説明

メタリックナノ粒子コーティングを有する熱可塑性フィルム

本発明は、表面プラズモン共鳴を有するメタリックナノ粒子コーティング付き熱可塑性フィルムとその作製方法とに関する。光学フィルムの吸収ピークは、収縮時に短波長側にまたは収縮時に長波長側にシフトする。センサーは、メタリックナノ粒子コーティング付き熱可塑性フィルムを含み、ここで、メタリックナノ粒子の上に結合剤が配置され、かつ結合剤は、生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプル中に存在する所定の物質と相互作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリックナノ粒子コーティング付き熱可塑性フィルムとその調製方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
約1〜100ナノメートル(nm)の直径を有するメタリックナノ粒子は、半導体技術、磁気記憶、電子部品製造、および触媒作用をはじめとする用途に重要な材料である。メタリックナノ粒子は、ガス中蒸発により;流動ガスストリームの蒸発により;メカニカルアトリションにより;スパッタリングにより;電子ビーム蒸発により;熱蒸発により;二元金属アジドの電子ビーム誘起アトマイゼーションにより;超音速フリージェット中の金属蒸気の膨張により;逆ミセル法により;レーザーアブレーションにより;有機金属化合物のレーザー誘起分解により;有機金属化合物の熱分解により;有機金属化合物のマイクロ波プラズマ分解により;および他の方法により;作製されてきた。
【0003】
メタリックナノ粒子は、ユニークな光学的性質を有することが知られている。特定的には、メタリックナノ粒子は、顕著な光学共鳴を示す。このいわゆるプラズモン共鳴は、入射電磁界に対する金属球中の伝導電子の集団結合に基づく。この共鳴は、入射電磁放射線の波長に対するナノ粒子の半径に依存して吸収または散乱が優位になりうる。このプラズモン共鳴に関係しているのは、金属ナノ粒子の内部の強力な局所場増強である。こうした特定の光学的性質の利用が有用と思われるさまざまなデバイスを製造することが可能である。たとえば、表面増強ラマン散乱(SERS)に依拠する光学フィルターまたは化学センサーが製造されてきた。
【0004】
米国特許第6,344,272号明細書(オルデンバーク(Oldenburg)ら)には、導電性材料に取り囲まれた非導電性内側層を含むナノ粒子が記載されている。非導電性層の厚さと外側導電性シェルの厚さとの比は、粒子の極大吸光度波長または散乱を決定する因子である。この参考文献には、固体金属ナノ粒子の多くの適用を具現化するうえでの重大な実用上の制約は、所望の波長にプラズモン共鳴を位置付けることができないことであると記されている。たとえば、直径10nmの固体金ナノ粒子は、520nmを中心とするプラズモン共鳴を有する。このプラズモン共鳴は、粒子直径や特定の埋込み媒体を変化させても約30ナノメートル超の大きさで制御可能にシフトさせることができない。
【0005】
表面プラズモン共鳴(SPR)とは、金属と誘電体との界面における振動自由電荷の共鳴励起のことである。SPRスペクトルの生成および収集を行う場合、それを用いて、2種以上の分子間の相互作用に関して、特異性、速度論的挙動、親和性、および濃度を決定することが可能である。その際、1種の分子は、固体感知表面に結合させる。反応速度論的挙動は、アナライトが結合検知分子と相互作用するときの会合速度および解離速度の両方に対応する。親和性とは、アナライトが検知分子に結合する強度を意味する。特異性とは、他の分子を排除して検知分子に結合する分子の傾向を意味する。SPRスペクトルは、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、および低分子量物質(たとえば、ホルモンおよび医薬)をはじめとする多くのタイプの分子が関与する試験に使用されてきた。
【0006】
最近、こうしたナノ粒子のユニークな光学的性質を活用すべく、公知の技術でセンサーデバイスが開発されている。コロイドサスペンジョンの吸光度をモニタリングしてリアルタイムで生体分子相互作用を検出すべく、金ナノ粒子サスペンジョンを用いてSPR測定が行われてきた。
【0007】
蛍光マーカーや放射性分子タグのような間接的標識を用いることなくリガンドとレセプターとの会合の直接測定を可能にすべく、SPR式バイオセンシングとして知られる一分析法が開発されてきた。この非標識直接センシング法を用いれば、アッセイを行うのに必要とされる時間および作業負荷が削減され、しかも間接的標識の使用により引き起こされる分子変化に起因する誤認識結果を生じる危険性が最小限に抑えられる。バイオセンシング法の他の重要な側面は、SPR式バイオセンシングにより連続的かつリアルタイムに生体分子相互作用の測定が可能になるので、伝統的な「終点」分析法とは対照的に会合および解離の速度論的データの測定が可能になることである。
【0008】
過去十年間にわたり、表面プラズモンを発生させてSPRスペクトルの検出を可能にすることを目的として、メタリックナノ粒子のユニークな光学的性質への関心は、こうしたナノ粒子の組み込まれたサスペンジョンおよびフィルムの使用に関連して著しく増大してきた。そのほかに、赤外吸光度スペクトル情報を得るべく表面増強ラマン分光(SERS)を検出したり、増強蛍光刺激を行って表面増強蛍光を検出したりすることも可能である。ナノ粒子とは、直径が100ナノメートル未満の粒子のことである。メタリックナノ粒子は、可視波長スペクトル中に大きい光吸収バンドを示してカラフルなコロイドサスペンジョンを生成する。光吸収の物理的起源は、入射光エネルギーとメタリックナノ粒子上の伝導帯電子のコヒーレント振動との結合に基づく。こうした入射光結合は、離散したナノ粒子およびナノ粒子で形成された膜(メタリックアイランド膜と呼ばれる)に特有なものである。通常のバルク材料を用いてSPRを達成するには、入射光波ベクトルの水平成分を増大させるために(すなわち、所要の結合を達成するために)、プリズム、グレーティング、または光ファイバーを使用することが必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
メタリックナノ粒子の極大吸収の波長をシフトさせるために使用しうる方法および材料が必要とされている。電磁スペクトルの可視領域および赤外領域にわたり規定された波長吸光度ピーク極大を有する材料を製造する方法が必要とされている。「メタリック」とは、元素金属およびその化合物を意味する。
【0010】
本発明は、メタリックナノ粒子コーティングを有する熱可塑性フィルムを提供することにより、先行技術の制約を克服する。このコーティング付きフィルムの配向(延伸)または収縮を行うことにより、プラズモン共鳴吸光度スペクトルをシフトさせることが可能である。本発明に係る物品は、光スイッチングデバイス、光通信システム、赤外線検出器、赤外線遮蔽デバイス、化学センサー、受動的太陽放射線収集デバイスまたは受動的太陽放射線偏向デバイスなどのようなさまざまな用途に使用可能である。ナノ粒子溶液で濃度(および粒子間距離)の増大または減少を行うと吸収スペクトル強度の増大または減少は起こりうるが、吸収ピーク極大はシフトしないことを考えれば、吸収スペクトルをシフトさせる能力は、驚くべきことである。ナノ粒子コーティング付きフィルム層を2層以上含む多層物品を提供することにより、吸光度スペクトル強度を増大させることも可能である。
【0011】
一実施形態では、本発明は、熱可塑性フィルムを提供する工程と、物理気相堆積によりフィルムの表面上にメタリックナノ粒子の不連続コーティングを堆積させる工程と、所定の吸収スペクトルを有する物品を提供するようにコーティング付きフィルムを延伸する工程と、を含む、ナノ粒子コーティング付き熱可塑性フィルム表面の作製方法を提供する。本方法は、延伸されたナノ粒子コーティング付き物品を収縮させる工程をさらに含みうる。
【0012】
他の実施形態では、本発明は、表面プラズモン共鳴を呈する光学物品を提供する。この物品は、物品の延伸(たとえば配向)または収縮により吸収ピーク極大を調整しうるメタリックナノ粒子コーティング付き熱可塑性フィルムを含む。特定の波長かつ特定の角度の光は、表面プラズモンとの共鳴状態を生じるであろう。そしてフォトンが吸収されるであろう。このことは、吸光度スペクトルの極大からわかる。吸収スペクトルは、延伸率または収縮率、金属の性質、ナノ粒子のサイズ、平均コーティング厚さ、および熱可塑性フィルム層の誘電率の関数である。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、メタリックナノ粒子コーティング付き熱可塑性フィルムを含むセンサーを提供する。ここで、該メタリックナノ粒子の少なくとも一部分上に結合剤が配置され、かつ該結合剤は、該生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプル中に存在する所定の物質と相互作用する。
