説明

ミシン

【課題】縫製中でも自在に糸張力を補正する。
【解決手段】縫い針を上下動させる針上下動機構と、縫い針に対して被縫製物を相対的に位置決めする位置決め機構と、糸張力を縫い糸に付与する糸調子装置と、縫製データに基づいて位置決め、糸張力付与及び縫製速度の制御を行う動作制御手段1000とを備え、縫製データ71aに基づく縫製の実行中に当該データに定められた糸張力に対して縫製パターンの全針に及ぶ補正データの入力を受け付ける糸張力補正手段74を備え、動作制御手段は、糸切りを伴うことなく、入力直後の縫い目から補正データに応じた糸張力で縫製を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製データに従って一つの縫製パターンの縫製を自動的に行うミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
縫製データに従って一つの縫製パターンの縫製を自動的に行ういわゆる電子サイクルミシンは、一針ごとの針落ち位置の他に、糸張力値や縫製速度も設定され、これら全ての設定値に従って縫製が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−311055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電子サイクルミシンは、縫製データに従って縫製が開始されると、基本的には、一つの縫製パターンが完了するまで自動的に縫いが行われ、縫い途中での設定の変更を行うことはできなかった。
このため、試し縫いを行っている場合に、途中で糸張力値等の変更の必要性が発見されても、その縫いの終了を待って、非縫製時に縫製データの設定内容の変更を行わなければならず、試行錯誤で適正な設定を行う必要性がある場合には、繰り返しの縫い作業が必要となり、試し縫いの効率が悪いという問題があった。
また、縫製の途中で縫いを停止させて、糸切りを実行させて縫いを終了させてしまうことが可能なミシンもあるが、その場合でも、途中停止した後に最初から縫製がやり直しとなるので、効率の低下は免れなかった。また、繰り返される試し縫いにより縫製の材料の無駄が生じるという問題もあった。
【0005】
本発明は、試し縫いを効率的に行い、さらには、試し縫いでの材料の浪費を低減することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ミシンモータにより駆動される主軸の回転により縫い針を上下動させる針上下動機構と、位置決めモータにより被縫製物に対して任意の位置に針落ちが行われるように前記縫い針に対して被縫製物を相対的に位置決めする位置決め機構と、アクチュエータにより任意に糸張力を縫い糸に付与する糸調子装置と、一つの縫製パターンにおける一針ごとの針落ち位置と縫製時の糸張力及び縫製速度とを定めた縫製データに基づいて前記位置決めモータ、糸調子装置のアクチュエータ及びミシンモータの動作制御を行う動作制御手段とを備えるミシンにおいて、前記縫製データに基づく縫製の実行中に当該データに定められた糸張力に対して前記縫製パターンの全針に及ぶ補正データの入力を受け付ける糸張力補正手段を備え、前記動作制御手段は、糸切りを伴うことなく、入力直後の縫い目から前記補正を反映した糸張力で縫製を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記糸張力補正手段から入力された糸張力補正データに従って、前記縫製データ中の縫製時の糸張力の内容を書き換える更新手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、縫製における各種の情報を表示すると共に表示画面への操作により各種の設定を入力可能な表示入力手段を備え、前記表示入力手段は、縫製の開始から縫製中にかけて表示が行われる縫製画面の表示状態から画面の切り替えの入力を受けて、前記糸張力補正データの入力を受け付ける前記糸張力補正手段としての糸張力補正入力画面への切り替えを行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記表示入力手段は、前記糸張力補正データを前記縫製データ中の補正前の糸張力データと同時に表示することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記表示入力手段は、ミシンの主電源投入後に表示されると共に前記縫製画面の前段階で表示される初期画面の表示状態から画面の切り替えの入力を受けて、前記糸張力補正入力画面へ直接切り替え可能であることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記糸張力補正手段は、前記糸張力補正データの入力幅を設定により任意に変更可能とすることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、縫製動作を一時停止させる停止手段を備え、前記糸張力補正手段は、一時停止中に前記糸張力補正データの入力を行うことを可能とすることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記縫製データに基づく縫製の実行中に当該データに定められた縫製速度に対して前記縫製パターンの全針に及ぶ速度補正データの入力を受け付ける縫製速度補正手段を備え、
