説明

マイクロ波イオン源、線形加速器システム、加速器システム、医療用加速器システム、高エネルギービーム応用装置、中性子発生装置、イオンビームプロセス装置、マイクロ波プラズマ源及びプラズマプロセス装置

【課題】軸方向磁場の強度変化によるプラズマ密度或いはイオンビーム電流の変化を低減し、精密な磁場調整なしでビーム電流を安定化するマイクロ波イオン源或いはプラズマ源と、それを利用した線形加速器システム、医療用加速器システム等の機器等の応用装置を提供する。
【解決手段】永久磁石6を放電容器4の周囲に16個、隣り合う磁石の極性が異なるように設置し、放電で発生するプラズマを閉じ込める多極磁場B2を放電容器壁近傍に局部的に発生させる。また、この多極磁場により軸方向磁場B1の変化によるプラズマ密度の変化が低減され、電極9a〜9cの孔より引き出されるイオンビームの電流の変化も低減される。これにより磁場B1の精密な調整なしでイオンビーム電流を安定化できる。また、軸方向磁場B1を永久磁石15で発生させた場合でも、大電流のイオンビームが安定に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波放電で生成したプラズマ中よりイオンビームを引出すマイクロ波イオン源、マイクロ波イオン源から引き出されたイオンビームを加速する線形加速器システム及び加速器システム、その加速したイオンビームを人体等に照射することにより医学的応用(治療,滅菌他)を行う医療用加速器システム、その加速したイオンビームを被処理物に照射することによって半導体の生成、材料の改質、加工、ラジオアイソトープの製造等を行う高エネルギービーム応用装置、中性子発生装置及びイオンビームプロセス装置、マイクロ波放電でプラズマを生成するマイクロ波プラズマ源、及びマイクロ波放電で生成したプラズマを被処理物に照射することによって半導体の生成、材料の改質、加工等を行うプラズマプロセス装置に関する。また、本発明は、特に、高密度水素プラズマ生成、大電流陽子ビーム生成に適し、かつ他の多くのイオン種のプラズマとビームの生成に適用可能であるマイクロ波イオン源、線形加速器システム、加速器システム、医療用加速器システム、高エネルギービーム応用装置、中性子発生装置、イオンビームプロセス装置、マイクロ波プラズマ源及びプラズマプロセス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波による放電で陽子イオンビームを生成する従来のマイクロ波イオン源としては非特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
非特許文献1に記載のイオン源では、マグネトロンで発生したマイクロ波(2.45GHz)が導波管で輸送され、導入窓を通して円筒形の放電容器に導入される。放電容器の周囲にはソレノイドコイルが設置され、軸方向に磁場(最大磁束密度=90〜100 mT)が印加される。電子はマイクロ波電場により加速され、電子によるイオン化物質の電離により放電が発生し、放電容器内にプラズマが生成される。マイクロ波は生成されたプラズマ中を伝搬可能な固有モードの波動として伝搬し、放電容器中で定常的にプラズマを発生できる。イオン化物質としては水素ガスが用いられ、放電容器の側面の導入管より水素ガスが供給される。放電容器内で生成したイオンは、3枚の電極のビーム引出し孔を通して引出され、数十mAの大電流のイオンビームが生成される。
【0004】
非特許文献2に記載のイオン源では、非特許文献1と同種のイオン源において、放電容器内に軸方向磁場を形成する手段としてソレノイドコイルに代えて永久磁石を用いている。また、イオン源の作動中に磁場の微調整が行えるようにイオン源本体(放電容器)と永久磁石との間に小さな補助ソレノイドコイル(補助コイル)を配置している。非特許文献2の図6には、マイクロ波エネルギと水素ガスの供給量を一定にして補助コイルの電流を変えた場合のビーム電流の変化についての測定結果が示されている。この測定結果によれば、補助コイル電流を±10Aの範囲で変えるとビーム電流が20mA〜53mAの範囲で大きく変動している。また、補助コイル電流が5Aのときにビーム電流は最小の20mAを示し、補助コイル電流が8Aに増えるとビーム電流は最大の53mAまで大きく変化している。
【0005】
マイクロ波による放電で多価イオンビーム(例えば炭素イオンビーム)を生成する従来のマイクロ波イオン源としては非特許文献3に記載のものがある。
【0006】
非特許文献2に記載のイオン源では、電子サイクロトロン共鳴周波数と一致するマイクロ波が外部からプラズマチャンバーに導入され、プラズマチャンバー内で電子を高エネルギーに加速して主に炭素の多価イオンを生成し、イオンビームとして引き出される。プラズマチャンバ内にプラズマを封じ込めるため、プラズマチャンバの周囲に永久磁石(6極の多極磁石)が配置されている。マイクロ波の周波数は8〜11GHzであり、Cのビーム強度は340eμAである。
【0007】
一方、他のプラズマ生成方式として、特許文献1には、マイクロ波プラズマカソードを用いたバケット型のイオン源装置が記載されている。このイオン源装置では、電子放出源としてのマイクロ波プラズマカソードによるマイクロ波放電のプラズマ生成により電子を発生し、このカソードの蓋板に形成された電子放出孔から電子をバケット型の主プラズマ室に供給し、この電子の直流放電により主プラズマ室に主プラズマを生成し、その種プラズマからイオンビームが引き出される。主プラズマ室の周囲にはカスプ磁場発生用の永久磁石が配置され、主プラズマ室に生成された主プラズマがカスプ磁場により封じ込められる。カスプ磁場は主プラズマ室の周囲に配置した永久磁石により発生する。また、特許文献1では、このようなイオン源装置の主プラズマ室の外側に、イオンビームの中心軸方向の磁場を主プラズマ室に導入するコイルを配置し、引き出し電極近傍での主プラズマの高密度化を図っている。
【0008】
【非特許文献1】リビューオブサイエンティフィックインストゥルメンツ 75巻 (2004年) 第1894〜1896頁(Review of Scientific Instruments, Vol.75 (2004) P. 1894-1896)、"Development of a high-current microwave ion source for proton linac application systems"
【非特許文献2】リビューオブサイエンティフィックインストゥルメンツ 69(1)巻 (1998年1月) 第65〜68頁(Review of Scientific Instruments, 69(1), January 1998 P. 65-68)、"A compact high-current microwave-driven ion source"
【非特許文献3】第14回加速器科学技術シンポジウム 於いて筑波市 2003年11月(The 14th Symposium on Accelerator Science and Technology, Tsukuba, Japan, November 2003)、「炭素イオン生成用永久磁石形小型ECRイオン源」
【特許文献1】特開平5−82040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1記載のマイクロ波イオン源においては、ソレノイドコイルによって放電容器内に軸方向に磁場を印加し、マイクロ波放電によりプラズマを生成する。この場合、放電容器内に軸方向磁場を印加することにより、放電容器内に導入されたマイクロ波を軸方向前方へと誘導してマイクロ波放電の効率を高め、プラズマ密度を高めて大電流を高効率で生成することが可能となる。一方、この軸方向磁場については、磁場強度のわずかな変化により生成されるプラズマ密度が大きく変化し、イオンビーム電流が大きく変動するという問題がある(図4参照)。また、この軸方向磁場には、放電が不安定で安定なビーム発生ができない磁場強度も存在する。特に、非特許文献1記載のイオン源のように、水素ガスを用いて陽子イオンビームを得るイオン源では、イオンビームの電流値が数十mAの大電流であるため、軸方向磁場の変動によるプラズマ密度の変化(イオンビーム電流)は顕著となる。このため従来は、安定に大電流ビームを得るために、コイル電流を制御して、精密な磁場調整を行うことが必要であり、大電流直流電源と冷却システムが必要であった。また、その結果、コイルで数KWの高い電力が消費されるとともに、コイル及び冷却システムのためイオン源をコンパクト化することが困難であった。
