説明

マンドレル処理液の攪拌供給装置

【課題】簡素な構成によって、マンドレル処理液の大気からの吸水を防止しつつ、攪拌して成分の偏りをなくしてマンドレルの表面に供給可能とするマンドレル処理液の攪拌供給装置を提供する。
【解決手段】乾燥剤Dを内蔵し、密閉蓋2bに立設された通気部5を通過して乾燥された大気Aを気密容器2の内部に流入させて、気密容器2の内部を略大気圧に保持し、収容した吸水性を有するマンドレル処理液Lを攪拌手段3で攪拌して、微粒子等の成分を分散させて偏りをなくして、供給管4bを通じて供給ポンプ4aで圧送してマンドレル9の表面に滴下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンドレル処理液の攪拌供給装置に関し、さらに詳しくは、簡素な構成によって、吸水性のあるマンドレル処理液の大気からの吸水を防止しつつ、攪拌して成分の偏りをなくしてマンドレルの表面に供給可能とするマンドレル処理液の攪拌供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムホース等のホース類の製造方法として、芯材となるマンドレルの外周に順次、層状の構成部材を巻付けて、未加硫のゴムホースを形成し、その最外周に樹脂被覆部材を押出して被覆してから加硫する方法が知られている。加硫後は、樹脂被覆部材をホースからはく離させて取り除き、ホースの一端側から水圧をかけて、マンドレルをホースから抜き取るようにしている。この際に、ホースの内周面とマンドレルの表面(外周面)と間の摩擦抵抗が大きいと、ホースの内周面に傷等を生じさせたり、マンドレルの表面がはく離してホースの内周面に付着する等の不具合が生じる。そこで、ホースの製造には、マンドレルの表面に離型剤となるマンドレル処理液を塗布し、乾燥させたもの使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
マンドレル処理液は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の微粒子を含んだケトン系溶液等の吸水性の高い離型剤で、吸水することでゲル化する性質がある。したがって、塗布工程において、マンドレル処理液を大気に開放された容器に収容しておくと大気中の水分を吸収してゲル化する。ゲル化したマンドレル処理液がホースに塗布され、製造工程で加硫されると、ゲル化したマンドレル処理液の水分がガス化し、そのガスは、外部に流出しようとして、最も強度の低い部分に集中し、例えば、ホース内周面にピンホールを生じさせるという問題があった。
【0004】
単に大気中の水分とマンドレル処理液とを遮断するだけであれば、マンドレル処理液を密閉容器に収容すればよいが、十分な離型効果をすべての塗布領域で発揮させるには、成分の偏りがないマンドレル処理液をマンドレルの表面に供給する必要があり、常に、マンドレル処理液を攪拌して微粒子等の含有成分を分散させたものを供給しなければならない。
【0005】
以上のようにマンドレル処理液を大気中の水分から遮断してゲル化を防止しつつ、常に攪拌するには、装置が大掛かりで複雑となるという問題があった。
【特許文献1】特開平10−15458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡素な構成によって、吸水性のあるマンドレル処理液の大気からの吸水を防止しつつ、攪拌して成分の偏りをなくしてマンドレルの表面に供給可能とするマンドレル処理液の攪拌供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のマンドレル処理液の攪拌供給装置は、吸水性のあるマンドレル処理液をマンドレル表面に供給するマンドレル処理液の攪拌供給装置であって、前記マンドレル処理液を収容する気密容器と、該気密容器に収容されたマンドレル処理液を攪拌する攪拌手段と、該攪拌手段で攪拌されたマンドレル処理液を前記気密容器の外部に圧送し、マンドレル表面に供給する供給手段と、乾燥剤を内蔵して該乾燥剤で乾燥させた大気を前記気密容器の内部に流通させる通気部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマンドレル処理液の攪拌供給装置によれば、気密容器に収容された吸水性を有するマンドレル処理液を攪拌手段で攪拌し、成分を分散させて偏りをなくし、供給手段で成分の偏りのないマンドレル処理液を気密容器の外部に圧送して、マンドレル表面に供給することができる。
【0009】
このマンドレル処理液の攪拌は、乾燥剤を内蔵した通気部を備えた気密容器の内部で行われるので、吸水性のあるマンドレル処理液が大気から吸水してゲル化することを防止できる。
【0010】
通気部は、内蔵した乾燥剤で大気を乾燥させて気密容器の内部に流通させるので、気密容器の内部は常にほぼ大気圧に保たれる。したがって、気密容器を耐圧仕様にする必要がなく、また、マンドレル処理液を圧送する供給手段に過度の負荷が生じることもないので、簡素な構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のマンドレル処理液の攪拌供給装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に攪拌供給装置1の全体構成を例示し、図2にその使用状態を例示する。図2では、マンドレル処理液Lが塗布されたマンドレル9を斜線を付して示している。この攪拌供給装置1は、有底ガラス容器2aと密閉蓋2bとからなる気密容器2の内部にマンドレル処理液Lを収容している。
【0013】
マンドレル処理液Lは、ポリテトラフルオロエチレン等の微粒子を含有成分とするケトン系溶液の離型剤であり、吸水性が高く、吸水することでゲル化する性質を有している。したがって、大気Aに曝して放置すると大気Aの水分を吸収してゲル化する。また、成分に微粒子等を含むので、常に攪拌しなければ成分に偏りが生じる。
【0014】
