マイクロリソグラフィ投影露光装置用の照明系
多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータによって傾斜させることができるミラーとミラーのための駆動電子機器とを有するマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系、及びこのミラーを駆動する方法を提供する。マイクロリソグラフィ投影露光装置のための光学系は、少なくとも1つのアクチュエータによって傾斜させることができて多ミラーアレイで配置されたミラーを提示する。更に、照明系は、第1の解像度を有する粗いデジタル/アナログ変換器(68)と、第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する細かいデジタル/アナログ変換器(70)と、2つのデジタル/アナログ変換器(68、70)によって出力される出力量を加算することができて全体量をもたらす加算器(72)とを提示するミラーのための駆動電子機器を提示する。全体量は、ミラーの少なくとも1つのアクチュエータに少なくとも間接的に印加することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータによって傾斜させることができるミラーとミラーのための駆動電子機器とを有するマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系、及び同じくこのミラーを駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積電子回路及び他の微細構造化構成要素は、例えば、シリコンウェーハとすることができる適切な基板上にいくつかの構造化層を付加することによって製造される。層を構造化するために、最初に、この層は、ある一定の波長領域に関連する光、例えば、深紫外スペクトル領域(DUV)内の光に敏感なフォトレジストで覆われる。次に、このようにして被覆されたウェーハが、マイクロリソグラフィ投影露光装置内で露光される。この工程では、マスク上に配置された構造のパターンが、投影対物系を利用してフォトレジスト上に結像される。この工程では、再現スケールが一般的に1よりも小さいので、そのような種類の投影対物系は、多くの場合に縮小対物系とも称される。
フォトレジストが現像された後には、ウェーハはエッチング処理を受け、その結果、層は、マスク上のパターンに従って構造化される。その後、残置されたフォトレジストが、層の残りの部分から除去される。全ての層がウェーハ上に付加され終わるまで、この工程が繰り返される。
【0003】
用いられる投影露光装置の性能は、投影対物系の結像特性だけでなく、投影光でマスクを照明する照明系にも依存する。この目的で、照明系は、光源、例えば、パルスモードで作動するレーザ、並びに光源によって生成された光からマスク上の視野点上に収束する光束を生成するいくつかの光学要素を含む。この点に関して、光束は、一般的に投影対物系に適合するある一定の特性を有するべきである。
これらの特性は、特に、各々がマスク平面内のある点に収束する光束の角度分布を含む。「角度分布」という用語は、光束の個々の光線がマスク平面内の関連の点の上に入射する際の異なる方向に光束の合計強度が如何に配分されるかを表している。角度分布が、マスクに収容されるパターンに特定的に適応する場合には、このパターンをフォトレジストで覆われたウェーハ上に高い結像品質を伴って結像することができる。
【0004】
最近になって、マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系では、照明系の投影光の個々の部分ビームを異なる方向に偏向するために、複数の個々に駆動可能なマイクロミラーを含む多ミラーアレイ(MMA、マイクロミラーアレイ又はミラーマトリックスとも呼ぶ)の使用が考慮されるように構成されている。例えば、このようにして、投影光のそれぞれの部分光ビームは、マイクロミラーを利用して照明系の瞳平面内の異なる位置に誘導することができる。照明系の瞳平面内の強度分布は、投影光の角度分布に決定的に影響するので、マイクロミラーを個々に傾斜させることによってより柔軟に角度分布を設定することができる。特に、瞳平面内の環状領域又はいくつかの極が照明されるいわゆる非従来的照明環境に関連して、MMAの使用は、角度分布をそれぞれの状況、特に、投影されるマスクに、例えば、回折光学要素を交換することを必要とせずに適応させることを可能にする。
【0005】
多くの場合に、そのようなMMAは、半導体技術から公知であるもののようなリソグラフィ工程を用いてマイクロ電気機械系(MEMS)として製造される。この技術による一般的な構造サイズは、一部の場合には数マイクロメートルに達する。そのような系の公知の代表例は、例えば、2つの端部位置間で軸の回りにデジタル的に傾斜させることができるマイクロミラーを有するMMAである。そのようなデジタルMMAは、画像又はフィルムの再現のためのデジタルプロジェクタに用いられる。
【0006】
しかし、マイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系における用途では、マイクロミラーは、角度作動範囲内で準連続的に高精度であらゆる傾斜角を取ることができなければならない。この場合、マイクロミラーの傾斜を引き起こすアクチュエータは、例えば、静電アクチュエータ又は電磁アクチュエータとして構成されたものとすることができる。従って、公知の静電アクチュエータの場合には、マイクロミラーの傾斜は、例えば、固定された制御電極とマイクロミラーの背面上に取り付けられたミラー電極とが、印加電圧に依存して可変強度で引力を作用するということに基づいている。その結果、適切な懸架器及びいくつかのアクチュエータを用いて、マイクロミラーを任意の傾斜角だけ傾斜させることができる。
【0007】
マイクロミラーを傾斜させる間の精度に対する高い要求の理由から、これらのアクチュエータは、駆動電子機器によって極めて精密に駆動する必要がある。この点に関して、通常はミラー毎にいくつかのアクチュエータを用いて駆動されるMMAにおける複数の個々のミラー、例えば、1000個の個々のミラーのために、そのような駆動電子機器は、効率的に設計すべきであることが分かる。
特に、例えば、極めて小さい空間に配置されたドライバの静電アクチュエータを用いてMMAを駆動するためには、複数の異なる出力電圧値を高電圧で生成する必要がある。従来技術によると、望ましい出力電圧は、供給電圧を用いて高電圧が供給されるトランジスタ及び抵抗器を利用して従来のドライバ回路、いわゆるクラスA回路内で生成される。しかし、その原理に起因して、クラスA回路では、静的漏れ電流がトランジスタ及び抵抗器を通じて接地へと常に流れる。その結果、熱の発生と共にかなりの電力消散が生じる。従って、電力消散の理由から、抵抗器は、非常に高い抵抗を有さねばならず、その結果、これらの抵抗器は、ドライバ内及び従ってドライバ電子機器内で大きい空間要件を有する。1000個を超えるミラーを有する大きいMMAの駆動の場合には、ドライバを極めて小さい空間内でMMAに可能な限り近くに位置決めすべきであるから、この空間要件は、特に、不利な効果を有する。
【0008】
上述の問題に遭遇する1つの可能性が、US6,940,629B1に説明されている。この特許では、MMAミラーの駆動は、出力電流が外部及び/又は内部のコンデンサー上で積分される積分ドライバ段を用いて行われる。この場合の出力電流は、デジタル/アナログ変換によってデジタル値から生成される基準電流に比例する。この点に関して、デジタル値は、上述の特許にはいかなる詳細内容も明示されていないモニタリングユニットによって生成される。この文献によると、マイクロミラーのアクチュエータに対する出力電圧の設定は、高電圧要素によって積分器に供給される調節可能な持続時間の基準電流及び電流の通電持続時間の選択によって確立されるそれぞれのマイクロミラーを調節するのに望ましい電圧によって得られる。この場合、基準電流の通電持続時間は、デジタル制御信号を用いて確立される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US6,940,629B1
【特許文献2】WO2008/095695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータを用いて傾斜させることができるミラーとミラーのための駆動電子機器とを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系、及び同じく可能な限り精密な駆動を可能にするミラーをモニタ及び/又は駆動する方法を指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
照明系に関して、この目的は、本発明により、第1の解像度を有する粗いデジタル/アナログ変換器と、第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する細かいデジタル/アナログ変換器と、2つのデジタル/アナログ変換器によって出力された出力量を加算して、ミラーが有する少なくとも1つのアクチュエータに少なくとも間接的に印加することができる全体量を生じるように構成された加算器とを含む駆動電子機器によって達成される。
通常の場合、デジタル/アナログ変換器の出力量は電圧になり、従って、粗いデジタル/アナログ変換器は、第1の出力電圧範囲を有し、細かいデジタル/アナログ変換器は、第2の出力電圧範囲を有する。しかし、当業者には、当然ながら、電流も、デジタル/アナログ変換器の出力量として考えることができることになる。
【0012】
2段のデジタル/アナログ変換器概念の場合には、第2の出力電圧範囲は、好ましくは、第1の出力電圧範囲よりも小さい。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器を用いてミラーを駆動する間には小さい電圧変更を行うことができ、それにも関わらず、粗いデジタル/アナログ変換器を利用して広い電圧範囲を対象とすることができる。
細かいデジタル/アナログ変換器によって出力される電圧が、第2の出力電圧範囲の中央にある場合に、少なくとも1つのアクチュエータに印加される望ましい合計電圧が得られるように粗いデジタル/アナログ変換器によって出力される出力電圧を選択することができる時は更に有利である。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器は、上方及び下方方向の最大範囲でアクチュエータにおいて印加される合計電圧を補正することができる。粗いデジタル/アナログ変換器は、その出力電圧に対して大きいステップしか可能にしないので、細かいデジタル/アナログ変換器による出力は、近似的に出力電圧範囲の中央にのみ位置するであろう。
第2の出力電圧範囲が0Vの上下で対称である場合には、粗いデジタル/アナログ変換器は、望ましい合計電圧に可能な限り近い出力電圧を出力するだけでよいので、この場合は、上述のことを特に容易に達成することができる。
多ミラーアレイのミラーの精密な駆動においては、一般的に、第2の出力電圧範囲が約−5Vから約+5Vの最大電圧範囲に位置すれば十分である。
【0013】
デジタル/アナログ変換器を駆動電子機器内にアドレス指定するために、2つのデジタル/アナログ変換器は、これらの2つの変換器に印加される共通のデジタル入力信号を有することができる。デジタル/アナログ変換器の実際の変換電子機器の上流に接続した回路は、この場合、それぞれのデジタル/アナログ変換器に関連する信号、例えば、デジタル値のうちのある一定のビット領域を分岐し、これらの信号を変換電子機器に供給することができる。
しかし、2つのデジタル/アナログ変換器が、これらの変換器に印加される異なるデジタル入力信号を有することができることが有利である可能性があり、これは、ある一定の状況下では、それによって駆動電子機器の回路の複雑さが低減するからである。
【0014】
調整済みの系の場合には、問題になるのは実質的にデジタル/アナログ変換の相対解像度のみであり、従って、粗いデジタル/アナログ変換器の厳密に線形の変換器特性を不要にすることができるので、粗いデジタル/アナログ変換器の実施のためのコストを低く保つために、粗いデジタル/アナログ変換器が、非線形変換器特性を有することは有利である。
この場合、好ましくは、粗いデジタル/アナログ変換器は、ミラーの傾斜角と少なくとも1つのアクチュエータにおいて印加される全体量との間の関係を表す関数の逆関数に対応する変換器特性を有する。その結果、静電アクチュエータが用いられる場合に生成される印加電圧へのミラーの傾斜角の2次関数的依存性を例えばこの変換器特性を利用して補償することができ、駆動電子機器の残りの部分は、この依存性に対処しなくてもよい。
【0015】
本発明の別の有利な構成によると、駆動電子機器は、粗いデジタル/アナログ変換器を少なくとも間接的に駆動するように構成された開ループ制御ユニットを含む。それによって制御ループを持たない制御系を用いて、ミラーの傾斜角の望ましい傾斜角に対する粗い近似が可能になる。
開ループ制御ユニットが用いられる場合に、照明系が、ミラーの実際の傾斜を測定するための測定系を含み、測定系が、パターンを検出するように構成された検出器、及び全体パターン内で検出パターンを検索するためのパターン認識系を含むならば特に有利である。この場合、パターン認識系が、例えば、開ループ制御ユニットと同じ信号又は制御ユニットから発する信号を受け取ることにより、パターン認識系の検索は、全体パターンのサブ領域に限定することができる。その結果、パターンを検索する目的に対して僅かな計算パワーしか必要とされない。
【0016】
有利な態様においては、駆動電子機器は、細かいデジタル/アナログ変換器を少なくとも間接的に駆動するように構成された閉ループ制御ユニットを含むとすることができる。閉制御ループを用いて作動し、細かいデジタル/アナログ変換器を駆動する閉ループ制御ユニットを利用すると、ミラーの傾斜角を正確に設定することができる。特に、傾斜角の変化として表れる比較的小さい機械的又は電気的な摂動をこの手段によって高解像度で補正することができる。
【0017】
更に、駆動電子機器は、粗いデジタル/アナログ変換器及び/又は細かいデジタル/アナログ変換器のためのデジタル情報が座標変換を受けるように構成された座標変換ユニットを含むことができる。その結果、アクチュエータ駆動とミラーの実際の傾斜との間のより複雑な関係を記録することができる。特に、これは、ミラーの傾斜がいくつかのアクチュエータ、例えば、3つのアクチュエータの組合せによる駆動に依存する場合に重要である。
【0018】
ミラーを駆動するための本発明による方法に関しては、その目的は、以下の段階を用いて達成される。最初に、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータを用いて傾斜させることができるミラーを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系が準備される。次に、第1のデジタル情報項目及び第2のデジタル情報項目が提供される。次に、第1のデジタル情報項目が、第1の解像度を有する第1のアナログ量に変換される。この後に、第2のデジタル情報項目が、第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する第2のアナログ量に変換される。最後に、2つのアナログ量が加算されて全体量が生じ、この全体量が、少なくとも1つのアクチュエータに少なくとも間接的に印加される。本方法により、実施することが高価であり、大きい値範囲と高い解像度の両方を有する特に高い品質のデジタル/アナログ変換器を用いることなしに、ミラーのアクチュエータを大きい値範囲及び高い解像度で駆動することができるようにすることが可能になる。
【0019】
有利な態様において、上述の方法では、第1のデジタル情報項目は、開ループ制御によって提供することができ、第2のデジタル情報項目は、閉ループ制御によって提供することができる。開ループ制御が、既にアナログ全体量を望ましい作動点付近に大まかに配置していることにより、閉ループ制御は、高解像度での密な調整に向けて設計されたものとすることができる。
この場合、調整範囲が十分に小さいものとして選択され、閉ループ制御が線形調整系である場合、線形調整系は、特に、単純で安定したものとして設計することができるので、上記に加えて有利である。
有利な態様においては、閉ループ制御は、調節相と保持相とで別々に作動させることができ、従って、例えば、調整パラメータの修正によってオーバーシュート挙動に対して異なる帯域幅を設定することができる。
【0020】
本方法の別の有利な変形では、第1のデジタル情報項目は、最初にミラーを傾斜させるべき公称傾斜角を事前設定することによって提供される。その後、第1のデジタル情報項目は、開ループ制御によって公称傾斜角の関数として提供される。更に、本方法のこの変形では、少なくとも1つのアクチュエータへの全体量の少なくとも間接的な印加の後に以下の段階が反復して実行され、これらは、ミラーの実際の傾斜角を測定する段階と、実際の傾斜角と公称傾斜角の間の差を判断する段階と、差が事前設定された閾値よりも小さい場合に反復を終了する段階と、第2のデジタル情報項目を差の関数として判断する段階と、第2のデジタル情報項目を第2のアナログ量に変換する段階と、2つのアナログ量を加算して全体量をもたらす段階と、全体量を少なくとも1つのアクチュエータに印加する段階とである。それに応じて、本方法では、開ループ制御を用いて、実際の傾斜角の公称傾斜角への粗い近似が得られる。この後、実際の傾斜角は、実際の傾斜角と公称傾斜角の間の差が閾値よりも小さい時点まで、第2のデジタル情報項目の変換を利用して、公称傾斜角に高解像度で反復的に近似される。従って、本方法は、無限作動制御ループを必要とせずに、実際の傾斜角の設定を可能にする。実施中には、個々の段階に対して他のシーケンスを選択することができる。特に、例示的な実施形態によっては、異なる時点で又は更に別の段階中に付加的に、差と閾値の間の比較を実施することができる。本方法の異なる相においては、上記に加えて閾値を変更することができる。
【0021】
この反復法の有利な更に別の展開では、最大反復繰返し数は限られる。この手段により、アクチュエータの誤作動の発生時に、例えば、本方法の反復ループが終了することが保証される。
上述の方法の別の有利な更に別の展開によると、ミラーの傾斜に関する情報は、全体パターン内であるパターンを検索するパターン認識系によって提供することができる。この場合、パターン認識系は、第1のデジタル情報項目に応じて全体パターンのサブ領域に限定される。パターンの検索がより小さいサブ領域に限定されることにより、パターン認識系の計算労力が低減し、従って、この系は容易に達成することができる。
