説明

マスクを有するフリット付カバーシートの作製方法及びフリット付カバーシートを有するガラスパッケージ

ガラスパッケージを封止するためのフリット付カバーシートを形成するための方法は、封止面及び背面を有する透明基板を提供する工程及び基板の封止面または基板の背面の内の一方の上に少なくとも1つのマスクを形成する工程を含む。封止フリットによって定められる周界に隣接して少なくとも1つのマスクが配置されるように封止フリットを基板の封止面上に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年7月9日に出願された、米国特許出願第12/500119号の恩典を主張する。この出願明細書の内容並びに、本明細書に言及される、出版物、特許及び特許文書の全開示は本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、全般にはガラス基板をフリット封止するためのフリット付カバーシートに関し、さらに詳しくはマスクを有するフリット付カバーシート及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光吸収性ガラスフリットを用いてガラスパッケージをフリット封止する方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に概ね説明されているように、ガラスフリットは第1のガラス基板上に(一般には額縁の形状の)閉じた線をなして被着され、フリットを予備焼結するために加熱される。第1のガラス基板は次いで第2のガラス基板の上に、フリットを第1の基板と第2の基板の間に配して、重ねて置かれる。続いてレーザビームが(一般には基板の一方または両方を通り)フリットに沿って移動して、フリットを加熱/溶融させ、基板間に気密封止を形成する。
【0004】
そのようなガラスパッケージの一用途は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイデバイスの作製にある。例示OLEDディスプレイデバイスは、その上に第1の電極材料、1つ以上の有機電界発光材料の層及び第2の電極材料が被着されている第1のガラス基板を有する。有機電界発光材料の特徴の1つは熱に対する低損傷閾である。すなわち、有機電界発光材料の温度は一般に、材料の劣化及び引き続くディスプレイデバイスの故障を避けるため、約100℃より低温に維持されなければならない。したがって、封止形成作業は電界発光材料の加熱を避ける態様で実施されなければならない。
【0005】
OLEDディスプレイデバイスを封止するためのフリット加熱の代表的なシナリオは、第1の基板上に被着されたフリット線の幅と少なくとも同じ幅のレーザビーム(またはフリットをその融点まで加熱できるその他の光エネルギー源)の使用を含む。フリットが加熱されている間、不用意にレーザビームが電界発光材料に触れないように注意を払わなければならない。フリットの加熱を、同時に電界発光材料の過度の加熱の回避も、容易にするため、レーザビームのフリットからの無漂遊を保証するためにマスクが用いられることがある。マスクはフリットを間に挟み込んでいる2枚の基板に重ねて配置され、マスクとフリットがビームで照射される。マスク上に入射するレーザ(またはその他の光源)からの光はマスクで吸収されるか、さらに好ましくは、マスクの加熱はマスクの有効寿命を縮め得るから、マスクから反射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6998776号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスプレイ基板の寸法が大きくなるにつれて、電界発光材料の不用意な加熱を防止するに必要な精度でマスクを作製できるかが大きな課題になっている。これは、ディスプレイの付加価値のかなりが被着された電界発光材料及びデバイス内のその他の支持構造(例えば電極)にあり、フリット封止プロセス中の過誤には大きな財政上の結果がともなうから、特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態にしたがえば、ガラスパッケージを封止するためのフリット付カバーシートを形成するための方法は、封止面及び背面を有する透明基板を提供する工程及び基板の封止面または基板の背面の内の一方の上に少なくとも1つのマスクを形成する工程を含む。封止フリットは、少なくとも1つのマスクが封止フリットで定められる周界に隣接して配置されるように、基板の封止面上に形成することができる。
【0009】