【0014】
本発明の種々の特徴、実施形態、および利点は、以下の発明の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。以上の概要は、本開示のそれぞれの例示された実施形態やすべての実装形態を説明することを意図したものではない。以下の詳細な説明は、本明細書に開示されている原理を利用した特定の好ましい実施形態をより具体的に例示するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、部分的には、延伸熱可塑性ポリマーフィルム上にナノ粒子コーティングを形成する方法に関する。本方法は、100nm未満の平均サイズのメタリックナノ粒子の不連続コーティングを物理気相堆積により堆積してなる熱可塑性ポリマーフィルムを提供することを含む。吸光度ピーク極大を所望の程度までシフトさせるために、さらにコーティング付きフィルムの延伸または収縮を行うことが可能である。
【0016】
本発明はさらに、熱可塑性ポリマーフィルム基材と熱可塑性ポリマーフィルム上の不連続メタリックナノ粒子コーティングとを含む物品に関する。コーティングは、物理気相堆積法によりメタリックナノ粒子の不連続層を堆積させることにより形成される。金属ナノ粒子の大半は、通常、元素金属ナノ粒子であるが、オキシドのような他のメタリックナノ粒子も利用可能であると考えられる。
【0017】
本明細書中で使用する場合、「不連続」とは、コーティングが表面プラズモン共鳴を呈するように、コーティングの施されていない領域に囲まれたナノ粒子のアイランドまたはナノ粒子の凝集物としてナノ粒子コーティングが配置されることを意味する。連続コーティングは、厚さに関係なく表面プラズモン共鳴を示さない。
【0018】
本発明は、熱可塑性高分子フィルム上にメタリックナノ粒子コーティングを提供する。このナノ粒子は、1〜100ナノメートル、最も好ましくは1〜50ナノメートルの範囲内の平均数平均粒子直径を有する。コーティングは、一般的には100nm未満、好ましくは10nm未満の平均厚さを有する。ナノ粒子は、実質的に球形でありうるが、いくつかの場合には1.5:1を超えるアスペクト比(長さ対直径)を有する細長形である(すなわち、実質的に扁球形である)。場合により、堆積前のフィルムの延伸(配向)の後で、吸光度ピーク極大を所望の程度までシフトさせるためにさらに延伸または収縮を行うことが可能である。
【0019】
ナノ粒子コーティングの平均厚さは、市販の石英結晶微量天秤を用いて堆積中に測定可能である。堆積後、いくつかの化学アッセイを用いて任意の指定領域内の金属量のキャラクタリゼーションを行うことが可能である。粒子直径(ナノ粒子のアグロメレーションにより形成される)は、典型的には、当技術分野で公知の光散乱法を用いて測定される。一次粒子直径は、典型的には、透過型電子顕微鏡法または原子間力顕微鏡法を用いて測定される。
【0020】
延伸または収縮によりコーティング付き物品の光学的性質を変化させることが可能である。物品の延伸または収縮を行った場合、それぞれ、吸光度スペクトル極大が短波長側または長波長側にシフトするので、所望に応じて光学的性質を変化させることが可能である。光学フィルター用途では、これにより吸光度をあらかじめ選択された極大になるように調整して、UV波長やIR波長のような望ましくない波長を最も効率的にフィルタリング除去することが可能である。センサー用途では、吸光度ピーク極大を特定のアナライトにマッチングさせることにより、応答シグナルを最大化することが可能である。
【0021】
ナノ粒子は、ナノ粒子を生成する物理気相堆積法により作製される。金属は、気化が起こるまで減圧下で加熱される。場合により、金属は、ガスストリームの存在下で気化される。このガスは、好ましくは不活性(非反応性)であるが、金属と反応しないガスであればいずれも使用可能である。ナノ粒子は、高分子フィルムまで輸送または誘導され(場合によりガスストリームにより)、フィルム上にメタリック蒸気を衝突させることにより堆積される。この際、核生成およびナノ粒子成長が起こる。一般に、ガスストリームの不在下では、熱可塑性フィルム表面で直接核生成するメタリック蒸気が物理気相堆積法により生成される。ガスの存在下では、メタリック蒸気がストリーム中である程度の均一核生成を起こしてナノ粒子を生成し、このナノ粒子がフィルム表面上に堆積される。
【0022】
コーティングは、
a)金属を(場合により非反応性ガスストリームの存在下で)気化させてメタリック蒸気を提供する工程と、
b)場合により、メタリック蒸気(またはメタリック蒸気中で形成されたメタリックナノ粒子)と反応しうる第2の反応性ガスを提供し、反応性ガスをメタリック蒸気(またはメタリックナノ粒子)と反応させてそれを金属酸化物ナノ粒子に変換する工程と、
c)メタリック蒸気をフィルム上に衝突させて(この際、核生成およびナノ粒子成長が起こる)、その上にナノ粒子コーティングを提供する工程と、
を含む方法により作製可能である。
【0023】
熱可塑性高分子フィルム上へのメタリックナノ粒子の堆積は、当業者に公知であるいくつかの物理気相堆積法のうちの1つを用いて達成可能である。そのような方法としては、気相堆積、カソードスパッタリング、熱分解、イオンプレーティング、eビーム堆積などが挙げられる。得られる構造および厚さが均一であるという点で、多くの場合、気相堆積およびカソードスパッタリングが好ましい。多くの利用可能な金属蒸気提供手段および蒸気コーティング法に関しては、薄膜の真空堆積(Vacuum Deposition of Thin Films)、L.ホランド(L.Holland)著、1970年、チャップマン・アンド・ホール(Chapman and Hall)刊、英国ロンドン(London,England)を参照されたい。所望により、マスクを利用してナノ粒子層のパターンコーティングを施すことにより、メタリックナノ粒子表面をパターン化することが可能である。
【0024】
物理気相堆積(PVD)法は、原子の堆積(典型的には、真空中における蒸発またはスパッタリングによる)を含む。PVD法は、(1)抵抗加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザービームアブレーション、直流プラズマ発生、高周波プラズマ発生、分子ビームエピタキシー、または類似の手段を用いて、蒸発またはスパッタリングによりメタリック蒸気を発生させる工程と;(2)分子流、粘性流、プラズマガス輸送などにより、供給源から基材までメタリック蒸気を輸送する工程と;(3)熱可塑性ポリマーフィルム上でナノ粒子成長を行う工程(この際、核生成およびナノ粒子成長が起こる)と;により特徴付けられうる。PVDの場合、さまざまな基材温度を用いて、堆積される材料の結晶化および成長モードを制御することが可能であるが、一般的には、熱可塑性ポリマーフィルムの温度は、ポリマーの歪み温度未満である。
【0025】
堆積中におけるフィルム基材の変形または融解を回避するために、フィルムは、一般的には、ポリマーの歪み温度以下の温度に保持される。ナノ粒子の温度または堆積時にナノ粒子が放出する熱(凝縮熱)によりフィルムの熱変形が起こらないように堆積速度を制御することにより、フィルムの完全性が保持される。一般的には、フィルムの温度は、堆積チャンバーの周囲条件に保持されるので、フィルムの特別な冷却は、まったく必要でない。
【0026】
好ましい実施形態では、ナノ粒子コーティングは、電子ビーム蒸発により熱可塑性ポリマーフィルムに適用される。この方法は、堆積される金属上への高エネルギー電子ビーム衝撃による熱生成に依拠する。電子ビームは、白熱フィラメント(カソード)により生成された電子の熱電子放出を使用する電子銃により発生される。放出された電子は、高電位差(キロボルト)によりアノードの方向に加速される。るつぼ(供給源金属を収容する)自体または近傍の有孔ディスクは、アノードとして作用しうる。磁界は、多くの場合、電子経路を曲げるために適用されるので、電子銃は、蒸発ラインの下に位置決めされうる。電子は集束可能であるので、高密度の蒸発電力(数kW)を用いてメタリック材料上できわめて局所的な加熱を行って蒸発させることが可能である。このため、蒸発速度を低い値から非常に高い値まで制御することが可能である。るつぼを冷却すれば、加熱および脱ガスによる汚染の問題が回避される。