【0022】
別の態様によると、本発明の目的は、多ミラーアレイにおける複数のミラーのミラー位置をモニタする方法によって達成され、最初に、測定系によって測定される測定値が所定の指定範囲にある分散を伴って存在するように、サンプリング速度が判断される。しかし、次に、サンプリングは、いかなるエイリアシングももはや発生しないように選択されたN倍のサンプリング速度で、相応に高い分散を伴って実施される。最後に、N倍のサンプリング速度で存在する測定値は、平均化することによりフィルタリングされ、そのためにそれによって得られるフィルタリング値は、所定の指定範囲にある分散を伴って存在する。そのような方法の利点は、測定値の高いサンプリング速度の理由から、測定値に更に別の処理を受けさせる下流に接続した系内にいかなるエイリアシング信号も入り込まず、依然として測定値が指定範囲の分散を伴って存在するという事実にある。これは、特に、調整系では、調整系のエイリアシング信号が全体的な系の望ましくない振動を生じる可能性があることから有利である。本発明の概念の実現は、上述の2部構成のデジタル/アナログ変換とは独立して可能であるが、有利な構成では、上述の駆動装置及び方法との組合せを意図している。
有利な態様においては、上述の工程では、N倍のサンプリング速度は、ナイキストの定理に従って判断される。ナイキストの定理は、いかなるエイリアシングも発生しないことを保証するために、アナログ信号の最も高い発生周波数を少なくともこの周波数の2倍でサンプリングすべきであると説明している。
【0023】
本発明の更に別の態様は、多ミラーアレイで配置された複数のミラーを含み、ミラーの傾斜運動を測定及び調整するための測定及び調整系を含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系に関する。本発明によると、測定及び調整系は、傾斜運動を不規則な時間間隔で測定するように構成される。測定値の不規則な時間間隔での測定は、デジタル化の間のエイリアシング信号の発生を防止する。この場合、「不規則」は、個々の測定値間の期間が、アナログ信号の発生周波数に関連して周期的に繰返してはならないことを意味する。本発明の概念は、2段のデジタル/アナログ変換とは独立して達成することができる。しかし、2段のデジタル/アナログ変換との組合せは、本発明の好ましい実施形態を提供する。
【0024】
本発明の更に別の態様は、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータを用いて傾斜させることができるミラーとミラーのための駆動電子機器とを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系に関する。ミラーの少なくとも1つのアクチュエータに印加される電圧を生成するために、駆動電子機器は、入力を含む積分ドライバ段と出力を含む微分段とを含み、微分段の出力は、積分ドライバ段の入力に少なくとも間接的に接続される。それによって従来のドライバ段に印加されることになる信号を有する微分段を通じて、従来のドライバ段と比較して少ない空間要件及び少ない電力消散をもたらす積分ドライバ段を駆動することが可能になる。その結果、駆動電子機器の他の回路部分を保持することができる。
【0025】
特定用途向け集積回路内での積分ドライバ段の実施は、好ましくは、駆動されるミラーの面積の50%よりも少ない面積要件しか必要としない。その結果、ドライバの過度の空間要件に起因する異なる信号伝達時間という負担なしに、ミラー毎に少なくとも2つのアクチュエータを駆動することができる。
以上の全ての方法及び装置は、その効率的な作動モードに起因して、少なくとも1000個のミラー、好ましくは、4000個のミラーをモニタ及び駆動するのに特に適している。
本発明の更に別の特徴及び利点は、図面を参照して以下の例示的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】マイクロリソグラフィ投影露光装置のための本発明による多ミラーアレイを有する照明系を通じた略子午断面図である。
【図2】照明系のいくつかのミラーを有する多ミラーアレイの略斜視図である。
【図3】多ミラーアレイの個々のミラーのミラー位置を駆動するために照明系の様々な構成要素が如何に相互に作用するかを示す非常に概略的な図である。
【図4】ミラー及びそれに関連付けられた静電アクチュエータを有するミラーユニットの略斜視図、並びに静電アクチュエータを駆動するデジタル/アナログ変換器ユニット及びドライバを有する電力電子機器の略回路図である。
【図5】粗いデジタル/アナログ変換器と細かいデジタル/アナログ変換器とを有する2部構成のデジタル/アナログ変換器ユニットを用いた個々のミラーユニットの駆動の本発明による制御及び調整の概略図である。
【図6】信号処理段が下流に接続したミラー位置のモニタの概略図である。
【図7】電力電子機器の粗いデジタル/アナログ変換器と細かいデジタル/アナログ変換器とに共通のデジタル情報項目が供給される更に別の例示的な実施形態の概略図である。
【図8】電力電子機器内に用いられるドライバの概略図である。
【図9】ドライバの作動モードのブロック図である。
【図10】従来技術によるドライバの回路図及び可能な実施レイアウトを示す図である。
【図11】微分段と積分ドライバ段とを用いる本発明によるドライバの回路図及び可能な実施レイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
照明系
図1は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系10を大幅に簡略化した子午断面図に示す。照明系10は、結像されるリソグラフィ構造を保持するマスク12を投影光で照明するように機能する。次に、示していない投影対物系が、照明される構造を感光レジストで被覆したウェーハ上に通常はサイズを縮小して投影する。
この点に関して、マイクロリソグラフィ投影露光装置の結像特性を決定的に左右する重要な要素は、投影光の角度分布である。この角度分布は、マスク点上に入射する光の合計強度の光がこのマスク点上に入射する際の異なる入射角に対する分布を意味すると理解すべきである。特に、可能な限り最適な結像を得るために、投影光の角度分布を照明される構造の種類に適応させることが望ましい。
この目的で、照明系10は、その光線経路内に複数の光学要素を含み、図1では、これらの光学要素を単に略式に又は全く再現していない。
【0028】
レーザ14又は別の光源によって生成される投影光は、最初に第1の光学要素16によって拡大され、平面ミラー18を通じてマイクロレンズアレイ20上に誘導される。平面ミラー18は、主に照明系10の外部寸法をコンパクトに保つように機能する。
更に光路を辿ると、投影光は、いわゆる多ミラーアレイ22上に入射し、この多ミラーアレイ22に対しては、図2を参照して以下により詳細に解説することにする。多ミラーアレイ22は、好ましくは、個々に傾斜させることができる複数のマイクロミラー24を含む。この点に関して、上流に置かれたマイクロレンズアレイ20は、投影光の個々の部分光ビームをマイクロミラー24上に誘導する。
【0029】
個々のマイクロミラー24は、投影光の部分光ビームが、第2の光学要素28を通じて瞳平面30を自由に選択可能な位置で通過するように傾斜させることができる。この瞳平面30の近くに配置されたフライアイインテグレーター32は、瞳平面30内に複数の2次光源を生成し、これらの2次光源は、第3の光学要素34を通じて、調節可能な絞り要素38が配置された中間視野平面36を均一に照明する。この点に関して、第3の光学要素34は、瞳平面30内の角度と中間視野平面36内の位置の間に対応性を生成する。中間視野平面36は、対物系40により、マスク12が配置されたマスク平面上に投影される。その結果、瞳平面30内の強度分布は、中間視野平面36内の照明角度分布だけではなく、マスク平面内の照明角度分布をも決める。
従って、多ミラーアレイ22の個々のマイクロミラー24の異なる傾斜運動の結果として、投影光の異なる角度分布を極めて柔軟に設定することができる。マイクロミラー24の適切な駆動が与えられた場合には、露光中であっても角度分布を変更することができる。
【0030】
多ミラーアレイ
図2は、個々のマイクロミラー24が平面であり、かつ正方形の輪郭を有する多ミラーアレイ22の略斜視図を示している。
光線経路内で前にあるマイクロレンズアレイ20のレンズによって生成された入射部分光ビームを瞳平面30内の任意の位置に誘導するために、各マイクロミラー24は、2つの傾斜軸x及びyの回りに傾斜させることができるように装着される。傾斜軸x、yの回りの実際の傾斜は、示していないアクチュエータによって制御することができ、マイクロミラー24を個々に駆動することができるためには、一般的に、各マイクロミラー24に、その独自のアクチュエータの組を割り当てる必要がある。従って、マイクロミラー24及びそれに関連付けられたアクチュエータは、ミラーユニット42を形成するように組み合わせることができる。
多ミラーアレイ22内のミラーユニット42の個数が大きい程、瞳平面30内の強度分布をより微細に解像することができる。2つの傾斜軸x、yの回りに傾斜させることができる数千個のマイクロミラー24を有する多ミラーアレイ22が考えられる。そのような種類の多ミラーアレイ22は、例えば、MEMS技術を用いて製造することができ、様々な作動法を採用することができる。
【0031】
駆動の構造的スキーム
図3は、照明系10の様々な構成要素が、多ミラーアレイ22を駆動するために如何に相互に作用するかを概略図で示している。
MEMS技術を用いて製造された多ミラーアレイ22は、個々のミラーユニット42のアクチュエータを駆動する目的に必要なアナログ制御信号を生成する電力電子機器44に接続される。電気アナログ信号における摂動を小さく保つためには、電気アナログ信号をミラーユニット42のアクチュエータに可能な限り近く生成すべきである。複数のミラーユニット42の理由から、電力電子機器44の設計では、上記に加えて、個々の回路部分の空間要件を小さく保つことを保証するように注意を払わなければならない。
【0032】
デジタル制御及び調整デバイス46により、電力電子機器44には、出力されるアナログ信号の個々の値をデジタル的に符号化するデジタル情報が適用される。実施されている駆動及び調整アルゴリズムの要件によっては、デジタル制御及び調整デバイス46は、FPGA、又は例えば適切にプログラムされたアルゴリズムを有するDSPマイクロプロセッサのようなマイクロプロセッサとして実現することができる。
個々のマイクロミラー24の望ましい傾斜を設定するために、デジタル制御及び調整デバイス46は、照明系10のオペレータインタフェース48とデータを交換する。通常、市販のPCが、オペレータインタフェース48の機能を実行する。そのようなオペレータインタフェース48では、オペレータは、照明系10の他のパラメータに加えて、瞳平面30の望ましい照明を指定することができる。
【0033】
瞳平面30のこの望ましい照明から始めて、次に、瞳アルゴリズム50は、多ミラーアレイ22のどのマイクロミラー24によって瞳平面30のどの点が照明されるかを選択する。瞳アルゴリズム50は、図3に示しているように、オペレータインタフェース48のプログラム区画として作動することができ、又はデジタル制御及び調整ユニット46内に一緒に統合されたものとすることができる。
オペレータインタフェース48を用いると、多ミラーアレイ22の状態に関する情報を更に精査することができる。従って、デジタル制御及び調整デバイス46は、例えば、機能不全ミラーユニット42に関する情報をオペレータインタフェース48に通信することができる。その後、この情報は、例えば、個々のマイクロミラー24を照明される瞳平面30の点に割り当てる際に機能不全ミラーユニット42を考慮に入れるために、瞳アルゴリズム50を用いることができる。一方、この情報は、場合によってはマイクロリソグラフィ投影露光装置の作動を中断して保守作業を実施するために、オペレータに対してアクセス可能にすることができる。
【0034】
光学測定系
多ミラーアレイ22を駆動する間に閉制御ループを有する閉ループ制御が作動状態に入ると、デジタル制御及び調整デバイス46は、上記に加えて、個々のマイクロミラー24のミラー位置をモニタする測定系52とデータを交換する。
この目的のために、測定系52には、測定光を用いてマイクロミラー24を照明する別の光源54が設けられる。別の光源54の測定光が瞳平面30を通過し、その後、マスク12上に入射することを回避するために、別の光源54は、測定光の入射角が投影光のものとは異なるように配置される。個々のマイクロミラー24上での反射の後に、測定光は、検出器56上に入射する。
【0035】
用いられている測定系52によっては、別の光源54は、例えば、レーザビームを各個々のマイクロミラー24上に誘導することができるVCSELアレイ(垂直空洞面発光レーザ)を含むことができる。次に、反射レーザビームは、例えば、4つの四分円検出器として構成され、従って、位置を感知する検出器56上に入射する。その後、測定系52又はデジタル制御及び調整デバイス46のいずれかにアルゴリズムの形態で含まれる評価系57により、位置感知検出器56上のレーザビーム位置から、それぞれのマイクロミラー24の実際の傾斜を判断することができる。
【0036】
パターン認識を用いた光学測定系
別の種類の測定系52では、別の光源54は、多ミラーアレイ22の面全体を照明する全体パターンを生成する。次に、例えば、カメラのような検出器56として機能する適切に配置された記録光学系が、個々のマイクロミラー24上に見ることができるパターンを記録する。次に、測定系52又はデジタル制御及び調整デバイス46内に実現されるパターン認識系を用いて、記録されたパターンの全体パターン内の位置を判断することにより、評価系57によって個々のマイクロミラー24の傾斜が判断される。
示している測定系52に関する更に別の具体的内容は、WO2008/095695から推断することができ、その内容は、引用により、この範囲に対して本出願の主題を形成するものとする。
【0037】
ミラーユニット
この例示的な実施形態では、ミラーユニット42のマイクロミラー24を傾斜させる目的で、異なる電位にある2つの対向電極間の静電引力に基づくアクチュエータが用いられる。
図4は、MEMS技術を用いて実現された静電アクチュエータを有するそのようなミラーユニット42の必須構成要素を大幅に簡略化した斜視図で示している。ミラーユニット42の矩形の平面マイクロミラー24は、カルダン懸架器型の示していない固接部を通じて2つの傾斜軸x及びyの回りに傾斜させることができるように装着される。マイクロミラー24と固接部の両方は、Siウェーハ内でリソグラフィ構造を用いて製造される。マイクロミラー24は、その上向きミラー面58上に、投影光のほぼ完全な反射を保証する反射コーティングを保持する。
【0038】
マイクロミラー24の下向きの背面上には、例えば、金属の蒸着の結果として導電ミラー電極60が配置される。セラミックスペーサを用いて、円盤セグメントの形態にある3つの制御電極E1、E2、及びE3が、ミラー電極60から離れたある一定の間隔の位置に配置される。
ここで、マイクロミラー24を傾斜させる目的で、ミラー電極60と個々の制御電極E1、E2、及びE3の間に静電力が作用し、これらの静電力から、固接部の復元トルクと併せてマイクロミラー24のある一定の傾斜が生じるように、ミラー電極60と3つの制御電極E1、E2、及びE3の間に様々な電圧が印加される。この点に関して、ミラー電極60を一方とし、3つの制御電極E1、E2、及びE3を他方として、これらの電極の間に印加される電圧が大きい程、これらの電極は互いにより強い引力を作用し、ミラー面58は、それぞれの制御電極E1、E2、又はE3の方向により大きく傾く。
【0039】
それに応じて、マイクロミラー24の傾斜は、印加電圧のマグニチュードによって調節することができる。提供した例示的な実施形態では、この目的に必要な電圧は、0Vと200Vの間、好ましくは、0Vと100Vの間の範囲にあり、マイクロミラー24の傾斜角を十分な精度で調節することができるように、0.05Vのステップ、好ましくは、更に小さいステップで精密に調節することができなければならない。
静電力は、印加電圧の符号には依存しないので、他の例示的な実施形態では、負の電圧を用いることができる。更に、制御可能電圧とは独立して、これらの電極は、相応に制御可能電圧の必要範囲をシフトするバイアス電圧が事前に印加されたものとすることができる。
【0040】
図4の下部領域には、この目的に必要な電力電子機器44のいくつかの回路構成要素を示している。
3つの制御電極E1、E2、及びE3とミラー電極60との間に印加される高電圧は、ミラー電極60、及び各場合に制御電極E1、E2、及びE3のうちの1つに出力が接続される3つの等しく構成されたドライバ、この場合はドライバ62によって生成される。
各ドライバ62は、更に、増幅される入力信号として、図5及び図6を参照して以下になお一層詳細に解説することにするデジタル/アナログ変換器ユニット64のアナログ出力信号を受け取る。
【0041】
3つのデジタル/アナログ変換器ユニット64は、共通のデジタルデータバス66に連結され、デジタルデータバス66から出力されるアナログ電圧をデジタル情報の形態で受け取る。データバス66は、いくつかのミラーユニット42を駆動するために電力電子機器44内に延びることができる。
全てのミラーユニット42に対するドライバ62及びデジタル/アナログ変換器ユニット64の電気回路は、周辺のアドレス指定回路を例外として電力電子機器44内で実質的に等しく繰り返されるので、これらの電気回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)内でコンパクトな方式に実施することができる。特に、関連付けられたデジタル/アナログ変換器ユニット64を有する各ドライバ62は、ユニットとしてコンパクトな方式で構成されたものとすることができる。
【0042】
2部構成デジタル/アナログ変換概念による制御及び調整
図5は、多ミラーアレイ22の個々のマイクロミラー24の傾斜の開ループ制御及び閉ループ制御を概説する制御及び調整の概略図を示している。
上述のように、マイクロミラー24を駆動する間に可能な限り高い柔軟性を得るために、デジタル制御及び調整デバイス46内の回路の広範囲にわたる部分は、デジタル回路又はプログラムとして実現される。その結果、要件によっては更に別のアルゴリズムを統合するか又はある一定の開ループ制御構成要素又は閉ループ制御構成要素を不要にすることが容易に可能である。従って、図示の制御及び調整の概略図は、構成要素を省略又は追加することによって適応させることができる例示的な変形しか示していない。