【0010】
非特許文献1記載のマイクロはイオン源においては、放電容器内に軸方向磁場を形成する手段としてソレノイドコイルに代えて永久磁石を用いている。しかし、非特許文献1の図6に示されるように、永久磁石を用いた場合であっても、補助コイル電流(磁場強度)のわずかな変化によりビーム電流(プラズマ密度)が大きく変化しており、ソレノイドコイルに代えて永久磁石を用いても上記の課題は解決されていないことが分かる。つまり、ソレノイドコイルに代えて永久磁石を用いただけでは、磁場調整ができないため、軸方向磁場を発生させ安定に大電流ビームを得ることは難しい。
【0011】
一方、イオン源等のプラズマ発生技術においては、一般に、プラズマチャンバ内にプラズマを封じ込めて損失を低減するため、プラズマチャンバの周囲に多極磁石(永久磁石)を配置することが知られている。非特許文献3や特許文献1記載のイオン源においても、その目的のため、プラズマチャンバの周囲に永久磁石を配置している。しかし、非特許文献3では、軸方向磁場の変動によるプラズマ密度の変化(イオンビーム電流)を低減するという観点からの検討はなされておらず、永久磁石に上記のような課題(マイクロ波放電によりプラズマが生成される際の軸方向磁場の変動によるプラズマ密度(イオンビーム電流)の変化)に係わる機能を持たせることは考えられていない。特許文献1では、主プラズマ室内にマイクロ波が導入されないタイプであるため、主プラズマ室にマイクロ波が導入されることを前提とする上記のような課題(マイクロ波放電によりプラズマが生成される際の軸方向磁場の変動によるプラズマ密度(イオンビーム電流)の変化)は存在せず、また、カスプ磁場発生用の永久磁石にそのような課題に係わる機能を持たせることも考えられていない。
【0012】
本発明の目的は、放電容器内にマイクロ波発生源からのマイクロ波を導入し、マイクロ波放電によってプラズマを生成する方式のものにおいて、軸方向磁場の強度変化によるプラズマ密度の変化或いはイオンビーム電流の変化を低減することで、精密な磁場調整なしでビーム電流を安定化するマイクロ波イオン源と、そのマイクロ波イオン源を利用した線形加速器システム、加速器システム、医療用加速器システム、高エネルギービーム応用装置、中性子発生装置、イオンビームプロセス装置、並びに同方式でプラズマを生成するもので、軸方向磁場の強度変化によるプラズマ密度の変化を低減したマイクロ波プラズマ源及びプラズマプロセス装置を提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、放電容器内にマイクロ波発生源からのマイクロ波を導入し、マイクロ波放電によってプラズマを生成する方式のものにおいて、軸方向磁場を生成する手段としてソレノイドコイルに代えて永久磁石を用いて安定な高密度のプラズマ或いは安定な大電流ビームを発生可能とし、コイル及びコイルに必要な電源、冷却システム、電力消費を無くしてイオン源をコンパクト化することができるマイクロ波イオン源と、そのマイクロ波イオン源を利用した線形加速器システム、加速器システム、医療用加速器システム、高エネルギービーム応用装置、中性子発生装置、イオンビームプロセス装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、マイクロ波イオン源或いはプラズマ源において放電容器の周囲に14極以上、32極以下の多極磁石を設置したものであり、これによりプラズマの損失を低減するとともに、放電容器内に軸方向に印加される磁場の強度変化によるプラズマ密度の変化或いはイオンビーム電流の変化を低減し、精密な磁場調整が不要となる。また、イオン源にあっては、ビーム電流を安定化することができる。
【0015】
また、本発明は、上記目的を達成するために、マイクロ波イオン源或いはプラズマ源において放電容器の周囲に、マイクロ波放電によりプラズマが生成される際の軸方向磁場の変動によるプラズマ密度の変動を低減する多極磁石を設置したものであり、これによりプラズマの損失を低減するとともに、放電容器内に軸方向に印加される磁場の強度変化によるプラズマ密度の変化或いはイオンビーム電流の変化を低減し、精密な磁場調整が不要となる。また、イオン源にあってはビーム電流を安定化することができる。
【0016】
更に、本発明は、上記目的を達成するために、マイクロ波イオン源或いはプラズマ源において放電容器内でマイクロ波放電によって水素ガスを電離しプラズマを生成するもので、放電容器の周囲に多極磁石を設置したものであり、これによりプラズマの損失を低減するとともに、放電容器内に軸方向に印加される磁場の強度変化によるプラズマ密度の変化或いはイオンビーム電流の変化を低減し、精密な磁場調整が不要となる。また、イオン源にあっては安定に大電流のイオンビームを発生することができる。
【0017】
また、本発明は、好ましくは、放電容器内で生成されたプラズマから引き出し電極部の1つの引き出し孔当たり5mA以上のイオン電流を引き出してイオンビームを生成するか、或いは放電容器内にマイクロ波放電により生成されるプラズマのイオン飽和電流密度が25mA/cm以上であるものであり、本発明は、このような大電流のイオンビームを生成するイオン源或いは高密度のプラズマを生成するプラズマ源に適用して特に効果があり、大電流ビーム又は高密度プラズマを安定に生成でき、イオン源或いはプラズマ源の信頼性を向上することができる。
【0018】
また、本発明は、好ましくは、多極磁石の径方向外側に多極磁石を取り囲むように永久磁石を設置して軸方向の磁場を発生するものであり、これにより従来のソレノイドコイル及びコイルに必要な電源、冷却システム、電力消費が不要となる。
【0019】
また、本発明は、好ましくは、その永久磁石の磁化方向を軸方向又は軸方向から±10度以内の傾きを持った方向としたものであり、これにより永久磁石により発生する軸方向磁場の軸方向均一性が向上する。
【0020】
また、本発明は、好ましくは、永久磁石を、放電容器の中心軸心を含む断面形状で見て、軸方向中心部分の径方向厚みよりも軸方向両端部分の径方向厚みの方が厚くなるような形状としたものであり、これによりコンパクトな永久磁石により軸方向均一性の良い磁場を発生することができる。
【0021】
また、本発明は、好ましくは、永久磁石を、少なくとも軸方向中心付近で2分割した複数の分割磁石で構成し、複数の分割磁石の間にそれらの間隔を調整する非磁性体製スペーサーを設置し、そのサイズにより軸方向磁場の分布形状及び強度を調整し、また、より好ましくは、複数の分割磁石を軸方向中心付近以外の箇所で更に再分割し、軸方向中心に近い磁石部分ほど径方向の厚みが薄くなるように構成したものであり、これにより軸方向磁場の分布を最適化し、プラズマの高密度化とイオンビームの大電流化を達成することができる。
【0022】
また、本発明は、好ましくは、軸方向磁場を発生する永久磁石の中心軸と前記放電容器の中心軸の位置関係を微調整するとともに、永久磁石と放電容器の軸方向の位置関係を微調整する位置調整装置を設置したものであり、これにより軸方向磁場を発生する永久磁石と放電容器、マイクロ波導入窓及び引き出し電極部の位置関係を最適化するとともに、軸を合わせプラズマの高密度化、ビームの大電流化、ビーム偏向の低減を図ることができる。
【0023】
また、本発明は、好ましくは、永久磁石の内径を複数の多極磁石及び引き出し電極部の外径より大きくしたものであり、これにより位置調整装置により永久磁石と放電容器の軸方向の位置関係を調整するときの永久磁石と他の部分との干渉がなくなる。
【0024】
