説明

マスクブランク、転写用マスクおよびこれらの製造方法、並びに半導体デバイスの製造方法

【課題】優れた耐薬品性およびArF照射耐性を有するマスクブランク、転写マスク等を
提供する。
【解決手段】転写用マスクを作製するために用
いられるものであり、透光性基板上1に遮光膜30を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜30は、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜30の透光性基板側とは反対側の表層に層中の酸素含有量が60at%以上
である高酸化層4が形成されていることを特徴としたマスクブランク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐薬品性および耐光性を向上させたマスクブランクおよび転写用マスク並びにこれらの製造方法に関する。特に、波長200nm以下の短波長の露光光を露光光源とする露光装置に好適に用いられる転写用マスクおよびこの転写用マスクを製造するためのマスクブランク、並びにこれらの製造方法に関する。また、この転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスクと呼ばれている基板が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
フォトリソグラフィー法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造は、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン描画を施す露光工程と、所望のパターン描画に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、レジストパターンに従って前記薄膜をエッチングするエッチング工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有して行われている。上記現像工程では、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン描画(露光)を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング又はウェットエッチングによって、レジストパターンが形成されておらず薄膜が露出した部位を溶解し、これにより所望のマスクパターンを透光性基板上に形成する。こうして、転写用マスクが出来上がる。
【0004】
半導体装置のパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
【0005】
転写用マスクとしては、透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリマスクが従来より知られている。
近年では、モリブデンシリサイド化合物を含む材料(MoSi系材料)を遮光膜として用いたArFエキシマレーザー用のバイナリマスクなども出現している。このMoSi系材料は、遮光膜において、遮光層上に形成される表面反射防止層の材料として用いられることがある(特許文献1)。特許文献1では、反射防止層と遮光層とからなる遮光膜の遮光層の材料として、反射防止層とのエッチング選択性の観点でタンタルを主成分とする材料を提案している。
一方、特許文献2では、光透過性基板上に、タンタル金属層、タンタル窒化物とタンタル酸化物の混合物の層を順に積層した構成のマスクブランクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−78825号公報
【特許文献2】特開昭57−161857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年のパターンの微細化に伴い、転写用マスクの製造コストが著しく上昇してきていることから、転写用マスクの長寿命化のニーズが高まってきている。
【0008】
転写用マスクの寿命を決定する要因としては、転写用マスクの繰返し洗浄による使用によって生じるマスク劣化の問題(耐薬品性の問題)と、転写用マスクに露光光が累積的に照射されることによって生じるマスク劣化の問題(耐光性の問題)と、がある。
【0009】
MoSi系材料からなる遮光膜(特に例えば10原子%以上のMoを含有するMoSiONからなる表面反射防止層を有する遮光膜等)は、温水耐性などの耐薬品性が良好とは言い難いという課題がある。
また、MoSi系材料からなる遮光膜は、ArF照射耐性などの耐光性が良好とは言い難いという課題がある。
【0010】
従来においては、例えばヘイズ(硫化アンモニウムを主体としマスク上に発生する異物)が発生するとヘイズを除去するための洗浄を行っていたが、洗浄による膜減り(膜の溶出)は避けられず、いわば洗浄回数がマスク寿命を決定していた。
上記のように、遮光膜の耐光性が低いとマスク寿命は短くなるが、これまでは、マスクの洗浄回数に基づくマスク寿命の範囲内では、遮光膜の耐光性は得られている。
【0011】
近年のヘイズの改善によってマスクの洗浄回数が低減したため、マスクの繰返し使用期間が延び、その分露光時間も延びたため、特にArFエキシマレーザーなどの短波長光に対する耐光性の問題が新たに顕在化してきた。タンタル系材料の場合、MoSi系材料に比べ耐薬品性や耐光性は高いが、転写用マスクのさらなる長寿命化のニーズは高く、より高い性能が求められている。また、KrFエキシマレーザーが露光光として適用されるマスクの場合においても、さらなる長寿命化のニーズは高く、洗浄に対するより高い耐性が求められている。
【0012】
本発明は、このような状況下になされたものであり、その目的とするところは、MoSi系材料からなる遮光膜は、温水耐性などの耐薬品性およびArF照射耐性などの耐光性が良好とは言い難いという課題を解消し、さらにタンタル系材料からなる遮光膜においてもより優れた耐薬品性およびArF照射耐性が得られるマスクブランク、転写用マスク及びそれらの製造方法を提供することである。また、この転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達すべく鋭意研究を行った。
その結果、タンタル系材料からなる遮光膜の表層、あるいは、遮光膜パターンの表層および側壁の表層に、層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層を形成することによって、タンタル系材料からなる遮光膜の中でもより優れた耐薬品性およびArF照射耐性が得られることを見出した。
本発明者は、さらに、タンタル系材料からなる遮光膜の表面、あるいは、遮光膜パターンの表面および側壁の表面に、後述する所定の表面処理(温水処理など)を施すことで強制的により均一な膜厚分布であり、製品間の品質のばらつきが小さい膜(タンタルの高酸化層)を形成させることができ、この結果、優れた耐薬品性およびArF照射耐性等が得られることを見出した。
【0014】
詳しくは、従来、タンタル系材料からなる遮光膜に関しては、その組成や多層構成に関しては研究されているものの、その表層に関してはほとんど研究されていない。
また、タンタル系材料からなる遮光膜としては、例えば、TaNからなる遮光層上にTaOからなる表面反射防止層を形成する態様が知られており、このTaOからなる表面反射防止層の層中の酸素含有量は表面反射防止を高める目的で56〜58at%とする態様が知られている。しかし、このTaOからなる表面反射防止層の表層に関してはほとんど研究されていない。
このような状況の下、本発明者は、タンタル系材料からなる遮光膜は、Ta単体はもとより、TaOやTaNについても酸化されることを突き止めた。詳しくは、図10に示すように、窒化されたタンタル膜(特に高窒素化されたタンタル膜)であっても、膜の表層ではほとんどの窒素が酸素に置換されて、タンタルがTaまで酸化されることを突き止めた。また、TaO膜は、膜の表層では酸化が進行し、Taまで酸化されることを突き止めた。
【0015】
また、タンタル系材料の表層が自然酸化する場合は、高酸化層が表層から内部に成長していき安定するまでには、少なくとも1年超(例えば、10,000時間)もの多くの時間が必要であることを突き止めた。従来、遮光膜を成膜した後のマスクブランクを1年超も大気中に放置することは稀であり、特に遮光膜に転写パターンを形成した転写用マスクをArF露光転写に使用することなく、1年超も大気中に放置してから使用することはなおさら考えにくい。
【0016】
タンタル系材料の表層が自然酸化する場合は、後述する本願所定の表面処理を施す場合と比べ、表層の高酸化層の面内膜厚分布の均一性や製品間の高酸化層の膜厚ばらつきが大きくなること、を突き止めた。
特に、表面反射防止層と遮光層の少なくとも2層の遮光膜を有する転写用マスクで、自然酸化によって遮光膜パターンの側壁に高酸化層が形成された場合、本願所定の表面処理で高酸化層を形成した場合に比べて、成膜時の酸化度が相対的に高い材料である表面反射防止層の側壁と成膜時の酸化度が相対的に低い材料である遮光層の側壁との間での高酸化層の厚さのばらつきがかなり大きくなってしまうこと、を突き止めた。
【0017】
さらに、表層に高酸化層が形成されたタンタル系材料の遮光膜や遮光膜パターンは、優れたArF照射耐性が得られることを突き止めた。
また、後述する本願所定の表面処理を施す場合は、表層に層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタル高酸化層(所定のタンタル高酸化層)が形成されていない状態と比べ、相対的に優れた耐薬品性およびArF照射耐性が得られることを突き止めた。この理由は、表層に所定のタンタル高酸化層が形成されていない状態で、酸やアルカリ等による薬液処理がなされると、膜の溶解によるダメージを受ける場合があるからである。
本発明者は、上記のことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
なお、本明細書においては、層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層のことを、所定のタンタル高酸化層と適宜称する。また、層中の酸素含有量が60at%未満であるタンタルの酸化層のことを、「タンタル酸化層」と称して区別する。
また、本明細書においては、タンタル系材料からなる遮光膜の表層、あるいは、遮光膜パターンの表層および側壁の表層のことを、所定の表層と適宜称する。
本発明において、表層とは、表面から深さ数nm程度の最表面を指す。
【0019】
本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
転写用マスクを作製するために用いられるものであり、透光性基板上に遮光膜を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜は、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜の透光性基板側とは反対側の表層に層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されていることを特徴としたマスクブランク。
(構成2)
前記高酸化層は、層中の酸素含有量が68at%以上であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記高酸化層は、厚さが1.5nm以上4nm以下であることを特徴とする構成1または2のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成4)
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜におけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記遮光膜は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記遮光膜は、透光性基板側から少なくとも遮光層および表面反射防止層が順に積層した構造を有し、
前記高酸化層は、前記表面反射防止層の前記遮光層側とは反対側の表層に形成されていることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、前記高酸化層の層中の酸素含有量よりも少ないことを特徴とする構成6記載のマスクブランク。
(構成8)
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、50at%以上であることを特徴とする構成7記載のマスクブランク。
(構成9)