【0043】
図5の制御及び調整の概略図から明らかなように、駆動電子機器44に収容されたデジタル情報をアナログ信号へと変換するためのデジタル/アナログ変換器ユニット64は、粗いデジタル/アナログ変換器68、細かいデジタル/アナログ変換器70、及び同じく電圧加算器72を提供するものである。
図4に示しているミラーユニット42の例示的な実施形態では、3つの制御電極E1、E2、及びE3が用いられるので、図5の制御及び調整の概略図においてもまた、3つのデジタル/アナログ変換器ユニット64及び3つのドライバ62は、特に部分的に隠れた破線の機能ブロックによって示している。しかし、簡略化の目的で、以下の記載内容は、制御電極E1、E2、及びE3のうちの1つの駆動の表現に限定される。
【0044】
2つのデジタル/アナログ変換器78、70は、細かいデジタル/アナログ変換器70が、粗いデジタル/アナログ変換器68よりも高い解像度を有することにおいて異なり、この場合「解像度」という用語は、そうでなければデジタル/アナログ変換器の場合に従来的であるような出力値の範囲の再分割のステップ数を表すのではなく、2つの出力値の間の最小の可能なステップを直接的に意味する。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器70の出力されるアナログ信号の最小の可能なステップは、粗いデジタル/アナログ変換器68のものよりも小さい。高い解像度は、多くの場合に、例えば、約−5Vから約+5Vのような小さい最大電圧範囲に関連付けられる。更に、細かいデジタル/アナログ変換器70を実施する際には、変換器70が可能な限り線形の変換器特性を有することを保証するように注意が払われる。
【0045】
一方、粗いデジタル/アナログ変換器68は、低い解像度及び大きい最大電圧範囲によって区別される。以下の説明記載内容から明らかなように、粗いデジタル/アナログ変換器68の場合には、上記に加えて、変換器特性の線形性に対する要求は、細かいデジタル/アナログ変換器70の場合程には厳しくない。限定的な事例では、変換器特性は厳密に単調関数だけに従わなければならない。
2つのデジタル/アナログ変換器68、70の出力は、電圧加算器72の入力に接続され、電圧加算器72は、更に、加算された合計電圧をデジタル/アナログ変換器ユニット64の出力において出力する。加算された合計電圧は、変換器ユニット64の出力から次のドライバ62に渡される。
【0046】
以下では、粗いデジタル/アナログ変換器68と細かいデジタル/アナログ変換器70との例示的な組合せを解説することにする。
上述のように、一般的に、マイクロミラー24には、0Vと200Vの間の電圧が必要である。従って、210=1024個の異なる出力値を表すことができる10ビットの粗いデジタル/アナログ変換器68の場合のドライバ62による信号増幅の後には、約0.2Vという最小の可能な電圧ステップが生成される。マイクロミラー24の精密な駆動のためには、アナログ信号のこの解像度は低すぎる。
【0047】
従って、電圧加算器72を利用して、6ビットの細かいデジタル/アナログ変換器70の第2の電圧値が、上述の粗いデジタル/アナログ変換器68によって出力された電圧値の上に加算的に重ね合わされる。細かいデジタル/アナログ変換器70の値範囲は、変換器70に続くドライバ62による信号増幅後には、0Vと1.3Vの間にある。従って、26=64個の異なる出力値では、細かいデジタル/アナログ変換器70は、約0.02Vの解像度(電圧ステップ)を有する。
【0048】
加算合計電圧を生じる電圧加算器72を利用した2つのデジタル/アナログ変換器68、70の出力値の加算により、この2段のデジタル/アナログ変換器概念を用いた信号増幅の後には、0.02Vという相対解像度が得られる。
この点に関して、「相対解像度」は、全体的なデジタル/アナログ変換器ユニット64が、細かいデジタル/アナログ変換器70によって予備設定された小さい出力電圧範囲に限って0.02Vの電圧ステップという解像度を有することを意味する。すなわち、合計電圧は、0.02Vだけ変更することはできるが、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧ステップは、常に厳密に0.2Vに対応するわけではないので、0.02Vの変更は、粗いデジタル/アナログ変換器68の非線形性によって絶対合計電圧範囲に対しては正確に設定されない。
【0049】
それとは対照的に、理想的なデジタル/アナログ変換器は、合計電圧範囲にわたって、例えば、63.22Vの精密な出力を可能にすることになる固定解像グリッドを有することになる。しかし、例えば、「スイッチドキャパシタ」技術を用いて機能するデジタル/アナログ変換器は、特に、最上位ビット(MSB)を変更する間に、一般的に、可変的に大きい電圧ステップを提供する。従って、10ビットの粗いデジタル/アナログ変換器68の場合には、01.1111.1110から01.1111.1111への移行において、規則として、01.1111.1111から10.0000.0000へと変更する時のものとは異なる電圧ステップが生成される可能性があり、これは、01.1111.1111から10.0000.0000への変更の場合には、多くのコンデンサーを再充電すべきであるからである。
【0050】
しかし、ここでの場合と同様にデジタル/アナログ変換器ユニット64が、マイクロミラー24を調節することを目的とした調整系と共に用いられた場合には、出力される合計電圧が調整によって継続的に補正されるので、問題は、デジタル/アナログ変換器ユニット64の絶対解像度ではない。
デジタル/アナログ変換器の値範囲の上述の選択の場合には、64通りの異なる出力値を有する6ビットの細かいデジタル/アナログ変換器70は、10ビットの粗いデジタル/アナログ変換器68の約6つの解像度段と重ね合わさる。従って、対応する調整は、6ビットの細かいデジタル/アナログ変換器70を利用して、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧の非線形性、並びに時間ドリフトが干渉方式で出現しないという結果を生じる。
【0051】
図5の制御及び調整の概略図が更に示しているように、説明した2段のデジタル/アナログ変換器概念が用いられる場合には、閉ループ制御を特に有利な方式で開ループ制御と組み合わせることができる。この目的のために、粗いデジタル/アナログ変換器68が制御ループを用いずに制御され、細かいデジタル/アナログ変換器70が制御ループを用いて調整される2段のデジタル/アナログ変換器概念に適応させた2部構成系が用いられる。
図5に示している制御及び調整の概略図の上側の分岐は、開ループ制御に関する部分を示している。
【0052】
開ループ制御の主要な構成部分は、デジタル制御及び調整デバイス46の一部とすることができ、かつ逆系−力学モデルを含むことができる制御ユニット74である。略式に説明すると、制御ユニット74は、制御を受ける系の逆モデルにより、作動量の変化に対するマイクロミラー24の反応を予想し、次に、適切に最適化された作動量シーケンスを符号化形態にあるデジタル情報として出力する。この場合、作動量は、制御電極に印加される電圧であると理解すべきである。
この制御ユニット74によって出力されるデジタル情報は、座標変換ユニット76を通じて様々なデジタル/アナログ変換器ユニット64のうちの粗いデジタル/アナログ変換器68に渡される。
【0053】
座標変換ユニット76の役割は、マイクロミラー24の作動方式、例えば、マイクロミラー24が2つ、3つ、又は4つのいずれの個数のアクチュエータによって駆動されるか、及びマイクロミラー24の傾斜角が上流に接続した制御ユニット74に関して実質的に透過的な作動量にどの程度依存するかを保つことである。
しかし、座標変換ユニット76の機能は、粗いデジタル/アナログ変換器68によって部分的に実施するか、又は適切に単純な関係が与えられた場合には完全に実施することができる。従って、マイクロミラー24の傾斜角のアクチュエータに印加される電圧への実質的に2次関数的な依存性が存在する静電アクチュエータの場合には、この依存性は、粗いデジタル/アナログ変換器68の変換器特性内に事前に統合されているとすることができ、従って、座標変換ユニット76を不要にすることができる。
【0054】
図5に一点鎖線で表しているように、制御ユニット74は、上記に加えて測定系52の評価系57に接続される。その結果、評価系57は、制御ユニットから情報を受け取ることができ、従って、それによって例えばパターン認識系が用いられる場合には、全パターン内での検索パターンの検索がより小さい領域に限定される。
制御及び調整の概略図の下側の分岐によって例示している制御ループによる閉ループ制御は、調整器78、任意的な座標変換ユニット80、細かいデジタル/アナログ変換器70、及び同じくマイクロミラー24の実際の傾斜角を判断する測定系52を含む。
【0055】
調整器78は、その入力において、望ましい公称傾斜角と芳しくない再現性を有する実際の傾斜角との間の差として生じるいわゆる制御偏差を受け取る。
更に、調整器78は、パラメータ線82を通じて、調整器78の調整パラメータの変化に関する情報を受け取る。特に、パラメータ線82は、開ループ制御及び閉ループ制御に供給される公称傾斜角又はその変化に応じて駆動することができる。従って、調節相又は保持相の間に、閉ループ制御を異なる要件に適応させることができる。
【0056】
調整器78の出力信号は、座標変換ユニット80を通じてデジタル/アナログ変換器ユニット64の細かいデジタル/アナログ変換器70に印加される。細かいデジタル/アナログ変換器70の各々は、開ループ制御から到着する粗いデジタル/アナログ変換器68の出力電圧に電圧加算器72において加算される出力電圧を生成する。得られる加算された合計電圧は、次に、マイクロミラー24のアクチュエータに印加される。
通常の場合には、閉ループ制御は、ミラーユニット42に対して作用する小さい摂動zを相殺するだけでよく、従って、合計電圧の小さい値範囲まで低減することができるので、閉ループ制御を線形の調整として実行することができる。同じ理由から、ある一定の状況下では、座標変換ユニット80及び細かいデジタル/アナログ変換器70における適応変換器特性を不要とすることができる。
【0057】
粗いデジタル/アナログ変換器68の出力値範囲と細かいデジタル/アナログ変換器70の出力値範囲との上述の重ね合わせの理由から、2つのデジタル/アナログ変換器68、70の出力電圧の異なる組合せによってある一定の合計電圧を生成することができる。それにも関わらず、開ループ制御側において要求出力電圧と粗いデジタル/アナログ変換器68のデジタル入力情報との間の明確な対応性を可能にするために、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧は、この電圧が、要求出力電圧から細かいデジタル/アナログ変換器70の値範囲の半分を差し引いたものに可能な限り近づくように、制御ユニット74及びその後の座標変換ユニット76によって選択される。この後、電圧加算器72の出力において加算される合計電圧が、マイクロミラー24の制御電極E1、E2、及びE3のうちの1つにおいて印加される要求出力電圧に可能な限り近づくように、細かいデジタル/アナログ変換器70の出力値が、閉制御ループを利用して選択される。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器70を利用して、要求出力電圧の上下で対称な調整範囲が閉ループ制御に対して利用可能である。
【0058】
公称傾斜角の変更の後には、制御ユニット74は、適切な場合は統合系−力学モデルに基づいて、粗いデジタル/アナログ変換器68の出力電圧を調節する。この後に、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧は、公称傾斜角の新しい変更が処理進行中の場合にのみ再度変更される。他の場合には、閉ループ制御は、細かいデジタル/アナログ変換器68及びそれに関連付けられた制御ループだけによって実施される。
【0059】
終了基準を有する反復制御ループ
制御を受ける系、すなわち、ミラーユニット42と電力電子機器44の両方に対して作用する摂動zが十分に小さい場合には、終了基準を有する反復法は、それ自体を制御ループの作動に対するものとして呈示する。
この場合、上述のように、最初に、粗いデジタル/アナログ変換器68の出力電圧が、制御ユニット74によって設定される。しかし、次に、制御ループは、無限制御ループとして作動せず、細かいデジタル/アナログ変換器70による最初の段階では、制御電極E1、E2、又はE3において印加される合計電圧は、調整器78を利用して適応される。この後、測定系52を利用して実際の傾斜角が判断され、公称傾斜角と比較される。この工程で確立された制御偏差が事前設定値を下回った場合には、制御ループは終了し、2つのデジタル/アナログ変換器68、70の2つの出力電圧は維持される。制御偏差が事前設定値よりも大きかった場合には、細かいデジタル/アナログ変換器70の出力電圧の更に別の適応段階が実施される。この段階は、制御偏差が事前設定値よりも小さいか又は事前設定最大反復回数に達する時点まで繰り返される。
終了基準により、デジタル制御及び調整デバイス46において、無限反復制御ループの場合におけるものよりも少ない計算容量しか必要とされない。解放された計算容量は、更に別の制御電極E1、E2、又はE3及びマイクロミラー24に対して用いることができ、従って、デジタル制御及び調整デバイス46の合計コストを低減することができる。
【0060】
測定系によるエイリアシングのない測定値の記録
閉ループ制御の実現は、マイクロミラー24の実際の傾斜角の同時に迅速、堅固、かつ精密な測定を必要とする。
多くのサンプリング測定系では、サンプリング速度と生成される測定不確実性の間にはある一定の関係が存在し、この場合、分散が、この不確実性に対する尺度として機能し、従って、高いサンプリング速度では、測定は、高い分散を伴ってのみ可能である。逆に、ミラー毎の長い測定時間は、測定値の低い分散、すなわち、低い測定不確実性を生じる。
【0061】
従って、測定系では、多くの場合に、測定値の要求精度から発して測定値の分散に対する上限が設定され、その後、この上限が、測定系の最大サンプリング速度を決める。
一方、ナイキストの定理は、ある一定の周波数を有する信号を記録する目的のためには、サンプリングが少なくとも2倍速いサンプリング速度で生成される必要があることを説明しており、これは、そうでなければいわゆるエイリアシング効果が発生し、信号が、低い偽周波数を有するうなりとして記録されるからである。PT2応答を有する機械系としてのミラー系は、殆どの場合、帯域が限られており、すなわち、ナイキストの定理によると生成されるミラーの摂動又は振動の最大周波数が存在するので、ミラー系の帯域幅によって最小サンプリング速度が判断される。
その結果、エイリアシングのないサンプリングという要件(すなわち、高サンプリング周波数)と低い分散(低い測定不確実性)とは互いに矛盾する。
【0062】
図6から明らかなように、説明した問題を回避するために、例えば、同様にデジタル制御及び調整デバイス46の一部としてアルゴリズムの形態で達成することができる信号処理段83が、測定系52の下流に接続される。
信号処理段83は、その入力において、測定系52から元のサンプリング値αiを受け取り、その出力においてフィルタリングされたサンプリング値βiを出力し、サンプリング値βiは、その後、デジタル制御及び調整デバイス46の閉ループ制御においてフィードバックの目的に用いられる。
【0063】
信号処理段83は、不確実性に露出されるサンプリング値αiからフィルタリングされたサンプリング値βiを計算するための様々なフィルタリング法を含むことができる。すなわち、例えば、いわゆるFIRフィルタ(有限インパルス応答フィルタ)を採用することができる。FIRフィルタは、有限長のインパルス応答が与えられた区分された通常はデジタルに実施されるフィルタである。しかし、例えば、2項フィルタ、ガウスフィルタ、又はIIRフィルタ、及び他のローパスフィルタのような他のフィルタを信号処理段83に対して用いることができる。
【0064】
FIRフィルタの適用の場合には、フィルタリングされたサンプリング値βiは、過去のサンプリング値αiと最新のサンプリング値αiとの線形組合せである。
【0065】
【数1】
【0066】
ここで、サンプリング値αiが分散σ2αを有し、αiの不確実性が相関しないと仮定すると、フィルタリングされたサンプリング値βiの分散σ2βに対して次式が成り立つ。
【0067】
【数2】
【0068】
分散が減少したサンプリング値βiを得るためには、矩形の帯域通過フィルタが候補として浮かび、すなわち、全てのフィルタ係数Ckは、1/Nに等しい。その結果、フィルタリングされたサンプリング値に対して次式が成り立つ。
【0069】
【数3】
【0070】
すなわち、フィルタリングされたサンプリング値βiは、元のサンプリング値αiの分布のN分の1を有する。矩形の帯域通過フィルタが用いられる場合には、フィルタリングされたサンプリング値βiは、過去のN個の元のサンプリング値αiの算術平均値に等しい。
【0071】
ここで、元のサンプリング値αiの要求分散σ2αが超過されないサンプリング速度fにおいて直接測定系52を作動させる代わりに、係数Nだけサンプリング速度を高め、元のサンプリング値αiに対して指定範囲外の高い(多くの場合にN倍の)分散σ2αを許容することは有利である。この場合、サンプリング速度の変化が、測定系52の分散しか変化させないことを仮定している。測定値の期待値は、サンプリング速度とは独立したものと仮定すべきである。
信号処理段83におけるデジタルフィルタリングにより、フィルタリングされたサンプリング値βiの分散は、その後、示したように約係数1/Nだけ低減し、すなわち、最初に要求された分散が再度得られる。N倍のサンプリング速度は、いかなるエイリアシングももはや発生しないように選択することができる(ナイキストの定理を参照されたい)。
【0072】
この時点で、フィルタリングされたサンプリング値βiは、N倍のサンプリング速度N*fでローパスフィルタリングによって減幅した帯域幅で存在する。いわゆるダウンサンプリングにより、適切な場合には、前と同様に測定値の分散を高めることなくサンプリング速度を低減することができる。その結果、最初に要求された分散を有するサンプリング値は、サンプリング速度fでエイリアシングを持たずに、又は明らかに低減したエイリアシングを有して存在する。
【0073】
原理的には、上記に応じてエイリアシング防止フィルタリングは、デジタルフィルタとして実現され、同時に高い分布を「相殺する」ためのいわゆるオーバーサンプリングが利用され、その結果、低エッジ斜度を有するフィルタを用いることができる。
