説明

マイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法

【課題】マイクロ波を利用して乾燥炉内に装入された被乾燥物の下層部位を選択的に加熱すること。
【解決手段】本発明に係るマイクロ波乾燥装置は、被乾燥物をコンベアにより搬送する際に熱風を吹き付ける熱風式の乾燥炉に対して設置され、マイクロ波を発振するマイクロ波発振機と、被乾燥物層の内部に対し、加熱範囲が被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入された複数の導波管と、コンベアの直上に設けられ、複数の開口部を有する複数のスリットアンテナとを備え、導波管それぞれの加熱範囲及びスリットアンテナの開口部が全体として乾燥炉の炉幅方向の全体を覆うように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉による鋼材の製造が盛んになるにつれ、その主原料であるスクラップの需要は逼迫し、電気炉での高級鋼製造に対する要請から還元鉄の需要が増大しつつある。
【0003】
還元鉄を製造する方法の一つとして、粉状の鉄鉱石や製鉄ダスト等の酸化鉄原料と、粉状の石炭やコークス等の炭材とを混合して、例えばペレットやブリケットのような塊成化物とし、この塊成化物を回転炉床炉等の還元炉に装入して高温に加熱することで酸化鉄原料を還元し、固体状の金属鉄を得る方法がある。このような方法において、酸化鉄原料と炭材とを含む塊成化物の水分含有率を調整することが、塊成化物の還元率を高める上で重要となる。
【0004】
以上のような還元鉄の製造工程において、塊成化物等の水分含有率を調整するための装置として、金網状のコンベア上に装入された被乾燥物を熱風により乾燥させるトンネル状の炉がある(例えば、以下の特許文献1を参照。)。このような乾燥炉は、炉の上方から下方に向けて熱風を通過させることで、装入された被乾燥物を乾燥させる。
【0005】
上記特許文献1に開示されているような乾燥炉は、熱風を上方に供給することによる熱風乾燥であるため、被乾燥物である小塊原料の下層部分(金網状のコンベアに近い部分)の乾燥が遅れ、下層部分に位置する小塊原料の乾燥が不十分になってしまう。小塊原料の乾燥が不足すると小塊原料の強度が不足し、次工程において小塊原料が粉化することで生産歩留まりの低減が生じてしまう。また、このような生産歩留まりの低減を防止するためには、小塊原料に混合する各種バインダーを余分に添加することが必要となり、製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0006】
また、小塊原料は石炭やコークス等の炭材を含有しているため、小塊原料を加熱しすぎると発火の恐れがあり、熱風の温度を上げて乾燥効率の改善を図ることは困難である。従って、発火防止の観点から、十分に乾燥される上層部分ではなく、水分の残留する下層部分を選択的に加熱することが求められている。
【0007】
また、上記のような熱風を利用する乾燥炉以外にも、ヒーターによる乾燥を補助するために被加工物の外部から乾燥室の自由空間内にマイクロ波を照射する乾燥炉が提案されている(例えば、以下の特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−113197号公報
【特許文献2】特開平6−347165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような還元鉄の製造工程では、被乾燥物である塊成化物の乾燥炉内での層厚は約200mm以上と厚い。そのため、上記特許文献2に記載されているように炉内の自由空間に対してマイクロ波を照射した場合、塊成化物層の上層部位にマイクロ波を作用させることは可能であるが、以下で詳述するように、本発明者らによる検討の結果、塊成化物の下層部位にマイクロ波を作用させることが出来ないことが明らかとなった。
【0010】
また、重量物である塊成化物を搬送するためのコンベアは金属製の金網であるため、コンベアの裏面から塊成化物の下層部位へマイクロ波を照射したとしても、金属製のコンベアによりマイクロ波が反射されてしまい、塊成化物の下層部位へマイクロ波を作用させることができない。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、マイクロ波を利用して乾燥炉内に装入された被乾燥物の下層部位を選択的に加熱することが可能な、マイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して設置されるマイクロ波乾燥装置であって、前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振するマイクロ波発振機と、搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入され、前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数の導波管と、前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナと、を備え、前記導波管それぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆うマイクロ波乾燥装置が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して設置されるマイクロ波乾燥装置であって、前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振するマイクロ波発振機と、搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入され、前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数の同軸アンテナと、前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナと、を備え、前記同軸アンテナそれぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆うマイクロ波乾燥装置が提供される。
【0014】
前記複数の導波管又は同軸アンテナのうち少なくとも2つは、前記乾燥炉の炉幅方向の互いに異なる位置に配置されており、前記炉幅方向に互いに隣り合う前記導波管又は前記同軸アンテナの前記搬送方向の位置は、互いに相違することが好ましい。
【0015】
前記複数の導波管は、当該導波管を前記被乾燥物層に挿入した際に前記搬送コンベアと対向する端部が開口となっていてもよい。
【0016】
前記複数の導波管は、前記導波管の先端部と前記コンベアとの間の離隔距離が、自由空間における前記マイクロ波の波長の4分の1以上となるように前記被乾燥物層に挿入されることが好ましい。
【0017】
前記複数の導波管は、少なくとも、当該導波管を前記被乾燥物層に挿入した際に前記乾燥炉の被乾燥物層搬送方向に対して平行となる側面に切り欠き部が設けられており、当該切り欠き部から前記マイクロ波が照射されてもよい。
【0018】
前記複数の導波管は、前記切り欠き部の前記被乾燥物層の高さ方向の上端が当該被乾燥物層の高さ以下となるように前記被乾燥物層に挿入されることが好ましい。
【0019】
前記複数の導波管は、前記切り欠き部の被乾燥物層の高さ方向の上端と前記コンベアとの間の距離が、自由空間における前記マイクロ波の波長の4分の1以上となるように前記被乾燥物層に挿入されることが好ましい。
【0020】
前記スリットアンテナは、当該スリットアンテナの直軸方向が前記乾燥炉幅方向に対して平行になるように配置されてもよい。
【0021】
前記スリットアンテナは、当該スリットアンテナの直軸方向が前記乾燥炉幅方向に対して斜めになるように配置されてもよい。
【0022】
前記導波管は、前記マイクロ波の進行方向に垂直な断面の形状が矩形状であり、矩形状の前記切断面の短辺が前記搬送方向に対して直交しており、前記矩形状の切断面の長辺が前記搬送方向と平行であってもよい。
【0023】
前記同軸アンテナは、中空又は中実の金属管である中心導体と、当該中心導体の更に外側に設けられる中空の金属管である外周導体と、を有し、前記中心導体の前記被乾燥物層側の端部は、前記外周導体の前記被乾燥物層側の端部よりも、前記同軸アンテナ内で伝搬される前記マイクロ波の波長の4分の1に対応する長さだけ突出していることが好ましい。
【0024】
前記同軸アンテナの前記中心導体と前記外周導体とは、誘電損失係数が0.02未満である無機材料セラミックスで形成されたスペーサーにより、互いの位置関係が固定されることが好ましい。
【0025】
前記導波管の先端部もしくは切り欠き部又は前記同軸アンテナの先端部、及び、前記スリットアンテナの少なくとも前記開口部の部分には、誘電損失係数が0.02未満である無機材料セラミックスで形成されたセラミックスカバーが設けられることが好ましい。
【0026】
前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナに対して、前記被乾燥物の搬送に伴って発生する振動を緩和する振動緩和機構を設けることが好ましい。
【0027】
前記振動緩和機構として、前記導波管、前記同軸アンテナ又は前記スリットアンテナと、前記マイクロ波発振機と、の間に、軸方向のスライドを可能にするスライド機構を有するスライド導波管、又は、金属製の蛇腹部を有するフレキシブル導波管の少なくとも何れか一方を配設することが好ましい。
【0028】
前記振動緩和機構として、前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナをそれぞれ支持する支持体の一部に、弾性部材を設けることが好ましい。
【0029】
前記導波管又は前記同軸アンテナ及び前記スリットアンテナを、前記搬送方向に前記加熱範囲が連続するように当該搬送方向に並べて配設することが好ましい。
【0030】
前記導波管を、前記搬送方向に前記加熱範囲が連続するように分岐させてもよい。
【0031】
前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナの内部には防塵ガスが導入されており、前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナの内部に正圧がかかった状態となっていることが好ましい。
【0032】
前記導波管又は前記同軸アンテナの前記搬送方向上流側の端部には、当該搬送方向上流側に向かうほど搬送方向に垂直な断面の面積が小さくなるテーパー部が設けられてもよい。
【0033】
前記スリットアンテナの前記搬送方向上流側の端部に、当該搬送方向上流側に向かうほど高さが低くなるテーパー部が設けられてもよい。
【0034】
前記スリットアンテナの前記テーパー部に対し、1又は複数のローラーが更に設けられてもよい。
【0035】
前記マイクロ波乾燥装置は、前記マイクロ波発振機と前記複数の導波管又は前記複数の同軸アンテナとの間に、前記マイクロ波発振機から発振された前記マイクロ波のインピーダンスと、前記乾燥炉内で反射し前記マイクロ波発振機に向かう前記マイクロ波のインピーダンスとの整合を行う自動整合器を更に備えることが好ましい。
【0036】
前記無機材料セラミックスは、アルミナ、窒化ケイ素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及びこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0037】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して実施されるマイクロ波乾燥方法であって、前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振させ、搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入された複数の導波管それぞれ、及び、前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナそれぞれから前記被乾燥物層に対して前記マイクロ波を照射するものであり、前記導波管それぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆うマイクロ波乾燥方法が提供される。
【0038】
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して実施されるマイクロ波乾燥方法であって、前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振させ、搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入された複数の同軸アンテナそれぞれ、及び、前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナそれぞれから前記被乾燥物層に対して前記マイクロ波を照射するものであり、前記同軸アンテナそれぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆うマイクロ波乾燥方法が提供される。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように本発明によれば、マイクロ波照射部材を被乾燥物層の上方から所定の位置まで挿入したマイクロ波照射部材及びコンベアの直上に設けられたマイクロ波照射部材の双方からマイクロ波を照射することにより、乾燥炉内に装入された被乾燥物の下層部位を選択的に加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一般的な還元鉄の製造方法の流れについて示した説明図である。
【図2】乾燥炉内における塊成化物の状態について説明するための説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥方法の概略を示した説明図である。
【図4】マイクロ波を用いた加熱方法に関する検討結果を説明するための説明図である。
【図5】マイクロ波を用いた加熱方法に関する検討結果を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置の構成を示した説明図である。
