説明

モノリス炭素吸着剤を備えたガス貯蔵・計量分配システム

【課題】
流体貯蔵・計量分配装置であって、内部容積を有する流体貯蔵・計量分配容器として内部容積は流体を吸着して保持する物理的吸着剤を含みかつ容器から計量分配するために流体は該吸着剤から脱着可能である容器と、脱着された流体を容器から計量分配するため容器に結合された計量分配アセンブリと、を含んでいる。
【解決手段】
物理的吸着剤はモノリス炭素質物理的吸着剤を含み、該モノリス炭素質物理的吸着剤は、(a)アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度がアルシン400g/吸着剤1Lより高い充填密度であり、(b)吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含んでおり、(c)1000℃未満の温度で、熱分解及び随意的活性化により形成されており、約0.80〜約2.0g/cmのかさ密度を有する、という特性のうち少なくとも1つを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般にガス貯蔵・計量分配システムに関し、特にガス貯蔵媒体としてモノリス炭素吸着剤を利用するかかるタイプのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
トム(Tom)らによる米国特許第5,518,528号明細書に開示された物理的吸着剤式ガス貯蔵・計量分配システムは、半導体産業における有害ガスの輸送、供給、使用を根底から変えた。このシステムは、分子ふるい又は活性炭といった物理的吸着媒体を保持する容器を含み、該吸着媒体は、貯蔵されかつ容器から選択的に計量分配されるガスに対して吸着親和性を有する。このガスは、同量のガスを「自由」(未吸着)状態で保持している対応する(吸着剤)の空容器に対して相対的に減圧された圧力で、吸着媒体に吸着された状態で容器内に保持される。
【0003】
こうした減圧貯蔵により、漏洩が起こるとしてもいずれも、従来の高圧ガス貯蔵シリンダと比べて、周囲環境へのガスの放出は非常に低率になるであろうことから、ガス貯蔵及び計量分配作業の安全性は実質的に改善される。さらに、減圧圧力は、弁、流量調整器、カップリング、接合部等のシステム構成部品に対する応力及び磨耗を軽減するので、吸着剤式システムの低圧作業は、こうしたガス漏洩現象の可能性が低い。
【0004】
こうした吸着剤式ガス貯蔵・計量分配システムでは、物理的吸着媒体の作業能力が作業上の制約条件となる。作業能力とは、吸着媒体上に貯蔵(「充填」)可能であり、また使用する際にはこうした吸着媒体から脱着して取り出し可能なガスの量である。作業能力は、吸着媒体を含むガス貯蔵容器内のガスの貯蔵圧力と、脱着ガスの計量分配状態(例えば、脱着を引き起こすのに圧力差が使用される場合のガスの計量分配圧力、並びに、計量分配様式としてガスの熱脱着が使用される場合のそれぞれの貯蔵及び計量分配状態の温度レベル)と、吸着媒体自体のタイプ及び特性(例えば、吸着媒体としてのパラメータに関するもので、サイズ、形状、気孔率、気孔サイズ分布、及び内部気孔通路の屈曲性)とによる関数である。
【0005】
当該技術は、物理的吸着剤式ガス貯蔵・計量分配システムの作業能力の改善を引き続き模索している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明は、物理的吸着剤式ガス貯蔵・計量分配システム及びこうしたタイプの改善された作業能力システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は流体貯蔵・計量分配装置に関するもので、該装置は、内部容積を有する流体貯蔵・計量分配容器として内部容積は流体を吸着して保持する物理的吸着剤を含みかつ容器から計量分配するために流体は該吸着剤から脱着可能である容器と、脱着された流体を容器から計量分配するため容器に結合された計量分配アセンブリと、を備えており、物理的吸着剤はモノリス炭素質物理的吸着剤を含んでおり、該モノリス炭素質物理的吸着剤は、
(a)アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/吸着剤1Lより高い充填密度であり、
(b)上記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含んでおり、
(c)1000℃未満の温度で、熱分解及び随意的活性化により形成されており、約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度(bulk density)を有する、
という特性のうち少なくとも1つを特徴としている。
【0008】
本発明の別の態様は、ガス貯蔵・計量分配システムで使用するモノリス吸着剤を形成する方法に関し、上記方法は、熱分解可能材料をモノリス形状に成形するステップと、モノリス吸着剤を生成する熱分解状態において熱分解可能材料を熱分解するステップとを含み、該モノリス吸着剤は、
(a)アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/吸着剤1Lより高い充填密度であり、
(b)上記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含んでおり、
(c)約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度(bulk density)であって、上述の熱分解状態は1000℃未満の温度を含む、
という特性のうち少なくとも1つを特徴としている。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、ガスを貯蔵及び計量分配する方法に関し、該方法は、ガス貯蔵・計量分配容器を組み立てるステップと、上記ガスに対する吸着親和性を有する物理的吸着剤を容器内に配置するステップと、物理的吸着剤での吸着のために上記ガスを上記容器へ充填するステップと、容器を作動可能弁を含む弁ヘッドで密閉して物理的吸着剤と吸着ガスとを封入し容器の外部環境からこれを隔離するステップと、物理的吸着剤から吸着ガスを脱着するステップと、ガスを計量分配するために弁ヘッドの作動可能弁を作動させて容器から作動可能弁を通ってガスを流すステップと、を含み、物理的吸着剤は、
(a)アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/吸着剤1Lより高い充填密度であり、
(b)上記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含んでおり、
(c)約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度(bulk density)であって、上記熱分解状態は1000℃未満の温度を含む、