測定系52による実際の傾斜角の記録の間のエイリアシング効果を回避するための別の可能性は、不規則な時間間隔で、特に、非周期的期間で測定値を記録することに基づいている。測定値の厳密に周期的な記録が回避されることにより、特に、その後の閉ループ制御の安定性に対して有害になる過度に高い周波数が、低周波数のエイリアシングのうなりの中で出現することはない。
【0074】
データバス
電力電子機器44の配線の複雑さを低減することができる1つの可能な手法を図7に示す。この例示的な実施形態では、デジタル情報は、デジタル/アナログ変換器ユニット64内で同様に共通のデータバス66上で、粗いデジタル/アナログ変換器68と細かいデジタル/アナログ変換器70とに伝送される。この工程では、2つのデジタル/アナログ変換器68、70内に統合された回路が、データバス66から対応する変換器のための情報を選択する。その結果、2段変換器概念にも関わらず、配線の複雑さは僅かしか増大しない。
【0075】
電子ドライバ
図8は、電力電子機器44内に用いられるドライバ62の概略図であり、注意される点は、上流に微分段86が接続した積分ドライバ段84である。
ドライバ62において印加される入力信号は、最初に微分段86に渡される。次に、微分段86の出力に印加された微分済み信号は、積分ドライバ段84に供給される。
積分ドライバ段84では、2つの絶対値要素88及び90を2つの電圧/電流変換器92及び94、及び同じく制御電極E1、E2、又はE3とミラー電極60の間の容量を表すことを意図したコンデンサー98に対する電流−ミラー回路96と併用することにより、微分段86から発する信号の積分が実施される。
マイクロ電子構成要素を静電放電から保護するために、電流−ミラー回路と積分ドライバ段84の出力との間にESD構成要素100が設けられる。
【0076】
図9は、本発明によるドライバ62をブロック図方式で示しており、それぞれの構成要素の入力に印加される信号の例示的信号形状を表している。
微分段86の入力では、微分の後にデルタ様の関数として積分ドライバ段84に伝送される電圧ジャンプが印加される。電力増幅として機能する積分ドライバ段84の電圧/電流変換の後に、信号は、積分器として機能するコンデンサー98に供給される。従って、ミラー電極と対応する制御電極E1、E2、又はE3の間には、増幅されたステップ電圧信号が得られる。
上述の例示的な実施形態では、既にアナログの信号が微分段86に渡されている。しかし、微分は、デジタル/アナログ変換の前に実施することができ、従って、微分段86は、デジタル/アナログ変換器68、70の上流に配置することができる。特に、微分段86は、デジタル制御及び調整デバイス46内にアルゴリズムとして統合されたものとすることができる。
【0077】
電子ドライバの実施
以下では、図10を参照して、図示の例示的な実施形態において「クラスA」ドライバ回路ではなく、微分段86と積分ドライバ段84とを経由するより複雑な経路を何故選択したかを解説することにする。
この目的のために、図10は、従来技術によるドライバ62の重要部分の回路図、及びASIC内での可能な実施レイアウトを示している。
ドライバ62のASIC内での実施の場合には、上側の回路図内に破線で囲まれた高電圧領域102の空間要件は、この領域が、そこで生成される大きな電流及び電圧という理由から、回路の全体的な空間要件のうちで大きい占有率を有することから特に重要である。
【0078】
示している従来のドライバ回路(「クラスA」回路)では、増幅された高出力電圧が、参照符号nd25aで示しているトランジスタ、及び抵抗器rpdを利用して生成される。トランジスタnd25aをその線形増幅範囲内で作動させるために、この場合は、その原理に起因して静的漏れ電流がトランジスタnd25a及び抵抗器rpdを通じて外部から供給される高電圧HV(供給電圧)から接地へと流れ、その結果、抵抗器rpd内で熱による大きい電力消散が生じる。抵抗器rpdは、この場合、約5MΩの高抵抗のものでなければならず、従って、実施レイアウトから明らかなようにドライバ回路内で大きな空間を占有する。
低電圧範囲104に必要な区域、端子コンタクトパッド、静電放電からの保護のためのESD構成要素100、ポリ−ポリコンデンサーcpp、及び同じく実施区域の縁部に設けられた配線領域106とあわせると、ASIC実施において800μm×1000μmの全体寸法が得られる。
【0079】
多ミラーアレイ24を設計する際には、ドライバ62の空間要件が、マイクロミラー24の面積よりも小さい(特に、大きさが半分である)ことを保証するように注意を払わなければならず、これは、そうでなければ、複数のマイクロミラー24が与えられた場合に端子の設計において問題が生じるからである。ドライバ62の空間要件がマイクロミラー24のものを超えた場合には、これらのドライバは、これらのドライバに割り当てられたマイクロミラー24から様々な距離の位置に置かれ、端子リードを付加的に設けなければならず、回路の空間要件が更に高まり、特に、様々な信号伝達時間が生じる。
【0080】
従って、ドライバ62の空間要件を低減するために、図11は、微分段86と積分ドライバ段84とを用いる本発明によるドライバ62の回路図及び可能な実施レイアウトを示している。
回路は、初見ではかなり複雑に見えるが、実施レイアウトからは、抵抗器rpdが不要であるから、ASIC内での回路の全体の空間要件が、800μm×650μmに明らかに低減していることが明白である。
【0081】
本発明によるドライバ62の電流−ミラー回路96は、回路図及び実施レイアウトから明らかなように、相応に参照符号nd25aで表しているnd25a型の2つのトランジスタ、及びpha型の2つのトランジスタを必要とする。しかし、これらの4つのトランジスタの空間要件は、従来のドライバ回路の場合における抵抗器rpdのものよりも小さく、それによってこの回路の全体空間要件は小さく、従って、小さいマイクロミラー24を有する多ミラーアレイ22の実現が可能である。
【0082】
結論
以上の方法及び装置は、僅かな適応化により、例えば、変形される面を有するミラーの場合におけるような複数のセンサチャンネル及び駆動チャンネルを用いたモニタ及び駆動が必要ないくつかのアクチュエータを有するEUVリソグラフィ系又は他の光学系と共に用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
68 粗いデジタル/アナログ変換器
70 細かいデジタル/アナログ変換器
72 加算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータによって傾斜させることができるミラーとミラーのための駆動電子機器とを有するマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系、及び同じくこのミラーを駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積電子回路及び他の微細構造化構成要素は、例えば、シリコンウェーハとすることができる適切な基板上にいくつかの構造化層を付加することによって製造される。層を構造化するために、最初に、この層は、ある一定の波長領域に関連する光、例えば、深紫外スペクトル領域(DUV)内の光に敏感なフォトレジストで覆われる。次に、このようにして被覆されたウェーハが、マイクロリソグラフィ投影露光装置内で露光される。この工程では、マスク上に配置された構造のパターンが、投影対物系を利用してフォトレジスト上に結像される。この工程では、再現スケールが一般的に1よりも小さいので、そのような種類の投影対物系は、多くの場合に縮小対物系とも称される。
フォトレジストが現像された後には、ウェーハはエッチング処理を受け、その結果、層は、マスク上のパターンに従って構造化される。その後、残置されたフォトレジストが、層の残りの部分から除去される。全ての層がウェーハ上に付加され終わるまで、この工程が繰り返される。
【0003】
用いられる投影露光装置の性能は、投影対物系の結像特性だけでなく、投影光でマスクを照明する照明系にも依存する。この目的で、照明系は、光源、例えば、パルスモードで作動するレーザ、並びに光源によって生成された光からマスク上の視野点上に収束する光束を生成するいくつかの光学要素を含む。この点に関して、光束は、一般的に投影対物系に適合するある一定の特性を有するべきである。
これらの特性は、特に、各々がマスク平面内のある点に収束する光束の角度分布を含む。「角度分布」という用語は、光束の個々の光線がマスク平面内の関連の点の上に入射する際の異なる方向に光束の合計強度が如何に配分されるかを表している。角度分布が、マスクに収容されるパターンに特定的に適応する場合には、このパターンをフォトレジストで覆われたウェーハ上に高い結像品質を伴って結像することができる。
【0004】
最近になって、マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系では、照明系の投影光の個々の部分ビームを異なる方向に偏向するために、複数の個々に駆動可能なマイクロミラーを含む多ミラーアレイ(MMA、マイクロミラーアレイ又はミラーマトリックスとも呼ぶ)の使用が考慮されるように構成されている。例えば、このようにして、投影光のそれぞれの部分光ビームは、マイクロミラーを利用して照明系の瞳平面内の異なる位置に誘導することができる。照明系の瞳平面内の強度分布は、投影光の角度分布に決定的に影響するので、マイクロミラーを個々に傾斜させることによってより柔軟に角度分布を設定することができる。特に、瞳平面内の環状領域又はいくつかの極が照明されるいわゆる非従来的照明環境に関連して、MMAの使用は、角度分布をそれぞれの状況、特に、投影されるマスクに、例えば、回折光学要素を交換することを必要とせずに適応させることを可能にする。
【0005】
多くの場合に、そのようなMMAは、半導体技術から公知であるもののようなリソグラフィ工程を用いてマイクロ電気機械系(MEMS)として製造される。この技術による一般的な構造サイズは、一部の場合には数マイクロメートルに達する。そのような系の公知の代表例は、例えば、2つの端部位置間で軸の回りにデジタル的に傾斜させることができるマイクロミラーを有するMMAである。そのようなデジタルMMAは、画像又はフィルムの再現のためのデジタルプロジェクタに用いられる。
【0006】
しかし、マイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系における用途では、マイクロミラーは、角度作動範囲内で準連続的に高精度であらゆる傾斜角を取ることができなければならない。この場合、マイクロミラーの傾斜を引き起こすアクチュエータは、例えば、静電アクチュエータ又は電磁アクチュエータとして構成されたものとすることができる。従って、公知の静電アクチュエータの場合には、マイクロミラーの傾斜は、例えば、固定された制御電極とマイクロミラーの背面上に取り付けられたミラー電極とが、印加電圧に依存して可変強度で引力を作用するということに基づいている。その結果、適切な懸架器及びいくつかのアクチュエータを用いて、マイクロミラーを任意の傾斜角だけ傾斜させることができる。
【0007】
マイクロミラーを傾斜させる間の精度に対する高い要求の理由から、これらのアクチュエータは、駆動電子機器によって極めて精密に駆動する必要がある。この点に関して、通常はミラー毎にいくつかのアクチュエータを用いて駆動されるMMAにおける複数の個々のミラー、例えば、1000個の個々のミラーのために、そのような駆動電子機器は、効率的に設計すべきであることが分かる。
特に、例えば、極めて小さい空間に配置されたドライバの静電アクチュエータを用いてMMAを駆動するためには、複数の異なる出力電圧値を高電圧で生成する必要がある。従来技術によると、望ましい出力電圧は、供給電圧を用いて高電圧が供給されるトランジスタ及び抵抗器を利用して従来のドライバ回路、いわゆるクラスA回路内で生成される。しかし、その原理に起因して、クラスA回路では、静的漏れ電流がトランジスタ及び抵抗器を通じて接地へと常に流れる。その結果、熱の発生と共にかなりの電力消散が生じる。従って、電力消散の理由から、抵抗器は、非常に高い抵抗を有さねばならず、その結果、これらの抵抗器は、ドライバ内及び従ってドライバ電子機器内で大きい空間要件を有する。1000個を超えるミラーを有する大きいMMAの駆動の場合には、ドライバを極めて小さい空間内でMMAに可能な限り近くに位置決めすべきであるから、この空間要件は、特に、不利な効果を有する。
【0008】
上述の問題に遭遇する1つの可能性が、US6,940,629B1に説明されている。この特許では、MMAミラーの駆動は、出力電流が外部及び/又は内部のコンデンサー上で積分される積分ドライバ段を用いて行われる。この場合の出力電流は、デジタル/アナログ変換によってデジタル値から生成される基準電流に比例する。この点に関して、デジタル値は、上述の特許にはいかなる詳細内容も明示されていないモニタリングユニットによって生成される。この文献によると、マイクロミラーのアクチュエータに対する出力電圧の設定は、高電圧要素によって積分器に供給される調節可能な持続時間の基準電流及び電流の通電持続時間の選択によって確立されるそれぞれのマイクロミラーを調節するのに望ましい電圧によって得られる。この場合、基準電流の通電持続時間は、デジタル制御信号を用いて確立される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US6,940,629B1
【特許文献2】WO2008/095695
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータを用いて傾斜させることができるミラーとミラーのための駆動電子機器とを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系、及び同じく可能な限り精密な駆動を可能にするミラーをモニタ及び/又は駆動する方法を指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
照明系に関して、この目的は、本発明により、第1の解像度を有する粗いデジタル/アナログ変換器と、第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する細かいデジタル/アナログ変換器と、2つのデジタル/アナログ変換器によって出力された出力量を加算して、ミラーが有する少なくとも1つのアクチュエータに少なくとも間接的に印加することができる全体量を生じるように構成された加算器とを含む駆動電子機器によって達成される。
通常の場合、デジタル/アナログ変換器の出力量は電圧になり、従って、粗いデジタル/アナログ変換器は、第1の出力電圧範囲を有し、細かいデジタル/アナログ変換器は、第2の出力電圧範囲を有する。しかし、当業者には、当然ながら、電流も、デジタル/アナログ変換器の出力量として考えることができることになる。
【0012】
2段のデジタル/アナログ変換器概念の場合には、第2の出力電圧範囲は、好ましくは、第1の出力電圧範囲よりも小さい。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器を用いてミラーを駆動する間には小さい電圧変更を行うことができ、それにも関わらず、粗いデジタル/アナログ変換器を利用して広い電圧範囲を対象とすることができる。
細かいデジタル/アナログ変換器によって出力される電圧が、第2の出力電圧範囲の中央にある場合に、少なくとも1つのアクチュエータに印加される望ましい合計電圧が得られるように粗いデジタル/アナログ変換器によって出力される出力電圧を選択することができる時は更に有利である。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器は、上方及び下方方向の最大範囲でアクチュエータにおいて印加される合計電圧を補正することができる。粗いデジタル/アナログ変換器は、その出力電圧に対して大きいステップしか可能にしないので、細かいデジタル/アナログ変換器による出力は、近似的に出力電圧範囲の中央にのみ位置するであろう。
第2の出力電圧範囲が0Vの上下で対称である場合には、粗いデジタル/アナログ変換器は、望ましい合計電圧に可能な限り近い出力電圧を出力するだけでよいので、この場合は、上述のことを特に容易に達成することができる。
多ミラーアレイのミラーの精密な駆動においては、一般的に、第2の出力電圧範囲が約−5Vから約+5Vの最大電圧範囲に位置すれば十分である。
【0013】
デジタル/アナログ変換器を駆動電子機器内にアドレス指定するために、2つのデジタル/アナログ変換器は、これらの2つの変換器に印加される共通のデジタル入力信号を有することができる。デジタル/アナログ変換器の実際の変換電子機器の上流に接続した回路は、この場合、それぞれのデジタル/アナログ変換器に関連する信号、例えば、デジタル値のうちのある一定のビット領域を分岐し、これらの信号を変換電子機器に供給することができる。
しかし、2つのデジタル/アナログ変換器が、これらの変換器に印加される異なるデジタル入力信号を有することができることが有利である可能性があり、これは、ある一定の状況下では、それによって駆動電子機器の回路の複雑さが低減するからである。
【0014】
調整済みの系の場合には、問題になるのは実質的にデジタル/アナログ変換の相対解像度のみであり、従って、粗いデジタル/アナログ変換器の厳密に線形の変換器特性を不要にすることができるので、粗いデジタル/アナログ変換器の実施のためのコストを低く保つために、粗いデジタル/アナログ変換器が、非線形変換器特性を有することは有利である。
この場合、好ましくは、粗いデジタル/アナログ変換器は、ミラーの傾斜角と少なくとも1つのアクチュエータにおいて印加される全体量との間の関係を表す関数の逆関数に対応する変換器特性を有する。その結果、静電アクチュエータが用いられる場合に生成される印加電圧へのミラーの傾斜角の2次関数的依存性を例えばこの変換器特性を利用して補償することができ、駆動電子機器の残りの部分は、この依存性に対処しなくてもよい。
【0015】
本発明の別の有利な構成によると、駆動電子機器は、粗いデジタル/アナログ変換器を少なくとも間接的に駆動するように構成された開ループ制御ユニットを含む。それによって制御ループを持たない制御系を用いて、ミラーの傾斜角の望ましい傾斜角に対する粗い近似が可能になる。