【0027】
スパッタリングによる物理気相堆積は、電界により推進力を与えられたガスイオンをターゲット(通常はカソード)に衝突させる場合、部分真空(ダイオードシステムでは13.3〜1.33Paおよびマグネトロンシステムでは1.3〜0.13Pa)中で達成される。スパッタリングガスは、典型的には、アルゴンのような希ガスであるが、スパッタリングガスは、窒化物、酸化物、および炭化物の堆積のように、堆積フィルム中に組込み可能な反応性元素を含みうる。スパッタリングガスをイオン化させた場合、グロー放電またはプラズマが生成される。ガスイオンは、電界または電磁界によりターゲットの方向に加速される。ターゲットからの原子は、運動量移行により放出され、真空チャンバーを横切って移動して基材(熱可塑性ポリマーフィルム)上に堆積される。
【0028】
他の実施形態では、ナノ粒子コーティングは、スパッター堆積により熱可塑性ポリマーフィルムに適用される。スパッタリング装置は、一般的には、直径38cm(15インチ)の回転ドラムを収容する円筒状チャンバーの外周を囲むように配置された三源マグネトロンスパッタリングシステムよりなる。基材は、ドラム上に取り付けられ、1〜8rpmの速度でスパッタリング源の前方位置を通って逐次的に回転される。供給源は、同時に2つの流束からサンプルにコーティングが施されることのないように遮蔽される。材料の堆積速度およびターゲット前方の基材の回転速度は、最終触媒粒子を含む個々の層の厚さを決定する。十分な真空になるように吸引しうる真空ポンプであればいずれも使用可能である。そのような真空ポンプの1つは、アルカテル(Alcatel)2012A回転翼型粗引きポンプ(マサチューセッツ州ヒンガムのアルカテル・バキューム・プロダクツ(Alcatel Vacuum Products,Hingham,Mass.))と連動させて使用しうるバリアン(Varian)AV8クライオポンプ(マサチューセッツ州レキシントンのバリアン・アソシエーツ(Varian Associates,Lexington,Mass.))である。クライオポンプは、バタフライバルブによりチャンバーから部分的に分離することが可能である。堆積中、MKS流量制御器(マサチューセッツ州アンドーバーのMKSインストラメンツInc.(MKS Instruments Inc.,Andover,Mass.))によりスパッタリングガス流量を制御しながら、圧力を0.28Pa(2.1ミリトル)に保持しうる。任意の不活性ガスまたは反応性スパッタリングガスを使用することが可能である。好ましくは、アルゴンまたはアルゴン酸素混合物のいずれかが使用される。酸素の化学量論量の制御は、アルゴン/酸素流量比を変化させることにより達成可能である。任意の適切なターゲットおよび電源を使用することが可能である。一実施形態では、アドバンスト・エネルギー(Advanced Energy)MDX500電源(コロラド州フォートコリンズのアドバンスト・エネルギー・インダストリーInc.(Advanced Energy Industries,Inc.,Fort Collins,Colo.))が、電源の定電力モードで使用される。
【0029】
物理気相堆積工程で使用しうる有用な金属としては、たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、In、Tl、Sn、Pb、これらの金属の混合物、酸化物、および合金、さらには、所望により、ランタニドおよびアクチニドが挙げられる。金属は、逐次的にまたは同時に堆積可能である。
【0030】
とくに有用な金属は、金、アルミニウム、銅、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、チタン、コバルト、バナジウム、マグネシウム、銀、亜鉛、およびカドミウム、インジウム、ランタン、インジウムスズ酸化物(ITO)およびアンチモンスズ酸化物(ATO)、アンチモンインジウムスズ酸化物(AITO)、スズ、インジウム、ランタン、ホウ素、六ホウ化ランタン、希土類金属ならびにその混合物および合金、さらにはそれらの混合物および合金である。最も好ましいのは貴金属である。他の金属は、当業者には自明である。
【0031】
本方法は、AuやAgの場合のように元素金属自体の蒸発を含みうるか、または高分子フィルムとの接触前の輸送段階中に実際の元素金属の生成が行われる前駆体形態での蒸発を含みうるか、のいずれかである。一例では、アルゴンを非反応性ガスとして用いて銀金属の蒸発を行い、続いて、銀ナノ粒子を反応性酸素環境に暴露することにより、高分子フィルムとの接触前に超微細な酸化銀被覆ナノ粒子(粒子コアは銀である)が形成されるであろう。ナノ粒子が形成された後、気化源から離れた部位に反応性ガスが導入されるので、最終ナノ粒子は、中心コアおよび外側シェルよりなる。この場合、中心コアは、金属でありうる。また、外側シェルは、反応性ガスと金属ナノ粒子との反応により形成された層で構成されうる。
【0032】
不活性ガスを使用する場合、それは、一般的には、He、Ne、Ar、Xe、およびN2から選択される。2種以上の非反応性ガスの混合物を使用することも可能である。金属の改質が望まれる場合、るつぼ中のバルク材料との反応を最小限に抑えるように位置決めされたガス入口を介して反応性ガスを導入し、反応性ガスとガスストリーム中に連行された粒子との十分な混合を行うことにより、粒子との反応を引き起こすことが可能である。反応性ガスおよび非反応性ガスは、一般的には室温であるが、所望に応じて温度を高くしたり低くしたりすることが可能である。反応性という用語は、1)金属の場合のように、対応する酸化物または他の化合物を形成すべく、粒子を、たとえば、O2、NO、NO2、CO2、CO、AsH3、H2S、H2Se、NH3、トリメチルクロロシラン、メチルアミン、エチレンオキシド、水、HF、HCl、もしくはSO2、またはそれらの組合せと直接反応させること;あるいは2)吸着させること(この場合、分散媒との接触前にガス中に揮発性物質が導入されるが、この物質は、通常の条件下(大気圧かつ25℃)で液体でないか、この物質は、分散媒に対して混和性でないか、さもなければ、この物質は、分散媒または分散媒中の添加剤からナノ粒子の表面を保護する役割を果たすか、のいずれかである);を包含する。吸着させうる典型的な物質としては、ポリ(メチルメタクリレート)やポリスチレンのようなポリマーが挙げられる。
【0033】
ナノ粒子のコーティングを施すのに有用な装置は、
a)捕集槽に接続された、かつ少なくとも1つの第1のガス入口管および場合により第2のガス入口管(該第2の管は、該第1の管の下流に位置する)と、炉および捕集槽(この槽は、分散媒を収容する)の減圧排気を行うための手段(たとえば、ロータリーオイルポンプ、油拡散ポンプ、ピストンポンプ、ルーツ(登録商標)ブロワー、およびターボ分子ポンプのようなポンプ)と、を収容するように適合化された、炉(この炉は、加熱手段(たとえば、抵抗式、誘導式、eビーム式、赤外線式、レーザー式、プラズマジェット式)を収容する)と;
b)該炉中への金属の導入およびその減圧排気を行うための手段(たとえば、金属であらかじめ充填されうる、または装置の運転時に連続方式もしくはバッチ方式で供給されうる、セラミックス製もしくは金属製のるつぼまたはスラブ、あるいは電極がその手段でありうる)と;
c)場合により、第1の入口管を介して第1の非反応性ガスストリームを炉中に導入するための手段(たとえば、マイクロ計量バルブ、電子式流量制御器、またはガス分散管)と;
d)第1のガスストリーム中に金属ナノ粒子を蒸発させるための手段(たとえば、eビーム式、赤外線式、レーザー式、誘導式、抵抗式、またはプラズマジェット式などによるエネルギー入力装置)と;
e)第1のガスストリーム中にナノ粒子のディスパージョンを生成すべく、気化されたメタリックナノ粒子の凝縮(たとえば、温度の低下、圧力の上昇、非反応性ガスの化学的性質の変化、移送管の長さの制御、ガス流量の制御、またはそれらの組合せ)を第1のガスストリーム中で行うための手段と;
f)場合により、メタリックナノ粒子との反応を引き起こすべく、第2の入口管を介して第2の反応性ガスストリームを炉中に導入するための手段(たとえば、マイクロ計量バルブ、電子式流量制御器、またはガス分散管)と;
g)熱可塑性ポリマーフィルム上にナノ粒子を衝突させるための手段と;
を含む。
【0034】