別の実施形態において、ガラスパッケージを形成するための方法は、第1の透明基板及び第2の透明基板を提供する工程を含む。第1の透明基板の封止面または第1の透明基板の背面の内の一方の上にマスクを形成することができる。封止フリットは、内マスクが封止フリットで定められる周界の内側に配置されるように、第1の透明基板の封止面上に形成することができる。第1の透明基板は、封止フリットが第1の透明基板と第2の透明基板の間に配されるように、第2の透明基板上に合わせることができる。封止フリットを加熱し、よって第1の透明基板を第2の透明基板に気密封着させるため、第1の透明基板の裏面を通して封止フリット上に光エネルギーを向けることができる。
【0010】
別の実施形態において、ガラスパッケージはフリット付カバーシート及びガラス基板を有する。フリット付カバーシートは封止フリット及びマスクを有し、封止フリットはフリット付カバーシートの封止面上に配置されて周界を定め、マスクはフリット付カバーシートの封止面またはフリット付カバーシートの背面の内の一方の上に配置され、封止フリットで定められる周界の内側に配される。フリット付カバーシートは、封止フリットがガラス基板とフリット付カバーシートの間に配され、封止フリットがガラス基板とフリット付カバーシートの間の気密封止を形成するように、ガラス基板上に配置することができる。
【0011】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、以下の詳細な説明及び添付される特許請求の範囲を含み、添付図面も含む、本明細書に説明される実施形態を実施することによって認められるであろう。
【0012】
上記の全般的説明及び以下の詳細な説明が様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の本質及び特質の理解のための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面は様々な実施形態のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす。図面は本明細書に説明される様々な実施形態を示し、記述とともに、特許請求される主題の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本明細書に示され、説明される、1つ以上の実施形態にしたがう、内マスク、外マスク及び内マスクと外マスクの間に配置された封止フリットを有するフリット付カバーシートを示す。
【図2A】図2Aは、フリット付カバーシートの作製の、パターン形成材料の被着による開始段階の断面図を示す。
【図2B】図2Bは、フリット付カバーシートの作製の、マスク形成材料の被着段階の断面図を示す。
【図2C】図2Cは、フリット付カバーシートの作製の、パターン形成材料及びマスク形成材料の一部の除去段階の断面図を示す。
【図2D】図2Dは、フリット付カバーシートの作製の、封止フリットの被着段階の断面図を示す。
【図3A】図3Aは、本明細書に示され、説明される、方法にしたがって作製されたフリット付カバーシートの一実施形態を示す。
【図3B】図3Bは、本明細書に示され、説明される、方法にしたがって作製されたフリット付カバーシートの別の実施形態を示す。
【図3C】図3Cは、本明細書に示され、説明される、方法にしたがって作製されたフリット付カバーシートのまた別の実施形態を示す。
【図4A】図4Aは、本明細書に示されて説明される一実施形態にしたがう、ディスプレイデバイスを形成するためにOLED素子を有する基板上に配置されて基板に封着されるフリット付カバーシートの断面図を示す。
【図4B】図4Bは、本明細書に示されて説明される一実施形態にしたがう、ディスプレイデバイスを形成するためにOLED素子を有する基板上に配置されて基板に封着されるフリット付カバーシートの断面図を示す。
【図5】図5は、本明細書に示されて説明される1つ以上の実施形態にしたがう、単一のガラス基板上に複数のガラスパッケージを封止するためのフリット付カバーシートの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ガラスパッケージの封止に使用するためのフリット付カバーシートの様々な実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、全図面を通して同じ参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。フリット付カバーシートの一実施形態が図1に示され、全図面において全体として参照数字100で指定される。フリット付カバーシートは全般に、透明基板、少なくとも1つのマスク及び封止フリットを有する。フリット付カバーシート及び、フリット付カバーシートの形成方法及びガラス基板を封止するためのその使用方法をここでさらに詳細に説明する。
【0015】