という特性のうち少なくとも1つを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】クレハ578−66−6球状活性炭(黒い菱形マークで印したデータ点)、タカチホABF14−03粒状活性炭(黒い四角マークで印したデータ点)、及びポリ塩化ビニリデン重合体から形成された炭素(サランA、ダウケミカル社)(白い三角マークで印したデータ点)について、炭素1Lにつき吸着されたホスフィン(PH)のg表示の重量を、トル表示の圧力レベルの関数として表しているグラフである。
【図2】クレハ578−66−6球状活性炭(黒い菱形マークで印したデータ点)、及びポリ塩化ビニリデン重合体から形成された炭素(サランA、ダウケミカル社)(白い三角マークで印したデータ点)について、炭素1Lにつき吸着されたアルシン(AsH)のcm表示の体積を、トル表示の圧力レベルの関数として表しているグラフである。
【図3】本発明の1つの実施形態による、モノリス吸着剤を使用した貯蔵及び配送システムの概略図である。
【図4】本発明の別の実施形態による、モノリス吸着剤を使用した長方形平行六面体流体貯蔵・計量分配容器の斜視図である。
【図5】クレハ578−66−6球状活性炭(黒い菱形マークで印したデータ点)、及びポリ塩化ビニリデン重合体から形成された炭素(サランA、ダウケミカル社)(黒い四角マークで印したデータ点)について、炭素1Lにつき吸着された三フッ化ホウ素(BF)のg表示の吸着重量を、トル表示の圧力レベルの関数として表しているグラフである。
【0011】
本発明の他の態様、特徴及び実施形態は、これに続く開示及び添付の請求項からさらに詳細に明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明、及び本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、物理的吸着剤式の流体貯蔵・計量分配装置は、中にモノリス炭素吸着素材を有する流体貯蔵・計量分配容器を使用して組み立てられてもよい、という発見に基づいており、該モノリス炭素吸着素材は、吸着剤へのガスの吸着及び脱着の性質と限度、容器内の物理的吸着媒体にとって実現可能な装填密度、及び半導体製造作業用のこうした容器を備えた流体貯蔵・計量分配装置の有用性、に関して驚くべき予想外の利点を備えている。
【0013】
本発明はこのようにして、トム(Tom)らによる米国特許第5,518,528号明細書に記載されたタイプの吸着剤式ガス貯蔵・計量分配システムで、いわゆる球状活性炭のような細分形態の物理的吸着媒体を使用したシステムに対して、当該技術における実質的進歩を実現する。本発明によると、ガス貯蔵・計量分配システムは、球状又は粒状ではない、特定の特性のモノリス形態の活性炭が装備される場合、作業能力において著しい改善が可能である。
【0014】
モノリス形態の活性炭の使用により実現可能となる改良のレベルは、ガス貯蔵・計量分配容器が吸着剤モノリスに適合した形状である場合、先行技術で使用された細分形態に比べて、極めて予想外であり、より驚異的に改善される。
【0015】
例えば、容器が好ましい立方体又は他の長方形平行六面体形状で、2002年12月出願、米国特許出願第 [ATMI−566]号明細書、デニス・ブレストヴァンスキー(Dennis Brestovansky)、マイケル・J・ヴォジェンスキ(Michael J. Wodjenski)、ホセ・I・アルノ(Jose I. Arno)、及びJ・D・カラザーズ(J.D. Carruthers)の共同出願である「長方形平行六面体流体貯蔵・計量分配システム(Rectangular Parallelepiped Fluid Storage and Dispensing System)」についての開示と一致している場合、適合するよう成形されたモノリスの使用により、物理的吸着剤式ガス貯蔵・計量分配システムの作業能力は、同じ「設置面積」でかつ同じ容器内部容積の球状活性炭で充填されたガス貯蔵シリンダを使用している先行技術のシステムに比べて、少なくとも85%の増加が可能である。
【0016】
本発明のモノリス物理的吸着剤を、物理的吸着剤式の流体貯蔵・計量分配装置の長方形平行六面体構造容器の中に、好適に装填する際の予想外の利点を説明するにあたって、説明に対する背景として、当初検討されたのは、物理的吸着剤式流体貯蔵・計量分配システム用に長方形平行六面体構造を採用することは、非常に不利になる恐れがあるということだった。何故なら、(i)長方形平行六面体容器は6面を有し、もし容器の各面が別個の断片である場合、組み立てには12の溶接線が必要であり;(ii)(i)である場合、長方形構造容器の組み立てコストは、これに相当する円筒形容器よりもかなり高いものになると予想され;(iii)長方形平行六面体構造は、隣接する直角に向いた壁の接合部が鋭角で、これは接合部の線上に隙間を形成する可能性をもたらし、これに相当する円筒形形状容器(該円筒形形状容器は、こうした角がなく、代わりに容器の内部容積内の物理的吸着媒体床に外接して断面積が最小となる形状をしている)に比べると、吸着剤床は角には「装填」せず;(iv)2つの直角をなす壁の互いの交差部は接合部を生成し、該接合部は、「継ぎ目のない」円筒形容器に比べると、接合部に向けられた圧力又は力による破断に対して影響を受けやすい、からである。
【0017】
しかし、長方形平行六面体構造によって、容器は、隣接する壁の交差部の継ぎ目付近では、装填された吸着剤床が余り緊密にならない領域を有すると判断され、これは不利な点というよりむしろ、実際はこうした低密度吸着剤床領域は、隙間にある脱着された又は未吸着のガスにとって、吸着剤床のかさ容積から流れ出るのに、高伝導ガス流路として好適となる。
【0018】
さらに、円筒形容器は、断面積が最小となる構造で、壁面に外接した外周は最小に広がっているので、円筒形容器内の壁に対して存在する吸着剤の量は、最大となる。逆の場合を考えると、断面において吸着剤床を取り囲む(に隣接する)壁の周辺の広がりは、円筒形容器より長方形平行六面体構造の方がずっと大きい。長方形平行六面体構造はそれによって、相当する大きさの円筒形容器よりも、より多くの大量のガスが容器から放出するのを可能にする。これは吸着剤床を取り囲む壁面には非吸着の特性があり、長方形構造容器における吸着剤床の外側余白では、円筒形容器に存在するより割合として多くの壁面が存在するからである。その結果、壁領域で脱着されたガスは、吸着剤床の内側部分で脱着されたガスよりも、吸着媒体からの初期脱着解放の後続けて再び吸着されることがより少ない。
【0019】
これらの理由によって、長方形平行六面体容器構造は、本発明のモノリス形態の物理的吸着剤を保持するのに特に有用である。
【0020】
ここで使用するように、「モノリス」という用語は、吸着剤媒体が一体成形の又はブロック状の形態であることを意味し、例えば、ブロック、煉瓦、円盤、ブール等の形態であるということで、これに対して、球状、粒状、顆粒、ペレット等の形態で、一般に非常に多数のこうした球状、粒状、顆粒、ペレット等を備えた床の形で使用される、従来の細分形態とは対照的である。従って、非常に多数の細分物理的吸着剤要素床の形態では、活性吸着剤の空隙容積とは、主な部分の隙間又は粒子間のことであり、その性質上、吸着剤粒子の寸法、形状、装填密度により様々に変化する。これに対してモノリス形態では、活性吸着剤の空隙容積とは、吸着素材本来の気孔率のことで、空隙は、大量の吸着剤本体の中にその製造中に既に形成されていてもよい。