【図7】本発明の第1の参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図8】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図9】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図10】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図11】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図12】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図13A】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図13B】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図13C】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図13D】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図13E】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図14】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図15】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図16A】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図16B】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図17A】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図17B】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図18A】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図18B】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図19】本発明の第2の参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図20】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図21】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図22】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図23】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図24】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図25A】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図25B】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図26】本発明の第3の参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図27】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図28】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図29】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図30】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図31】同参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図32A】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図32B】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図33A】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図33B】同参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について示した説明図である。
【図34】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図35】同実施形態に係るマイクロ波照射部材の第1変形例について示した説明図である。
【図36】同実施形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図37A】同実施形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【図37B】同実施形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0042】
(還元鉄の製造工程について)
本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法について説明するに先立ち、まず、図1を参照しながら、還元鉄の製造工程について、詳細に説明する。図1は、還元鉄の製造工程を説明するための説明図である。
【0043】
まず、製鉄ダスト(酸化鉄粉)及び鉄鉱石、粉鉱石などの酸化鉄原料と、石炭、コークス、微粒カーボン等の還元材とは、予めホッパー1等に格納されている。酸化鉄原料及び還元材は、予め設定された配合比となるように配合されて、粉砕機2に装入される。
【0044】
ボールミル等の振動ミルに代表される粉砕機2は、装入された酸化鉄原料及び還元材を、混合しながら所定の粒径まで粉砕する。粉砕後の酸化鉄原料及び還元材の粒径は、還元鉄の製造に用いられる回転炉床炉、流動床炉、シャフト炉等の固体還元炉に適した値とすることができる。粉砕後の酸化鉄原料及び還元材からなる混合物は、混練機3に運搬される。
【0045】
混練機3は、粉砕機2により所定の粒径に粉砕された混合物を混練する。また、混練機3は、混合物の混練に際して、還元鉄の製造に用いる固体還元炉に適した水分量となるまで混合物に加水を行う調湿処理を施してもよい。混練機3の一例として、例えば、ミックスマーラー等を挙げることができる。混練機3によって混練された混合物は、成型機4に搬送される。
【0046】
パンペレタイザー(皿型造粒機)、ダブルロール圧縮機(ブリケット製造機)、押し出し成型機等の成型機4は、酸化鉄原料及び還元材を含む混合物を成型し、例えばペレットのような塊成化物とする。ここで、塊成化物とは、ペレット、ブリケット、押し出し成型して裁断した成型品、粒度調整された塊状物等の粒状物・塊状物をいう。成型機4は、後述する乾燥・加熱還元後、例えば熱間にて溶解炉7に装入する際、炉内上昇ガス流で飛散しない程度の粒径以上の大きさとなるように、上記混合物を塊成化する。生成された塊成化物は、乾燥炉5へと装入される。
【0047】
乾燥炉5は、塊成化物を乾燥して、後述する加熱還元工程に適した水分含有率(換言すれば、還元鉄の製造に用いる固体還元炉ごとに適した水分含有率:例えば、1%以下)となるようにする。所定の水分含有率となった塊成化物は、後述する固体還元炉6へと搬送される。
【0048】
例えば回転炉床炉(Rotary Hearth Furnace:RHF)、流動床炉、シャフト炉等のような固体還元炉6は、装入された塊成化物を、LNGバーナーやCOGバーナー等の加熱雰囲気で加熱および還元し、還元鉄とする。固体還元炉は、塊成化物を例えば1000〜1300℃程度まで加熱して塊成化物の還元処理を行い、還元鉄を製造する。製造された還元鉄は、溶解炉7に搬送される。溶解炉7では、固体還元炉6で製造された還元鉄を溶解し、溶銑を生成する。生成された溶銑は、脱硫/脱炭工程、二次精錬工程、連続鋳造工程、圧延工程等を経て、各種鉄鋼製品へと加工されることとなる。
【0049】
(マイクロ波を用いた乾燥方法の概略)
以上のような還元鉄の製造工程において、通常、乾燥炉5は、熱風を用いて塊成化物を乾燥させるトンネル状の炉が用いられる。この乾燥炉5の内部には、通常、ブリケット等の塊成化物が例えば高さ250mm程度となるまで装入され、炉内を網目状の金属コンベアで搬送される。搬送される個々の塊成化物は、還元炉や溶解炉の型式等によって様々な大きさのものがあるが、例えば10φ〜20φ程度の概球形状のものや、30φ〜50φ×厚み25mm程度の大きさであり、高さ250mm程度まで積層されることで、網目状コンベアには、約300kg/mの荷重がかかる。この搬送の過程で、熱風によって塊成化物中の水分が除去され、塊成化物の水分含有率が所望の値となるように制御される。また、先だって説明したように、塊成化物中に含まれる石炭成分の発火を防止するために、使用する熱風は約200℃以下とする制約がある。
【0050】
しかしながら、本発明者らが乾燥炉内の水分の残存状況を調査した結果、図2に模式的に示したように、上方からの熱風による乾燥では、塊成化物層の上層部位は乾燥するものの、下層部位(網目状コンベアに近い部位)では水分の残留量が大きく、下層部位の塊成化物は、乾燥不良となっていることが多いことが明らかとなった。このような要因のために、塊成化物の平均乾燥化率は歩留まりが低下することとなり、乾燥度合いを高めるために、乾燥時間を長くしなければならなくなる。
【0051】
そこで、本発明者らは、塊成化物層の下層部位を選択的に加熱する方法について鋭意検討を行った。かかる検討において懸案事項となった事象は、例えば以下のようなものである。
【0052】
すなわち、乾燥炉の床面は金属を用いた網目状のコンベアとなっているため、単にコンベアの下方からマイクロ波を照射した場合には、照射したマイクロ波がコンベアで反射されてしまい、塊成化物を加熱することはできない。また、コンベアの材質を、例えばテフロンやナイロンのようにマイクロ波の吸収が少ない材質に変更することも考えられるが、このような材質は金属網ベルトに比べて高価であり、設備費用が高額になるとともに、約300kg/mという荷重に耐えることができない。また、マイクロ波を上方から照射する場合であっても、塊成化物層の上下を乾燥炉内で反転させることで以前は下層に位置していた塊成化物を加熱することができるかもしれないが、このような上下反転を実施してしまうと、塊成化物が互いに衝突することにより砕けてしまい、塊成化物が粉化してしまうという問題が生じうる。
【0053】
従って、塊成化物のようなある程度の硬度を有している被乾燥体が炉内を動いている(すなわち、被乾燥体が静止していない)状況下において塊成化物を十分に乾燥させるために、例えばkWクラスの高出力のマイクロ波を、マイクロ波照射部材の耐摩耗性等を維持しながら効率良く塊成化物の下層部位に対して照射することが可能な方法を検討する必要があった。
【0054】
その結果、図3に模式的に示したように、塊成化物層の下層部位に対して網目状コンベアを介さずにマイクロ波を供給することによって、マイクロ波加熱により下層に位置する塊成化物を選択的に加熱することが可能な4種類の方法に想到した。
【0055】
図3に模式的に示したような乾燥方法を用いることにより、塊成化物層の下層部位の乾燥進行を改善し、塊成化物の平均乾燥化率を向上させ、乾燥時間の短縮を図ることが可能となり、ひいては、乾燥工程の生産性を向上させることができる。
【0056】
本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法について説明するに先立ち、本発明者らによるマイクロ波加熱を利用した塊成化物の乾燥方法に対する各種の検討結果について、図4及び図5を参照しながら、具体的に説明する。
【0057】
<マイクロ波による加熱が及ぶ範囲についての検討>
本発明者らは、マイクロ波による加熱が及ぶ範囲について検討するために、以下のような実験を行った。図4は、塊成化物(ブリケット)に対してマイクロ波を上方から照射した場合について、マイクロ波加熱が及ぶ範囲を検証するための実験装置を模式的に示したものである。
【0058】
図4に示したように、本発明者らは、金属製の容器に40φ×20mm程度の未乾燥ブリケット(実際の操業で用いられるもの)を積層し、チャンバー内に配置した。この際、金属製容器の略中央部分に位置するブリケットに熱電対を挿入するとともに、それぞれの層と層との間(例えば、図4下図における層A−層B間、層B−層C間・・・等)にも熱電対を設置し、温度上昇の様子をモニターできるようにした。その上で、2.45GHzのマイクロ波を照射可能な3.0kWマイクロ波発振機と、チャンバーへの入射マイクロ波出力と反射マイクロ波出力とを計測可能なパワーモニタと、反射マイクロ波を低減させるための自動整合器とを導波管で接続し、自動整合器から出力されるマイクロ波を、導波管を介してチャンバーの上方から照射した。この実験において、マイクロ波の入射電力は600Wであり、マイクロ波の照射時間は60秒とした。
【0059】
その結果、図4下図に示した層Aに位置するブリケットに挿入した熱電対、及び、層A−層B間に挿入した熱電対では、明らかな温度上昇が確認され、層Bに位置するブリケットでも、層Aに位置するブリケット程ではないものの温度上昇が確認された。しかしながら、層Cよりも下層に位置するブリケットでは、温度上昇が確認できなかった。この実験結果は、塊成化物の上方からマイクロ波を照射した場合には、マイクロ波による加熱が及ぶ範囲は、せいぜい最表層から2層目までであることを示している。
【0060】
ところで、物質に吸収される単位体積あたりのマイクロ波のエネルギーPabsは、以下の式11のように表される。以下の式11を参照するとわかるように、加熱される物質(被加熱物質)に吸収される単位体積あたりのマイクロ波のエネルギーPabsは、被加熱物質の導電率、誘電率及び透磁率に依存していることがわかる。従って、下記式11で表されるPabsは、被加熱物質のマイクロ波の吸収効率に関係する量であるともいえる。
【0061】
【数1】

【0062】
ここで、上記式11において、
σ :被加熱物質の導電率 [S/m]
f :マイクロ波の周波数 [Hz]
ε:真空中の誘電率 [F/m]
ε”:被加熱物質の比誘電率の虚数部
μ:真空中の透磁率 [H/m]
μ”:被加熱物質の比透磁率の虚数部
E :マイクロ波により形成される電界強度 [V/m]
H :マイクロ波により形成される磁界強度 [A/m]
π :円周率
である。
【0063】
以下に、塊成化物の原料となる酸化鉄及び炭素材(還元材)と、一般的に使用される耐火炉材とについて、比誘電率の虚数部ε”の値をまとめて示す。
【0064】
比誘電率の虚数部ε”
・代表的な耐火炉材であるアルミナ:0.004〜0.01
・粉状の炭素粉:10〜50
・酸化鉄:0.1〜10
【0065】
上記より明らかなように、塊成化物の原料となる酸化鉄及び炭素材は、乾燥炉等において一般的に使用される耐火炉材に対して比誘電率の虚数部ε”の値が大きく、酸化物及び炭素材(還元材)にマイクロ波のエネルギーをより多く吸収させることが可能である。また、酸化鉄及び炭素粉の値に比べ、代表的な耐火炉材であるアルミナの値は、1000分の1程度の小さな値となっており、耐火炉材は、マイクロ波のエネルギーを多く吸収しないことがわかる。従って、塊成化物が挿入された炉内でマイクロ波を照射した場合、耐火炉材で被覆されている炉壁等へのエネルギー供給は少なく、炉内温度の上昇を抑制したまま原料である塊成化物の温度のみを、効率よく上昇させることが可能となる。
【0066】
しかしながら、まさに上記で説明したような特徴により、図4に示したようなマイクロ波を炉内の自由空間に照射するという実験状況では、上方から照射されたマイクロ波が上層部位に位置する塊成化物に非常に良く吸収されてしまい、乾燥促進のために熱供給を必要とする下層部位にマイクロ波が浸透しないと考えられる。従って、本発明者らは、従来のように、炉天井部や側壁や炉底面から炉内の空間に向かってマイクロ波を照射した場合には、下層部位に位置する塊成化物を加熱することはできないと判断した。
【0067】
ところで、マイクロ波が誘電損失により物質に吸収されると、マイクロ波のエネルギーは熱に変換されて、結果的にマイクロ波を吸収した物質が加熱されることとなる。この際、マイクロ波がどのくらいまで物質の内部に浸透するかは、以下の式12で算出することが可能である。
【0068】
【数2】

【0069】
ここで、上記式12において、
δ :マイクロ波の浸透深さ [cm]
λ :自由空間におけるマイクロ波の波長 [cm]
ε’ :物質の比誘電率(実部)
tan δ:物質の誘電正接
である。
また、tan δは、物質の誘電率ε’及び誘電損失係数ε”を用いて、(ε’/ε”)で算出することが可能である。
【0070】
本発明者らによる更なる実験の結果、ブリケットは30φ〜50φ×厚み25mmの塊状であり、各ブリケットの間に空隙を持っていること、及び、搬送中のブリケットでは各ブリケットの間の空隙の状態が変化するため、マイクロ波加熱範囲が拡大し、上記式12で求めた浸透深さδの10倍までの範囲が実効的な加熱範囲(以下、δeffとも表記する。)であることが明らかとなった。ブリケットの物性値から上記浸透深さδを算出すると、その大きさは、約1cm程度となるため、マイクロ波加熱による実効的な加熱範囲δeffは、約10cm程度となる。従って、側面からのマイクロ波照射では、操業で用いられる幅2〜2.5m程度、搬送距離20〜30m程度の乾燥炉の下層部全体を加熱することは出来ないことも明らかとなった。
【0071】
そこで、本発明者らは、上記のような実験により得られた知見に基づいて更なる検討を行った結果、乾燥炉の下層部位全体を加熱することが可能なマイクロ波の照射方法に想到し、以下で説明するようなマイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法に想到したのである。
【0072】
図5は、塊成化物の乾燥後の水分量(%)と塊成化物の圧潰強度との関係を模式的に示したグラフ図である。塊成化物を製造するにあたっては、コーンスターチ等のデンプン系糊剤をバインダーとして使用し、求められる強度を実現するが、デンプン系糊剤は、図5に例示したように乾燥する程強度が高くなる。そのため、以下で説明するような方法により塊成化物全体の乾燥率を向上させることによって、バインダー量を変更することなく、塊成化物の圧潰強度を上昇させることができる。その結果、搬送中に砕けて使用できなくなる塊成化物の量を減少させることができ、歩留まりの向上を図ることができる。また、乾燥率を向上させることで、同じ強度を得るために添加すべきバインダーの量を減少させることが可能であるため、製造コストの削減を図ることも可能となる。