有機金属化学における金属蒸気合成(Metal Vapour Synthesis in Organometallic Chemistry),J.R.ブラックボロウ(J.R.Blackborow)およびD.ヤング(D.Young)著、シュプリンガー・フェアラーク(Springer−Verlag)刊、ニューヨーク(New York)、1979年に記載されるようなロータリー金属原子反応器、および日本応用物理誌(Jpn.J.Appl.Phys.)、第13巻、749頁(1974年)に記載されるようなスピニングディスクアセンブリーをはじめとして、本発明に係るディスパージョンを提供するための他の反応器設計が想定されうる。有機顔料のディスパージョンを生成するために、両タイプの反応器を使用することが可能である。抵抗加熱のほかに、顔料または顔料前駆体に熱を加えるための他の手段が想定されうる。こうした手段としては、レーザー加熱、誘導加熱、プラズマジェット、プラズマアーク放電、および当業者に公知の他の手段が挙げられる。
【0035】
本発明に係る方法を用いれば、最終コーティングで得られる微粒子サイズを達成するためにミリング法も化学還元法も必要とされることはない。本発明に係るナノ粒子は、調整可能または制御可能な吸光度スペクトルにより実証されるような有用な光学的性質を呈する。
【0036】
フィルムに使用するための熱可塑性ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリイミド、ポリオレフィン、アルキド樹脂、フルオロポリマー、液晶ポリマー、メラミン樹脂、ウレアホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルクロリド、イオノマー性ポリマー、アクリル樹脂、およびシリコーンポリマーが挙げられる。熱可塑性ポリマーの調製方法は、周知であり、本発明は、特定の触媒または方法を用いて調製されたポリマーに限定されるものではない。熱可塑性ポリマーフィルムは、単層もしくは多層のポリマーフィルムでありうる。
【0037】
いくつかの実施形態では、好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリ(アルファ)オレフィンである。ポリ(アルファ)オレフィンは、当技術分野で一般に認められるように、脂肪族モノ−アルファ−オレフィンのホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーを包含しうる。通常、そのようなポリ(アルファ)オレフィンの製造に利用されるモノマーは、1分子あたり約2〜10個の炭素原子を含有するが、ときには、より高分子量のモノマーがコモノマーとして使用される。本発明は、機械的にまたはin situで調製されたポリマーおよびコポリマーのブレンドにも適用可能である。熱可塑性ポリマーの調製に利用しうる有用なモノマーの例としては、単独もしくは混合状態または逐次重合系のエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンが挙げられる。好ましい熱可塑性ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン/エチレンコポリマー、ポリブチレン、およびそれらのブレンドが挙げられる。
【0038】
他の実施形態では、任意のポリエステル含有ポリマーが好ましいこともある。有用なポリエステルポリマーとしては、テレフタレートまたはナフタレートのコモノマーユニットを有するポリマー、たとえば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびそれらのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。他の好適なポリエステルコポリマーの例は、たとえば、米国特許第6,827,886号(リュー(Liu)ら)、同第6,808,658号(ストーバー(Stover)ら)、同第6,830,713号(ヘブリンク(Hebrink)ら)、および同第6,783,349号(リュー(Liu)ら)の各明細書(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に提供されている。他の好適なポリエステル材料としては、ポリカーボネート、ポリアリーレート、ならびに他のナフタレート含有ポリマーおよびテレフタレート含有ポリマー、たとえば、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)、ならびに以上のポリマーの相互のもしくは以上のポリマーと非ポリエステルポリマーとのブレンドまたはコポリマーが挙げられる。
【0039】
ナノ粒子コーティング付き物品の望ましい光学的性質および電子的性質を保持するために、熱可塑性ポリマーフィルムは、顔料、充填剤、補強剤のような微粒子添加剤を実質的にまったく含有しないことが好ましい。そのような添加剤が存在すると、吸光度が悪影響を受けたり、熱可塑性フィルムの誘電性が変化したり、光散乱が増大したりする可能性がある。一般的には、そのような添加剤は、存在したとしても、熱可塑性ポリマーフィルムの1重量%未満である。
【0040】
しかしながら、いくつかの実施形態では、ナノ粒子コーティング付き物品は、特定の波長の入射光に対してメタリックナノ粒子を増感すべく染料または顔料をさらに含むことが望ましいこともある。ポリマーマトリックス中に埋め込んだり分散したりするのではなく、延伸前または延伸後、ナノ粒子コーティング付き物品上にそのような増感剤のコーディングを施すことが可能である。そのような増感剤は、通常、メタリックナノ粒子の重量を基準にして1重量パーセント未満で使用される。
【0041】
メタリックナノ粒子の堆積前または堆積後、熱可塑性ポリマーフィルムを延伸することが可能である。しかしながら、当然のことであろうが、ナノ粒子の堆積前にフィルムを延伸するか延伸しないかにかかわらず、所望の吸収スペクトルを提供すべく、後続的にコーティング付きフィルムの延伸(または収縮)を行うことが可能である。したがって、延伸フィルムにナノ粒子のコーティングを施してからさらに延伸を行うことが可能であり、または好ましくは未延伸フィルムにナノ粒子のコーティングを施してから延伸を行うことが可能である。一般的には、延伸により熱可塑性フィルムに永久変形が付与され、その結果、寸法(長さおよび/または幅)が増大されるが、所望の効果を得るのに永久変形が必要というわけではない。
【0042】
延伸すると粒子間距離が増大し(または収縮させると粒子間距離が減少し)、吸光度ピーク極大は、(それぞれ短波長側または長波長側に)シフトする。光学フィルター用途では、これにより吸光度をあらかじめ選択された極大になるように調整して、UV波長やIR波長のような望ましくない波長を最も効率的にフィルタリング除去することが可能である。センサー用途では、吸光度ピーク極大を特定のアナライトにマッチングさせることにより、応答シグナルを最大化することが可能である。一般的には、コーティング付き物品の吸光度ピーク極大を少なくとも10nm、好ましくは少なくとも20nmシフトさせるのに十分な量で、フィルムの延伸(または収縮)が行われる。
【0043】
1つの主軸(一軸)に沿ってポリマーフィルムの延伸を行うことが可能であり、さらには、2つの主軸(二軸)に沿って延伸を行うことも可能である。延伸は、逐次的にまたは同時に行われうる。延伸率は、一般的には、延伸比、すなわち、最終面積と元の面積との比により定義される。この延伸は、本発明では、カレンダリング工程や長手方向延伸工程を含む技術の組合せにより行うことが可能である。一般的には、全延伸比は、少なくとも1.1倍、好ましくは少なくとも5倍である。
【0044】
延伸の条件は、吸収ピーク極大の所望のシフトが達成されかつフィルムの完全性が保持されるように選択される。したがって、縦方向および/または横方向に延伸する場合、温度は、フィルムの実質的な引裂き、歪み、または断片化が回避されかつ完全性が保持されるように選択される。温度が低すぎる場合または延伸比が極端に高い場合、フィルムは、引裂きまたは壊損を受けやすくなるであろう。好ましくは、延伸温度は、ポリマーのガラス転移温度よりも高い。そのような温度条件であれば、フィルムの完全性を損なうことなくX方角およびY方角に延伸可能である。
【0045】
延伸時、延伸方向に垂直な方向の自然収縮(延伸比の平方根に等しい)によりコア高分子体を延伸方向に垂直な方向に寸法緩和させてもよいし、または拘束してもよい(すなわち、延伸方向に垂直な方向の寸法の実質的変化はない)。コアフィルムは、レングスオリエンターの場合のように縦方向に、さらにはテンターを用いて幅方向に、または対角に、延伸可能である。