前記動作制御手段は、糸切りを伴うことなく、入力直後の縫い目から前記速度補正データに応じた縫製速度で縫製を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明は、縫製データに基づく縫製が行われている途中でも糸張力の補正を行うことができ、さらに、補正が行われるとその補正内容を反映してそれ以降の縫製が行われるので、例えば、縫製データに基づく試し縫いを行っている最中に、糸張力の補正の必要性が生じた場合に、すぐに補正し、補正された縫いの結果を得ることが可能となる。例えば、従前であれば、縫い途中で補正の必要性を生じても、縫製データによる縫いが完了するまで待ってから縫製データに対して修正を行う必要があったが、本願発明はすぐに補正を実践でき、その結果を得られるため、作業効率の向上及び試し縫い材料の浪費を回避することが可能である。
なお、請求項1記載の発明は、糸切りを伴うことなく縫いの途中で糸張力の補正を行うことを可能とするが、糸切りを伴う糸張力の補正を行う機能を排除する趣旨ではなく、例えば、糸切りを伴う補正をも可能とし、これらの内いずれかを選択するようにしても良い。
【0015】
請求項2記載の発明は、更新手段により入力された糸張力補正データに従って縫製データの内容を書き換えるので、補正後は、縫製データの実行により補正内容を再現することが可能となる。
【0016】
請求項3記載の発明は、縫製中に表示される縫製画面から遷移する糸張力補正入力画面により糸張力補正データの入力ができるので、縫製中の補正を行うことが容易であり、作業性を向上することが可能である。
【0017】
請求項4記載の発明は、表示入力手段が糸張力補正データを縫製データ中の補正前の糸張力データと同時に表示するので、補正前の糸張力を参考にしながら補正を行うことができ、補正作業の作業性を向上することができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、縫製画面の前段階の初期画面から糸張力補正入力画面へ直接切り替え可能であるため、作業性が向上する。
【0019】
請求項6記載の発明は、糸張力補正手段による糸張力の補正の入力幅を設定により任意に変更可能であるため、細密な補正を要する場合にも迅速に補正を行う場合にも対応して補正を行うことが可能となる。
【0020】
請求項7記載の発明は、縫製の一時停止中に糸張力値の補正を可能とするので、補正の入力作業により縫製が進行することを回避し、より適正な糸張力の補正を行うことを可能とする。
【0021】
請求項8記載の発明は、縫製データに基づく縫製が行われている途中でも縫製速度の補正を行うことができ、さらに、補正が行われるとその補正内容を反映してそれ以降の縫製が行われるので、例えば、縫製データに基づく試し縫いを行っている最中に、縫製速度の補正の必要性が生じた場合に、すぐに補正し、補正された縫いの結果を得ることが可能となる。例えば、従前であれば、縫い途中で補正の必要性を生じても、縫製データによる縫いが完了するまで待ってから縫製データに対して修正を行う必要があったが、本願発明はすぐに補正を実践でき、その結果を得られるため、作業効率の向上及び試し縫い材料の浪費を回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかるミシンを示す斜視図である。
【図2】本発明にかかるミシンの保持枠の近傍を示す拡大斜視図である。
【図3】ミシンの制御系を示すブロック図である。
【図4】縫製処理を行うための縫製データの設定内容を示す説明図である。
【図5】初期画面の表示例を示す説明図である。
【図6】縫製画面の表示例を示す説明図である。
【図7】糸張力補正入力画面の表示例を示す説明図である。
【図8】一時停止画面の表示例を示す説明図である。
【図9】第一の停止処理選択画面表示例を示す説明図である。
【図10】第二の停止処理選択画面の表示例を示す説明図である。
【図11】ミシンの縫製動作における補正処理の概要について示すフローチャートである。
【図12】図11の続きのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(電子サイクルミシンの全体構成)
本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
本実施形態において、ミシンとして電子サイクルミシンを例に説明する。電子サイクルミシンは、縫製を行う被縫製物である布地を保持する布保持部としての保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠に保持される布地に所定の縫製データに基づく縫製パターンを形成するミシンである。
図1は本発明にかかる電子サイクルミシン100の斜視図、図2は当該ミシン100の保持枠111や中押さえ29の近傍を示す拡大斜視図である。
ここで、後述する縫い針108が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
【0024】
電子サイクルミシン100(以下、ミシン100)は、図1に示すように、ミシンテーブルTの上面に備えられるミシン本体101と、ミシンテーブルTの下部に備えられ、ミシン本体101を操作するためのペダルR等により構成されている。
【0025】
(ミシンフレーム及び主軸)
図1に示すように、ミシン本体101は、外形が側面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム102を備えている。このミシンフレーム102は、ミシン本体101の上部をなし前後方向に延びるミシンアーム部102aと、ミシン本体101の下部をなし前後方向に延びるミシンベッド部102bと、ミシンアーム部102aとミシンベッド部102bとを連結する縦胴部102cとを有している。
