説明

ミシン

【課題】縫い代を目標値通りに縫製を行う。
【解決手段】被縫製物CU,CDを水平に送る主送り機構20と、被縫製物を被縫製物幅方向に沿って移動させる横送り機構30,36と、縫い代を検出するための端部検出装置40,60と、被縫製物の縫い代が目標値となるように横送り機構を制御する制御装置130とを備え、端部検出装置は反射面12を照射する光源631と、反射面による反射光を受光する複数の受光部が複数並んで設けられた検出素子65と、光源からの照射光を平行光化し、反射面に対して垂直方向又は当該垂直方向に対して被縫製物幅方向に沿った軸回りに傾斜した方向から平行光化した照射光を照射する光学素子632とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被縫製物の側端部の位置検出を行い被縫製物の縫い代を目標値に制御するミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図18に示すように、上布Uと下布Dのそれぞれの縫い代が一致するように縫い合わせる縫製を行う従来のミシン100は、縫い目の形成方向に沿って上布Uと下布Dとを送る送り歯(図示略)と、縫い針101の上流側において上布Uと下布Dのそれぞれを布送り方向に直交する方向に個別に送る上下の横送り機構102(上側のみ図示)と、各横送り機構102と送り歯との間で、上布Uと下布Dのそれぞれを縫い代側の側端部位置を検出する布端検出装置110(上側のみ図示)とを備え、検出された上布Uと下布Dのそれぞれを側端部位置に基づいてそれぞれの布を横送り機構102で適正な位置に送りつつ縫製を行っている。なお、図中の符号Fは送り歯による布送り方向を示している(例えば、特許文献1参照)。また、図示のY軸方向は水平且つ布送り方向に平行な方向であり、X軸方向は水平且つY軸方向に直交する方向であり、Z軸方向は鉛直上下方向を示している。
【0003】
図19は図18の上側の布端検出装置110のW−W線に沿った断面図である。
上側の布端検出装置110は、上布Uの側端部を検出する検出光の光源111と、検出光を布送り方向Fに対して直交する方向(X軸方向)に沿ったスリット光にするためのレンズ112と、上布Uを載置する反射板103の上面によるスリット光の反射光を受光するライン上のイメージセンサ113と、反射光をイメージセンサ113に結像させるレンズ114とを備えている。
イメージセンサ113は、X軸方向に沿って複数の受光素子が並んで形成されており、反射板103へのスリット光が上布Uの側端部で遮蔽されることにより生じる各受光素子の受光強度の変化により上布Uの側端部の位置を検出する。
そして、布端検出装置110による上布Uの側端部位置が適正な位置からズレている場合に、適正な位置に戻す方向に横送り機構102を作動させて常に布の側端部が適正な位置を維持するよう制御を行っている。
なお、下布Dの布端検出装置についても上布Uと同様の構成からなり、下布Dの横送り機構も同様の制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−174189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ミシン100の布端検出装置110は、その検出光の光源111が拡散光を発することから以下に示す問題が生じていた。
図20は布端検出装置110を布送り方向に沿った視線から見た図である。図示のように、上布Uが反射板103から隙間を生じた場合や上布Uが厚い生地である場合には、上布Uの上面が反射板103から離れてしまう。その場合、上布Uの上面が反射板103の上面に近い位置にあって本来検出されるべき上布Uの側端部の検出位置P11から離れた見せかけの検出位置P12が検出され、側端部の位置が正しく認識されないという問題があった。
なお、下布Dの布端検出装置120も同様にその光源121が拡散光を発することから、下布Dの下面が反射板103に対向する下布検出面104から離れている場合に、本来の検出位置P21から離れた見せかけの検出位置P22が検出され、やはり、側端部の位置が正しく認識されないという問題があった。
【0006】
また、上布Uの布端検出装置110は、光源111及びレンズ112の光軸が主に下方を向いた状態となるように配設されており、そのため、光源布端検出装置110の上下方向の厚みを薄くすることが困難な構造となっていた。上布Uの布端検出装置110は、横送り機構102と布押さえとの間の狭い領域に配置されることから布端検出装置110の上下方向の小型化が望まれているが、上記の構造により小型化が困難であった。
また、下布Dの布端検出装置120は、針板上面と下布検出面104とが同一の高さとなるように、針板に潜り込むように装備されるが、針板の下側には、送り歯の動作機構や糸切り装置等が密集配置されていることから、その配置スペースの確保のために、布端検出装置120の上下方向も小型化が望まれているが、下布Dの布端検出装置120も光源121及びそのレンズの光軸が主に上方を向いた状態で配設されているため、光源布端検出装置120の上下方向の厚みを薄くすることも困難となっていた。
【0007】
本発明は、被縫製物の側端部の位置をより精度良く検出することをその目的とする。
