合には、照明システムとマスク平面の間に必ず少なくとも1つの共役容積が存在する。しかし、これでは、不均一な屈折率分布によって引き起こされる収差の角度非依存補正という限られた補正しか得ることができない。従って、投影対物器械内に、少なくとも1つの中間像を有することが好ましい。そのような中間像の前部には、内部に補正手段を配列することができる更に別の共役容積が存在する。この場合、角度依存光学特性の不均一性によって引き起こされる収差も、これらの補正手段によって補正することができる。
【0013】
次に、補正要素上の補正手段は、この補正手段が最後の光学要素内で注目している容積要素によって引き起こされる収差成分を少なくとも部分的に補正するように判断される。
一般的に、任意に多くの個数の光学面を屈折光学要素と共役な容積内に含むことは可能でないことになる。従って、最適化処理を実施することができ、その結果として、屈折光学要素内の不均一性に起因する収差を少なくとも実質的に補正する補正手段を含む少数の表面のみが残る。
【0014】
高屈折率屈折光学要素は、この関連では、λ=193nmの波長において1.6を超える屈折率を有するものとして定められる。この値を著しく超える、例えば、1.8よりも大きい、又は更に2.0よりも大きい屈折率を有する屈折要素では、通常そのような材料が、投影対物器械内で収差を引き起こすある一定の光学特性のより一層大きい変化を有するので、本発明は、更に一層有利である。
多くの場合に、対物器械の最後の光学要素では、そのような高屈折率屈折光学要素は、投影対物器械の開口数NAに対して非常に有利な効果を有するので、そのような高屈折率屈折光学要素は、対物器械の最後の光学要素になる。更に、通常、屈折光学要素は、少なくとも1つの湾曲表面を通常はその物体側に有する。作動中に液浸液が対物器械の像平面内に配列された感光層を少なくとも部分的に覆う液浸作動に向けて対物器械が設計される場合には、屈折光学要素は、液浸作動中に液浸液に接触することができる。
【0015】
光学特性の望ましくない変化が屈折光学要素の容積にわたって分布する場合には、対物器械の光軸に対して平行な方向に5mmよりも短い分だけ、好ましくは、2.5mmよりも短い分だけ分離した共役表面を屈折率の容積内に配列することが有利であると考えられる。それにより、ミリメートル領域の寸法を有する屈折光学要素材料内の欠陥に確実に対処することができるような十分な空間分解能が保証される。
ここで注目している不均一光学特性は、屈折率、複屈折性、吸収度、又は散乱量を含むが、これらに限定されない。
【0016】
屈折要素内の不均一な屈折率分布によって引き起こされる波面変形を補正するために、光学面のうちの少なくとも1つは、この少なくとも1つの光学面の非軸対称変形によって形成された補正手段を含むことができる。この変形は、収差に関連する波面変形を補正するように構成される。そのような表面変形は、上記少なくとも1つの表面への局所的材料付加、又はこの表面からの材料除去によって生成することができる。
【0017】
空間的に不均一な複屈折を補正するためには、補正手段は、この補正手段を通過する光の偏光状態を修正すべきである。この目的に対して、補正手段は、複屈折材料、例えば、少なくとも1つの補正手段を含む光学面にわたって局所的に変化する厚みを有する層又は板で作られる構造を含むことができる。追加的又は代替的に、少なくとも1つの補正手段において複屈折構造を用いることができる。
【0018】
不均一な光学特性が吸収度である場合には、少なくとも1つの光学面は、局所的に変化する透過率又は反射率を有するこの少なくとも1つの光学面の一部分又はこの少なくとも1つの光学面に隣接する容積で形成された補正手段を含むことができる。
不均一な光学特性が散乱光量である場合には、少なくとも1つの光学面は、局所的に変化する散乱効果を有するこの少なくとも1つの光学面の一部分又はこの少なくとも1つの光学面に隣接する容積で形成された補正手段を含むことができる。例えば、高屈折率屈折光学要素の一部分の範囲内では、周辺部分よりも散乱が強い可能性がある。従って、補正手段は、屈折光学要素内で強い散乱が発生する部分と光学的に共役である区域内で最小の散乱効果を有する表面によって形成することができる。全体として、それによって補償効果が得られることになる。異なる散乱度は、例えば、局所的に変化する表面粗度を有する光学面を設けることによって生成することができる。
【0019】
対物器械が、N=0、1、2、...であるN個の中間像表面、及びN+1個の瞳表面を有する場合には、少なくとも4つの光学面をk=0、1、2、...、Nであるk個の中間像表面、及びk個の瞳表面で分離することができる。それにより、共役容積要素を通過する光束が奇数の瞳平面又は中間像平面によって反転されないことが保証される。
当然ながら補正要素は、上述の光学特性、又は更に本明細書では明確に言及しない光学特性のうちのいくつか又は全てのものの不均一性によって発生する収差を補正することができるいくつかの異なる種類の補正手段を含むことができる。
【0020】
原理的には、補正手段を含む光学面は、事実上あらゆる軸対称形状を有する支持体上に形成することができる。しかし、これらの表面のうちの1つ、いくつか、又は全てを平行平面板上に形成することが特に有利である。これらの板は、互いに異なる厚み及び異なる距離を有することができる。板のうちの一部又は全ては、これらの板が投影対物器械の光軸に沿って変位可能であるように配列することができる。
【0021】
液浸対物器械の光学設計中には、その後の最適化中に複数の個々の板に分割されるただ1つの肉厚な板を最初に設けることができるので、これらの表面を平行平面板上に形成することが特に好ましい。複数の任意的に変位可能な個々の板への分割は、光学効果を変化させず、又は若干しか変化させず、従って、液浸対物器械の他の光学要素を調整する必要がないか、又は若干しか調整する必要がない。更に、波面変形の補正に適切である非軸対称表面変形を平行平面板上に特に有利に局所的に生成することができる。
代替的に、複数のより肉薄の板を設けることができる。そのような板は、投影対物器械の光学特性に著しい影響を与えることなく、光軸に沿って変位させることができる。
【0022】
両方の場合に、1つの肉厚な板又は複数のより肉薄な板を含む初期設計から始めて、初期設計を別途修正することなく、必要な軸上位置により肉薄な板を位置決めすることができるので(肉厚な板の場合には、肉厚な板を2つ又はそれよりも多くのより肉薄な板に概念的に分割した後に)、投影対物器械の設計は大幅に容易になる。
異なる作動状態、例えば、異なる照明角度分布又は異なるマスクへの適応を可能にするために、1つ又はそれよりも多くの板は、交換ホルダ内に保持することができる。通常は、照明角度分布及びマスクの両方は、光線が屈折光学要素を通過する位置に影響を及ぼすので、照明角度分布及び/又はマスクを変更する時には、屈折光学要素の投影光が実際に通過する部分に特別に適応させた補正手段を有する板を採用することが有利であると考えられる。更に、屈折光学要素の光学特性は、装置を作動させる間の光トリガ劣化現象の結果として変化する可能性があり、従って、補正効果の調整も同様に必要である可能性がある。
補正手段を含む光学面は、必ずしも互いに隣接して配列する必要はない。多くの場合に、これらの表面は、収差を補正しない少なくとも1つのレンズ又は他の光学要素によって分離することがより有利であると考えられる。
【0023】
本発明の別の態様によると、マイクロリソグラフィ露光装置を設計する方法は、
a)−屈折光学要素、及び
−いかなる光学要素も存在せず、かつ高屈折率屈折光学要素の全容積と光学的に共役である共役容積内に少なくとも部分的に配列されるように、対物器械の光軸に沿って概念的にシフトすることができる少なくとも2つの透明な平行平面補正板、
を含む、対物器械の初期設計を判断する段階と、
b)材料関連光学特性が変化し、容積要素内の光学特性の変動が収差を引き起こす、屈折光学要素内の容積要素を判断する段階と、
c)段階b)で判断された容積要素に対して光学的に共役であり、かついかなる光学要素も存在しない共役容積内に位置する共役容積要素を判断する段階と、
d)補正板のうちの少なくとも1つの板の表面が、段階c)で判断された共役容積要素内に配列されるように、この少なくとも1つの板を概念的に位置決めする段階と、
e)収差を少なくとも部分的に低減するこの少なくとも1つの補正板の表面に補正手段を設計する段階と、