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記表面反射防止層におけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする構成6から8のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成10)
前記遮光層は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成6から9のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成11)
前記遮光膜は、膜厚が60nm未満であることを特徴とする構成1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成12)
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクであって、
前記遮光膜パターンは、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜パターンの前記透光性基板側とは反対側の表層と前記遮光膜パターンの側壁の表層に層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されていることを特徴とした転写用マスク。
(構成13)
前記高酸化層は、層中の酸素含有量が68at%以上であることを特徴とする構成12記載の転写用マスク。
(構成14)
前記高酸化層は、厚さが1.5nm以上4nm以下であることを特徴とする構成12または13のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成15)
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする構成12から14のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成16)
前記遮光膜パターンは、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成12から15のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成17)
前記遮光膜パターンは、透光性基板側から少なくとも遮光層および表面反射防止層が順に積層した構造を有することを特徴とする構成12から14のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成18)
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、前記高酸化層の層中の酸素含有量よりも少ないことを特徴とする構成17記載の転写用マスク。
(構成19)
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、50at%以上であることを特徴とする構成18記載の転写用マスク。
(構成20)
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記表面反射防止層におけるにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする構成17から19のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成21)
前記遮光層は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成17から20のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成22)
前記遮光膜パターンは、膜厚が60nm未満であることを特徴とする構成12から21のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成23)
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して温水またはオゾン水による処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成24)
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素を含有する気体中で加熱処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成25)
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素を含有する気体中で紫外線照射処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程とを有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成26)
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素プラズマによる表面処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成27)
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンの表面に酸素含有量が60at%以上である高酸化層をスパッタ法によって形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成28)
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする構成23から27のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(構成29)
構成12から22のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
(構成30)
構成23から28のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
(構成31)
転写用マスクを作製するために用いられるものであり、透光性基板上に遮光膜を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜は、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜の透光性基板側とは反対側の表層に高酸化層が形成されており、
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜におけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とするマスクブランク。
(構成32)
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクであって、
前記遮光膜パターンは、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜パターンの透光性基板側とは反対側の表層と遮光膜パターンの側壁の表層に高酸化層が形成されており、
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする転写用マスク。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、以下の効果が得られる。
(1)タンタル系材料からなる遮光膜の表層、あるいは、遮光膜パターンの表層および側壁の表層(所定の表層)に、層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層(所定のタンタル高酸化層)が形成されていることにより、MoSi系遮光膜と比較して温水耐性や耐薬品性が大幅に向上することはもちろんのこと、高酸化層が形成されていないタンタル系材料からなる遮光膜と比較しても耐薬品性が向上する。
所定の表層に所定のタンタル高酸化層が形成されていない状態の場合、酸処理やアルカリ処理等を施すことによって、遮光膜あるいは遮光膜パターンがダメージを受けることがある。このダメージは回復できない。
(2)長期間(1年超)の大気中放置によってタンタル系材料の表層の自然酸化が進んだ状態の場合、表層が形成されていない場合との比較では耐薬品性の向上はみられる。しかし、遮光膜や遮光膜パターンの表面に形成される酸化層の膜厚分布の均一性が、表面処理によって強制的にタンタルの高酸化層を形成した場合に比べて低くなる。また、同じロットで製造したマスクブランクを同じ環境下で自然酸化させた場合でも、マスクブランク間の遮光膜における高酸化層の膜厚ばらつきが生じやすい。タンタルの高酸化層の膜厚検出は容易にはできないため、全数検査も難しい。つまり、自然酸化では適正なタンタル高酸化層を備えるマスクブランクを安定的に生産することが難しい。これに対し、本願所定の表面処理を施してタンタルの高酸化層を形成する場合には、膜厚分布の均一性が得やすく、マスクブランク製品間でのタンタル高酸化層の膜厚均一性も高い。このため、所定のタンタルの高酸化層を備えるマスクブランクを安定して供給することができる。
(3)転写用マスクにあっては、タンタル系遮光膜パターンの表層及び側壁の表層の自然酸化が進んだ状態の場合は、特に側壁側の酸化層の膜厚分布が不均一になりやすく、ArF照射耐性が低い部分が生じやすい。これに対し、タンタル系遮光膜パターンの形成後に本願所定の表面処理を施した場合、前記パターンの表層及び側壁の表層に膜厚分布の均一性の高い所定のタンタル高酸化層が形成されるため、遮光膜パターン全体でArF照射耐性を高くすることができる。
(4)酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層は、酸素含有量が60at%未満であるタンタル酸化層(TaO層)に比べ、Cl系ガスエッチングに対する耐性が高いので、TaO層をマスクとしてTaN層等をドライエッチングする際に、酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層がない場合に比べ、エッチングマスクとしての耐性が向上する。これにより、タンタル酸化層(表面反射防止層)のパターンエッジ部分が丸まることを低減できる。
(5)後述する構成6のように、表面反射防止層全体をタンタル高酸化層で形成せずに、表層のみタンタル高酸化層とした場合、表面反射防止層にある程度のArF露光光に対する光学濃度を持たせることが可能になるため、遮光膜の薄膜化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の実施の形態にかかるマスクブランクの構成を示す断面図である。
【図2】本願発明の実施の形態にかかる転写マスクの構成を示す断面図である。
【図3】本願発明の実施の形態にかかるマスクブランクから転写マスクを製造するまでの過程を示す断面図である。
【図4】実施例で作製した転写マスクにおける転写パターンの断面についてArF照射前に観察した様子を示す明視野STEM像である。
【図5】実施例で作製した転写マスクにおける転写パターンの断面についてArF照射後に観察した様子を示す明視野STEM像である。
【図6】実施例で作製した転写マスクにおける転写パターンの断面についてArF照射前に観察した様子を示す暗視野STEM像である。
【図7】実施例で作製した転写マスクにおける転写パターンの断面についてArF照射後に観察した様子を示す暗視野STEM像である。
【図8】本願所定の表面処理の前後で反射率(表面反射率)のスペクトルを比較した結果を示す図である。
【図9】TaO反射防止層とTaN遮光層からなる遮光膜について、本願所定処理後に、オージェ電子分光分析(AES)で分析した結果(深さプロファイル)を示す図である。
【図10】高窒素化されているタンタル膜について、オージェ電子分光分析(AES)で分析した結果(深さプロファイル)を示す図である。
【図11】実施例7のマスクブランクにおける、遮光膜の断面を示す暗視野STEM像である。
【図12】実施例7のマスクブランクにおける、遮光膜の各領域の電子線回折像を示す図である。
【図13】実施例7のマスクブランクにおける、遮光膜に対してXPS分析を行った結果(Ta 4fナロースペクトル)を示す図である。各領域の電子線回折像を示す図である。
【図14】実施例13のTaBO層とTaBN層からなる遮光膜における、XPS分析で分析した結果(深さプロファイル)を示す図である。
【図15】実施例13のマスクブランクにおける、遮光膜に対してXPS分析を行った結果(高酸化層4のTa 4fナロースペクトル)を示す図である。