また、本発明は、上布又は下布の端部検出装置の上下方向の小型化を図ることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、被縫製物を水平面に沿って所定の送り方向に送る主送り機構と、前記被縫製物を前記水平面に平行且つ前記送り方向に垂直な被縫製物幅方向に沿って移動させる横送り機構と、前記被縫製物の前記被縫製物幅方向における側端部から針落ち位置までの長さである縫い代を検出するための端部検出装置と、前記端部検出装置の検出に基づいて前記被縫製物の縫い代が目標値となるように前記横送り機構を制御する制御装置とを備えるミシンにおいて、前記端部検出装置は、搬送される前記被縫製物の側端部と当該被縫製物の背後に設けられた反射面との境界位置を照射する光源と、前記反射面による反射光を受光する複数の受光部が前記被縫製物幅方向に沿って複数並んで設けられた検出素子と、前記光源からの照射光を平行光化し、前記反射面に対して垂直方向又は当該垂直方向に対して前記被縫製物幅方向に沿った軸回りに傾斜した方向から前記平行光化した照射光を照射する光学素子とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記端部検出装置が、前記光源からの照射光を前記反射面側に反射する反射体を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記端部検出装置は、前記光源とその照射光を平行光化する前記光学素子とが前記被縫製物幅方向に並ぶ配置とし、前記反射体は、この光学素子により平行光化された照射光を前記被縫製物側に反射することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記被縫製物は、上側被縫製物と下側被縫製物とからなり、前記端部検出装置と前記横送り機構とを、前記上側被縫製物と前記下側被縫製物とについてそれぞれ備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記端部検出装置は、前記被縫製物に対する照射光を前記被縫製物幅方向に沿ったスリット状とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、端部検出装置が、光源からの照射光を平行光化し、反射面に対して垂直方向又は当該垂直方向に対して被縫製物幅方向に沿った軸回りに傾斜した方向から平行光化した照射光を照射する光学素子を備えている。
かかる光学素子により、上述した方向から反射面に平行光である照射光を照射した結果、被縫製物の被照射面が被縫製物の厚さや反射面との隙間の発生によって反射面から離れている場合であっても、被縫製物の側端部が反射光を遮蔽しない。
従って、搬送方向に直交する方向について、被縫製物の側端部の位置を正確に求めることができ、当該被縫製物の側端部を正確に目標位置に合わせる制御が可能となり、縫い品質の向上を実現することが可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明は、端部検出装置が光源からの照射光を反射面側に反射する反射体を有している。
仮に、反射体を有していない場合には、光源と平行光化を図る光学素子とを被縫製物に対する照射方向、即ち、被縫製物を搬送する水平面に対する垂直方向又は当該垂直方向に対して被縫製物幅方向に沿った軸回りに傾斜した方向に沿って並んで配置する必要があり、端部検出装置が上下方向について大型化することが不可避となる。
しかしながら、端部検出装置は反射体を有するので、光源と平行光化を図る光学素子とを、上述の方向に並べる制約をなくすことができ、これらを、端部検出装置が上下方向について小型化を図るのに有利な方向に並べて配置することが可能となる。このため、端部検出装置の厚さを上下方向について薄くすることが可能となり、針板下側の狭いスペースや横送り機構と針棒との狭いスペースに配置することが容易となり、端部検出装置の組み込みの容易化、ひいてはミシンの小型化を実現することが可能となる。
【0015】
また、横送り機構は、針落ち位置に近い位置に配置する程、縫い代が正確に目標値となるように制御することが可能となる。上述のように、端部検出装置が垂直方向について小型化されることにより、横送り機構を針落ち位置により近い位置に配置しやすくなるため、縫い代を正確に調節してさらなる縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0016】
請求項3記載の発明は、光源とその照射光を平行光化する光学素子とが被縫製物幅方向に並ぶ配置としたので、端部検出装置を上下方向に加えて被縫製物の搬送方向にも小型化することができ、横送り機構を針落ち位置にさらに近い位置に配置しやすくなるため、縫い代を正確に調節してさらなる縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0017】
請求項4記載の発明は、上側被縫製物と下側被縫製物のそれぞれについて縫い代を調整することができるので、上側被縫製物と下側被縫製物とで側端部の位置をより正確に揃えることが可能となり、上側被縫製物と下側被縫製物とを縫い合わせる縫製において、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0018】
請求項5記載の発明は、被縫製物に対する照射光を被縫製物幅方向に沿ったスリット状とするので、その反射光の長短の変化から被縫製物の側端部の位置をより容易且つ正確に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一の実施形態である上下送りミシンの主要部を示す斜視図である。
【図2】上下送りミシンの主要部の正面方向から見た構成を簡略的に示した説明図である。
【図3】上布検出装置及び下布検出装置の斜視図である
【図4】下布検出装置を斜め下方から見た斜視図である。
【図5】下布検出装置を斜め上方から見た斜視図である。
【図6】下布検出装置の平面図である。
【図7】図6のV−V線に沿った断面図である。
【図8】図3のU−U線に沿った断面図である。
【図9】図3のT−T線に沿った断面図である。
【図10】光源ユニットの内部構造を示す断面図である。
【図11】反射体の反射面の傾斜角度を示す説明図である。
【図12】図12(A)は反射板に対する照射光の入射角度をY軸方向から見た説明図、図12(B)はX軸方向から見た説明図である。
【図13】上布検出装置を斜め上方から見た斜視図である。
【図14】上布検出装置を斜め下方から見た斜視図である。
【図15】上下送りミシンの制御系を示すブロック図である。
【図16】第二の実施形態である上布検出装置のY−Z平面に沿った断面図である。
【図17】第三の実施形態である上布検出装置及び下布検出装置のY−Z平面に沿った断面図である。
