説明

ムスク香化合物

本発明はムスキィ−アーシィ特徴を有する賦香成分に有用である、5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−ヘキサヒドロナフタレンのケト誘導体または5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−オクタヒドロナフタレンのケト−エポキシ誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は香料分野に関する。より詳細には、以下に記載するような式(I)または(I′)で定義されるような、5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−ヘキサヒドロナフタレンのケト誘導体または5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−オクタヒドロナフタレンのケト−エポキシ誘導体に関する。
【0002】
従来技術
ムスク香ノートを有し、かつ組成物に興味深い嗅覚効果を付与することのできる化合物は、特にこの化合物が優れたバランスのとれたアーシィノートを有する場合に、香料産業において非常に興味を持たれている。
【0003】
我々が知る限りにおいて、以下に定義する式(I)または(I′)に属する化合物は公知ではない。
【0004】
従来技術において、本発明の化合物と構造的な類似性を有する有用な賦香成分のいくつかの例は開示されている。しかしながら、従来技術の化合物は式(I)または(I′)の化合物とはその構造において、およびその官能特性において異なっており、こうして従来技術の化合物は本願の先行技術であると認めることはできない。
【0005】
この従来技術の化合物の例としてはEP405427またはEP664286に記載された芳香族環を有する化合物またはUS3773836に記載されたインダノンの誘導体を挙げることができる。
【0006】
発明の詳細な説明
式(I)または(I′)
【0007】
【化1】

[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、かつ
a)式(I)中:
nは1であり、点線は単結合を表すか;または
nは0であり、点線は二重結合を表す;または
b)式(I′)中:
nは0であり、波線は二重結合を表し、点線は単結合を表すか;または
nは0であり、波線は単結合を表し、点線は二重結合を表すか;または
nは1であり、波線は単結合を表し、点線は単結合を表す]の化合物が、ムスキィ−アーシィタイプの驚くべき芳香特性を有し、かつこの化合物が香料、賦香組成物および賦香された製品の製造のために特に有用であり、かつ評価されることが見いだされたということを確認したことは驚くべきことである。
【0008】
式(I)または(I′)の化合物の中でも、式(II)または式(II′)
【0009】
【化2】