【0046】
当然のことであろうが、そのような延伸プロセスおよび配向プロセスに対して、予備延伸温度、延伸温度、延伸速度、延伸比、熱セット温度、熱セット時間、熱セット緩和、および延伸方向に垂直な方向の緩和は、所望の屈折率関係をはじめとする所望の性質を有するフィルムが得られるように選択される。
【0047】
ナノ粒子コーティング付き物品の延伸がフィルムの横方向および長手方向で等しくない場合、物品は、2つの主軸に沿って異なる光学的性質を呈するであろう。これは、一軸延伸から、または一方の軸に沿った延伸が他方の軸に沿った延伸よりも大きい不均等二軸延伸から、生じうる。延伸は、二軸延伸でありかつ両軸上で実質的に同等であることが好ましい。すなわち、一方の軸に沿った延伸が他方の軸に沿った延伸の20%以内であることが好ましい。
【0048】
所望により、好ましくは延伸後、応力を緩和するのに十分な温度で、ただし、フィルムの劣化を生じるほど長時間かけたり高い温度にしたりすることなく、コーティング付き物品をアニールすることが可能である。好適なアニール温度は、使用されるポリマーのタイプによって異なる。好ましくは、アニール工程中、フィルムに圧力を加えずに熱だけを加えるが、約10psi未満のわずかな圧力は、有害ではない。通常、アニールされるフィルムを非接着性支持体上に単に配置し、周囲に熱風を循環させるかまたは上方に放射ヒーターを配置する。
【0049】
本方法はまた、ナノ粒子コーティング付きフィルムを収縮させる工程を含みうる。収縮を行うと、粒子間距離は減少し、吸光度ピーク極大は長波長側にシフトする。光学フィルター用途では、これにより吸光度をあらかじめ選択された極大になるように調整して、UV波長やIR波長のような望ましくない波長を最も効率的にフィルタリング除去することが可能である。センサー用途では、吸光度ピーク極大を特定のアナライトにマッチングさせることにより、応答シグナルを最大化することが可能である。
【0050】
本発明は、高分子フィルムの一部分上に不連続メタリックナノ粒子コーティングを有する収縮可能な高分子フィルムを提供する。吸光度ピーク極大を少なくとも10nm、好ましくは少なくとも20nmシフトさせるのに十分な量だけ高分子フィルムの投影表面積が収縮するように、収縮可能なコーティング付き高分子フィルムの温度を上昇させる。収縮工程は、物品をその元の投影表面積の50パーセント未満、ときにはその元の投影表面積の10パーセント未満、特定の実施形態ではその元の投影表面積の5パーセント未満まで収縮させるのに十分な時間にわたり収縮可能なコーティング付き物品を高温に暴露することを含みうる。収縮工程中、不均一な収縮、カール、または他の望ましくない変形を回避すべく、ナノ粒子コーティング付きの収縮可能なフィルムを実質的にフラットに保持することが有利である。熱収縮中、収縮可能なフィルムをテンター装置で保持したりまたは2つの平面表面の間に保持したりすることが可能である。
【0051】
一般的には、吸収スペクトルの所望のシフトを提供するようにナノ粒子コーティング付きフィルムを収縮させる。当然のことながら、過度の収縮を行うと、これまで不連続であったナノ粒子(および凝集物)間が連続になって、導電性の増大、反射、および表面プラズモン共鳴の消失または低下を生じる可能性がある。
【0052】
「収縮可能」「収縮」、または「収縮された」とは、基材のような材料との関連では、回復、緩和、または任意の他の手段のいずれによるかにかかわらず、材料の長さを少なくとも1つの次元で減少させうるか、減少させるか、または減少されていることを意味するものとする。基材の収縮パーセントは、次式を用いる計算される:収縮パーセント=100パーセント×[収縮前の投影表面積−収縮後の投影表面積]/収縮前の投影表面積。典型的には、熱源を用いて対流加熱や接触加熱などにより、ナノ粒子コーティング付き高分子シュリンクフィルム基材を収縮させる。また、いくつかの実装形態では、マイクロ波、高周波、または赤外線により、加熱プロセスを実施することが可能である。
【0053】
所望により、物品は、環境作用および機械的応力からナノ粒子を切り離すための保護層をさらに含みうる。追加の層は、メタリックナノ粒子層および熱可塑性フィルム層の露出表面(すなわち、コーティングの施されていない領域)に接触した状態でありうる。この層は、高分子層および全構成体の両方の表面粗さを減少させたり、物品の透明度および低いヘイズを保持したり、摩耗または酸化からナノ粒子層を保護したりする役割を果たしうる。保護層は、耐引掻き性、耐薬品性、および/または増大された耐候性を付与するためにも使用可能である。コーティングの施された熱可塑性フィルム層表面の表面上に保護層を共押出することが可能である。他の選択肢として、好適な感圧接着剤または非感圧接着剤を用いて、熱可塑性フィルム層上に保護層のコーティングを施すかまたは保護層をラミネートすることが可能である。好適なコーティングとしては、ハードコート、接着剤、帯電防止剤、接着促進プライマー、UV安定化コーティング、摩擦減少層などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。保護層は、好ましくは、ポリエステルなどの透明ポリマー(熱可塑性ポリマーフィルム層の作製に使用されるものと同一であるかもしくは異なる)で作製される。
【0054】
得られる物品は、その表面上にナノ粒子の不連続コーティングまたはナノ粒子の凝集物を有する延伸可能または収縮可能なフィルムであることによりかつ物品が表面プラズモン共鳴を呈することにより特徴付けされうる。コーティングの最大平均厚さは、100nm未満、好ましくは10nm未満であり、ナノ粒子またはその凝集物の領域およびコーティングの施されていない領域を有する。約100nmを超えると、コーティングは、表面プラズモン共鳴を示さない連続金属化フィルムの挙動を示す傾向がある。所望により、複数のナノ粒子コーティング付きフィルムを含む多層物品を使用することが可能である。フィルムは、隣接層に結合させるかもしくは他の方法で固着させることが可能であり、またはナノ粒子コーティング付きフィルムのスタックを含みうる。多層物品は、表面プラズモン共鳴を保持した状態で全吸光度を増大させるが(吸光度の加成性)、このことは、一般的には、ナノ粒子コーティングの厚さを増大させることにより行うことはできない。多層物品はさらに、層間の内部反射率を示し、その結果として干渉縞を生じる。
【0055】
粒子は、内部に埋め込まれるのではなく、熱可塑性フィルムの表面上に部分的に固定されて露出した状態にある。コーティング付き物品の断面の電子顕微鏡写真から、ナノ粒子は、実質的にフィルムの平面よりも上に存在することが示唆される。一般的にはナノ粒子の体積の50%超、典型的には75%超が、表面よりも上に存在する。粒子は、表面上に固定された状態に保持され、容易に除去されない。典型的には、接着テープを表面に貼り付けてから180度で剥離除去するテープ試験により、粒子の5%未満が除去される。
【0056】
本発明に使用されるナノ粒子コーティングにより、ミリング媒体の存在および機械部品の摩耗に起因する分散材料の汚染が回避される。こうした問題については、微粒子の機械的粉砕を利用する従来法により作製されたディスパージョンに関連して上述した。このほかに、最終コーティングで得られる微粒子サイズを達成するために化学還元法が必要とされることはない。溶媒や還元剤を利用すると、ナノ粒子が汚染される可能性がある。
【0057】
コーティング付き物品の吸収ピーク極大は、堆積された金属または金属化合物、平均厚さ、平均粒子サイズ、および形状(凝集物を含む)、基材として使用されたポリマー、ならびに物品の延伸率(または収縮率)の関数である。より多くのメタリックナノ粒子がフィルム上に堆積されて平均厚さが増大するにつれて、吸収スペクトルは広幅化し、極大は長波長側にシフトする。電子顕微鏡写真から、塊厚さが増大するにつれて、アグロメレーションの結果として、平均粒子サイズは増大し、ナノ粒子間のスペース(コーティングの施されていない領域)は減少することがわかる。平均厚さは、堆積速度および堆積時間(フィルムがメタリック蒸気に暴露される時間)により制御可能である。コーティングのキャラクタリゼーションを行うために、いくつかの方法が利用可能である。最も一般的な方法では、塊厚さは、ナノ粒子コーティングの平均厚さで表される。
【0058】