【図18】従来のミシンの主要部における平面図である。
【図19】図18の従来の布端検出装置のW−W線に沿った断面図である。
【図20】従来の布端検出装置を布送り方向に沿った視線から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態について説明する。図1は本実施形態であるミシンとしての上下送りミシン100の主要部を示す斜視図、図2は主要部の正面方向から見た構成を簡略的に示した説明図である。
なお、以下の説明では、水平な一方向をY軸方向、水平であってY軸方向に直交する方向をX軸方向、鉛直上下方向をZ軸方向というものとする。
また、後述する上布CU(上側被縫製物)及び下布CD(下側被縫製物)の主送り機構20による送り方向はY軸方向に平行であり、送りの進行方向をY軸(正)方向とし、その逆方向をY軸(逆)方向というものとする。
また、後述する横送り機構30,36は、上布CU及び下布CDをX軸方向の双方向に移動可能であり、図1における紙面右側をX軸方向(正)、紙面左側をX軸(逆)方向というものとする。なお、このX軸方向は「被縫製物幅方向」に相当する。
【0021】
この上下送りミシン100は、針板14の上に重ねて載置された上布CUと下布CDとをそれぞれX軸方向に送りながら、上布CUのX軸方向(正)側の側端部と下布CDのX軸方向(正)側の側端部とがいずれもズレを生じないように一致し且つ縫い代が所定の目標値となるように縫い合わせる縫製制御を行うものである。
図1及び図2に示すように、上下送りミシン100は、縫い針を保持する針棒を上下動させる図示しない針棒上下動機構と、縫製時に上布CUと下布CDとをY軸(正)方向に送る主送り機構20と、針落ち位置に対してY軸(逆)方向側に位置し、上布CUをX軸方向の正逆に移動させる上側横送り機構30と、針落ち位置に対してY軸(逆)方向側に位置し、下布CDをX軸方向の正逆に移動させる下側横送り機構36と、これら横送り動作の際に上布CUと下布CDとが互いに干渉しないようにこれらを仕切る仕切り板11と、針落ち位置と上側横送り機構30との間に設けられた布端検出装置としての上布検出装置40と、針落ち位置と下側横送り機構との間に設けられた布端検出装置としての下布検出装置60と、針板14の下側で縫い針から上糸を捕捉して下糸に絡める図示しない釜機構と、これら各構成を制御する制御装置13とを備えている。
なお、針棒上下動機構と釜機構は、従来周知のものと同一であり、その詳細な説明は省略する。
【0022】
[主送り機構]
図2に示すように、主送り機構20は、針板14の上で連続的に上下動して上布CUと下布CDとを押さえる布押さえ23と、針板14の下側に設けられY軸方向に沿った長円運動を行って針板14の開口部から出没する送り歯21と、針板14の上側に設けられY軸方向に沿った長円運動を行う送り足22と、布押さえ23、送り歯21及び送り足22に上下動又は長円運動を付与する不図示の動作伝達機構とを備えている。
送り歯21は長円運動における上側区間がY軸(正)方向となるように周回運動を行い、送り足22は長円運動における下側区間がY軸(正)方向となるように周回運動を行う。そして、これにより、送り歯21と送り足22とで針板14上の上布CUと下布CDとを挟み込んで間欠的に送り動作を行うようになっている。
【0023】
また、布押さえ23は、送り歯21及び送り足22の周回動作に同期して上下動を行い、送り歯21が下方に、送り足22が上方に退避するタイミングで下降して上布CU及び下布CDを押さえ、送り歯21と送り足22とが噛み合って布送りを行うタイミングで上昇する。
上記送り歯21、送り足22及び布押さえ23は、いずれも針棒上下動機構及び釜機構の駆動源となるミシンモータ15(図15参照)から動力を得ている。
即ち、送り歯21は、ミシンモータ15の回転動作を上下の往復動作に変換する伝達機構と前後の往復動作に変換する伝達機構とにより上下と前後の往復動作を同期的に付与することで長円運動を行わせることを可能としている。
送り足22も同様であり、ミシンモータ15の回転動作を前後動に変換して送り足22を支持するロッドに付与することで送り足22を前後に往動させると共に、ミシンモータ15の回転動作を上下動に変換して送り足22を支持するロッドに付与することで上下動させる。これにより、送り足22に長円運動を行わせることを可能としている。
また、布押さえ23を支持するロッドに対してはミシンモータの回転動作を上下動に変換して伝達し、当該上下動を実現する。
【0024】
[仕切り板]
仕切り板11は、X軸方向に沿った長尺の平板であり、X軸方向(正)側の端部でミシンフレームにより片持ち状態で支持されている。
仕切り板11の下側は、ミシンベッド部の上面から幾分上方に離間して隙間が形成されており、当該隙間を通って下布CDが搬送される。また、仕切り板11の上側では上布CUが搬送され、これにより、上布CUと下布CDとを分離して個別に横送りを行うことが可能となっている。
【0025】
[上側横送り機構]
上側横送り機構30は、主送り機構20に搬送される上布CUの上面に接してX軸方向に移動させる上側ローラ31と、この上側ローラ31を先端部で支持するアーム32と、アーム32を揺動させて上側ローラ31の上布CUに対する圧接力を調節する上側ソレノイド33(図15参照)と、アーム32の内側に配した駆動ベルトにより上側ローラ31に正逆の回転を付与する上側パルスモータ34(図15参照)とを主に備えている。
【0026】
上記アーム32は、X軸方向に沿って位置調節可能な基台35からX軸(逆)方向に向かって延出され、また、アーム32の基端部は基台35によってY軸方向に沿った回動軸回りに回動可能に支持されている。
そして、アーム32の先端部には、上側ローラ31がY軸方向に沿った回転軸回りに回転可能に支持されている。
【0027】
上側ローラ31の下方には仕切り板11が設けられ、仕切り板11と上側ローラ31の間を上布CUが搬送される。