【図16】実施例13のマスクブランクにおける、遮光膜に対してXPS分析を行った結果(TaBO層3のTa 4fナロースペクトル)を示す図である。
【図17】実施例13のマスクブランクにおける、遮光膜に対してXPS分析を行った結果(TaBN層2のTa 4fナロースペクトル)を示す図である。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明のマスクブランクは、転写用マスクを作製するために用いられるものであり、透光性基板上に遮光膜を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜は、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜の透光性基板側とは反対側の表層に層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層が形成されていることを特徴とする(構成1)。
また、本発明の転写用マスクは、透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクであって、
前記遮光膜パターンは、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜パターンの透光性基板側とは反対側の表層と遮光膜パターンの側壁の表層に層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層が形成されていることを特徴とする(構成12)。
なお、本発明において、透光性基板側とは反対側の表層とは、透光性基板側とは反対側に位置する表面を含み、この表面から一定深さの層のことを指す。
【0024】
構成1、12に係る発明は、タンタルを主な金属成分として含有する材料(以下、タンタル系材料と称す)からなる遮光膜の表層、あるいは、遮光膜パターンの表層および側壁の表層(所定の表層)に、層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層(所定のタンタル高酸化層)を形成することによって、優れた耐薬品性およびArF照射耐性が得られることを見出したことに基づく発明である。
【0025】
本発明において、所定の表層に形成される「タンタル酸化層」は、層中の酸素含有量が60at%未満だと、比較的不安定な酸化状態であるTaOの結合状態が主体であると考えられる。TaOはタンタルの酸化物のうちで酸化度が最も低く、本発明で言う「高酸化層」に含まれない。
なお、膜中の酸素含有量が60at%未満のタンタル酸化膜は、表面反射防止層として形成される。このとき、酸素含有量は例えば50at%以上(例えば56〜58at%)である。
【0026】
マスクブランクや転写用マスクの遮光膜は、結晶構造を微結晶好ましくは非晶質とすることが望まれており、本発明の遮光膜も同様である。このため、遮光膜内の結晶構造が単一構造にはなりにくく、複数の結晶構造が混在した状態になりやすい。すなわち、タンタル高酸化層の場合、TaO結合、Ta結合、TaO結合、Ta結合が混在する状態になりやすい。遮光膜中の所定の表層に、Ta結合の存在比率が高くなるにつれて耐薬品性やArF耐光性が高くなり、TaO結合の存在比率が高くなるにつれて耐薬品性やArF耐光性が低下する。
【0027】
本発明において、所定のタンタル高酸化層は、層中の酸素含有量が60at%以上66.7at%未満だと、層中のタンタルと酸素の結合状態はTa結合が主体になる傾向が高くなると考えられ、一番不安定な結合のTaO結合は、層中の酸素含有量が60at%未満の場合に比べて非常に少なくなると考えられる。
本発明において、所定のタンタル高酸化層は、層中の酸素含有量が66.7at%以上だと、層中のタンタルと酸素の結合状態はTaO結合が主体になる傾向が高くなると考えられ、一番不安定な結合のTaO結合やその次に不安定な結合のTaの結合はともに非常に少なくなると考えられる。
所定のタンタル高酸化層は、層中の酸素含有量が60at%以上であると、最も安定した結合状態の「Ta」だけでなく「Ta」や「TaO」の結合状態も含まれることになるが、少なくとも一番不安定な結合のTaO結合が耐薬性やArF耐光性を低下させるような影響を与えない程度の非常に少ない量になるといえる下限値であると考えられる。
本発明において、所定のタンタル高酸化層は、層中の酸素含有量が68at%以上であると(構成2、13)、TaO結合が主体になるだけでなく、Taの結合状態の比率も高くなると考えられる。このような酸素含有量になると、「Ta」や「TaO」の結合状態は稀に存在する程度となり、「TaO」の結合状態は存在し得なくなってくる。本発明において、高酸化層のTa結合の存在比率は、高酸化層を除く遮光膜あるいは遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことが望ましい(構成4、15)。Ta結合は、非常に高い安定性を有する結合状態であり、高酸化層中のTa結合の存在比率を多くすることで、耐薬性、耐温水性などのマスク洗浄耐性やArF耐光性が大幅に高まる。
【0028】
本発明において、所定のタンタル高酸化層は、層中の酸素含有量が71.4at%であると、実質的にTaの結合状態だけで形成されていると考えられる。
本発明では、所定のタンタル高酸化層は、Taの結合状態だけで形成されていることが最も好ましい。
本発明において、所定のタンタル高酸化層は、Taの結合状態だけで形成されている場合、タンタルと酸素で実質的に構成されていることが好ましい。実質的にTa等の結合状態だけで形成されていることが好ましいからである。
上記のタンタルと酸素で実質的に構成されている場合、窒素、その他の元素は、本発明の作用効果に影響のない範囲であることが好ましく、実質的に含まれないことが好ましい。
【0029】
本発明において、層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層(所定のタンタル高酸化層)の形成方法は、温水処理、オゾン含有水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、Oプラズマ処理等が挙げられる。
【0030】
本発明において、前記遮光膜は、単層構造、複数層構造、を含む。
前記遮光膜は、反射防止層を含む態様であってもよい。
前記遮光膜は、組成傾斜膜を含む。
前記遮光膜は、透光性基板側から、遮光層、表面反射防止層を順に積層した2層構造としてもよい。
前記遮光膜は、透光性基板側から、裏面反射防止層、遮光層、表面反射防止層を順に積層した3層構造としてもよい。
【0031】
本発明において、遮光膜を構成する、タンタルを主な金属成分として含有する材料としては、タンタル(Ta)単体、窒素を含むタンタル(TaN)、酸素を含むタンタル(TaO)や、窒素、酸素を含むタンタル(TaON)、ホウ素を含むタンタル(TaB)、窒素、ホウ素を含むタンタル(TaBN)、酸素、ホウ素を含むタンタル(TaBO)、これらの複合材料などが挙げられる。このほか、前記の材料群に炭素(C)等を含有させてもよい。
【0032】
本発明においては、層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層(所定のタンタル高酸化層)は、厚さが1.5nm以上4nm以下であることが好ましい(構成3、14)。
1.5nm未満では薄すぎて効果が期待できず、4nmを超えると表面反射率に与える影響が大きくなり、所定の表面反射率(ArF露光光に対する反射率や各波長の光に対する反射率スペクトル)を得るための制御が難しくなる。また、タンタルの高酸化層は、ArF露光光に対する光学濃度が非常に低いことから、表面反射防止層で確保できる光学濃度が低下し、遮光膜の膜厚を薄膜化する観点からはマイナスに働いてしまう。
成膜直後に又は成膜後自然酸化がされない状態で、本願所定の表面処理を施すことでタンタルの高酸化層を形成させた場合、1.5nmから4nmの範囲の厚さになる傾向がある。そして、高酸化層がその厚さの範囲は、十分な耐薬性やArF耐光性が得られる。なお、遮光膜全体の光学濃度確保の観点と、耐薬性やArF耐光性の向上の観点の両方のバランスを考慮すると、高酸化層の厚さは1.5nm以上3nm以下とするのがより望ましい。
【0033】
本発明においては、前記遮光膜あるいは遮光膜パターンは、窒素を含有する材料からなる態様とすることができる(構成5、16)。
このような態様は、裏面反射防止を図る上で有利であり、裏面反射防止のための裏面反射防止層を透光性基板と遮光層の間に形成する必要がなくなるため、相対的に薄い膜厚で遮光性能を確保する上でも有利である。
【0034】
本発明においては、前記遮光膜は、透光性基板側から少なくとも遮光層および表面反射防止層が順に積層した構造を有し、
前記高酸化層は、表面反射防止層の遮光層側とは反対側の表層に形成されている態様とすることができる(構成6)。
また、本発明においては、前記遮光膜パターンは、透光性基板側から少なくとも遮光層および表面反射防止層が順に積層した構造を有する態様とすることができる(構成17)

このような態様は、表面反射防止を図る上で有利であり、遮光性能の高い材料で遮光層を形成することにより、相対的に薄い膜厚で遮光性能を確保する上でも有利である。
【0035】
本発明においては、前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、前記高酸化層の層中の酸素含有量よりも少ないことが好ましい(構成7、18)。
このような構成は、より薄い膜厚で所定の表面反射率を得る上で有利である。
本発明においては、前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、60at%未満であることが好ましい。
【0036】
本発明においては、前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、50at%以上であることが好ましい(構成8、19)。
このような構成は、表面反射防止効果を高める(最大化する)上で有利である。また、遮光層を塩素系ガスでドライエッチングするときのエッチングマスク(ハードマスク)として表面反射防止層を使用する場合、塩素系ガスに対するエッチング耐性がさらに高まるため、より高いエッチング選択性を確保できる。なお、表面反射防止層中に窒素も含有する場合においては、窒素と酸素の合計含有量が50at%以上であることが好ましく、酸素の含有量が50at%を下回っても表面反射防止効果を高める効果が得られないことにはならない。
表面反射防止効果を高める(最大化する)上では、例えば、前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は56〜58at%であり、その表層に層中の酸素含有量が60at%以上であるタンタルの高酸化層が形成されている態様が好ましい。
【0037】
上記構成6〜8、構成17〜19においては、前記高酸化層のTa結合の存在比率は、表面反射防止層におけるTa結合の存在比率よりも高いことが好ましい(構成9、20)。
Ta結合は、非常に高い安定性を有する結合状態であり、高酸化層中のTa結合の存在比率を多くすることで、耐薬性、耐温水性などのマスク洗浄耐性やArF耐光性が大幅に高まる。
上記構成6〜9、構成17〜20においては、前記遮光層は、窒素を含有する材料からなることが好ましい(構成10、21)。
このような構成は、 裏面反射防止を図る上で有利であり、また、相対的に薄い膜厚で遮光膜の遮光性能を確保する上でも有利である。
【0038】
本発明においては、前記遮光膜あるいは前記遮光膜パターンは、膜厚が60nm未満であることが好ましい(構成11、22)。
このような構成は、より微細なパターンを転写する上で有利である。
特に高NA(液浸)世代で使用される転写用マスクに関しては、光近接効果補正(Optical Proximity Correction:OPC)やSRAF(Sub Resolution Assist Feature)等のマスクパターンの補正が必要になってくるが、そのために必要となるシミュレーションの計算負荷の低減のためには、マスクパターンを薄くすることが有効であり、その要求に応えることが可能となる。
【0039】
本発明者らは、遮光膜を形成した後、あるいは、遮光膜にエッチングを行って遮光膜パターンを形成した後の最初の処理が、耐薬品性およびArF照射耐性に大きな影響を与えており、重要であることを解明した(構成23〜26)。
本発明者は、最初の処理が適切でないと、遮光膜あるいは遮光膜パターンがダメージを受けることがあることを突き止めた。例えば、最初の処理が、アンモニアと過酸化水素を含有する水溶液などのアルカリ性溶液を用いた処理であると、遮光膜あるいは遮光膜パターンがダメージを受けることがある(特にTaN層を含む場合TaN層にダメージを受ける)ことを突き止めた。また、例えば、遮光膜中にホウ素を含む場合、最初の処理が、硫酸過水、熱濃硫酸などの酸処理であると、遮光膜あるいは遮光膜パターンがダメージを受けることがあることを突き止めた。