また、本発明は、以上のマイクロ波イオン源或いはプラズマ源を用いて、イオンビームを加速する高周波加速器とを備える線形加速器システム、この線形加速器システムにより出射されたイオンビームを加速するシンクロトロン加速器を備える加速器システム、そのシンクロトロン加速器で加速した高エネルギーイオンビームを取り出して、患者に照射することによって治療を行うビーム照射装置を備える医療用加速器システム、前記線形加速器システムにより加速したイオンビームを試料に照射することによって放射性同位体又は半導体の生成、材料改質を行う処理室を備える高エネルギービーム応用装置、前記線形加速器システムにより加速したイオンビームを試料に照射することによって中性子を発生する処理室を備える中性子発生装置、イオンビームを試料に照射し、試料を処理する処理室を備えるイオンビームプロセス装置、前記プラズマ源で生成されたプラズマを試料に照射し、試料を処理する処理室を有するプラズマプロセス装置を構成したものであり、これにより装置の信頼性、スループット、安定性の向上や装置の小型化、低コスト化が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、マイクロ波イオン源或いはマイクロ波プラズマ源において、放電容器内における軸方向磁場の強度変化によるプラズマ密度又はビーム電流の変動が低減され、精密な軸方向磁場の制御なしに、大電流ビーム又は高密度プラズマを安定に生成でき、イオン源或いはプラズマ源の信頼性を向上することができる。また、精密な磁場調整が必要でないため、軸方向磁場発生手段として永久磁石を使用した場合でも、安定に大電流のイオンビームを生成できる。
【0026】
また、本発明によれば、マイクロ波イオン源或いはプラズマ源を用いて構成した線形加速器システム、加速器システム、医療用加速器システム、高エネルギービーム応用装置、中性子発生装置、イオンビームプロセス装置、プラズマプロセス装置において、大電流ビーム又は高密度プラズマを安定に生成できるので、装置の信頼性、スループット、安定性を向上することができる。また、マイクロ波イオン源或いはプラズマ源において永久磁石で軸方向磁場を発生することによって、装置の小型化、低コスト化、装置構成の単純化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態1)
本発明のマイクロ波イオン源の第1の実施の形態を図1〜図7を用いて説明する。なお、本実施の形態はマイクロ波プラズマ源の実施の形態を兼ねている。
【0028】
図1は本実施の形態のマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図であり、図2はそのプラズマ源部分の中心軸に垂直な横断面図である。本実施の形態のマイクロ波イオン源101は、マイクロ波プラズマ源102と、イオンビーム引き出し電極部103とを備えている。プラズマ源102は、マイクロ波源であるマイクロ波発信器1、導波管2、導入窓3、円筒形の放電容器4、第1磁場発生手段としてのソレノイドコイル5、第2磁場発生手段としての複数の永久磁石6を有し、引き出し電極部103は、3枚の電極8a,8b,8c(プラズマ電極8a,減速電極8b,接地電極8c)、絶縁筒9、電源11,12を有している。電極8a〜8cの中央には少なくとも1つのイオンビームの引き出し孔が形成されている。イオンビームの引き出し孔は複数個あってもよい。
【0029】
プラズマ源102において、マイクロ波発振器1で発生したマイクロ波105は導波管2と導入窓3を通して放電容器4内に入射する。放電容器4には、周囲に設置した第1磁場発生手段であるソレノイドコイル5によって軸方向磁場B1(マイクロ波周波数が2.45GHzの場合,最大磁束密度=87.5〜100 mT)が印加され、放電容器4内の電子がマイクロ波電界により加速され、ガスを衝突電離することによって放電が点孤し、プラズマが発生する。マイクロ波周波数が2.45GHzの場合、円筒形の放電容器4の内径は約50mm〜100mmである。内径を約70mm〜90mmに設定すると、円形導波管の基本伝搬モード(TE11) のマイクロ波のみが放電容器4内を軸方向に伝搬し、放電容器4内で効率良くマイクロ波電界によりプラズマが発生する。
【0030】
ソレノイドコイル5によって放電容器4内に印加される軸方向磁場B1は、ECR共鳴磁場より高い磁場(マイクロ波周波数が2.45GHzの場合で最大磁束密度=87.5mT以上)であることが必要であり、好ましくは、最大磁束密度=90〜100 mTである。これにより放電容器4内にマイクロ波放電によって効率良くプラズマが生成される。マイクロ波周波数2.45GHzは工業用の標準周波数であり、この周波数を使用することによりイクロ波発振器1、導波管2等の部品を標準部品で構成でき、製作コストが安価になる。マイクロ波周波数を増加することも可能であるが(例えば10GHz)、その場合、周波数に比例してECR共鳴磁場が上昇し,それに対応して必要な磁場B1は上昇する。
【0031】
放電容器4内で発生したプラズマ中のイオンは、引き出し電極部103において、絶縁筒9で絶縁支持した3枚の電極8a〜8cの中央に形成された孔(イオンビームの引き出し孔)を通して、電極8a〜8c間に印加された電界で引き出され、イオンビーム106が生成される。
【0032】
図には記していないが、イオン源102の内部は下流に設置された真空ポンプで真空引きされており、放電容器4の導入ポートを通して必要な種類のイオンを発生するための微量のガス又は蒸気が導入される。本実施の形態では、好ましくは、イオン化物質として導入されるガスは水素ガスであり、水素ガスをプラズマ化し、その中のイオンを引き出し電極部103から引き出すことにより、イオンビームが生成される。イオンビーム中の陽子イオンの成分は全体のイオンの80〜90%程度である。
【0033】
放電容器4の外壁上には第2磁場発生手段である複数の永久磁石6が配置されている。永久磁石6は16極の多極磁石(16個の磁石)であり、図2に示すように、放電容器4の外周上の円周方向に一定の間隔で配置されている。永久磁石6の磁化方向は図2の磁石断面の長手方向(放電容器4の径方向)であり、隣り合った磁石の極性は互いに逆となるよう設定する。これにより、放電容器4内壁上には同図に示すように壁近傍に局在した多極磁場B2が発生する。磁場B2は、放電容器4の内壁上より中心に近づくに従って低下し、放電容器内半径の半分の距離内壁から離れた位置での磁場B2は内壁上の磁場の1%程度以下になる。この位置付近より内部の磁場B2の弱い領域に一様なプラズマが生成され、内壁への拡散によるプラズマ損失が内壁近傍の磁場B2により低減される。
【0034】
また、永久磁石6を設置することにより、マイクロ波によるプラズマの生成が安定化して、磁場B1による電流Iの変動が大幅に低減する。これは、本発明者等が得た知見であり、これにより精密な軸方向磁場B1の制御なしに、高密度プラズマと大電流ビームを安定に生成でき、イオン源の信頼性を向上できる。以下、このことを従来技術と比較しつつより詳細に説明する。
【0035】
図3は、マイクロ波による放電でイオンビームを生成する従来のイオン源の一例を比較例として示す図である。図中、図1に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。
【0036】
マグネトロン1で発生したマイクロ波105は導波管2で輸送され、導入窓3を通して円筒形の放電容器4内に導入される。放電容器4の周囲にはコイル5が設置され、軸方向に磁場B1(最大磁束密度=90〜100 mT)を印加する。電子はマイクロ波電場により加速され、電子によるイオン化物質の電離により放電が発生し、放電容器4内にプラズマが生成される。マイクロ波は生成されたプラズマ中を伝搬可能な固有モードの波動として伝搬し、放電容器4中で定常的にプラズマを発生できる。イオン化物質(例えば酸素ガス)は、放電容器4の側面の導入管より供給される。放電容器4で生成したイオンは、3枚の電極8a〜8cのビーム引出し孔を通して引出され、イオンビームを生成する。
【0037】
図3の従来技術では、放電容器4の軸方向に印加する磁場B1のわずかな変化により生成されるプラズマ密度が大きく変化し、イオンビーム電流が大きく変動することが、大電流ビームの安定な生成に対する課題であった。
【0038】
図4に従来技術のイオン源でイオンビーム電流と軸方向磁場B1の関係を計測した実験結果を示す。軸方向磁場B1の変化に対して電流の3つの極大値があり、極大値の磁場からわずか数パーセントの磁場変動により電流は極大値の1/3以下まで低下した。また、同図には明記していないが、電流が得られても放電が不安定で安定なビーム発生ができない磁場強度も存在する。すなわち、従来技術では、安定に大電流ビームを得るにはコイル5による精密な磁場調整が必要であった。
【0039】