【0021】
1つの態様における本発明は、流体貯蔵・計量分配装置に関するもので、該装置は、内部容積を有する流体貯蔵・計量分配容器として内部容積は流体を吸着して保持する物理的吸着剤を含みかつ容器から計量分配するために流体は該吸着剤から脱着可能である容器と、脱着された流体を容器から計量分配するため容器に結合された計量分配アセンブリと、を備えており、物理的吸着剤はモノリス炭素質物理的吸着剤を含んでおり、該モノリス炭素質物理的吸着剤は、
(a)アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/吸着剤1Lより高い充填密度であり、
(b)上記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含んでおり、
(c)1000℃未満の温度で、熱分解及び随意的活性化により形成されており、約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度(bulk density)を有する、
という特性のうち少なくとも1つを特徴としている。
【0022】
モノリス吸着剤は、単一のモノリス吸着剤製品の形をとることも、あるいは複数のモノリス吸着剤製品の形をとることもできる。吸着剤は、容器の内部容積に適合して適切に成形されることが可能であり、該容器内に吸着剤は配置され、好ましくは容器の内部容積の少なくとも60%、例えばこうした内部容積の75〜95%、を占める。本発明について、これ以降、好ましい長方形平行六面体形状容器内へのモノリス吸着剤の格納に関してより詳細に検討するが、その一方で、本発明はこれに限定されず、他の容器形状並びに構造、例えば円筒形容器、樽型容器、円錐台形容器等を使用することも可能であることは理解されるであろう。
【0023】
モノリス吸着剤は、有機樹脂の熱分解生成物として形成可能で、より一般的には、あらゆる適した熱分解素材、例えば、ポリ塩化ビニリデン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ポリフルフリルアルコール、椰子殻、ピーナッツ殻、桃の種、オリーブの種、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド等から形成可能である。吸着剤は、流体が後の計量分配のために貯蔵される流体貯蔵・計量分配容器内でその場で形成されることも可能で、あるいは吸着剤は形成してから流体貯蔵・計量分配容器へ投入されることも可能である。1つの実施形態では、吸着剤は、その気孔率の少なくとも20%を、直径2nm未満の孔として有する。
【0024】
吸着剤は、一つにまとまって吸着剤塊を構成する複数のモノリス吸着剤製品として、流体貯蔵・計量分配容器へ装備可能である。こうした複数のモノリス製品の配置では、複数の別個のモノリス吸着剤製品の各々は、容器の内部容積の高さの0.3〜1.0倍の長さと、容器の長方形断面積の0.1〜0.5倍の断面積を有することができる。複数の別個のモノリス製品の各々は、長方形平行六面体形状又はその代わりに円筒形又は他の適切な形状を有することが可能である。流体貯蔵・計量分配容器の内部容積において、別個のモノリス製品は、隣接モノリス部材と接触する面で、横向き及び/又は縦向きに隣接可能である。1つの実施形態では、複数の別個のモノリス製品の各々は、長さ対断面寸法の比として、Lがモノリス炭素吸着剤製品の長さ又は長軸寸法で、Dが横径又は短軸寸法である時、L/D比、約2〜約20、例えば約4〜約15の範囲を有する。別の実施形態では、モノリス吸着剤製品は、高さ対直径比、H/Dが約0.10〜約0.80となる円盤形状を有することも可能である。
【0025】
流体貯蔵・計量分配容器内の流体は、吸着して吸着剤に保持され、流体の計量分配のためには適切な脱着状態で脱着される流体で、あらゆる適切なタイプの流体であることが可能であり、例えば半導体製造において有用性を有する流体で、水素化物、ハロゲン化物、及び有機金属の気体試薬のような流体、例えば、シラン、ゲルマン、アルシン、ホスフィン、ホスゲン、ジボラン、ゲルマン、アンモニア、スチビン、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、亜酸化窒素、シアン化水素、酸化エチレン、重水素化水素化物、ハロゲン化物(塩素、臭素、フッ素及びヨウ素)化合物、及び有機金属化合物等である。
【0026】
容器の流体は、大気圧、大気圧より低い圧力、又は大気圧より高い圧力等、どのような適した圧力でも貯蔵可能であり、例えば、約20〜約1200トルの範囲のような2500トル未満の圧力、あるいは、イオン注入法又は他の大気圧より低い圧力利用法のための、約20〜約750トルの範囲のような大気圧より低い気体の圧力供給がある。
【0027】
吸着された流体を有する吸着剤を保持する容器は、あらゆる適した容器構造素材で形成可能であり、例えば、金属(例えば、鋼材、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鋳、青銅、及びそれらの合金)、ガラス、セラミック、ガラス質素材、ポリマー、及び複合素材がある。
【0028】
容器は、特定の流体貯蔵及び計量分配利用法にとって妥当な、あらゆる適した形状及びサイズであることが可能である。例えば、縦に細長い直立形態で正方形の断面を備えた長方形平行六面体形状の容器であることも可能で、あるいは、円形の断面を備えた円筒形の容器、又はあらゆる他の形状、サイズ、形態が可能である。
【0029】
1つの実施形態では、本発明は、長方形平行六面体容器内でモノリス形態の物理的吸着剤を使用し、該容器は閉鎖された内部容積の輪郭を定め、ガス計量分配アセンブリを連結した、ガスを容器から選択的に排出するためのポートを有する。本発明のモノリス形態の吸着媒体は、吸収されたガスを所望の量吸着保持するのに十分な能力と、脱着状態での良好な脱着解放と、良好な残量習性を備えた良好な作業能力(すなわち、当初吸着されたガスの高程度の脱着)とを提供し、並びに、対象となるガスに対する適切な吸着親和性を有し、それによってガスを容器内に貯蔵する間、低いガス圧が容器の内部容積内で維持される。
【0030】
本発明による物理的吸着剤は、あらゆる適したモノリス形態であることが可能で、例えば、ブロック、煉瓦、ブール又は流体貯蔵・計量分配容器と同じサイズの吸着媒体と同様の形で、それによって容器は1つ又は少数の、例えば75個未満、より好ましくは20個未満の、別個のモノリス製品を含む。別の好ましい態様では、容器はこうした別個のモノリス製品を8個以下含み、より好ましくは4個以下の製品、最も好ましくは容器は単一のモノリス物理的吸着剤製品を含む。
【0031】
流体貯蔵・計量分配容器内に配置されたモノリス製品は、流体貯蔵・計量分配容器の内部容積にサイズ及び形状で好適に適合した一つにまとまった吸着剤塊を提供し、それによって、モノリス製品の吸着剤塊は、容器の内部容積の少なくとも60%を占め、好ましくはこうした容器の内部容積の約75〜約95%を占める。
【0032】