を含む。
【0024】
段階a)で言及した少なくとも2つの透明な平行平面補正板は、必要に応じて2つ又はそれよりも多くの個々の板に分割することができる単一のより肉厚な平行平面補正板として形成するように概念的に考えることができる点に注意すべきである。
本発明の様々な特徴及び利点は、添付図面と共に以下の詳細説明を参照することによってより容易に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、全体を10で表しているマイクロリソグラフィ投影露光装置を通る概略的子午断面である。投影露光装置10は、光源14、16で示している照明光学器具、及びフィールドストップ18を含む投影光13を発生させるための照明システム12を含む。図示の実施形態では、投影光は、193nmの波長を有する。当然ながら、他の波長、例えば、156nm又は248nmも同様に想定されている。
【0026】
更に、投影露光装置10は、レンズ、ミラー、又はフィルタ要素のような複数の光学要素を収容する投影対物器械20を含む。簡易化のために、投影対物器械20は、レンズL1、L2、及びL3のみを有するように示されており、投影対物器械のより現実的な実施形態は、図6及び7に示している。投影対物器械20は、投影対物器械20のマスク平面22内に配列されたマスク24を例えばフォトレジストで構成することができる感光層26上へと結像するのに用いられる。層26は、投影対物器械20の像平面28内に配列され、ウェーハ30上に付加される。
【0027】
この実施形態では、支持体30は、変位デバイスの助けを得て像平面28に対して平行に変位させることができる(詳細には表していない手法で)溝状の上開き容器32の底部上に固定される。容器32は、投影露光装置10の作動中に投影対物器械20が像側の最後のレンズL3を液浸液34内に液浸するように液浸液34で満たされる。
給送ライン36及び排出ライン32を通じて、容器32は、循環ポンプ、液浸液34を洗浄するためのフィルタ、及び温度制御ユニットを収容する(それ自体公知であり、従って、詳細には表していない方法で)処理ユニット40に接続される。上述の代わりに、投影対物器械20を液浸するための他の機構を用いることができることを理解すべきである。例えば、液浸液34は、容器内に収容されなくてもよく、その代わりにこの当業技術で公知のように、感光層26に対して直接放流及び吸出することができる。
【0028】
図2は、概略拡大図で図1の投影対物器械20を示している。ここでは、レンズL1が、マスク平面22を中間像平面42上へと結像することが分る。この中間像平面42内に形成されたマスク24の像は、著しい収差によって影響を受ける場合がある。レンズL2及びL3は、中間像42を像平面28上へと結像する。従って、マスク平面22、中間像42、及び像平面28は、互いに光学的に共役である。
マスク平面22のある一定の点から出射する光線は、収差の影響を受ける中間像を通じて像平面28内のある一定の点で収束する。
【0029】
像側の最終レンズL3は、図示の実施形態では平凸レンズであるが、当然ながら他の形状、例えば、凸凹又は更に平行平面も可能である。この実施形態では、像側の最後のレンズL3は、マグネシウムスピネル(MgAl2O4)から成る。
マグネシウムスピネルは、不十分な光学均一性及び純度に起因して、以下に提案する補正手段なしには、そのような投影対物器械において未だ用いることはできない。従って、レンズL3の1つ又はそれよりも多くの光学特性は、僅かであったとしても、レンズL3の容積にわたって変化する。この光学特性は、例えば、屈折率とすることができる。特に短い波形を有する時には、シュリーレンとも呼ばれる不均一な屈折率分布は、通過する投影光において波面変形を引き起こす。光学異方性材料では、屈折率は、依然として、スカラー量、例えば、正常屈折率と異常屈折率の間の平均値として定めることができる。
【0030】
光学異方性レンズ材料、従って、複屈折性レンズ材料の場合には、等しく偏光した互いに平行な光線が、レンズL3を通過する位置の関数として異なる偏光状態変化を受けるように、複屈折テンソルは、更に、位置の関数とすることができる。
レンズL3は、均一的に透明ではなく、すなわち、空間的に変化する透過係数を有するか、又は局所的に変化する散乱特性を有する可能性もある。
【0031】
上述の全ての不均一性の影響は、感光層26上のマスク22の結像が収差によって摂動することである。
これらの収差を補正するために、この実施形態では、4つの補正要素46a、46b、46c、46dを含む補正デバイス44が、レンズL1と中間像平面42の間に配列される。補正要素46a、46b、46c、46dは、好ましくは、投影露光装置10の作動波長において高度に反射防止が為された平行平面透明板である。代替的に、補正要素46a、46b、46c、46dは、望ましくない光反射を低減するために、片方又は両方の側に液体を隣接させることができる。補正要素46a、46b、46c、46dの構造の詳細を図3を参照して以下により詳細に説明する。
【0032】
像側の最後のレンズL3の容積と共役な容積L3’の内側に、補正デバイス44の補正要素46a、46b、46c、46dを示している。
補正要素46a、46b、46c、46dの厚み、配置状態、及びデザインは、以下の方法に従って判断することができる。
最初に、像側の最終レンズL3の光学特性が、3次元位置分解能を用いて測定される。この測定は、例えば、レンズ幾何学形状が計算によって転写される円柱レンズプレフォームに対して実施することができる。その後のレンズ生成及びプレフォームの助けを得て得られたデータのレンズへの計算による転写中には、結晶の外面の方位的配置状態及び配向に特別の注意を払うべきである。一方を結晶からの測定データとし、他方をコンピュータにおける複製とし、これらの間の100μmよりも小さい空間精度は、目的にかなうものである。これに対して適切な方法は、断層撮影型のものである。これらの方法の概論は、A.C.Kak及びM.Slaney著「コンピュータ断層撮影画像生成の原理」、IEEE出版、ニューヨーク、1987年において見ることができ、この文献は、http://www.slaney.org/pct/においてインターネット上でも公開されている。複屈折分布を判断するための断層撮影法は、H.Hammer他著「光学断層撮影による空間的に不均一な誘電テンソルの復元」、J.Opt.Soc.Am.A、第22巻、第2部、2005年2月、250から255頁において説明されている。これらの2つの刊行文献の全開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0033】
次の段階では、像側の最後のレンズL3によって占有される容積は、均一な光学特性を有する複数の容積要素であり、容積要素の屈折率nが、レンズL3内の容積要素のそれぞれの位置に依存する要素へと細分化される。材料が光学異方性材料である場合には、各容積要素に対して、追加的又は代替的に、複屈折の方向を示す空間的配向を有し、複屈折の大きさΔnに応じる短対称軸に対する長対称軸の比率を有する屈折率楕円体を割り当てることができる。各容積要素に対しては、追加的又は代替的に、透過係数、及び/又は補足的なスカラー量として散乱特性を表す量を割り当てることができる。図2では、一例として、単一の容積要素(ここでは立方体形状にある)を点線で示し、48で表している。
【0034】
更に別の段階では、各容積要素に対して、共役容積L3’内の共役容積要素を割り当てる。図2における像側の最後のレンズL3内の容積要素48に対して、容積要素48と共役な容積要素を48’で表している。各容積要素は、レンズL2及びレンズL3の結像に寄与する部分により、共役容積要素上に結像され、この場合の結像縮尺は、横方向及び縦方向に変化する可能性がある。歪曲なしの結像は実際には必要ではない。容積要素48の歪曲像の形成は、容積要素48内のある一定の点から出射する光線が、共役容積要素48’内の単一点において如何に正確には合致しないかを示している図11に概略的に例示している。更に、投影光線は、実際には、図2の光線50、52によって示すように、共役容積要素48’を通過するものとは異なる角度でレンズL3内の容積要素48を通過する。しかし、収差の少なくとも部分補正のためには、同じ光線が共役容積要素48’とレンズL3内の容積要素48との両方を通過するだけで十分である。
【0035】