このミシン本体101は、ミシンフレーム102内に動力伝達機構が配され、回転自在でY軸方向に沿って配設された主軸(図4参照)及び図示しない下軸を有している。主軸はミシンアーム部102aの内部に配され、下軸(図示省略)はミシンベッド部102bの内部に配されている。
【0026】
主軸は、ミシンモータ2a(図3参照)に接続され、このミシンモータ2aにより回動力が付与される。また、下軸(図示省略)は、図示しないタイミングベルトを介して主軸と連結しており、主軸と下軸が連動回転するようになっている。
主軸の前端には、主軸の回転によりZ軸方向に上下動する針棒108aが接続されており、その針棒108aの下端には、図2に示すように、縫い針108が備えられている。かかる主軸とミシンモータ2aと針棒108aと主軸から針棒108aに上下動の駆動力を付与する図示しない伝達機構により針上下動機構が構成される。
なお、主軸にはタコジェネレータ2b(図3参照)が設けられ、主軸の基準角度及びその基準角度の間の詳細角度を検出する回転同期信号が出力される。
【0027】
また、下軸(図示省略)の前端には、釜(図示省略)が設けられている。主軸とともに下軸が回動すると、縫い針108と釜(図示省略)との協働により縫い目が形成される。
なお、ミシンモータ2a、主軸、針棒108a、縫い針108、下軸(図示省略)、釜(図示省略)等の接続構成は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0028】
また、ミシンアーム部102aの針棒108aの近傍であって正面側には縫い糸に位置張力を付与する糸調子装置120が装備されている。この糸調子装置120は、縫い糸を挟む一対の糸調子皿と、糸調子皿の糸挟持方向に加圧力を付与するアクチュエータとしての糸調子ソレノイド121(図3参照)とを備えており、駆動回路121aからの駆動電流が制御装置1000により制御されることで任意の糸張力を縫い糸に付与することを可能としている。
【0029】
(位置決め機構)
ミシンアーム102aには縫い針108の上下動による布地の浮き上がりを防止するために、針棒108aの上下動と連動して上下動し、縫い針108の周囲の布地を下方に押圧する中押さえ29を有する中押さえ機構(図示略)が設けられている。なお、中押さえ機構はミシンアーム部102aの内部に配設されており、縫い針108は、中押さえ29の先端側に形成されている貫通孔に遊挿されている。また、中押さえ機構は、駆動源としての中押さえモータ(図示省略)を有している。
【0030】
また、図1、図2に示すように、ミシンベッド部102b上には、針板110が配設されており、この針板110の上方に布保持部としての保持枠111及び縫い針108が配置されるようになっている。
保持枠111は、ミシンアーム部102aの前端部に配される取付部材113に取り付けられており、その取付部材113にはミシンベッド102b内に配置されたX軸モータ76a及びY軸モータ77aが駆動手段として連結されている(図3参照)。
保持枠111は、被縫製物である布地を保持し、X軸モータ76a及びY軸モータ77aの駆動に伴い、保持した布地を保持枠111ごと前後左右方向に移動するようになっている。そして、保持枠111の移動と、縫い針108の上下動及び釜(図示省略)の回転動作が連動することにより、布地に所定の縫製データの縫い目データに基づく縫い目が形成される。
また、保持枠111は、布押さえと下板とからなっており、取付部材113はミシンアーム102a内に配置された布押さえモータ79bの駆動により上下駆動が可能であり、布押さえ下降時に下板との間で布地を挟持し保持するようになっている。
そして、これら保持枠111、取付部材113、X軸モータ76a及びY軸モータ77aが、縫い針と布地をX軸方向及びY軸方向に相対的に位置決めする位置決め機構として機能する。
【0031】
ペダルRは、縫製の開始、保持枠111の昇降、糸切りの実行等を動作させたりするための操作ペダルとして作動する。すなわちペダルRには、ペダルRが踏み込まれたその踏み込み操作位置を検出するための、例えば、可変抵抗等から構成されるセンサ(踏み込み量検出手段)が組み込まれており、センサからの出力信号がペダルRの操作信号として後述する制御装置1000に出力され、制御装置1000はその操作位置、操作信号に応じて、ミシン100を駆動し、動作させるように構成されている。
【0032】
(ミシンの制御系:制御装置)
図3は電子サイクルミシン100の制御系を示したブロック図である。ミシン100は、上述した各部、各部材の動作を制御するための動作制御手段としての制御装置1000を備えている。そして、制御装置1000は、縫製における動作制御及び操作パネル74を用いて各種の設定や指示の入力に対する処理を行うためのプログラムが格納されたプログラムメモリ70と、縫製データ71a及び後述する補正値71b、その他の各種の設定情報(図示略)を記憶する記憶手段としての不揮発性のデータメモリ71と、プログラムメモリ70内のプログラムを実行するCPU73とを備えている。
【0033】
また、CPU73は、インターフェイス74aを介して操作パネル74に接続されている。かかる操作パネル74は、各種画面や入力ボタンを表示する表示部74bと表示部74bの表面に設けられその接触位置を検知するタッチセンサ74cとを有しており、表示入力手段として機能する。