本発明者は、前記最初の処理として、温水処理、オゾン含有水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理、酸素プラズマによる表面処理、のうち1以上の処理が適していることを突き止めた。
上記本願所定の表面処理を施すことで強制的に均一で強固な膜(タンタルの高酸化層)を形成させることができ、この結果、優れた耐薬品性およびArF照射耐性等が得られる。
上記本願所定の表面処理は、洗浄処理を兼ねることが可能である。
なお、上記本願所定の表面処理を施すことで、所定の厚さのタンタル高酸化層の表層を遮光膜パターンに形成できることを解明したので、本願所定の表面処理を施す場合は分析で確認する必要がない。これに対し、自然酸化であると、酸化の進行は放置される環境等に大きく左右されるため表層の厚さを制御することは難しい。タンタル高酸化層の膜厚を短時間でかつ非破壊で検出する方法は現状技術では特に見当たらず、全数検査は難しい。また、自然酸化の場合、1年超(例えば、10,000時間)の時間が必要であり、生産管理上も困難である。
【0040】
本発明の転写用マスクの製造方法は、透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して温水による処理またはオゾン水による処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする(構成23)。
【0041】
温水で処理する工程は、イオン交換水(DI water:deionized water)などの純水や超純水を用いることが好ましい。
温水の温度は、70〜90℃程度が好ましい。
温水による処理時間は、10〜120分程度が好ましい。
オゾン含有水で処理する工程は、40〜60ppmのオゾン含有水を用いることが好ましい。
オゾン含有水の温度は、15〜30℃程度が好ましい。
オゾン含有水による処理時間は、10〜20分程度が好ましい。
【0042】
本発明の転写用マスクの製造方法は、透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素を含有する気体中で加熱処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする(構成24)。
【0043】
加熱処理の温度は、120〜280℃程度が好ましい。
加熱処理による処理時間は、5〜30分程度が好ましい。
酸素を含有する気体は、大気の他、大気よりも酸素濃度の高い雰囲気などが挙げられる。
【0044】
本発明の転写用マスクの製造方法は、透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素を含有する気体中で紫外線照射処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を遮光膜パターンの表層に形成する工程とを有することを特徴とする(構成25)。
【0045】
紫外線照射処理で用いる紫外線は、遮光膜パターンの表面の周囲にある酸素を含有する気体(大気)中の酸素からオゾンを生成させることができれば、どのような波長のものでもよい。なお、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、Xeエキシマレーザー光、Xeエキシマ光のような単色で波長が短い紫外線である方が、周囲の酸素から効率的にオゾンを発生させることができ、かつ紫外線の照射を受ける遮光膜の発熱を最小限に抑えることができ好ましい。
【0046】
紫外線照射処理による照射時間は、エキシマレーザー光の場合では、エキシマレーザー光の特性上、照射範囲が狭く、遮光膜表面を走査させる必要があるため一概に言いきれないが、例えば15〜30分程度が好ましい。一方、超高圧水銀ランプによる紫外線照射の場合では、1〜10分程度が好ましい。
酸素を含有する気体は、大気の他、大気よりも酸素濃度の高い雰囲気などが挙げられる。
【0047】
本発明の転写用マスクの製造方法は、透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素プラズマによる表面処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を遮光膜パターンの表層に形成する工程とを有することを特徴とする(構成26)。
【0048】
酸素プラズマによる処理時間は、1〜10分程度が好ましい。
【0049】
本発明の転写用マスクの製造方法は、透光性基板上に遮光膜を備えるマスクブランクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンの表面に酸素含有量が60at%以上である高酸化層をスパッタ法によって形成する工程とを有することを特徴とする(構成27)。
【0050】
本発明において、酸素含有量が60at%以上である酸素を含むタンタル膜は、Taをターゲットとした場合、DCマグネトロンスパッタリング法で、低欠陥で成膜することは難しく、RFマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタ法を用いることが望ましい。
特に、Taターゲットを用いて所定の表層を形成する場合、DCマグネトロンスパッタリングではTaは導電性がないので成膜は困難であり、RFマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタ法を適用する必要がある。
なお、RFマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタ法でTaターゲットを用いて所定の表層を形成する場合でも、スパッタ室内に導入する成膜ガスを希ガスのみの雰囲気では、形成される表層に酸素欠損が生じてしまうことがある(Ta結合以外の結合状態も存在してしまう)。これを回避するには、スパッタ室内の成膜ガスに希ガスと酸素の混合ガスを導入して成膜するとよい。
【0051】
上記構成23〜27の発明においては、前記高酸化層のTa結合の存在比率は、表面反射防止層におけるTa結合の存在比率よりも高くすることが好ましい(構成28)。
Ta結合は、非常に高い安定性を有する結合状態であり、高酸化層中のTa結合の存在比率を多くすることで、耐薬性、耐温水性などのマスク洗浄耐性やArF耐光性が大幅に高まるためである。
【0052】
上記構成1〜32の発明においては、耐薬性、耐温水性などのマスク洗浄耐性やArF耐光性が大幅に高まるので、波長200nm以下の露光光が適用される転写用マスクおよびマスクブランクに特に適する。
また、上記構成1〜32の発明においては、耐薬性、耐温水性などのマスク洗浄耐性が大幅に高まるので、KrFエキシマレーザー(波長248nm)の露光光が適用される転写用マスクおよびマスクブランクに適する。
【0053】
本発明において、前記遮光膜を形成する方法としては、例えばスパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本発明はスパッタ成膜法に限定されるわけではない。
スパッタ装置としてDCマグネトロンスパッタ装置が好ましく挙げられるが、本発明はこの成膜装置に限定されるわけではない。RFマグネトロンスパッタ装置等、他の方式のスパッタ装置を使用してもよい。
【0054】
本発明において、前記エッチングとしては、微細パターンの形成に有効なドライエッチングが好適に用いられる。
【0055】
本発明において、酸素を含有するタンタル系材料(タンタル酸化層やタンタル高酸化層等)のドライエッチングには、例えば、SF、CF、C、CHF等のフッ素系ガスを用いることができる。
本発明において、酸素を実質的に含有しないタンタル系材料(タンタル、タンタル窒化層等)のドライエッチングには、例えば、SF、CF、C、CHF等のフッ素系ガス、これらとHe、H、N、Ar、C、O等の混合ガス、或いはCl、CHCl等の塩素系のガス又は、これらとHe、H、N、Ar、C等の混合ガスを用いることができる。
【0056】
本発明において、透光性基板は、使用する露光波長に対して透明性を有するものであれば特に制限されない。本発明では、合成石英基板、石英基板、その他各種のガラス基板(例えば、CaF基板、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス基板、低熱膨張ガラス基板等)を用いることができるが、この中でも石英基板は、ArFエキシマレーザー又はそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、本発明には特に好適である。
【0057】
本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記のいずれかの構成の転写用マスク、あるいは前記のいずれかの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする(構成29、30)。
本発明の転写用マスクの遮光膜パターンは、耐温水性、耐薬性等に優れ、ArF耐光性にも優れるため、マスク洗浄によるパターンの細りが小さく、ArFエキシマレーザーの照射に対するパターン太りも小さいため、微細なパターン(例えば、DRAM hp45nmの回路パターン)を半導体ウェハ上のレジスト膜に高い精度で転写できる。このため、本発明の転写用マスクで露光転写され、形成されたレジストパターンを用いて、半導体ウェハ上に微細なパターンを精度よく形成することができる。
【0058】
また、本発明のマスクブランクは、転写用マスクを作製するために用いられるものであり、透光性基板上に遮光膜を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜は、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜の透光性基板側とは反対側の表層に高酸化層が形成されており、
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、高酸化層を除く遮光膜におけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする(構成31)。
【0059】
さらに、本発明の転写用マスクは、透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクであって、
前記遮光膜パターンは、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜パターンの透光性基板側とは反対側の表層と遮光膜パターンの側壁の表層に高酸化層が形成されており、
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、高酸化層を除く遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする(構成32)。
これらのマスクブランクや転写用マスクの遮光膜や遮光膜パターンは、その表層に、Ta結合の存在比率が高い高酸化層を備えるため、耐薬性、耐温水性、ArF耐光性に非常に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は本願発明の実施の形態にかかるマスクブランクの構成を示す断面図、図2は本願発明の実施の形態にかかる転写用マスクの構成を示す断面図、図3は本願発明の実施の形態にかかるマスクブランクから転写用マスクを製造するまでの過程を示す断面図である。以下、これらの図面を参照にしながら、本願発明の実施の形態にかかるマスクブランク及び転写用マスクを説明する。
【0061】
図1に示されるように、本実施の形態にかかるマスクブランクは、合成石英からなるガラス基板1上に、厚さ42nmのTa窒化物を主成分とするTa窒化層(遮光層)2が形成され、このTa窒化層2の上に、厚さ9nmのTa酸化物を主成分とするTa酸化層(表面反射防止層)3が形成され、このTa酸化層3の表層にタンタルの高酸化層4が形成されてなるものである。なお、Ta窒化層2とTa酸化層3とタンタルの高酸化層4とで遮光膜30を構成する。Ta窒化層2の窒素(N)含有量は16at%、Ta酸化層3の酸素(O)含有量は58at%、タンタルの高酸化層4の酸素(O)含有量は71.4at%である。
また、本実施の形態にかかる転写用マスクは、図2に示されるように、図1に示されるマスクブランクの遮光膜30をパターニングすることにより、ガラス基板1上に、遮光膜30を残存させた部分30aと、除去した部分30bとから構成される微細パターンを形成したものである。