図12は、ここでは光軸に対して直角に正弦曲線強度分布を有し、空間周波数Fsを有すると仮定する物体が、容積要素48から共役容積要素48’内へと非コヒーレントに結像される場合に、形成された容積要素48の歪曲像の結果として、透過比T=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)が低下することを示している。良好な補正効果では、比Tは、空間周波数Fs=0.5線対毎ミリメートル(Lp/mm)、好ましくは、空間周波数Fs=0.7Lp/mm、更に一層好ましくは、空間周波数Fs=1.0Lp/mmに対して少なくとも30%であるべきである。
【0036】
結像に対するペツヴァル和も非ゼロの場合があるから、最後のレンズL3内の平断面は、共役容積L3’内で任意の湾曲、更には変化する湾曲さえも有しながら結像されると考えられる。この理由から、図2の共役容積要素48’の境界は立方体形状ではなく、不規則に湾曲している。一般的に、より複雑な光学システムを表すレンズL2は、接線及び矢状像シェルがほぼ同じ形状を有し、軸外球面収差に関して接線方向と矢状方向の両方にある程度均一な像位置を可能にするように構成される。
【0037】
複雑な光学システムの開発に用いられる公知のシミュレーションプログラムの助けを得ると、共役容積要素を容易に判断することができる。しかし、像側の最後のレンズL3の容積要素への細分化は、より分り易い表現という理由のみから選択したものであることは理解されるものとする。コンピュータにおける上述の方法の計算上の実施では、レンズL3を支持点の3次元格子網として表すのが最も単純であり、各点に対して、関連する格子位置において測定された1組の光学特性を割り当てる。次に、この3次元支持点網は、中間に存在する光学要素の結像を説明する転写関数の助けを得てレンズL3の共役容積L3’へと変換される。この後、立方格子は、一般的に、空間的に揺らぎのある支持点の非立方格子になる。ここで、容積の重心は、中間像の収差にも関わらず、明瞭に相関し、歪曲した格子を定めるのに役立たせることができる。
【0038】
更に別の段階では、像側の最後のレンズL3の物体空間内の共役容積L3’は、この時点で、個数Nの平行平面板で実質的に充填される。投影対物器械20の初期設計においても設けることができたN個の板は、間隙なく互いに隣接させることができる。N個の板の仮想表面変形により、この時点で、像側の最後のレンズL3内の容積要素内の異なる屈折率によって引き起こされる波面変形を補正することをコンピュータにおいて試みる。可能な限り完全な補正を得るために、板の個数Nは、最初は非常に大きく、例えば、N=20又はN=50になるように選択すべきである。
【0039】
この時点で、N個の板のうちのどれが補正に対して大きな寄与をなさないかに関して分析を行う。これらの板では、その表面を除去し、その光学厚みを隣接する板に加算することができ、又はこれらの板を完全に除去することができ、これは、投影対物器械20の他の光学要素の僅かな適応を必要とするであろう。
表面を完全に除去した場合には、図2に例示的に46a、46b、46c、46dで表した板形状補正要素の配列が導かれる。
異なる厚みの要素の代わりに、光軸OAに沿って等しい厚みの要素を異なる縦方向位置に配列することができる。最も単純な場合には、全ての補正要素は、等しい厚みであり、互いに等しい距離で配列される。
【0040】
最後のレンズL3の全ての部分における変化に対処することができるためには、全共役容積L3’にいかなる光学要素も存在してはならないことに注意すべきである。そうである時にのみ、補正要素の表面は、いずれか任意の軸上位置に配列することができる。しかし、投影対物器械20の初期設計中は、全ての補正板46aから46dを共役容積L3’内又はその近くにおいて考慮に入れる必要がある。平行平面補正要素46aから46dの光軸に沿ったシフトは、これらの要素の光学特性を修正しないので、最後のレンズL3内のある一定の光学特性の変化が上述の方法で判断されると、補正要素46aから46dの最終軸上位置を判断することができる。
【0041】
波面誤差を補正するためには、当業技術で公知のように、各補正要素46a、46b、46c、46dの片方又は両方の光学面を局所的に変形することができる。拡大縮尺で補正デバイス44を示している図3では、そのような局所表面変形を拡大詳細図の補正要素46aの上側に見ることができ、54、56、及び58で表している。
【0042】
像側の最後のレンズL3が異方性を有する場合には、更に別の最適化において、補正デバイス44に、直交する偏光状態の間の望ましくない位相差を補正することができる構造を補足することができる。図3では、これらの構造は、複屈折層として形成され、60a、60b、60c、及び60dで表している。補正デバイス44内の複屈折層60a、60b、60c、60dは、補正要素46a、46b、46c、46dの下側に付加され、連続する厚み分布、又は図示の実施形態において表しているように光軸OAに対して直角に変化する離散厚み分布を有する。
【0043】
図4は、144で表している補正デバイスを示しており、ここでは、複屈折層は、同様に補正要素146a、146b、146c、及び146dの下側に付加された複屈折構造160a、160b、160c、160によって置換されている。複屈折構造160a、160b、160c、160dでは、複屈折構造160a、160b、160c、160dを形成する部分構造の異なる寸法及び配列により、異なる複屈折効果を得ることができる。
【0044】
図5は、位相差補正のための板260a、260b、260c、260dが、補正要素246a、246b、246c、246dの間で自己支持するように配列された別の実施形態による補正デバイス244を示している。
また、位相差値を補正するのに、通過する光の偏光状態を修正する構造の非常に大きな個数Mを最初に仮定することができる。最適化において、結像特性の小さな改善しか得ることができない構造は、徐々に除去される。このために必要とされる最適化は、スカラー計算ではなく、ベクトル計算に基づいている。
すなわち、補正ユニット44を用いて、共役容積48’内で、スカラー位相補正と、更にベクトル位相差補正とを同時に得ることができる。
【0045】
像側の最後のレンズL3における不均一な透過係数によって引き起こされる収差を補正する必要がある場合には(代替的又は付加的に)、局所的に変化する透過度又は反射度を有する反射又は屈折補正要素を用いることができる。この場合、局所的に変化する透過度又は反射度は、反射(防止)コーティングによって達成することができる。
図4に示している補正デバイス144では、垂直に整列した矢印Aは、複屈折構造160a、160b、160c、160dが付加された補正要素146a、146b、146c、146dをマニピュレータ(詳細には表していない)によって垂直方向に変位させることができることを示している。このようにして、一方では微調節が可能である。他方では、補正デバイス144は、逆を辿って像側の最後のレンズL3において修正される光学特性に適応させることができる。そのような変化は、例えば、高エネルギ投影光13に起因する劣化現象によって引き起こされる可能性がある。
【0046】
図5に示している補正デバイス244では、横に延びる矢印Bは、補正要素246a、246b、246c、246dをビーム経路から取り出し(詳細には表していない方法で)、他の補正要素と交換することができることを示している。このようにして、像側の最後のレンズL3の光学特性の相当量の変化が発生したとしても、他の補正要素を用いて良好な補正を得ることができる。投影対物器械20の寿命の間に最後のレンズL3の特性が変化する場合にも、補正要素を交換することは、同様に有利であると考えられる。
【0047】
図2に示す実施形態では、補正デバイス44の補正要素46a、46b、46c、46dが、像側の最後のレンズL3の容積と共役である容積L3’内で互いに隣接して配列されることを仮定している。
図6は、図2と同様の別の実施形態による投影対物器械320を通る子午断面図である。投影対物器械320は、4つの視野表面、すなわち、マスク平面22、第1の中間像表面342−1、第2の中間像表面342−2、及び像平面28を有する。隣接する視野平面対の間には、第1の瞳表面343−1、第2の瞳表面343−2、及び第3の瞳表面343−3が形成される。単一のレンズによって表している光学システムL301、L302、L303、L304、L305、及びL306は、隣接する視野表面と瞳表面の間に配列される。最後の光学システムL306は、いくつかの個々のレンズを含むことができるが、好ましくは、1つの湾曲レンズのみ、例えば、図2に示すような平凹レンズ又はメニスカスレンズを含む。投影対物器械320の一般設計に関する限り、図2に示している投影対物器械20との主な相違点は、投影対物器械320が、別の中間像表面及び別の瞳表面を含むことである。