操作パネル74で用いられる入力ボタンや入力スイッチはいずれも、表示部74bで表示され、タッチセンサ74cで入力が検知されることで押下式のボタンやスイッチと同等に機能するものである。
【0034】
また、CPU73は、インターフェイス75を介して、ミシンモータ2aを駆動するミシンモータ駆動回路75bに接続され、ミシンモータ2aの回転を制御する。なお、ミシンモータ2aはタコジェネレータ2bを備えており、ミシンモータ2aを駆動するミシンモータ駆動回路75bにおいて、タコジェネレータ2bからミシンモータ2aの一回転に付き一回出力される原点信号と15°回転ごとに出力される同期信号とが、インターフェイス75を介してCPU73に入力され、この信号をカウントすることによって、CPU73は位置決めモータであるX軸モータ76a及びY軸モータ77aや後述する他のアクチュエータの動作タイミングを決定する。
【0035】
また、CPU73は、インターフェイス76及びインターフェイス77を介して、縫製すべき布地を保持する保持枠111に備えられるX軸モータ76a及びY軸モータ77aをそれぞれ駆動するX軸モータ駆動回路76b及びY軸モータ駆動回路77bが接続され、保持枠111のX軸方向及びY軸方向の動作を制御する。
なお、X軸モータ76a及びY軸モータ77a、中押さえモータ、布押さえモータ79aには、例えば、パルスモータを用いることができる。
【0036】
また、CPU73は、インターフェイス81を介して、糸調子装置120の糸調子ソレノイド121を駆動する駆動回路121aが接続され、糸調子装置120により縫い糸に付与される糸張力を任意に制御する。
また、CPU73は、インターフェイス78を介して、ペダルRが接続され、ペダルRの段階的な入力操作に応じて、CPU73は縫製開始などの各種の動作制御を実行する。
さらに、CPU73は、インターフェイス83を介して、停止手段としての一時停止ボタン82が接続され、当該一時停止ボタン82の操作に応じて、CPU73は縫製状態を一時的に中断する動作制御を実行する。
【0037】
また、電子サイクルミシン100は、保持枠111を上下動させて布地の保持及び解放を行う布押さえモータ79aを備えている。
また、電子サイクルミシン100は、縫製終了後に糸切りを行う糸切り装置を備えている(図示略)。かかる糸切り装置は、動作駆動源としてミシンモータ2aとは独立して駆動される糸切りモータ80aを用いている。そして、CPU73は、インターフェイス80を介して、糸切りモータ80aを駆動する駆動回路80bが接続され、糸切りモータ80aの動作を制御する。
【0038】
(ミシンの制御系:縫製データ)
図4は縫製データ71aの設定内容を示す説明図である。
上記データメモリ71に記憶された縫製データ71aは、ミシンモータの回転数を定める縫製速度設定コマンド(1)、糸張力を設定する糸張力設定コマンド(2),(6)、各針ごとに目標となる針落ち位置に運針を行うためのX方向移動量、Y方向移動量のデータ(針落ち位置を示す縫い目データ)を示す通常送りコマンドの位置データ(3)〜(5),(7)〜(9)、糸切りコマンド(10)、空送りコマンド(11)、空送りコマンドの位置データ(12)が組み合わされている。なお、ここでいう通常送りとは、縫い針108の上下動を行いつつ保持枠111を移動させて当該移動軌跡に応じて縫い目を形成する際の送りを示し、空送りとは、縫い針108の上下動を行わずに縫い針108に対して保持枠111を相対移動させる際の送りを示す。
【0039】
かかる縫製データ71aにおける各コマンドは、縫製中において、その並び順に従って実行される。そして、並び順に従って各種コマンドが実行されることで任意のパターン(模様)による縫いが実行される。
図5に示す縫製データにおいて、「縫製速度設定コマンド」はミシンモータ2aの回転数を定めるデータである。
「糸張力設定コマンド」は、糸調子装置120により付与する糸張力を設定するための値(数値は図示略)を含んでいる。つまり、縫製データ中には、糸張力について縫製全体を通じて一定の基本値(図4では図示略)が設定されており、この「糸張力設定コマンド」中には、基本値に対して増減させる相対値が設定されている。例えば、糸張力の基本値として50の値が設定されており、縫いの所定の区間で糸張力を60の値に変更したい場合には、その区間の始まりにおいて「糸張力設定コマンド」として「+10」の相対値が設定される。そして、縫製中には当該設定値となるように糸調子ソレノイド121が制御される。なお、この「糸張力設定コマンド」とその相対値とが、「糸張力補正データ」に相当する。
また、前述した「縫製速度設定コマンド」についても、縫製データ中に基本値を定め、「縫製速度設定コマンド」中には基本値に対する相対値を設定するようにしても良い。その場合には、「縫製速度設定コマンド」中の相対値が「速度補正データ」に相当することとなる。
「通常送りコマンドの位置データ」は、ミシンモータ2aを駆動させながら保持枠111を移動させる際のX方向移動量、Y方向移動量とが定められており、縫製時におけるX軸モータ76aとY軸モータ77aの回転駆動量がこれらにより決定される。
「空送りコマンド」は、ミシンモータ2aを駆動させずに保持枠111のみを移動させる空送りの実行を指示するコマンドである。また、「空送りコマンドの位置データ」は空送りの際のX軸モータ76aとY軸モータ77aの回転駆動量が定められている。
