説明

メタルマスクおよびそのメタルマスクを用いたはんだペースト印刷方法

【課題】複数の配線基板に対して、高価な装置を用いず簡便に位置合わせを行い、はんだペーストの印刷を行うこと。
【解決手段】配線基板12に対応する位置に凹部2を設けたメタルマスク1を用いてはんだペースト印刷を行う。このメタルマスク1は、配線基板12に被せられるメタルマスク1の面に、配線基板12を収容し配線基板12の位置決めを行う凹部2が複数設けられている。また、凹部2に収容された配線基板12のパッド13に対応するメタルマスク1の位置に孔部3が貫通形成されている。このメタルマスク1を用いると、メタルマスク降下時にステージ10上に設置された配線基板12の位置ずれが矯正される。これにより、複数の配線基板に対して、簡便な方法で高い位置精度にてはんだペーストを印刷できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板にはんだペーストを印刷する際に使用するメタルマスクと、そのメタルマスクを用いたはんだペーストの印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板のパッドにはんだペーストを供給する工程において、スキージ走行によるはんだペースト印刷が行われている。はんだペースト印刷では、配線基板のパッドに対応する位置に孔部が設けられたメタルマスクと、このメタルマスク上を走行し、メタルマスクの孔部にはんだペーストを充填させるためのスキージが用いられる。
【0003】
通常、はんだペーストの印刷には印刷装置を用いる。配線基板およびメタルマスクに設けられたアライメントマークにてカメラを用いて画像認識を行った後、アライメントマークに合わせて印刷ステージ等を微動させて位置合わせを行う。その後、スキージよってはんだペーストを印刷する。
【0004】
一枚の配線基板にはんだペーストを印刷する場合、上記のようなカメラを用いた位置合わせにて高精度な印刷が可能である。しかしながら、複数の配線基板にはんだペーストを印刷する場合、配線基板同士の相対位置は様々であるため、一枚の配線基板と同様の方法では、全ての配線基板に対して位置合わせを行うことはできない。ある配線基板とメタルマスクとの位置合わせを、カメラを用いて行うと、他の配線基板とメタルマスクとは位置ずれが生じている虞がある。
【0005】
これに対して、非特許文献1では、それぞれの配線基板に対して個別のステージを有し、カメラを使用し、配線基板のピックアップ、吸着を駆使して各配線基板を個別に位置合わせを行う印刷装置が提供されている。個別に位置合わせを行うため、高い精度ではんだペーストを印刷することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://www.ho-minami.co.jp/tec/08.html ミナミ株式会社ホームページ 技術情報 マルチアライメント
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1の技術においては、複雑、高価な印刷装置を必要とする上、一枚ずつ位置合わせを行うため印刷工程に要する時間が長い。
本発明では、上記の事情に鑑み、配線基板に対応する位置に凹部を設けたメタルマスクを用いることにより、簡便な方法で高い精度にてはんだペーストを印刷できるメタルマスク、およびそのメタルマスクを用いたはんだペーストの印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために為された請求項1に係る発明は、配線基板にはんだペーストを印刷する工程で前記配線基板に被せられるメタルマスクにおいて、前記配線基板に被せられる前記メタルマスクの面に、前記配線基板を収容し前記配線基板の位置決めを行う凹部が複数設けられ、前記凹部に収容された前記配線基板のパッドに対応する前記メタルマスクの位置に孔部が貫通形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記凹部の深さが、前記配線基板の厚さと等しいことを特徴とする請求項1に記載のメタルマスクである。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記凹部は、平坦な底面と、前記底面を囲み前記配線基板に被せられる前記メタルマスクの面に接続する側面とで形成され、前記側面は、前記配線基板に被せられる前記メタルマスクの面から前記底面に至るにつれて、前記底面の面積を小さくする方向に傾斜する傾斜面で形成され、前記底面は前記配線基板の輪郭と同じ寸法の輪郭で形成されていることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載のメタルマスクである。
また、請求項4に係る発明は、前記傾斜面が前記底面に対してなす角度θは、0°<θ≦90°であり、好ましくは、30°≦θ≦70°であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のメタルマスクである。
また、請求項5に係る発明は、前記メタルマスクは、前記配線基板に被せられる下面と、その反対側の上面とを有し、前記凹部は下面に形成され、前記下面から前記凹部の底面までの前記メタルマスク1の厚さをTとし、前記凹部の底面から前記上面までの前記メタルマスクの厚さをtとしたとき、厚さTの部分を形成するメタルマスクの部分と、厚さtの部分を形成するメタルマスクの部分とは同一の部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のメタルマスクである。