図1及び図2に示した本実施の形態において、永久磁石6を設置した場合の軸方向磁場B1とイオンビーム電流Iの関係を実験で計測した結果を図5に示す。図4の従来のイオン源の結果と比較すると、軸方向磁場B1による電流Iの変動が大幅に低減されることが分かる。また、従来のイオン源のように放電が不安定で安定なビーム発生ができないB1の磁場強度も存在しない。したがって、本実施の形態では、コイル5による精密な軸方向磁場B1の制御なしに、高密度プラズマと大電流ビームを安定に生成でき、イオン源の信頼性を向上できる。
【0040】
本実施の形態では、永久磁石6を16極の多極磁石で構成している。永久磁石6の極数16を減少させた場合、極数の減少と共に多極磁石間隔が広がるため、永久磁石6による磁場B2の領域が放電容器4の内部に広がり、磁場B2の弱いプラズマ生成領域が狭くなる。本発明者等の検討によれば、永久磁石6を構成する多極磁石の極数を14極以上にすると、従来技術に比べマイクロ波によるプラズマの生成が安定化して、磁場B1による電流Iの変動を低減する効果が顕著となることが分かった。以下、このことを図6及び図7を用いて説明する。
【0041】
図6に多極磁石の極数と、磁場B2が軸方向磁場B1の1%以下に低下する領域(プラズマ生成領域)の直径aと放電容器4の内径Aの比(a/A)との関係を解析した結果を示す。16極でのa/Aの値は約50%であるが、極数の減少と共にa/Aの値は低下し、12極でのa/Aの値は40%未満まで低下する。プラズマ生成領域が狭くなるほど(a/Aの値が小さくなるほど)、プラズマ生成効率と閉じ込め効率が悪くなるため、極数は図6の範囲では多いほど望ましいと考えられる。
【0042】
図7に多極磁石の極数と、磁石間の放電容器4の内面の磁場B2tと軸方向磁場B1との比(B2t/B1)との関係を解析した結果を示す。極数が減少すると、磁石と磁石の間の放電容器内壁のプラズマを閉じ込める磁場B2tが低下する。図7より、16極では磁場B2tは軸方向磁場B1の約1.3倍であるが、12極では磁場B2tは軸方向磁場B1より低くなり、8極では軸方向磁場B1の半分以下に低下する。
【0043】
以上の解析結果より、a/Aの下限値を40%、B2t/B1の下限値を1とすると、極数の下限値は14極となる。極数8においては、実験結果より、ビーム電流が磁場の変化に依存して図4に示すように急激に変化し、ビーム電流安定化には磁場の精密調整が必要であることが分かっている。
【0044】
一方、永久磁石6の極数を16極よりさらに増加した場合、極数の増加に応じて磁石間隔が狭くなり、下記のような問題を生じる。
【0045】
(1)極数が増加するほど永久磁石6を設置するためのスペースが小さくなる。
【0046】
(2)放電容器4の物理的強度のため容器厚みは数mm程度必要である。このため、磁石間隔が容器厚みと同程度になると、容器内面のプラズマ閉じ込めに必要な磁場が低下する。
【0047】
以上の理由により永久磁石6の極数を増加させることには限界があり、永久磁石6の極数は32極以下とすることが好ましい。
【0048】
本実施の形態では、放電容器4に導入されるガス(イオン化物質)は好ましくは水素ガスであり、この水素ガスをプラズマ化して引き出すことにより主成分が陽子のイオンビーム(陽子の割合80〜90%)が生成される。この場合、現状のイオン源技術では、電極8a〜8cの1つの引き出し孔当たり10〜300mAの大電流のイオンビームを生成可能であり、将来的には1A程度の大電流イオンビームも生成可能であると予測される。また、1つの引き出し孔当たり10〜300mAのイオンビーム電流は放電容器4内で生成されるプラズマのイオン飽和電流密度に換算すると、50mA/cm(引き出し孔の直径5mm)〜400mA/cm(引き出し孔の直径10mm)の電流密度に相当し、1つの引き出し孔当たり1Aのイオンビーム電流は1A/cm(引き出し孔の直径10mm)の電流密度に相当する。本発明は、このような大電流のイオンビームを生成するイオン源或いは高密度のプラズマを生成するプラズマ源に適用して特に効果があり、大電流ビーム又は高密度プラズマを安定に生成でき、イオン源或いはプラズマ源の信頼性を向上することができる。なお、水素ガスを重水素ガスに変え、重水素のイオンビームを発生することも可能である。
【0049】
以上のように本実施の形態によれば、マイクロ波イオン源或いはマイクロ波プラズマ源において、放電容器4内における軸方向磁場の強度変化によるプラズマ密度又はビーム電流の変動が低減され、精密な軸方向磁場の制御なしに、大電流ビーム又は高密度プラズマを安定に生成でき、イオン源或いはプラズマ源の信頼性を向上することができる。
(実施形態2)
本発明のマイクロ波イオン源の第2の実施の形態を図8及び図9を用いて説明する。図中、図1に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。本実施の形態もマイクロ波プラズマ源の実施の形態を兼ねている。
【0050】
図8は本実施の形態のマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図であり、図2はそのプラズマ源部分の中心軸に垂直な横断面図である。本実施の形態のマイクロ波イオン源111は、マイクロ波プラズマ源112と、イオンビームの引き出し電極部103とを備えている。プラズマ源112は、第1の実施の形態におけるコイル5に代えて永久磁石15を有している。永久磁石15は、放電容器4の周囲に設置した円筒状の磁石であり、磁化方向を放電容器4の軸方向としている。なお、円筒状の磁石を中心軸の周りの周回方向に分割して矩形の小型磁石片としてもよい。この場合は、汎用の小型矩形磁石を使用できるので、円筒形の特殊な磁石を使用する場合と比較して、磁石コストを大幅に低減することができる。
【0051】
本実施の形態では、放電容器周囲に設置した円筒状の永久磁石15によって軸方向磁場B1を発生する。この場合、永久磁石15の断面形状の最適設計によって、図1のコイル5により発生する軸方向磁場B1の分布に類似した磁場分布を永久磁石15で実現することができる。ただし、永久磁石15であるためソレノイドコイルのような磁場B1の微調整はできない。しかし、本実施の形態では、第1の実施の形態で説明したように多極磁石からなる永久磁石6の効果により、放電容器内における軸方向磁場の強度変化によるプラズマ密度又はビーム電流の変動が低減されるので、第1の実施の形態と同様の安定な高密度プラズマと大電流ビームを発生することが可能である。
【0052】
また、本実施の形態では、永久磁石15の磁化方向を軸方向とすることによって、磁場B1の軸方向均一性を向上でき、コイル5の場合に近い磁場B1の軸方向分布を得易い。ここで、永久磁石15の磁化方向を中心軸方向に傾け過ぎた場合、軸方向中心付近の軸方向磁場B1の最大値は上昇するが、放電容器4の端部の導入窓3部分での軸方向磁場B1が低下し、マイクロ波105が放電容器4内に導入されず、放電容器4内での高密度プラズマ生成が困難となる可能性がある。マイクロ波を放電容器4の高密度プラズマ内に導入してマイクロ波による高密度プラズマ生成を維持するには、放電容器4内の軸方向磁場B1をプラズマ中の波動の伝搬条件を満たす一定値以上に設定する必要がある。原理的には軸方向磁場B1の下限値は、マイクロ波の周波数fと電子サイクロトロン周波数が一致する値である。なお、永久磁石15の磁化方向は、厳密に軸方向である必要はなく、磁化方向がある程度傾いていても、結果として、そのような条件を満たす軸方向磁場B1を生成できればよい。本発明者等の検討によれば、軸方向から±10度以内の傾きを持った方向であれば十分そのような条件を満たす軸方向磁場B1を生成できる。
【0053】
本実施の形態によれば、ソレノイドコイル及びコイルに必要な電源、冷却システム、電力消費が不要であり、プラズマ源及びイオン源の小型化、低コスト化、装置構成の単純化が可能である。また、特に本実施形態は、小型、低コスト型のマイクロ波イオン源による数十mAの大電流の陽子ビーム生成に適している。
(実施形態3)
本発明のマイクロ波イオン源の第3の実施の形態を図10〜図12を用いて説明する。図中、図1に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。本実施の形態もマイクロ波プラズマ源の実施の形態を兼ねている。
【0054】