「糸切りコマンド」は糸切り装置を作動させるコマンドであり、この動作に対する数値設定は不要となるので、数値データは設定されない。
【0040】
なお、各コマンドごとに、実行されるタイミング(定められた実行針数において主軸角度が何度の時に実行されるか)は、縫製データ71aとは別にデータメモリ71内に個別に定められている。各コマンドの実行タイミングは、前述したタコジェネレータ2bから得られる同期信号のカウントをCPU73が監視することで計られ、実行すべきコマンドについて定められた主軸角度に到達した時に当該コマンドを実行する動作制御が行われる。
【0041】
(縫製処理)
プログラムメモリ70に格納された縫製プログラム70aは、上記縫製データ71aの各コマンドを順番に読み出して、コマンドに応じて制御対象を特定し、コマンド内の設定数値に基づいてミシンモータ2a、X軸モータ76a、Y軸モータ77a、糸調子ソレノイド,布押さえモータ79a、糸切りモータ80a、糸調子ソレノイド81aの動作制御を行い、縫製データ71aに基づく縫製を実行させるプログラムである。
縫製データ71aの実行に際しては、各コマンドはいずれもその実行タイミング(実行する主軸角度)がデータメモリ71内に定められており、タコジェネレータ2bの出力信号をカウントすることで定められた実行タイミングで各コマンドの実行が行われる。
当該プログラム70aの実行により、CPU73は、縫製データ71aに基づいてミシンモータ2a等の動作制御を実行して縫製を行う動作制御手段として機能することとなる。
【0042】
(操作パネルによる補正処理)
制御装置1000のCPU73は、操作パネル74の表示制御及び入力に対する処理を行うプログラムに従って、ミシン10の主電源の投入時に、表示部74bに初期画面G1(図5)の表示を行う。
この初期画面G1は、複数ある縫製データの中から縫製を行う縫製データの選択を行う画面であり、既に選択済みの場合にはその縫製データの識別番号が画面左上に表示されるようになっている。図5の例では「001」の縫製データが選択されている状態を示す。
そして、初期画面G1の表示状態において、画面下部にある準備キーB1が押下されると、CPU73はタッチセンサ74cを通じてその操作を検出し、初期画面G1から縫製画面G2(図6)に表示の切り替えを行う。
【0043】
縫製画面G2は、縫製の開始時及び縫製中に表示される画面であり、画面上部中央に選択されている縫製データの縫製パターンが表示されている。そして、縫製画面G2の表示状態においてペダルRの踏み込み操作が行われると、CPU73は、選択されている縫製データに基づく縫製を開始する。
また、縫製画面G2には、糸張力と縫製速度の補正を行うための調整ボタンB2が表示されており、当該ボタンB2の押下がタッチパネル74cにより検出されると、CPU73は、糸張力補正入力画面G3(図7)に表示の切り替えを行う。
【0044】
糸張力補正入力画面G3は、糸張力の補正を入力するための画面であり、糸張力補正入力手段として機能する。かかる糸張力補正入力画面G3は、前述した設定糸張力の基準値に対して張力値を1加算する補正を行うプラスボタンB3と、基準値に対して張力値を1減算する補正を行うマイナスボタンB4と、予め設定された数値幅で設定糸張力の基準値に対する加算補正を行う早送りプラスボタンB5と、予め設定された数値幅で基準値に対する減算補正を行う早送りマイナスボタンB6とが表示され、これらいずれかのボタンB3〜B6への操作が検出されると、各ボタンに応じた補正後の基準値が求められる。また、ボタンの繰り返しの操作により積算的に補正値が加減算される。また、糸張力補正入力画面G3には、その上部に補正前の糸張力の基準値T1とボタンB3〜B6の操作による入力された補正に従い修正された糸張力の基準値T2(糸張力補正データ)とが同時に表示されるようになっている。
【0045】
CPU73は、各ボタンB3〜B6への操作を検出すると、上記各糸張力の基準値T1,T2の表示を行うと共に、各ボタンB3〜B6への操作により入力された補正値71b(補正データT2)を、縫製データ71aの糸張力値T1と置き換える。そして、再び縫製を行う場合に、糸張力補正データT2により縫製を行うことを可能としている。また、糸張力補正入力画面G3を画面上部の×印により閉じると、縫製データの糸張力値T1は、例えば、図7に示す例の場合には、最初の糸張力の基準値50から補正後の基準値の60に置き換えられる。
なお、早送りプラスボタンB5と早送りマイナスボタンB6とによる補正の数値幅は、他の設定画面(例えば、初期画面G1から読み出されるミシンの基本設定を行う基本設定画面)で任意に変更することが可能である。
【0046】
また、糸張力補正入力画面G3には、縫製速度の補正を行う加速補正ボタンB7と減速補正ボタンB8とが表示される。
この速度補正ボタンB7,B8は一回の操作につき100[rpm]の増減を行い、最小縫製速度200〜最大縫製速度2800[rpm]の間で、縫製速度が設定される。そして、加速補正又は減速補正に応じてゲージ位置が上下に移動するよう表示される。
そして、各ボタンB7,B8への操作により変更された、縫製速度の変更値(補正データ)が、縫製データ中の縫製速度として設定される。このため、再度縫製する際に、変更された縫製速度(速度補正データ)により縫製が実行される。
【0047】
上述した糸張力値の補正と縫製速度の補正は、縫製開始前であって縫製画面G2の表示状態で実行する第1の補正パターンと、縫製画面G2を表示して縫製を行っている最中に実行する第2の補正パターンとがある。