【0048】
中間像表面342−1、342−2、及び瞳表面343−1、343−2、343−3は、平面とすることができるが、一般的に、表面は規則的又は不規則に湾曲している。中間像表面342−1、342−2に関しては、これらの表面内に形成される像は、非常に著しい収差を受ける可能性があることを説明しておかねばならない。2つの中間像を有する投影対物器械の現実的な実施形態を図8及び9を参照して以下に説明する。
【0049】
補正要素に関する限り、投影対物器械320は、平行平面板によって形成される2つの補正要素346a、346bが、光学システムL306によって生成される収差の補正に寄与しない他の光学要素によって分離されるように配列される点で、図2に示している投影対物器械20と異なる。2つの補正要素346a、346bの間に配列された光学システムL304は、単一のレンズで構成することができ、又は複数のレンズ及び/又はミラーのような他の光学構成要素を含むことができる。
【0050】
最後の光学システムL306内に像平面28から異なる距離のところに配列された2つの容積要素348a、348bを概略的に例示する。第3の瞳表面343−3は、最後のレンズ系L306の近くに位置するので、第1の容積要素348aは、像平面28により近く位置し、第2の容積要素348bは、第3の瞳表面343−3により近く位置する。
それぞれ、第1の容積要素348a及び第2の容積要素348bと共役である第1及び第2の共役容積要素348a’及び348b’に対しても同じことが当て嵌まる。より具体的には、第1の共役容積要素348a’は、第2の中間像表面342−2により近く配列された第2の補正要素346内に位置する。第2の共役容積要素348b’は、第2の瞳表面343−2により近く位置した第1の補正要素346a内に含まれる。
【0051】
すなわち、最後のレンズ系L306内に含まれる容積要素348a、348bは、投影対物器械320のより大きな部分にわたって分布する共役容積要素348a’、348b’を有する。上述のことは、これがこの特定のレンズ系内の異なる容積要素が、像平面28及び第3の瞳表面343−3との近接性に関して著しく異なることを意味するので、最後のレンズ系L306内で発生する大きい角度の結果である。すなわち、像平面28の近くに位置した容積要素内では、像平面28内の小さい区域に向って収束する光束が通過する。最後のレンズ系L306の物体側表面により近くに位置する他の容積要素内では、かなり大きい区域にわたって分布する像点に収束する光束が通過する。
当然ながら、付加的な補正要素を設けることができ、又は光学システムL304内に含まれる光学構成要素を補正要素として用いることができる。例えば、そのような光学構成要素の光学面には、非回転対称表面変形を与えることができ、又はこの光学面は、図3及び4を参照して上述したように、複屈折(性)層を支持することができる。
【0052】
図7は、更に別の実施形態による投影対物器械420の図6と同様の子午断面図である。図7では、図6に示しているものに対応する構成要素を100だけ増した同じ参照番号で表しており、これらの構成要素の殆どは再度説明しないことにする。投影対物器械420は、第1の補正要素448aが、第2の瞳表面443−2の近くではなく、第1の瞳表面443−1の近くに位置している点においてのみ、図6に示している投影対物器械320とは異なる。第2の共役容積要素448b’は、ここでも最後のレンズ系L406内に含まれる第2の容積要素448bと光学的に共役である。
【0053】
第2の容積要素448bによって引き起こされる収差を補正する補正要素を位置決めするのに適切ではない他の共役容積が瞳表面の近くに存在することに注意すべきである。より具体的には、共役容積要素は、k=0、1、2、...、Nであり、Nが中間像表面の合計数であるk個の中間像表面及びk個の瞳表面により、最後のレンズ系L406内の容積要素から分離すべきである。そうでなければ、各中間像表面及び各瞳表面が、マスク平面22内の特定の点から出射する光束を反転させ、像平面28内の共役点に収束させるので、低質の補正効果しか得ることができない。上述のことは、本出願人に譲渡されたWO2005/121899A1に対応する米国特許出願出願番号第11/570、263号においてより詳細に説明されている。この先行出願の全開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。当然ながら、上述の他の実施形態にも同じ考えが当て嵌まる。
【0054】
図8は、図6に示している投影対物器械320と同様に、2つの中間像表面542−1、542−2、及び3つの瞳表面543−1、543−2、及び543−3を有する現実的な投影対物器械520を通る子午断面図である。最後のレンズL523は、CaF2結晶で作られる。ここでは、この結晶が廉価な処理で成長させられており、そのために様々な結晶欠陥を示し、結果として不均一な材料関連光学特性を有すると仮定する。それにより、ある一定の光学特性の著しい変化が光学要素の容積内で発生するようなより低い品質を有する低屈折率屈折光学要素にも上述の概念を当て嵌めることができることが明らかになる。
【0055】
容積要素548a、548bを投影対物器械520の最後のレンズL523内に概略的に表している。共役容積要素は、548a’、548b’で表している。この特定的な実施形態では、2つの共役容積要素548a’、548b’は、2つのレンズによって分離される。更に、容積要素548a’、548b’は、付加的な補正要素内ではなく、いずれにしても、投影対物器械520の一般設計によって必要とされるレンズ内に収容される。
投影対物器械520は、開口数NA=1.2を有する液浸対物器械として設計される。これは、投影露光装置の作動中に、最後のレンズL523と像平面28の間の空間が液浸液534によって満たされることを意味する。投影対物器械520は、同じく本出願人に譲渡されたWO2005/111689の図3に示す投影対物器械に等しい。
【0056】
図9は、更に別の実施形態による現実的な投影対物器械620を通る子午断面図である。投影対物器械620は、同じく本出願人に譲渡されたWO2005/069055の図21に示す投影対物器械に等しい。
投影対物器械620は、第1及び第2の中間像表面、それぞれ、642−1及び642−2、並びに第1、第2、及び第3の瞳表面、それぞれ、643−1、643−2、及び643−3を有する。第2の瞳表面643−2は、2つの凹ミラー672、674の間に形成され、ミラー672、674は球面表面を有し、ミラー672、674の前部に位置した第1及び第2の中間像表面642−1、642−2の間に配列される。ミラー672、674の直前部には、投影対物器械620の光軸OAのそれぞれ隣接するミラー672及び674が位置決めされた側だけに配列された切頭レンズ要素として設計された負のメニスカスレンズL610、L611が位置決めされる。従って、投影光は、各メニスカスレンズL610、L611を2度通過する。
【0057】
投影対物器械620は、開口数NA=1.2を有する液浸対物器械として設計される。これは、投影露光装置の作動中に、最後のレンズと像平面28の間の空間が液浸液634によって満たされることを意味する。
最後のレンズL620を除いて、全てのレンズは石英ガラスで作られる。最後のレンズL620は、[111]CaF2結晶で作られる。ここでは前と同様に、この結晶が廉価な処理で成長させられており、そのために様々な結晶欠陥を示し、結果として不均一な材料関連光学特性を有すると仮定する。
最後のレンズL620内に含まれる容積要素648a、648bと共役である共役容積要素648a’、648b’は、それぞれ、切頭メニスカスレンズL611及びレンズL607内に含まれ、従って、全体の構成は、図7を参照して上述した投影対物器械420と同様である。
【0058】
以下では、共役平面を判断する非常に直接的な手法を図10を参照してより詳細に説明する。