単一モノリス吸着剤製品として用意される場合、吸着媒体はこうした目的のために、容器内のその場で形成されるようにしてもよく、例えば、液状又は流動性を有する形態の有機樹脂の熱分解によって形成され、容器内での同物質の熱分解前に、容器は該有機樹脂で所望量まで充填される。
【0033】
別の方法として、複数のモノリス製品の形で用意する場合、こうした製品の各々は、容器の内部容積の高さの0.3〜1.0倍の長さと、容器の長方形断面積の0.1〜0.5倍の断面積を有することができる。各モノリス部材は、容器が長方形平行六面体形状の場合、容器の内部容積の容積利用を最大化するため長方形平行六面体形状を有し、各モノリス部材は、容器の内部容積内で隣接モノリス部材と接触する面で、横方向及び/又は縦方向に隣接してもよい。別の方法として、ある例では、吸着剤モノリス部材が中空でない円筒形の形をとることは望ましく、それぞれの円筒形部材は、それぞれの側面に沿って互いに接して隣接するように、並びに円形断面の末端面で直接接触して少なくとも部分的に互いに隣接するように、内部容積へ充填される。立方体又は他の長方形平行六面体形状以外の形状の流体貯蔵・計量分配容器において、モノリス吸着剤製品は、容器の内部容積の形状に適合するよう対応して形成されてよい。例えば、流体貯蔵・計量分配容器は、円筒形状であることが可能で、中のモノリス吸着剤製品は円盤形状体の吸着剤を垂直に積み重ねたものを含み、各々は周辺が容器の形状に適合するような直径を有し、容器の内側壁面に近接する。
【0034】
モノリス形態の活性炭の使用の結果、先行技術の細粒形態を上回る改良のレベルは、予想外であった。何故なら物理的吸着媒体は一般に、作業用ガス(吸着物質)の吸着保持用に利用可能な表面積について分類され、従って表面対体積比が高い粒子形態は、ブロックや煉瓦といった見かけ上の表面対体積比が低いかさばる形態(すなわち、モノリス形態)に対して、本質的に勝っていると考えられてきた。このようにして、モノリス形態の吸着剤は、低減された吸着許容量と作業能力とを有する、効率が低い形態であると、直感的に予想する状態だった。
【0035】
しかし、炭素モノリスは、相当する球状炭素と同様の微小体積を有しながら、かなり高い密度を伴って、例えば、相当する球状炭素の締め固め密度より約25〜約80%高い密度で形成され得るので、こうした高密度モノリスは、物理的吸着剤式ガス貯蔵・計量分配システムで使用される場合、球状炭素床に比べて、吸着剤の単位体積当たり吸着されるガス質量に、飛躍的な改善をもたらす。
【0036】
本発明の幅広い実施において有用な炭素モノリスとしては、かさばる形態として、太い煉瓦、ブロック及びインゴット形態を含み、好ましくは、三次元(x、y、z)の各寸法が1.5cmより大きく、好ましくは2cmより大きい立体的特性を有する。例えば、炭素モノリスは、モノリス練炭の形をとってもよく、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)又は他の適したポリマーのような高分子炭化物から作られ、高いかさ密度(空隙率で測定)を有し、例えばおよそ約0.80〜約2.0g/cmであり、高い作業能力と、即座に迅速な吸着及び脱着を確保するのに十分低い気孔屈曲性とを備えている。
【0037】
1つの実施形態では、本発明のモノリス炭素吸着剤は、延長貯蔵の間吸着流体の分解を最小限に抑えるため、活性炭素に対する添加剤を含んでいる。本発明の幅広い実施において有効に採用可能な添加剤の実例としては、ホウ酸(HBO)、四ホウ酸ナトリウム
(Na)、ケイ酸ナトリウム(NaSiO)、及びリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)がある。
【0038】
別の態様のモノリス炭素吸着剤製品は、長さ対断面寸法の比として、Lがモノリス炭素吸着剤製品の長さ又は長軸寸法で、Dが横径又は短軸寸法である時、約2〜約20、より好ましくは約4〜約15のL/D比を有する。特定の実施形態では、モノリス炭素吸着剤は、1インチ×1インチの正方形断面のPVDC炭化物モノリス練炭で高さ約6インチという形で提供される。
【0039】
好ましいモノリス炭素吸着剤は、超微小多孔質の炭素体として、小寸法のスリット形状の気孔、例えば約0.3〜約0.75nmの範囲の気孔を高い割合で有する炭素体として、サラン(Saran)A、サランMC−10S、又は、サランXPR−1367−D−01452−050 PVDC単独重合体もしくは共重合体等の熱分解生成物を含む。
【0040】
モノリス炭素吸着剤が直径約2nm未満の気孔を有する場合、モノリス炭素吸着剤は、臨界温度を吸着剤材料のミクロ細孔容積に比例した程度上回ると、例えば三フッ化ホウ素等のガスを吸着できる。こうした目的にとって好ましいモノリス炭素吸着剤材料は、例えば超ミクロ細孔等の小さいミクロ細孔のサイズ範囲の気孔を、高い割合で、例えば気孔率の少なくとも50%、有する。この効果は、図5を参照するとわかるが、この図は、クレハ(Kureha)578−66−6球状活性炭(黒い菱形マークで印したデータ点)、及びポリ塩化ビニリデン重合体から形成された炭素(サランA、ダウケミカル(Dow Chemical)社)(黒い四角マークで印したデータ点)について、炭素1Lにつき吸着された三フッ化ホウ素(BF)のg表示の吸着重量を、トル表示の圧力レベルの関数として表しているグラフである。
【0041】
ミクロ細孔容積は、本発明のモノリス炭素吸着剤システムで使用する炭素を選択するのに重要な判断基準であり、ミクロ細孔容積は望ましくは最大化されるが、容積が固定された容器内に貯蔵されたガスは、吸着量1L当たりの容積を基に適切に比較される。このような場合の吸着剤装填密度は、極めて重要である。このために、モノリス炭素は、使用される流体貯蔵・計量分配容器内の空隙容積を排除する。
【0042】
本発明による好ましい実施形態における流体貯蔵・計量分配容器内の空隙容積は、容器の内部容積合計の約40%以下で、可能な限り低いとさらに好ましい。モノリス炭素吸着剤の装填密度は、可能な限り高く、吸着剤体積当たりの容積を基準にして最大のミクロ細孔容積を備え、気孔容積中の超ミクロ細孔の割合が高いと望ましい。ミクロ細孔の構造も重要で、気孔は望ましくは高い吸着レベルをもたらすスリット形状をしているが、スリット構造は、脱着状態で、例えばおよそ40トルの圧力レベルでの脱着において、ガスの敏速な解放を妨げる程は小さくない。
【0043】
活性炭を形成する炭素の活性化中、気孔は高温で窒素のような非酸化ガスの存在下で拡幅され、引き続いて酸素又は水蒸気のような酸化ガスに短時間暴露され、その後非酸化環境で冷却される。こうした活性化では、原料の焼却のレベルは注意深く制御されるが、これは高い焼却レベルは気孔の拡幅をもたらし、ミクロ細孔容積の増大並びに粒子密度の付随的削減を伴うからである。
【0044】
本発明のモノリス炭素吸着剤は、あらゆる適した方法で適切に形成されることが可能である。1つの実施形態では、モノリス炭素は高分子素材から形成され、例えばダウケミカル社(ミシガン州、ミッドランド)の市販のサランA、又はサランMC−10Sポリマー等の、ポリ塩化ビニリデン重合体を用い、適切な圧力、例えば約10〜約20Kpsiの範囲の圧力で圧力成形され、その後、約600〜約900℃、例えば約700℃の温度の窒素ガス流内で熱分解される。この工程は、図1及び図2のグラフに示す通り、大幅に増加した充填密度(すなわち、吸着されたガスの重量、例えば、炭素1L当たりのg量)を有する炭素吸着剤材料を生成する。