[式中、星印でマークされた炭素原子に結合する2つのメチル基はトランス配置を有し、R、nおよび点線は式(I)に示した意味を有する]の化合物は、その明らかなフレグランスおよび香気の直接性(Substantivity)またはテナシティーにより、本発明の特に有利な実施態様を示す。
【0010】
前記の式に相当する化合物の中で、限定されない例として、特に(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンを挙げることができるが、これは非常に強くかつ複雑な香気プロフィールを有し、そのうちのいくつかのニュアンスは本発明の化合物の典型的なムスキィ−アーシィノートと共に存在する。実際、その香気は優れたムスキィで、かつアーシィ−セラーノートにより特徴付けられ、驚くことに、Tonalide(R)(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,6,8,8−ヘキサメチル−2−ナフチル)−1−エタノン;出所:PFW、Holland)の香気を想起させ、フルーティー−マルメロ、ニトロ−ムスクタイプおよび僅かにアニマル様のボトムノートを有する。ニトロ−ムスクボトムノートの存在は、芳香環のない化合物において非常に驚くべきことである。更に、付け加えると、ムスク様Cashmeran(R)(1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,1,2,3,3−ペンタメチル−4−インデノン;出所:I.F.F., USA)に典型的なウッディノートは弱く、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンの特徴的な香気に最少に寄与する。全体的なフレグランスは同様に多くの表面および特に皮膚または繊維に高く直接的でもある。
【0011】
実際に、このアーシィノートおよび僅かなアニマル様のために、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンのフレグランスはTonalide(R)の香気を想起させ、加えてフルーティーでニトロ−ムスク特徴およびCashmeran(R)の香気に類似の僅かにアニマルコノテーションを有する、と言うことができる。
【0012】
本発明の化合物の他の例は(6RS,7RS)−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンであり、これは前記の化合物の香気プロフィールに非常に似た香気プロフィールを有するが、後者とはアンブレットタイプのノートの存在およびより強力なアーシィノートにより異なっており、これはTonalide(R)の香気をより強く、またはVulcanolide(R)(トランス−5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−2−ナフタレンカルバルデヒド;出所:Firmenich,スイス)の香気を想起させる。
【0013】
式(II)の化合物の更なる例は(4aRS,6RS,7RS,8aSR)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンである。該化合物は、ムスキィ−アーシィおよびニトロ−ムスクノート、並びにパイン、パウダリーおよびスイートなアンダーノートにより特徴付けられたフレグランスを有する。しかしながら、この本発明の化合物は前記の化合物とは、前記2つの化合物のものより弱いアーシィコノテーションを有することにより異なっている。(4aRS,6RS,7RS,8aSR)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンの全体的な官能プロフィールは、Galoxilide(R)(スイート−ムスキィ香気を有するとしてしばしば記載されている他の芳香族ムスク)の方向にある。
【0014】
前記エポキシドの他の異性体、すなわち(4aSR,6RS,7RS,8aRS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンは、その異性体よりムスキィであるが、弱いフレグランスを有する。
【0015】
式(I′)または(II′)の化合物に関しては、限定されない例として、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(3H)−オンを記載することができ、これは通常のムスキィおよびアーシィ特性に加えて、同様に僅かにウッディー−西洋梨ボトムノートも有する。
【0016】
更に、3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンも記載することができ、これは優れたムスキィ、ドライおよびパウダリーノートを有し、更にアーシィおよび僅かにウッディーコノテーションを有する。この化合物の全体の香気はTonalide(R)およびGalaxolid(R)の香気を想起させる。
【0017】
更に、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンの香気は強さと優れたバランスを有するアーシィ・ムスキィ、ムスクアンブレットタイプのノート並びにパウダリーおよびアンブレット種子アンダーノートにより特徴付けられる。全体の香気はGalaxolide(R)およびCelestolide(R)(1−(6−t−ブチル−1,1−ジメチル−4−インダニル)−1−エタノン;出所:I.F.F., USA)の方向のムスキィ−アーシィタイプとして記載することもできる。
【0018】
従って、本発明の化合物はUS3773836に記載されている化合物の構造に類似性を有するにもかかわらず、後者のものとは官能プロフィールにおいて全く異なっている。実際、本発明の化合物のムスクノートは、US3773836のムスクノートとは異なり、いずれにしろ明らかなアーシィノートの存在において特徴を有し、ウッディーノートが明確に存在しないか、または非常に弱く、かつ“貴重なウッド”タイプというよりむしろパインタイプである。実際、本発明の化合物の香気プロフィールはCashmeran(R)の方向ではなくて、むしろTonalide(R)またはGalaxolide(R)の方向である。
【0019】
本発明の特に好適な実施態様によれば、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンは優先的に香料適用に使用される。
【0020】
一般に、本発明の化合物は、出発材料として5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−ナフタレンを、そのシスまたはトランス異性体またはこれらの混合物の形で使用して、得ることができる。このヘプタメチル−ナフタレン誘導体は、例えば、実施例に記載されているような方法を用いて、場合により3位で脱メチル化して、5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−ナフタレンにすることができる。その後、5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−ナフタレンおよび5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−ナフタレンの両方をバーチタイプの反応または部分的な水素化を用いて部分的に還元して、所望のヒドロナフタレン誘導体にすることができる。従って、後者のものを酸化してエポキシドにし、これを相応するケトンに転位させるか、またはアリル位で酸化し、ケトンを獲得し、場合によりこれを更にエポキシ化する。
【0021】
そのような合成工程の典型的な例は以下の例中に記載されている。
【0022】
本発明の化合物は貴重な賦香成分であるので、本発明は前記化合物の賦香成分としての使用にも関する。言い方を代えると、賦香組成物または賦香された製品の香気特性を付与、増強、改善または修正するための方法に関し、この方法は前記組成物または製品に式(I)および/または(I′)の少なくとも1つの化合物を有効量で加えることからなる。“式(I)および/または(I′)の化合物の使用”とは、ここでは式(I)および/または(I′)の化合物を含有する全ての組成物の使用とも理解されるべきであり、かつ有利には活性成分として香料分野に適用することができる。
【0023】
実際、賦香成分として有利に適用することのできる、該組成物も同様に本発明の対象である。
【0024】
従って、本発明の更なる対象は
i)賦香成分としての、前記の本発明の化合物少なくとも1種;
ii)香料キャリヤーおよび香料ベースからなる群から選択された少なくとも1種の成分:および
iii)場合により少なくとも1種の香料補助剤
を含有する賦香組成物である。
【0025】
“香料キャリヤー”で、ここでは香料分野の観点から実質的に中性の材料を意味する、すなわちこのキャリヤーは明らかに賦香成分の官能特性を著しく変化させない材料であると理解される。このキャリヤーは液体または固体である。
【0026】
液体キャリヤーとしては、限定されない例として、乳化系、すなわち溶剤および界面活性剤系、または香料分野に通常使用される溶剤を挙げることができる。香料分野に通常使用される溶剤の性質およびタイプの詳細な記述を網羅することはできない。しかしながら、限定されない例として、ジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはクエン酸エチルのような溶媒を挙げることができ、これらは最も常用されている。
【0027】