図10は本実施の形態のマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図であり、図11はそのプラズマ源部分の中心軸に垂直な横断面図である。本実施の形態のマイクロ波イオン源121は、マイクロ波プラズマ源122と、イオンビームの引き出し電極部103とを備えている。プラズマ源122は、第1の実施の形態におけるコイル5及び第2の実施の形態の永久磁石15に代えて永久磁石組立体25を有している。永久磁石組立体25は、放電容器4の周囲に設置した円筒状の磁石組立体であり、全体の磁化方向を放電容器4の軸方向としている。
【0055】
永久磁石組立体25は、軸方向磁場B1の分布を調整するため、図8の円筒状の永久磁石15を軸方向に4分割して、円筒状の4個の磁石片25PL1,25PR1,25PL2,25PR2とするとともに、分割した4個の磁石片25PL1,25PR1,25PL2,25PR2の位置をスペーサー25S1,253S2で調整し、それらを磁石ホルダー25Hに収容し固定する構造としている。両端の磁石片25PL1,25PR1は同形状、同サイズであり、中央の磁石片25PL2,25PR2も同形状、同サイズである。しかし、中央の磁石片25PL2,25PR2は両端の磁石片25PL1,25PR1よりも径方向の厚みが薄い。スペーサー25S1は中央の磁石片25PL2,25PR2の内周側で中央の磁石片25PL2,25PR2を支持しかつ両端の磁石片25PL1,25PR1の間隔を保持している。スペーサー25S2は中央の磁石片25PL2,25PR2の間に位置し、それらの間隔を保持している。これにより、図示左側の磁石片25PL1,25PL2の組及び図示右側の25PR1,25PR2の組の断面形状はそれぞれL字型となり、軸方向の中心付近の磁石厚みが端部より薄くなり、またスペーサー25S1の厚み分、中心付近の磁石(磁石片25PL2,25PR2)の内半径が端部の磁石(磁石片25PL1,25PR1)より大きくなる。更に、スペーサー25S2により中心付近に磁石のない領域ができる。このため、図8の単純形状の永久磁石15の場合と比較して、中心付近の軸方向磁場B1が低く、端部の軸方向磁場B1が高くなる。また、スペーサー25S2の厚みを変えることによって磁場分布と強度を調整できる。
【0056】
図12にコイル5(図1)、単純な円筒形状の永久磁石15(図8)、L字型永久磁石(単純円筒と軸方向長さが同じ)を包含した永久磁石組立体25(図10)の3つの場合について、放電容器4内の軸方向磁場B1の軸方向位置依存性の概要を示す。単純形状の永久磁石15の場合、軸方向中心の磁場B1に対し端部の磁場B1が低下するので、端部の磁場がマイクロ波を高密度プラズマ中に導入するために必要な磁場強さ閾値bより低くなる。この場合に、端部の磁場B1の低下を抑制するためには、単純形状の永久磁石15の軸方向長さを放電容器4より十分に長くする必要があった。これに対して、本実施の形態のL字型永久磁石の場合、図12に示すように磁石端部での磁場B1の低下が抑制されてコイル5の場合と同様の磁場分布となり、均一性改善のため磁石長さを長くする必要がない。
【0057】
したがって、本実施の形態によれば、単純形状磁石の場合と比較して必要な磁石長さを短縮でき、イオン源を小型化できる。また、この場合、磁石片25PL1,25PR1,25PL2,25PR2の磁化方向を軸方向に設定することによって、第2の実施形態の場合と同様に磁場均一性が向上されている。
【0058】
なお、本実施の形態では、4個の磁石片25PL1,25PR1,25PL2,25PR2を円筒状の磁石としたが、磁石片25PL1,25PR1,25PL2,25PR2を更に中心軸の周りの周回方向に再分割して矩形の小型磁石片としてもよい。この場合は、汎用の小型矩形磁石を使用できるので、円筒形の特殊な磁石を使用する場合と比較して、磁石コストを大幅に低減することができる。
(実施形態4)
本発明のマイクロ波イオン源の第4の実施の形態を図13を用いて説明する。図中、図1及び図8に示した部分と同等のものには同じ符号を付している。本実施の形態もマイクロ波プラズマ源の実施の形態を兼ねている。
【0059】
図13は本実施の形態のマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図である。本実施の形態のマイクロ波イオン源131は、マイクロ波プラズマ源112と、イオンビームの引き出し電極部103と、真空容器16と、位置調整装置107とを備えている。位置調整装置107は、プラズマ源112の放電容器4と軸方向磁場B1を発生する永久磁石15との相対位置関係を調整するためのものであり、永久磁石15と放電容器4の中心軸心を合わせるとともに、永久磁石15と放電容器4の軸方向の位置関係を調整する機能を有している。永久磁石15そのものが発生する軸方向磁場B1は調整することはできないが、永久磁石15と放電容器4の相対位置関係を調整することによって、放電容器4内の軸方向磁場B1の分布を調整することができる。位置調整装置107の具体的な構成は次のようである。
【0060】
位置調整装置107は、永久磁石15を固定支持する絶縁支持体31と、絶縁支持体31を軸方向(Z方向)に直線移動可能に支持するガイド部32を有するリニアガイド台33とを備え、リニアガイド台33によって永久磁石15の軸方向(Z方向)の位置を調整する。永久磁石15の内径は、永久磁石6及びイオンビームの引き出し電極部103の各部の外径より大きく設定され、軸方向位置調整における永久磁石15と他の部分との干渉はなく、調整範囲が広い。プラズマ源112の放電容器4と引き出し電極部103の電極8a〜8cは、真空容器16に固定され、真空容器16は支持台35に固定支持されている。絶縁支持体31には永久磁石15の傾きとZ方向に垂直な方向(径方向)の位置を調整する機構が内蔵され、永久磁石15と放電容器4の中心軸を合わせることができる。
【0061】
本実施の形態では、このような永久磁石15の位置調整によって、放電容器4内の軸方向磁場B1の分布を調整し、放電容器4内のプラズマ生成効率と安定性の調整が可能である。永久磁石15の適切な位置調整により高密度プラズマと大電流ビームを安定に発生することができる。
【0062】
放電容器4と永久磁石15には、それぞれ、相対位置検出センサー36A,36Bが設けられている。センサー36A,36Bによって永久磁石15の相対位置をモニターすることにより、位置調整が容易となる。また、このセンサー36A,36Bの位置モニター信号を制御装置(図示せず)に入力するとともに、当該制御装置により支持体31を駆動する駆動装置(図示せず)を取り付けることによって、相対位置を自動調整することが可能である。また、イオンビーム106の電流をモニターし、そのモニター信号を上記制御装置に入力することによって、ビーム電流が適切な値となるように相対位置をフィードバック制御することもできる。
【0063】
なお、本実施の形態では、図8に示した第2の実施の形態に係わるマイクロ波プラズマ源112の永久磁石15の相対位置を調整可能としたが、図10に示す実施の形態にその考えを適用し、永久磁石組立体25の相対位置を調整可能としてもよいし、図1に示す実施の形態にその考えを適用し、ソレノイドコイル5の相対位置を調整可能にしてもよい。
(実施形態5)
本発明のマイクロ波イオン源を用いた線形加速器システムの実施の形態を図14を用いて説明する。図14は本実施の形態の線形加速器システムの中心軸を含む縦断面図である。
【0064】
本実施の形態の線形加速器システム150は、マイクロ波イオン源Iと、ビーム集束レンズシステムLと、高周波4重極加速装置(RFQ)Rと、ドリフトチューブ加速器(DTL)Dと、電源制御装置17〜20と、加速器制御装置21とを備えている。マイクロ波イオン源Iは、例えば図8に示したイオン源111である。マイクロ波イオン源Iは、イオン源101,121,131のいずれかであってもよい。ビーム集束レンズシステムL、高周波4重極加速装置(RFQ)R、ドリフトチューブ加速器(DTL)Dは線形加速器を構成する。
【0065】
本実施の形態の線形加速器システム150は、イオン源Iで発生するイオンビーム106Lをビーム集束レンズシステムL、高周波4重極加速装置(RFQ)R、ドリフトチューブ加速器(DTL)Dにより構成される線形加速器によって加速するシステムである。イオンビーム106Lはビーム集束レンズシステムLで集束され、高周波4重極加速装置(RFQ)Rに入射され、3MeVまで加速され、さらにドリフトチューブ加速器(DTL)Dで加速され、10MeVの高エネルギービーム10H6が生成される。電源制御装置17〜20は、それぞれ、マイクロ波イオン源I、ビーム集束レンズシステムL、高周波4重極加速装置(RFQ)R、ドリフトチューブ加速器(DTL)Dに与えられる電源電流を制御するものであり、加速器制御装置21により集中制御し、各機器の動作パラメーターをイオンビームの加速に最適に調整する。