【0045】
本発明のモノリス炭素吸着剤は、先行技術の慣例からの重大な逸脱を示しているが、該先行技術は、粒子直径0.1〜1.0cm、より代表的には粒子直径0.25〜2.0mmの球状活性炭細粒のような細粒を使用し、あるいは該先行技術は、大量のミクロ細孔炭素原料(ウォトヴィッツ(Wojtowicz)ら、米国特許出願公開第2002/0020292 A1号明細書、2002年2月21日公開、参照)場合、高温を使用し、例えば1000℃を超える温度、好ましくは1100℃を超える温度を使用して、高レベルの黒鉛化を誘導し、76回も実行される反復的化学吸着/脱着を伴う活性化(クエン(Quinn)ら、米国特許第5,071,820号明細書、参照)と組み合わせて、適切なミクロ細孔容積、表面積、及び炭素吸着剤単位体積当たりのミクロ細孔容積を実現しており、高圧ガス貯蔵の利用法にとって適した吸着剤材料を入手するのに時間を浪費しコストがかかる手法である。(ウォトヴィッツ(Wojtowicz)らによる米国特許出願公開第2002/0020292 A1号明細書の開示によると、吸着ガスの最適貯蔵許容量は、ガスは「約500〜約3500psiの範囲の圧力で貯蔵容器内へ投入される」必要がある。2ページ、段落[0013]、最終文。)
【0046】
これらの先行技術の手法と対照的に、本発明のモノリス炭素吸着剤は、適した高分子素材から形成され、例えば、ポリ塩化ビニリデン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ポリフルフリルアルコール、椰子殻、ピーナッツ殻、桃の種、オリーブの種、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド等の中から選択されたポリマーで、例えば約20,000psi迄又はそれ以上の成形圧力で圧力成形可能であり、1000℃未満の温度で、好ましくは約900℃以下、例えば約500〜約900℃の範囲、より好ましくは約600〜約900℃の範囲で、熱分解可能な圧力成形された「グリーン樹脂」体を産出し、目的のガス貯蔵及び計量分配利用法に適した高い充填密度を有するモノリス炭素材料を産出する。本発明の実施において有用なモノリス炭素吸着剤としては、アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/炭素吸着剤1Lより高い充填密度、好ましくはアルシン450g/炭素吸着剤1Lより高い充填密度を有するものを含む。
【0047】
熱分解生成物は、本発明に従ってモノリス吸着剤体としてそのまま採用されてもよいが、こうした熱分解生成物は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を、高い割合で、例えば少なくとも気孔率の30%、好ましくは少なくとも気孔率の60%で有し、並びにかなりの気孔率、例えば気孔率全体の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含む、超微小多孔質を備えたモノリス炭素吸着剤生成物を生成する方法で活性化されると好ましい。活性化の工程は、対象となる吸着されるガスに対する材料の吸着親和性を強化するため、そうでなければ、吸着/脱着能力のための吸着媒体の特性を向上させるためのあらゆる工程ステップを含むことが可能である。例えば、活性化工程は、非酸化雰囲気内、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム又は他の非酸化ガス内での加熱を含み、引き続いて雰囲気を二酸化炭素、水蒸気等の酸化雰囲気に短時間切り替え、その後非酸化雰囲気へ切り替え、大気温(例えば、室温)まで冷却する。活性化工程の詳細、例えば温度レベル、連続したステップの実行時間等は、過度な実験を行わなくても、それぞれの工程状態の簡単な変化形態と、充填密度、細孔分布特徴付けといった結果的な吸着剤性能の分析的判定とによって、当業者の技術範囲内で、迅速に決定可能である。
【0048】
図1は、クレハ578−66−6球状活性炭(黒い菱形マークで印したデータ点)、タカチホ(Takachiho)ABF14−03粒状活性炭(タカチホ・カブシク工業株式会社、東京、日本)(黒い四角マークで印したデータ点)、及びポリ塩化ビニリデン重合体から形成されたモノリス炭素(サランA、ダウケミカル社)(白い三角マークで印したデータ点)について、炭素1Lにつき吸着されたホスフィン(PH)のg表示の重量を、トル表示の圧力レベルの関数として表しているグラフである。
【0049】
図1のデータは、ポリ塩化ビニリデン重合体から形成されたモノリス炭素は、炭素1Lについて吸着したホスフィンの重量が、球状活性炭吸着剤もしくはタカチホ粒状活性炭吸着剤のいずれよりも、かなり大きいことを示しており、0〜750トルの圧力範囲にわたって、ホスフィンの吸着充填は概ね2倍を超えている。
【0050】
図2は、クレハ578−66−6球状活性炭(黒い菱形マークで印したデータ点)、及びポリ塩化ビニリデン重合体から形成された炭素(サランA、ダウケミカル社)(白い三角マークで印したデータ点)について、炭素1Lにつき吸着されたアルシン(AsH)のcm表示の体積を、トル表示の圧力レベルの関数として表しているグラフである。
【0051】
図2は、アルシン充填に関して、モノリス炭素吸着剤の球状活性炭に対する優位性を立証している。炭素1L当たりのアルシンの充填をcm表示の体積で示すと、0〜770トルの圧力範囲にわたって、モノリス炭素吸着剤は50〜100%高い。
【0052】
下記の表1に示すのは、図1に関して上述した、クレハ578−66−6球状活性炭、タカチホABF14−03粒状活性炭、及びPVDC炭化物モノリス吸着剤を含む3つのタイプの吸着剤材料についての、アルシンの充填密度である。各素材は、2個のサンプルについて、650トルのアルシン圧力で評価される。充填密度は、吸着剤1gにつき吸着されたアルシンのg量として重量ベースで測定されるだけでなく、吸着剤1Lにつき吸着されたアルシンのg量として体積ベースでも測定されている。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果は、モノリス炭素吸着剤についての重量ベースの充填密度は、非モノリス活性炭吸着剤より約15〜20%低かった一方で、モノリス炭素吸着剤についての体積ベースの充填密度は、非モノリス活性炭吸着剤の対応する充填密度より、50%を優に超えて高かったことを示している。
【0055】
下記の表2は、図1に関して上述した、クレハ578−66−6球状活性炭、タカチホABF14−03粒状活性炭、及びPVDC炭化物モノリス吸着剤を含む3つのタイプの吸着剤材料に対するホスフィンの充填密度の値について対応する充填密度の一覧表である。
【0056】
【表2】

【0057】
表2の結果は、モノリス炭素吸着剤(PVDC炭化物)は、重量及び体積ベースの両方で充填密度が、非モノリス形態の活性炭吸着剤の充填密度を上回っており、体積ベースの充填密度では、非モノリス形態の活性炭へのホスフィンの体積充填密度よりおよそ100%も高くなっていることを示している。