図1及び2Dを参照すれば、フリット付カバーシート100の一実施形態が示される。フリット付カバーシート100は全般に、透明基板102,内マスク109,外マスク108及び封止フリット114を有する。語句「透明基板」は本明細書に用いられるように、基板に入射する光エネルギーの特定の波長に対して少なくとも約90%の透過率を有する基板を指す。例えば、一実施形態において、基板102は、封止フリット114の加熱に用いられる約750nmから約950nmの光エネルギー波長に対して少なくとも約90%の透過率を有する。透明基板102は、例えばコーニング社(Corning, Inc.)で生産されるEagle XGガラスで、または、以後の封止プロセスにおいて封止フリット114の加熱に用いられる光エネルギー波長において適する透過率を有する同様のガラス材料で、作製されたガラス基板とすることができる。透明基板102は一般に背面106及び封止面104を有する。
【0016】
内マスク109及び外マスク108は、内マスク109及び外マスク108のそれぞれが連続周回路を形成するように、自閉する線または帯の形態の枠様形状で透明基板102の背面または封止面上に形成することができる。内マスク109及び外マスク108は、透明基板102の露出部分124が内マスクと外マスクの間に配置されるように、相互に隔てられる。図1及び2Dに示される実施形態において、内マスク109及び外マスク108は透明基板102の背面106上に形成される。しかし、内マスク109及び外マスク108が透明基板の背面106上または封止面104上のいずれにも形成され得ることは理解されるであろう。
【0017】
内マスク109及び外マスク108は一般に、フリット付カバーシート100が基板に封着されている間に封止フリットの加熱に用いられる光エネルギーを吸収または反射する、マスク形成材料で形成される。一実施形態において、マスク形成材料は、以後のガラスパッケージ封止プロセス中の封止フリット加熱に用いられる特定の光エネルギー波長において反射性である金属材料を含むことができる。そのような金属材料には、例えば、アルミニウム、銅、クロム、モリブデン、金、銀、白金またはその他のいずれかの適する元素あるいは金属合金材料を含めることができる。選ばれる特定の金属材料は、異なる金属は異なる反射特性を有するであろうから、以後のガラスパッケージ封止プロセスに用いられる光エネルギーの特性に依存し得る。別の実施形態において、マスク形成材料は、以後の封止プロセス中の封止フリット加熱に用いられる光エネルギーを吸収する材料を含むことができる。
【0018】
図1及び2Dをさらに参照すれば、封止フリット114はガラス基板102の封止面104上に配置し、封止フリットが内マスク109及び外マスク108のいずれにも隣接するように、内マスク109と外マスク108の間のガラス基板102の露出部分124に配置することができる。したがって、封止フリット114が一般に、ガラス基板102の封止面104上に自閉して連続順回路を形成し、よって全体的に周界を定める、線または帯の形態の枠様形状を有することは当然である。
【0019】
一実施形態において、封止フリット114は、ペーストとして被着されるガラスベース材料である。ペーストは一般に、ガラス粉末、(一般に有機の)結合剤及び/または、溶剤のような、揮発性液体ビヒクルを含むことができる。一実施形態において、封止フリット114は、以後の封止作業において封止フリット114に印加される光エネルギーの波長に一致するかまたは実質的に一致するあらかじめ定められた光エネルギー波長においておいてかなりの光吸収断面積を有する、低温ガラスフリットから形成される。例えば、ガラスフリットは、鉄、銅、バナジウム、ネオジム及びこれらの組合せを含む群から選ばれる1つ以上の光エネルギー吸収イオンを含有することができる。ガラスフリットは、ガラスフリットの熱膨張係数(CTE)が基板102及び、フリット付カバーシート100が以後に封着される、ガラス基板のいずれのCTEともさらに密に一致するようにガラスフリットのCTEを変化させるフィラー(例えば転化フィラーまたは添加フィラー)をドープすることもできる。封止フリット114を作製するために様々な組成のガラスフリットを用い得ることは理解されるであろう。例えば、適するフリット組成の非限定的例が、名称を「フリットを用いて気密封止されたガラスパッケージ及び作製方法(Glass Package that is Hermetically Sealed with a Frit and Method of Fabrication)」とする、特許文献1に開示されている。特許文献1は本明細書に参照として含まれる。
【0020】
図1及び2A〜2Dを次に参照すれば、例えばディスプレイデバイスのような、ガラスパッケージの封止に用いるためのフリット付カバーシートを形成する方法は、透明基板102上にパターン形成材料110を被着する工程を含むことができる。パターン形成材料は、例えば、フォトレジスト材料、インク、高分子材量、無機材料、等のような、様々な既知のパターン形成材料の内のいずれか1つを含むことができる。本明細書に示され、説明される、実施形態において、パターン形成材料はガラスフリットを含むペーストである。しかし、その他の適するパターン形成材料を用い得ることは当然である。