固体キャリヤーとして、限定されない例として、吸収ゴムまたはポリマー、またはさらにカプセル封入材料を挙げることができる。そのような材料の例は、例えば、壁形成性材料および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類または三糖類、天然デンプンまたは変性デンプン、ヒドロコロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、またはさらに参考テキスト、例えばH. Scherz, Hydrokolloids: Stabilisatoren、Dickungs- und Gehermittel in Lebensmittel、食品化学、食品品質(Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet)シリーズの2巻, Behr's VerlagGmbH & Co., Hamburg, 1996に挙げられた材料を含んでいてよい。カプセル封入は、当業者に十分公知の方法であり、かつ例えば、例えば噴霧乾燥、アグロメレーションまたはさらに押出しのような技術を用いて実施されることができるか;またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル封入からなっている。
【0028】
概して言えば、“香料ベース”とは、本明細書中で少なくとも1つの賦香補助成分(co-ingredient)を含んでいる組成物であると理解される。
【0029】
前記の賦香補助成分は式(I)および/または(I′)の化合物ではない。さらに“賦香補助成分”とは、本明細書中で嗜好効果を付与するために賦香製剤または組成物において使用される化合物であることが理解される。言い換えれば、賦香するものであると見なされうるそのような補助成分は、肯定的なまたは快適な方法で組成物の香気を付与または修正することができ、かつまさに香気を有していないと当業者により認識されるはずである。
【0030】
ベース中に存在している賦香補助成分の性質およびタイプは、本明細書中でより詳細な記載を保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅されるものではなく、当業者は、これらをその一般的な知識に基づいておよび使用または適用目的および望ましい官能効果に従って選択することができる。一般的な用語で、これらの賦香補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、含窒素または含硫黄の複素環式化合物および精油のように変化に富んだ化学クラスに属しており、かつ前記の賦香補助成分は天然または合成の起源であってよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、参考テキスト、例えばS. Arctander著, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAの本またはその最新版、または類似の性質の他の研究、並びに香料分野における豊富な特許文献に挙げられている。前記の補助成分が制御された手法で多様なタイプの賦香化合物を放出するのに公知の化合物であってもよいことも理解される。
【0031】
香料キャリヤーおよび香料ベースを双方とも含んでいる組成物のために、既に明記された物以外に適している香料キャリヤーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン類、イソパラフィン、例えば商標Isopar(R)(出所:Exxon Chemical)のもとで公知のものまたはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えば商標Dowanol(R)(出所:Dow Chemical Company)のもとで公知のものであってもよい。
【0032】
概して言えば、“香料補助剤”とは、本明細書中で付加的に与えられる利点、例えば色、特定の耐光性、化学的安定性等を付与できる成分であると理解される。賦香ベースにおいて通常使用される補助剤の性質およびタイプの詳細な記載を網羅することはできないが、しかし前記の成分が当業者に十分公知であることが言及されるべきである。
【0033】
本発明の少なくとも1つの化合物および少なくとも1つの香料キャリヤーからなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施態様を表し、同様に本発明の少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの香料キャリヤー、少なくとも1つの香料ベースおよび場合により少なくとも1つの香料補助剤を含んでいる賦香組成物を表す。
【0034】
前記組成物中で式(I)および/または(I′)の1種より多くの化合物を有するという可能性が重要であることを本明細書中で言及することが有用である、それというのも調香師に、本発明の多様な化合物の香気調性を有し、それゆえこれらの研究のための新規の手段を生み出す、アコード、香水を調製することを可能にするからである。
【0035】
本明細書中で、化学合成から直接に生じる、例えば十分な精製なしの、本発明の化合物が出発物質、中間体または最終生成物として含まれている任意の混合物は、本発明による賦香組成物であるとみなされることができない。
【0036】
さらに本発明の化合物は、前記化合物(I)が添加される消費製品の香気を肯定的に付与するまたは修正するために、近代香料の全ての分野において有利には使用されることもできる。それゆえに、
i)賦香成分として、上記で定義されたような本発明の少なくとも1つの化合物;および
ii)消費製品ベース
を含んでいる賦香された製品は本発明の対象でもある。
【0037】
明確にするために“消費製品ベース”とは、本明細書中で賦香成分と相容性である消費製品であると理解されることが言及されるべきである。言い換えれば、本発明による賦香された製品は、機能的製剤並びに場合により、消費製品、例えば洗剤またはエアフレッシュナーに、相応する付加的な利点のある剤および嗅覚的に有効な量の本発明の少なくとも1つの化合物を含んでいる。
【0038】
消費製品の成分の性質およびタイプは、より詳細な記載を本明細書中で保証するものではなく、これらはいずれにせよ網羅されるものではなく、当業者はこれらをその一般的な知識に基づいておよび前記の生成物の性質および所望の効果に従って選択することができる。
【0039】
適している消費製品の例は、固体または液体の洗剤および繊維柔軟剤並びに香料分野において常用の他の全ての製品、すなわち香水、コロンまたはアフターシェーブローション、賦香せっけん、シャワーまたはバスソルト、ムース、オイルまたはゲル、衛生製品またはヘアケア製品、例えばシャンプー、ボディケア製品、デオドラントまたは制汗剤、エアフレッシュナー並びに化粧品を含む。洗剤としては、多様な表面を洗浄または清浄化するための洗剤組成物または清浄製品のような適用目的があり、例えば繊維製品、皿または硬質表面の処理に向けられたものであり、それらはいずれも家庭用または工業的な使用に向けられている。他の賦香された製品は、ファブリックリフレッシュナー、アイロンウォーター、紙、ワイプまたはブリーチである。
【0040】
一部の前記の消費製品ベースは、本発明の化合物のための攻撃的な媒体を意味することもあるので、本発明の化合物を早期分解から、例えばカプセル封入により保護することも必要でありうる。
【0041】
多様な前記の製品または組成物中へ配合されることができる本発明による化合物の割合は、値の幅広い範囲内で変動する。これらの値は、賦香されるべき製品の性質および所望の官能効果並びに本発明による化合物が当工業界において通常使用される賦香補助成分、溶剤または添加剤と混合される場合に与えられたベース中の補助成分の性質に依存している。
【0042】
例えば、賦香組成物の場合に、典型的な濃度は、本発明の化合物が配合される組成物の質量に対して、本発明の化合物の0.5質量%〜50質量%のオーダーで、またはそれ以上ですらある。これらよりも低い濃度、例えば0.05質量%〜5質量%のオーダーでは、これらの化合物が賦香された製品中へ配合される場合に使用することができる。
【0043】
本発明を以下の例によりさらに詳細に記載するが、その際に略符号は当業界において通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示され;NMRスペクトルデータはHのために360または400MHz機械を用いておよび13Cのために90または100MHz機械を用いてCDCl(他に挙げられない限り)中で記録され、化学シフトδは標準としてのTMSに対してppmで示され、結合定数JはHzで表現される。
【0044】
実施例
例1
(6RS,7RS)−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンの合成
a)トランス−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレンの合成
Vulcanolide(R)(50.0g;193ミリモル)および10%Pd/C(500mg;1質量%)の混合物を、N下に凝縮器を備える二頚フラスコ中で170℃で24時間加熱した。次いで、10%Pd/C(500mg)の他の部分を添加し、加熱を16時間続けた。冷却した固体反応混合物をエーテル中に溶かし、Celite(R)で濾過し、濃縮し、かつバルブ・ツー・バルブ蒸留(0.01ミリバール;100〜125℃)し、所望のヘプタメチルナフタレン39.06g(収率=88%)が得られた。
【0045】
【数1】