【0058】
本発明の幅広い実施においては、モノリス炭素吸着剤に保持された吸着された流体は、あらゆる適したタイプのものであることが可能で、例えば、水素化ガス(例えば、アルシン、ホスフィン、ゲルマン、シラン、一・二・三置換シラン、例えばこうしたタイプのアルキルシラン)、ハロゲン化ガス(例えば、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、ハロゲン置換シラン等)、及び気体有機金属組成物を含む。
【0059】
本発明の実施において、有効に貯蔵可能かつ計量分配可能な吸着されるガスの種類の実例としては、シラン、ゲルマン、アルシン、ホスフィン、ホスゲン、ジボラン、ゲルマン、アンモニア、スチビン、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、亜酸化窒素、シアン化水素、酸化エチレン、重水素化水素化物、ハロゲン化物(塩素、臭素、フッ素及びヨウ素)化合物で、F、SiF、Cl、ClF、GeF、SiF、ハロゲン化ホウ素(boron halide)等を含む化合物、及び有機金属化合物で、アルミニウム、バリウム、ストロンチウム、ガリウム、インジウム、タングステン、アンチモン、銀、金、パラジウム、ガドリニウム等のような金属の有機金属化合物、を含む。
【0060】
吸着ガスが容器に貯蔵される際の圧力は、本発明のガス貯蔵・計量分配システムが採用される利用法にとって妥当な適した圧力であればどのような圧力でもよい。本発明の実施において一般に有用な圧力レベルの実例としては、約2500トル未満の圧力、より好ましくは2000トル以下で例えば約20〜約1800トルの範囲、あるいはより厳密には約20〜約1200トルの圧力を含む。イオン注入法のような利用法にとって、ガス貯蔵・計量分配容器内のガス圧は通常約800トル以下であり、貯蔵ガスは大気圧より低い、例えば約20〜約750トルの範囲の圧力でもよい。
【0061】
図3は、本発明の1つの実施形態による、貯蔵及び配送システムの概略図である。
【0062】
図に示すように、貯蔵・計量分配システム200は、貯蔵・計量分配容器204を備えており、該貯蔵・計量分配容器はその上部で弁ヘッド206に接合され、該弁ヘッドは、シリンダの弁ヘッド用の手動作動器208を含む計量分配アセンブリの部分を備えている。容器は、例えば、金属、ガラス、セラミック、ガラス質素材、ポリマー、及び複合素材といった素材を含む、構造素材に適したあらゆる素材で形成されてもよい。こうした目的のための金属の実例としては、鋼材、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鋳、青銅、及びそれらの合金を含む。弁ヘッドは、カップリング210を用いて計量分配導管212へ接合され、該計量分配導管は、そこに配置された圧力変換器214と、不活性ガスで計量分配アセンブリを浄化する不活性浄化装置216と、計量分配作業中に計量分配導管212を通る量速を一定に維持する質量流量調整器220と、計量分配アセンブリから計量分配ガスを放出する前に、計量分配ガスから微粒子を除去する濾過器222とを有する。
【0063】
計量分配アセンブリはさらにカップリング224を備えており、該カップリングは、下流の配管、弁調節、又は脱着された流体の使用位置に結合された他の構造体、例えば、注入する種類として計量分配されたガスを使用するイオン注入器具のような半導体製造設備に関わるもの、等に計量分配アセンブリを結合して嵌め込むために設けられている。
【0064】
流体貯蔵・計量分配容器204は、内部のモノリス吸着剤本体205を図示するために、部分的に破断して示されている。
【0065】
図4は、本発明の別の好ましい態様による、長方形平行六面体の流体貯蔵・計量分配容器310を採用した、流体貯蔵・計量分配装置の斜視図である。長方形平行六面体の流体貯蔵・計量分配容器310は、パイプ弁接続弁ヘッド312と、容器の最上面に溶接されたハンドル314とを装備している。特定の実施形態の容器310は、溶接された鋼材の壁構造で形成され、容器の垂直(縦)軸に沿って正方形の断面を有する。容器の壁は、厚み0.100インチの炭素鋼で、容器の内部容積は3.62リットルである。ハンドル14は、1/4インチの棒材で、図示された形状に形成され、容器310のそれぞれの末端部に溶接されている。
【0066】
パイプ弁接続弁ヘッド312の計量分配弁は、1.5インチのパイプ連結により、容器310に通り抜け可能に嵌め込まれる。弁ヘッドは、単ポート弁ヘッド、2ポート弁ヘッド、3ポート弁ヘッド等、適した数のポートをいくつ有してもよい。
【0067】
長方形平行六面体の流体貯蔵・計量分配容器310は、その内部容積にモノリス炭素吸着剤を含み、モノリス塊は、1つあるいは複数のモノリス炭素体を含んでもよく、各炭素体は、前述した通り、好ましくは容器の内部容積の形状に適合する長方形平行六面体形状である。
【0068】
本発明の構成物及び方法は、本願の広義の開示に矛盾しない形で、広く変化した方法で実施してもよいことは理解されるであろう。従って、本発明は本願において具体的な特徴、態様、及び実施形態を参照して述べたが、その一方で、本発明はこれに限定されず、他の変化形態、改良形態、及び実施形態における実行を受け入れる余地がある。従って、本発明は、こうした他の変化形態、改良形態、及び実施形態の全てを包含するよう、本願で請求する本発明の範囲内で、広義に解釈されるよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯蔵・計量分配装置であって、
内部容積を有する流体貯蔵・計量分配容器であって、前記内部容積は流体を吸着して保持する物理的吸着剤を含みかつ前記容器から計量分配するために前記流体は該吸着剤から脱着可能とする容器と、
脱着された流体を前記容器から計量分配するため、前記容器に結合された計量分配アセンブリと、を備えており、
前記物理的吸着剤は、モノリス炭素質物理的吸着剤を含み、該モノリス炭素質物理的吸着剤は、
(a)アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/吸着剤1Lより高い充填密度であり、
(b)前記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに前記気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含んでおり、
(c)1000℃未満の温度で、熱分解及び随意的活性化により形成されており、約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度を有する、
という特性のうち少なくとも1つを特徴としている、流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項2】
前記吸着剤は、アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/吸着剤1Lより高い、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項3】