【0066】
本実施の形態によれば、イオン源Iより安定に大電流ビームを加速器に入射できるので、加速器から出射するビーム106Hの安定化と大電流化が可能である。また、イオン源Iの放電の不安定性により加速器と整合しないビームが加速器に入射され加速器に損傷を与えることが少なく、また、加速器動作の安定化、加速器の長寿命化を図れる。イオン源Iの軸方向磁場B1を永久磁石15(図8参照)で発生した場合、加速器システムの小型化と低コスト化につながる。
【0067】
本実施形態では、10MeV程度の高エネルギー加速のためドリフトチューブ加速器Dを用いたが、3MV程度以下の加速の場合はドリフトチューブ加速器Dを使用せずに、高周波4重極加速装置Rのみを使用してビームを加速するシステム構成としてもよい。また、特に本実施の形態は、陽子ビーム加速器の大電流化、安定化に適する。
(実施形態6)
本発明のマイクロ波イオン源を用いた線形加速器システムを医療用シンクロトロン加速器システムに応用した実施の形態を図15を用いて説明する。本実施の形態は、線形加速器システムを備えた加速器システムの実施の形態を兼ねている。
【0068】
図15は本実施の形態の医療用シンクロトロン加速器システムの構成図である。本実施の形態の医療用加速器システムは、図14に示したのと同様な線形加速器システム150と、シンクロトロン加速器Sと、シンクロトロンシステム制御装置40と、ビーム輸送系41と、ビーム照射装置42とを備えている。線形加速器システム150は、図14に示したように、マイクロ波イオン源Iと、ビーム集束レンズシステムLと、高周波4重極加速装置(RFQ)Rと、ドリフトチューブ加速器(DTL)Dと、電源制御装置17〜20と、加速器制御装置21とを備えている。マイクロ波イオン源Iは、例えば図8に示したイオン源111である。マイクロ波イオン源Iは、イオン源101,121,131のいずれかであってもよい。
【0069】
線形加速器システム150で加速されたイオンビーム106H1は、シンクロトロン加速器Sのビーム入射装置45を介してシンクロトロン加速器Sに入射される。入射されたイオンビームは、シンクロトロン加速器Sの加速リング内の偏向磁石S1で偏向されリング内を周回するので、イオンビームが数回周回するまでイオンビームの入射を続けるようにシンクロトロンシステム制御装置40により加速器制御装置21、ビーム入射装置45、偏向磁石S1を制御することによって必要な量のイオンビームをリング内に蓄積できる。蓄積されたイオンビームは制御装置40の制御信号に従って加速空洞S2で加速されることによって、偏向磁石S1で偏向され周回しながら高エネルギー(例えば250MeV)に加速された後、ビーム出射装置46によってビーム輸送系41へ出射される。ビーム輸送系41を通った高エネルギーイオンビーム106H2を偏向器47を含むビーム照射装置42で偏向、整形、位置調整した後、その高エネルギーイオンビーム106H3を治療ベッド48上の患者49に照射することによって治療を行う。
【0070】
本実施の形態によれば、イオン源Iで大電流のイオンビームを安定に発生し加速器に供給できるので、治療の信頼性向上、高スループット化が可能である。また、マイクロ波放電でプラズマを生成しフィラメントと電極が不要なため、フィラメント交換などのメインテナンス無しに長時間安定に使用することができ、システムの稼働率を向上できる。
【0071】
本実施の形態は特に陽子線治療装置用加速器システムの大電流化、稼働率向上に適するが、他のイオンの加速器にも適用可能である。また、本実施の形態では、シンクロトロン加速器Sを用いた医療用加速器システムに本発明を適用したが、サイクロトロン加速器を用いた医療用加速器システムに本発明を適用してもよい。
(実施形態7)
本発明のマイクロ波イオン源を用いた線形加速器システムをポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)等に使用するラジオアイソトープ製造装置、分析装置、中性子発生装置、半導体製造装置等の高エネルギーイオンビームの応用装置に適用した実施の形態を図16を用いて説明する。図16は本実施の形態のラジオアイソトープ製造装置、その他の高エネルギーイオンビーム応用装置の構成図である。
【0072】
本実施の形態の高エネルギーイオンビーム応用装置は、図14に示したのと同様な線形加速器システム150と、ビーム照射室51とを備えている。ビーム照射室51は線形加速システム150の線形加速器のビーム出射端に接続され、応用装置の照射試料52にイオンビームを照射する。線形加速器システム150は、図14に示したように、マイクロ波イオン源Iと、ビーム集束レンズシステムLと、高周波4重極加速装置(RFQ)Rと、ドリフトチューブ加速器(DTL)Dと、電源制御装置17〜20と、加速器制御装置21とを備えている。マイクロ波イオン源Iは、例えば図8に示したイオン源111である。マイクロ波イオン源Iは、イオン源101,121,131のいずれかであってもよい。
【0073】
応用装置がラジオアイソトープ製造装置である場合、線形加速器で加速されたイオンビーム106Hは試料52に照射され、ターゲット内部の材料が核反応を起こし、ラジオアイソトープが製造される。
【0074】
応用装置が分析装置である場合、同様にイオンビーム106Hが試料52に照射され、材料から発生する特性X線などにより材料分析を行う。
【0075】
応用装置が中性子発生装置である場合、同様にイオンビーム106Hが試料52に照射され、試料52上で核反応を起こさせて中性子発生を行う。この場合、中性子をボロンニュートロンキャプチャーセラピー(BNCT)等の医療応用装置に応用できる。
【0076】
応用装置が半導体製造装置である場合、同様にイオンビーム106Hが試料52に照射され、半導体材料にイオン注入を行う等のプロセスが実行される。
【0077】
以上の本実施の形態による応用装置では、イオン源Iで大電流のイオンビームを安定に発生できるので、装置の信頼性向上、高スループット化が可能である。軸方向磁場B1の発生のためのコイルを使用せずに永久磁石を使用した場合、装置を低コスト化、小型化できる。また、マイクロ波放電でプラズマを生成しフィラメントと電極が不要なため、フィラメント交換などのメインテナンス無しに長時間安定に使用することができる。
(実施形態8)
本発明のマイクロ波プラズマ源を用いたプラズマプロセス装置の実施の形態を図17を用いて説明する。図17は、本実施の形態のプラズマプロセス装置の中心線を含む縦断面図である。
【0078】
本実施の形態のプラズマプロセス装置160は、図8に示したのと同様なマイクロ波プラズマ源112と、処理室61とを備えている。マイクロ波プラズマ源112は、図1に示したマイクロ波プラズマ源102であってもよいし、図10に示したマイクロ波プラズマ源122であってもよい。処理室61はプラズマ源112の端部に接続されている。プラズマ源112の放電容器4で生成したプラズマが処理室61に設置した試料62に照射され、薄膜生成、加工、スパッタ他のプラズマプロセスにより半導体の生成、材料の改質、加工、滅菌、その他を行う。
【0079】
本実施の形態によれば、高密度プラズマを安定に発生できるので、装置の信頼性向上、高スループット化が可能である。軸方向磁場B1の発生のためのコイルを使用せずに永久磁石を使用した場合、プラズマプロセス装置を低コスト化、小型化できる。マイクロ波放電でプラズマを生成しフィラメントと電極が不要なため、フィラメント交換などのメインテナンス無しに長時間安定に使用することができる。また、フィラメントと電極から発生する金属による試料の汚損の問題が無い。
(実施形態9)
本発明のマイクロ波イオン源を用いたイオンビームプロセス装置の実施の形態を図18を用いて説明する。図18は、本実施の形態のイオンビームプロセス装置の中心線を含む縦断面図である。
【0080】