【0021】
パターン形成材料110は透明基板102の封止面104または透明基板102の背面106の内の少なくとも一方の上に被着することができる。図2A〜2Dに示されるフリット付カバーシート100を形成するための方法において、パターン形成材料110は透明基板102の背面106上に被着される。パターン形成材料は様々な方法の内のいずれか1つによって透明基板上に被着することができる。例えば、パターン形成材料がガラスフリットベースペーストである場合、ペーストを(ノズル、中空ニードルのような、または同様の)アプリケータからペーストを押し出すことによるか、スクリーン印刷によるかまたはその他のいずれかの技術上既知の計量分配方法によって、ペーストを透明基板上に被着することができる。しかし、パターン形成材料が以後に透明基板上に被着される封止フリットと同じかまたは同様のガラスフリットベースペーストである場合は、パターン形成材料を封止フリットと同じ態様で計量分配することが、これによりパター形成材料が一般に以後に被着される封止フリットの幾何学的形状と同形になることが保証されるから、望ましいであろうことは当然である。
【0022】
図2Aを参照すれば、パターン形成材料110は、透明基板102の少なくとも一部分が露出されるように、透明基板102上に被着することができる。例えば、図2Aに示されるように、パターン形成材料110は、内部チャネル126及び外部チャネル128がパターン形成材料110に形成されるように、被着される。(ここでさらに説明されるように)透明基板102上にマスク108,109を形成するために用いられる内部チャネル126及び外部チャネル128は基板102の背面106までパターン形成材料110を貫通する。内部チャネル126及び外部チャネル128のそれぞれは一般に、そのようなチャネルに形成されるマスクも連続であるように、自閉する連続チャネルとして形成される。パターン形成材料は、内部チャネル及び外部チャネル(及び以後のマスク)が所望の形状を有するように、被着することができる。例えば、図1及び2Dに示される実施形態において、パターン形成材料110は、内部チャネル126及び外部チャネル128のそれぞれが、内部チャネル126が外部チャネル128の内側に、外部チャネル128から隔てられて配置されている、長方形の、枠様形状を有するように、被着される。
【0023】
図2Aに示される実施形態は2本のチャネル(例えば内部チャネル126及び外部チャネル128)を形成するように被着されているとしてパターン形成材料を示しているが、単一チャネルまたは2本より多くのチャネルを形成するようにパターン形成材料を被着できることは当然である。
【0024】
さらに、本明細書に示され、説明される実施形態はパターン形成材料の被着後に露出されたままの透明基板の領域がチャネルであることを示しているが、露出領域が別の形状及び構成を有するようにパターン形成材料を被着できることは当然である。例えば、いくつかの実施形態において、フリット付カバーシートが表面発光ディスプレイデバイスであるガラスパッケージを封止するために用いられる場合、単一チャネルを透明基板上に形成することができ、単一チャネルで定められる枠内の透明基板のかなりの領域を露出したままにすることができる。
【0025】
パターン形成材料110がガラスフリットベースペーストである場合、ペーストは一般に、様々なガラス粉末、結合剤及び、溶剤のような、揮発性ビヒクルを含むことができる。透明基板102は、ガラスフリットベースペーストを乾燥させる(例えば、ペーストの揮発性ビヒクル成分を追い出す)ため、パターン形成材料110の被着後に加熱することができる。揮発性ビヒクルを除去することにより、被着されたパターン形成材料はガラス基板上に一層くっきりした縁端を有し、これにより、ここでさらに詳細に説明されるように、一層明確に定められたマスクの被着が可能になる。
【0026】
パターン形成材料110は最終的に透明基板102から除去することができる。したがって、ガラスフリットを焼結するに十分なガラスフリットベースペーストの加熱は、以後のフリットの除去が困難になり得るから、行わないことが望ましい。したがって、ガラスフリットベースペーストを乾燥させるため、透明基板102は約15分より長い時間をかけて(例えば15〜20分間)、約50℃〜約300℃の温度まで加熱することができる。あるいは、ガラスフリットベースペーストの被着後、ガラスフリットベースペーストを室温において外気で15〜20分間乾燥させることができる。
【0027】