遮光膜パターン30aの表層には、タンタルの高酸化層4aが形成されている。また、遮光膜パターン30aの側壁においては、Ta酸化層3のパターン3aの側壁の表層にタンタルの高酸化層4bが形成され、Ta窒化層2のパターン2aの側壁の表層にタンタルの高酸化層4cが形成されている。
【0062】
次に、図3を参照にしながら本実施の形態にかかるマスクブランク及び転写用マスクを製造した例を実施例として説明する。
[マスクブランクの作製]
(実施例1)<マスクブランクの製造:温水処理>
縦・横の寸法が、約152mm×152mmで、厚さが6.35mmの合成石英からなる基板1を、DCマグネトロンスパッタ装置に導入する。スパッタ装置内を2×10−5(Pa)以下に排気した後、スパッタ装置内にArとNの混合ガスを導入する。このとき、Arの流量は38.5sccm、Nの流量は9sccmに調整した。スパッタリングターゲットにはTaを用いた。ガスの流量が安定した後、DC電源の電力を1.5kWに設定し、基板1上に厚み42nmのTa窒化層2を成膜した(図3(a)参照)。
【0063】
次に、Ta窒化層2を成膜した基板1をスパッタ装置内に保持したまま、流量58sccmのArガスと、流量32.5sccmのOガスとを混合した混合ガスをスパッタ装置内に導入し、続いてDC電源の電力を0.7kWに設定し、Ta窒化層2上に厚み9nmのTa酸化層3を積層した(図3(b)参照)。Ta酸化層3をDCマグネトロンスパッタリングで成膜する際には、ターゲット上に酸化膜が堆積して成膜速度が低下する場合がある。成膜速度の低下を抑制するには、DCパルスユニットが有効であり、実施例ではアドバンスドエナジー社製 Sparc−LE V(アドバンスドエナジー社の商品名)を用いている。
【0064】
上記のように作製した遮光膜30の膜面における反射率(表面反射率)は、ArF露光光(波長 193nm)において25.2%であった。基板1の遮光膜を形成していない面の反射率(裏面反射率)は、ArF露光光において、38.2%であった。また、ArF露光光における光透過率は0.1%であった。
屈折率n、消衰係数kの値をn&kテクノロジー社製の光学式薄膜特性測定装置であるn&k1280(n&kテクノロジー社の商品名)で算出したところ、Ta窒化層2のnは屈折率2.00、消衰係数kは2.22であり、Ta酸化層3の屈折率nは2.23、消衰係数kは1.09であった。
同様にして作製した遮光膜30についてAES(オージェ電子分光法)による分析を行ったところ、Ta窒化層2のN含有量は16at%であった。Ta酸化層3のO含有量は58at%であった。この時点で、タンタルの高酸化層4の形成は確認できなかった。
さらに、この遮光膜30について、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて領域1μmの表面粗さ測定を行ったところ、表面粗さRmsは0.29nmであった。
なお、欠陥検査機 レーザーテック社製 M1350(レーザーテック社の商品名)で欠陥検査を行ってみたところ、欠陥を正常に識別できることが確認できた。
【0065】
作製したマスクブランクについて、自然酸化が進行する前(例えば成膜後1時間以内)に又は成膜後自然酸化が進行しない環境下で保管した後に、90℃の脱イオン水(DI water:deionized water)に120分間浸漬し、温水処理(表面処理)を実施した。
これにより、実施例1のマスクブランクを得た。
【0066】
実施例1のマスクブランクでは、遮光膜30の膜の表層に、タンタルの高酸化層4の形成が確認された。具体的には、図9に示すようなAES(オージェ電子分光法)の分析結果における遮光膜の深さ方向プロファイルによって、厚さ2nmの高酸化層(Ta層)4が確認された。この層の酸素(O)含有量は71.4〜67at%であった。
実施例1のマスクブランクは、遮光膜30の膜面における反射率(表面反射率)は、ArF露光光(波長 193nm)において25.1%であり表面処理前の表面反射率に対する変動は小さかった。基板1の遮光膜を形成していない面の反射率(裏面反射率)は、ArF露光光において、38.2%であり表面処理前と同じであった。また、ArF露光光における光透過率は0.1%であり表面処理前と同じであった。
さらに、この遮光膜30について、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて領域1μmの表面粗さ測定を行ったところ、表面粗さRmsは0.29nmであり、表面処理前と同じであった。
なお、欠陥検査機 レーザーテック社製 M1350(レーザーテック社の商品名)で欠陥検査を行ってみたところ、欠陥を正常に識別できることが確認できた。
【0067】
なお、図8に示すように、温水処理の前後で反射率(表面反射率)のスペクトルを比較したところ、250nm付近でわずかに(0.5%から1%程度)反射率が低下しており、温水処理によってタンタルの高酸化層4の改質(例えば化学量論(ストイキオメトリー)を向上)できることが推察される。
【0068】
(参考例1)<マスクブランクを大気中放置する参考例>
上記実施例1と同様の手順で遮光膜30を成膜し、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランクについて、25℃、40%RHの環境下で1000時間(約42日)放置し、自然酸化を進行させた。
以上により、参考例1のマスクブランクを得た。
参考例1のマスクブランクでは、遮光膜30の膜の表層に、タンタルの高酸化層4の形成が確認された。具体的には、AES(オージェ電子分光法)の分析結果における遮光膜の深さ方向プロファイルによって、厚さ1nmの高酸化層が確認された。この層について、オージェ電子分光分析(AES)で分析した結果、酸素(O)含有量は、透光性基板側から反対側から遮光層側に向かって71.4at%〜59at%と組成傾斜していた。
【0069】
(マスクブランクの評価)
実施例1および参考例1のマスクブランクと、実施例1と同様に遮光膜30を形成した直後(温水処理等の強制酸化処理を行なわず、自然酸化も進んでいない)のマスクブラン
ク(比較例1)をそれぞれ複数枚準備し、耐薬性の検証を行った。検証は、マスク作製等で広く用いられている酸処理と、アルカリ処理でそれぞれ行った。酸処理には、硫酸(HSO,濃度98wt%):過酸化水素(H,濃度30wt%)=4:1(体積比)の溶液を90℃に加熱して使用し、処理時間は30分とした。アルカリ処理は、水酸化アンモニウム(NHOH,濃度25wt%):過酸化水素(H,濃度30wt%):水(HO)=2:1:4(体積比)の溶液を室温(23℃)で使用し、処理時間は30分とした。
【0070】
その結果、比較例1のマスクブランクの遮光膜30は、酸処理に対しては、0.2nm弱の減膜が確認された。アルカリ処理に対しては、0.3nm程度の減膜が確認された。また、参考例1のマスクブランクの遮光膜30は、酸処理に対しては、同様に0.2nm弱の減膜が確認された。アルカリ処理に対しては、0.3nm弱の減膜が確認され、膜厚1nm程度で組成が傾斜している酸化不十分のタンタル高酸化層4ではほとんど効果がなかった。これに対して、実施例1のマスクブランクの遮光膜30は、酸処理およびアルカリ処理のいずれの薬液処理に対しても減膜が確認できず(検出下限以下)、タンタル高酸化層4が耐薬性向上に大きく寄与していることが分かる。
【0071】
(実施例2)<転写用マスクの製造:温水処理>
上記実施例1と同様の手順で遮光膜30を成膜し、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランクを用い、実施例2の転写用マスクを作製した。
最初に、150nmの電子線レジスト5を塗布し(図3(c)参照)、電子線描画及び現像を行い、レジストパターン5aを形成した(図3(d)参照)。
【0072】
次に、フッ素系(CHF)ガスを用いたドライエッチングを行い、Ta酸化層3のパターン3aを作製した(図3(e)参照)。続いて、塩素系(Cl)ガスを用いたドライエッチングを行いTa窒化層2のパターン2aを作製した。さらに,30%の追加エッチングを行い、基板1上に遮光膜のパターン30aを作製した(図3(f)参照)。
こうして作製した遮光膜パターンについて、断面のSEM観察を行ったところ、電子線レジストは約80nmの厚みで残存していた。
続いて、遮光膜パターン上のレジストを除去し、転写用マスクとしての機能を有する遮光膜パターン30aを得た(図3(g)参照)。
以上により、転写用マスク(バイナリマスク)を得た。
【0073】
次に、作製した転写用マスクについて、自然酸化が進行する前(例えば成膜後1時間以内)に又は成膜後自然酸化が進行しない環境下で保管した後に、90℃の脱イオン水(DI water)に120分間浸漬し、温水処理(表面処理)を実施した。
これにより、実施例2の転写用マスクを得た。
【0074】
実施例2の転写用マスクでは、遮光膜パターンの30aの表層に、タンタルの高酸化層4a,4b,4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM:scanning transmission electron microscope)による断面観察によって、厚さ3nmの高酸化層4a,4b,4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してAES(オージェ電子分光法)の分析も行った。分析結果の遮光膜の深さ方向プロファイルでTa酸化層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素(O)含有量が71.4〜67at%であることが確認された。一方、パターン側壁部分についてはAES分析による酸素含有量の確認が困難である。このため、STEMによる観察の際にEDX(エネルギー分散型X線分光)分析を用い、先に分析した遮光膜パターン30aの表層の高酸化層4aのAES分析の結果と比較し、酸素含有量が、高酸化層4aと高酸化層4b,4cとで同じであることが確認された。
【0075】
(実施例3)<転写用マスクの製造:オゾン処理>
上記実施例2と同様の手順で実施例1のマスクブランク(自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランク)の遮光膜30に遮光膜パターン30aを形成したものであり、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後であり、温水処理をほどこしていない転写用マスクを用い、オゾン処理によって、実施例3の転写用マスクを作製した。
オゾン処理(表面処理)は、オゾン濃度の50ppmで温度が25℃のオゾン含有水を用い、処理時間15分の条件で行った。
これにより、実施例3の転写用マスクを得た。
【0076】
実施例3の転写用マスクでは、遮光膜パターンの30aの表層に、タンタルの高酸化層4a,4b,4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察によって、厚さ3nmの高酸化層4a,4b,4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してAES(オージェ電子分光法)の分析を行った。分析結果の遮光膜の深さ方向プロファイルでTa酸化層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素(O)含有量が71.4〜67at%であることが確認された。一方、パターン側壁部分についてはAES分析による酸素含有量の確認が困難である。このため、STEMによる観察の際にEDX(エネルギー分散型X線分光)分析を用い、先に分析した遮光膜パターン30aの表層の高酸化層4aのAES分析の結果と比較し、酸素含有量が、高酸化層4aと高酸化層4b,4cとで同じであることが確認された。
【0077】
(実施例4)<転写用マスクの製造:加熱処理>
上記実施例2と同様の手順で実施例1のマスクブランク(自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランク)の遮光膜30に遮光膜パターン30aを形成したものであり、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後であり、温水処理をほどこしていない転写用マスクを用い、加熱処理によって、実施例4の転写用マスクを作製した。
加熱処理(表面処理)は、大気中で140℃の加熱温度で、処理時間30分の条件で行った。
これにより、実施例4の転写用マスクを得た。
【0078】