【0046】
b)トランス−1,2,3,4,5,8−ヘキサヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレンの合成
メチルアミン(200ml、Fluka, Cylinder)をCO−凝縮器およびアルゴン管を備える五頚フラスコ中で凝縮した。温度が−12℃に達し、THF(40ml)およびEtOH(11.4ml、9.0g;196ミリモル)中のa)で得られた化合物(15.0g;65.1ミリモル)の溶液を添加した。この磁気で撹拌する溶液にリチウム(1.35g;196ミリモル)を2時間かけて少量宛添加した。添加の終了後、メチルアミンを1夜かけて蒸発させた。飽和NHCl水溶液を添加し、この生成物をエーテルで抽出した。有機相を水、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥し(NaSO)かつ蒸発させた(18.2g)。バルブ・ツー・バルブ蒸留(0.01ミリバール;120℃)し、所望の化合物(GCにおいて65%)およびトランス−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレン(GCにおいて25%)14.49gが得られた。表題化合物の外挿した収量は62%(9.42g)である。
【0047】
【数2】

【0048】
c)トランス−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレンの合成
例1.b)と同様に実施するが、反応混合物(Liの3当量を含有)を1時間撹拌した後、他のLi(3当量)およびEtOH(3当量)の部分を添加し、撹拌を更に−10℃で1時間続けた。トランス−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレン(2.00g;8.70ミリモル)から出発し、所望のオクタヒドロ−ヘプタメチルナフタレン1.93g(純度85%;収率81%)がバルブ・ツー・バルブ蒸留後に得られた。
【0049】
【数3】