開ループ制御ユニットが用いられる場合に、照明系が、ミラーの実際の傾斜を測定するための測定系を含み、測定系が、パターンを検出するように構成された検出器、及び全体パターン内で検出パターンを検索するためのパターン認識系を含むならば特に有利である。この場合、パターン認識系が、例えば、開ループ制御ユニットと同じ信号又は制御ユニットから発する信号を受け取ることにより、パターン認識系の検索は、全体パターンのサブ領域に限定することができる。その結果、パターンを検索する目的に対して僅かな計算パワーしか必要とされない。
【0016】
有利な態様においては、駆動電子機器は、細かいデジタル/アナログ変換器を少なくとも間接的に駆動するように構成された閉ループ制御ユニットを含むとすることができる。閉制御ループを用いて作動し、細かいデジタル/アナログ変換器を駆動する閉ループ制御ユニットを利用すると、ミラーの傾斜角を正確に設定することができる。特に、傾斜角の変化として表れる比較的小さい機械的又は電気的な摂動をこの手段によって高解像度で補正することができる。
【0017】
更に、駆動電子機器は、粗いデジタル/アナログ変換器及び/又は細かいデジタル/アナログ変換器のためのデジタル情報が座標変換を受けるように構成された座標変換ユニットを含むことができる。その結果、アクチュエータ駆動とミラーの実際の傾斜との間のより複雑な関係を記録することができる。特に、これは、ミラーの傾斜がいくつかのアクチュエータ、例えば、3つのアクチュエータの組合せによる駆動に依存する場合に重要である。
【0018】
ミラーを駆動するための本発明による方法に関しては、その目的は、以下の段階を用いて達成される。最初に、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータを用いて傾斜させることができるミラーを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系が準備される。次に、第1のデジタル情報項目及び第2のデジタル情報項目が提供される。次に、第1のデジタル情報項目が、第1の解像度を有する第1のアナログ量に変換される。この後に、第2のデジタル情報項目が、第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する第2のアナログ量に変換される。最後に、2つのアナログ量が加算されて全体量が生じ、この全体量が、少なくとも1つのアクチュエータに少なくとも間接的に印加される。本方法により、実施することが高価であり、大きい値範囲と高い解像度の両方を有する特に高い品質のデジタル/アナログ変換器を用いることなしに、ミラーのアクチュエータを大きい値範囲及び高い解像度で駆動することができるようにすることが可能になる。
【0019】
有利な態様において、上述の方法では、第1のデジタル情報項目は、開ループ制御によって提供することができ、第2のデジタル情報項目は、閉ループ制御によって提供することができる。開ループ制御が、既にアナログ全体量を望ましい作動点付近に大まかに配置していることにより、閉ループ制御は、高解像度での密な調整に向けて設計されたものとすることができる。
この場合、調整範囲が十分に小さいものとして選択され、閉ループ制御が線形調整系である場合、線形調整系は、特に、単純で安定したものとして設計することができるので、上記に加えて有利である。
有利な態様においては、閉ループ制御は、調節相と保持相とで別々に作動させることができ、従って、例えば、調整パラメータの修正によってオーバーシュート挙動に対して異なる帯域幅を設定することができる。
【0020】
本方法の別の有利な変形では、第1のデジタル情報項目は、最初にミラーを傾斜させるべき公称傾斜角を事前設定することによって提供される。その後、第1のデジタル情報項目は、開ループ制御によって公称傾斜角の関数として提供される。更に、本方法のこの変形では、少なくとも1つのアクチュエータへの全体量の少なくとも間接的な印加の後に以下の段階が反復して実行され、これらは、ミラーの実際の傾斜角を測定する段階と、実際の傾斜角と公称傾斜角の間の差を判断する段階と、差が事前設定された閾値よりも小さい場合に反復を終了する段階と、第2のデジタル情報項目を差の関数として判断する段階と、第2のデジタル情報項目を第2のアナログ量に変換する段階と、2つのアナログ量を加算して全体量をもたらす段階と、全体量を少なくとも1つのアクチュエータに印加する段階とである。それに応じて、本方法では、開ループ制御を用いて、実際の傾斜角の公称傾斜角への粗い近似が得られる。この後、実際の傾斜角は、実際の傾斜角と公称傾斜角の間の差が閾値よりも小さい時点まで、第2のデジタル情報項目の変換を利用して、公称傾斜角に高解像度で反復的に近似される。従って、本方法は、無限作動制御ループを必要とせずに、実際の傾斜角の設定を可能にする。実施中には、個々の段階に対して他のシーケンスを選択することができる。特に、例示的な実施形態によっては、異なる時点で又は更に別の段階中に付加的に、差と閾値の間の比較を実施することができる。本方法の異なる相においては、上記に加えて閾値を変更することができる。
【0021】
この反復法の有利な更に別の展開では、最大反復繰返し数は限られる。この手段により、アクチュエータの誤作動の発生時に、例えば、本方法の反復ループが終了することが保証される。
上述の方法の別の有利な更に別の展開によると、ミラーの傾斜に関する情報は、全体パターン内であるパターンを検索するパターン認識系によって提供することができる。この場合、パターン認識系は、第1のデジタル情報項目に応じて全体パターンのサブ領域に限定される。パターンの検索がより小さいサブ領域に限定されることにより、パターン認識系の計算労力が低減し、従って、この系は容易に達成することができる。
【0022】
別の態様によると、本発明の目的は、多ミラーアレイにおける複数のミラーのミラー位置をモニタする方法によって達成され、最初に、測定系によって測定される測定値が所定の指定範囲にある分散を伴って存在するように、サンプリング速度が判断される。しかし、次に、サンプリングは、いかなるエイリアシングももはや発生しないように選択されたN倍のサンプリング速度で、相応に高い分散を伴って実施される。最後に、N倍のサンプリング速度で存在する測定値は、平均化することによりフィルタリングされ、そのためにそれによって得られるフィルタリング値は、所定の指定範囲にある分散を伴って存在する。そのような方法の利点は、測定値の高いサンプリング速度の理由から、測定値に更に別の処理を受けさせる下流に接続した系内にいかなるエイリアシング信号も入り込まず、依然として測定値が指定範囲の分散を伴って存在するという事実にある。これは、特に、調整系では、調整系のエイリアシング信号が全体的な系の望ましくない振動を生じる可能性があることから有利である。本発明の概念の実現は、上述の2部構成のデジタル/アナログ変換とは独立して可能であるが、有利な構成では、上述の駆動装置及び方法との組合せを意図している。
有利な態様においては、上述の工程では、N倍のサンプリング速度は、ナイキストの定理に従って判断される。ナイキストの定理は、いかなるエイリアシングも発生しないことを保証するために、アナログ信号の最も高い発生周波数を少なくともこの周波数の2倍でサンプリングすべきであると説明している。
【0023】
本発明の更に別の態様は、多ミラーアレイで配置された複数のミラーを含み、ミラーの傾斜運動を測定及び調整するための測定及び調整系を含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系に関する。本発明によると、測定及び調整系は、傾斜運動を不規則な時間間隔で測定するように構成される。測定値の不規則な時間間隔での測定は、デジタル化の間のエイリアシング信号の発生を防止する。この場合、「不規則」は、個々の測定値間の期間が、アナログ信号の発生周波数に関連して周期的に繰返してはならないことを意味する。本発明の概念は、2段のデジタル/アナログ変換とは独立して達成することができる。しかし、2段のデジタル/アナログ変換との組合せは、本発明の好ましい実施形態を提供する。
【0024】
本発明の更に別の態様は、多ミラーアレイで配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータを用いて傾斜させることができるミラーとミラーのための駆動電子機器とを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系に関する。ミラーの少なくとも1つのアクチュエータに印加される電圧を生成するために、駆動電子機器は、入力を含む積分ドライバ段と出力を含む微分段とを含み、微分段の出力は、積分ドライバ段の入力に少なくとも間接的に接続される。それによって従来のドライバ段に印加されることになる信号を有する微分段を通じて、従来のドライバ段と比較して少ない空間要件及び少ない電力消散をもたらす積分ドライバ段を駆動することが可能になる。その結果、駆動電子機器の他の回路部分を保持することができる。
【0025】
特定用途向け集積回路内での積分ドライバ段の実施は、好ましくは、駆動されるミラーの面積の50%よりも少ない面積要件しか必要としない。その結果、ドライバの過度の空間要件に起因する異なる信号伝達時間という負担なしに、ミラー毎に少なくとも2つのアクチュエータを駆動することができる。
以上の全ての方法及び装置は、その効率的な作動モードに起因して、少なくとも1000個のミラー、好ましくは、4000個のミラーをモニタ及び駆動するのに特に適している。
本発明の更に別の特徴及び利点は、図面を参照して以下の例示的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】マイクロリソグラフィ投影露光装置のための本発明による多ミラーアレイを有する照明系を通じた略子午断面図である。
【図2】照明系のいくつかのミラーを有する多ミラーアレイの略斜視図である。
【図3】多ミラーアレイの個々のミラーのミラー位置を駆動するために照明系の様々な構成要素が如何に相互に作用するかを示す非常に概略的な図である。
【図4】ミラー及びそれに関連付けられた静電アクチュエータを有するミラーユニットの略斜視図、並びに静電アクチュエータを駆動するデジタル/アナログ変換器ユニット及びドライバを有する電力電子機器の略回路図である。
【図5】粗いデジタル/アナログ変換器と細かいデジタル/アナログ変換器とを有する2部構成のデジタル/アナログ変換器ユニットを用いた個々のミラーユニットの駆動の本発明による制御及び調整の概略図である。
【図6】信号処理段が下流に接続したミラー位置のモニタの概略図である。
【図7】電力電子機器の粗いデジタル/アナログ変換器と細かいデジタル/アナログ変換器とに共通のデジタル情報項目が供給される更に別の例示的な実施形態の概略図である。
【図8】電力電子機器内に用いられるドライバの概略図である。
【図9】ドライバの作動モードのブロック図である。
【図10】従来技術によるドライバの回路図及び可能な実施レイアウトを示す図である。
【図11】微分段と積分ドライバ段とを用いる本発明によるドライバの回路図及び可能な実施レイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
照明系
図1は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系10を大幅に簡略化した子午断面図に示す。照明系10は、結像されるリソグラフィ構造を保持するマスク12を投影光で照明するように機能する。次に、示していない投影対物系が、照明される構造を感光レジストで被覆したウェーハ上に通常はサイズを縮小して投影する。
この点に関して、マイクロリソグラフィ投影露光装置の結像特性を決定的に左右する重要な要素は、投影光の角度分布である。この角度分布は、マスク点上に入射する光の合計強度の光がこのマスク点上に入射する際の異なる入射角に対する分布を意味すると理解すべきである。特に、可能な限り最適な結像を得るために、投影光の角度分布を照明される構造の種類に適応させることが望ましい。
この目的で、照明系10は、その光線経路内に複数の光学要素を含み、図1では、これらの光学要素を単に略式に又は全く再現していない。
【0028】
レーザ14又は別の光源によって生成される投影光は、最初に第1の光学要素16によって拡大され、平面ミラー18を通じてマイクロレンズアレイ20上に誘導される。平面ミラー18は、主に照明系10の外部寸法をコンパクトに保つように機能する。
更に光路を辿ると、投影光は、いわゆる多ミラーアレイ22上に入射し、この多ミラーアレイ22に対しては、図2を参照して以下により詳細に解説することにする。多ミラーアレイ22は、好ましくは、個々に傾斜させることができる複数のマイクロミラー24を含む。この点に関して、上流に置かれたマイクロレンズアレイ20は、投影光の個々の部分光ビームをマイクロミラー24上に誘導する。
【0029】
個々のマイクロミラー24は、投影光の部分光ビームが、第2の光学要素28を通じて瞳平面30を自由に選択可能な位置で通過するように傾斜させることができる。この瞳平面30の近くに配置されたフライアイインテグレーター32は、瞳平面30内に複数の2次光源を生成し、これらの2次光源は、第3の光学要素34を通じて、調節可能な絞り要素38が配置された中間視野平面36を均一に照明する。この点に関して、第3の光学要素34は、瞳平面30内の角度と中間視野平面36内の位置の間に対応性を生成する。中間視野平面36は、対物系40により、マスク12が配置されたマスク平面上に投影される。その結果、瞳平面30内の強度分布は、中間視野平面36内の照明角度分布だけではなく、マスク平面内の照明角度分布をも決める。
従って、多ミラーアレイ22の個々のマイクロミラー24の異なる傾斜運動の結果として、投影光の異なる角度分布を極めて柔軟に設定することができる。マイクロミラー24の適切な駆動が与えられた場合には、露光中であっても角度分布を変更することができる。
【0030】
多ミラーアレイ
図2は、個々のマイクロミラー24が平面であり、かつ正方形の輪郭を有する多ミラーアレイ22の略斜視図を示している。
光線経路内で前にあるマイクロレンズアレイ20のレンズによって生成された入射部分光ビームを瞳平面30内の任意の位置に誘導するために、各マイクロミラー24は、2つの傾斜軸x及びyの回りに傾斜させることができるように装着される。傾斜軸x、yの回りの実際の傾斜は、示していないアクチュエータによって制御することができ、マイクロミラー24を個々に駆動することができるためには、一般的に、各マイクロミラー24に、その独自のアクチュエータの組を割り当てる必要がある。従って、マイクロミラー24及びそれに関連付けられたアクチュエータは、ミラーユニット42を形成するように組み合わせることができる。
多ミラーアレイ22内のミラーユニット42の個数が大きい程、瞳平面30内の強度分布をより微細に解像することができる。2つの傾斜軸x、yの回りに傾斜させることができる数千個のマイクロミラー24を有する多ミラーアレイ22が考えられる。そのような種類の多ミラーアレイ22は、例えば、MEMS技術を用いて製造することができ、様々な作動法を採用することができる。
【0031】
駆動の構造的スキーム
図3は、照明系10の様々な構成要素が、多ミラーアレイ22を駆動するために如何に相互に作用するかを概略図で示している。
MEMS技術を用いて製造された多ミラーアレイ22は、個々のミラーユニット42のアクチュエータを駆動する目的に必要なアナログ制御信号を生成する電力電子機器44に接続される。電気アナログ信号における摂動を小さく保つためには、電気アナログ信号をミラーユニット42のアクチュエータに可能な限り近く生成すべきである。複数のミラーユニット42の理由から、電力電子機器44の設計では、上記に加えて、個々の回路部分の空間要件を小さく保つことを保証するように注意を払わなければならない。
【0032】
デジタル制御及び調整デバイス46により、電力電子機器44には、出力されるアナログ信号の個々の値をデジタル的に符号化するデジタル情報が適用される。実施されている駆動及び調整アルゴリズムの要件によっては、デジタル制御及び調整デバイス46は、FPGA、又は例えば適切にプログラムされたアルゴリズムを有するDSPマイクロプロセッサのようなマイクロプロセッサとして実現することができる。
個々のマイクロミラー24の望ましい傾斜を設定するために、デジタル制御及び調整デバイス46は、照明系10のオペレータインタフェース48とデータを交換する。通常、市販のPCが、オペレータインタフェース48の機能を実行する。そのようなオペレータインタフェース48では、オペレータは、照明系10の他のパラメータに加えて、瞳平面30の望ましい照明を指定することができる。
【0033】
瞳平面30のこの望ましい照明から始めて、次に、瞳アルゴリズム50は、多ミラーアレイ22のどのマイクロミラー24によって瞳平面30のどの点が照明されるかを選択する。瞳アルゴリズム50は、図3に示しているように、オペレータインタフェース48のプログラム区画として作動することができ、又はデジタル制御及び調整ユニット46内に一緒に統合されたものとすることができる。
オペレータインタフェース48を用いると、多ミラーアレイ22の状態に関する情報を更に精査することができる。従って、デジタル制御及び調整デバイス46は、例えば、機能不全ミラーユニット42に関する情報をオペレータインタフェース48に通信することができる。その後、この情報は、例えば、個々のマイクロミラー24を照明される瞳平面30の点に割り当てる際に機能不全ミラーユニット42を考慮に入れるために、瞳アルゴリズム50を用いることができる。一方、この情報は、場合によってはマイクロリソグラフィ投影露光装置の作動を中断して保守作業を実施するために、オペレータに対してアクセス可能にすることができる。
【0034】
光学測定系
多ミラーアレイ22を駆動する間に閉制御ループを有する閉ループ制御が作動状態に入ると、デジタル制御及び調整デバイス46は、上記に加えて、個々のマイクロミラー24のミラー位置をモニタする測定系52とデータを交換する。
この目的のために、測定系52には、測定光を用いてマイクロミラー24を照明する別の光源54が設けられる。別の光源54の測定光が瞳平面30を通過し、その後、マスク12上に入射することを回避するために、別の光源54は、測定光の入射角が投影光のものとは異なるように配置される。個々のマイクロミラー24上での反射の後に、測定光は、検出器56上に入射する。
【0035】
用いられている測定系52によっては、別の光源54は、例えば、レーザビームを各個々のマイクロミラー24上に誘導することができるVCSELアレイ(垂直空洞面発光レーザ)を含むことができる。次に、反射レーザビームは、例えば、4つの四分円検出器として構成され、従って、位置を感知する検出器56上に入射する。その後、測定系52又はデジタル制御及び調整デバイス46のいずれかにアルゴリズムの形態で含まれる評価系57により、位置感知検出器56上のレーザビーム位置から、それぞれのマイクロミラー24の実際の傾斜を判断することができる。