図10は、720で全体を表している投影対物器械を通る子午断面図である。投影対物器械720は、7つのレンズL701からL707を含み、1つの中間像表面742、及び2つの瞳表面743−1、743−2を有する。
最後のレンズL707は、破線で示している平面770と交わる。投影対物器械720は、平面770と光学的に共役である平面770’を1つのみ含む。第1の瞳表面743−1と中間像表面742の間に配列された共役平面770’の正確な軸上位置は、ある一定のアルゴリズムに従って判断することができる。このアルゴリズムは、2つの特定の光線、すなわち、周囲光線772及び主光線774を利用する。周囲光線772は、投影対物器械720の光軸OAがマスク平面22と交わる点から出射する光線である。主光線774は、マスク平面22内の視野境界上の点から出射する。結像することができる視野が広い程、主光線774が出射する点は光軸OAから遠くに離れる。
【0059】
上述のアルゴリズムによると、一方で光軸OAと、他方でそれぞれ周囲光線772及び主光線774との間の距離Dm及びDpは、平面770の軸上位置において判断される。従って、比R=Dm/Dpが計算される。平面770と共役であるあらゆる平面は、その軸上位置において対応する比R’=Dm’/Dp’が等しい(すなわち、R=R’)ことで特徴付けられる。投影対物器械720では、共役平面770’においてこれが成り立つ。
【0060】
投影対物器械720は、中間像平面を1つのみ有するので、最終レンズL707と交わる各平面に対して共役平面が1つのみ存在する。従って、最後のレンズL707の容積と共役である連続容積が1つのみ存在する。この共役容積の軸上延伸範囲は、最後のレンズL707の頂点と交わる平面と共役である平面の距離によって判断される。最後のレンズL707と交わる複数の平面に対してこのアルゴリズムを繰り返すことにより、光学共役に関して最後のレンズL707の容積を軸上で分解することができる。
【0061】
共役平面及び定数比Rの概念に関する更なる情報は、E.Delano著「1次設計及びy、ダイアグラム」、「Applied Optics」、1963年、第2巻、第12号、1251〜1256頁から収集することができる。
上述のアルゴリズムは、厳密には、近軸領域においてのみ有効である。この領域の外側では、平面は、上記により詳しく説明したように共役の(一般的に湾曲した)不鮮明な表面しか持たない。
【0062】
好ましい実施形態の上記説明は、例として提供したものである。当業者は、提供した開示内容から、本発明及びそれに伴う利点を理解するだけではなく、開示した構造及び方法への明らかな様々な変更及び修正を見出すであろう。従って、本出願人は、全てのそのような変更及び修正を特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の精神及び範囲に収まるものとして含めるように求めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による投影対物器械を有する投影露光装置を通る概略的な子午断面図である。
【図2】図1に示す投影対物器械を通る非常に概略的な子午断面図である。
【図3】第1の実施形態による図2に示す投影対物器械内に配列することができる補正デバイスの側面図である。
【図4】第2の実施形態による図2に示す投影対物器械内に配列することができる補正デバイスの側面図である。
【図5】第3の実施形態による図2に示す投影対物器械内に配列することができる補正デバイスの側面図である。
【図6】別の実施形態による2つの中間像表面を有する投影対物器械を通る概略的子午断面図である。
【図7】図6に示す対物器械と同様ではあるが異なる配列の補正板を有する投影対物器械を通る概略的子午断面図である。
【図8】2つの中間像表面及び3つのミラーを有する別の実施形態による現実的な投影対物器械を通る子午断面図である。
【図9】2つの中間像表面及び2つのミラーを有する更に別の実施形態による現実的な投影対物器械を通る子午断面図である。
【図10】共役平面の概念を示すための更に別の実施形態による投影対物器械を通る概略的子午断面図である。
【図11】投影対物器械内での共役容積の結像を示すための投影対物器械の一部分を通る概略的子午断面図である。
【図12】図11に示す共役容積において光学透過比が如何に低下するかを示すグラフである。
【符号の説明】
【0064】
20 投影対物器械
22 マスク平面
28 像平面
L3 高屈折率屈折光学要素
L3’ 光学的共役な容積
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械であって、
a)193nmの波長で1.6よりも大きい屈折率と、容積と、該容積にわたって変化する材料関連光学特性とを有し、該光学特性の変動が収差を引き起こす高屈折率屈折光学要素、及び
b)前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である少なくとも1つの容積内に配列され、該光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を各表面が含む少なくとも4つの光学面、
を含むことを特徴とする対物器械。
【請求項2】
前記屈折光学要素の前記屈折率は、193nmの波長で1.8よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の対物器械。
【請求項3】
前記屈折光学要素は、対物器械の最後の光学要素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の対物器械。
【請求項4】
前記屈折光学要素は、少なくとも1つの湾曲表面を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項5】
液浸作動に対して設計され、作動中に、液浸液が、対物器械の像平面内に配列された感光層を少なくとも部分的に覆うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項6】
前記屈折光学要素は、前記液浸作動中に前記液浸液と接触することを特徴とする請求項5に記載の対物器械。
【請求項7】
前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である前記容積内に配列された少なくとも6つの光学面を含み、
前記6つの光学面の各々は、前記光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項8】
前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である前記容積内に配列された少なくとも8つの光学面を含み、
前記8つの光学面の各々は、前記光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の対物器械。
【請求項9】
少なくとも1つの補正手段が、前記屈折要素内の第1の容積要素に閉じ込められた前記光学特性の変動によって引き起こされる前記収差の成分を少なくとも部分的に補正するように決められ、
前記第1の容積要素は、前記少なくとも1つの補正手段が位置する第2の容積要素と共役である、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項10】
前記光学面は、前記屈折光学要素の前記容積内に配列された共役表面を有し、
これらの共役表面は、対物器械の光軸に平行な方向に5mm未満だけ離間している、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項11】
前記光学面は、前記屈折光学要素の前記容積内に配列された共役表面を有し、
これらの共役表面は、対物器械の光軸に平行な方向に2.5mm未満だけ離間している、
ことを特徴とする請求項10に記載の対物器械。
【請求項12】
前記光学特性は、前記屈折率であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項13】
前記光学面の少なくとも1つは、該少なくとも1つの光学面の非軸対称変形によって形成された補正手段を含み、
前記変形は、前記収差に関連する波面変形を補正するように構成される、
ことを特徴とする請求項12に記載の対物器械。
【請求項14】
前記表面変形は、前記少なくとも1つの表面への局所的材料付加又は該表面からの材料除去によって生成されることを特徴とする請求項13に記載の対物器械。