【0050】
d)(6RS,7RS)−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンの合成
CHCl(186ml)中のCrO(12.8g;128ミリモル)の懸濁液を−23℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(DMP)(12.29g;128ミリモル)で一回処理した。20分後に、この溶液をCHCl(22ml)中のc)で得られた化合物(1.50g;純度85%;5.51ミリモル)の溶液を(20分間かけて)滴下して処理した。−20℃で2.5時間撹拌した後、6MNaOH水溶液(25ml)を添加し、この溶液を0℃で30分間撹拌した。次いで更に水を添加して生成物を抽出した。CHCl相を5%HCl水溶液およびブライン(3回)で洗浄し、最終的に乾燥し(NaSO)、かつ蒸発させた。粗生成物(2.45g)をバルブ・ツー・バルブ蒸留し(0.01ミリバール;150〜160℃)、蒸留物1.33gを得た。この蒸留物を更にフラッシュクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン/酢酸エチル98:2を使用)で精製し、これは所望のケトン569mgを提供した(純度約90%;収量=37%)。
【0051】
【数4】

【0052】
例2
3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンの合成
a)1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレンの合成
CHCl(80g)中のp−シメン(54.0g、0.4モル)の溶液をAlCl(1.36g、10.2ミリモル)で処理した。1時間の撹拌後に、(E)−4,4−ジメチル−2−ペンテン(20g、0.2ミリモル)を90分内に2℃で添加した。3時間の撹拌後に、この反応混合物を強力な撹拌下に氷/水混合物(40g)中に注いだ。これらの相を分離し、有機層を水で洗浄し、飽和NaHCO水溶液およびブラインで洗浄した。次いで、有機層を蒸発乾固し、粗生成物を蒸留し(50〜100℃/3トル)、次いで再蒸留し(70℃/0.7トル)、84/14のトランス/シス異性体の混合物として純粋な化合物が収率30%で得られた。主要異性体のNMRおよびMSスペクトルの両方共に相当する例1.a)中のトランス化合物に関して記載されているものと同一であった。
【0053】
b)1,2,3,4,5,8−ヘキサヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレンの合成
所望の化合物は1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,2,3,4,4,6−ヘプタメチルナフタレンを用いて、かつ実施例1b)に記載されていると同じ実験方法を適用して得られた。
【0054】
【数5】

【0055】
c)2,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−2,3−エポキシナフタレンの合成
t−ブチルヒドロペルオキシド(ノナン中5.5M(Fluka);12.63ml;69.5ミリモル)、Mo(CO)(214mg;0.8ミリモル;2モル%)および1,2−ジクロロエタン(38ml)の混合物をN下に70℃で30分間加熱した。該混合物を、b)により得られた化合物(14,49g;純度65%;40.5ミリモル)および1,2−ジクロロエタン(68ml)中のNaHPO(9.42g;40.5ミリモル)の撹拌溶液に80℃で15分間かけて添加した。2時間後、冷却した反応混合物を10%NaSO(184ml)で処理し、3時間撹拌した。抽出(エーテル)、有機層の洗浄(水、次いでブライン)および乾燥(NaSO)の後、粗生成物をバルブ・ツー・バルブオーブン中で蒸留し(0.01ミリバール、100〜120℃)、粗生成物を得て、これを更にフラッシュクロマトグラフィーにより精製して(SiO;シクロヘキサン/酢酸エチル98:2)、所望のエポキシド4.90gが4つのジアステレオマーの混合物の形で得られた(純度90%;収率=44%)。
【0056】
【数6】

【0057】
d)3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンの合成
BF・OEt(1.48g;1.30ml;10.4ミリモル)をCHCl(80ml)中の例1.a)で得られたエポキシド(2.05g:純度80%;6.60ミリモル)の溶液に3℃で3分以内に添加した。反応混合物を飽和NaHCO水溶液(25ml)で加水分解し、1時間撹拌した。この相を分離し、生成物をエーテルで抽出し、水、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥し(NaSO)かつ濃縮した。バルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃、0.05ミリバール)およびフラッシュクロマトグラフィー(SiO;シクロヘキサン/AcOEt=93:7)は表題化合物の単離を可能とした(673mg;純度90%;収率37%)。
【0058】
【数7】

【0059】
例3
(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンの合成
a)トランス−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−6−ジブロモメチル−ナフタレンの合成
CCl(400ml)中の例1a)で得られた化合物(39.06g;170ミリモル)およびNBS(72.4g;406ミリモル)の溶液を160Wランプで照射し、90分間還流加熱する。反応混合物をエーテル100mlで希釈し、水で洗浄し、かつこのように得られた有機層を乾燥し、蒸発させてGCにより純度92%の粗生成物が得られた。
【0060】
【数8】

【0061】
b)トランス−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−6−カルバルデヒド−ナフタレンの合成
前記ジブロミド(79.7g)、HCOONa(38.55g;567ミリモル)およびEtOH/水4:1(1400ml)を還流下(110℃)に90分間加熱した。EtOHを蒸発させ、エーテルで抽出した後、残分をMeOH(420ml)中に溶かし、KOH10%水溶液(185ml)で処理し、更に30分間加熱した。蒸発器でのMeOHの蒸発、エーテルでの抽出およびバルブ・ツー・バルブ蒸留(0.01ミリバール;150℃)により、所望のアルデヒド30.8g(収率:74%)が得られた。
【0062】
【数9】