【0036】
パターン認識を用いた光学測定系
別の種類の測定系52では、別の光源54は、多ミラーアレイ22の面全体を照明する全体パターンを生成する。次に、例えば、カメラのような検出器56として機能する適切に配置された記録光学系が、個々のマイクロミラー24上に見ることができるパターンを記録する。次に、測定系52又はデジタル制御及び調整デバイス46内に実現されるパターン認識系を用いて、記録されたパターンの全体パターン内の位置を判断することにより、評価系57によって個々のマイクロミラー24の傾斜が判断される。
示している測定系52に関する更に別の具体的内容は、WO2008/095695から推断することができ、その内容は、引用により、この範囲に対して本出願の主題を形成するものとする。
【0037】
ミラーユニット
この例示的な実施形態では、ミラーユニット42のマイクロミラー24を傾斜させる目的で、異なる電位にある2つの対向電極間の静電引力に基づくアクチュエータが用いられる。
図4は、MEMS技術を用いて実現された静電アクチュエータを有するそのようなミラーユニット42の必須構成要素を大幅に簡略化した斜視図で示している。ミラーユニット42の矩形の平面マイクロミラー24は、カルダン懸架器型の示していない固接部を通じて2つの傾斜軸x及びyの回りに傾斜させることができるように装着される。マイクロミラー24と固接部の両方は、Siウェーハ内でリソグラフィ構造を用いて製造される。マイクロミラー24は、その上向きミラー面58上に、投影光のほぼ完全な反射を保証する反射コーティングを保持する。
【0038】
マイクロミラー24の下向きの背面上には、例えば、金属の蒸着の結果として導電ミラー電極60が配置される。セラミックスペーサを用いて、円盤セグメントの形態にある3つの制御電極E1、E2、及びE3が、ミラー電極60から離れたある一定の間隔の位置に配置される。
ここで、マイクロミラー24を傾斜させる目的で、ミラー電極60と個々の制御電極E1、E2、及びE3の間に静電力が作用し、これらの静電力から、固接部の復元トルクと併せてマイクロミラー24のある一定の傾斜が生じるように、ミラー電極60と3つの制御電極E1、E2、及びE3の間に様々な電圧が印加される。この点に関して、ミラー電極60を一方とし、3つの制御電極E1、E2、及びE3を他方として、これらの電極の間に印加される電圧が大きい程、これらの電極は互いにより強い引力を作用し、ミラー面58は、それぞれの制御電極E1、E2、又はE3の方向により大きく傾く。
【0039】
それに応じて、マイクロミラー24の傾斜は、印加電圧のマグニチュードによって調節することができる。提供した例示的な実施形態では、この目的に必要な電圧は、0Vと200Vの間、好ましくは、0Vと100Vの間の範囲にあり、マイクロミラー24の傾斜角を十分な精度で調節することができるように、0.05Vのステップ、好ましくは、更に小さいステップで精密に調節することができなければならない。
静電力は、印加電圧の符号には依存しないので、他の例示的な実施形態では、負の電圧を用いることができる。更に、制御可能電圧とは独立して、これらの電極は、相応に制御可能電圧の必要範囲をシフトするバイアス電圧が事前に印加されたものとすることができる。
【0040】
図4の下部領域には、この目的に必要な電力電子機器44のいくつかの回路構成要素を示している。
3つの制御電極E1、E2、及びE3とミラー電極60との間に印加される高電圧は、ミラー電極60、及び各場合に制御電極E1、E2、及びE3のうちの1つに出力が接続される3つの等しく構成されたドライバ、この場合はドライバ62によって生成される。
各ドライバ62は、更に、増幅される入力信号として、図5及び図6を参照して以下になお一層詳細に解説することにするデジタル/アナログ変換器ユニット64のアナログ出力信号を受け取る。
【0041】
3つのデジタル/アナログ変換器ユニット64は、共通のデジタルデータバス66に連結され、デジタルデータバス66から出力されるアナログ電圧をデジタル情報の形態で受け取る。データバス66は、いくつかのミラーユニット42を駆動するために電力電子機器44内に延びることができる。
全てのミラーユニット42に対するドライバ62及びデジタル/アナログ変換器ユニット64の電気回路は、周辺のアドレス指定回路を例外として電力電子機器44内で実質的に等しく繰り返されるので、これらの電気回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)内でコンパクトな方式に実施することができる。特に、関連付けられたデジタル/アナログ変換器ユニット64を有する各ドライバ62は、ユニットとしてコンパクトな方式で構成されたものとすることができる。
【0042】
2部構成デジタル/アナログ変換概念による制御及び調整
図5は、多ミラーアレイ22の個々のマイクロミラー24の傾斜の開ループ制御及び閉ループ制御を概説する制御及び調整の概略図を示している。
上述のように、マイクロミラー24を駆動する間に可能な限り高い柔軟性を得るために、デジタル制御及び調整デバイス46内の回路の広範囲にわたる部分は、デジタル回路又はプログラムとして実現される。その結果、要件によっては更に別のアルゴリズムを統合するか又はある一定の開ループ制御構成要素又は閉ループ制御構成要素を不要にすることが容易に可能である。従って、図示の制御及び調整の概略図は、構成要素を省略又は追加することによって適応させることができる例示的な変形しか示していない。
【0043】
図5の制御及び調整の概略図から明らかなように、駆動電子機器44に収容されたデジタル情報をアナログ信号へと変換するためのデジタル/アナログ変換器ユニット64は、粗いデジタル/アナログ変換器68、細かいデジタル/アナログ変換器70、及び同じく電圧加算器72を提供するものである。
図4に示しているミラーユニット42の例示的な実施形態では、3つの制御電極E1、E2、及びE3が用いられるので、図5の制御及び調整の概略図においてもまた、3つのデジタル/アナログ変換器ユニット64及び3つのドライバ62は、特に部分的に隠れた破線の機能ブロックによって示している。しかし、簡略化の目的で、以下の記載内容は、制御電極E1、E2、及びE3のうちの1つの駆動の表現に限定される。
【0044】
2つのデジタル/アナログ変換器78、70は、細かいデジタル/アナログ変換器70が、粗いデジタル/アナログ変換器68よりも高い解像度を有することにおいて異なり、この場合「解像度」という用語は、そうでなければデジタル/アナログ変換器の場合に従来的であるような出力値の範囲の再分割のステップ数を表すのではなく、2つの出力値の間の最小の可能なステップを直接的に意味する。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器70の出力されるアナログ信号の最小の可能なステップは、粗いデジタル/アナログ変換器68のものよりも小さい。高い解像度は、多くの場合に、例えば、約−5Vから約+5Vのような小さい最大電圧範囲に関連付けられる。更に、細かいデジタル/アナログ変換器70を実施する際には、変換器70が可能な限り線形の変換器特性を有することを保証するように注意が払われる。
【0045】
一方、粗いデジタル/アナログ変換器68は、低い解像度及び大きい最大電圧範囲によって区別される。以下の説明記載内容から明らかなように、粗いデジタル/アナログ変換器68の場合には、上記に加えて、変換器特性の線形性に対する要求は、細かいデジタル/アナログ変換器70の場合程には厳しくない。限定的な事例では、変換器特性は厳密に単調関数だけに従わなければならない。
2つのデジタル/アナログ変換器68、70の出力は、電圧加算器72の入力に接続され、電圧加算器72は、更に、加算された合計電圧をデジタル/アナログ変換器ユニット64の出力において出力する。加算された合計電圧は、変換器ユニット64の出力から次のドライバ62に渡される。
【0046】
以下では、粗いデジタル/アナログ変換器68と細かいデジタル/アナログ変換器70との例示的な組合せを解説することにする。
上述のように、一般的に、マイクロミラー24には、0Vと200Vの間の電圧が必要である。従って、210=1024個の異なる出力値を表すことができる10ビットの粗いデジタル/アナログ変換器68の場合のドライバ62による信号増幅の後には、約0.2Vという最小の可能な電圧ステップが生成される。マイクロミラー24の精密な駆動のためには、アナログ信号のこの解像度は低すぎる。
【0047】
従って、電圧加算器72を利用して、6ビットの細かいデジタル/アナログ変換器70の第2の電圧値が、上述の粗いデジタル/アナログ変換器68によって出力された電圧値の上に加算的に重ね合わされる。細かいデジタル/アナログ変換器70の値範囲は、変換器70に続くドライバ62による信号増幅後には、0Vと1.3Vの間にある。従って、26=64個の異なる出力値では、細かいデジタル/アナログ変換器70は、約0.02Vの解像度(電圧ステップ)を有する。
【0048】
加算合計電圧を生じる電圧加算器72を利用した2つのデジタル/アナログ変換器68、70の出力値の加算により、この2段のデジタル/アナログ変換器概念を用いた信号増幅の後には、0.02Vという相対解像度が得られる。
この点に関して、「相対解像度」は、全体的なデジタル/アナログ変換器ユニット64が、細かいデジタル/アナログ変換器70によって予備設定された小さい出力電圧範囲に限って0.02Vの電圧ステップという解像度を有することを意味する。すなわち、合計電圧は、0.02Vだけ変更することはできるが、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧ステップは、常に厳密に0.2Vに対応するわけではないので、0.02Vの変更は、粗いデジタル/アナログ変換器68の非線形性によって絶対合計電圧範囲に対しては正確に設定されない。
【0049】
それとは対照的に、理想的なデジタル/アナログ変換器は、合計電圧範囲にわたって、例えば、63.22Vの精密な出力を可能にすることになる固定解像グリッドを有することになる。しかし、例えば、「スイッチドキャパシタ」技術を用いて機能するデジタル/アナログ変換器は、特に、最上位ビット(MSB)を変更する間に、一般的に、可変的に大きい電圧ステップを提供する。従って、10ビットの粗いデジタル/アナログ変換器68の場合には、01.1111.1110から01.1111.1111への移行において、規則として、01.1111.1111から10.0000.0000へと変更する時のものとは異なる電圧ステップが生成される可能性があり、これは、01.1111.1111から10.0000.0000への変更の場合には、多くのコンデンサーを再充電すべきであるからである。
【0050】
しかし、ここでの場合と同様にデジタル/アナログ変換器ユニット64が、マイクロミラー24を調節することを目的とした調整系と共に用いられた場合には、出力される合計電圧が調整によって継続的に補正されるので、問題は、デジタル/アナログ変換器ユニット64の絶対解像度ではない。
デジタル/アナログ変換器の値範囲の上述の選択の場合には、64通りの異なる出力値を有する6ビットの細かいデジタル/アナログ変換器70は、10ビットの粗いデジタル/アナログ変換器68の約6つの解像度段と重ね合わさる。従って、対応する調整は、6ビットの細かいデジタル/アナログ変換器70を利用して、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧の非線形性、並びに時間ドリフトが干渉方式で出現しないという結果を生じる。
【0051】
図5の制御及び調整の概略図が更に示しているように、説明した2段のデジタル/アナログ変換器概念が用いられる場合には、閉ループ制御を特に有利な方式で開ループ制御と組み合わせることができる。この目的のために、粗いデジタル/アナログ変換器68が制御ループを用いずに制御され、細かいデジタル/アナログ変換器70が制御ループを用いて調整される2段のデジタル/アナログ変換器概念に適応させた2部構成系が用いられる。
図5に示している制御及び調整の概略図の上側の分岐は、開ループ制御に関する部分を示している。
【0052】
開ループ制御の主要な構成部分は、デジタル制御及び調整デバイス46の一部とすることができ、かつ逆系−力学モデルを含むことができる制御ユニット74である。略式に説明すると、制御ユニット74は、制御を受ける系の逆モデルにより、作動量の変化に対するマイクロミラー24の反応を予想し、次に、適切に最適化された作動量シーケンスを符号化形態にあるデジタル情報として出力する。この場合、作動量は、制御電極に印加される電圧であると理解すべきである。
この制御ユニット74によって出力されるデジタル情報は、座標変換ユニット76を通じて様々なデジタル/アナログ変換器ユニット64のうちの粗いデジタル/アナログ変換器68に渡される。
【0053】
座標変換ユニット76の役割は、マイクロミラー24の作動方式、例えば、マイクロミラー24が2つ、3つ、又は4つのいずれの個数のアクチュエータによって駆動されるか、及びマイクロミラー24の傾斜角が上流に接続した制御ユニット74に関して実質的に透過的な作動量にどの程度依存するかを保つことである。
しかし、座標変換ユニット76の機能は、粗いデジタル/アナログ変換器68によって部分的に実施するか、又は適切に単純な関係が与えられた場合には完全に実施することができる。従って、マイクロミラー24の傾斜角のアクチュエータに印加される電圧への実質的に2次関数的な依存性が存在する静電アクチュエータの場合には、この依存性は、粗いデジタル/アナログ変換器68の変換器特性内に事前に統合されているとすることができ、従って、座標変換ユニット76を不要にすることができる。
【0054】
図5に一点鎖線で表しているように、制御ユニット74は、上記に加えて測定系52の評価系57に接続される。その結果、評価系57は、制御ユニットから情報を受け取ることができ、従って、それによって例えばパターン認識系が用いられる場合には、全パターン内での検索パターンの検索がより小さい領域に限定される。
制御及び調整の概略図の下側の分岐によって例示している制御ループによる閉ループ制御は、調整器78、任意的な座標変換ユニット80、細かいデジタル/アナログ変換器70、及び同じくマイクロミラー24の実際の傾斜角を判断する測定系52を含む。
【0055】
調整器78は、その入力において、望ましい公称傾斜角と芳しくない再現性を有する実際の傾斜角との間の差として生じるいわゆる制御偏差を受け取る。
更に、調整器78は、パラメータ線82を通じて、調整器78の調整パラメータの変化に関する情報を受け取る。特に、パラメータ線82は、開ループ制御及び閉ループ制御に供給される公称傾斜角又はその変化に応じて駆動することができる。従って、調節相又は保持相の間に、閉ループ制御を異なる要件に適応させることができる。
【0056】
調整器78の出力信号は、座標変換ユニット80を通じてデジタル/アナログ変換器ユニット64の細かいデジタル/アナログ変換器70に印加される。細かいデジタル/アナログ変換器70の各々は、開ループ制御から到着する粗いデジタル/アナログ変換器68の出力電圧に電圧加算器72において加算される出力電圧を生成する。得られる加算された合計電圧は、次に、マイクロミラー24のアクチュエータに印加される。
通常の場合には、閉ループ制御は、ミラーユニット42に対して作用する小さい摂動zを相殺するだけでよく、従って、合計電圧の小さい値範囲まで低減することができるので、閉ループ制御を線形の調整として実行することができる。同じ理由から、ある一定の状況下では、座標変換ユニット80及び細かいデジタル/アナログ変換器70における適応変換器特性を不要とすることができる。
【0057】
粗いデジタル/アナログ変換器68の出力値範囲と細かいデジタル/アナログ変換器70の出力値範囲との上述の重ね合わせの理由から、2つのデジタル/アナログ変換器68、70の出力電圧の異なる組合せによってある一定の合計電圧を生成することができる。それにも関わらず、開ループ制御側において要求出力電圧と粗いデジタル/アナログ変換器68のデジタル入力情報との間の明確な対応性を可能にするために、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧は、この電圧が、要求出力電圧から細かいデジタル/アナログ変換器70の値範囲の半分を差し引いたものに可能な限り近づくように、制御ユニット74及びその後の座標変換ユニット76によって選択される。この後、電圧加算器72の出力において加算される合計電圧が、マイクロミラー24の制御電極E1、E2、及びE3のうちの1つにおいて印加される要求出力電圧に可能な限り近づくように、細かいデジタル/アナログ変換器70の出力値が、閉制御ループを利用して選択される。その結果、細かいデジタル/アナログ変換器70を利用して、要求出力電圧の上下で対称な調整範囲が閉ループ制御に対して利用可能である。
【0058】
公称傾斜角の変更の後には、制御ユニット74は、適切な場合は統合系−力学モデルに基づいて、粗いデジタル/アナログ変換器68の出力電圧を調節する。この後に、粗いデジタル/アナログ変換器68の電圧は、公称傾斜角の新しい変更が処理進行中の場合にのみ再度変更される。他の場合には、閉ループ制御は、細かいデジタル/アナログ変換器68及びそれに関連付けられた制御ループだけによって実施される。
【0059】
終了基準を有する反復制御ループ
制御を受ける系、すなわち、ミラーユニット42と電力電子機器44の両方に対して作用する摂動zが十分に小さい場合には、終了基準を有する反復法は、それ自体を制御ループの作動に対するものとして呈示する。
この場合、上述のように、最初に、粗いデジタル/アナログ変換器68の出力電圧が、制御ユニット74によって設定される。しかし、次に、制御ループは、無限制御ループとして作動せず、細かいデジタル/アナログ変換器70による最初の段階では、制御電極E1、E2、又はE3において印加される合計電圧は、調整器78を利用して適応される。この後、測定系52を利用して実際の傾斜角が判断され、公称傾斜角と比較される。この工程で確立された制御偏差が事前設定値を下回った場合には、制御ループは終了し、2つのデジタル/アナログ変換器68、70の2つの出力電圧は維持される。制御偏差が事前設定値よりも大きかった場合には、細かいデジタル/アナログ変換器70の出力電圧の更に別の適応段階が実施される。この段階は、制御偏差が事前設定値よりも小さいか又は事前設定最大反復回数に達する時点まで繰り返される。
終了基準により、デジタル制御及び調整デバイス46において、無限反復制御ループの場合におけるものよりも少ない計算容量しか必要とされない。解放された計算容量は、更に別の制御電極E1、E2、又はE3及びマイクロミラー24に対して用いることができ、従って、デジタル制御及び調整デバイス46の合計コストを低減することができる。