また、請求項6に係る発明は、前記メタルマスクは、前記配線基板に被せられる下面と、その反対側の上面とを有し、前記凹部は下面に形成され、前記下面から前記凹部の底面までの前記メタルマスクの厚さをTとし、前記凹部の底面から前記上面までの前記メタルマスクの厚さをtとしたとき、厚さTの部分を形成するメタルマスクの部分と、厚さtの部分を形成するメタルマスクの部分とは別部材であり、それら部材は接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のメタルマスクである。
【0011】
また、請求項7に係る発明は、請求項1から6のいずれかに記載のメタルマスクを用いて、はんだペーストを配線基板に印刷することを特徴とするはんだペーストの印刷方法である。
【発明の効果】
【0012】
配線基板に対応する位置に凹部を設けたメタルマスクを用いることにより、位置合わせが簡便となり、複数の配線基板に対してもショート等の不具合が発生することなく、高い位置精度にてはんだペーストを印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のはんだペースト印刷工程の一例を示す断面図
【図2】本発明のメタルマスクの製造方法の一形態を示す断面図
【図3】従来のはんだペースト印刷工程の一例を示す断面図
【図4】本発明のメタルマスクの一例を示す断面図
【図5】本発明のはんだペースト印刷工程の一実施形態を示す断面図
【図6】従来のはんだペースト印刷工程の一実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、本発明のメタルマスク1は、配線基板12に対応する位置に凹部2が設けられている。また、配線基板12のパッド13に対応する位置には、はんだペーストが充填される孔部3が設けられている。さらに、メタルマスク1は凹部2および孔部3を複数有し、複数の配線基板に対して同時にはんだペーストを印刷することが可能である。言い換えると、配線基板12に被せられるメタルマスク1の面に、配線基板12を収容し配線基板12の位置決めを行う凹部2が複数設けられている。また、凹部2に収容された配線基板12のパッド13に対応するメタルマスク1の位置に孔部3が貫通形成されている。
【0015】
メタルマスク1には薄い金属が用いられる。SUS、Ni系合金、Cu系合金等を用いることができる。図示していないが、これらのメタルマスクは、四角棒状のアルミ合金等の枠に固定されている。メタルマスク1に設けられる凹部2と孔部3は、いずれを先に形成しても差し支えない。言い換えると、メタルマスク1は、配線基板12に被せられる下面と、その反対側の上面とを有し、凹部2は下面に形成されている。そして、前記下面から凹部2の底面までのメタルマスク1の厚さをTとし、凹部2の底面から前記上面までのメタルマスク1の厚さをtとしたとき、厚さTの部分を形成するメタルマスクの部分と、厚さtの部分を形成するメタルマスクの部分とは同一の部材である。
孔部3は、エッチング法、レーザー法、電鋳法、切削法、プレス法等、公知の方法によって形成される。凹部2は、エッチング法、電鋳法、切削法、プレス法等の公知の方法により形成することができる。
また、図2に示すように、従来のメタルマスク4に、配線基板の位置に相当する部分の金属等を取り除いた金属板6を接着剤5等で貼り付けることによっても、凹部2を形成することができる。このとき、従来のメタルマスク4ではなく、孔部未加工の金属板に配線基板の位置に相当する部分の金属等を取り除いた金属板6を接着剤5等で貼り付け、後から孔部3の加工を行うことも可能である。言い換えると、メタルマスク1は、配線基板12に被せられる下面と、その反対側の上面とを有し、凹部2は下面に形成されている。そして、前記下面から凹部2の底面までのメタルマスク1の厚さをTとし、凹部2の底面から前記上面までのメタルマスク1の厚さをtとしたとき、厚さTの部分を形成するメタルマスクの部分と、厚さtの部分を形成するメタルマスクの部分とは別部材であり、それら部材は接合されている。
【0016】
メタルマスク1は、配線基板12に被せられる下面と、その反対側の上面とを有し、凹部2は下面に形成されている。メタルマスク1の厚さから凹部2の深さを引いた厚さtが、所望のはんだペースト印刷量となるのに必要なメタルマスクの厚さとなるように加工すればよい。tの厚さは特に限定する必要はないが、概ね0.02〜0.5mm程度であり、配線基板に搭載する部品によって厚さを調整する。凹部2の深さに対応するTの厚さは0.05mm〜配線基板厚とすることが望ましい。0.05mm以下の場合は凹凸による位置合わせの効果が得られない。より好ましくは、Tを配線基板の厚さと等しくする。このとき、配線基板12にメタルマスク1を密着させると、配線基板12に対応しない部分のメタルマスクがステージ10と密着し、メタルマスク1の上面が平坦となり、ばらつきを抑えてはんだペースト印刷を行うことが可能となる。図3に示した従来のメタルマスク4では、配線基板12以外の場所では、メタルマスクとスキージの間に隙間があり、スキージを走行させたときにメタルマスク4が歪む虞がある。
【0017】
凹部2は、平坦な底面と、底面を囲み配線基板12に被せられるメタルマスク1の面(下面)に接続する側面とで形成されている。側面は、配線基板12に被せられるメタルマスク1の面(下面)から底面に至るにつれて、底面の面積を小さくする方向に傾斜する傾斜面で形成されている。本実施の形態では、底面は配線基板12の輪郭と同じ寸法の輪郭で形成されている。言い換えると、メタルマスク1の凹部2は、メタルマスク1の表面から深さ方向に対して小さくなり、凹部2の底にて配線基板12と同じ寸法となるテーパー様の形状であることが好ましい。ステージ10に配線基板12を置く位置が凹部2内に収まる範囲であるとすると、凹部2をテーパー様の形状にすることにより、位置合わせ機能が発揮される。狭ピッチ化に伴い、位置ずれの許容値は小さくなっており、上記の位置合わせ機能による微調整が有効となる。さらに、凹部2の底部を配線基板12と同じ寸法とすると、メタルマスク1と配線基板12が密着したときに位置合わせが完了した状態となる。