【0063】
c)トランス−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチルナフタレンの合成
b)で得られた化合物(30.8g;126ミリモル)、10%Pd/C(616mg;2質量%)およびNaCO(940mg)の混合物をN下に、凝縮器を備える二頚フラスコ中で加熱し、21時間175℃に加熱した。冷却した固体反応混合物をエーテル中に溶かし、Celite(R)で濾過し、濃縮し、バルブ・ツー・バルブ蒸留により精製し(0.01ミリバール;125℃)、所望のナフタレン誘導体が得られた(純度:94%;収率=84%)。
【0064】
【数10】

【0065】
d)トランス−1,2,3,4,5,8−ヘキサヒドロ−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチルナフタレンの合成
メチルアミン(140ml)をCO−凝縮器およびアルゴン管を備える五頚フラスコ中で凝縮した。温度が−20℃に達し、THF(27ml)およびEtOH(8.1ml)中のc)で得られた化合物(10.0g;46.3ミリモル)の溶液を添加した。磁気により撹拌される溶液を−20〜−10℃でリチウム(964mg;138.9ミリモル)少量ずつで処理した。添加が完全に終了した後に(30分)、撹拌を5分間続け、次いで飽和NHCl水溶液を添加し、生成物をエーテルで抽出した。有機相を5%HCl水溶液、水および次いでブラインで洗浄し、最終的に乾燥し(NaSO)かつ蒸発させた。バルブ・ツー・バルブ蒸留(0.01ミリバール、120℃)は表題化合物を提供する(収率=45%)。
【0066】
【数11】

【0067】
e)(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オールの合成
THF(200ml)中の、d)において得られた化合物(48.2ミリモル)の溶液を0℃に冷却し、BH・MeS(36.2ミリモル)を滴下して処理した。70分間撹拌した後、水中(30ml)に溶かしたNaOH(72.2ミリモル)を添加し、かつ最終的に35%H12mlを添加した。反応混合物を1時間室温で撹拌し、次いでエーテルで抽出した。次いで、有機層を水、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで洗浄し、最終的に乾燥し(NaSO)、かつ蒸発させた。このアルコールは2つのジアステレオマー異性体の1/1混合物として得られ、かつ更に精製しなかった。
【0068】
【数12】

【0069】
f)(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンの合成
アセトン(220ml)中のe)で得られた化合物(23.8ミリモル)の溶液を0℃に冷却し、ジョーンズ試薬(47.5ミリモル)で処理した。添加の終了後、この反応混合物にブライン(200ml)を添加した。この生成物をペンタンで抽出し、水、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで洗浄し、最終的に乾燥し(NaSO)、かつ蒸発させた。蒸留(0.01トル;100℃)により粗生成物が得られ、これを更にクロマトグラフィー(SiO;シクロヘキサン/AcOEt=98:2)で精製し、所望のケトンが得られた(収率:最後の2工程に関して47%)。
【0070】
【数13】

【0071】
例4
(4aRS,6RS,7RS,8aSR)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オン、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オン、(4aSR,6RS,7RS,8aRS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンおよび(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(3H)−オンの合成
a)(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレンおよび(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,6,7,8,8A−オクタヒドロナフタレンの混合物の合成
メチルアミン(140ml)をCO−凝縮器およびアルゴン管を備える五頚フラスコ中で凝縮した。温度が−20℃に達し、THF(27ml)およびEtOH(8.1ml)中の例3.c)で得られた化合物(10.0g;46.3ミリモル)の溶液を添加した。磁気により撹拌される溶液を−20〜−10℃でリチウム(964mg;138.9ミリモル)少量ずつで処理した。添加が完全に終了した後に(30分)、撹拌を1時間続け、次いで付加的なリチウム(964mg;138.9ミリモル)を、脱色した懸濁液に添加し、撹拌を1時間続けた。飽和NHCl水溶液を添加し、生成物をエーテルで抽出した。有機相を5%HCl水溶液、水および次いでブラインで洗浄し、乾燥し(NaSO)、かつ蒸発させる(9.78g)。バルブ・ツー・バルブ蒸留(0.01ミリバール、120℃)は(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン(GCで65%)および(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,6,7,8,8A−オクタヒドロナフタレン(GCで26%)の混合物9.35gを提供する。
【0072】
【数14】