【0060】
測定系によるエイリアシングのない測定値の記録
閉ループ制御の実現は、マイクロミラー24の実際の傾斜角の同時に迅速、堅固、かつ精密な測定を必要とする。
多くのサンプリング測定系では、サンプリング速度と生成される測定不確実性の間にはある一定の関係が存在し、この場合、分散が、この不確実性に対する尺度として機能し、従って、高いサンプリング速度では、測定は、高い分散を伴ってのみ可能である。逆に、ミラー毎の長い測定時間は、測定値の低い分散、すなわち、低い測定不確実性を生じる。
【0061】
従って、測定系では、多くの場合に、測定値の要求精度から発して測定値の分散に対する上限が設定され、その後、この上限が、測定系の最大サンプリング速度を決める。
一方、ナイキストの定理は、ある一定の周波数を有する信号を記録する目的のためには、サンプリングが少なくとも2倍速いサンプリング速度で生成される必要があることを説明しており、これは、そうでなければいわゆるエイリアシング効果が発生し、信号が、低い偽周波数を有するうなりとして記録されるからである。PT2応答を有する機械系としてのミラー系は、殆どの場合、帯域が限られており、すなわち、ナイキストの定理によると生成されるミラーの摂動又は振動の最大周波数が存在するので、ミラー系の帯域幅によって最小サンプリング速度が判断される。
その結果、エイリアシングのないサンプリングという要件(すなわち、高サンプリング周波数)と低い分散(低い測定不確実性)とは互いに矛盾する。
【0062】
図6から明らかなように、説明した問題を回避するために、例えば、同様にデジタル制御及び調整デバイス46の一部としてアルゴリズムの形態で達成することができる信号処理段83が、測定系52の下流に接続される。
信号処理段83は、その入力において、測定系52から元のサンプリング値αiを受け取り、その出力においてフィルタリングされたサンプリング値βiを出力し、サンプリング値βiは、その後、デジタル制御及び調整デバイス46の閉ループ制御においてフィードバックの目的に用いられる。
【0063】
信号処理段83は、不確実性に露出されるサンプリング値αiからフィルタリングされたサンプリング値βiを計算するための様々なフィルタリング法を含むことができる。すなわち、例えば、いわゆるFIRフィルタ(有限インパルス応答フィルタ)を採用することができる。FIRフィルタは、有限長のインパルス応答が与えられた区分された通常はデジタルに実施されるフィルタである。しかし、例えば、2項フィルタ、ガウスフィルタ、又はIIRフィルタ、及び他のローパスフィルタのような他のフィルタを信号処理段83に対して用いることができる。
【0064】
FIRフィルタの適用の場合には、フィルタリングされたサンプリング値βiは、過去のサンプリング値αiと最新のサンプリング値αiとの線形組合せである。
【0065】
【数1】
【0066】
ここで、サンプリング値αiが分散σ2αを有し、αiの不確実性が相関しないと仮定すると、フィルタリングされたサンプリング値βiの分散σ2βに対して次式が成り立つ。
【0067】
【数2】
【0068】
分散が減少したサンプリング値βiを得るためには、矩形の帯域通過フィルタが候補として浮かび、すなわち、全てのフィルタ係数Ckは、1/Nに等しい。その結果、フィルタリングされたサンプリング値に対して次式が成り立つ。
【0069】
【数3】
【0070】
すなわち、フィルタリングされたサンプリング値βiは、元のサンプリング値αiの分布のN分の1を有する。矩形の帯域通過フィルタが用いられる場合には、フィルタリングされたサンプリング値βiは、過去のN個の元のサンプリング値αiの算術平均値に等しい。
【0071】
ここで、元のサンプリング値αiの要求分散σ2αが超過されないサンプリング速度fにおいて直接測定系52を作動させる代わりに、係数Nだけサンプリング速度を高め、元のサンプリング値αiに対して指定範囲外の高い(多くの場合にN倍の)分散σ2αを許容することは有利である。この場合、サンプリング速度の変化が、測定系52の分散しか変化させないことを仮定している。測定値の期待値は、サンプリング速度とは独立したものと仮定すべきである。
信号処理段83におけるデジタルフィルタリングにより、フィルタリングされたサンプリング値βiの分散は、その後、示したように約係数1/Nだけ低減し、すなわち、最初に要求された分散が再度得られる。N倍のサンプリング速度は、いかなるエイリアシングももはや発生しないように選択することができる(ナイキストの定理を参照されたい)。
【0072】
この時点で、フィルタリングされたサンプリング値βiは、N倍のサンプリング速度N*fでローパスフィルタリングによって減幅した帯域幅で存在する。いわゆるダウンサンプリングにより、適切な場合には、前と同様に測定値の分散を高めることなくサンプリング速度を低減することができる。その結果、最初に要求された分散を有するサンプリング値は、サンプリング速度fでエイリアシングを持たずに、又は明らかに低減したエイリアシングを有して存在する。
【0073】
原理的には、上記に応じてエイリアシング防止フィルタリングは、デジタルフィルタとして実現され、同時に高い分布を「相殺する」ためのいわゆるオーバーサンプリングが利用され、その結果、低エッジ斜度を有するフィルタを用いることができる。
測定系52による実際の傾斜角の記録の間のエイリアシング効果を回避するための別の可能性は、不規則な時間間隔で、特に、非周期的期間で測定値を記録することに基づいている。測定値の厳密に周期的な記録が回避されることにより、特に、その後の閉ループ制御の安定性に対して有害になる過度に高い周波数が、低周波数のエイリアシングのうなりの中で出現することはない。
【0074】
データバス
電力電子機器44の配線の複雑さを低減することができる1つの可能な手法を図7に示す。この例示的な実施形態では、デジタル情報は、デジタル/アナログ変換器ユニット64内で同様に共通のデータバス66上で、粗いデジタル/アナログ変換器68と細かいデジタル/アナログ変換器70とに伝送される。この工程では、2つのデジタル/アナログ変換器68、70内に統合された回路が、データバス66から対応する変換器のための情報を選択する。その結果、2段変換器概念にも関わらず、配線の複雑さは僅かしか増大しない。
【0075】
電子ドライバ
図8は、電力電子機器44内に用いられるドライバ62の概略図であり、注意される点は、上流に微分段86が接続した積分ドライバ段84である。
ドライバ62において印加される入力信号は、最初に微分段86に渡される。次に、微分段86の出力に印加された微分済み信号は、積分ドライバ段84に供給される。
積分ドライバ段84では、2つの絶対値要素88及び90を2つの電圧/電流変換器92及び94、及び同じく制御電極E1、E2、又はE3とミラー電極60の間の容量を表すことを意図したコンデンサー98に対する電流−ミラー回路96と併用することにより、微分段86から発する信号の積分が実施される。
マイクロ電子構成要素を静電放電から保護するために、電流−ミラー回路と積分ドライバ段84の出力との間にESD構成要素100が設けられる。
【0076】
図9は、本発明によるドライバ62をブロック図方式で示しており、それぞれの構成要素の入力に印加される信号の例示的信号形状を表している。
微分段86の入力では、微分の後にデルタ様の関数として積分ドライバ段84に伝送される電圧ジャンプが印加される。電力増幅として機能する積分ドライバ段84の電圧/電流変換の後に、信号は、積分器として機能するコンデンサー98に供給される。従って、ミラー電極と対応する制御電極E1、E2、又はE3の間には、増幅されたステップ電圧信号が得られる。
上述の例示的な実施形態では、既にアナログの信号が微分段86に渡されている。しかし、微分は、デジタル/アナログ変換の前に実施することができ、従って、微分段86は、デジタル/アナログ変換器68、70の上流に配置することができる。特に、微分段86は、デジタル制御及び調整デバイス46内にアルゴリズムとして統合されたものとすることができる。
【0077】
電子ドライバの実施
以下では、図10を参照して、図示の例示的な実施形態において「クラスA」ドライバ回路ではなく、微分段86と積分ドライバ段84とを経由するより複雑な経路を何故選択したかを解説することにする。
この目的のために、図10は、従来技術によるドライバ62の重要部分の回路図、及びASIC内での可能な実施レイアウトを示している。
ドライバ62のASIC内での実施の場合には、上側の回路図内に破線で囲まれた高電圧領域102の空間要件は、この領域が、そこで生成される大きな電流及び電圧という理由から、回路の全体的な空間要件のうちで大きい占有率を有することから特に重要である。
【0078】
示している従来のドライバ回路(「クラスA」回路)では、増幅された高出力電圧が、参照符号nd25aで示しているトランジスタ、及び抵抗器rpdを利用して生成される。トランジスタnd25aをその線形増幅範囲内で作動させるために、この場合は、その原理に起因して静的漏れ電流がトランジスタnd25a及び抵抗器rpdを通じて外部から供給される高電圧HV(供給電圧)から接地へと流れ、その結果、抵抗器rpd内で熱による大きい電力消散が生じる。抵抗器rpdは、この場合、約5MΩの高抵抗のものでなければならず、従って、実施レイアウトから明らかなようにドライバ回路内で大きな空間を占有する。
低電圧範囲104に必要な区域、端子コンタクトパッド、静電放電からの保護のためのESD構成要素100、ポリ−ポリコンデンサーcpp、及び同じく実施区域の縁部に設けられた配線領域106とあわせると、ASIC実施において800μm×1000μmの全体寸法が得られる。
【0079】
多ミラーアレイ24を設計する際には、ドライバ62の空間要件が、マイクロミラー24の面積よりも小さい(特に、大きさが半分である)ことを保証するように注意を払わなければならず、これは、そうでなければ、複数のマイクロミラー24が与えられた場合に端子の設計において問題が生じるからである。ドライバ62の空間要件がマイクロミラー24のものを超えた場合には、これらのドライバは、これらのドライバに割り当てられたマイクロミラー24から様々な距離の位置に置かれ、端子リードを付加的に設けなければならず、回路の空間要件が更に高まり、特に、様々な信号伝達時間が生じる。
【0080】
従って、ドライバ62の空間要件を低減するために、図11は、微分段86と積分ドライバ段84とを用いる本発明によるドライバ62の回路図及び可能な実施レイアウトを示している。
回路は、初見ではかなり複雑に見えるが、実施レイアウトからは、抵抗器rpdが不要であるから、ASIC内での回路の全体の空間要件が、800μm×650μmに明らかに低減していることが明白である。
【0081】
本発明によるドライバ62の電流−ミラー回路96は、回路図及び実施レイアウトから明らかなように、相応に参照符号nd25aで表しているnd25a型の2つのトランジスタ、及びpha型の2つのトランジスタを必要とする。しかし、これらの4つのトランジスタの空間要件は、従来のドライバ回路の場合における抵抗器rpdのものよりも小さく、それによってこの回路の全体空間要件は小さく、従って、小さいマイクロミラー24を有する多ミラーアレイ22の実現が可能である。
【0082】
結論
以上の方法及び装置は、僅かな適応化により、例えば、変形される面を有するミラーの場合におけるような複数のセンサチャンネル及び駆動チャンネルを用いたモニタ及び駆動が必要ないくつかのアクチュエータを有するEUVリソグラフィ系又は他の光学系と共に用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
68 粗いデジタル/アナログ変換器
70 細かいデジタル/アナログ変換器
72 加算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系(10)であって、
多ミラーアレイ(22)で配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)を用いて傾斜させることができるミラー(24)と、
該ミラー(24)のための駆動電子機器(44、46)と、
を含み、
前記駆動電子機器(44、46)は、
a)第1の解像度を有する粗いデジタル/アナログ変換器(68)、
b)前記第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する細かいデジタル/アナログ変換器(70)、及び
c)前記2つのデジタル/アナログ変換器(68、70)によって出力された出力量を加算して、前記ミラー(24)の前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に少なくとも間接的に印加することができる全体量をもたらすように構成された加算器(72)、
を含む、
ことを特徴とする照明系。
【請求項2】
前記出力量は、電圧であり、前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)は、第1の出力電圧範囲を有し、前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)は、第2の出力電圧範囲を有することを特徴とする請求項1に記載の照明系。
【請求項3】
前記第2の出力電圧範囲は、前記第1の出力電圧範囲よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の照明系。
【請求項4】
前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)によって出力される出力電圧は、前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に印加される望ましい合計電圧が、前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)によって出力される電圧が前記第2の出力電圧範囲の中央にある場合に得られるような方法で選択することができることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の照明系。
【請求項5】
前記第2の出力電圧範囲は、0Vの上下で対称であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項6】
前記第2の出力電圧範囲は、約−5Vから約+5Vの最大電圧範囲内に位置することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項7】
前記2つのデジタル/アナログ変換器(68、70)は、それらに共通のデジタル入力信号を印加することができるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項8】
前記2つのデジタル/アナログ変換器(68、70)は、それらに異なるデジタル入力信号を印加することができるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項9】
前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)は、非線形変換器特性を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項10】
前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)は、前記ミラー(24)の傾斜角と前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)において印加される前記全体量との間の関係を表す関数の逆関数に対応する変換器特性を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項11】
前記駆動電子機器(44、46)は、前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)を少なくとも間接的に駆動するように構成された開ループ制御ユニット(74)を含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項12】
パターンを検出するように構成された検出器(56)と全体パターン内で該検出されたパターンを検索するためのパターン認識系(54)とを含む前記ミラー(24)の実際の傾斜を測定するための測定系(52)、
を含み、
前記パターン認識系の前記検索は、前記全体パターンのサブ領域に限定される、
ことを特徴とする請求項11に記載の照明系。
【請求項13】
前記駆動電子機器(44、46)は、前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)を少なくとも間接的に駆動するように構成された閉ループ制御ユニット(78)を含むことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項14】
前記駆動電子機器(44、46)は、前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)及び/又は前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)に対して意図されたデジタル情報に座標変換を受けさせるように構成された座標変換ユニット(76、80)を含むことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項15】
ミラーを駆動する方法であって、
a)多ミラーアレイ(22)で配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)を用いて傾斜させることができるミラー(24)を収容するマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系(10)を準備する段階、
b)第1のデジタル情報項目を提供する段階、
c)第2のデジタル情報項目を提供する段階、
d)前記第1のデジタル情報項目を第1の解像度を有する第1のアナログ量に変換する段階、
e)前記第2のデジタル情報項目を前記第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する第2のアナログ量に変換する段階、
f)前記2つのアナログ量を加算して全体量をもたらす段階、