実施例4の転写用マスクでは、遮光膜パターンの30aの表層に、タンタルの高酸化層4a,4b,4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察によって、厚さ3nmの高酸化層4a,4b,4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してAES(オージェ電子分光法)の分析も行った。分析結果の遮光膜の深さ方向プロファイルでTa酸化層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素(O)含有量が71.4〜67at%であることが確認された。一方、パターン側壁部分についてはAES分析による酸素含有量の確認が困難である。このため、STEMによる観察の際にEDX(エネルギー分散型X線分光)分析を用い、先に分析した遮光膜パターン30aの表層の高酸化層4aのAES分析の結果と比較し、酸素含有量が、高酸化層4aと高酸化層4b,4cとで同じであることが確認された。
【0079】
(実施例5)<転写用マスクの製造:紫外線照射処理>
上記実施例2と同様の手順で実施例1のマスクブランク(自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランク)の遮光膜30に遮光膜パターン30aを形成したものであり、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後であり、温水処理をほどこしていない転写用マスクを用い、紫外線照射処理によって、実施例5の転写用マスクを作製した。
紫外線照射処理(表面処理)は、遮光膜パターン30の表面に対して、50mJ/cmのArFエキシマレーザー光を1cm/secの走査速度で全面を走査することで行った。
これにより、実施例5の転写用マスクを得た。
【0080】
実施例5の転写用マスクでは、遮光膜パターンの30aの表層に、タンタルの高酸化層4a,4b,4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察によって、厚さ3nmの高酸化層4a,4b,4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してAES(オージェ電子分光法)の分析も行った。分析結果の遮光膜の深さ方向プロファイルでTa酸化層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素(O)含有量が71.4〜67at%であることが確認された。一方、パターン側壁部分についてはAES分析による酸素含有量の確認が困難である。このため、STEMによる観察の際にEDX(エネルギー分散型X線分光)分析を用い、先に分析した遮光膜パターン30aの表層の高酸化層4aのAES分析の結果と比較し、酸素含有量が、高酸化層4aと高酸化層4b,4cとで同じであることが確認された
【0081】
(実施例6)<転写用マスクの製造:酸素プラズマ処理>
上記実施例2と同様の手順で実施例1のマスクブランク(自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランク)の遮光膜30に遮光膜パターン30aを形成したものであり、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後であり、温水処理をほどこしていない転写用マスクを用い、酸素プラズマ処理によって、実施例6の転写用マスクを作製した。
酸素プラズマ処理(表面処理)は、酸素プラズマアッシングを行うためのレジスト剥離装置に、転写用マスクを導入して行い、処理時間5分の条件で行った。
これにより、実施例6の転写用マスクを得た。
【0082】
実施例6の転写用マスクでは、遮光膜パターンの30aの表層に、タンタルの高酸化層4a,4b,4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察によって、厚さ3nmの高酸化層4a,4b,4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してAES(オージェ電子分光法)の分析も行った。分析結果の遮光膜の深さ方向プロファイルでTa酸化層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素(O)含有量が71.4〜67at%であることが確認された。一方、パターン側壁部分についてはAES分析による酸素含有量の確認が困難である。このため、STEMによる観察の際にEDX(エネルギー分散型X線分光)分析を用い、先に分析した遮光膜パターン30aの表層の高酸化層4aのAES分析の結果と比較し、酸素含有量が、高酸化層4aと高酸化層4b,4cとで同じであることが確認された。
【0083】
(参考例2)<転写用マスクを大気中放置する参考例>
上記実施例2と同様の手順で実施例1のマスクブランク(自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランク)の遮光膜30に遮光膜パターン30aを形成したものであり、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後であり、温水処理をほどこしていない転写用マスクを用い、自然酸化によって、参考例2の転写用マスクを作製した。
具体的には、転写用マスクを25℃、40%RHの環境下で1000時間(約42日)放置し、自然酸化を進行させた。
これにより、参考例2の転写用マスクを得た。
【0084】
参考例2の転写用マスクでは、遮光膜パターンの30aの表層に、タンタルの高酸化層4a,4b,4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察によって、厚さ1nm程度の高酸化層4a,4b,4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してAES(オージェ電子分光法)の分析も行った。分析結果の遮光膜の深さ方向プロファイルでTa酸化層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素(O)含有量が、透光性基板側から反対側から遮光層側に向かって71.4〜59at%と組成傾斜していた。
【0085】
(転写用マスクの評価)
実施例2から実施例6および参考例2の転写用マスクと、実施例2と同様の手順で実施例1のマスクブランク(自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後のマスクブランク)の遮光膜30に遮光膜パターン30aを形成したものであり、自然酸化が進行する前(例えば、転写パターン形成後、1時間以内)の、または自然酸化が進行しない環境下で保管した後であり、温水処理をほどこしていない転写用マスク(比較例2)と、をそれぞれ複数枚準備し、耐薬性の検証を行った。検証は、マスク洗浄等で広く用いられている酸処理と、アルカリ処理でそれぞれ行った。酸処理には、硫酸(HSO,濃度98wt%):過酸化水素(H,濃度30wt%)=4:1(体積比)の溶液を90℃に加熱して使用し、処理時間は30分とした。アルカリ処理は、水酸化アンモニウム(NHOH,濃度25wt%):過酸化水素(H,濃度30wt%):水(HO)=2:1:4(体積比)の溶液を室温(23℃)で使用し、処理時間は30分とした。
【0086】
その結果、比較例2の転写用マスクの遮光膜パターン30aは、酸処理に対しては、0.2nm弱の減膜が確認された。アルカリ処理に対しては、0.3nm程度の減膜が確認された。また、参考例2の転写用マスクの遮光膜パターン30aは、酸処理に対しては、同様に0.2nm弱の減膜が確認された。アルカリ処理に対しては、0.3nm弱の減膜が確認され、膜厚1nm程度で組成が傾斜している酸化不十分のタンタル高酸化層4a,4b,4cではほとんど効果がなかった。これに対して、実施例2から実施例6の各転写用マスクの遮光膜パターン30aは、酸処理およびアルカリ処理のいずれの薬液処理に対しても減膜が確認できず(検出下限以下)、タンタル高酸化層4a,4b,4cが耐薬性向上に大きく寄与していることが分かる。
【0087】
次に、同様に実施例2から実施例6、参考例2および比較例2の転写用マスクをそれぞれ準備し、パルス周波数300Hz、パルスエネルギー16mJ/cm/pulseのArFエキシマレーザー(波長193nm)を積算照射量30kJ/cmとなるように連続照射した。ここで、照射量30kJ/cmというのは、転写用マスクを用いて、ウェハ112,500枚のレジスト膜に対して、転写パターンを露光転写したときに受ける照射量に相当する。
【0088】
実施例2から実施例6で作製した転写用マスク、すわなち、転写パターンの自然酸化が進行する前(例えば転写パターン形成後1時間以内)に又は転写パターン形成後自然酸化が進行しない環境下で保管した後に、転写パターンに対して、温水処理、オゾン処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、紫外線照射処理、酸素プラズマによる表面処理の各処理を施した場合は、下記図4、図5および図6、図7で説明するArF照射耐性が得られた。
【0089】
図4、図5および図6、図7は、実施例2で作製した転写用マスクにおける転写パターンの断面についてArF照射前後で観察した様子を示す走査透過電子顕微鏡(STEM)写真である。図4、図5は、試料を透過した電子線を用いて結像する明視野(Bright-field:BF)STEM像(倍率:500,000倍)であり、図4は、ArFエキシマレーザー未照射のときの転写用マスクの断面であり、図5はArFエキシマレーザーを50%RH環境下で30kJ/cm照射したときの転写用マスクの断面である。図6、図7は、試料から散乱された電子線を用いて結像する暗視野(Dark-field:DF)STEM像(高倍像:500,000倍)を示し、試料の組成を反映したコントラストが得られる組成像の観察が可能である。図6は、ArFエキシマレーザー未照射のときの転写用マスクの断面であり、図4と同じ転写用マスクの暗視野STEM像である。図7は、ArFエキシマレーザーを50%RH環境下で30kJ/cm照射したときの転写用マスクの断面であり、図5と同じ転写用マスクの暗視野STEM像である。
【0090】
図4、図5の明視野STEM像において、黒色に近い部分が遮光膜パターン30aであり、その下の遮光膜パターン30aよりも薄い色のパターンは、透光性基板1である。遮光膜パターン30aの側壁形状がよりわかりやすいように、透光性基板1をエッチングでわざと掘り込んである。図6、図7の暗視野STEM像は、遮光膜パターン30aのTa酸化層3のパターン3aとTa窒化層2のパターン2aがより視認しやすくなっている。図4、図5および図6、図7に示すように、図4および図6のArF未照射(リファレンス)と比べ、図5および図7のArFエキシマレーザー30kJ/cm照射後で差異(線幅太りや、反射防止層の表層の変化、光学濃度の変化、などの劣化)は認められない。実施例3から実施例6の転写用マスクに対して同様の検証を行ったが、実施例2と同様に良好な結果であった。比較例2や参考例2の転写用マスクに対しても同様の検証を行ったが、実施例2から実施例6ほどの良好な結果とはならなかった。
このように、本実施例の転写用マスク(バイナリマスク)及びマスクブランク(バイナリマスクブランク)は、200nm以下の短波長の露光光源による累積照射に対して、極めて高い耐光性を備えていることがわかる。
【0091】
(比較例3)<MoSi遮光膜での比較例>
縦・横の寸法が、約152mm×152mmで、厚さが6.35mmの合成石英からなる基板1上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、遮光膜30として、MoSiN膜(遮光層)2、MoSiON膜(表面反射防止層)3、を順次形成した(説明の便宜のため代用する図3(a)、(b)参照)。
【0092】
具体的には、MoとSiとの混合ターゲット(Mo:Si=21at%:79at%のターゲット)を用い、Arガス雰囲気モリブデン、シリコン、窒素からなる膜(Mo:9原子%、Si:72.8原子%、N:18.2原子%)を52nmの膜厚で形成し、MoSiN膜(遮光層)を形成した。
次いで、Mo:Si=12mol%:88mol%のターゲットを用い、ArとOとNの混合ガス雰囲気で、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:7.4原子%、Si:52.3原子%、O:16.1原子%、N:24.2原子%)を8nmの膜厚で形成し、MoSiON膜(表面反射防止層)を形成した。
遮光膜の合計膜厚は60nmとした。遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、比較例3のバイナリマスクブランクを作製した。
【0093】
次に、上記のバイナリマスクブランクを用いてバイナリマスクを作製した。