本実施の形態のイオンビームプロセス装置170は、図8に示したのと同様なマイクロ波イオン源111と、処理室71とを備えている。マイクロ波イオン源111は、図1に示したマイクロ波イオン源101であってもよいし、図10に示したマイクロ波イオン源121であってもよい。処理室71はイオン源111のイオンビーム引き出し電極部103の端部に接続されている。イオン源111で生成したイオンビーム106が処理室71に設置した試料72に照射され、薄膜生成、加工(ミリング、エッチング他)、スパッタ、イオン注入、その他のイオンビームプロセスにより半導体の生成、材料の改質、加工、滅菌他を行う。
【0081】
本実施の形態によれば、大電流のイオンビームを安定に発生できるので、装置の信頼性向上、高スループット化が可能である。軸方向磁場B1の発生のためのコイルを使用せずに永久磁石を使用した場合、イオンビームプロセス装置を低コスト化、小型化できる。また、マイクロ波放電でプラズマを生成しフィラメントと電極が不要なため、フィラメント交換などのメインテナンス無しに長時間安定に使用することができる。また、フィラメントと電極から発生する金属による試料の汚損の問題が無い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わるマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わるマイクロ波イオン源の中心軸に垂直な横断面図である。
【図3】マイクロ波による放電でイオンビームを生成する従来のイオン源の一例を比較例として示す図である。
【図4】従来技術のイオン源でイオンビーム電流と軸方向磁場の関係を計測した実験結果を示す図である。
【図5】本実施の形態において、永久磁石を設置した場合の軸方向磁場とイオンビーム電流の関係を実験で計測した結果を示す図である。
【図6】多極磁石の極数と、多極磁石による磁場B2が軸方向磁場B1の1%以下に低下する領域(プラズマ生成領域)の直径aと放電容器の内径Aの比(a/A)との関係を解析した結果を示す図である。
【図7】多極磁石の極数と、多極磁石間の放電容器の内面の磁場B2tと軸方向磁場B1との比(B2t/B1)との関係を解析した結果を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係わるマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係わるマイクロ波イオン源の中心軸に垂直な横断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係わるマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係わるマイクロ波イオン源の中心軸に垂直な横断面図である。
【図12】コイル、単純な円筒形状の永久磁石、L字型永久磁石(単純円筒と軸方向長さが同じ)を包含した永久磁石組立体の3つの場合について、放電容器内の軸方向磁場B1の軸方向位置依存性の概要を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係わるマイクロ波イオン源の中心軸を含む縦断面図である。
【図14】本発明のマイクロ波イオン源を用いた線形加速器システムの実施の形態を示す線形加速器システムの中心線を含む縦断面図である。
【図15】本発明のマイクロ波イオン源を用いた線形加速器システムを医療用シンクロトロン加速器システムに応用した実施の形態を示す医療用シンクロトロン加速器システムの構成図である。
【図16】本発明のマイクロ波イオン源を用いた線形加速器システムをポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)等に使用するラジオアイソトープ製造装置、分析装置、中性子発生装置、半導体製造装置等の高エネルギーイオンビームの応用装置に適用した実施の形態を示す当該応用装置の構成図である。
【図17】本発明のマイクロ波プラズマ源を用いたプラズマプロセス装置の実施の形態を示すプラズマプロセス装置の中心線を含む縦断面図である。
【図18】本発明のマイクロ波イオン源を用いたイオンビームプロセス装置の実施の形態を示すイオンビームプロセス装置の中心線を含む縦断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 マイクロ波発信器
2 導波管
3 導入窓
4 放電容器
5 コイル(第1磁場発生手段:軸方向磁場発生用)
6 永久磁石(第2磁場発生手段:多極磁場発生用)
8a プラズマ電極
8b 減速電極
8c 接地電極
9 絶縁筒
11 電源11,12
15 永久磁石(第1磁場発生手段:軸方向磁場発生用)
16 真空容器
17〜20 電源制御装置
21 加速器制御装置
25 永久磁石組立体(第1磁場発生手段:軸方向磁場発生用)
25PL1,25PR1,25PL2,25PR2 磁石片
25S1,25S2 スペーサー
25H ホルダー
31 絶縁支持体
32 ガイド部
33 リニアガイド台
35 支持台
36A,36B 相対位置検出センサー
40 シンクロトロンシステム制御装置
41 ビーム輸送系
42 ビーム照射装置
45 ビーム入射装置
46 ビーム出射装置
48 治療ベッド
49 患者
51 ビーム照射室
52 試料
61 処理室
62 試料
71 処理室
72 試料
101,111,121,131 マイクロ波イオン源
102,112,122 マイクロ波プラズマ源
103 イオンビーム引き出し電極部
105 マイクロ波
106 イオンビーム
107 位置調整装置
150 線形加速器システム
160 プラズマプロセス装置
170 イオンビームプロセス装置
B1 軸方向磁場
B2 多極磁石による磁場
I マイクロ波イオン源
L ビーム集束レンズシステム
R 高周波4重極加速装置(RFQ)
D ドリフトチューブ加速器(DTL)
S シンクロトロン加速器
S1 偏向磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源から導波管を介してマイクロ波が導入され、マイクロ波放電によってプラズマを生成する放電容器と、前記放電容器内に軸方向磁場を印加する第1磁場発生手段と、前記放電容器の周囲に設置された14極以上、32極以下の多極磁石を有する第2磁場発生手段と、前記放電容器内で生成されたプラズマからイオンを引き出しイオンビームを生成する引き出し電極部とを有することを特徴とするマイクロ波イオン源。
【請求項2】
マイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源から導波管を介してマイクロ波が導入され、マイクロ波放電によってプラズマを生成する放電容器と、前記放電容器内に軸方向磁場を印加し前記放電容器内に導入されたマイクロ波を前記放電容器内の軸方向へと伝搬させる第1磁場発生手段と、前記放電容器の周囲に設置され、前記マイクロ波放電によりプラズマが生成される際の前記軸方向磁場の変動によるプラズマ密度の変動を低減する多極磁石を有する第2磁場発生手段と、前記放電容器内で生成されたプラズマからイオンを引き出しイオンビームを生成する引き出し電極部とを有することを特徴とするマイクロ波イオン源。
【請求項3】
マイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源から導波管を介してマイクロ波が導入され、マイクロ波放電によって水素ガスを電離しプラズマを生成する放電容器と、前記放電容器内に軸方向磁場を印加する第1磁場発生手段と、前記放電容器の周囲に設置された多極磁石を有する第2磁場発生手段と、前記放電容器内で生成されたプラズマからイオンを引き出しイオンビームを生成する引き出し電極部とを有することを特徴とするマイクロ波イオン源。
【請求項4】
前記多極磁石の極数は14極以上、32極以下であることを特徴とする請求項2又は3記載のマイクロ波イオン源。
【請求項5】
前記引き出し電極部は少なくとも1つのイオンビームの引き出し孔を有し、前記放電容器内で生成されたプラズマから1つの引き出し孔当たり5mA以上のイオン電流を引き出してイオンビームを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のマイクロ波イオン源。
【請求項6】
前記第1磁場発生手段は、前記多極磁石の径方向外側に多極磁石を取り囲むよう設置された永久磁石を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のマイクロ波イオン源。