前記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに前記気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含む、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項4】
前記吸着剤は、1000℃未満の温度で、熱分解及び随意的活性化により形成されており、約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度を有する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項5】
前記吸着剤は、ブロック、煉瓦、及びブールからなる群から選択されるモノリス形態を有する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項6】
前記モノリス形態は、単一のモノリス製品を含む、請求項5に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項7】
前記モノリス形態は、複数の別個のモノリス製品を含む、請求項5に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項8】
前記容器の前記内部容積は、前記物理的吸着剤の別個のモノリス製品を75個未満含む、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項9】
前記容器の前記内部容積は、前記物理的吸着剤の別個のモノリス製品を20個未満含む、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項10】
前記容器の前記内部容積は、前記物理的吸着剤の別個のモノリス製品を8個未満含む、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項11】
前記容器の前記内部容積は、前記物理的吸着剤の別個のモノリス製品を4個未満含む、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項12】
前記モノリス物理的吸着剤は、前記容器の前記内部容積にサイズ及び形状が適合した吸着剤塊を提供する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項13】
前記吸着剤塊は、前記容器の前記内部容積の少なくとも60%を占める、請求項12に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項14】
前記吸着剤塊は、前記容器の前記内部容積の約75〜約95%を占める、請求項12に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項15】
前記吸着剤は、有機樹脂の熱分解生成物である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項16】
前記吸着剤は、ポリ塩化ビニリデン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ポリフルフリルアルコール、椰子殻、ピーナッツ殻、桃の種、オリーブの種、ポリアクリロニトリル、及びポリアクリルアミドからなる群から選択されたポリマーの熱分解生成物である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項17】
前記吸着剤は、前記容器内のその場で形成される、請求項15に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項18】
前記吸着剤は、複数の別個のモノリス吸着剤製品を含み、前記複数の別個のモノリス吸着剤製品の各々は、前記容器の前記内部容積の高さの0.3〜1.0倍の長さと、前記容器の長方形断面積の0.1〜0.5倍の断面積とを有する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項19】
前記複数の別個のモノリス製品の各々は、長方形平行六面体形状を有する、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項20】
前記複数の別個のモノリス製品の各々は、前記容器の前記内部容積において、隣接モノリス部材と接触する面に、横向き及び/又は縦向きに隣接する、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項21】
前記複数の別個のモノリス製品の各々は、中実の円筒形態を有する、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項22】
前記複数の別個のモノリス製品の各々は、Lが前記モノリス炭素吸着剤製品の長さ又は長軸寸法であり、Dが横径又は短軸寸法である時、長さ対断面寸法の比、L/Dが約2〜約20となる、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項23】
前記複数の別個のモノリス製品の各々は、Lが前記モノリス炭素吸着剤製品の長さ又は長軸寸法であり、Dが横径又は短軸寸法である時、長さ対断面寸法の比、L/Dが約4〜約15となる、請求項7に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項24】
前記吸着剤は、熱分解されたポリ塩化ビニリデン樹脂を含む、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項25】
前記吸着剤は、それに対する添加剤を有する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項26】
前記添加剤は、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1つの薬剤を含む、請求項1に記載の流
体貯蔵・計量分配装置。
【請求項27】
前記流体は、半導体製造において有用性を有する流体を含む、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項28】
前記流体は、水素化物、ハロゲン化物、及び有機金属の気体試薬からなる群から選択された流体を含む、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項29】
前記流体は、シラン、ゲルマン、アルシン、ホスフィン、ホスゲン、ジボラン、ゲルマン、アンモニア、スチビン、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、亜酸化窒素、シアン化水素、酸化エチレン、重水素化水素化物、ハロゲン化物(塩素、臭素、フッ素及びヨウ素)化合物、及び有機金属化合物からなる群から選択された流体を含む、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項30】