まず、マスクブランク上に、電子線描画用化学増幅型ポジレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)5を形成した(同図(c)参照)。
次に上記マスクブランク上に形成されたレジスト膜5に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン5aを形成した(同図(d)参照)。
【0094】
次に、上記レジストパターン5aをマスクとして、MoSiN膜(遮光層)2とMoSiON膜(表面反射防止層)3の2層構造の遮光膜30のエッチングを行って、遮光膜パターン30aを形成した(同図(e)、(f)参照)。ドライエッチングガスとして、SFとHeの混合ガスを用いた。
次に、残存するレジストパターンを剥離して、本実施例のバイナリマスクを得た(同図(g)参照)。
なお、遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいてマスクブランク製造時と殆ど変化はなかった。
【0095】
得られたバイナリマスクに対して、パルス周波数300Hz、パルスエネルギー16mJ/cm/pulseのArFエキシマレーザー総積算照射量30kJ/cmとなるように連続照射した。ここで、照射量30kJ/cmというのは、転写用マスクを用いて、ウェハ112,500枚のレジスト膜に対して、転写パターンを露光転写したときに受ける照射量に相当する。
【0096】
得られた本比較例の位相シフトマスクに対して、ArFエキシマレーザーを総照射量30kJ/cmとなるように連続照射した。照射後の遮光膜の光学濃度(OD)を測定したところ、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0未満であり、光学濃度の低下がみられた。また、光半透過膜パターンの断面を走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いて詳しく観察したところ、変質層が確認され、それによる線幅の太り(CD変化量)も15nmであることが認められた。
また、実施例1と同様に、マスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食が確認された。
さらに、照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、Mo析出によるガラス基板や膜上への堆積物が確認された。
【0097】
(実施例7)<マスクブランクの製造:加熱処理>
縦・横の寸法が、約152mm×152mmで、厚さが6.35mmの合成石英からなる基板1上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用いて、厚み42nmのTa窒化層2を成膜した。Ta窒化層2の成膜は、スパッタターゲットにTaを用い、XeとNの混合ガス雰囲気下で、反応性スパッタリングによって行われた。(図3(a)参照)。次に、Ta窒化層2を成膜した基板1をスパッタ装置内に保持したまま、厚み9nmのTa酸化層3を成膜した。Ta酸化層3の成膜は、スパッタターゲットにTaを用い、ArとOの混合ガス雰囲気下で、反応性スパッタリングによって行われた。(図3(b)参照)。
【0098】
上記のようにして、Ta窒化層2およびTa酸化層3からなる遮光膜30を基板1上に作製した。この遮光膜30の膜面における反射率(表面反射率)は、ArF露光光(波長 193nm)において24.8%であった。基板1の遮光膜を形成していない面の反射率(裏面反射率)は、ArF露光光において、37.8%であった。また、ArF露光光における光透過率は0.1%であった。この遮光膜30について、AES(オージェ電子分光法)の分析をおこなったところ、Ta窒化層2のN含有量は16at%であった。Ta酸化層3のO含有量は、58at%であった。次に、作製したマスクブランクに対し、自然酸化が進行する前(例えば成膜後1時間以内)に又は成膜後自然酸化が進行しない環境下で保管した後に、大気中で200℃の加熱温度で、処理時間5分の条件で、加熱処理(表面処理)を行った。
【0099】
製造したマスクブランクに対し、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察を行った。図11に撮影した遮光膜30の暗視野像を示す。この暗視野像から遮光膜30の表層に厚さ3nmの高酸化層4が存在することを確認することができた。また、STEMによる観察で使用した試料を用い、遮光膜30の断面の表面から、断面に対して垂直方向に電子線(ビーム径が約1nmの収束ビーム)を照射し、電子線回折像を取得した。図12に、分析点1(図11で「□1」と示されている箇所)、分析点2(図11で「□2」と示されている箇所)、分析点3(図11で「□3」と示されている箇所)の各電子線回折像を示す。分析点1は、高酸化層4の領域であるが、電子線回折像からアモルファス構造であることが判明した。分析点2は、Ta酸化層3の領域であるが、電子線回折像からアモルファス構造と微結晶構造が混在した状態であることが判明した。分析点3は、Ta窒化層2の領域であるが、電子線回折像から微結晶構造であることが判明した。
【0100】
次に、遮光膜30に対し、XPS分析(X線光電子分光分析)を行った。遮光膜30のTa4fのナロースペクトルを図13に示す。この結果から、遮光膜30の最表層におけるナロースペクトルでは、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置で高いピークが見られ、層中にTa結合の存在比が高いことが分かる。また、遮光膜30の表面から1nmの深さの層(高酸化層4の領域)におけるナロースペクトルでは、一見するとピークが1つに見える。しかし、これは、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置でのピークと、Taの束縛エネルギー(21.0eV)のピークが重なった結果、このようなスペクトルになったものである。また、スペクトルのピークもかなりTa寄りであり、最表層ほどではないが、Ta結合の存在比が高いといえる。
【0101】
一方、遮光膜30の表面から5nmの深さの層(Ta酸化層3の領域)におけるナロースペクトルも一見するとピークが1つに見える。これも、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置でのピークと、Taの束縛エネルギー(21.0eV)のピークが重なった結果である。しかし、スペクトルのピークがTa側に少し寄っており、Ta結合の存在比は高くないといえる。なお、遮光膜30の表面から15nmの深さの層(Ta窒化層2の領域)におけるナロースペクトルは、Taの束縛エネルギー(21.0eV)の位置に近いところにピークが存在する。これは、Ta窒化層中の窒素含有量が16at%と比較的窒化度合が低く、Taの束縛エネルギーに近いためと類推される。このことは、TaN(N:50at%)の束縛エネルギーが23.0eV、TaN(N:約33at%)の束縛エネルギーが22.6eVと窒素含有量が低下するに従い、Taの束縛エネルギーに近づいていくことからも明らかである。
【0102】
以上のように、実施例1の遮光膜30に対するAES分析の結果と、実施例7の遮光膜30に対するXPS分析の結果から、Ta酸化層3、高酸化層4の内部、高酸化層4の最表層は、ともに酸素含有量が60at%以上であり、かつ表面に近づくにつれて膜中の酸素含有量が増加している。さらに、表面に近づくにつれて、Ta4fのナロースペクトルのピークが高エネルギー側にシフトしており、膜中のTa結合の存在比が高くなることも明らかである。
【0103】
(実施例8〜12)<転写用マスクの製造、半導体デバイスの製造>
上記実施例7と同様の手順で遮光膜30を成膜し、大気中で200℃の加熱温度で、処理時間5分の条件で、加熱処理(表面処理)を行った複数枚のマスクブランクを用い、実施例8〜12の転写用マスクを作製した。
最初に、100nmの電子線レジスト5を塗布し(図3(c)参照)、電子線描画及び現像を行い、DRAM hp45nmの回路パターンを有するレジストパターン5aを形成した(図3(d)参照)。
【0104】
次に、フッ素系(CF)ガスを用いたドライエッチングを行い、Ta酸化層3のパターン3aを作製した(図3(e)参照)。続いて、塩素系(Cl)ガスを用いたドライエッチングを行いTa窒化層2のパターン2aを作製した。さらに,40%の追加エッチングを行い、基板1上に遮光膜のパターン30aを作製した(図3(f)参照)。
続いて、遮光膜パターン30a上のレジストパターン5aを除去し、転写用マスクとしての機能を有する遮光膜パターン30aを得た(図3(g)参照)。
以上により、複数枚の転写用マスク(バイナリマスク)を得た。
【0105】
次に、作製した転写用マスクについて、実施例2と同様の温水処理(表面処理)を行った。これにより、実施例8の転写用マスクを得た。作製した別の転写用マスクについて、実施例3と同様のオゾン処理を行った。これにより、実施例9の転写用マスクを得た。作製した別の転写用マスクについて、実施例4と同様の加熱処理を行った。これにより、実施例10の転写用マスクを得た。作製した別の転写用マスクについて、実施例5と同様の紫外線照射処理を行った。これにより、実施例11の転写用マスクを得た。作製した別の転写用マスクについて、実施例6と同様の酸素プラズマ処理を行った。これにより、実施例12の転写用マスクを得た。
【0106】
作製した実施例8〜12の各転写用マスクは、遮光膜パターンの30aの表層に、タンタルの高酸化層4a,4b,4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM:scanning transmission electron microscope)による断面観察によって、厚さ3nmの高酸化層4a,4b,4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してAES(オージェ電子分光法)の分析も行った。分析結果の遮光膜の深さ方向プロファイルでTa酸化層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素(O)含有量が71.4〜67at%であることが確認された。一方、遮光膜パターン30aの側壁部分については、STEMによる観察の際にEDX(エネルギー分散型X線分光)分析を用い、先に分析した遮光膜パターン30aの表層の高酸化層4aのAES分析の結果と比較した。その結果、酸素含有量が、高酸化層4aと高酸化層4b,4cとで同じであることが確認された。
【0107】
さらに、実施例8〜12の各転写用マスクの遮光膜パターン30aに対し、マスクブランクに対して行った場合と同様のXPS分析(X線光電子分光分析)を行った。具体的には、高酸化層4a、Ta酸化層3のパターン3a、Ta窒化層2のパターン2aのそれぞれのTa4fナロースペクトルを取得し、比較を行った。その結果、Ta酸化層3のパターン3a、高酸化層4aは、酸素含有量が60at%以上であり、かつ表面に近づくにつれて膜中の酸素含有量が増加していることが確認された。さらに、遮光膜パターン30aの表面に近づくにつれて、Ta4fのナロースペクトルのピークが高エネルギー側にシフトしており、膜中のTa結合の存在比が高くなることも確認された。
【0108】
次に、同様の手順で作製された実施例8〜12の各転写用マスクを用いて、転写対象物である半導体ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンを露光転写する工程を行った。露光装置には、ArFエキシマレーザーを光源とする輪帯照明(Annular Illumination)が適用された液浸方式のものを用いた。具体的には、露光装置のマスクステージに、実施例8〜12の各転写用マスクをセットし、各半導体ウェハ上のArF液浸露光用のレジスト膜に対して、露光転写をそれぞれ行った。露光後の各レジスト膜に対して、所定の現像処理を行い、レジストパターンをそれぞれ形成した。さらに、各レジストパターンを用いて、各半導体ウェハ上にDRAM hp45nmの回路パターンをそれぞれ形成した。
【0109】
得られた各半導体ウェハ上の回路パターンに対し、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察をそれぞれ行った。その結果、実施例8〜12の転写用マスクを用いて露光転写を行った、いずれの半導体ウェハも、DRAM hp45nmの回路パターンの仕様を十分に満たすことができていた。
【0110】
(実施例13)<マスクブランクの製造:加熱処理>