【0073】
(使用するマイクロ波について)
続いて、本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法に用いられるマイクロ波について、簡単に説明する。
【0074】
マイクロ波は、一般的には、波長1mm〜1m、周波数300MHz〜300GHzの電磁波をいう。しかしながら、本実施形態に係る塊成化物の加熱方法で着目しているように、マイクロ波を加熱手段として用いる(いわゆるマイクロ波加熱を行う)場合には、マイクロ波とは、いわゆるISM(Industry−Science−Medical)バンドに属する周波数帯域の電磁波を指す。
【0075】
以下で説明する本発明の実施形態では、IMSバンドに属する周波数を有する電磁波であれば特に限定されず、例えば、2.45GHz帯(2.40GHz〜2.50GHz)、5.8GHz帯(5.725GHz〜5.875GHz)、及び、24GHz帯(24.0GHz〜24.25GHz)に属する周波数等を適宜選択することが可能である。しかしながら、マイクロ波の被加熱物内部への浸透は、上記式12で表わされるようにマイクロ波の波長に比例するため、上記ISMバンドのマイクロ波では、2.45GHz帯の浸透深さδが一番大きく、したがって数少ない同軸アンテナあるいは導波管の本数、乾燥炉全幅にわたって原料ブリケットの加熱を行うことができる。また、2.45GHzは電子レンジやその他のマイクロ波加熱応用に広く用いられており装置が安価である点や、発振機1台で数十kWまでの大出力の放射が可能である点などから、kWクラスの大出力が求められる本発明の設備コストとしても、他の2種の周波数の装置よりも安価に導入することができる。このため、本発明に用いるISMバンドのマイクロ波装置としては、2.45GHzのマイクロ波を発振可能なものが好ましい。
【0076】
(マイクロ波乾燥装置の構成について)
次に、図6を参照しながら、本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置の構成について、詳細に説明する。図6は、本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置の構成を説明するための説明図である。
【0077】
本実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10は、粉体又は小塊状の原料を網目状コンベアで搬送する過程で、この原料の上方から熱風を吹き付けて当該熱風を原料の上方から下方へと通過させることにより、原料中に含まれる水分を低減させる熱風式のトンネル乾燥炉に対して利用されるものである。
【0078】
本実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10は、図6に示したように、マイクロ波発振機101と、サーキュレータ103と、自動整合器107と、マイクロ波照射部材109と、を主に備え、これらの機器が導波管111により接続されている。なお、図6では、導マイクロ波照射部材109や導波管111等といった各部材を支持する支持機構は、図示していない。
【0079】
マイクロ波発振機101は、例えばISMバンドに属する周波数を有するマイクロ波を発振する機器である。このマイクロ波発振機101は、kWクラスの出力を有するマイクロ波を発振可能な機器であることが好ましい。このマイクロ波発振機101により、例えば2.45GHz帯に属する周波数のマイクロ波が、後述するサーキュレータ103へと出力されることとなる。このマイクロ波発振機101は、公知のものを適宜選択して使用することが可能である。
【0080】
サーキュレータ103は、例えば磁石を利用したマイクロ波の進行制御を行うことで、サーキュレータ103に入力されるマイクロ波を、マイクロ波発振機101から出力された入射波と、後述する自動整合器107側から戻ってきた反射波とに分離する。サーキュレータ103は、分離した入射マイクロ波を後述する自動整合器107側へと導波するとともに、反射マイクロ波を、アイソレータ105の側へと導波する。これにより、反射マイクロ波は、アイソレータ105内に設けられたダミー負荷(例えば、水など)に吸収され、マイクロ波発振機101側に戻らないようにすることができる。このようなサーキュレータ103を設けることにより、本実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10では、安定したマイクロ波の出力を行うことができる。このサーキュレータ103は、公知のものを適宜選択して使用することが可能である。
【0081】
自動整合器107は、入射側のインピーダンスと、負荷側(すなわち、塊成化物からなる原料層側)のインピーダンスとの整合を取ることで負荷側からの反射波を低減し、反射波をほぼゼロとする機器である。この自動整合器107は、反射電界の位相及び強度を測定し、インピーダンス整合を自動で行うことで、上記のような反射波の低減を実現する。
【0082】
本実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10の乾燥対象は、乾燥炉5内を搬送されている塊成化物等の小塊原料である。そのため、移動している小塊原料と後述するマイクロ波照射部材109との接触状況は絶えず変化し、負荷側のインピーダンスが変動するため、マイクロ波の照射効率は変動することとなる。自動整合器107を設けて負荷側のインピーダンスにあわせた自動整合処理を実現することで、後述するマイクロ波照射部材109から、マイクロ波エネルギーを、安定して効率良く原料層に照射することが可能となる。
【0083】
マイクロ波照射部材109は、熱風式の乾燥炉5において塊成化物からなる原料層の下層部位を選択的に加熱するために、マイクロ波を原料層の下層部位へと照射する部材である。このマイクロ波照射部材109の構成については、以下で改めて詳細に説明する。
【0084】
導波管111は、マイクロ波を導波して所望の箇所へと導く管である。この導波管111の形状については、マイクロ波の導波特性等を考慮して適宜決定すればよく、導波管111自体についても、使用するマイクロ波の周波数や出力強度等に応じて、公知のものを適宜選択することができる。
【0085】
(第1の参考形態)
<マイクロ波照射部材の構成について>
続いて、図7〜図12を参照しながら、本発明の第1の参考形態に係るマイクロ波照射部材の構成について、詳細に説明する。図7〜図12は、本参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【0086】
図7に例示したように、本参考形態では、中空の金属管である導波管111を、マイクロ波照射部材109として利用し、図7において紙面奥行き方向に搬送されている塊成化物からなる原料層に対して、導波管111が乾燥炉5の上方から挿入される。また、図7では、説明を分かり易くするために、乾燥炉5に挿入される導波管111のうちの1本のみを記載しているが、乾燥炉5には、複数個の導波管111が上方から挿入される。この導波管111は、網目状コンベアからなる乾燥炉5の底面に対して略垂直となるように挿入される。
【0087】
マイクロ波照射部材109として利用される導波管111の断面形状(原料層の搬送方向と平行な方向での断面形状)や断面の大きさは、所望の周波数及び強度を有するマイクロ波を導波することが可能な形状及び大きさとなるように適宜決定することが可能であり、例えば断面形状を矩形状(方形導波管)や円形状(円形導波管)とすることが好ましい。
【0088】
特に、方形導波管においては、伝送可能なマイクロ波の自由空間における波長をλ、方形導波管の長辺の長さをaとした場合、以下の式13で表される関係を満足すればマイクロ波の基本波であるTE10モードの伝送が可能である。このとき、方形導波管の短辺bにはマイクロ波伝送に関するする制約が無く、導波管内の電界強度が内部媒質(内部気体)の絶縁破壊電圧を超えない条件下において短辺bを小さくすることができる。従って、方形導波管においては、乾燥炉中に挿入する際に搬送方向と概垂直に設置する短辺に当たる導波管の幅を、円筒導波管よりも十分に小さくすることが可能である。すなわち、方形導波管においては、導波管挿入によるブリケットの搬送への影響を小さくすることができ、本参考形態においては、円筒導波管を用いるよりも方形導波管を用いる方が好ましい。
【0089】
λ/2<a<λ ・・・(式13)
【0090】
乾燥炉5の内部では塊成化物が搬送方向に向かって移動しているため、導波管111は、塊成化物の流れに対して抵抗とならないように(すなわち、塊成化物の流れに正対する面積が少なくなるように)原料層中に挿入される。例えば導波管111の断面形状が矩形状である場合、矩形状の長辺が搬送方向に対して略平行になり、かつ、矩形状の短辺が搬送方向に対して略直交するように、原料層に挿入される。また、塊成化物の搬送抵抗を軽減するために、導波管111は原料層の搬送方向下流側に下端を向けるように傾いて設置されていてもよい。
【0091】
また、導波管111は、搬送中の塊成化物から受ける単位面あたりの荷重を考慮して、断面形状が荷重を受けて座屈変形しないような強度を有するように、銅(Cu)やアルミニウム(Al)や非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS)やこれらを含む合金等の各種金属を利用して製造される。また、導波管111自体を、乾燥炉5が設置されている場所の上部(例えば、天井など)に固定する場合には、導波管自体が塊成化物からの荷重を受けて座屈変形し、搬送方向に折れ曲がらないような強度を有することが好ましい。
【0092】
乾燥炉5の原料層内部は、下層部位において約80℃以上の温度を有し、約100%に近い湿度を有する高温多湿状態にあり、このような状況下で塊成化物が移動している。そのため、導波管111の内部に湿気が侵入することによるアーキングの発生を防止するとともに、導波管111の内部への粉塵の侵入を防止するために、乾燥空気や乾燥窒素や乾燥アルゴン等の防塵ガスを中空の導波管内部に導入して、導波管111に正圧がかかっている状態とすることが好ましい。
【0093】
また、マイクロ波照射部材109として用いられる導波管111の先端にセラミックスカバー113を設け、このセラミックスカバーの周囲からマイクロ波が放射されるようにすることで、導波管周囲の加熱範囲を広げるようにすることが好ましい。
ここで、セラミックスカバー113の形状は、図7に示すように、導波管109の断面形状が矩形の場合には直方体状とし、導波管109の断面形状が円形の場合には円柱状とすることが好ましい。
【0094】
セラミックスカバー113は、加熱源であるマイクロ波の吸収が少なく、高温多湿状態でも利用可能であり、塊成化物との接触に耐えうる強度、耐摩耗性、加工性を備える無機材料セラミックスを用いて形成される。セラミックスカバー113に用いられる無機材料セラミックスは、マイクロ波の吸収特性に関与する誘電損失係数ε”が、0.02未満であることが好ましい。誘電損失係数ε”を0.02未満とすることで、マイクロ波吸収による無機材料セラミックスの自己発熱を抑制することが可能となる。
【0095】
このような無機材料セラミックスの例として、アルミナ(Al)、窒化ケイ素(Si)、サイアロン(SiAlON、化学式:Si・Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)等がある。これらの無機材料セラミックスを単独で使用してセラミックスカバー113を製造してもよく、これらの無機材料セラミックスを混合してセラミックスカバー113を製造してもよい。
【0096】
本参考形態では、導波管111の加熱範囲が原料層の最下層まで及ぶような深さまで、乾燥炉5の上方から導波管111を挿入する。このように導波管111を原料層に挿入することで、導波管111の先端から照射されるマイクロ波エネルギーにより原料層の下層部位に位置する塊成化物を選択的に加熱することが可能となる。
【0097】
この際、導波管111の先端と網目状コンベアとの間の離隔距離が小さくなりすぎると、導波管先端からのマイクロ波放射ができなくなる。そのため、例えば図8に示したように、導波管先端と網目状コンベアとの間の離隔距離Lを、加熱源として利用するマイクロ波の波長λの4分の1以上とすることが好ましい。
【0098】
本発明者らによる検討の結果、離隔距離Lをλ/4以上とすることで、導波管先端から放射されるマイクロ波の割合を70%超過とすることができ、網目状コンベアからの反射マイクロ波の割合を30%未満とすることができることが明らかとなった。反射マイクロ波の割合が大きい状態では、干渉によりマイクロ波の発振波長が乱れた状態となるため、自動整合器107の動作が不安定になる可能性がある。一方、反射マイクロ波の割合が30%程度であれば、自動整合器107を用いて位相整合することで、反射マイクロ波をほぼゼロにすることが可能となる。また、反射マイクロ波の割合が大きい状態では、大きな反射電力を押し返してマイクロ波を放射させることとなるため、導波管のつなぎ目部分等といった通常では加熱されない部分での異常加熱が発生する可能性があり、マイクロ波乾燥装置10の動作安定性が低下する可能性がある。
【0099】
また、導波管111の先端にセラミックスカバー113を設ける場合であっても、離隔距離Lは、λ/4以上とすることが好ましい。更に、導波管111の先端にセラミックスカバー113を設ける場合、図9に示したように、セラミックスカバー113の先端と網目状コンベアとの間の離隔距離Lを、塊成化物が入り込まない程度の大きさ(例えば、塊成化物の平均高さ程度の大きさ)とすることが好ましい。
【0100】
本参考形態では、マイクロ波照射部材109である導波管111を乾燥炉5の幅方向に複数本配設するにあたり、配置した複数の導波管111により、塊成化物を乾燥炉5の炉幅方向に均一に加熱するため、複数本の導波管111のうち少なくとも2本は、乾燥炉の炉幅方向の互いに異なる位置に配置する。
【0101】
そのうえで、配置した複数の導波管111が塊成化物の流れの抵抗とならないようにするため、例えば図10に示したように、図11に示した投影図において互いに幅方向に隣り合う位置の導波管の搬送方向位置が、同一とならないようにする。すなわち、図10に示した乾燥炉5を上方から見た図において、乾燥炉5の幅方向を便宜的にA〜Eの5つの領域に区分し、原料層の搬送方向をX方向、乾燥炉の幅方向をY方向とする。この場合に、本参考形態では、互いに隣り合う領域(例えば、領域A及び領域B)に属する導波管111のX方向位置が同一とならないように、各導波管111を分散させて配置する。
【0102】
また、例えば図11に示した投影図のように、乾燥炉5を搬送方向に向かって見た場合に、各導波管111により加熱される範囲(加熱範囲)が乾燥炉5の幅方向の略全体をカバーするような間隔で、導波管111を配置することが好ましい。この際に、各導波管111の加熱範囲が互いに重畳するように、導波管111の配置間隔を決定することが好ましい。換言すれば、単一の導波管111による加熱範囲の最大幅をLとし、乾燥炉5の幅をWとし、図11に示した投影図において乾燥炉5の幅方向の導波管の個数をNとした場合に、L×N≧Wを見たすように、乾燥炉5の幅方向における最大の導波管数を決定することが好ましい。
【0103】
具体的には、上記式12に示したマイクロ波の浸透深さδの10倍を実効的な加熱範囲δeffと考えると、上記単一の導波管111による加熱範囲の最大幅Lは2×δeffとなり、幅方向に隣り合うそれぞれの導波管の間の幅方向距離がL以下となるように、導波管111の幅方向の配置間隔を決定することが好ましい。このような間隔で導波管111を配置することにより、乾燥炉全幅分の塊成化物を、ムラなく加熱することができる。
【0104】
複数の導波管の間隔が上記Lよりも大きい場合は、マイクロ波による加熱範囲が炉全幅に及ばず、炉の幅方向に対して塊成化原料の加熱ムラができるため、原料の乾燥ムラにつながって好ましくない。しかしながら、マイクロ波により加熱が行われた部分については原料の乾燥が改善されるため、挿入した導波管の本数に応じて、原料全体としてみた平均値としての乾燥は改善される。
【0105】