前記流体は、前記内部容積内の圧力が約2500トル以下である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項31】
前記流体は、前記内部容積内の圧力が約2000トル以下である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項32】
前記流体は、前記内部容積内の圧力が約20〜約1800トルの範囲である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項33】
前記流体は、前記内部容積内の圧力が約20〜約1200トルの範囲である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項34】
前記流体は、前記内部容積内の圧力が大気圧より低い、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項35】
前記流体は、前記内部容積の圧力が約20〜約750トルの範囲である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項36】
前記容器は、金属、ガラス、セラミック、ガラス質素材、ポリマー、及び複合素材からなる群から選択された構造素材を含む、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項37】
前記容器は、金属の構造素材を含む、請求項26に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項38】
前記金属は、鋼材、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鋳、青銅、及びそれらの合金からなる群から選択される、請求項27に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項39】
前記吸着剤は、その気孔率の少なくとも20%が直径2nm未満の孔である、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項40】
前記流体は、三フッ化ホウ素を含む、請求項38に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項41】
前記容器は、長方形平行六面体形状を有する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項42】
前記容器は、正方形の断面を備えた細長い形状を有する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項43】
前記容器は、円筒形状を有する、請求項1に記載の流体貯蔵・計量分配装置。
【請求項44】
ガスを貯蔵及び計量分配する方法であって、
ガス貯蔵・計量分配容器を組み立てるステップと、
前記ガスに対する吸着親和性を有する物理的吸着剤を前記容器内に配置するステップと、
前記物理的吸着剤での吸着のために前記ガスを前記容器へ充填するステップと、
前記容器を、作動可能弁を含む弁ヘッドで密閉して、前記物理的吸着剤と吸着ガスとを封入し、前記容器の外部環境からこれを隔離するステップと、
前記物理的吸着剤から前記吸着ガスを脱着するステップと、
ガスを計量分配するために、前記弁ヘッドの前記作動可能弁を作動させて、前記容器から前記作動可能弁を通ってガスを流すステップと、を含み、
前記物理的吸着剤は、
(a)アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度が、アルシン400g/吸着剤1Lより高い充填密度であり、
(b)前記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに前記気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含んでおり、
(c)約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度であり、前記熱分解条件は1000℃未満の温度を含む、
という特性のうち少なくとも1つを特徴としている、ガス貯蔵及び計量分配方法。
【請求項45】
前記吸着剤は、アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した充填密度がアルシン400g/吸着剤1Lより高い、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記吸着剤の気孔率全体の少なくとも30%は、約0.3〜約0.72nmの範囲のサイズのスリット形状の気孔を含み、並びに前記気孔率全体の少なくとも20%は、直径2nm未満のミクロ細孔を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記熱分解条件は1000℃未満の温度を含み、前記吸着剤は、約0.80〜約2.0g/cmのバルク密度を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記物理的吸着剤は、熱分解されたポリ塩化ビニリデンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記熱分解されたポリ塩化ビニリデンは、活性化状態に暴露される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記活性化状態は、前記熱分解されたポリ塩化ビニリデンの高温非酸化環境への暴露と、それに引き続き前記熱分解されたポリ塩化ビニリデンの高温酸化環境への暴露を含む、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
アルシンガスについて25℃、圧力650トルで測定した前記充填密度は、アルシン450g/吸着剤1Lより高い、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記ガスは、アルシン、ホスフィン、セレン化水素、テルル化水素、三フッ化窒素、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、ジボラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、ジシラン、シラン、ゲルマン、及び有機金属気体試薬からなる群から選択されるガスを含む、請求項44に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−81472(P2012−81472A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−2551(P2012−2551)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2008−208989(P2008−208989)の分割
【原出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】