第1の補正パターンの場合は、縫製画面G2の表示状態で縫製が開始される前に調整ボタンB2により糸張力補正入力画面G3に切り替えられ、各ボタンB3〜B8の操作により糸張力値又は縫製速度の補正が行われると、縫製データ中の糸張力値、縫製速度が補正された速度補正データに置き換えられる。
【0048】
第2の補正パターンの場合は、縫製画面G2の表示状態で縫製開始後に、調整ボタンB2の押下により糸張力補正入力画面G3に切り替えられ、各ボタンB3〜B8の操作により糸張力値又は縫製速度の補正が行われると、縫製データ中の糸張力値、縫製速度が補正された糸張力値又は縫製速度の補正データに置き換えられる。
【0049】
また、前述した初期画面G1の準備キーB1はメモリスイッチであり、押下により呼び出す画面を他の画面に変更することが可能となっている。かかる設定の変更は、初期画面G1から読み出されるミシンの基本設定を行う基本設定画面により行うことができる。
そして、上記設定の変更により、準備キーB1を糸張力補正入力画面G3の呼び出しキーに設定変更することが可能である。
準備キーB1は、表示される画面の種類を切り替えても常に画面下方に存在しており、このため、いずれの画面表示状態であっても、糸張力補正入力画面G3の呼び出しを行うことが可能となる。
例えば、前述した初期画面G1の表示状態において、準備キーB1を押下することで縫製画面G2を経由することなく直接糸張力補正入力画面G3の呼び出しを行うことが可能となる(これを第3の補正パターンとする)。
この第3の補正パターンでは、第1の補正パターンと同様に、糸張力補正入力画面G3の各ボタンB3〜B8の操作により糸張力値又は縫製速度の補正が行われると、縫製データ中の糸張力値、縫製速度が補正された糸張力値又は縫製速度の補正データに置き換えられる。
【0050】
また、前述したように、ミシン100は一時停止ボタン82を備えている。かかる一時停止ボタン82の押下によりミシンモータ2aが停止して縫製が一時的に中断すると、CPU73は、操作パネル74に一停止画面G4を表示する制御を行う(図8参照)。
この一時停止画面G4には遷移ボタンB9が表示され、当該遷移ボタンB9の押下により、CPU73は、第一の停止処理選択画面G5を表示する制御を行う(図9参照)。
【0051】
この第一の停止処理選択画面G5の表示状態においてペダルRを押下すると、縫製を再開することができるようになっている。また、第一の停止処理選択画面G5には、押さえ上げボタンB10と糸切りボタンB11と調整ボタンB12とが表示される。
押さえ上げボタンB10の押下が行われると、CPU73は、布押さえモータ79aにより保持枠111を上昇させる制御を行う。
糸切りボタンB11の押下が行われると、CPU73は、糸切りモータ80aにより糸切りを実行させて制御を行う。そして、表示パネル74の表示画面を第二の停止処理選択画面G6に切り替える制御を行う(図10)。
調整ボタンB12の押下が行われると、CPU73は、表示パネル74の表示画面を糸張力補正入力画面G3に切り替える制御を行い、設定糸張力及び縫製速度の補正を行うことが可能となる(これを第4の補正パターンとする)。
この第4の補正パターンでは、第2の補正パターンと同様に、糸張力補正入力画面G3の各ボタンB3〜B8の操作により糸張力値又は縫製速度の補正が行われると、その補正値が糸張力又は速度補正データとしてデータメモリ71内に記憶され、さらに、縫製データ中の糸張力又は縫製速度の設定値が糸張力又は速度の補正データに書き換えられ、縫製が再開されると、補正後の縫製データに従って残りの縫製が行われる。縫製速度についても同様である。
【0052】
また、前述した第二の停止処理選択画面G5の表示状態においてペダルRを押下すると、縫製を再開することができるようになっている。また、第二の停止処理選択画面G6には、縫製データの針数を一針分進める送りボタンB13と一針分戻す戻しボタンB14と縫製データの第一針目まで戻してしまう原点復帰ボタンB15と調整ボタンB12とが表示される。
送りボタンB13の押下が行われると、CPU73は、中断した時点での針数から次の針数に縫製を進める処理を行い、戻しボタンB14の押下が行われると、CPU73は、中断した時点での針数から一つ前の針数に縫製を戻す処理を行う。
また、原点復帰ボタンB15の押下が行われると、CPU73は、縫製データの第一針目の縫製を戻す処理が行われ、前述した縫製画面G2が操作パネル74に表示される。つまり、これにより、縫製の中断後、最初から縫製をやり直すことを可能としている。
【0053】
また、第二の停止処理選択画面G5の表示状態からも、調整ボタンB12の押下により、設定糸張力及び縫製速度の補正を行うことが可能である(これを第5の補正パターンとする)。
この第5の補正パターンでは、第4の補正パターンと全く同様であり、糸張力値又は縫製速度の補正が行われると、糸張力値又は縫製速度の補正データが記憶され、縫製データが書き換えられると共に、縫製が再開後の運針に対して補正が反映される。
【0054】
(ミシンの縫製動作における補正処理の概要)
ミシンの縫製動作における補正処理の概要について図11及び図12のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の処理説明は、ミシンの縫製動作全体と補正処理との関係を明確にするものであり、補正処理に直接関係がない他の処理については説明を省略するものとする。また、以下の説明では、準備キーB1は縫製画面の呼び出しを行う機能が選択されているものとする。