また、乾燥炉の特性として炉幅方向における熱風乾燥の効率が異なる場合には、乾燥効率が劣位で塊成化原料の乾燥が遅れている部分にのみ導波管を挿入し、マイクロ波を照射することも有効である。
【0106】
また、どのように各導波管111を配置するかについては、特に限定されるわけではなく、例えば、乾燥炉5の残留水分の偏り状況に関する知見等に基づき、この偏りを解消可能なように導波管の配設位置を決定すればよい。従って、例えば図11において、同一の領域に複数個の導波管111が配設されていてもよい。
【0107】
なお、例えば図12に示したように、導波管111の短辺の搬送方向上流側に対し、当該搬送方向上流側に行くに従い幅が狭くなるようなテーパー部115を設けてもよい。このようなテーパー部115を設けることで、導波管111による塊成化物の搬送抵抗を更に低減することが可能となる。また、導波管111の短辺の搬送方向上流側だけでなく、搬送方向下流側に対しても上記テーパー部115を設けてもよい。
【0108】
以上、図7〜図12を参照しながら、本発明の第1の参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10及びマイクロ波乾燥方法について、詳細に説明した。
【0109】
<第1の参考形態の変形例>
次に、図13A〜図18Bを参照しながら、本発明の第1の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明する。図13A〜図18Bは、本発明の第1の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明するための説明図である。
【0110】
[導波管の側面からのマイクロ波照射]
上記説明における導波管111は、導波管111を原料層に挿入した際に、網目状コンベアと対向する端部(すなわち、図7等における導波管111の底面)が開口となっており、この底面からマイクロ波が照射されるものであった。導波管111の底面に開口が設けられる場合には、導波管周囲の加熱範囲を広げつつ、導波管111の内部への塊成化物等の侵入を防止するために、導波管111の先端に無機材料セラミックスからなるセラミックスカバー113を設けることが好ましいものであった。
【0111】
かかる無機材料セラミックスは、塊成化物原料の摩擦に耐える硬さを有するものであるため、セラミックスカバー113の加工に手間がかかる。従って、例えば図12に示したような、塊成化物の搬送を妨げないために抵抗を少なくするためのテーパー形状等への形状加工を行う場合、導波管及びセラミックスカバーの製造コストが増加してしまう。
【0112】
そこで、本変形例では、導波管111の底面ではなく、導波管111の側面(より詳細には、導波管111を原料層に挿入した際に原料層搬送方向に対して平行となる側面)に切り欠き部を形成し、かかる側面からマイクロ波を照射する方法について説明する。
【0113】
図13Aは、本変形例に係る導波管111の先端部を模式的に示したものである。図13Aに示した導波管111には、原料層の搬送方向上流側にテーパー部115が設けられている。また、図13Aの左側の図に示したように、導波管111を原料層に挿入した際に乾燥炉の原料層搬送方向に対して平行となる側面(すなわち、図13Aの紙面と平行な側面)には、切り欠き部151が形成されている。
【0114】
このような切り欠き部151を導波管111の側面に形成することで、かかる切り欠き部151がマイクロ波の放射窓となり、切り欠き部151から原料層へとマイクロ波が照射されることとなる。
【0115】
切り欠き部151から導波管111の内部へ塊成化物が入り込むことを防止するため、図13Aの右側の図に示したように、上述のような無機材料セラミックスで形成された板状のセラミックスカバー153により、切り欠き部151を覆うことが好ましい
【0116】
乾燥炉5では、原料層の上方から熱風を供給することで原料層の構成する塊成化物を乾燥させているため、積層している塊成化物の下層に行くに従って水分が多く残存することとなる。従って、マイクロ波照射による乾燥効果をより向上させるためには、原料層のなるべく下方にマイクロ波を照射することが好ましく、切り欠き部151は、図13Bに示すように、下層部に近い導波管の先端部まで設けることが望ましい。また、導波管111の底面の金属部分111aはマイクロ波の反射体であるため、図13Cに示した底面の金属部分111aの幅Aを変更することによって、放射されるマイクロ波の分布が変化することとなる。
【0117】
具体的には、図13Dに示すように導波管111の底面部分の幅Aを狭くすることにより、図13Cに示した場合と比較して、より下層部近い部分へのマイクロ波の放射が行われるようにすることも可能である。ただし、底部の金属部分111aの幅は、マイクロ波の放射部分のインピーダンスに影響を与えるため、導波管へのマイクロ波の反射があまり大きくならない適当な幅とすることが望ましく、周囲の塊成化原料の電磁気物性値(誘電率、透磁率、導電率等)や塊成化原料の大きさ、充填密度等に応じてマイクロ波の反射量が少なくなるように幅Aを設計することが望ましい。
【0118】
なお、導波管111の底面には、マイクロ波を吸収しない材質からなる部材であれば存在していてもよい。従って、図13C及び図13Dに示したように、防塵用にセラミックスカバー153aを設けても良い。また、図13Dに示すように、底面の金属部分111aの幅Aが狭くなる場合には、導波管111の底面にセラミックスカバー153aを設けることが好ましい。
【0119】
また、図13Eに示したB−B切断線での概略断面図に示したように、セラミックスカバー153は、乾燥炉の内部でも使用可能な公知の材料を用いた治具により切り欠き部151に固定すればよい。
【0120】
なお、切り欠き部151の原料層搬送方向の幅Wは、特に限定されるものではなく、導波管111の大きさ、使用するマイクロ波の周波数や出力強度等に応じて適宜決定すればよい。
【0121】
次に、図14を参照しながら、本変形例に係る導波管111の原料層への挿入方法について説明する。図14は、本変形例に係る導波管111を乾燥炉5の上方から挿入した様子を乾燥炉5の側面から見た場合を模式的に示した説明図である。なお、図14では、便宜上、板状のセラミックスカバー153を省略して図示している。
【0122】
導波管111の側面に対して切り欠き部151を設けた場合、切り欠き部151のマイクロ波発振機101に近い部分(すなわち、切り欠き部151の原料層高さ方向の上端部)の放射強度が大きくなる。一方、乾燥炉5では、原料層の上方から熱風を供給することで原料層の構成する塊成化物を乾燥させているため、積層している塊成化物の下層に行くに従って水分が多く残存することとなる。従って、マイクロ波照射による乾燥効果をより向上させるためには、原料層のなるべく下方にマイクロ波を照射することが好ましい。
【0123】
そこで、本変形例では、マイクロ波で加熱したい原料層の厚みをLと表し、切り欠き部151の原料層高さ方向の上端の位置(すなわち、図14における網目状コンベアと切り欠き部151の上端との間の離隔距離)をLと表した場合に、L≦Lという関係を満たすように導波管111を挿入することが好ましい。マイクロ波で加熱したい原料層の厚みLを、原料層の最下層に対応する厚みとすることで、原料層の最下層を効果的にマイクロ波により加熱することが可能となる。
【0124】
なお、厚みLの選択方法については、特に限定されるものではなく、過去の操業実績等から得られる知見に基づいて適宜選択すればよい。
【0125】
また、切り欠き部151から放射されるマイクロ波の割合を増やし、かつ、網目状コンベアからの反射マイクロ波の割合を減らすために、離隔距離Lを、加熱源として利用するマイクロ波の波長(自由空間における波長)λの4分の1以上とすることが好ましい。
【0126】
一方、導波管111の先端部と網目状コンテナとの間に塊成化物が入り込まないようにするために、図14に示した導波管の先端部と網目状コンテナとの間の離隔距離Lを、塊成化物が入り込まない程度の大きさ(例えば、塊成化物の平均高さ程度の大きさ)とすることが好ましい。
【0127】
以上、図13A〜図14を参照しながら、本変形例に係る導波管111の構成について、詳細に説明した。
なお、切り欠き部151は、導波管111を原料層に挿入した際に乾燥炉の原料層搬送方向に対して平行となる側面のどちらか一方にのみ形成されてもよいが、該当する側面の両方に対して形成されることが好ましい。また、乾燥炉の原料層搬送方向に対して平行となる側面に加えて、導波管111の原料層搬送方向下流側の側面に対して切り欠き部151を形成してもよい。
【0128】
[導波管の原料層搬送方向の配設方法]
次に、図15〜図17Bを参照しながら、本変形例に係る導波管の原料層搬送方向の配設方法について説明する。
【0129】
乾燥炉5の内部を搬送されている塊成化物原料が、本変形例に係る導波管111一つから照射されるマイクロ波によって加熱される時間tは、導波管111の切り欠き部151の原料層搬送方向の幅をW[mm]とし、塊成化物の搬送速度をV[mm/sec]とした場合に、おおよそ(W/V)秒となる。
【0130】
一方、導波管を用いてマイクロ波を導波する場合、導波管内部に複数の伝播モードが発生しないようにし、マイクロ波の伝送効率を維持するために、導波管の幅を導波するマイクロ波の波長未満とすることが多い。例えば、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合、導波管の搬送方向の最大幅は、120mm程度の大きさとなる。従って、導波管1本の最大幅が120mm程度である場合、通常の網目状コンベアの搬送速度を考慮すると、上記時間tは極めて短時間となる。
【0131】
このような短時間の間に塊成化物をマイクロ波によって十分に乾燥させるために、方策の一つとして、出力強度の大きなマイクロ波を利用することが考えられる。しかしながら、導波管の周囲に存在し、マイクロ波によって加熱される塊成化物は、塊成化物の位置により加熱の大小に差が生じるため、必ずしも均一に加熱されるわけではない。また、大出力のマイクロ波を用い短時間での乾燥を得ようとする場合には、一部の塊成化物が過剰加熱され、塊成化物に含まれる揮発成分が発火してしまう可能性がある。そのため、塊成化物をマイクロ波によって十分に乾燥させるためには、塊成化物が過剰加熱しない程度の出力を有するマイクロ波を利用し、マイクロ波の作用時間を長くすることで、乾燥の促進を図ることが重要となる。
【0132】
そこで、本変形例では、例えば図15に示したように、原料層の搬送方向に導波管111の加熱範囲が連続するように、導波管111を原料層の搬送方向に並べて配設する。このような導波管の配設方法を採用することで、マイクロ波が照射されている区間を長くすることができ、ひいては、塊成化物へのマイクロ波の作用時間を長くすることが可能となる。
【0133】
ここで、導波管111の搬送方向の配列方法は、搬送方向に隣り合う互いの導波管111の加熱範囲が連続するようにすれば、特に限定されるものではなく、隣り合う導波管111が互いに接触していてもよいし、離隔していてもよい。なお、隣り合う導波管111を離隔して配置する場合には、隣り合う導波管111の間の空間に塊成化物が詰らないように、カバー等を設けることが好ましい。
【0134】
また、図15では、2つの導波管111を搬送方向に連続して配設する場合について図示しているが、搬送方向に3個以上の導波管111を連続して配設してもよいことは言うまでもない。
【0135】
複数の導波管111を互いに接触させて配置する場合には、例えば図16Aと、図16AのA−A切断線での概略断面図である図16Bとに示したように、相隣接する導波管111に亘るように切り欠き部151を連続して設けてもよい。この場合、図16Bに示した間仕切りdの厚みは、マイクロ波の導波を維持可能な範囲で薄くすることが可能である。
【0136】
なお、図15に示したような導波管の配設方法は、本変形例に係る導波管111だけでなく、図7に例示した第1の参考形態に係る導波管111に対しても適用することが可能であることは言うまでもない。
【0137】
また、マイクロ波の作用時間を長くするために、例えば図17A及び図17Bに示したように、導波管の終端部を分岐させることで導波管の幅を広げ、マイクロ波が照射される面積を増加させるようにしてもよい。この場合、導波管111の内部にインピーダンスの整合を目的とした整合ピン155と分岐板157を設ける等といった公知のマイクロ波の分岐技術を適用することが可能である。この場合、1本の導波管を導波しているマイクロ波を2本の導波管それぞれに導波させるため、導波管の幅がマイクロ波の波長未満という条件を満足しつつ導波管111の加熱範囲を長くすることが可能となる。また、マイクロ波の加熱範囲を広げつつ乾燥炉5の上方に突出する導波管111の本数を削減することが可能となるため、設備の省スペース化を図ることが可能となる。
【0138】
[搬送方向の振動緩和機構]
次に、図18A及び図18Bを参照しながら、塊成化物の搬送に伴って導波管111に発生する振動を緩和するための技術について説明する。
【0139】
本発明の第1の参考形態とその変形例に係るマイクロ波乾燥装置10では、塊成化物を網目状コンベア上に積層して原料層とした上で搬送しながら、原料層の上部から下部に向かって熱風を通過させることで塊成化物を乾燥させる乾燥炉に対して、乾燥炉の上方から導波管111を挿入し、原料層下層部に対してマイクロ波を照射することで、該当する部位の乾燥を促進させる装置である。
【0140】
この際、乾燥炉5の上方から挿入している導波管111には、塊成化物の搬送に伴って変動する応力が働く。導波管に作用する応力が変動する理由としては、網目状コンベアによる搬送速度が一定ではなくわずかながら変動すること、塊成化物の密度が厳密には均一ではないため、導波管に接触する塊成化物の状態が搬送に伴って時々刻々と変化すること、等が考えられる。このような変動する応力が導波管111に作用すると、導波管111には原料層搬送方向の振動が生じることとなる。このような状況下で導波管の長期使用を考えた場合、かかる振動が導波管の疲労破壊の原因となることが懸念される。
【0141】
そこで、本変形例に係るマイクロ波乾燥装置10では、導波管111に対して、塊成化物の搬送に伴って発生する振動を緩和する振動緩和機構を設置する。このような振動緩和機構としては、以下の2種類の機構を挙げることができる。
【0142】
第1の振動緩和機構として、マイクロ波発振機101で発生したマイクロ波を導波する導波管111のうち振動発生部位になるべく近い部位に、振動を緩和する機構を備える導波管を設けることが挙げられる。
【0143】
振動を緩和する機構を備える導波管としては、例えば、導波管の中心軸方向のスライドを可能にするスライド機構を有する導波管(以下、スライド導波管と称する。)や、マイクロ波を導波可能な金属材(より好ましくは、導波管と同様の金属材)により形成された蛇腹部を有する導波管(以下、フレキシブル導波管と称する。)等を挙げることができる。
【0144】
スライド導波管は、スライド機構を有することで、導波管の中心軸方向の伸縮が可能となるため、導波管の中心軸方向と略平行な振動を緩和することができる。また、フレキシブル導波管は、金属製の蛇腹部を有することで、導波管の中心軸方向に対して略直交する方向に湾曲することが可能となるため、導波管の中心軸方向に対して略直交する方向の振動を緩和することが可能となる。
【0145】
また、第2の振動緩和機構として、マイクロ波照射部材である導波管111を支持する支持体の一部に弾性部材を設けることが挙げられる。バネ機構やゴム製部材等といった弾性部材を支持体の一部に設けることで、支持体が支持する導波管111に発生する振動を弾性部材によって緩和することが可能となる。
【0146】
以上説明したような振動緩和機構を設けることで、塊成化物の搬送に伴って発生する振動を緩和することが可能となり、導波管111が疲労破壊することを防止することができる。
【0147】
図18Aは、導波管111に対して、第1の振動緩和機構としてフレキシブル導波管161を設置するとともに、第2の振動緩和機構として支持体163の一部に例えばバネ機構からなる弾性部材165を設けた例を示している。
【0148】
図18Aに示した例では、マイクロ波発振機101、サーキュレータ103、自動整合器107等といったマイクロ波発振機構から延設された導波管111のうち、鉛直方向に延びる導波管の一部に、フレキシブル導波管161が設置されている。フレキシブル導波管161は、上記のように、導波管の軸方向に対して略直交する方向の振動を緩和するものであるため、図18Aに示したように、乾燥炉5へと挿入するために略鉛直方向に設けられる導波管111の一部に設置されることが好ましい。