【請求項15】
前記光学特性は、複屈折性であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項16】
少なくとも1つの補正手段が、それを通過する光の偏光状態を修正することを特徴とする請求項15に記載の対物器械。
【請求項17】
前記少なくとも1つの補正手段は、複屈折材料で作られた構造体を含むことを特徴とする請求項16に記載の対物器械。
【請求項18】
前記構造体は、前記少なくとも1つの補正手段を含む前記光学面にわたって局所的に変化する厚みを有する層又は板であることを特徴とする請求項17に記載の対物器械。
【請求項19】
前記少なくとも1つの補正手段は、複屈折性構造体を含むことを特徴とする請求項17に記載の対物器械。
【請求項20】
前記光学特性は、吸収度であることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項21】
少なくとも1つの光学面が、局所的に変化する透過率又は反射率を有する該少なくとも1つ光学面の一部分又は該少なくとも1つの光学面に隣接する容積によって形成された補正手段を含むことを特徴とする請求項20に記載の対物器械。
【請求項22】
前記光学特性は、散乱光の量であることを特徴とする請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項23】
少なくとも1つの光学面が、局所的に変化する散乱効果を有する該少なくとも1つの光学面の一部分又は該少なくとも1つの光学面に隣接する容積によって形成された補正手段を含むことを特徴とする請求項22に記載の対物器械。
【請求項24】
前記少なくとも4つの光学面のうちの少なくとも2つは、前記収差を補正しない少なくとも1つの光学要素によって分離されていることを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項25】
N=0、1、2、...としたN個の中間像表面及びN+1個の瞳表面を有することを特徴とする請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項26】
前記少なくとも4つの光学面のうちの少なくとも2つは、k=0、1、2、...、Nとしたk個の中間像表面及びk個の瞳表面によって分離されていることを特徴とする請求項25に記載の対物器械。
【請求項27】
前記屈折光学要素は、フッ化物、塩化物、又は酸化物から成ることを特徴とする請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項28】
前記少なくとも4つの光学面が板上に形成された少なくとも2つの平行平面板を含むことを特徴とする請求項1から請求項27のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項29】
前記少なくとも2つの板は、異なる厚みを有することを特徴とする請求項28に記載の対物器械。
【請求項30】
前記少なくとも4つの光学面が板上に形成された少なくとも6つの平行平面板を含むことを特徴とする請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項31】
少なくとも1つの板が、対物器械の光軸に沿って変位可能であるように配列されていることを特徴とする請求項28から請求項30のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項32】
少なくとも1つの板が、交換ホルダに互換可能に受け取られることを特徴とする請求項28から請求項31のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項33】
前記少なくとも1つの補正手段は、第1の平面に位置するか又はそれと交わり、該第1の平面は、対物器械の光軸に対して直角であり、かつ第2の平面と共役であり、該第2の平面は、同じく該光軸に対して直角であり、かつ前記屈折光学要素の前記容積と交わっていることを特徴とする請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項34】
比R=Dp/Dmが、前記第1の平面及び前記第2の平面において少なくとも実質的に同じであり、ここで、Dpは、対物器械によって結像される視野の境界上の点から出射する主光線と前記光軸の間の距離であり、Dmは、対物器械によって結像される該視野内の該光軸上の点から出射する周囲光線と該光軸の間のものであることを特徴とする請求項33に記載の対物器械。
【請求項35】
前記比Rは、前記第1の平面及び前記第2の平面において5%未満だけ異なっていることを特徴とする請求項34に記載の対物器械。
【請求項36】
前記比Rは、前記第1の平面及び前記第2の平面において2%未満だけ異なっていることを特徴とする請求項35に記載の対物器械。
【請求項37】
0.5Lp/mmの空間周波数Fsを有し、かつ前記屈折光学要素内に位置する物体が、該屈折光学要素の前記容積と共役である前記少なくとも1つの容積内にインコヒーレントに結像される時に、30%よりも大きい透過比Ctが得られることを特徴とする請求項1から請求項36のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項38】
Fsは、0.7Lp/mmであることを特徴とする請求項37に記載の対物器械。
【請求項39】
Fsは、1.0Lp/mmであることを特徴とする請求項37に記載の対物器械。
【請求項40】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の対物器械であって、
a)要素の容積にわたって変化する複屈折性を有し、該複屈折性の変動が収差を引き起こす屈折光学要素、及び
b)少なくとも2つの透明な光学補正要素、
を含み、
−各補正要素の少なくとも一部分が、前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である容積内に配列されており、
−各補正要素は、少なくとも1つの補正手段を含み、該補正手段は、前記屈折光学要素の前記複屈折性によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正し、かつそれを通過する光の偏光状態を修正する、
ことを特徴とする対物器械。
【請求項41】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の対物器械であって、
a)要素の容積にわたって変化する吸収度を有し、該吸収度の変動が収差を引き起こす屈折光学要素、及び
b)少なくとも2つの透明な光学補正要素、
を含み、
−各補正要素の少なくとも一部分が、前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である容積内に配列されており、
−各補正要素は、局所的に変化する透過率又は反射率を有する部分を含み、該部分は、前記屈折光学要素における前記吸収度の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する、
ことを特徴とする対物器械。
【請求項42】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の対物器械であって、
a)要素の容積にわたって変化する光学特性を有し、かつ該光学特性の変動が収差を引き起こす屈折光学要素、及び
b)複数の隣接する平行平面透明光学補正要素、
を含み、
−各補正要素の少なくとも一部分が、前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である容積内に配列されており、
−各補正要素は、前記光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を含む、
ことを特徴とする対物器械。
【請求項43】
請求項2から請求項39のいずれか1項に記載の特徴を含むことを特徴とする請求項40から請求項42のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項44】
マイクロリソグラフィ露光装置の投影対物器械を設計する方法であって、
a)−屈折光学要素と、