別の実施形態において、パターン形成材料110は、広範なアクリル系高分子材の内のいずれかのような、高分子材とすることができる。高分子材被着後、高分子材を硬化させて固化させることができる。例えば、いくつかのアクリル系高分子材については、高分子材を紫外光源で露光して硬化させることができる。しかし、利用される特定の硬化手法がパターン形成材料に選ばれる特定の高分子材に依存して変わり得ることは理解されるであろう。
【0028】
パターン形成材料110が被着され、適切であれば、処理されて(例えば、ガラスフリットベースパターン形成材料の場合は加熱または乾燥されて、また高分子材ベースパターン形成材料の場合は硬化されて)しまうと、マスク形成材料112を、図2Bに示されるように、パターン形成材料110及び透明基板102を覆って被着することができる。したがって、パターン形成材料110が透明基板102の封止面104上に被着される場合、マスク形成材料112は封止面104上のパターン形成材料110に重ねて被着されるであろう。同様に、パターン形成材料110が透明基板102の背面106上に被着される場合、マスク形成材料112は背面106上のパターン形成材料110に重ねて被着されるであろう。本明細書に説明されるように、マスク形成材料112は、以後のフリット付カバーシート100を用いるガラスパッケージの封止中の封止フリット加熱に用いられる光エネルギーの特定の波長を反射または吸収するいずれかの材料または材料の組合せを含むことができる。本明細書に説明される実施形態において、マスク形成材料112は、例えばアルミニウムまたは銅のような、金属材料である。
【0029】
本明細書に説明されるように、マスク形成材料112が金属材料である場合、マスク形成材料は、例えば蒸着またはスパッタリングを含む、従来の被着方法または手法のいずれかによって被着することができる。パターン形成材料110が被着されている透明基板102がマスク形成材料112の被着中に静止していれば、金属材料のさらに一様な被着を達成できることが分かった。
【0030】
一実施形態(図示せず)において、マスク形成材料は同じかまたは異なる材料の複数の層で被着することができる。例えば、マスク形成材料の被着工程は、第1マスク形成材料層を被着する工程及び第1マスク形成材料層に重ねて第2マスク形成材料層を被着する工程を含むことができる。一実施形態において、第1アルミニウム層がパターン形成材料及び透明基板を覆って被着される。その後、第2銅層をアルミニウム層に重ねて被着することができる。アルミニウム層は、例えば、銅層と透明基板の間の密着層として用いることができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、マスク形成材料が金属材料である場合、マスク形成材料が透明基板上に被着された後にSiOまたはSiOの薄層をマスク形成材料に重ねて被着することができる。SiOまたはSiOは、ガラスパッケージの封止に用いられる光エネルギーのマスクによる過度の吸収を生じさせ、よってマスクを加熱し、最終的には劣化させ得る、金属材料の酸化を防止する。
【0032】
図2Cを参照すれば、一実施形態において、マスク形成材料112の被着後、パターン形成材料110及びマスク形成材料112の少なくとも一部分が透明基板102から除去されて、内マスク109及び外マスク108が透明基板102上に残される。パターン形成材料110がガラスフリットベース材料である場合のような、一実施形態において、パターン形成材料110及びマスク形成材料112の一部分は透明基板102を洗うことで除去することができる。例えば、透明基板を、アセトンのような、溶剤で洗い、軽く拭って、ペースト及びパターン形成材料の上に被着されているマスク形成材料部分を除去することができる。あるいは、加圧スプレイを用いて、パターン形成材料及びマスク形成材料の少なくとも一部分を除去することができる。パターン形成材料及びマスク形成材料の少なくとも一部分を除去するため、適切であれば、他の方法を用いることができる。
【0033】
パターン形成材料110が高分子材である場合のような、別の実施形態において、透明基板102を、透明基板上に被着されているいかなる材料も含めて、高分子材の除去を容易にするために加熱することができる。高分子材の除去に用いられる加熱スケジュール及び温度は、利用される高分子材のタイプに依存して変わり得る。しかし、そのようなパラメータは容易に、適度の実験により、決定することができる。
【0034】
図1及び2Cを次に参照すれば、パターン形成材料110及びマスク形成材料112の少なくとも一部分が除去された後のマスク形成材料からなる少なくとも1つのマスクは一般に、上述したように、自閉して連続周回路を形成する線及びまたは帯の形態の枠の形である。図2Cに示される実施形態において、少なくとも1つのマスクは外マスク108及び内マスク109を含み、外マスク108及び内マスク109のそれぞれは一般に、上述したように、枠形である。外マスク108及び内マスク109は相互に隔てられ、透明基板102の背面106上の外マスク108と内マスク109の間に露出領域124が配置される。