【0055】
ミシン100の主電源が投入されると、CPU73は初期画面G1を表示する制御を行う(ステップS1)。そして、初期画面G1の表示状態において、準備キーB1の押下の判定を行い(ステップS2)、押下が行われると、縫製画面G2に遷移する処理を行う(ステップS3)。
次に、縫製画面G2の表示状態において、ペダルRの押下の判定を行い(ステップS4)、押下が行われない場合には、CPU73は、調整ボタンB2の押下の判定を行う(ステップS5)。そして、調整ボタンB2が押下されていないと判定した場合には、ステップS4に処理を戻す。
【0056】
一方、調整ボタンB2の押下が行われると、CPU73は、糸張力補正入力画面G3を操作パネル74に表示する制御を行う(ステップS6)。かかる糸張力補正入力画面G3の表示状態において、前述した第1の補正パターンに基づく補正処理を実行する(ステップS7)。そして、CPU73は、糸張力又は縫製速度の補正値71b(補正データ)をデータメモリ71に格納すると共に縫製データの糸張力又は縫製速度の設定値を補正データに書き換え(ステップS8)、ステップS4に処理を戻す。
【0057】
一方、前述したステップS4において、ペダルRの押下ありと判定すると、CPU73は、ミシンモータ2aを駆動させて縫製データに基づく縫製を開始する(ステップS9)。
縫製中において、CPU73は、再び、調整ボタンB2の押下の判定を行う(ステップS10)。そして、調整ボタンB2が押下されていないと判定した場合には、ステップS14に処理を進める。
【0058】
一方、調整ボタンB2の押下が行われると、CPU73は、糸張力補正入力画面G3を操作パネル74に表示する制御を行う(ステップS11)。かかる糸張力補正入力画面G3の表示状態において、前述した第2の補正パターンに基づく補正処理を実行する(ステップS12)。即ち、糸張力又は縫製速度の補正値71b(補正データ)をデータメモリ71に格納すると共に縫製データの糸張力又は縫製速度の設定値を補正データに書き換え、CPU73は、これ以降の針落ちに対して、補正値を反映させて縫製を実行する(ステップS13)。
【0059】
次いで、CPU73は、一時停止ボタン82の押下の判定を行い(ステップS14)、押下が行われない場合には、CPU73は、縫製データに定められた全ての作業が完了したか判定し(ステップS30)、完了した場合には縫製を終了する。また、完了していない場合には処理をステップS10に戻す。
一方、維持停止ボタン82が押下された場合には、ミシンモータ2aを停止させ、一時停止画面G4の表示を実行する(ステップS15)。
【0060】
そして、CPU73は、遷移ボタンB9の押下の判定を行い(ステップS16)、押下が行われない場合には、同判定を繰り返す。また、CPU73は、遷移ボタンB9の押下ありと判定した場合には、第一の停止処理選択画面G5の画面を表示する(ステップS17)。
【0061】
次に、CPU73は、糸切りボタンB11の押下の判定を行い(ステップS18)、押下が行われない場合には、調整ボタンB12の押下の判定を行う(ステップS19)。そして、調整ボタンB12が押下されていないと判定した場合には、ステップS18に処理を戻す。
一方、調整ボタンB12の押下が行われると、CPU73は、糸張力補正入力画面G3を操作パネル74に表示すると共に前述した第4の補正パターンに基づく補正処理を実行する(ステップS20)。即ち、糸張力又は縫製速度の補正値71b(補正データ)をデータメモリ71に格納すると共に縫製データの糸張力又は縫製速度の設定値を補正データに書き換え、CPU73は、停止再開後の針落ちに対して、補正値を反映させるように設定を行う(ステップS21)。
そして、縫製が再開されたか判定し(ステップS22)、再開されていない場合には再開待ちを行い、再開された場合には、CPU73は、縫製データに定められた全ての作業が完了したか判定し(ステップS30)、完了した場合には縫製を終了する。また、完了していない場合には処理をステップS10に戻す。
【0062】
一方、ステップS18において、糸切りボタンB11が押下されていると判定した場合には、糸切りモータ80aを駆動して、糸切りを実行する(ステップS23)。さらに、CPU73は、第二の停止処理選択画面G6の画面を表示する(ステップS24)。
そして、原点復帰ボタンB15の押下を判定し、押下された場合には、ステップS3に処理を戻して、第一針目から縫製のやり直しを行う。
【0063】
また、原点復帰ボタンB15が押下されていない場合には、調整ボタンB12の押下の判定を行う(ステップS26)。そして、調整ボタンB12が押下されていないと判定した場合には、ステップS25に処理を戻す。
一方、調整ボタンB12の押下が行われると、CPU73は、糸張力補正入力画面G3を操作パネル74に表示すると共に前述した第5の補正パターンに基づく補正処理を実行する(ステップS27)。即ち、糸張力又は縫製速度の補正値71b(補正データ)をデータメモリ71に格納すると共に縫製データの糸張力又は縫製速度の設定値を補正データに書き換え、CPU73は、停止再開後の針落ちに対して、補正値を反映させるように設定を行う(ステップS28)。
そして、縫製が再開されたか判定し(ステップS29)、再開されていない場合には再開待ちを行い、再開された場合には、CPU73は、縫製データに定められた全ての作業が完了したか判定し(ステップS30)、完了した場合には縫製を終了する。また、完了していない場合には処理をステップS10に戻す。