g)前記全体量を前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に少なくとも間接的に印加する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1のデジタル情報項目は、開ループ制御(74)によって提供され、前記第2のデジタル情報項目は、閉ループ制御(78)によって提供されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記閉ループ制御(78)は、線形調整系であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記閉ループ制御(78)は、調節相及び保持相において別々に作動することを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のデジタル情報項目の前記提供は、
b1)前記ミラー(24)が傾斜される公称傾斜角を事前設定する段階、
b2)開ループ制御(74)を用いて前記第1のデジタル情報項目を前記公称傾斜角の関数として提供する段階、
を含み、
段階g)の後に、以下の段階が反復して実行され、該段階は、
h)前記ミラー(24)の実際の傾斜角を測定する段階、
i)前記実際の傾斜角と前記公称傾斜角の間の差を判断する段階、
j)前記差が事前設定閾値よりも小さい場合に前記反復を終了する段階、
k)前記第2のデジタル情報項目を前記差の関数として判断する段階、
l)前記第2のデジタル情報項目を前記第2のアナログ量に変換する段階、
m)前記2つのアナログ量を加算して全体量をもたらす段階、
n)前記全体量を前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に印加する段階、
である、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
反復的繰返しの最大数が、制限されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ミラー(24)の傾斜に関する情報が、全体パターンにおけるパターンを検索するパターン認識系によって提供され、
前記パターン認識系は、前記第1のデジタル情報項目に応じて前記全体パターンのサブ領域に限定される、
ことを特徴とする請求項15から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
多ミラーアレイ(22)における複数のミラー(24)のミラー位置をモニタする方法であって、
a)測定値が所定の指定内にある分散を有して存在するように測定値が測定系(52)によって測定されるサンプリング速度を判断する段階、
b)エイリアシングがもはや発生しないような方法で選択されたN倍サンプリング速度で、かつ相応に高い分散を用いてサンプリングする段階、
c)得られるフィルタリングされた値が前記所定の指定内の分散を有して存在するように、N倍サンプリング速度で存在する前記測定値を平均化することによってフィルタリングする段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
段階b)において、前記N倍サンプリング速度は、ナイキストの定理に従って判断されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系であって、
多ミラーアレイ(22)で配置された複数のミラー(24)と、
前記ミラーの傾斜運動を測定及び調整するために該傾斜運動を不規則な時間間隔で測定するように構成された測定及び調整系と、
を含むことを特徴とする照明系。
【請求項25】
多ミラーアレイ(22)で配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)を用いて傾斜させることができるミラー(24)と、該ミラー(24)のための駆動電子機器(44、46)とを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系であって、
ミラー(24)の少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に印加される電気信号を発生させるための駆動電子機器(44、46)が、入力を含む積分ドライバ段(84)と出力を含む微分段(86)とを含み、該微分段(86)の該出力は、該積分ドライバ段(84)の該入力に少なくとも間接的に接続されている、
ことを特徴とする照明系。
【請求項26】
前記積分ドライバ段(84)の特定用途向け集積回路における実施が必要とする面積要件が、駆動されるミラー(24)の面積の50%よりも小さいことを特徴とする請求項25に記載の照明系。
【請求項27】
マイクロミラーアレイのマイクロミラーを駆動するための装置であって、
到着信号を微分するための微分段を有し、
入力及び出力を有する積分ドライバ段を有し、
前記微分段の出力が、前記ドライバ段の前記入力に接続され、かつ
前記ドライバ段の前記出力は、マイクロミラーアレイの少なくとも1つの入力に接続される、
ことを特徴とする装置。
【請求項28】
マイクロミラーアレイのマイクロミラーを駆動する方法であって、
a)到着信号を微分する段階、
b)前記微分された信号を次に積分する段階、
c)前記積分された信号をマイクロミラーアレイの入力に供給する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
デジタル/アナログ変換の目的に対して、2段の概念が、大きい範囲の値を有するデジタル/アナログ変換器の電圧が小さい範囲の値を有するデジタル/アナログ変換器の電圧と加算的に重ね合わされる用途を見出すことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項1】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系(10)であって、
多ミラーアレイ(22)で配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)を用いて傾斜させることができるミラー(24)と、
該ミラー(24)のための駆動電子機器(44、46)と、
を含み、
前記駆動電子機器(44、46)は、
a)第1の解像度を有する粗いデジタル/アナログ変換器(68)、
b)前記第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する細かいデジタル/アナログ変換器(70)、及び
c)前記2つのデジタル/アナログ変換器(68、70)によって出力された出力量を加算して、前記ミラー(24)の前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に少なくとも間接的に印加することができる全体量をもたらすように構成された加算器(72)、
を含む、
ことを特徴とする照明系。
【請求項2】
前記出力量は、電圧であり、前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)は、第1の出力電圧範囲を有し、前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)は、第2の出力電圧範囲を有することを特徴とする請求項1に記載の照明系。
【請求項3】
前記第2の出力電圧範囲は、前記第1の出力電圧範囲よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の照明系。
【請求項4】
前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)によって出力される出力電圧は、前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に印加される望ましい合計電圧が、前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)によって出力される電圧が前記第2の出力電圧範囲の中央にある場合に得られるような方法で選択することができることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の照明系。
【請求項5】
前記第2の出力電圧範囲は、0Vの上下で対称であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項6】
前記第2の出力電圧範囲は、約−5Vから約+5Vの最大電圧範囲内に位置することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項7】
前記2つのデジタル/アナログ変換器(68、70)は、それらに共通のデジタル入力信号を印加することができるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項8】
前記2つのデジタル/アナログ変換器(68、70)は、それらに異なるデジタル入力信号を印加することができるように構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項9】
前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)は、非線形変換器特性を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項10】
前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)は、前記ミラー(24)の傾斜角と前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)において印加される前記全体量との間の関係を表す関数の逆関数に対応する変換器特性を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項11】
前記駆動電子機器(44、46)は、前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)を少なくとも間接的に駆動するように構成された開ループ制御ユニット(74)を含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項12】
パターンを検出するように構成された検出器(56)と全体パターン内で該検出されたパターンを検索するためのパターン認識系(54)とを含む前記ミラー(24)の実際の傾斜を測定するための測定系(52)、
を含み、
前記パターン認識系の前記検索は、前記全体パターンのサブ領域に限定される、
ことを特徴とする請求項11に記載の照明系。
【請求項13】
前記駆動電子機器(44、46)は、前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)を少なくとも間接的に駆動するように構成された閉ループ制御ユニット(78)を含むことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項14】
前記駆動電子機器(44、46)は、前記粗いデジタル/アナログ変換器(68)及び/又は前記細かいデジタル/アナログ変換器(70)に対して意図されたデジタル情報に座標変換を受けさせるように構成された座標変換ユニット(76、80)を含むことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の照明系。
【請求項15】
ミラーを駆動する方法であって、
a)多ミラーアレイ(22)で配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)を用いて傾斜させることができるミラー(24)を収容するマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系(10)を準備する段階、
b)第1のデジタル情報項目を提供する段階、
c)第2のデジタル情報項目を提供する段階、
d)前記第1のデジタル情報項目を第1の解像度を有する第1のアナログ量に変換する段階、
e)前記第2のデジタル情報項目を前記第1の解像度よりも高い第2の解像度を有する第2のアナログ量に変換する段階、
f)前記2つのアナログ量を加算して全体量をもたらす段階、
g)前記全体量を前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に少なくとも間接的に印加する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1のデジタル情報項目は、開ループ制御(74)によって提供され、前記第2のデジタル情報項目は、閉ループ制御(78)によって提供されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記閉ループ制御(78)は、線形調整系であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記閉ループ制御(78)は、調節相及び保持相において別々に作動することを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のデジタル情報項目の前記提供は、
b1)前記ミラー(24)が傾斜される公称傾斜角を事前設定する段階、
b2)開ループ制御(74)を用いて前記第1のデジタル情報項目を前記公称傾斜角の関数として提供する段階、
を含み、
段階g)の後に、以下の段階が反復して実行され、該段階は、
h)前記ミラー(24)の実際の傾斜角を測定する段階、
i)前記実際の傾斜角と前記公称傾斜角の間の差を判断する段階、
j)前記差が事前設定閾値よりも小さい場合に前記反復を終了する段階、
k)前記第2のデジタル情報項目を前記差の関数として判断する段階、
l)前記第2のデジタル情報項目を前記第2のアナログ量に変換する段階、
m)前記2つのアナログ量を加算して全体量をもたらす段階、
n)前記全体量を前記少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に印加する段階、
である、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
反復的繰返しの最大数が、制限されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ミラー(24)の傾斜に関する情報が、全体パターンにおけるパターンを検索するパターン認識系によって提供され、
前記パターン認識系は、前記第1のデジタル情報項目に応じて前記全体パターンのサブ領域に限定される、
ことを特徴とする請求項15から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
多ミラーアレイ(22)における複数のミラー(24)のミラー位置をモニタする方法であって、
a)測定値が所定の指定内にある分散を有して存在するように測定値が測定系(52)によって測定されるサンプリング速度を判断する段階、
b)エイリアシングがもはや発生しないような方法で選択されたN倍サンプリング速度で、かつ相応に高い分散を用いてサンプリングする段階、
c)得られるフィルタリングされた値が前記所定の指定内の分散を有して存在するように、N倍サンプリング速度で存在する前記測定値を平均化することによってフィルタリングする段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
段階b)において、前記N倍サンプリング速度は、ナイキストの定理に従って判断されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系であって、
多ミラーアレイ(22)で配置された複数のミラー(24)と、
前記ミラーの傾斜運動を測定及び調整するために該傾斜運動を不規則な時間間隔で測定するように構成された測定及び調整系と、
を含むことを特徴とする照明系。
【請求項25】
多ミラーアレイ(22)で配置され、かつ少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)を用いて傾斜させることができるミラー(24)と、該ミラー(24)のための駆動電子機器(44、46)とを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系であって、
ミラー(24)の少なくとも1つのアクチュエータ(60、E1、E2、E3)に印加される電気信号を発生させるための駆動電子機器(44、46)が、入力を含む積分ドライバ段(84)と出力を含む微分段(86)とを含み、該微分段(86)の該出力は、該積分ドライバ段(84)の該入力に少なくとも間接的に接続されている、
ことを特徴とする照明系。
【請求項26】
前記積分ドライバ段(84)の特定用途向け集積回路における実施が必要とする面積要件が、駆動されるミラー(24)の面積の50%よりも小さいことを特徴とする請求項25に記載の照明系。
【請求項27】
マイクロミラーアレイのマイクロミラーを駆動するための装置であって、
到着信号を微分するための微分段を有し、
入力及び出力を有する積分ドライバ段を有し、
前記微分段の出力が、前記ドライバ段の前記入力に接続され、かつ
前記ドライバ段の前記出力は、マイクロミラーアレイの少なくとも1つの入力に接続される、
ことを特徴とする装置。
【請求項28】
マイクロミラーアレイのマイクロミラーを駆動する方法であって、
a)到着信号を微分する段階、
b)前記微分された信号を次に積分する段階、
c)前記積分された信号をマイクロミラーアレイの入力に供給する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
デジタル/アナログ変換の目的に対して、2段の概念が、大きい範囲の値を有するデジタル/アナログ変換器の電圧が小さい範囲の値を有するデジタル/アナログ変換器の電圧と加算的に重ね合わされる用途を見出すことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−507294(P2011−507294A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538480(P2010−538480)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010918
【国際公開番号】WO2009/080310
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010918
【国際公開番号】WO2009/080310
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
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