上側ソレノイド33は、電流制御によりアーム32を回動させて先端側の上側ローラ31を昇降させることができる。そして、上側ローラ31を下降させることで仕切り板11上の上布CUに圧接し、さらに、上側パルスモータ34によって上側ローラ31を回転させることで、上布CUをX軸方向の正逆いずれの方向にも移動させることができる。この横送り動作により、上布CUの側端部がX軸方向に沿って移動し、当該側端部から針落ち位置までの距離である縫い代の大きさを自在に変えることを可能としている。
また、上側ソレノイド33による上側ローラ31の昇降により、上布CUに対する上側ローラ31の圧接力や布厚に応じた適正な圧接力の調節を自在に行うことが可能となっている。
【0028】
[下側横送り機構]
下側横送り機構36は、図2に示すように、ミシンベッド部の内部に配設されており、ミシンベッド部の上面の上を主送り機構20によって搬送される下布CDの下面に下方から接してX軸方向に移動させる下側ローラ37を備えている。
また、下側横送り機構36は、上側横送り機構30と同様に、下側ローラ37を先端部で支持するアーム(図示略)と、アームを揺動させて下側ローラ37の下布CDに対する圧接力を調節する下側ソレノイド38と、下側ローラ37に正逆の回転を付与する下側パルスモータ39とを備えている。
そして、仕切り板11の下方を搬送される下布CDに下方から下側ローラ37を圧接させ、さらに、下側ローラ37を回転させることで、下布CDをX軸方向の正逆いずれの方向にも移動させることが可能となっている。また、下布CDに対する下側ローラ37の圧接力や布厚に応じた適正な圧接力の調節も可能である。
【0029】
[上布及び下布検出装置]
図3は上布検出装置40及び下布検出装置60の斜視図である。図示のように、上布検出装置40と下布検出装置60とは、これらの間に、両面に光沢のある薄い金属板からなる反射板12を挟んで一体的に結合された状態でミシンフレームに支持される。
上布検出装置40及び下布検出装置60とは、それらの長手方向をX軸方向に沿わせた状態で、X軸方向(正)側の一端部で片持ち状態でミシンフレームに支持される。
また、上布検出装置40及び下布検出装置60は、それらの結合状態でX軸(逆)方向側の端部がコ字状に開口しており、当該開口部の間には、反射板12がその表裏の反射面をX−Y平面に沿わせた状態で挟持されている。
縫製時には、上記開口部の反射板12の下側に下布CDのX軸方向(正)側の側端部が差し込まれた状態で当該側端部の有無及びそのX軸方向における位置の検出が行われると共に、上記開口部の反射板12の上側に上布CUのX軸方向(正)側の側端部が差し込まれた状態で当該側端部の有無及びそのX軸方向における位置の検出が行われる。
【0030】
[下布検出装置:全体]
図4は下布検出装置60を斜め下方から見た斜視図、図5は斜め上方から見た斜視図、図6は平面図、図7は図6のV−V線に沿った断面図、図8は図3のU−U線に沿った断面図、図9は図3のT−T線に沿った断面図である。なお、図4及び図5は後述するカバー体62を外した状態を示している。
下布検出装置60は、内部の構成を支持する筐体を構成するベース体61及び当該ベース体61の下面を覆うカバー体62と、下布CDの側端部のX軸方向における位置検出のための光照射を行う光源ユニット63と、光源ユニット63からの照射光を反射板12の下反射面に向けて反射する光学素子としての反射体64と、光源ユニット63からの照射光に基づく反射板12における反射像を受光する検出素子としてのリニアセンサ65と、下布CDの側端部の有無検出のための光照射を行うための光源としての発光LED66と、発光LED66からの照射光に基づく反射板12における反射光を受光する検出素子としての受光LED67とを備えている。
【0031】
[下布検出装置:光源ユニット]
図10は光源ユニット63の内部構造を示す断面図である。図示のように、光源ユニット63は、拡散光を発する光源としての発光LED631と、発光LED631が発する拡散光を平行光化する光学素子としての両凸のレンズ632と、これらを保持するケーシング633とを備えている。
発光LED631は赤外線発光LEDであり、反射板12の下反射面及び下布CDに赤外線を照射する。
ケーシング633は、レンズ632の光軸上に発光LED631が位置し、且つ、発光LED631からの拡散光が平行光化されるように相互間距離となるように発光LED631及びレンズ632を保持している。
なお、レンズ632は、拡散光を平行光化するものであれば両凸のものでなくとも良い。
【0032】
[下布検出装置:ベース体]
ベース体61は、全体的にX軸方向に沿った略直方体形であり、そのX軸方向(正)側の端部には、ミシンフレームにネジ止めするための取り付け穴611が上下に貫通形成されており、X軸(逆)方向側の端部にはその上面から一段低くなる段部612が形成されている。この段部612の上面は、X−Y平面に平行であり、組み付け時には前述した反射板12の下反射面に対向した状態となる。
また、段部612のX軸方向(正)側には、光源ユニット63が取り付けられる嵌合凹部613が形成されており、この嵌合凹部613により光源ユニット63が概ねX軸(逆)方向側に向けて平行光が出射されるように固定保持される。
【0033】
より、厳密に光源ユニット63からの平行光の照射方向を説明すると、まず、平行光の照射方向は、図6に示すように鉛直上方から見た場合に、X軸(逆)方向よりもZ軸を中心とする時計回りに微小角度θ1だけ傾斜している。
さらに、光源ユニット63の照射方向は、図7に示すようにY軸方向から見た場合に、X軸(逆)方向よりもY軸を中心とする時計回りに微小角度θ2だけ傾斜している。
【0034】
光源ユニット63は、平行光の照射方向をZ軸回りに角度θ1だけ傾斜させることにより、平面視での下布検出装置60の筐体形状である長方形の対角線に概ね沿って並ぶように、光源ユニット63と反射体64とを配置とすることができ、これにより、下布検出装置60の筐体(ベース体61及びカバー体62)のY軸方向の幅を縮小して装置の小型化を図ることが可能となる。