【0073】
b)(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレンの合成
メチルアミン(140ml)をCO−凝縮器およびアルゴン管を備える五頚フラスコ中で凝縮した。温度が−20℃に達し、THF(27ml)およびEtOH(8.1ml)中の例3.c)で得られた化合物(10.0g;46.3ミリモル)の溶液を添加した。磁気により撹拌される溶液を−20〜−10℃でリチウム(964mg;138.9ミリモル)少量ずつで処理した。添加が完全に終了した後に(30分)、撹拌を5分間続け、次いで飽和NHCl水溶液を添加し、生成物をエーテルで抽出した。有機相を5%HCl水溶液、水および次いでブラインで洗浄し、乾燥し(NaSO)かつ蒸発させた(9.82g)。バルブ・ツー・バルブ蒸留(0.01ミリバール、120℃)は(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,5,8−ヘキサヒドロナフタレン(GCで50%)、(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン(GCで29%)および出発化合物(GCで20%)を含む混合物を提供した。この混合物をトルエン中の10%Pd/C(230mg)で水素化した。最終的な粗生成物をバルブ・ツー・バルブ蒸留し、(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン(GCで74%)、出発化合物(GCで20%)および異性体(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,6,7,8,8A−オクタヒドロナフタレン(GCで6%)を含有する混合物が得られる。
【0074】
c)(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンおよび(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(3H)−オンの合成
CHCl(500ml)中のCrO(46.9g;469ミリモル)の懸濁液を−20℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(DMP)(45.0g;469ミリモル)で一回処理した。20分後に、この暗紫色の溶液をCHCl(400ml)中のa)で得られた混合物(7.59g;34.5ミリモル)の溶液を滴下して(1時間)処理した。−20℃で1時間撹拌した後、6MNaOH水溶液(100ml)を添加し、この溶液を0℃で30分間撹拌した。次いで更に水を添加し、相を分離した。CHCl相を5%HCl水溶液およびブライン(3回)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、かつ蒸発させた。この濃縮物をバルブ・ツー・バルブ蒸留し(0.01ミリバール;150〜160℃)、DMPを含有する固体蒸留物と残分が得られた。トルエンからの再結晶化はDMPおよびDMPを含有する母液の回収を可能とした。これを選択的なバルブ・ツー・バルブ蒸留(1ミリバール;100℃)により除去した。残分をフラッシュクロマトグラフィーにより精製した(SiO、シクロヘキサン/酢酸エチル98:2)。
次の生成物が得られた:
【0075】
【数15】

【0076】
d)(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オン、(4aRS,6RS,7RS,8aSR)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンおよび(4aSR,6RS,7RS,8aRS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンの合成
CHCl(500ml)中のCrO(52.9g;529ミリモル)の懸濁液を−20℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(DMP)(50.7g;528ミリモル)で一回処理した。20分後に、この暗紫色の溶液をCHCl(400ml)中のb)で得られた(2RS,3RS)−1,1,2,3,4,4−ヘキサメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン(8.75g;純度74%)(29.4ミリモル)の溶液を滴下して(1時間)処理した。−20℃で4時間撹拌した後、6MNaOH水溶液(250ml)を添加し、この生成物をc)におけるように抽出した。残分をフラッシュクロマトグラフィーにより精製した(SiO、シクロヘキサン/酢酸エチル98:2を使用)。
次の生成物が得られた:
(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オン(収率=25%):前記と同じNMRスペクトルを有する。
【0077】
【数16】

【0078】
例5
賦香組成物の調合
フローラル、ウッディおよびハーバル特性を有する、男性のためのオードトワレを、次の成分を混合することにより製造した:
【0079】
【表1】

【0080】
ジプロピレングリコール中
1)(−)−(8R)−8,12−エポキシ−13,14,15,16−テトラノルラブダン;出所:Firmenich、スイス
2)出所:Firmenich、スイス
3)アリル(シクロヘキシルオキシ)−アセテート;出所:Dragoco、ドイツ
4)ハイシスメチルジヒドロジャスモネート;出所:Firmenich、スイス
5)メチルイオノン異性体の混合物;出所:Firmenich、スイス
6)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;出所:I. F. F.、スイス
7)3−ヘキセニル−メチルカルボネート;出所:I. F. F.、スイス
8)4/3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド;出所:I. F. F.、スイス
9)3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール;出所:Firmenich、スイス
10)出所:Givaudan SA、スイス
11)2−t−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート;出所:I. F. F.、スイス
12)出所:International Flavors & Fragrances、USA。
【0081】
前記オードトワレに、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンを100質量部添加することにより、このオードトワレに僅かにアンブレットで、かつパインである、優れた評価の観点をも有し、パワフルなムスキィで、アーシィなコノテーションを付与する。全体的な効果は、Cashmeran(R)またはTonalide(R)を添加することにより付与することができた効果の中間であったが、しかしながら直接性はCashmeran(R)の添加により付与されるより非常に優れていて、かつそのムスキィ−アンブレット特性はTonalide(R)により提供されるよりエレガントであった。
【0082】
前記オードトワレに、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンの代わりに、(6RS,7RS)−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンまたは(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンを添加することは、よりクラシカルなフレグランスを提供し、ここではアーシィ−ウッディ効果がTonalide(R)を添加することにより得ることができた効果よりより強調されていた。
【0083】
最後に、前記オードトワレに同量の(4aRS,6RS,7RS,8aSR)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンを添加することは、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンを添加することにより得られる効果に比べて非常にパウダリーで、同様にニトロ−ムスクである特徴を付与した。
【0084】
例6
賦香組成物の調合
フローラルおよびパウダリー特性を有する洗剤用の賦香ベースを、次の成分を混合することにより製造した:
【0085】
【表2】