−いかなる光学要素も存在せずに高屈折率の前記屈折光学要素の全容積と光学的に共役である共役容積内に少なくとも部分的に配列されるように、対物器械の光軸に沿って概念的にシフトすることができる少なくとも2つの透明な平行平面補正板と、
を含む対物器械の初期設計を判断する段階、
b)容積要素内で材料関連光学特性が変化し、容積要素内の該光学特性の変動が収差を引き起こす前記屈折光学要素内の容積要素を判断する段階、
c)段階b)で判断された前記容積要素に対して光学的に共役であり、かついかなる光学要素も存在しない前記共役容積に位置する、共役容積要素を判断する段階、
d)前記補正板の少なくとも1つを、該少なくとも1つの板の表面が段階c)で判断された前記共役容積要素内に配列されるように概念的に位置決めする段階、及び
e)前記収差を少なくとも部分的に低減する前記少なくとも1つの補正板の前記表面において補正手段を設計する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
前記屈折光学要素は、193nmの波長で1.6よりも大きい屈折率を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記屈折光学要素の前記屈折率は、1.8よりも大きいことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記屈折光学要素は、前記対物器械の最後の光学要素であることを特徴とする請求項44から請求項46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記屈折光学要素は、少なくとも1つの湾曲表面を有することを特徴とする請求項44から請求項47のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項1】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械であって、
a)193nmの波長で1.6よりも大きい屈折率と、容積と、該容積にわたって変化する材料関連光学特性とを有し、該光学特性の変動が収差を引き起こす高屈折率屈折光学要素、及び
b)前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である少なくとも1つの容積内に配列され、該光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を各表面が含む少なくとも4つの光学面、
を含むことを特徴とする対物器械。
【請求項2】
前記屈折光学要素の前記屈折率は、193nmの波長で1.8よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の対物器械。
【請求項3】
前記屈折光学要素は、対物器械の最後の光学要素であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の対物器械。
【請求項4】
前記屈折光学要素は、少なくとも1つの湾曲表面を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項5】
液浸作動に対して設計され、作動中に、液浸液が、対物器械の像平面内に配列された感光層を少なくとも部分的に覆うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項6】
前記屈折光学要素は、前記液浸作動中に前記液浸液と接触することを特徴とする請求項5に記載の対物器械。
【請求項7】
前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である前記容積内に配列された少なくとも6つの光学面を含み、
前記6つの光学面の各々は、前記光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項8】
前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である前記容積内に配列された少なくとも8つの光学面を含み、
前記8つの光学面の各々は、前記光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の対物器械。
【請求項9】
少なくとも1つの補正手段が、前記屈折要素内の第1の容積要素に閉じ込められた前記光学特性の変動によって引き起こされる前記収差の成分を少なくとも部分的に補正するように決められ、
前記第1の容積要素は、前記少なくとも1つの補正手段が位置する第2の容積要素と共役である、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項10】
前記光学面は、前記屈折光学要素の前記容積内に配列された共役表面を有し、
これらの共役表面は、対物器械の光軸に平行な方向に5mm未満だけ離間している、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項11】
前記光学面は、前記屈折光学要素の前記容積内に配列された共役表面を有し、
これらの共役表面は、対物器械の光軸に平行な方向に2.5mm未満だけ離間している、
ことを特徴とする請求項10に記載の対物器械。
【請求項12】
前記光学特性は、前記屈折率であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項13】
前記光学面の少なくとも1つは、該少なくとも1つの光学面の非軸対称変形によって形成された補正手段を含み、
前記変形は、前記収差に関連する波面変形を補正するように構成される、
ことを特徴とする請求項12に記載の対物器械。
【請求項14】
前記表面変形は、前記少なくとも1つの表面への局所的材料付加又は該表面からの材料除去によって生成されることを特徴とする請求項13に記載の対物器械。
【請求項15】
前記光学特性は、複屈折性であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項16】
少なくとも1つの補正手段が、それを通過する光の偏光状態を修正することを特徴とする請求項15に記載の対物器械。
【請求項17】
前記少なくとも1つの補正手段は、複屈折材料で作られた構造体を含むことを特徴とする請求項16に記載の対物器械。
【請求項18】
前記構造体は、前記少なくとも1つの補正手段を含む前記光学面にわたって局所的に変化する厚みを有する層又は板であることを特徴とする請求項17に記載の対物器械。
【請求項19】
前記少なくとも1つの補正手段は、複屈折性構造体を含むことを特徴とする請求項17に記載の対物器械。
【請求項20】
前記光学特性は、吸収度であることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項21】
少なくとも1つの光学面が、局所的に変化する透過率又は反射率を有する該少なくとも1つ光学面の一部分又は該少なくとも1つの光学面に隣接する容積によって形成された補正手段を含むことを特徴とする請求項20に記載の対物器械。
【請求項22】
前記光学特性は、散乱光の量であることを特徴とする請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項23】
少なくとも1つの光学面が、局所的に変化する散乱効果を有する該少なくとも1つの光学面の一部分又は該少なくとも1つの光学面に隣接する容積によって形成された補正手段を含むことを特徴とする請求項22に記載の対物器械。
【請求項24】
前記少なくとも4つの光学面のうちの少なくとも2つは、前記収差を補正しない少なくとも1つの光学要素によって分離されていることを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項25】
N=0、1、2、...としたN個の中間像表面及びN+1個の瞳表面を有することを特徴とする請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項26】
前記少なくとも4つの光学面のうちの少なくとも2つは、k=0、1、2、...、Nとしたk個の中間像表面及びk個の瞳表面によって分離されていることを特徴とする請求項25に記載の対物器械。
【請求項27】
前記屈折光学要素は、フッ化物、塩化物、又は酸化物から成ることを特徴とする請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項28】