また、同様に、光源ユニット63の照射方向をY軸回りに角度θ2だけ傾斜させることにより、側面視での下布検出装置60の筐体形状である長方形の対角線に概ね沿って並ぶように、光源ユニット63と反射体64と配置とすることができ、これにより、下布検出装置60の筐体(ベース体61及びカバー体62)のZ軸方向の幅を縮小して装置の小型化を図ることが可能となる。
【0035】
ベース体61の段部612の下面とカバー体62との間の空間は反射体64とリニアセンサ65の保持スペースとなっている。
図8に示すように、段部612の下部において、反射体64はY軸(正)方向側に位置し、リニアセンサ65はY軸(逆)方向側に配置されている。そして、反射体64は、光源ユニット63からの平行光を、X軸方向(正)を向いた視線でX軸を中心とする時計回りに角度θ3だけ鉛直上方から傾斜した方向に反射する。
また、反射板12の下反射面は、反射体64に反射された照射光を、X軸方向(正)を向いた視線でX軸を中心とする反時計回りに角度θ3だけ鉛直下方から傾斜した方向に反射して下方のリニアセンサ65で受光させる。
【0036】
前述した光源ユニット63の嵌合凹部613から反射体64までの間には、光源ユニット63の照射方向に沿ってスリット状の導光部615が穿設されている。この導光部615は、光源ユニット63の平行光が当該導光部615を通過して反射体64の後述する反射面641に反射されて反射板12の下側反射面にスリット光として投影されたときに、当該スリット光の長手方向がX軸方向に平行になるようにそのX軸回りの傾斜角度が調整されている。
また、反射体64から段部612の上面にかけて、反射面641に反射されたスリット光が通過するスリット状の出射孔616がX軸方向に沿った状態で形成されている。
さらに、段部612の上面からリニアセンサ65にかけて、反射板12に反射されたスリット光が通過するスリット状の入射孔617がX軸方向に沿った状態で形成されている。
【0037】
[下布検出装置:反射体]
ここで図11の説明図に基づいて反射体64の反射面641について詳説する。
下布検出装置60では、下布CDの厚さが厚い場合や反射板12と下布CDとに隙間を生じている場合でも、下布CDのX軸方向(正)側の側端部のX軸方向における位置を正確に検出することを目的とする。
反射板12の下反射面に対して下布CDの下面に高低差が生じていると、従来にミシンでは、下布CDの側端部のX軸方向における位置を示す下反射面による反射光の一部が下布CDにより遮蔽され、下布CDの側端部のX軸方向における位置に狂いを生じていたが、この下布検出装置60では、反射板12の下反射面に対して下布CDの下面に高低差が生じている場合でも、下布CDが下反射面による反射光を遮蔽しない方向から平行光の照射を行うことで、問題の解決を図っている。
即ち、反射板12に対する平行光の照射方向は、Y−Z平面に平行であることを必須の要件とする。その際、照射する平行光は、X軸回りの傾きを生じていても良い。
【0038】
一方、前述した図6及び図7に示すように、光源ユニット63はその光軸(平行光の進行方向)がX軸(逆)方向に向かう方向に対してZ軸回りに角度θ2、Y軸回りに角度θ1傾斜している。
従って、反射体64の反射面641は、反射板12に対してY−Z平面に平行な方向で平行光を照射するために、以下の傾斜角度に設計されている。
【0039】
図11において光源ユニット63の位置を点A、反射体64の反射面641の平面上で光源ユニット63からの平行光が照射される位置を点B、反射板12の下反射面において反射面641からの反射光が照射される位置を点Cとする。
線分BAの単位方向ベクトルは前述した傾斜角度θ1とθ2とにより求めることができる。
線分BCの単位方向ベクトルは、前述した傾斜角度θ3及び当該単位方向ベクトルがY−Z平面に平行であることにより求めることができる。
線分BAの単位方向ベクトルと線分BCの単位方向ベクトルとを合成した方向ベクトルBを法線とする平面が反射面641となる。
【0040】
光源ユニット63から出射した平行光は、上記傾斜角度に設定した反射面641の反射により、ベース体61のY軸方向中間位置で反射板12の下反射面においてX軸方向に沿ったスリット光として投影される。このとき、平行光は、前述したように、Y−Z平面に平行であって鉛直上方に対してX軸回り(X軸方向(正)の視線で時計回り)に角度θ3傾斜した方向で反射板12の下反射面に入射する。
下布検出装置60は、下布CDの側端部におけるX軸方向の位置を精度良く検出する必要があるが、下布CD及び反射板12に照射される平行光がY−Z平面に平行であれば、図12(A)に示すように、反射板12の下反射面に投影される下布CDの側端部のX軸方向の位置Eのズレは生じない。これは、下布CDの厚さが厚い場合や下布CDが下反射面から離間している場合でも同様である。
また、下布CD及び反射板12に照射される平行光は、図12(B)に示すように、X軸回りに角度θ3で傾斜しているが、反射板12の下反射面に投影される下布CDの側端部のX軸方向の位置Eについては影響が生じない。
【0041】
[下布検出装置: リニアセンサ]
リニアセンサ65は、反射板12の下反射面に照射される平行光の反射光の進行方向先に設けられている。即ち、下反射面における平行光の照射位置から、Y−Z平面に平行な方向であって鉛直下方に対してX軸回り(X軸方向(正)の視線で反時計回り)にθ3だけ傾斜した方向に向かった先にリニアセンサ65が配置されている。
このリニアセンサ65は、反射板12の下反射面からの反射光の進行方向に対してその受光面が垂直となるように傾斜してベース体61の段部612に取り付けられている。
このリニアセンサ65の受光面は、その長手方向がX軸方向を向いた矩形の平面であり、X軸方向に沿って複数の受光素子が並び、平面状に敷き詰められている。
また、リニアセンサ65の受光面には、可視光カットフィルタが装備されており、赤外線以外の可視光等の受光を阻止している。
【0042】
反射板12の下反射面に照射されたX軸方向に沿ったスリット状の平行光は反射して、リニアセンサ65の受光面でもX軸方向に沿ったスリット状に投影される。