【0086】
ジプロピレングリコール中
1)8,12−エポキシ−13,14,15,16−テトラノルラブダン;出所:Firmenich、スイス
2)出所:Firmenich、スイス
3)メチルジヒドロジャスモネート;出所:Firmenich、スイス
4)3−(3,3/1,1−ジメチル−5−インダニル)プロパナール;出所:Firmenich、スイス
5)メチルイオノン異性体の混合物;出所:Firmenich、スイス
6)3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;出所:Givaudan SA、スイス
7)出所:International Flavors & Fragrances、USA。
【0087】
前記賦香ベースに、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンを1200質量部添加することにより、この賦香ベースのフレグランスにめざましい暖かさと甘さを伴う、ムスキィ、アンバーおよびバルサミックの調和の出現が誘発された。
【0088】
しかしながら、このベースに(6RS,7RS)−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンまたは(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンの同量を添加した場合、全体の嗅覚効果はTonalide(R)により提供されるものに近い。(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンの添加により得られる効果は(6RS,7RS)−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンにより付与された効果より僅かによりアンブレットでもあった。
【0089】
前記の本発明の化合物の代わりに、(4aRS,6RS,7RS,8aSR)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オンを添加すると、ムスクアンブレットとして知られている賦香成分により提供することができていたと非常に類似の効果が付与された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または(I′)
【化1】

[式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、かつ
a)式(I)中:
nは1であり、点線は単結合を表すか;または
nは0であり、点線は二重結合を表す;または
b)式(I′)中:
nは0であり、波線は二重結合を表し、点線は単結合を表すか;または
nは0であり、波線は単結合を表し、点線は二重結合を表すか;または
nは1であり、波線は単結合を表し、点線は単結合を表す]の化合物。
【請求項2】
式(II)または式(II′)
【化2】

[式中、星印でマークされた炭素原子に結合する2つのメチル基はトランス配置を有し;Rは水素原子またはメチル基を表し;かつ
nは1であり、かつ点線は単結合を表すか、またはnは0であり、点線は二重結合を表す]の化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オン、(6RS,7RS)−3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オン、(4aRS,6RS,7RS,8aSR)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オン、(4aSR,6RS,7RS,8aRS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチルヘキサヒドロ−4a,8a−エポキシナフタレン−1(2H)−オン、(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(3H)−オン、3,5,5,6,7,8,8−ヘプタメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンまたは(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(1H)−オンである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
(6RS,7RS)−5,5,6,7,8,8−ヘキサメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−1(2H)−オンである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
i)賦香成分として、請求項1に定義された式(I)および/または(I′)の化合物少なくとも1種;
ii)香料キャリヤーおよび香料ベースからなる群から選択された少なくとも1種の成分:および
iii)場合により少なくとも1種の香料補助剤
を含有する賦香組成物。
【請求項6】
i)賦香成分として、請求項1に定義された式(I)および/または(I′)の化合物少なくとも1種;および
ii)消費製品ベース
を含有する賦香された製品。
【請求項7】
消費製品ベースが固体または液体の洗剤、繊維柔軟剤、香水、コロンまたはアフターシェーブローション、賦香セッケン、シャワーまたはバスソルト、ムース、オイルまたはゲル、衛生用品、ヘヤケヤ製品、シャンプー、ボディケヤ製品、デオドラントまたは制汗剤、エアフレッシュナー、化粧品、ファブリックリフレッシュナー、アイロンウォーター、紙、ワイプまたはブリーチである、請求項6記載の賦香された製品。
【請求項8】
請求項1に記載した、式(I)および/または(I′)の化合物の賦香成分としての使用。

【公表番号】特表2007−519616(P2007−519616A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540637(P2006−540637)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003628
【国際公開番号】WO2005/054220
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1、route des Jeunes、 CH−1211 Geneve 8、 Switzerland
【Fターム(参考)】