【0035】
図2Dに示されるように、パターン形成材料110及びマスク形成材料112の一部分が透明基板102から除去された後、透明基板102の封止面104上に封止フリット114を被着し、よってフリット付カバーシート100を形成することができる。初めにペーストとして基板上に被着される封止フリットは、(ノズル、中空ニードルのような、または同様の)アプリケータからペーストを押し出すことによるか、スクリーン印刷によるかまたはその他のいずれかの技術上既知の計量分配方法によって被着することができる。
【0036】
被着された封止フリット114は一般に、自閉して連続順回路を形成する線または帯の形態の枠の形をとることができる。したがって、封止フリット114が一般に透明基板102上に周界を定めることは当然である。封止フリット114は、内マスク109及び外マスク108が封止フリット114に隣接するように、内マスク109と外マスク108の間に配置することができる。例えば、図2Dに示されるフリット付カバーシート100の実施形態に示されるように、封止フリット114は透明基板102の封止面104上に被着することができ、内マスク109及び外マスク108はガラス基板の背面106上に配置される。封止フリット114は、透明基板102の内マスク109及び外マスク108に対して裏側の面の上にあるとしても、内マスク109と外マスク108の間に、内マスク109及び外マスク108に隣接して、配置される。しかし、封止フリット114,内マスク109及び外マスク108の別の相対配位が可能であり得ることが当然である。例えば、一実施形態において、封止フリット114,内マスク109及び外マスク108の全てを透明基板102の封止面104上に被着することができる。
【0037】
封止フリット114は、光エネルギーが背面106上の露出部分に入射したときに、光エネルギーが透明基板102を通過して封止フリット114に入射し、よって封止フリット114を加熱するように、封止面104上に配置される。封止フリット114は、内マスク109が、透明基板102の封止面104上または背面106上の、封止フリット114に隣接して、封止フリット114で定められた周界の内側に配置されるように、基板上に被着される。
【0038】
本明細書に説明される実施形態において、封止フリット114は、内マスク109及び外マスク108が基板102上に形成された後に、基板102上に被着される。しかし、別の実施形態(図示せず)において、封止フリット114が基板102上に形成された後に内マスク109及び外マスク108が基板102上に形成され得ることは当然である。
【0039】
さらに、図1及び2Dは、内マスク109及び外マスク108が透明基板の背面106上に配置されているフリット付カバーシートを示しているが、別の実施形態において、内マスク109及び外マスク108を封止面104上に配置し得ることは当然である。
【0040】
例として、図3Aを参照すれば、内マスク109及び外マスク108が透明基板102の封止面104上に封止フリットとともに配置されている、別の実施形態の、フリット付カバーシート100aが示されている。内マスク109及び外マスク108は本明細書に説明されるように形成することができる。
【0041】
さらに、図1及び2Dは内マスク109及び外マスク108のいずれも有するフリット付カバーシート100を示すが、別の実施形態において、フリット付カバーシート100は単一のマスク(例えば外マスクまたは内マスクのいずれか)を有し得ることは当然である。例えば、図3Bは内マスク109及び封止フリット114を有するフリット付カバーシート100bの一実施形態を示す。封止フリット114は、内マスク109が封止フリット114に隣接して、封止フリット114によって定められる周界の内側にあるように、被着される。図3Bに示される実施形態において、内マスク109は透明基板102の背面106上に配置される。しかし、別の実施形態(図示せず)において、透明基板の封止面上の、封止フリットによって定められる周界の内側に内マスクを配置し得ることは当然である。
【0042】
図3Cを参照すれば、別の実施形態のフリット付カバーシート100cが示されている。この実施形態において、外マスク109は内マスク109から隔てられ、透明基板102の縁端まで拡がっている。内マスク109及び外マスク108のこの構成は、パターン形成材料の被着中に、パターン形成材料を透明基板の縁端から離し、パターン形成材料に単一の枠形チャネルを形成することによって、得ることができる。したがって、所望の構成及び/または形状のパターンを形成するようにパターン形成材料を被着することにより、内マスク及び外マスクの様々なその他の構成及び/または形状が達成され得ることは当然である。