例えば、反射板12の下側に下布CDが存在する場合には、反射板12の下反射面に照射される平行光はX軸方向における一部分が下布CDの側端部に遮蔽されるので、スリット状の反射光はその長手方向における下布CDの側端部に対応する位置で光強度に差が生じる。リニアセンサ65は、X軸方向に沿って受光素子が並んで形成されているので、各受光素子が検出する光強度の差から、下布CDの側端部に対応する位置を特定することができ、これにより、下布CDの側端部のX軸方向における位置を得ることが可能となっている。
【0043】
[下布検出装置:下布の側端部の有無検出]
図6,7及び9に示すように、下布CDの側端部の有無検出のための発光LED66及びその反射光を受光する受光LED67は、前述した反射体64及びリニアセンサ65と同様に、ベース体61の段部612とカバー体62との間に保持されている。
これら発光LED66及び受光LED67は、前述した反射体64及びリニアセンサ65よりもX軸(逆)方向側に配置されている。つまり、これらは、上布検出装置40と下布検出装置60とより形成されるX軸(逆)方向側のコ字状開口部の外側近傍に設けられている。そして、縫製開始時に主送り機構20により搬送される下布CDの先頭が反射板12と段部612との間に到達したことを検知したり、搬送の終了時に下布CDの終端が反射板12と段部612との間を通過したことを検知する場合に使用される。
【0044】
図9に示すように、発光LED66は、Y−Z平面に平行であって鉛直上方に対してX軸方向(正)の視線でX軸を時計回りにθ3傾斜した角度に向けられて配置されている。
また、受光LED67は、Y−Z平面に平行であって鉛直上方に対してX軸方向(正)の視線でX軸を反時計回りにθ3傾斜した角度に向けられて配置されている。
そして、発光LED66からの照射光は、反射板12の下反射面におけるベース体61のY軸方向中間位置において反射し、その反射光が受光LED67に受光されるようになっている。
なお、発光LED66は拡散光を発する点光源だが、発光LED66は、段部612を上下に貫通して形成された出射孔618の奥に配置されているので出射孔618が絞りとなり、同様に、受光LED67は、段部612を上下に貫通して形成された入射孔619の奥に配置されているので入射孔619が絞りとなるので、発光LED66からの照射光が受光LED67に直接受光されないようになっている。
【0045】
[上布検出装置]
図13は上布検出装置40を斜め上方から見た斜視図、図14は斜め下方から見た斜視図である。
図3、8,9,13,14に示すように、上布検出装置40は、下布検出装置60をX軸回りに180°回転して上下を反転させた状態とほぼ等しく、当該下布検出装置60の各構成とほぼ同一構造のベース体41、カバー体42、光源ユニット43、反射体44、リニアセンサ45、発光LED46、受光LED47とを備えている。このように、上布検出装置40はその向きが異なるだけで、下布検出装置60とほぼ同一なので、異なる点のみを説明する。
【0046】
ベース体41は、ベース体61と同様に段部412、嵌合凹部413、導光部415、出射孔416、418及び入射孔417、419を備えているが、ベース体61と異なり、その底面部に反射板12が嵌合する矩形の凹部414が形成されている。また、上布検出装置40は下布検出装置60と一体となってミシンフレームに支持されるので、ベース体61のように取り付け穴611は設けられていない。
【0047】
また、上布検出装置40は、X軸回りに180°反転して下向きでミシンフレームに支持されるので、図8に示すようにX軸方向に沿った視線から見た場合に、下布検出装置60の反射体64及びリニアセンサ65に対して、上布検出装置40の反射体44及びリニアセンサ45が互いの中心点Cを基準に点対称となる位置関係となっている。なお、中心点Cは上布検出装置40と下布検出装置60とを一体的に連結した状態でY軸方向及びZ軸方向における中心位置を示している。
上布検出装置40は、上記の構成により、下布検出装置60と同様にして上布CUの側端部のX軸方向における位置と上布CUの有無の検出を行う。
【0048】
[制御装置]
図15に示すように、制御装置13は、各種の演算処理を行うCPU131と、上述した各構成の動作制御に関するプログラムが格納されたROM132と、CPU131の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM133と、各種の設定データ、蓄積データ等を記録する記憶部としてのEEPROM134とを備えている。
また、制御装置13には、縫い針を上下動させるためのミシンモータ15と、上下のパルスモータ34,39と、上下のソレノイド33,38とがそれぞれ駆動回路15a,33a,39a,34a,38aを介して接続されている。
また、制御装置13には、下布検出装置60と上布検出装置40とが、それぞれインターフェイス60a,40aを介して接続されている。なお、各リニアセンサ65,45は、いずれも検出信号をアナログで出力するため、各検出装置60,40のインターフェイス60a,40aはA/Dコンバータを備えており、制御装置13はデジタル化された検出データを得ることが可能となっている。
また、ミシンモータ15により回転駆動する図示しないミシン主軸には、その軸角度を検出するエンコーダ16が設けられており、インターフェイス16aを介して検出軸角度を制御装置13に出力するようになっている。
さらに、上下送りミシン100は、各種設定を入力したり、各種情報を表示したりするための操作パネル17を備えており、かかる操作パネル17もインターフェイス17aを介して制御装置13に接続されている。
【0049】
[縫製制御]
制御装置13は、制御プログラムに従って上下送りミシン100の縫製の動作制御を実行する。なお、上布CUと下布CDに対する縫製制御において、共通する説明は省略し、ここでは下布CDに対する制御を主として説明することとする。