【請求項7】
前記第1磁場発生手段の永久磁石は、その磁化方向を軸方向又は軸方向から±10度以内の傾きを持った方向としたことを特徴とする請求項6記載のマイクロ波イオン源。
【請求項8】
前記第1磁場発生手段の永久磁石は、前記放電容器の中心軸心を含む断面形状で見て、軸方向中心部分の径方向厚みよりも軸方向両端部分の径方向厚みの方が厚くなる形状を有することを特徴とする請求項7記載のマイクロ波イオン源。
【請求項9】
前記第1磁場発生手段の永久磁石は、少なくとも軸方向中心付近で2分割した複数の分割磁石で構成し、前記複数の分割磁石の間にそれらの間隔を調整する非磁性体製スペーサーを設置し、この非磁性体製スペーサのサイズにより前記軸方向磁場の分布形状及び強度を調整することを特徴とする請求項7又は8記載のマイクロ波イオン源。
【請求項10】
前記複数の分割磁石は、軸方向中心付近以外の箇所で更に再分割し、軸方向中心に近い磁石部分ほど径方向の厚みが薄くなるように構成されていることを特徴とする請求項9記載のマイクロ波イオン源。
【請求項11】
前記第1磁場発生手段は、前記多極磁石の径方向外側に多極磁石を取り囲むよう設置された永久磁石と、前記永久磁石の中心軸と前記放電容器の中心軸の位置関係を微調整するとともに、前記永久磁石と前記放電容器の軸方向の位置関係を微調整する位置調整装置とを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のマイクロ波イオン源。
【請求項12】
前記第1磁場発生手段の前記永久磁石の内径を前記複数の多極磁石及び引き出し電極部の外径より大きくし、前記位置調整装置により前記永久磁石と前記放電容器の軸方向の位置関係を調整するときの前記永久磁石と他の部分との干渉をなくしたことを特徴とする請求項11記載のマイクロ波イオン源。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載のマイクロ波イオン源と、このマイクロ波イオン源で生成されたイオンビームを加速する高周波加速器とを備えることを特徴とする線形加速器システム。
【請求項14】
請求項13記載の線形加速器システムと、この線形加速器システムにより出射されたイオンビームを加速するシンクロトロン加速器とを備えることを特徴とする加速器システム。
【請求項15】
請求項13記載の線形加速器システムと、この線形加速器システムにより出射されたイオンビームを加速するシンクロトロン加速器と、このシンクロトロン加速器で加速した高エネルギーイオンビームを取り出して、患者に照射することによって治療を行うビーム照射装置とを備えることを特徴とする医療用加速器システム。
【請求項16】
請求項13記載の線形加速器システムと、この線形加速器システムにより加速したイオンビームを試料に照射することによって放射性同位体又は半導体の生成、材料改質を行う処理室とを備えることを特徴とする高エネルギービーム応用装置。
【請求項17】
請求項13記載の線形加速器システムと、この線形加速器システムにより加速したイオンビームを試料に照射することによって中性子を発生する処理室とを備えることを特徴とする中性子発生装置。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項記載のマイクロ波イオン源と、このマイクロ波イオン源で生成されたイオンビームを試料に照射し、試料を処理する処理室とを備えることを特徴とするイオンビームプロセス装置。
【請求項19】
マイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源から導波管を介してマイクロ波が導入され、マイクロ波放電によってプラズマを生成する放電容器と、前記放電容器内に軸方向磁場を印加する第1磁場発生手段と、前記放電容器の周囲に設置された14極以上、32極以下の多極磁石を有する第2磁場発生手段とを有することを特徴とするマイクロ波プラズマ源。
【請求項20】
マイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源から導波管を介してマイクロ波が導入され、マイクロ波放電によってプラズマを生成する放電容器と、前記放電容器内に軸方向磁場を印加し前記放電容器内に導入されたマイクロ波を前記放電容器内の軸方向へと伝搬させる第1磁場発生手段と、前記放電容器の周囲に設置され、前記マイクロ波放電によりプラズマが生成される際の前記軸方向磁場の変動によるプラズマ密度の変動を低減する多極磁石を有する第2磁場発生手段とを有することを特徴とするマイクロ波プラズマ源。
【請求項21】
マイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源から導波管を介してマイクロ波が導入され、マイクロ波放電によって水素ガスを電離しプラズマを生成する放電容器と、前記放電容器内に軸方向磁場を印加する第1磁場発生手段と、前記放電容器の周囲に設置された多極磁石を有する第2磁場発生手段とを有することを特徴とするマイクロ波プラズマ源。
【請求項22】
前記多極磁石の極数は14極以上、32極以下であることを特徴とする請求項20又は21記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項23】
前記放電容器内にマイクロ波放電により生成されるプラズマのイオン飽和電流密度は25mA/cm以上であることを特徴とする請求項19〜21のいずれか1項記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項24】
前記第1磁場発生手段は、前記多極磁石の径方向外側に多極磁石を取り囲むよう設置された永久磁石を有することを特徴とする請求項19〜21のいずれか1項記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項25】
前記第1磁場発生手段の永久磁石は、その磁化方向を軸方向又は軸方向から±10度以内の傾きを持った方向としたことを特徴とする請求項24記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項26】
前記第1磁場発生手段の永久磁石は、前記放電容器の中心軸心を含む断面形状で見て、軸方向中心部分の径方向厚みよりも軸方向両端部分の径方向厚みの方が厚くなる形状を有することを特徴とする請求項25記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項27】
前記第1磁場発生手段の永久磁石は、少なくとも軸方向中心付近で2分割した複数の分割磁石で構成し、前記複数の分割磁石の間にそれらの間隔を調整する非磁性体製スペーサーを設置し、この非磁性体製スペーサのサイズにより前記軸方向磁場の分布形状及び強度を調整することを特徴とする請求項25又は26記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項28】
前記複数の分割磁石は、軸方向中心付近以外の箇所で更に再分割し、軸方向中心に近い磁石部分ほど径方向の厚みが薄くなるように構成されていることを特徴とする請求項27記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項29】
前記第1磁場発生手段は、前記多極磁石の径方向外側に多極磁石を取り囲むよう設置された永久磁石と、前記永久磁石の中心軸と前記放電容器の中心軸の位置関係を微調整するとともに、前記永久磁石と前記放電容器の軸方向の位置関係を調整する位置調整装置とを有することを特徴とする請求項19〜28のいずれか1項記載のマイクロ波プラズマ源。
【請求項30】
請求項19〜29のいずれか1項記載のマイクロ波プラズマ源と、このマイクロ波プラズマ源で生成されたプラズマを試料に照射し、試料を処理する処理室とを有することを特徴とするプラズマプロセス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−165250(P2007−165250A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363586(P2005−363586)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】