【0043】
図4A及び4Bを次に参照すれば、本明細書に説明されるフリット付カバーシートは、ガラス基板を封止し、よって封止ガラスパッケージを形成するために用いることができる。図4A及び4Bに示される実施形態において、フリット付カバーシート100は、電界発光素子116がその上に配置されているガラス基板を封止して、この実施形態ではディスプレイデバイスである、ガラスパッケージを形成するために用いられる。例えば、電界発光素子は有機発光ダイオード(OLED)とすることができる。
【0044】
フリット付カバーシート100は初めに、ガラス基板118(例えばOLED基板)上に、フリット付カバーシート100の封止面104とガラス基板118の間に電界発光素子116が配置されるように、配置される。フリット付カバーシート100をこのように配置すると、電界発光素子116は封止フリット114によって定められる周回または枠の内側に配置される。その後、封止フリット114は、内マスク109と外マスク108の間のフリット付カバーシート100の露出部分124を通して光エネルギー122を向けることによって(太矢印で表される)適する光エネルギー122で照射される。光エネルギー122はフリット付カバーシート100の露出部分124を通して向けられるから、内マスク109及び外マスク108も光エネルギー122で照射され得ること及び内マスク109及び外マスク108が光エネルギー122を反射及び/または吸収することは当然である。例えば、内マスク109及び外マスク108の形成に用いられるマスク形成材料がアルミニウムのような金属材料であれば、内マスク109及び外マスク108は反射性であり得る。いくつかの実施形態において、光エネルギー122は封止フリット114により吸収されるであろう波長を有するレーザビームとすることができる。例えば、適する波長を有するレーザビームがフリット付カバーシート100の露出部分124にわたって通過して、封止スリット114を照射及び加熱することができる。
【0045】
別の実施形態(図示せず)において、光エネルギーは、フリット付カバーシートの全面またはかなりの部分を同時に照射する、広帯域赤外光源から放射することができる。そのような実施形態において、得られるディスプレイデバイスは表面発光デバイスとすることができ、内マスクは、電界発光素子が印加光エネルギーから保護されるように、フリット付カバーシートの中央部分にわたって拡がる。
【0046】
封止フリット114の照射に適切な光源及び態様は加熱されて溶融されるべきフリットの組成に、また封止中のガラスパッケージの特性(例えばガラスパッケージの作製に感熱有機材料が使用されているか否か)にも、依存するであろう。露出部分124を透過して封止スリット114に入射する光エネルギーは封止フリット114を加熱し、溶解させ、よってフリット付カバーシート100をガラス基板118に封着して、この例ではディスプレイデバイス120であるような、気密封止ガラスパッケージを形成する。
【0047】
本明細書に説明される例及び実施形態は単一のガラスパッケージを封止するためのマスク及び封止フリットを有するフリット付カバーシートに関するが、封止ガラスパッケージの大量生産に有利であることが自明の、単一のガラス基板上に配列された複数の(例えば2つ以上の)ガラスパッケージを封止するための複数のマスク及び封止フリットを有するフリット付カバーシートを形成できることは当然である。例えば、図5は、単一のガラス基板118上に配置された2つの電界発光素子116を個々に封止するための複数のマスク(例えば、外マスク109a,109b及び内マスク108a,108b)及び封止フリット(例えば、封止フリット114a,114b)を有するフリット付カバーシート100の一実施形態を示す。
【0048】
さらに、図4A〜4B及び5は本明細書に説明されるフリット付カバーシートを用いる(OLEDディスプレイのような)ディスプレイデバイスの作製を示すが、本明細書に説明されるように形成された封止フリット及びマスクを有するフリット付カバーシートが他のタイプのガラスパッケージに用いられ得ることは当然である。そのようなガラスパッケージには、例えば光電変換デバイス及び、フリット付カバーシートで封止されたガラス基板を有する、同様に構成されたガラスパッケージを含めることができる。
【0049】
上述した実施形態が、特にいずれの「好ましい」実施形態も、実施の可能な例に過ぎず、本発明の原理の明瞭な理解のために説明されているに過ぎないことは強調されるべきである。特許請求される主題の精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に説明される実施形態に様々な改変及び変形がなされ得る。したがって、本明細書に説明される実施形態の改変及び変形が添付される特許請求項またはそれらの等価物の範囲内に入れば、本明細書はそのような形辺及び変形を包含するとされる。