【0149】
また、図18Aでは、導波管111を支持し、水平方向に延設される支持体163の一部に、バネ機構からなる弾性部材165が設けられている。バネ機構は、バネがバネの中心軸方向に伸縮することで応力を緩和する機構である。
【0150】
図18Aに示したように、マイクロ波発振機構や支持体163の末端は、壁等の強固な部材に固定されている。その上で、上記のようなフレキシブル導波管161や弾性部材165を設置することで、フレキシブル導波管161より下流側かつ弾性部材165よりも前方に位置する導波管111が構造的に分離され、ある程度自由に動くことが可能となる。なお、導波管111の乾燥炉5への挿入部分には、導波管111のある程度の動きを許容しつつ、乾燥炉5の気密を維持するための埋め込み材167を設けておくことが好ましい。
【0151】
図18Bは、図18Aに示したフレキシブル導波管161に代えて、スライド導波管169を設置した例を示している。スライド導波管169は、上記のように、導波管の軸方向の振動を緩和するものであるため、図18Bに示したように、略水平方向に延設される導波管111の一部に設置されることが好ましい。
【0152】
なお、図18A及び図18Bでは、一つの導波管111に対してフレキシブル導波管161又はスライド導波管169の一方を配設する場合について図示しているが、フレキシブル導波管161とスライド導波管169を併用しても良い。また、図18A及び図18Bでは、フレキシブル導波管161、弾性部材165、スライド導波管169を一つ用いる場合について図示しているが、これらの部材を一つの導波管111に対して複数設置してもよい。
【0153】
また、図18A及び図18Bでは、フレキシブル導波管161又はスライド導波管169と、弾性部材165と、を併用する場合について図示しているが、塊成化物の搬送速度等によっては、弾性部材165を用いずに、フレキシブル導波管161又はスライド導波管169のみを配設するようにしてもよい。
【0154】
なお、図18A及び図18Bでは、変動する応力を受ける導波管を構造的に分離するための機構について説明したが、マイクロ波発振機構を含む導波管111全体を可動式にして、振動を緩和するようにすることも考えられる。
【0155】
以上、図13A〜図18Bを参照しながら、本発明の第1の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明した。
【0156】
(第2の参考形態)
本発明の第1の参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10は、マイクロ波照射部材109として、中空の金属管である導波管111を用いたものであったが、マイクロ波照射部材109として、同軸アンテナを利用することも可能である。以下では、図19〜図23を参照しながら、マイクロ波照射部材として同軸アンテナを利用した、本発明の第2の参考形態に係るマイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法について、詳細に説明する。
【0157】
なお、本参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10の全体構成は、図6に示した本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10の全体構成と同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0158】
<マイクロ波照射部材の構成について>
以下では、図19〜図23を参照しながら、本参考形態に係るマイクロ波照射部材の構成について、詳細に説明する。図19〜図23は、本参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【0159】
図19に示したように、本参考形態では、マイクロ波照射部材109として、自動整合器107と導波管111で接続された変換器121と、変換器121に接続された同軸アンテナ123と、を利用する。
【0160】
変換器121は、導波管111内で導波されるマイクロ波を、同軸アンテナ123を伝播するように変換する機器である。この変換器121は、公知の機器を適宜選択して利用することが可能である。
【0161】
同軸アンテナ123は、図19において紙面奥行き方向に搬送されている塊成化物からなる原料層に対して、乾燥炉5の上方から挿入される。また、図19では、説明を分かり易くするために、乾燥炉5に挿入される同軸アンテナ123のうちの1個のみを記載しているが、乾燥炉5には、複数個の同軸アンテナ123が上方から挿入される。この同軸アンテナ123は、網目状コンベアからなる乾燥炉5の底面に対して略垂直となるように挿入される。また、塊成化物の搬送抵抗を軽減するために、同軸アンテナ123は原料層の搬送方向下流側に下端を向けるように傾いて設置されていてもよい。
【0162】
図20は、本参考形態に係る同軸アンテナ123を説明するための説明図である。
図20に示したように、同軸アンテナ123は、中心導体123aと、中心導体123aを取り囲む外周導体123bとからなる2層構造となっている。ここで、図20のA−A切断線による断面図から明らかなように、中心導体123aは、中実な棒状の金属を用いて形成されており、外周導体123bは、中空の金属管を用いて形成される。また、中心導体123aは、中実な棒状の金属ではなく中空の金属管を用いて形成されてもよい。更に、図20のB−B切断線による断面図から明らかなように、外周導体123bの一部には、中心導体123aを保持し、中心導体123aと外周導体123bとの位置関係を固定するスペーサー123cが設けられている。
【0163】
また、同軸アンテナ123は、中心導体123aの先端が外周導体123bの先端から距離Lだけ突出するように形成される。突出距離Lの長さは、同軸アンテナ123内で伝播されるマイクロ波の波長をλ’とした場合に、λ’/4で表される長さである。同軸アンテナ123内で伝播されるマイクロ波は、この突出部の周囲から放射されることとなる。
【0164】
マイクロ波は、同軸アンテナ123の内部で導波されるため、中心導体123aの断面形状や断面の大きさは、所望の周波数及び強度を有するマイクロ波を導波することが可能な形状及び大きさとなるように決定することが好ましく、例えば、断面形状を矩形状にしたり、図20に示したような円形状としたりすることが好ましい。また、外周導体123bの断面形状は特に限定されるものではないが、塊成化物の搬送抵抗を軽減するために、図14に示したような円形状であることが好ましい。
【0165】
同軸アンテナ123(特に、外周導体123b)は、搬送中の塊成化物から受ける単位面あたりの荷重を考慮して、断面形状が荷重を受けて座屈変形しないような強度を有するように、銅(Cu)やアルミニウム(Al)や非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS)やこれらを含む合金等の各種金属を利用して製造される。また、同軸アンテナ123自体を、乾燥炉5が設置されている場所の上部(例えば、天井など)に固定する場合には、同軸アンテナ自体が塊成化物からの荷重を受けて座屈変形し、搬送方向に折れ曲がらないような強度を有することが好ましい。また、同軸アンテナ123の中心導体123aは、外周導体123bと同様の金属を用いて形成することが可能である。
【0166】
また、同軸アンテナ123からのマイクロ波出力は、kWのオーダーとなるように設定されるため、電解密度が高く誘電損失のある物質をスペーサー123cの材質として使用してしまうと、スペーサー123cがマイクロ波を吸収して自己加熱する可能性がある。また、同軸アンテナ123の使用雰囲気は、100℃〜200℃と想定されるため、テフロン製の支持板等を用いることはできない。そのため、スペーサー123cは、誘電損失の少ないセラミックス(例えば、誘電損失係数ε”が、0.02未満のセラミックス)を用いて形成されることが好ましい。このようなセラミックスの例として、アルミナ(Al)、窒化ケイ素(Si)、サイアロン(SiAlON、化学式:Si・Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)等がある。これらのセラミックスを単独で使用してスペーサー123cを製造してもよく、これらのセラミックスを混合してスペーサー123cを製造してもよい。
【0167】
乾燥炉5の原料層内部は、下層部位において約80℃以上の温度を有し、約100%に近い湿度を有する高温多湿状態にあり、このような状況下で塊成化物が移動している。そのため、同軸アンテナ123の内部に湿気が侵入することによるアーキングの発生を防止するとともに、同軸アンテナ123の内部への粉塵の侵入を防止するために、乾燥空気や乾燥窒素や乾燥アルゴン等の防塵ガスを中空の同軸アンテナ123(中心導体123a及び外周導体123b)の内部に導入して、同軸アンテナ123に正圧がかかっている状態とすることが好ましい。
【0168】
また、同軸アンテナ123の先端部(特に、中心導体123aの突出部)は、塊成化物や塊成化物が粉化したものが衝突し、これらとの間の摩擦が生じる箇所であるため、保護することが好ましい。従って、図19及び図20に示したように、同軸アンテナ123の先端部にセラミックスカバー125を設け、同軸アンテナ123の先端部を保護することが好ましい。
【0169】
セラミックスカバー125は、加熱源であるマイクロ波の吸収が少なく、高温多湿状態でも利用可能であり、塊成化物との接触に耐えうる強度、耐摩耗性、加工性を備える無機材料セラミックスを用いて形成される。セラミックスカバー125に用いられる無機材料セラミックスは、マイクロ波の吸収特性に関与する誘電損失係数ε”が、0.02未満であることが好ましい。誘電損失係数ε”を0.02未満とすることで、マイクロ波吸収による無機材料セラミックスの自己発熱を抑制することが可能となる。
【0170】
このような無機材料セラミックスの例として、アルミナ(Al)、窒化ケイ素(Si)、サイアロン(SiAlON、化学式:Si・Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)等がある。これらの無機材料セラミックスを単独で使用してセラミックスカバー125を製造してもよく、これらの無機材料セラミックスを混合してセラミックスカバー125を製造してもよい。
ここで、セラミックスカバー125の形状は、図19に示すように半ドーム型としても良いし、図7に示す導波管109の場合と同様に、円柱状としても良い。
【0171】
本参考形態では、同軸アンテナ123の加熱範囲が原料層の最下層まで及ぶような深さまで、乾燥炉5の上方から同軸アンテナ123を挿入する。このように同軸アンテナ123を原料層に挿入することで、同軸アンテナ123の先端部から照射されるマイクロ波エネルギーにより原料層の下層部位に位置する塊成化物を選択的に加熱することが可能となる。
【0172】
本参考形態では、マイクロ波照射部材109である同軸アンテナ123を乾燥炉5の幅方向に複数本配設するにあたり、配置した複数の同軸アンテナ123により、塊成化物を乾燥炉5の炉幅方向に均一に加熱するため、複数本の同軸アンテナ123のうち少なくとも2本は、乾燥炉の炉幅方向の互いに異なる位置に配置する。
【0173】
そのうえで、配置した複数の同軸アンテナ123が塊成化物の流れの抵抗とならないようにするため、例えば図21に示したように、図22に示した投影図において互いに隣り合う位置の同軸アンテナの搬送方向位置が、同一とならないようにする。すなわち、図21に示した乾燥炉5を上方から見た図において、乾燥炉5の幅方向を便宜的A〜Eの5つの領域に区分し、原料層の搬送方向をX方向、乾燥炉の幅方向をY方向とする。この場合に、本参考形態では、互いに隣り合う領域(例えば、領域A及び領域B)に属する同軸アンテナ123のX方向位置が同一とならないように、各同軸アンテナ123を分散させて配置する。
【0174】
また、本参考形態では、同軸アンテナ123を乾燥炉5の幅方向に複数本配設するにあたり、例えば図22に示した投影図のように、乾燥炉5を搬送方向に向かって見た場合に、各同軸アンテナ123により加熱される範囲(加熱範囲)が乾燥炉5の幅方向の略全体をカバーするような間隔で、同軸アンテナ123を配置することが好ましい。この際に、各同軸アンテナ123の加熱範囲が互いに重畳するように、同軸アンテナ123の配置間隔を決定することが好ましい。換言すれば、単一の同軸アンテナ123による加熱範囲の最大幅をLとし、乾燥炉5の幅をWとし、図22に示した投影図において乾燥炉5の幅方向の同軸アンテナの個数をNとした場合に、L×N≧Wを見たすように、乾燥炉5の幅方向における最大の同軸アンテナ数を決定することが好ましい。
【0175】
具体的には、上記式12に示したマイクロ波の浸透深さδの10倍を実効的な加熱範囲δeffと考えると、上記単一の同軸アンテナ123による加熱範囲の最大幅Lは2×δeffとなり、幅方向に隣り合うそれぞれの同軸アンテナ間の距離がL以下となるように、同軸アンテナ123の幅方向の配置間隔を決定することが好ましい。このような間隔で同軸アンテナ123を配置することにより、乾燥炉全幅分の塊成化物を、むらなく加熱することができる。
【0176】
複数の同軸アンテナの間隔が前記Lよりも大きい場合は、マイクロ波による加熱範囲が炉全幅に及ばず、炉の幅方向に対して塊成化原料の加熱ムラができるため、原料の乾燥ムラにつながって好ましくない。しかしながら、マイクロ波により加熱が行われた部分については原料の乾燥が改善されるため、挿入した同軸アンテナの本数に応じて、原料全体としてみた平均値としての乾燥は改善される。
【0177】
また、乾燥炉の特性として炉幅方向における熱風乾燥の効率が異なる場合は、乾燥効率が劣位で塊成化原料の乾燥が遅れている部分にのみ同軸アンテナを挿入し、マイクロ波を照射することも有効である。
【0178】
また、どのように各同軸アンテナ123を配置するかについては、特に限定されるわけではなく、例えば、乾燥炉5の残留水分の偏り状況に関する知見等に基づき、この偏りを解消可能なように同軸アンテナの配設位置を決定すればよい。従って、例えば図21において、同一の領域に複数個の同軸アンテナ123が配設されていてもよい。
【0179】
なお、例えば図23に示したように、同軸アンテナ123の搬送方向上流側の端部に対して、当該搬送方向上流側に行くに従い幅が狭くなるようなテーパー部127を設けてもよい。このようなテーパー部127を設けることで、同軸アンテナ123による塊成化物の搬送抵抗を更に低減することが可能となる。また、同軸アンテナ123の搬送方向上流側の端部だけでなく、搬送方向下流側の端部に対しても上記テーパー部127を設けてもよい。
【0180】
以上、図19〜図23を参照しながら、本発明の第2の参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10及びマイクロ波乾燥方法について、詳細に説明した。
【0181】
<第2の参考形態の変形例>
次に、図24〜図25Bを参照しながら、本発明の第2の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明する。図24〜図25Bは、本発明の第2の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明するための説明図である。
【0182】
[同軸アンテナの原料層搬送方向の配設方法]
まず、図24を参照しながら、本変形例に係る同軸アンテナの原料層搬送方向の配設方法について説明する。
【0183】
乾燥炉5の内部を搬送されている塊成化物原料が、本変形例に係る同軸アンテナ123一つから照射されるマイクロ波によって加熱される時間tは、同軸アンテナ123の加熱範囲(2×δeff)をW[mm]とし、塊成化物の搬送速度をV[mm/sec]とした場合に、おおよそ(W/V)秒となる。
【0184】
一方、同軸アンテナを用いてマイクロ波を導波する場合、アンテナ内部に複数の伝播モードが発生しないようにし、マイクロ波の伝送効率を維持するために、同軸アンテナの径の大きさには、マイクロ波の波長と関係する条件が伴うことが多い。その結果、同軸アンテナ123の径を任意の大きさとすることは困難である。そのため、上記の加熱される時間tは、ある程度の決まった値になることが考えられる。
【0185】