表面プラズモン共鳴および吸収スペクトルは、分光測光法により測定可能である。スペクトルの吸収ピーク極大が延伸もしくは収縮に応答して(または以上に挙げた因子を制御することにより)シフトするとき、透過光を検出するための任意の好適な手段によりメタリック材料の表面プラズモン吸収スペクトルを測定することが可能である。好適な手段としては、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)(DUシリーズ500スキャニング分光光度計およびDUシリーズ600高性能分光光度計)、スペクトラル・インストラメンツ(Spectral Instruments)(400シリーズ分光計)、バリアン・インストラメンツ(Varian Instruments)(キャリー(Cary)300バイオ分光光度計)、サファス・モナコ(Safas Monaco)(UVmcシリーズ分光光度計およびD.E.S.分光光度計)、ヒタチ・インストラメンツ(Hitachi Instruments)(U3010/3310分光光度計)などのような会社から市販されているようなUV−vis分光光度計が挙げられる。透過光を検出するための他の手段としては、同様に市販されているCCDカメラおよびフラットベッド光学スキャナー、たとえば、ウマックス(UMAX)スーパー・ビスタS−12フラットベッド・スキャナー(ウマックス・テクノロジーズInc.(UMAX Technologies,Inc.))が挙げられ、好ましくは、画像をグレースケールに変換するための手段および/または画像の濃度を決定するための手段、たとえば、サイオン(Scion)イメージ・ソフトウェア(サイオン・コーポレーション(Scion Corp))と併用される。
【0059】
ナノ粒子コーティング付き物品は、分析用途でセンサーとして使用可能である。センサーは、ナノ粒子コーティング付き熱可塑性フィルムと、ナノ粒子コーティングの少なくとも一部分上に配置された結合剤と、を含む。
【0060】
結合剤は、本発明に係るセンサーを用いて試験される生物学的、生化学的、化学的、または環境的溶液中に存在する所定の物質と相互作用する。本発明では、メタリック材料にも光透過性基材にも有害な影響を及ぼさないかぎり、任意の好適な反応性物質を利用することが可能である。
【0061】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、結合剤は、試験される生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプル中に存在する少なくとも1種の所定の物質との生物学的結合に関与する作用剤である。本明細書中で使用する場合、「生物学的結合」という用語は、相互親和性または相互結合能、典型的には、生化学的、生理学的、および/または薬学的相互作用をはじめとする特異的もしくは非特異的な結合または相互作用を呈する対応する対をなす分子、たとえば、対をなすタンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどの間の相互作用を意味するものとする。そのような対応する対をなす分子の具体例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:抗体/抗原;抗体/ハプテン;酵素/基質;酵素/補因子;酵素/阻害剤;結合タンパク質/基質;担体タンパク質/基質;レクチン/炭水化物;レセプター/ホルモン;レセプター/エフェクター;核酸鎖/相補的核酸鎖;タンパク質/核酸リプレッサーまたは核酸誘導物質;リガンド/細胞表面レセプター;およびウイルス/リガンド。
【0062】
所望により、官能化材料を用いて、メタリックナノ粒子および/または熱可塑性フィルム層への結合剤の接着を改善することが可能である。したがって、メタリック材料および/または熱可塑性フィルム層ならびに結合剤のいずれにも接着するがいずれに対しても有害でない任意の材料を第2の官能化材料として利用することが可能である。第2の官能化材料として使用するのに好適な化合物は、当業者に公知であり、例としては、ホスホン酸、ベンゾトリアゾール、アズラクトン、−COOH、−CN、−NH2、2−ピリジル、−P(C652、および/または−SHをはじめとする官能基を1個以上含有する有機化合物が挙げられる。第2の官能化材料のとくに好ましい例は、3−メルカプトプロピオン酸のようなカルボキシル末端有機チオールである。
【0063】
したがって、そのような本発明の実施形態で利用される特定の官能化材料の選択は、少なくとも部分的には、利用される特定のメタリック材料および特異的反応性物質に依存するであろう。したがって、特定の第2の官能化材料の選択は、当業者であれば、使用される特定のメタリック材料および反応性物質を考慮して、実験的に決定可能である。
【0064】
センサーとして使用する場合、熱可塑性フィルム層は、実質的に透明であることが好ましい。本明細書中で使用する場合、「実質的に透明」という用語は、スペクトルの紫外領域(約200〜約400nm)、可視領域(約400〜約750nm)、または赤外(約750nm超)の光の少なくとも50%の透過を可能にする物質を意味するものとする。
【0065】
本発明に係るセンサーは、好ましくは、スペクトルの紫外領域(約200〜約400nm)、可視領域(約400〜約750nm)、および/または赤外領域(約750nm超)の透過光を検出するための手段と組み合わせて利用される。透過光を検出するためのそのような手段の市販の例としては、UV−vis分光光度計、赤外分光計、およびフラットベッド光学スキャナーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態は、アレイ形態に配置された複数のセンサーに関する。そのような実施形態によれば、センサーのアレイは、好ましくは、フラットベッド光学スキャナーやCCDカメラのようにスペクトルの紫外領域(約200〜約400nm)および/もしくは可視領域(約400〜約750nm)の透過光を検出するための手段または赤外領域(約750nm超)の透過光を検出するための手段と組み合わせて利用される。そのような本発明の実施形態は、終点アッセイに使用するうえで、またはコンビナトリアルケミストリー、プロテオミクス、および/もしくはゲノミクスにおけるスクリーニングツールとして、とくに有用である。
【0067】
本発明は、偏光光をはじめとする入射光の選択的な吸収および透過を行うための光学素子をさらに提供する。有利には、ナノ粒子コーティング付き物品の吸収スペクトルは、物品の適切な延伸または収縮により制御可能である。本発明に係る光学フィルムは、選択的な吸収、透過、および反射を提供する任意の用途で使用可能である。光学フィルムは、複数の光学効果を組み合わせるべく、他の光学体もしくは光学フィルムを組み込むかまたはそれらに適用することが可能である。たとえば、光学体を1層以上の追加の光学的活性層と一緒に組み込むことにより、IRミラー、UV吸収構成体、太陽光制御構成体、偏光子、または装飾構成体を形成することが可能である。同様に、本発明に係る光学素子を用いて、窓ガラスおよびガラス製もしくはポリカーボネート製のレンズに光学フィルターを提供することが可能である。光学素子はまた、耐穿刺性もしくは耐引裂性のフィルム、安全フィルムおよびセキュリティフィルムの作製に、ならびにコンピューターモニター、テレビスクリーンなどのような光学ディスプレイ用のコントラスト増強層として、利用可能である。
【実施例】
【0068】
これらの実施例は、単に例示を目的とするものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0069】
実施例1:
メタリックナノ粒子を次のように種々のフィルム上にeビーム蒸発させた。すなわち、二軸配向ポリスチレン(BOPS、約1.6の屈折率)上に銀、二軸配向ポリプロピレン(BOPP、約1.5の屈折率)上に銀、次に、二軸配向ポリプロピレン(BOPP、約1.5の屈折率)上に金、およびPFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー、ミネソタ州セントポールのダイネオン(Dyneon,St.Paul,MN)から入手可能、約1.35の屈折率)上に金をeビーム蒸発させた。
【0070】
これらのナノ粒子サンプルは、約40オングストロームの公称平均厚さが得られるように2オングストローム/秒のeビーム堆積速度で作製されたものであった。
【0071】