まず、制御装置13は、縫製時に、発光LED631,66を点灯する。これにより光源ユニット63からスリット状の平行光が出射し、反射体64の反射面641に反射して反射板12の下反射面を照射する。そして、平行光は下反射面に反射されてリニアセンサ65で受光される。
また、発光LED66からの照射光は、直接、反射板12の下反射面に反射されて受光LED67で受光される。
かかる状態において、制御装置13は、ミシンモータ15の駆動を開始して下布CD及び上布CUの搬送を開始する。
これにより、仕切り板11によって上布CUと下布CDとが上下に分離して搬送され、下布CDの先頭部が下布検出装置60と反射板12の間に侵入する。
これにより、受光LED67が検出する反射光の光強度が低下すると、制御装置13は、下布CDの到達を認識し、リニアセンサ65の出力の読み取りを開始する。
そして、リニアセンサ65の検出出力が、下布CDの側端部のX軸方向における位置が予め設定された規定位置に対して、X軸(正)方向寄りの場合には、制御装置13は、下側ソレノイド38を制御して下側ローラ37を所定の圧力で下布CDに当接されると共に下側パルスモータ39を駆動させて、下布CDをX軸(逆)方向に移動させる。また、下布CDの側端部の検出位置がX軸(逆)方向寄りの場合には下布CDをX軸(正)方向に移動させる。
かかる下布CDの位置検出と移動制御が微少時間のサイクルで連続的に行われることで、下布CDの側端部は規定位置を維持して縫い針の針落ち位置に搬送されるため、下布CDの縫い代が予め設定された値となるように縫製が行われる。
なお、上布CUの位置検出及び移動制御も下布CDの場合を全く同様にして行われる。
【0050】
[発明の実施の形態による技術的効果]
以上のように、上下送りミシン100は、上布CUと下布CDの検出装置40,60が、光源ユニット43,63の発光LEDからの照射光をレンズによって平行光化し、反射板12の反射面に対して垂直となる方向に対して搬送方向に直交する方向に沿ったX軸回りに傾斜した方向から平行光を照射する反射体44,64を備えている。
そして、この反射体44,64により、上述した方向から反射板12の反射面に平行光である照射光を照射した結果、上布CU及び下布CDの被照射面がその厚さや反射面との隙間の発生によって反射面から離れている場合であっても、上布CU及び下布CDの側端部が反射光を遮蔽しない。
従って、搬送方向に直交する方向について、上布CU及び下布CDの側端部の位置を正確に求めることができ、上布CU及び下布CDの側端部を正確に目標位置に合わせる制御が可能となり、縫い品質の向上を実現することが可能となる。
また、上布CUと下布CDとをそれぞれ縫い代を調整することができるので、上布CUと下布CDとで側端部の位置をより正確に揃えることが可能となり、上布CUと下布CDとを縫い合わせる縫製において、縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0051】
また、上記上下送りミシン100は、上布CUと下布CDの検出装置40,60が光源ユニット43,63の発光LEDからの照射光を反射板12側に反射する反射体44,64を有している。
仮に、反射体44,64を有していない場合には、光源ユニット43,63の発光LEDとレンズとを反射板12に対する傾斜角度θ3の照射方向に沿って並べて配置しなければならず、上布CUと下布CDの検出装置40,60が上下方向について大型化することが不可避となる。
しかしながら、上布CUと下布CDの検出装置40,60は反射体44,64を有するので、光源ユニット43,63の発光LEDとレンズとを、上下方向に並べる制約をなくすことができ、これらを、上布CUと下布CDの検出装置40,60を筐体の長手方向に並べて配置することが可能となる。このため、上布CUと下布CDの検出装置40,60の厚さを上下の方向について薄くすることが可能となり、針板下側の狭いスペースや横送り機構と針棒との狭いスペースに配置することが容易となり、端部検出装置の組み込みの容易化、ひいてはミシンの小型化を実現することが可能となる。
【0052】
また、上布CUと下布CDの検出装置40,60は、光源ユニット43,63の発光LEDとレンズとが概ねX軸方向に沿って並んだ配置であることから、Y軸方向についても検出装置40,60の小型化を図ることが可能となり、これにより上下の横送り機構30,36を針落ち位置により近づけて配置することができ、これにより、縫い代をより正確に調節してさらなる縫い品質の向上を図ることが可能となる。
さらに、上布CUと下布CDの検出装置40,60は、いずれもX軸方向に沿ったスリット状の平行光を反射板12に向かって照射するので、その反射光の長短の変化から上布CU及び下布CDの側端部のX軸方向における位置を容易且つ正確に得ることが可能である。
【0053】
[その他]
なお、上布検出装置40と下布検出装置60とは、X軸方向から見て反射体44とリニアセンサ45の並びと反射体64とリニアセンサ65の並びが互いに逆となるように配置している。これは、光源ユニット43と光源ユニット63がそれぞれベース体41,61からわずかに外側に突出して取り付けられており、互いの光源ユニット43、63の干渉を避けるための配置である。
従って、光源ユニット43と光源ユニット63がそれぞれベース体41,61から突出しない場合には、X軸方向から見て反射体44とリニアセンサ45の並びと反射体64とリニアセンサ65の並びとを同一としても良い。
【0054】
[第二の実施形態]
第二の実施形態たる上布検出装置40Aについて図16に基づいて説明する。なお、上布検出装置40Aについて上布検出装置40と同一の構成については、同じ符号を付して重複する説明は省略する。
上記第一の実施形態では、上布検出装置40と下布検出装置60の双方が反射体44,64を備える構成としたが、例えば、ミシンが上布検出装置の設置スペースに余裕がある場合には、上布検出装置については反射体44を設けない構成としても良い。