このような所定時間の間に塊成化物をマイクロ波によって十分に乾燥させるために、方策の一つとして、出力強度の大きなマイクロ波を利用することが考えられる。しかしながら、同軸アンテナの周囲に存在し、マイクロ波によって加熱される塊成化物は、塊成化物の位置により加熱の大小に差が生じるため、必ずしも均一に加熱されるわけではない。また、大出力のマイクロ波を用い短時間での乾燥を得ようとする場合には、一部の塊成化物が過剰加熱され、塊成化物に含まれる揮発成分が発火してしまう可能性がある。そのため、塊成化物をマイクロ波によって十分に乾燥させるためには、塊成化物が過剰加熱しない程度の出力を有するマイクロ波を利用し、マイクロ波の作用時間を長くすることで、乾燥の促進を図ることが重要となる。
【0186】
そこで、本変形例では、例えば図24に示したように、原料層の搬送方向に同軸アンテナ123の加熱範囲が連続するように、同軸アンテナ123を原料層の搬送方向に並べて配設する。このような同軸アンテナの配設方法を採用することで、マイクロ波が照射されている区間を長くすることができ、ひいては、塊成化物へのマイクロ波の作用時間を長くすることが可能となる。
【0187】
ここで、同軸アンテナ123の搬送方向の配列方法は、搬送方向に隣り合う互いの同軸アンテナ123の加熱範囲が連続するようにすれば、特に限定されるものではなく、隣り合う同軸アンテナ123が互いに接触していてもよいし、離隔していてもよい。なお、隣り合う同軸アンテナ123を離隔して配置する場合には、隣り合う同軸アンテナ123の間の空間に塊成化物が詰らないように、カバー等を設けることが好ましい。
【0188】
また、図24では、2つの同軸アンテナ123を搬送方向に連続して配設する場合について図示しているが、搬送方向に3個以上の同軸アンテナ123を連続して配設してもよいことは言うまでもない。
【0189】
[搬送方向の振動緩和機構]
次に、図25A及び図25Bを参照しながら、塊成化物の搬送に伴って同軸アンテナ123に発生する振動を緩和するための技術について説明する。
【0190】
本発明の第2の参考形態とその変形例に係るマイクロ波乾燥装置10では、塊成化物を網目状コンベア上に積層して原料層とした上で搬送しながら、原料層の上部から下部に向かって熱風を通過させることで塊成化物を乾燥させる乾燥炉に対して、乾燥炉の上方から同軸アンテナ123を挿入し、原料層下層部に対してマイクロ波を照射することで、該当する部位の乾燥を促進させる装置である。
【0191】
この際、乾燥炉5の上方から挿入している同軸アンテナ123には、塊成化物の搬送に伴って変動する応力が働く。同軸アンテナに作用する応力が変動する理由としては、網目状コンベアによる搬送速度が一定ではなくわずかながら変動すること、塊成化物の密度が厳密には均一ではないため、同軸アンテナに接触する塊成化物の状態が搬送に伴って時々刻々と変化すること、等が考えられる。このような変動する応力が同軸アンテナ123に作用すると、同軸アンテナ123には原料層搬送方向の振動が生じることとなる。このような状況下で同軸アンテナの長期使用を考えた場合、かかる振動が導波管111や同軸アンテナ123の疲労破壊の原因となることが懸念される。
【0192】
そこで、本変形例に係るマイクロ波乾燥装置10では、変換器121の上流側に位置する導波管111に対して、塊成化物の搬送に伴って発生する振動を緩和する振動緩和機構を設置する。このような振動緩和機構としては、以下の2種類の機構を挙げることができる。
【0193】
第1の振動緩和機構として、マイクロ波発振機101で発生したマイクロ波を導波する導波管111に、振動を緩和する機構を備える導波管を設けることが挙げられる。
【0194】
振動を緩和する機構を備える導波管としては、例えば、導波管の中心軸方向のスライドを可能にするスライド機構を有する導波管(以下、スライド導波管と称する。)や、マイクロ波を導波可能な金属材(より好ましくは、導波管と同様の金属材)により形成された蛇腹部を有する導波管(以下、フレキシブル導波管と称する。)等を挙げることができる。
【0195】
スライド導波管は、スライド機構を有することで、導波管の中心軸方向の伸縮が可能となるため、導波管の中心軸方向と略平行な振動を緩和することができる。また、フレキシブル導波管は、金属製の蛇腹部を有することで、導波管の中心軸方向に対して略直交する方向に湾曲することが可能となるため、導波管の中心軸方向に対して略直交する方向の振動を緩和することが可能となる。
【0196】
また、第2の振動緩和機構として、マイクロ波照射部材である同軸アンテナ123を支持する支持体の一部に弾性部材を設けることが挙げられる。バネ機構やゴム製部材等といった弾性部材を支持体の一部に設けることで、支持体が支持する同軸アンテナ123に発生する振動を弾性部材によって緩和することが可能となる。
【0197】
以上説明したような振動緩和機構を設けることで、塊成化物の搬送に伴って発生する振動を緩和することが可能となり、導波管111や同軸アンテナ123が疲労破壊することを防止することができる。
【0198】
図25Aは、変換器121の上流側に位置する導波管111に対して、第1の振動緩和機構としてフレキシブル導波管161を設置するとともに、第2の振動緩和機構として支持体163の一部に例えばバネ機構からなる弾性部材165を設けた例を示している。
【0199】
図25Aに示した例では、マイクロ波発振機101、サーキュレータ103、自動整合器107等といったマイクロ波発振機構から延設された導波管111のうち、変換器121よりも上流側に位置し、かつ、鉛直方向に延びる導波管の一部に、フレキシブル導波管161が設置されている。フレキシブル導波管161は、上記のように、導波管の軸方向に対して略直交する方向の振動を緩和するものであるため、図25Aに示したように、乾燥炉5へと挿入するために略鉛直方向に設けられる導波管111の一部に設置されることが好ましい。
【0200】
また、図25Aでは、同軸アンテナ123を支持し、水平方向に延設される支持体163の一部に、バネ機構からなる弾性部材165が設けられている。バネ機構は、バネがバネの中心軸方向に伸縮することで応力を緩和する機構である。
【0201】
図25Aに示したように、マイクロ波発振機構や支持体163の末端は、壁等の強固な部材に固定されている。その上で、上記のようなフレキシブル導波管161や弾性部材165を設置することで、フレキシブル導波管161より下流側かつ弾性部材165よりも前方に位置する変換器121及び同軸アンテナ123が構造的に分離され、ある程度自由に動くことが可能となる。なお、同軸アンテナ123の乾燥炉5への挿入部分には、同軸アンテナ123のある程度の動きを許容しつつ、乾燥炉5の気密を維持するための埋め込み材167を設けておくことが好ましい。
【0202】
図25Bは、図25Aに示したフレキシブル導波管161に代えて、スライド導波管169を設置した例を示している。スライド導波管169は、上記のように、導波管の軸方向の振動を緩和するものであるため、図25Bに示したように、変換器121の上流側の略水平方向に延設される導波管111の一部に設置されることが好ましい。
【0203】
なお、図25A及び図25Bでは、一つの導波管111に対してフレキシブル導波管161又はスライド導波管169の一方を配設する場合について図示しているが、フレキシブル導波管161とスライド導波管169を併用しても良い。また、図25A及び図25Bでは、フレキシブル導波管161、弾性部材165、スライド導波管169を一つ用いる場合について図示しているが、これらの部材を一つの導波管111や同軸アンテナ123に対して複数設置してもよい。
【0204】
また、図25A及び図25Bでは、フレキシブル導波管161又はスライド導波管169と、弾性部材165と、を併用する場合について図示しているが、塊成化物の搬送速度等によっては、弾性部材165を用いずに、フレキシブル導波管161又はスライド導波管169のみを配設するようにしてもよい。
【0205】
なお、図25A及び図25Bでは、変動する応力を受ける同軸アンテナを構造的に分離するための機構について説明したが、マイクロ波発振機構を含む同軸アンテナ123全体を可動式にして、振動を緩和するようにすることも考えられる。
【0206】
以上、図24〜図25Bを参照しながら、本発明の第2の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明した。
【0207】
(第3の参考形態)
本発明の第1の参考形態及び第2の参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10は、マイクロ波照射部材109を乾燥炉5の上方から挿入することで、塊成化物からなる原料層の下層部位を選択的に加熱するものであった。本発明の第3の参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10は、マイクロ波照射部材109としてスリットアンテナを乾燥炉5の側壁から挿入することで、塊成化物からなる原料層の下層部位を選択的に加熱する。以下では、図26〜図31を参照しながら、マイクロ波照射部材としてスリットアンテナを利用したマイクロ波乾燥装置及びマイクロ波乾燥方法について、詳細に説明する。
【0208】
なお、本参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10の全体構成は、図6に示した本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10の全体構成と同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0209】
<マイクロ波照射部材の構成について>
以下では、図26〜図31を参照しながら、本参考形態に係るマイクロ波照射部材の構成について、詳細に説明する。図26〜図31は、本参考形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【0210】
図26に示したように、本参考形態では、マイクロ波照射部材109としてスリットアンテナ(スロットアンテナとも呼ばれる。)131を使用し、このスリットアンテナ131を、図26において紙面奥行き方向に搬送されている塊成化物からなる原料層に対して、網目状コンベアの直上近傍に位置する乾燥炉5の側壁から挿入する。また、図26では、スリットアンテナ131は、乾燥炉5を幅方向に貫通するように挿入した場合について図示しているが、スリットアンテナ131の乾燥炉幅方向の端部は、乾燥炉5を貫通していなくともよい。また、図26では、説明を分かり易くするために、乾燥炉5に挿入されるスリットアンテナ131のうちの1個のみを記載しているが、乾燥炉5には、複数個のスリットアンテナ131が乾燥炉5の側壁から挿入される。
【0211】
図27は、マイクロ波照射部材109として使用されるスリットアンテナ131の構成を説明するための説明図である。図27上段に示した図は、スリットアンテナ131を上方からみた場合の図であり、図27下段に示した図は、上段に示したスリットアンテナ131をA−A切断線で切断した場合の断面を模式的に示したものである。
【0212】
図27に示したように、本参考形態に係るスリットアンテナ131は、矩形状の金属管と、この金属管の上面に設けられた複数の開口部(スリット)133とを有している。開口部133は、互いに隣り合う開口部133との間の距離が金属管内部を伝播するマイクロ波の波長の半分の長さに対応するように、矩形状の金属管の上面に設けられている。金属管に設けられる開口部133の個数は、乾燥炉5の幅に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるものではない。また、開口部133の形状や大きさは、所望の周波数及び強度を有するマイクロ波を導波することが可能な形状及び大きさとなるように決定すればよい。
【0213】
また、スリットアンテナ131の乾燥炉幅方向の端部には、終端反射板(ターミネーション)135が設けられている。この終端反射板135は、マイクロ波帯域に属する電磁波を全反射させる部材である。終端反射板135の乾燥炉幅方向の設置位置を微調整することで、スリットアンテナ131の内部を伝播するマイクロ波の強度分布の山に対応する部分が開口部133の位置に適合するように調整を行うことができる。このような調整を行うことで、開口部133から放射されるマイクロ波の強度を最大化することができる。
【0214】
図26に示したように、スリットアンテナ131の開口部133が設けられた面には、塊成化物からなる原料層の重さが重畳することとなる。従って、スリットアンテナ131は、搬送中の塊成化物から受ける単位面あたりの荷重を考慮して、断面形状が荷重を受けて座屈変形しないような強度を有するように、銅(Cu)やアルミニウム(Al)や非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼(SUS)やこれらを含む合金等の各種金属を利用して製造される。
【0215】
乾燥炉5の原料層内部は、下層部位において約80℃以上の温度を有し、約100%に近い湿度を有する高温多湿状態にあり、このような状況下で塊成化物が移動している。そのため、スリットアンテナ131の内部に湿気が侵入することによるアーキングの発生を防止するとともに、スリットアンテナ131の内部への粉塵の侵入を防止するために、乾燥空気や乾燥窒素等の保護ガスをスリットアンテナ131の内部に導入して、スリットアンテナ131に正圧がかかっている状態とすることが好ましい。
【0216】
また、スリットアンテナ131の開口部133を保護するために、少なくとも開口部133の直上には、セラミックスカバー137が設けられることが好ましい。セラミックスカバー137は、スリットアンテナ131自体と同じ平面投影寸法を持ち、開口部133を含めて、スリットアンテナ131の上面全体を覆うものとするのが望ましい。
【0217】
セラミックスカバー137は、加熱源であるマイクロ波の吸収が少なく、高温多湿状態でも利用可能であり、塊成化物との接触に耐えうる強度、耐摩耗性、加工性を備える無機材料セラミックスを用いて形成される。セラミックスカバー137に用いられる無機材料セラミックスは、マイクロ波の吸収特性に関与する誘電損失係数ε”が、0.02未満であることが好ましい。誘電損失係数ε”を0.02未満とすることで、マイクロ波吸収による無機材料セラミックスの自己発熱を抑制することが可能となる。
【0218】
このような無機材料セラミックスの例として、アルミナ(Al)、窒化ケイ素(Si)、サイアロン(SiAlON、化学式:Si・Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)等がある。これらの無機材料セラミックスを単独で使用してセラミックスカバー137を製造してもよく、これらの無機材料セラミックスを混合してセラミックスカバー137を製造してもよい。
【0219】
本参考形態では、このようなスリットアンテナ131を、図28に示したように、スリットアンテナ131の長軸方向が乾燥炉幅方向と略平行となるように、乾燥炉の搬送方向にわたって複数配置する。この際、図28に示したように、各スリットアンテナ131は、網目状コンベアのほぼ直上に位置するように、乾燥炉5の側壁から挿入される。これにより、乾燥炉5中の塊成化物は、スリットアンテナ131を乗り越えるようにして搬送されることとなり、スリットアンテナ131を乗り越える間にマイクロ波によって加熱されることとなる。
【0220】
また、本参考形態では、複数のスリットアンテナ131全体の加熱範囲(すなわち、スリット開口部分)が、乾燥炉5の幅方向の略全体をカバーするように、スリットアンテナ131を設置する。
【0221】
この際、図28に示したように、スリットアンテナ131の開口部133の位置を、搬送方向で互いに隣り合うスリットアンテナ131間でずらして配置して、互いの加熱範囲を補完しあうようにする。
【0222】
複数のスリットアンテナの開口部が乾燥炉5の幅方向の略全体をカバーしない場合は、スリットアンテナから放射されるマイクロ波の加熱範囲が炉全幅に及ばず、炉の幅方向に対して塊成化原料の加熱ムラができるため、原料の乾燥ムラにつながって好ましくない。しかしながら、マイクロ波により加熱が行われた部分については、原料の乾燥が改善されるため、挿入した導波管の本数に応じて、原料全体としてみた平均値としての乾燥は改善される。
【0223】
また、乾燥炉の特性として炉幅方向における熱風乾燥の効率が異なる場合は、乾燥効率が劣位で塊成化原料の乾燥が遅れている部分にのみスリットアンテナの開口部を設け、マイクロ波を照射することも有効である。
【0224】
また、どのように各スリットアンテナ131を配置するかについては、図28に示した例に特に限定されるわけではなく、例えば、乾燥炉5の残留水分の偏り状況に関する知見等に基づき、この偏りを解消可能なようにスリットアンテナ131の配設位置を決定すればよい。