この実施例では、基材の屈折率を変化させる効果(PP上のAgとPS上のAgとを比較する)および2つの異なる金属のコーティングを逐次的に施す効果(PP上のAuおよびAg)を示す。さまざまな屈折率のポリマーフィルム上に類似のサイズ分布を有するナノ粒子のコーティングを施した結果として、フィルムは、さまざまな色を生じた。PFA上の金は青色〜薄灰色であり、BOPS上の銀は紫色であり、そしてBOPP上の銀は琥珀黄色であった。コーティング付き物品のナノ粒子共鳴を示すスペクトルを図6に示す。図6はまた、さまざまな屈折率の基材を利用したときに得られたピーク極大のシフトを示しており、さらには、銀ナノ粒子および続いて金ナノ粒子をBOPP基材上に逐次的に堆積させる効果を示している。UV−Vis HP 8452A.Rev.A分光光度計を用いて吸収スペクトルを測定した。サンプリング間隔は2ナノメートルであり、積分時間は0.5秒間であった。金/PFAサンプルのTEM顕微鏡写真を図7に示す。このサンプルに関して、通常、金ナノ粒子は、500〜530nmの吸光度ピーク極大を示す。図6からわかるように、この極大は、約700nmまでシフトする。これは、ポリマーフィルムがより低い屈折率であるにもかかわらず、金ナノ粒子が図7に示されるような非球状扁球形であることに起因するものと考えられる。
【0072】
実施例2
60オングストロームのコーティングが得られるように、銀ナノ粒子を二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルム上にeビーム蒸発させた。コーティング付きBOPPフィルムは、帯黄色/琥珀色の色調を有していた。100℃に設定された温度調節チャンバーおよび毎分0.25センチメートル(毎分0.1インチ)の延伸速度を用いて、インストロン(Instron)引張試験機(マサチューセッツ州カントンのインストロン・コーポレーション(Instron Corp.;Canton,MA)製のモデル1122)により、コーティング付きフィルムのサンプルを延伸した。実施例1に記載されるように未延伸フィルムのUV−Visスペクトルを測定し、2つの直交する方向に50%の歪みになるまでフィルムを延伸し、そして一方向に100%の歪みになるまでフィルムを延伸した。スペクトルを図2に示す。
【0073】
配向の結果として、吸光度スペクトルに第2の極大または約540〜580nmにショルダーが現れる。コーティング付きフィルムを配向させると、配向方向のナノ粒子間隔は大きくなり、吸光度ピーク極大は短波長側にシフトする。同時に、配向方向に垂直な方向のナノ粒子距離は小さくなり、長波長側に新しい吸光度ピークが現れる。
【0074】
実施例3
60オングストロームのコーティングが得られるように、銀ナノ粒子をBOPSフィルム上にeビーム蒸発させた。コーティング付きBOPSフィルムは、紫色の色調を有していた。100℃に設定された温度調節チャンバーおよび毎分0.25センチメートル(毎分0.1インチ)の延伸速度を用いて、インストロン(Instron)引張試験機(マサチューセッツ州カントンのインストロン・コーポレーション(Instron Corp.;Canton,MA)製のモデル1122)により、コーティング付きフィルムのサンプルを延伸した。実施例1に記載されるように未延伸フィルムのUV Visスペクトルを測定し、2つの直交する方向に50%の歪みになるまでフィルムを延伸し、そして一方向に150%の歪みになるまでフィルムを延伸した。コーティング付きフィルムの断面を図1に示す。スペクトルを図3に示す。この場合も、配向の結果として短波長側へのシフトを生じ、配向に垂直な方向のナノ粒子間隔が減少した結果として約600nmに新しい吸光度ピークが現れる。
【0075】
実施例4
実施例3に記載されるように銀ナノ粒子をBOPSフィルム上にeビーム蒸発させた。140℃に設定されたオーブン中でコーティング付きフィルムのサンプルを5分間収縮させた。得られたフィルムは、約20%の全収縮率を有していた。実施例1に記載されるように未収縮フィルムおよび収縮フィルムのUV Visスペクトルを測定した。スペクトルを図4に示す。収縮の結果として長波長側への吸光度ピーク極大シフトを生じる。
【0076】
実施例5
80オングストローム(サンプル5A)、120オングストローム(サンプル5B)、200オングストローム(サンプル5C)の酸化銀(Agコアを有するAgO表面)ナノ粒子コーティングが得られるように、酸素の存在下で二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に銀ナノ粒子をeビーム蒸発させた。コーティング付きBOPPフィルム5Aおよび5Bは、帯黄色/琥珀色の色調を有していたが、5Cは、帯褐色の色調を有していた。フルーク(Fluke)27マルチメーター(ワシントン州エバレットのジョン・フルークMfc.Co.Inc(John Fluke Mfc.Co.Inc,Everett,Washington))を用いて表面伝導率に関してコーティング付きフィルムを試験したが、表面伝導率を示さなかった。サンプル5Cを160℃のオーブン中に配置し、20%収縮させ、そしてマルチメーターを用いて再試験したところ、試料の表面上1cm間隔で点プローブを配置したとき13キロオームの抵抗を示した。この測定は、室温かつ約30%の相対湿度で行われた。収縮サンプルは、褐色/灰色の外観および可視領域で30%の平均透過率を有していた。
【0077】
初期材料のナノ粒子共鳴を示す透過スペクトルを図5に示す。プラズモン吸収は、80オングストロームのサンプルでは観測されるが、公称コーティング厚さを増大させた低透過率のサンプルではそれほど顕著ではない。この実施例に示される測定では、導電性かつ完全反射性のコーティングから非導電性プラズモン吸収性コーティングへの移行を示す。パーキン・エルマー・ラムダ19(Perkin Elmer Lamda 19)分光計を用いてスペクトルを測定した。300〜2500ナノメートルにわたり5nm間隔でスキャンした(1スキャンあたり6分間)。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例3のコーティング付きフィルムの電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2の吸光度スペクトルである。
【図3】実施例3の吸光度スペクトルである。
【図4】実施例4の吸光度スペクトルである。
【図5】実施例5の透過スペクトルである。
【図6】実施例1の吸光度スペクトルである。
【図7】実施例1の金ナノ粒子コーティング付きPFA(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロメチルビニルエーテル(peerfluoromethyl vinyl ethyl)コポリマー)フィルムの電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン共鳴を有する光学フィルムであって、熱可塑性フィルム基材とその上のメタリックナノ粒子の不連続コーティングとを含み、該光学フィルムの吸収ピーク極大を延伸時に短波長側にまたは収縮時に長波長側にシフトさせうる、光学フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性フィルムが延伸されている、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記フィルムの延伸または収縮のいずれかをさらに行ったときに、前記吸収ピーク極大が少なくとも10nmシフトする、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記延伸熱可塑性フィルム基材が一軸延伸されている、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記延伸の全延伸比が少なくとも1.1倍である、請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記延伸熱可塑性フィルム基材が二軸延伸されている、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記二軸延伸が少なくとも1.1倍の全延伸比である、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記二軸延伸が長手方向と横方向とで実質的に等しい、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記二軸延伸が長手方向次元と横方向次元とで実質的に等しくない、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記吸収ピーク極大が長手方向次元と横方向次元とで異なる、請求項9に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルムの層を2層以上を含む、多層物品。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、1.5:1を超えるアスペクト比を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項13】