前記少なくとも4つの光学面が板上に形成された少なくとも2つの平行平面板を含むことを特徴とする請求項1から請求項27のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項29】
前記少なくとも2つの板は、異なる厚みを有することを特徴とする請求項28に記載の対物器械。
【請求項30】
前記少なくとも4つの光学面が板上に形成された少なくとも6つの平行平面板を含むことを特徴とする請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項31】
少なくとも1つの板が、対物器械の光軸に沿って変位可能であるように配列されていることを特徴とする請求項28から請求項30のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項32】
少なくとも1つの板が、交換ホルダに互換可能に受け取られることを特徴とする請求項28から請求項31のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項33】
前記少なくとも1つの補正手段は、第1の平面に位置するか又はそれと交わり、該第1の平面は、対物器械の光軸に対して直角であり、かつ第2の平面と共役であり、該第2の平面は、同じく該光軸に対して直角であり、かつ前記屈折光学要素の前記容積と交わっていることを特徴とする請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項34】
比R=Dp/Dmが、前記第1の平面及び前記第2の平面において少なくとも実質的に同じであり、ここで、Dpは、対物器械によって結像される視野の境界上の点から出射する主光線と前記光軸の間の距離であり、Dmは、対物器械によって結像される該視野内の該光軸上の点から出射する周囲光線と該光軸の間のものであることを特徴とする請求項33に記載の対物器械。
【請求項35】
前記比Rは、前記第1の平面及び前記第2の平面において5%未満だけ異なっていることを特徴とする請求項34に記載の対物器械。
【請求項36】
前記比Rは、前記第1の平面及び前記第2の平面において2%未満だけ異なっていることを特徴とする請求項35に記載の対物器械。
【請求項37】
0.5Lp/mmの空間周波数Fsを有し、かつ前記屈折光学要素内に位置する物体が、該屈折光学要素の前記容積と共役である前記少なくとも1つの容積内にインコヒーレントに結像される時に、30%よりも大きい透過比Ctが得られることを特徴とする請求項1から請求項36のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項38】
Fsは、0.7Lp/mmであることを特徴とする請求項37に記載の対物器械。
【請求項39】
Fsは、1.0Lp/mmであることを特徴とする請求項37に記載の対物器械。
【請求項40】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の対物器械であって、
a)要素の容積にわたって変化する複屈折性を有し、該複屈折性の変動が収差を引き起こす屈折光学要素、及び
b)少なくとも2つの透明な光学補正要素、
を含み、
−各補正要素の少なくとも一部分が、前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である容積内に配列されており、
−各補正要素は、少なくとも1つの補正手段を含み、該補正手段は、前記屈折光学要素の前記複屈折性によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正し、かつそれを通過する光の偏光状態を修正する、
ことを特徴とする対物器械。
【請求項41】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の対物器械であって、
a)要素の容積にわたって変化する吸収度を有し、該吸収度の変動が収差を引き起こす屈折光学要素、及び
b)少なくとも2つの透明な光学補正要素、
を含み、
−各補正要素の少なくとも一部分が、前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である容積内に配列されており、
−各補正要素は、局所的に変化する透過率又は反射率を有する部分を含み、該部分は、前記屈折光学要素における前記吸収度の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する、
ことを特徴とする対物器械。
【請求項42】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の対物器械であって、
a)要素の容積にわたって変化する光学特性を有し、かつ該光学特性の変動が収差を引き起こす屈折光学要素、及び
b)複数の隣接する平行平面透明光学補正要素、
を含み、
−各補正要素の少なくとも一部分が、前記屈折光学要素の前記容積と光学的に共役である容積内に配列されており、
−各補正要素は、前記光学特性の前記変動によって引き起こされる前記収差を少なくとも部分的に補正する少なくとも1つの補正手段を含む、
ことを特徴とする対物器械。
【請求項43】
請求項2から請求項39のいずれか1項に記載の特徴を含むことを特徴とする請求項40から請求項42のいずれか1項に記載の対物器械。
【請求項44】
マイクロリソグラフィ露光装置の投影対物器械を設計する方法であって、
a)−屈折光学要素と、
−いかなる光学要素も存在せずに高屈折率の前記屈折光学要素の全容積と光学的に共役である共役容積内に少なくとも部分的に配列されるように、対物器械の光軸に沿って概念的にシフトすることができる少なくとも2つの透明な平行平面補正板と、
を含む対物器械の初期設計を判断する段階、
b)容積要素内で材料関連光学特性が変化し、容積要素内の該光学特性の変動が収差を引き起こす前記屈折光学要素内の容積要素を判断する段階、
c)段階b)で判断された前記容積要素に対して光学的に共役であり、かついかなる光学要素も存在しない前記共役容積に位置する、共役容積要素を判断する段階、
d)前記補正板の少なくとも1つを、該少なくとも1つの板の表面が段階c)で判断された前記共役容積要素内に配列されるように概念的に位置決めする段階、及び
e)前記収差を少なくとも部分的に低減する前記少なくとも1つの補正板の前記表面において補正手段を設計する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
前記屈折光学要素は、193nmの波長で1.6よりも大きい屈折率を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記屈折光学要素の前記屈折率は、1.8よりも大きいことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記屈折光学要素は、前記対物器械の最後の光学要素であることを特徴とする請求項44から請求項46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記屈折光学要素は、少なくとも1つの湾曲表面を有することを特徴とする請求項44から請求項47のいずれか1項に記載の対物器械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−540586(P2009−540586A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514709(P2009−514709)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005297
【国際公開番号】WO2007/144193
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・アーゲー (435)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005297
【国際公開番号】WO2007/144193
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・アーゲー (435)
【Fターム(参考)】
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