【符号の説明】
【0050】
100 フリット付カバーシート
102 透明基板
104 封止面
106 背面
108 外マスク
109 内マスク
110 パターン形成材料
112 マスク形成材料
114 封止フリット
116 電界発光素子
124 透明基板露出部分
126 内部チャネル
128 外部チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスパッケージを封止するためのフリット付カバーシートを形成するための方法において、前記方法が、
封止面(104)及び背面(106)を有する透明ガラス基板(102)を提供する工程、
前記基板の前記封止面または前記基板の前記背面の内の一方の上に少なくとも1つのマスクを形成する工程、及び
前記基板の前記封止面上に封止フリット(114)を、前記少なくとも1つのマスクが前記封止フリットによって定められる周界に隣接して配置されるように、形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのマスクを形成する工程が、
パターン形成材料(110)を前記透明ガラス基板の前記封止面または前記背面の内の一方の上に被着する工程、及び
マスク形成材料(112)を前記パターン形成材料及び前記基板を覆って被着し、よって前記少なくとも1つのマスクを形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのマスクを形成する工程が、
前記パターン形成材料及び前記マスク形成材料の少なくとも一部分を前記基板から除去する工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パターン形成材料を被着する工程が、外部チャネル(128)から隔てられた内部チャネル(126)を形成するために前記パターン形成材料を被着する工程を含み、
前記マスク形成材料を被着する工程が、外マスク(108)から隔てられた内マスク(109)を形成するために前記パターン形成材料及び前記基板を覆って前記マスク形成材料を被着する工程を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記封止フリットが前記内マスクと前記外マスクの間に形成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記マスク形成材料を被着する工程が、複数のマスク形成材料層を被着する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記パターン形成材料がガラスフリットベースペーストを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
フリット付カバーシート及びガラス基板を有するガラスパッケージにおいて、
前記フリット付カバーシート(100)が封止フリット(114)及びマスクを有し、
前記封止フリットは、前記フリット付カバーシートの封止面(104)上に配置されて周界を定め、
前記マスクは、前記フリット付カバーシートの前記封止面または前記フリット付カバーシートの背面(106)の内の一方の上に配置され、前記封止フリットによって定められた前記周界の内側に配され、
前記封止フリットが前記ガラス基板と前記フリット付カバーシートの間に配置されるように前記フリット付カバーシートが前記ガラス基板上に配置され、前記封止フリットが前記ガラス基板と前記フリット付カバーシートの間に気密封止を形成する、
ことを特徴とするガラスパッケージ。
【請求項9】
前記マスクが内マスク(109)であり、前記フリット付カバーシートが、前記フリット付カバーシートの前記封止面または前記フリット付カバーシートの前記背面の内の一方の上に配置された外マスク(108)を有し、前記封止フリットが前記内マスクと前記外マスクの間に配置されるように前記外マスクが配置されることを特徴とする請求項8に記載のガラスパッケージ。
【請求項10】
前記ガラス基板が、前記封止フリットによって定められる前記周界の内側に配置された少なくとも1つの電界発光素子(116)を有することを特徴とする請求項8または9に記載のガラスパッケージ。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−533157(P2012−533157A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519726(P2012−519726)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/041359
【国際公開番号】WO2011/005952
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】