【0225】
ここで、図28では、スリットアンテナ131の長軸方向が乾燥炉5の幅方向と略平行となるようにスリットアンテナ131を配設する場合について示しているが、例えば図29に示したように、スリットアンテナ131を斜めに配設してもよい。このような配置を行うことで、各スリットアンテナ131が加熱可能な炉幅方向範囲を更に広げることが可能となり、より広範囲の塊成化物を加熱することができる。なお、図29では、スリットアンテナ131の長軸方向と乾燥炉幅方向とのなす角度(傾斜角度)が一定である場合について図示しているが、それぞれのスリットアンテナ131の傾斜角度が互いに異なるように、スリットアンテナ131を配設してもよい。
【0226】
乾燥炉5内を搬送される塊成化物がスリットアンテナ131を乗り越えやすくするために、例えば図30に示したように、スリットアンテナ131の側面に対して、テーパー部139aを設けたり、ローラー部139bを設けたりしてもよい。
【0227】
具体的には、図30上段に示したように、スリットアンテナ131の搬送方向上流側の側面に対して、当該搬送方向上流側に行くに従い高さが低くなるようなテーパー部139aを設けてもよい。また、図30下段に示したように、スリットアンテナ131の搬送方向上流側の側面に対して、当該搬送方向上流側に行くに従い高さが低くなるようなテーパー部を設け、このテーパー部に複数のローラーを設けてローラー部139bとしてもよい。このようなテーパー部139a又はローラー部139bを設けることで、塊成化物がスリットアンテナ131を乗り越えやすくなり、スリットアンテナ131による塊成化物の搬送抵抗を更に低減することが可能となる。また、スリットアンテナ131の搬送方向上流側の端部だけでなく、搬送方向下流側の端部に対しても上記テーパー部139aや、テーパー部に更にローラーを有するローラー部139bを設けてもよい。
【0228】
また、図31に示したように、網目状コンベアの直上付近だけでなく、網目状コンベアの上方に、網目状コンベア面から離隔するようなかたちで、スリットアンテナ131を配設してもよい。スリットアンテナ131を乾燥炉5の高さ方向に上下に配置することで、乾燥炉5内を搬送される原料層の様々な部位をマイクロ波により加熱することが可能となる。
【0229】
以上、図26〜図31を参照しながら、本発明の第3の参考形態に係るマイクロ波乾燥装置10及びマイクロ波乾燥方法について、詳細に説明した。
【0230】
<第3の参考形態の変形例>
次に、図32A〜図33Bを参照しながら、本発明の第3の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明する。図32A〜図33Bは、本発明の第3の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明するための説明図である。
【0231】
[スリットアンテナの原料層搬送方向の配設方法]
次に、図32A及び図32Bを参照しながら、本変形例に係るスリットアンテナの原料層搬送方向の配設方法について説明する。
【0232】
乾燥炉5の内部を搬送されている塊成化物原料が、本変形例に係るスリットアンテナ131一つから照射されるマイクロ波によって加熱される時間tは、スリットアンテナ131の幅(搬送方向の幅)をW[mm]とし、塊成化物の搬送速度をV[mm/sec]とした場合に、おおよそ(W/V)秒となる。
【0233】
一方、スリットアンテナを用いてマイクロ波を導波する場合、スリットアンテナ内部に複数の伝播モードが発生しないようにし、マイクロ波の伝送効率を維持するために、スリットアンテナの幅を導波するマイクロ波の波長未満とすることが多い。例えば、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合、スリットアンテナの搬送方向の最大幅は、120mm程度の大きさとなる。従って、スリットアンテナ1本の最大幅が120mm程度である場合、通常の網目状コンベアの搬送速度を考慮すると、上記時間tは極めて短時間となる。
【0234】
このような短時間の間に塊成化物をマイクロ波によって十分に乾燥させるために、方策の一つとして、出力強度の大きなマイクロ波を利用することが考えられる。しかしながら、スリットアンテナの上部に存在し、マイクロ波によって加熱される塊成化物は、塊成化物の位置により加熱の大小に差が生じるため、必ずしも均一に加熱されるわけではない。また、大出力のマイクロ波を用い短時間での乾燥を得ようとする場合には、一部の塊成化物が過剰加熱され、塊成化物に含まれる揮発成分が発火してしまう可能性がある。そのため、塊成化物をマイクロ波によって十分に乾燥させるためには、塊成化物が過剰加熱しない程度の出力を有するマイクロ波を利用し、マイクロ波の作用時間を長くすることで、乾燥の促進を図ることが重要となる。
【0235】
そこで、本変形例では、例えば図32A及び図32Bに示したように、原料層の搬送方向にスリットアンテナ131の加熱範囲が連続するように、スリットアンテナ131を原料層の搬送方向に並べて配設する。このようなスリットアンテナの配設方法を採用することで、マイクロ波が照射されている区間を長くすることができ、ひいては、塊成化物へのマイクロ波の作用時間を長くすることが可能となる。
【0236】
ここで、スリットアンテナ131の搬送方向の配列方法は、搬送方向に隣り合う互いのスリットアンテナ131の加熱範囲が連続するようにすれば、特に限定されるものではなく、隣り合うスリットアンテナ131が互いに接触していてもよいし、離隔していてもよい。なお、隣り合うスリットアンテナ131を離隔して配置する場合には、隣り合うスリットアンテナ131の間の空間に塊成化物が詰らないように、カバー等を設けることが好ましい。
【0237】
また、図32A及び図32Bでは、2つのスリットアンテナ131を搬送方向に連続して配設する場合について図示しているが、搬送方向に3個以上のスリットアンテナ131を連続して配設してもよいことは言うまでもない。
【0238】
[搬送方向の振動緩和機構]
次に、図33A及び図33Bを参照しながら、塊成化物の搬送に伴ってスリットアンテナ131に発生する振動を緩和するための技術について説明する。
【0239】
本発明の第3の参考形態とその変形例に係るマイクロ波乾燥装置10では、塊成化物を網目状コンベア上に積層して原料層とした上で搬送しながら、原料層の上部から下部に向かって熱風を通過させることで塊成化物を乾燥させる乾燥炉に対して、乾燥炉の側壁からスリットアンテナ131を挿入し、原料層下層部に対してマイクロ波を照射することで、該当する部位の乾燥を促進させる装置である。
【0240】
この際、乾燥炉5の側壁から挿入しているスリットアンテナ131には、塊成化物の搬送に伴って変動する応力が働く。スリットアンテナ131に作用する応力が変動する理由としては、網目状コンベアによる搬送速度が一定ではなくわずかながら変動すること、塊成化物の密度が厳密には均一ではないため、スリットアンテナ131に接触する塊成化物の状態が搬送に伴って時々刻々と変化すること、等が考えられる。このような変動する応力がスリットアンテナ131に作用すると、スリットアンテナ131には原料層搬送方向の振動が生じることとなる。このような状況下でスリットアンテナの長期使用を考えた場合、かかる振動が導波管111やスリットアンテナ131の疲労破壊の原因となることが懸念される。
【0241】
そこで、本変形例に係るマイクロ波乾燥装置10では、スリットアンテナ131に接続されている導波管111に対して、塊成化物の搬送に伴って発生する振動を緩和する振動緩和機構を設置する。このような振動緩和機構としては、以下の2種類の機構を挙げることができる。
【0242】
第1の振動緩和機構として、マイクロ波発振機101で発生したマイクロ波を導波する導波管111に、振動を緩和する機構を備える導波管を設けることが挙げられる。
【0243】
振動を緩和する機構を備える導波管としては、例えば、導波管の中心軸方向のスライドを可能にするスライド機構を有する導波管(以下、スライド導波管と称する。)や、マイクロ波を導波可能な金属材(より好ましくは、導波管と同様の金属材)により形成された蛇腹部を有する導波管(以下、フレキシブル導波管と称する。)等を挙げることができる。
【0244】
スライド導波管は、スライド機構を有することで、導波管の中心軸方向の伸縮が可能となるため、導波管の中心軸方向と略平行な振動を緩和することができる。また、フレキシブル導波管は、金属製の蛇腹部を有することで、導波管の中心軸方向に対して略直交する方向に湾曲することが可能となるため、導波管の中心軸方向に対して略直交する方向の振動を緩和することが可能となる。
【0245】
また、第2の振動緩和機構として、マイクロ波照射部材であるスリットアンテナ131を支持する支持体の一部に弾性部材を設けることが挙げられる。バネ機構やゴム製部材等といった弾性部材を支持体の一部に設けることで、支持体が支持するスリットアンテナ131に発生する振動を弾性部材によって緩和することが可能となる。
【0246】
以上説明したような振動緩和機構を設けることで、塊成化物の搬送に伴って発生する振動を緩和することが可能となり、導波管111やスリットアンテナ131が疲労破壊することを防止することができる。
【0247】
図33Aは、導波管111に対して、第1の振動緩和機構としてフレキシブル導波管161を設置した例を示している。
【0248】
図33Aに示した例では、マイクロ波発振機101、サーキュレータ103、自動整合器107等といったマイクロ波発振機構から延設された導波管111のうち、鉛直方向に延びる導波管の一部に、フレキシブル導波管161が設置されている。フレキシブル導波管161は、上記のように、導波管の軸方向に対して略直交する方向の振動を緩和するものであるため、図33Aに示したように、乾燥炉5へと挿入するために略鉛直方向に設けられる導波管111の一部に設置されることが好ましい。
【0249】
図33Bは、図33Aに示したフレキシブル導波管161に代えて、スライド導波管169を設置した例を示している。また、図33Bでは、第2の振動緩和機構として支持体163の一部に例えばバネ機構からなる弾性部材165を設けた例を示している。
【0250】
スライド導波管169は、上記のように、導波管の軸方向の振動を緩和するものであるため、図33Bに示したように、略水平方向に延設される導波管111の一部に設置されることが好ましい。
【0251】
また、図33Bでは、スリットアンテナ131を支持し、水平方向に延設される支持体163の一部に、バネ機構からなる弾性部材165が設けられている。バネ機構は、バネがバネの中心軸方向に伸縮することで応力を緩和する機構である。
【0252】
図33A及び図33Bに示したように、マイクロ波発振機構や支持体163の末端は、壁等の強固な部材に固定されている。その上で、上記のようなフレキシブル導波管161又はスリット導波管169や弾性部材165を設置することで、フレキシブル導波管161又はスリット導波管169より下流側かつ弾性部材165よりも前方に位置するスリットアンテナ131が構造的に分離され、ある程度自由に動くことが可能となる。なお、スリットアンテナ131の乾燥炉5への挿入部分には、スリットアンテナ131のある程度の動きを許容しつつ、乾燥炉5の気密を維持するための埋め込み材を設けておくことが好ましい。
【0253】
なお、図33A及び図33Bでは、一つの導波管111に対してフレキシブル導波管161又はスライド導波管169の一方を配設する場合について図示しているが、フレキシブル導波管161とスライド導波管169を併用しても良い。また、図33A及び図33Bでは、フレキシブル導波管161、弾性部材165、スライド導波管169を一つ用いる場合について図示しているが、これらの部材を一つの導波管111やスリットアンテナ131に対して複数設置してもよい。
【0254】
また、図33Aでは、図示の便宜上、支持体163及び弾性部材165を図示していないが、フレキシブル導波管161に加えて支持体163及び弾性部材165を利用してもよいことは言うまでもない。逆に、図33Bでは、スライド導波管169と、弾性部材165と、を併用する場合について図示しているが、塊成化物の搬送速度等によっては、弾性部材165を用いずに、フレキシブル導波管161又はスライド導波管169のみを配設するようにしてもよい。
【0255】
なお、図33A及び図33Bでは、変動する応力を受けるスリットアンテナを構造的に分離するための機構について説明したが、マイクロ波発振機構を含むスリットアンテナ131全体を可動式にして、振動を緩和するようにすることも考えられる。
【0256】
以上、図32A〜図33Bを参照しながら、本発明の第3の参考形態に係るマイクロ波照射部材の変形例について説明した。
【0257】
(第1の実施形態)
以上説明した第1〜第3の参考形態では、マイクロ波照射部材109として、導波管111、同軸アンテナ123又はスリットアンテナ131を用いる場合について説明を行ったが、これらの参考形態及び変形例に係るマイクロ波照射部材109を組み合わせて用いることも可能である。以下では、図34〜図37Bを参照しながら、異なる種類のマイクロ波照射部材109を組み合わせて用いる本発明の第1の実施形態について説明する。
【0258】
なお、本実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10の全体構成は、図6に示した本発明の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10の全体構成と同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0259】
<マイクロ波照射部材の構成について>
以下では、図34〜図37Bを参照しながら、本実施形態に係るマイクロ波照射部材の構成について、詳細に説明する。図34〜図37Bは、本実施形態に係るマイクロ波照射部材について示した説明図である。
【0260】
図34及び図35は、本実施形態に係るマイクロ波照射部材109の一例を示した説明図である。
図34に示したように、本実施形態に係るマイクロ波照射部材109として、第1の参考形態で説明した導波管111と、第3の参考形態で説明したスリットアンテナ131とを併用することが可能である。また、図35に示したように、本実施形態に係るマイクロ波照射部材109として、第2の参考形態で説明した同軸アンテナ123と、第3の参考形態で説明したスリットアンテナ131とを併用することが可能である。
【0261】
導波管111、同軸アンテナ123及びスリットアンテナ131の詳細な構成及び乾燥炉への設置方法については、先だって説明した各参考形態とその変形例と同様であり、同様の効果を奏するものであるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0262】
ここで、導波管111又は同軸アンテナ123と、スリットアンテナ131との配設位置であるが、例えば図36に示したように、各照射部材の加熱範囲が、全体として乾燥炉5の幅方向の略全域をカバーするように、導波管111又は同軸アンテナ123の少なくとも一方と、スリットアンテナ131と、を配設する。
【0263】
また、どのように導波管111、同軸アンテナ123及びスリットアンテナ131を配置するかについては、例えば図36に示した場合に限定されるわけではなく、例えば、乾燥炉5の残留水分の偏り状況に関する知見等に基づき、この偏りを解消可能なように各照射部材の配設位置を決定すればよい。また、第1の参考形態の変形例〜第3の参考形態の変形例にて示したように、導波管111や同軸アンテナ123やスリットアンテナ131の加熱範囲が搬送方向に連続するように、これらのマイクロ波照射部材を搬送方向に並べて配設してもよい。
【0264】
なお、図36では、導波管111及びスリットアンテナ131を併用した場合を示しているが、導波管111、同軸アンテナ123及びスリットアンテナ131の3種類の照射部材を併用してもよい。
【0265】
本発明の対象とする乾燥炉5では、前述のとおり上方からの熱風による乾燥が主体であるため、積層されたブリケット等の塊成化物からなる原料層の下層ほど乾燥不良として水分が残留しやすい環境にある。ここで、導波管111や同軸アンテナ123による原料層下層部分へのマイクロ波照射において、図37A及び図37Bに示したように、導波管111あるいは同軸アンテナ123の出口近傍のマイクロ波電界が強くなり、原料層の最下層近傍におけるマイクロ波電界の強度は、出口近傍に比べてやや低くなる。その結果、図34及び図35において実線で囲んだ領域A近傍の塊成化物が加熱されやすく、最下層に位置する塊成化物(点線で囲んだ領域B近傍)への加熱効率が低下する傾向となる。