縦・横の寸法が、約152mm×152mmで、厚さが6.35mmの合成石英からなる基板1上に、DCマグネトロンスパッタ装置を用いて、厚み47nmのTaBN層(遮光層)2を成膜した。TaBN層2の成膜は、スパッタターゲットにTaとBの混合ターゲット(at%比 Ta:B=80:20)を用い、XeとNの混合ガス雰囲気下で、反応性スパッタリングによって行われた。(図3(a)参照)。次に、TaBN層2を成膜した基板1をスパッタ装置内に保持したまま、厚み10nmのTaBO層(表面反射防止層)3を成膜した。TaBO層3の成膜は、スパッタターゲットに同じくTaとBの混合ターゲットを用い、ArとOの混合ガス雰囲気下で、反応性スパッタリングによって行われた。(図3(b)参照)。
【0111】
上記のようにして、TaBN層2とTaBO層3からなる遮光膜30を基板1上に作製した。この遮光膜30の膜面における反射率(表面反射率)は、ArF露光光(波長 193nm)において18.5%であった。基板1の遮光膜を形成していない面の反射率(裏面反射率)は、ArF露光光において、33.9%であった。また、ArF露光光における光透過率は0.1%であった。この遮光膜30について、XPS(X線光電子分光分析)の分析をおこなったところ、TaBN2のN含有量は15at%であった。TaBO3のO含有量は、61at%であった。XPS分析(X線光電子分光分析)の分析結果である遮光膜30の深さ方向プロファイルを図14に示す。次に、作製したマスクブランクに対し、自然酸化が進行する前(例えば成膜後1時間以内)に又は成膜後自然酸化が進行しない環境下で保管した後に、大気中で200℃の加熱温度で、処理時間5分の条件で、加熱処理(表面処理)を行った。製造したマスクブランクに対し、走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察を行ったところ、暗視野像から遮光膜30の表層に厚さ3nmの高酸化層4が存在することを確認することができた。
【0112】
XPS分析(X線光電子分光分析)の分析結果である遮光膜30のTa4fのナロースペクトルを図15〜図17に示す。図15は、遮光膜30の最表層でのTa4fのナロースペクトルである。この最表層(高酸化層4)のナロースペクトルでは、Taの束縛エネルギーの位置で高いピークが見られ、層中にTa結合の存在比が高いことが分かる。図16は、遮光膜30の表面から深さ方向に行うArイオンエッチングを1.5minエッチング(図14参照)した深さ(TaBO層3)でのTa4fのナロースペクトルである。このTaBO層3のナロースペクトルは、Taの束縛エネルギーの位置でのピークと、Taの束縛エネルギーのピークが重なっている。最表層のナロースペクトルに比べ、スペクトルのピークがTa側に少し寄っており、Ta結合の存在比は高くないといえる。図17は、遮光膜30の表面から深さ方向に行うArイオンエッチングを11minエッチング(図14参照)した深さ(TaBN層2)でのTa4fのナロースペクトルである。このTaBN層2のナロースペクトルは、Taの束縛エネルギーの位置でのピークが見当たらず、Taの束縛エネルギー(21.0eV)の位置に近いところにピークが存在する。
【0113】
以上のように、実施例13の遮光膜30に対するXPS分析の結果から、膜中にホウ素を含有する遮光膜30であっても、TaBO層3、高酸化層4の最表層は、ともに酸素含有量が60at%以上であり、かつ表面に近づくにつれて膜中の酸素含有量が増加している。さらに、表面に近づくにつれて、Ta4fのナロースペクトルのピークが高エネルギー側にシフトしており、膜中のTa結合の存在比が高くなることも明らかである。
【符号の説明】
【0114】
1 透光性基板
2 遮光層
3 表面反射防止層
4 高酸化層
4a、4b、4c 高酸化層
5 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用マスクを作製するために用いられるものであり、透光性基板上に遮光膜を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜は、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜の透光性基板側とは反対側の表層に層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されていることを特徴としたマスクブランク。
【請求項2】
前記高酸化層は、層中の酸素含有量が68at%以上であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記高酸化層は、厚さが1.5nm以上4nm以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜におけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記遮光膜は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記遮光膜は、透光性基板側から少なくとも遮光層および表面反射防止層が順に積層した構造を有し、
前記高酸化層は、前記表面反射防止層の遮光層側とは反対側の表層に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、前記高酸化層の層中の酸素含有量よりも少ないことを特徴とする請求項6記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、50at%以上であることを特徴とする請求項7記載のマスクブランク。
【請求項9】
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記表面反射防止層におけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項10】
前記遮光層は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項11】
前記遮光膜は、膜厚が60nm未満であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項12】
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクであって、
前記遮光膜パターンは、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜パターンの透光性基板側とは反対側の表層と前記遮光膜パターンの側壁の表層に層中の酸素含有量が60at%以上である高酸化層が形成されていることを特徴とした転写用マスク。
【請求項13】
前記高酸化層は、層中の酸素含有量が68at%以上であることを特徴とする請求項12記載の転写用マスク。
【請求項14】
前記高酸化層は、厚さが1.5nm以上4nm以下であることを特徴とする請求項12または13のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項15】
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項16】
前記遮光膜パターンは、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項17】
前記遮光膜パターンは、透光性基板側から少なくとも遮光層および表面反射防止層が順に積層した構造を有することを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項18】
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、前記高酸化層の層中の酸素含有量よりも少ないことを特徴とする請求項17記載の転写用マスク。
【請求項19】
前記表面反射防止層の層中の酸素含有量は、50at%以上であることを特徴とする請求項18記載の転写用マスク。
【請求項20】
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記表面反射防止層におけるにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項21】
前記遮光層は、さらに窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項17から20のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項22】
前記遮光膜パターンは、膜厚が60nm未満であることを特徴とする請求項12から21のいずれかに記載の転写用マスク。
【請求項23】
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して温水またはオゾン水による処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程とを有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項24】
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素を含有する気体中で加熱処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項25】
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素を含有する気体中で紫外線照射処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項26】
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンに対して酸素プラズマによる表面処理を行って酸素含有量が60at%以上である高酸化層を前記遮光膜パターンの表層に形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項27】
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクの製造方法であって、
前記透光性基板上にタンタルを主な金属成分として含有する材料からなる遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜にエッチングを行って前記遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンの表面に酸素含有量が60at%以上である高酸化層をスパッタ法によって形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項28】
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする請求項23から27のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
【請求項29】
請求項12から22のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項30】
請求項23から28のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項31】
転写用マスクを作製するために用いられるものであり、透光性基板上に遮光膜を備えるマスクブランクであって、
前記遮光膜は、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜の透光性基板側とは反対側の表層に高酸化層が形成されており、
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く前記遮光膜におけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とするマスクブランク。
【請求項32】
透光性基板上に遮光膜パターンを備える転写用マスクであって、
前記遮光膜パターンは、タンタルを主な金属成分として含有する材料からなり、
前記遮光膜パターンの透光性基板側とは反対側の表層と前記遮光膜パターンの側壁の表層に高酸化層が形成されており、
前記高酸化層のTa結合の存在比率は、前記高酸化層を除く遮光膜パターンにおけるTa結合の存在比率よりも高いことを特徴とする転写用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−227461(P2011−227461A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37970(P2011−37970)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】