有底ガラス容器2aは、マンドレル処理液Lの攪拌体駆動部3bの上に載置され、有底ガラス容器2aの内部には、磁性を有する攪拌体3aが配置されている。攪拌体3aは、攪拌体駆動部3bによって非接触状態で回転駆動されて、マンドレル処理液Lを攪拌する。ここでは、攪拌手段3が、攪拌体3aと攪拌体駆動部3bとで構成される、いわゆるマグネチックスターラとなっているので、気密容器2の内部の気密性を保つことが容易であるとともに気密容器2の内部を広く使用でき、取扱い性の向上、装置のコンパクト化が図られている。
【0015】
攪拌手段3は、これに限定されず、例えば、密閉蓋2bを挿通して気密容器2の外部から内部に回転駆動軸を立設し、先端部に取り付けた攪拌翼を気密容器2の外部の駆動モータ等で回転させる構成の攪拌手段3を用いることもできる。ただし、この構成の場合には、密閉蓋2bの回転駆動軸を挿通させる部分に気密シールを設ける必要がある。
【0016】
密閉蓋2bには3つの円筒部S1〜S3が立設され、その内の1つの円筒部S1は液補充部6となっている。液補充部6の先端を封止するゴム栓を外すと、気密容器2にマンドレル処理液Lが補充できる構造となっている。中央部の円筒部S2には、先端を封止するゴム栓を挿通し、気密容器2の内部と外部とを連通する供給管4bが設けられている。供給管4bには供給ポンプ4aが接続されて、気密容器2に収容されたマンドレル処理液Lをマンドレル9の表面に供給する供給手段4となっている。
【0017】
残りの円筒部S3には、先端を封止するゴム栓を挿通し、気密容器2の内部と外部とを連通する通気部5が設けられている。通気部5には乾燥剤Dが内蔵されており、乾燥剤Dの中を通過して乾燥された大気Aが、気密容器2の内部に流通可能となっている。乾燥剤Dとしては、シリカゲル等の一般的なものを用いればよく、乾燥剤Dの吸水が飽和状態になった際には通気部5全体を交換して、新たな乾燥剤Dを内蔵した通気部5を取り付ける。通気部5の乾燥剤Dの下方部には、通気調整弁5aが設けられ、乾燥剤Dで乾燥されて気密容器2の内部に流入する大気Aの量が弁操作により調整可能となっている。
【0018】
このように、マンドレル処理液Lは、気密容器2の内部で攪拌手段3によって常に攪拌されるとともに、大気Aの水分とほぼ遮断された状態となっているので、大気Aの水分を吸収することなく、ゲル化を防止することができる。
【0019】
図2に示すように、攪拌されて成分の偏りがないマンドレル処理液Lは、供給管4bを通じて供給ポンプ4aによって圧送されて、マンドレル9の表面に供給される。ここで、気密容器2には通気部5を通過して乾燥した大気Aが流入するので、気密容器2の内部はほぼ大気圧となる。したがって、気密容器2を耐圧仕様にする必要がなく、供給ポンプ4aに過度の負担がかかることもなく、ポンプ容量を小さくでき、攪拌供給装置1の構成の簡素化が可能となる。
【0020】
図示しない巻取り装置で環状に巻き取られて一方向に移動するマンドレル9の表面には、供給管4bの先端部からマンドレル処理液Lが滴下する。滴下位置の下流側には、マンドレル9が挿通する塗布部7が配置され、塗布部7と接触しつつ通過することでマンドレル処理液Lが略均一に薄く塗布される。塗布部7には、耐摩耗性に優れ、マンドレル処理液Lを適度に吸収して一様に塗布できるナイロン繊維等を用いることができる。尚、マンドレル処理液Lを直接、塗布部7に滴下させてナイロン繊維等に滲み込ませるようにしてもよい。
【0021】
マンドレル9の表面に塗布されたマンドレル処理液Lは、その後、さらに下流に配置された乾燥装置8で送風や加熱等によって乾燥される。このように処理されたマンドレル9は、ゴムホース等の製造時の加硫工程において、マンドレル処理液Lに起因するピンホール等の不具合を発生させることなく、所定の品質を確保することができる。また、マンドレル処理液Lは、常に攪拌されて成分の偏りがない状態で塗布されているので、加硫後においては、マンドレル9の表面にほぼ均一に塗布されたマンドレル処理液Lの離型効果によって、ゴムホースからマンドレル9を円滑に引抜くことができる。これによって、引抜きの際にゴムホースの内周面に傷等を生じさせることなく、マンドレル9の表面がゴムホースの内周面に付着する等の不具合も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のマンドレル処理液の攪拌供給装置を例示する全体構成図である。
【図2】図1のマンドレル処理液の攪拌供給装置の使用状態を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 (マンドレル処理液の)攪拌供給装置
2 気密容器 2a 有底ガラス容器 2b 密閉蓋
3 攪拌手段 3a 攪拌体 3b 攪拌体駆動部
4 供給手段 4a 供給ポンプ 4b 供給管
5 通気部 5a 通気調整弁
6 液補充部
7 塗布部
8 乾燥装置
9 マンドレル
D 乾燥剤
L マンドレル処理液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性のあるマンドレル処理液をマンドレル表面に供給するマンドレル処理液の攪拌供給装置であって、前記マンドレル処理液を収容する気密容器と、該気密容器に収容されたマンドレル処理液を攪拌する攪拌手段と、該攪拌手段で攪拌されたマンドレル処理液を前記気密容器の外部に圧送し、マンドレル表面に供給する供給手段と、乾燥剤を内蔵して該乾燥剤で乾燥させた大気を前記気密容器の内部に流通させる通気部とを備えたマンドレル処理液の攪拌供給装置。
【請求項2】
前記攪拌手段が、前記気密容器の内部に配置されて回転する攪拌体と、該攪拌体を前記気密容器の外部から非接触状態で回転駆動させる攪拌体駆動部とからなる請求項1に記載のマンドレル処理液の攪拌供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−69436(P2007−69436A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258111(P2005−258111)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】