生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプルの試験に使用するためのセンサーであって、請求項1〜10のいずれかに記載の物品と、場合により、前記メタリックナノ粒子の少なくとも一部分上に配置された官能化材料層と、前記メタリックナノ粒子層または存在する場合には該官能化材料層の少なくとも一部分上に配置された結合剤と、を含み、該結合剤が、該生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプル中に存在する所定の物質と相互作用する、センサー。
【請求項14】
前記メタリックナノ粒子が、金、銀、インジウム、ランタン、アルミニウム、銅、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、チタン、インジウム、ランタン、インジウムスズ酸化物(ITO)およびアンチモンスズ酸化物(ATO)、アンチモンインジウムスズ酸化物(AITO)、スズ、ランタン、ならびにそれらのうちの任意の2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項13に記載のセンサー。
【請求項15】
前記反応性物質が、抗体/抗原;抗体/ハプテン;酵素/基質;酵素/補因子;酵素/阻害剤;結合タンパク質/基質;担体タンパク質/基質;レクチン/炭水化物;レセプター/ホルモン;レセプター/エフェクター;核酸鎖/相補的核酸鎖;タンパク質/核酸リプレッサー;タンパク質/核酸誘導物質;リガンド/細胞表面レセプター;およびウイルス/リガンドからなる群から選択される対のメンバーである、請求項13に記載のセンサー。
【請求項16】
前記官能化材料が有機シランまたは有機チオールである、請求項13に記載のセンサー。
【請求項17】
前記官能化材料が、加水分解されたモノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、およびトリアルコキシシラン、またはモノクロロシラン、ジクロロシラン、およびトリクロロシラン(少なくとも1個のホスホン酸基、ベンゾトリアゾール基、アズラクトン基、−CN基、−NH2基、2−ピリジル基、−P(C652基、および/もしくは−SH基を含有する)、ならびにカルボキシル末端有機チオールからなる群から選択される、請求項13に記載のセンサー。
【請求項18】
生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプル中の物質の存在の検出および/または量の定量を行う方法であって、
(i)請求項13に記載の少なくとも1台のセンサーによりuv光、可視光、および/または赤外光の吸光度を測定する工程と;
(ii)生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプルを該センサーに接触させる工程と;
(iii)該生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプルとの接触の後で該センサーのuv光および/または可視光の吸光度を測定する工程と;
(iv)該生物学的、生化学的、化学的、または環境的サンプルとの接触の前後の該センサーのuv光、可視光、および/または赤外光の吸光度の差を決定する工程と;
を含む、方法。
【請求項19】
メタリックナノ粒子コーティング付きフィルムを作製する方法であって、
a.熱可塑性フィルムを提供する工程と、
b.物理気相堆積により該フィルムの表面上にメタリックナノ粒子の不連続コーティングを堆積させる工程と、
c.該コーティング付きフィルムの延伸または収縮を行う工程と(ここで、該メタリックナノ粒子コーティング付きフィルムの吸収ピーク極大を延伸時に短波長側にまたは収縮時に長波長側にシフトさせうる)、
を含む、方法。
【請求項20】
前記熱可塑性フィルムが、前記堆積工程の前に延伸され、次に、前記堆積工程の後でさらなる延伸または収縮が行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記メタリックナノ粒子が、100nm未満の平均主要寸法を有する個々の粒子または粒子の凝集物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記メタリックナノ粒子層の平均塊厚さが1〜50nmである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記延伸熱可塑性フィルムが堆積前に追加的に延伸される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記メタリックナノ粒子が、金、アルミニウム、銅、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、チタン、コバルト、バナジウム、マグネシウム、銀、亜鉛、およびカドミウム、インジウム、ランタン、インジウム、ランタン、インジウムスズ酸化物(ITO)およびアンチモンスズ酸化物(ATO)、アンチモンインジウムスズ酸化物(AITO)、スズ、インジウム、ランタン、ホウ素、六ホウ化ランタン、希土類金属、ならびにそれらの混合物および合金から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子の少なくとも50体積パーセントが、前記熱可塑性ポリマーフィルムの表面よりも上に露出されている、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記物理気相堆積法が、気相堆積、カソードスパッタリング、熱分解、イオンプレーティング、またはeビーム堆積から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記熱可塑性フィルムが、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、フルオロポリマー、液晶ポリマー、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ウレアホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルクロリド、イオノマー性ポリマー、アクリル樹脂、およびシリコーンポリマーから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
2種以上の金属が堆積される、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記メタリックナノ粒子が金属酸化物ナノ粒子である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティング付きフィルムをアニールする工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記熱可塑性ポリマーフィルムが1重量%未満の微粒子添加剤を含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
請求項19〜31のいずれかに記載の方法により作製される、光学フィルム。
【請求項33】
前記フィルムの吸光度ピーク極大が前記フィルムの延伸時に短波長側にまたは前記フィルムの収縮時に長波長側にシフトする吸光度スペクトルを有する、請求項32に記載の光学フィルム。
【請求項34】
前記フィルムの吸光度ピーク極大が、前記フィルムの延伸時または収縮時に少なくとも10nmシフトする、請求項32に記載の光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−532097(P2008−532097A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500704(P2008−500704)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/002990
【国際公開番号】WO2006/096255
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】