図4に示す凹部2のテーパー様形状の角度θは、0°<θ≦90°の範囲にて設定し、特に限定する必要はないが、より好ましいθの範囲は30°≦θ≦70°である。角度θが小さいと、位置ずれ矯正効果が得られない。一方、角度θが大きいと、凹部2に配線基板12が入らず、位置補正できない虞がある。
【0018】
図5に本発明のメタルマスク1を用いたはんだ印刷工程の一実施形態を示す。メタルマスク1の凹部2を複数設けることにより、多数の配線基板への一括はんだペースト印刷が可能となる。
まず、ステージ10に配線基板12を置く(図5(a))。このとき、ステージ10上に置かれた複数の配線基板12同士の相対位置は様々である。次に、メタルマスクを降下させる(図5(b)、(c))。凹部2を有するメタルマスク1を用いることにより、メタルマスク1の降下時に、配線基板12は位置ずれが矯正されながら凹部2に収まる。メタルマスク1と配線基板12が密着したとき、位置合わせが完了する。メタルマスク降下後、ステージ10に設けられた吸着孔11より空気を吸い込み、配線基板12をステージ10に密着させる。この後、スキージ21を用いてはんだペースト22を印刷し(図5(d))、メタルマスクを上昇させる(図5(e))。最後に、配線基板の吸着を解除し、基板をステージより取りはずす。
一方、従来のメタルマスク4を用いると、メタルマスク4の降下による配線基板12の位置ずれは矯正不可能であり、位置ずれが起きたままはんだペースト印刷が行われる(図6)。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、配線基板にはんだペーストを印刷する際に使用するメタルマスクと、そのメタルマスクを用いたはんだペーストの印刷方法に関する。本発明によれば、複数の配線基板へのはんだペースト印刷工程において、位置合わせが簡便となり、ショート等の不具合が発生することなく、高い位置精度にてはんだペーストを印刷することができる。
【符号の説明】
【0020】
1…本発明のメタルマスク
2…凹部
3…孔部
4…従来のメタルマスク
5…接着剤
6…凹部形成用金属板
10…ステージ
11…吸着孔
12…配線基板
13…パッド
21…スキージ
22…はんだペースト
23…はんだバンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板にはんだペーストを印刷する工程で前記配線基板に被せられるメタルマスクにおいて、
前記配線基板に被せられる前記メタルマスクの面に、前記配線基板を収容し前記配線基板の位置決めを行う凹部が複数設けられ、
前記凹部に収容された前記配線基板のパッドに対応する前記メタルマスクの位置に孔部が貫通形成されている、
ことを特徴とするメタルマスク。
【請求項2】
前記凹部の深さが、前記配線基板の厚さと等しいことを特徴とする請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項3】
前記凹部は、平坦な底面と、前記底面を囲み前記配線基板に被せられる前記メタルマスクの面に接続する側面とで形成され、
前記側面は、前記配線基板に被せられる前記メタルマスクの面から前記底面に至るにつれて、前記底面の面積を小さくする方向に傾斜する傾斜面で形成され、
前記底面は前記配線基板の輪郭と同じ寸法の輪郭で形成されていることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載のメタルマスク。
【請求項4】
前記傾斜面が前記底面に対してなす角度θは、0°<θ≦90°であり、好ましくは、30°≦θ≦70°であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のメタルマスク。
【請求項5】
前記メタルマスクは、前記配線基板に被せられる下面と、その反対側の上面とを有し、前記凹部は下面に形成され、前記下面から前記凹部の底面までの前記メタルマスクの厚さをTとし、前記凹部の底面から前記上面までの前記メタルマスクの厚さをtとしたとき、厚さTの部分を形成するメタルマスクの部分と、厚さtの部分を形成するメタルマスクの部分とは同一の部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のメタルマスク。
【請求項6】
前記メタルマスクは、前記配線基板に被せられる下面と、その反対側の上面とを有し、前記凹部は下面に形成され、前記下面から前記凹部の底面までの前記メタルマスクの厚さをTとし、前記凹部の底面から前記上面までの前記メタルマスクの厚さをtとしたとき、厚さTの部分を形成するメタルマスクの部分と、厚さtの部分を形成するメタルマスクの部分とは別部材であり、それら部材は接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のメタルマスク。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のメタルマスクを用いて、はんだペーストを配線基板に印刷することを特徴とするはんだペーストの印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66539(P2012−66539A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215007(P2010−215007)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】