【0266】
一方、スリットアンテナ131においては、図34及び図35において、マイクロ波の出口であるスリット直上に存在する最下層の塊成化物(図34及び図35において点線で囲んだ領域B近傍)への加熱効率が最大となる。
【0267】
従って、導波管111や同軸アンテナ123を単独で使用する場合には、図37A及び図37Bにおいて、「加熱やや低下」と示した部分においても十分な個数の導波管111又は同軸アンテナ123の設置が求められるが、導波管111や同軸アンテナ123と、スリットアンテナ131と、を組み合わせることによって、塊成化物の積層方向(乾燥炉の高さ方向)の加熱範囲を拡大し、積層方向でのより広い範囲で塊成化物を加熱し乾燥の進行を改善させることが可能となる。
【0268】
また、乾燥炉5の幅方向への加熱に関し、スリットアンテナ131は、マイクロ波を放射する開口部133の間隔をアンテナ中を伝搬するマイクロ波の管内波長の1/2とすることで、マイクロ波の放射が効率的に行われる。周波数2.45GHzのマイクロ波を導波させる導波管においては、例えばEIAJ規格のWRI−22導波管の場合、管内波長は14.8cmであり、スリットの間隔は7.4cmになるなど、開口部133の間隔は最短で7cm程度と、比較的狭い間隔でマイクロ波を放射することができる。従って、スリットアンテナ131を用いると、搬送コンベアの幅方向の広い範囲を均一に加熱することが可能となる。
【0269】
従って、スリットアンテナ131を導波管111や同軸アンテナ123と組み合わせて用いることで、乾燥炉5全体の加熱のために原料層に挿入する導波管111あるいは同軸アンテナ123の個数を削減することが可能となり、設備コストの削減を実現することができる。
【0270】
本実施形態は、マイクロ波を原料層の内部(下層部)で放射することにより、放射したマイクロ波エネルギーの大部分が放射点の周辺の原料に吸収され、原料の加熱に使用されるものであり、加熱のエネルギー効率の高い加熱方法である。
【0271】
以上、図34〜図37Bを参照しながら、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波乾燥装置10及びマイクロ波乾燥方法について説明した。
【0272】
なお、上記説明では、第1の参考形態又は第2の参考形態に係るマイクロ波照射部材と、第3の参考形態に係るマイクロ波照射部材と、を組み合わせて用いる場合について説明したが、本実施形態において、マイクロ波照射部材の組み合わせ方は、上記の場合に限定されるわけではない。すなわち、第1の参考形態の変形例又は第2の参考形態の変形例に係るマイクロ波照射部材と、第3の参考形態に係るマイクロ波照射部材と、を組み合わせても良いし、第1の参考形態又は第2の参考形態に係るマイクロ波照射部材と、第3の参考形態の変形例に係るマイクロ波照射部材と、を組み合わせても良い。また、第1の参考形態の変形例又は第2の参考形態の変形例に係るマイクロ波照射部材と、第3の参考形態の変形例に係るマイクロ波照射部材と、を組み合わせても良い。
【0273】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0274】
10 マイクロ波乾燥装置
101 マイクロ波発振機
103 サーキュレータ
105 アイソレータ
107 自動整合器
109 マイクロ波照射部材
111 導波管
113,125,137,153 セラミックスカバー
115,127,139a テーパー部
121 変換器
123 同軸アンテナ
123a 中心導体
123b 外周導体
123c スペーサー
131 スリットアンテナ
133 開口部
135 終端反射板
139b ローラー部
151 切り欠き部
155 整合ピン
157 分岐板
161 フレキシブル導波管
163 支持体
165 弾性部材
167 埋め込み材
169 スライド導波管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して設置されるマイクロ波乾燥装置であって、
前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振するマイクロ波発振機と、
搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入され、前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数の導波管と、
前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナと、
を備え、
前記導波管それぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆う
ことを特徴とする、マイクロ波乾燥装置。
【請求項2】
被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して設置されるマイクロ波乾燥装置であって、
前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振するマイクロ波発振機と、
搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入され、前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数の同軸アンテナと、
前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナと、
を備え、
前記同軸アンテナそれぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆う
ことを特徴とする、マイクロ波乾燥装置。
【請求項3】
前記複数の導波管又は同軸アンテナのうち少なくとも2つは、前記乾燥炉の炉幅方向の互いに異なる位置に配置されており、
前記炉幅方向に互いに隣り合う前記導波管又は前記同軸アンテナの前記搬送方向の位置は、互いに相違する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項4】
前記複数の導波管は、当該導波管を前記被乾燥物層に挿入した際に前記搬送コンベアと対向する端部が開口となっている
ことを特徴とする、請求項1又は3に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項5】
前記複数の導波管は、前記導波管の先端部と前記コンベアとの間の離隔距離が、自由空間における前記マイクロ波の波長の4分の1以上となるように前記被乾燥物層に挿入される
ことを特徴とする、請求項4に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項6】
前記複数の導波管は、少なくとも、当該導波管を前記被乾燥物層に挿入した際に前記乾燥炉の被乾燥物層搬送方向に対して平行となる側面に切り欠き部が設けられており、当該切り欠き部から前記マイクロ波が照射される
ことを特徴とする、請求項1又は3に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項7】
前記複数の導波管は、前記切り欠き部の前記被乾燥物層の高さ方向の上端が当該被乾燥物層の高さ以下となるように前記被乾燥物層に挿入される
ことを特徴とする、請求項6に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項8】
前記複数の導波管は、前記切り欠き部の被乾燥物層の高さ方向の上端と前記コンベアとの間の距離が、自由空間における前記マイクロ波の波長の4分の1以上となるように前記被乾燥物層に挿入される
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項9】
前記スリットアンテナは、当該スリットアンテナの直軸方向が前記乾燥炉幅方向に対して平行になるように配置される
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項10】
前記スリットアンテナは、当該スリットアンテナの直軸方向が前記乾燥炉幅方向に対して斜めになるように配置される
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項11】
前記導波管は、前記マイクロ波の進行方向に垂直な断面の形状が矩形状であり、
矩形状の前記切断面の短辺が前記搬送方向に対して直交しており、前記矩形状の切断面の長辺が前記搬送方向と平行である
ことを特徴とする、請求項1、3〜10の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項12】
前記同軸アンテナは、
中空又は中実の金属管である中心導体と、
当該中心導体の更に外側に設けられる中空の金属管である外周導体と、
を有し、
前記中心導体の前記被乾燥物層側の端部は、前記外周導体の前記被乾燥物層側の端部よりも、前記同軸アンテナ内で伝搬される前記マイクロ波の波長の4分の1に対応する長さだけ突出している
ことを特徴とする、請求項2に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項13】
前記同軸アンテナの前記中心導体と前記外周導体とは、誘電損失係数が0.02未満である無機材料セラミックスで形成されたスペーサーにより、互いの位置関係が固定される
ことを特徴とする、請求項12に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項14】
前記導波管の先端部もしくは切り欠き部又は前記同軸アンテナの先端部、及び、前記スリットアンテナの少なくとも前記開口部の部分には、誘電損失係数が0.02未満である無機材料セラミックスで形成されたセラミックスカバーが設けられる
ことを特徴とする、請求項1〜13の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項15】
前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナに対して、前記被乾燥物の搬送に伴って発生する振動を緩和する振動緩和機構を設ける
ことを特徴とする、請求項1〜14の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項16】
前記振動緩和機構として、前記導波管、前記同軸アンテナ又は前記スリットアンテナと、前記マイクロ波発振機と、の間に、軸方向のスライドを可能にするスライド機構を有するスライド導波管、又は、金属製の蛇腹部を有するフレキシブル導波管の少なくとも何れか一方を配設する
ことを特徴とする、請求項15に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項17】
前記振動緩和機構として、前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナをそれぞれ支持する支持体の一部に、弾性部材を設ける
ことを特徴とする、請求項15又は16に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項18】
前記導波管又は前記同軸アンテナ及び前記スリットアンテナを、前記搬送方向に前記加熱範囲が連続するように当該搬送方向に並べて配設する
ことを特徴とする、請求項1〜17の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項19】
前記導波管を、前記搬送方向に前記加熱範囲が連続するように分岐させる
ことを特徴とする、請求項1、3〜17の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項20】
前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナの内部には防塵ガスが導入されており、前記導波管又は前記同軸アンテナ、及び、前記スリットアンテナの内部に正圧がかかった状態となっている
ことを特徴とする、請求項1〜19の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項21】
前記導波管又は前記同軸アンテナの前記搬送方向上流側の端部には、当該搬送方向上流側に向かうほど搬送方向に垂直な断面の面積が小さくなるテーパー部が設けられる
ことを特徴とする、請求項1〜20の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項22】
前記スリットアンテナの前記搬送方向上流側の端部に、当該搬送方向上流側に向かうほど高さが低くなるテーパー部が設けられる
ことを特徴とする、請求項1〜21の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項23】
前記スリットアンテナの前記テーパー部に対し、1又は複数のローラーが更に設けられることを特徴とする、請求項22の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項24】
前記マイクロ波発振機と前記複数の導波管又は前記複数の同軸アンテナとの間に、前記マイクロ波発振機から発振された前記マイクロ波のインピーダンスと、前記乾燥炉内で反射し前記マイクロ波発振機に向かう前記マイクロ波のインピーダンスとの整合を行う自動整合器を更に備える
ことを特徴とする、請求項1〜23の何れか1項に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項25】
前記無機材料セラミックスは、アルミナ、窒化ケイ素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及びこれらの混合物からなる群より選択される
ことを特徴とする、請求項11又は12に記載のマイクロ波乾燥装置。
【請求項26】
被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して実施されるマイクロ波乾燥方法であって、
前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振させ、
搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入された複数の導波管それぞれ、及び、前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナそれぞれから前記被乾燥物層に対して前記マイクロ波を照射するものであり、
前記導波管それぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆う
ことを特徴とする、マイクロ波乾燥方法。
【請求項27】
被乾燥物をコンベアにより搬送する際に当該被乾燥物に対して熱風を吹き付けることで前記被乾燥物に含まれる水分を低減させる熱風式の乾燥炉に対して実施されるマイクロ波乾燥方法であって、
前記被乾燥物を乾燥させるために用いられるマイクロ波を発振させ、
搬送される前記被乾燥物からなる被乾燥物層の内部に対し、前記マイクロ波によって前記被乾燥物が加熱される加熱範囲が前記被乾燥物層の最下層を含む深さまで挿入された複数の同軸アンテナそれぞれ、及び、前記コンベアの直上に設けられ、前記マイクロ波を導波する導波管の上面に複数の開口部を有し、当該複数の開口部それぞれから前記被乾燥物に対して前記マイクロ波を照射する複数のスリットアンテナそれぞれから前記被乾燥物層に対して前記マイクロ波を照射するものであり、
前記同軸アンテナそれぞれの前記加熱範囲、及び、前記スリットアンテナの前記開口部が、全体として前記乾燥炉の炉幅方向全体を覆う
ことを特徴とする、マイクロ波乾燥方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37A】
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【図37B】
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【公開番号】特開2013−76563(P2013−76563A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202812(P2012−202812)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】