【0064】
(発明の実施形態の作用効果)
以上のように、ミシン100では、第2,第4,第5の補正パターンに示すように、縫製データ71aに基づく縫製が行われている途中でも糸張力又は縫製速度の補正を行うことができ、さらに、補正が行われるとその補正内容を反映してそれ以降の縫製が行われるので、例えば、縫製データ71aに基づく試し縫いを行っている最中に、糸張力或いは縫製速度の補正の必要性が生じた場合に、すぐに補正し、補正された縫いの結果を得ることが可能となる。
このため、一回の縫製の終了を待ってから次の縫製時に縫製を施してその結果を得るというような時間と手間を不要とし、作業効率の向上及び試し縫い材料の浪費を回避することが可能である。
【0065】
また、糸張力値の補正が行われると、糸張力値の補正データと、補正前の縫製データ上の糸張力データが表示されるので、効率よく補正データを設定できる。
また、第4又は第5の補正パターンのように、縫製の一時停止中に糸張力値又は縫製速度の補正を可能とするので、補正の入力作業により縫製が進行することを回避し、より適正な糸張力の補正を行うことを可能とする。
【符号の説明】
【0066】
2a ミシンモータ
71 データメモリ(記憶手段)
71a 縫製データ
71b 補正値(補正内容)
73 CPU(動作制御手段、確認動作制御手段)
74 操作パネル(糸張力補正手段、表示入力手段)
76a X軸モータ(位置決めモータ)
77a Y軸モータ(位置決めモータ)
82 一時停止ボタン(停止手段)
100 電子サイクルミシン
121 糸調子ソレノイド(アクチュエータ)
1000 制御装置(動作制御手段)
G1 初期画面
G2 縫製画面
G3 糸張力補正入力画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンモータにより駆動される主軸の回転により縫い針を上下動させる針上下動機構と、
位置決めモータにより被縫製物に対して任意の位置に針落ちが行われるように前記縫い針に対して被縫製物を相対的に位置決めする位置決め機構と、
アクチュエータにより任意に糸張力を縫い糸に付与する糸調子装置と、
一つの縫製パターンにおける一針ごとの針落ち位置と縫製時の糸張力及び縫製速度とを定めた縫製データに基づいて前記位置決めモータ、糸調子装置のアクチュエータ及びミシンモータの動作制御を行う動作制御手段とを備えるミシンにおいて、
前記縫製データに基づく縫製の実行中に当該データに定められた糸張力に対して前記縫製パターンの全針に及ぶ糸張力補正データの入力を受け付ける糸張力補正手段を備え、
前記動作制御手段は、糸切りを伴うことなく、入力直後の縫い目から前記糸張力補正データに応じた糸張力で縫製を行うことを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記糸張力補正手段から入力された糸張力補正データに従って、前記縫製データ中の縫製時の糸張力の内容を書き換える更新手段を備えることを特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項3】
縫製における各種の情報を表示すると共に表示画面への操作により各種の設定を入力可能な表示入力手段を備え、
前記表示入力手段は、縫製の開始から縫製中にかけて表示が行われる縫製画面の表示状態から画面の切り替えの入力を受けて、前記糸張力補正データの入力を受け付ける前記糸張力補正手段としての糸張力補正入力画面への切り替えを行うことを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
【請求項4】
前記表示入力手段は、前記糸張力補正データを前記縫製データ中の補正前の糸張力データと同時に表示することを特徴とする請求項3記載のミシン。
【請求項5】
前記表示入力手段は、ミシンの主電源投入後に表示されると共に前記縫製画面の前段階で表示される初期画面の表示状態から画面の切り替えの入力を受けて、前記糸張力補正入力画面へ直接切り替え可能であることを特徴とする請求項3又は4記載のミシン。
【請求項6】
前記糸張力補正手段は、前記糸張力補正データの入力幅を設定により任意に変更可能とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のミシン。
【請求項7】
縫製動作を一時停止させる停止手段を備え、
前記糸張力補正手段は、一時停止中に前記糸張力補正データの入力を行うことを可能とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のミシン。
【請求項8】
前記縫製データに基づく縫製の実行中に当該データに定められた縫製速度に対して前記縫製パターンの全針に及ぶ速度補正データの入力を受け付ける縫製速度補正手段を備え、
前記動作制御手段は、糸切りを伴うことなく、入力直後の縫い目から前記速度補正データに応じた縫製速度で縫製を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−83455(P2011−83455A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238903(P2009−238903)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】