例えば、光源ユニット43の光軸を反射板12の上反射面に対する照射方向(鉛直下方に対してX軸(正)方向視で反時計回りに角度θ3だけ傾斜させた方向)に向けてベース体41Aに取り付け、内部の発光LEDとレンズとが上反射面に対する照射方向に並ぶ配置とし、光源ユニット43の照射方向前側にスリット状の導光部615Aを形成することで、反射体44を介することなく、光源ユニット43から反射板12に直接的に平行光を照射しても良い。
【0055】
この場合、上布検出装置40Aは、上布検出装置40と比較して、上下方向に大きくなるが、反射体44を不要として、構成の簡易化を図ることが可能となる。
なお、上記上布検出装置40Aでは、光源ユニット43をY軸(正)方向側、リニアセンサ45をY軸(逆)方向側に配置しているが、これは逆の配置としても良い。
また、ミシンが下布検出装置の設置スペースに余裕がある場合には、上布検出装置40については反射体44を備える構成とし、下布検出装置については反射体64を設けない構成としても良い。この場合、下布検出装置の光源ユニットを上布検出装置40Aの光源ユニット43のように取り付ければ良い。
【0056】
[第三の実施形態]
第三の実施形態たる上布検出装置40A及び下布検出装置60Aについて図17に基づいて説明する。なお、下布検出装置60Aについて下布検出装置60と同一の構成については、同じ符号を付して重複する説明は省略する。
第一の実施形態では、上布検出装置40と下布検出装置60の双方が反射体44,64を備える構成としたが、例えば、ミシンが上布検出装置と下布検出装置の双方の設置スペースに余裕がある場合には、反射体44を備えていない上布検出装置40Aと反射体64を備えていない下布検出装置60Aとをミシン100に搭載しても良い。
【0057】
上布検出装置40Aは第二の実施形態のものと同一である。
また、下布検出装置60Aは、光源ユニット63の光軸を反射板12の下反射面に対する照射方向(鉛直上方に対してX軸(正)方向視で時計回りに角度θ3だけ傾斜させた方向)に向けてベース体61Aに取り付け、内部の発光LED631とレンズ632とが下反射面に対する照射方向に並ぶ配置とし、光源ユニット63の照射方向前側にスリット状の導光部615Aを形成することで、反射体64を介することなく、光源ユニット63から反射板12に直接的に平行光を照射しても良い。
【0058】
この場合、上布検出装置40A及び下布検出装置60Aは、上布検出装置40及び下布検出装置60と比較して、上下方向に大きくなるが、反射体44、64を不要として、構成の簡易化を図ることが可能となる。
なお、下布検出装置60Aもまた、光源ユニット63をY軸(正)方向側、リニアセンサ65をY軸(逆)方向側に配置しているが、これは逆の配置としても良い。また、光源ユニットをリニアセンサの配置について、上布検出装置40Aと下布検出装置60Aとで互いに逆としても良い。
【符号の説明】
【0059】
10 布押さえ
11 仕切り板
12 反射板
13 制御装置
14 針板
20 主送り機構
30 上側横送り機構
36 下側横送り機構
40,40A 上布検出装置(端部検出装置)
415,415A 導光部
43 光源ユニット
431 発光LED(光源)
432 レンズ(光学素子)
44 反射体(光学素子)
441 反射面
45 リニアセンサ(検出素子)
60,60A 下布検出装置(端部検出装置)
615,615A 導光部
63 光源ユニット
631 発光LED(光源)
632 レンズ(光学素子)
64 反射体(光学素子)
641 反射面
65 リニアセンサ(検出素子)
100 上下送りミシン
CD 下布(下側被縫製物)
CU 上布(上側被縫製物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被縫製物を水平面に沿って所定の送り方向に送る主送り機構と、
前記被縫製物を前記水平面に平行且つ前記送り方向に垂直な被縫製物幅方向に沿って移動させる横送り機構と、
前記被縫製物の前記被縫製物幅方向における側端部から針落ち位置までの長さである縫い代を検出するための端部検出装置と、
前記端部検出装置の検出に基づいて前記被縫製物の縫い代が目標値となるように前記横送り機構を制御する制御装置とを備えるミシンにおいて、
前記端部検出装置は、
搬送される前記被縫製物の側端部と当該被縫製物の背後に設けられた反射面との境界位置を照射する光源と、
前記反射面による反射光を受光する複数の受光部が前記被縫製物幅方向に沿って複数並んで設けられた検出素子と、
前記光源からの照射光を平行光化し、前記反射面に対して垂直方向又は当該垂直方向に対して前記被縫製物幅方向に沿った軸回りに傾斜した方向から前記平行光化した照射光を照射する光学素子とを備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記端部検出装置が、前記光源からの照射光を前記反射面側に反射する反射体を備えることを特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記端部検出装置は、前記光源とその照射光を平行光化する前記光学素子とが前記被縫製物幅方向に並ぶ配置とし、
前記反射体は、この光学素子により平行光化された照射光を前記被縫製物側に反射することを特徴とする請求項2記載のミシン。
【請求項4】
前記被縫製物は、上側被縫製物と下側被縫製物とからなり、
前記端部検出装置と前記横送り機構とを、前記上側被縫製物と前記下側被縫製物とについてそれぞれ備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシン。
【請求項5】
前記端部検出装置は、前記被縫製物に対する照射光を前記被縫製物幅方向に沿ったスリット状とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−59577(P2013−59577A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201267(P2011−201267)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】