説明

モータおよび電気式動力舵取装置

【課題】操舵を補助するアシスト力を発生させるのに好適なモータおよび電気式動力舵取装置を提供する。
【解決手段】モータ40のブラケット52には、リード線64をそれぞれ引き出すための6個の引出穴53が形成され、バスバー80には、引出穴53に挿通した各リード線64を挿通させるための6個の貫通穴82とブラケット52の反コイル側表面54に固定される各FET36の3つの接続端子36aを挿通させるための18個の貫通穴83がそれぞれ形成されている。そして、各リード線64が引出穴53および貫通穴82にそれぞれ挿通されて各接続端子84に電気的に接続され、FET36の各接続端子36aが貫通穴83にそれぞれ挿通されて各接続端子85に電気的に接続される。バスバー80は、各接続端子84,85が対応する外部接続端子80cに電気的に接続するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよびこのモータのアシスト力により操舵を補助する電気式動力舵取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気式動力舵取装置において操舵を補助するモータとして、例えば、下記特許文献1に示す、モータが知られている。このモータは、パワーケーブルを介して接続される制御装置により制御されて、この制御装置によりバッテリの電力をパワーケーブル、モータバスバーおよび結線リングを介してステータコイルに供給してロータおよびシャフトを目標トルクで回転させることにより、操舵を補助するアシスト力を発生させている。
【0003】
上述した制御装置は、複数の半導体スイッチング素子を備えたインバータとして機能するパワーモジュールと、このパワーモジュールを制御する制御モジュールと、導体モジュールモータとを備えている。また、上記導体モジュールは、電力線となるバスバー(インバータバスバー)、モータにモータ電流を供給するモータコネクタおよびバッテリから電力が供給される電源コネクタ等をモールドにより一体成形して構成されている。当該制御装置は、モータの出力トルクが目標トルクとなるように、バッテリからの直流電圧をパワーモジュールによって三相交流電圧に変換して導体モジュール等を介してモータのステータコイルに供給する。
【特許文献1】特開2006−187175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したモータおよびその制御装置では、モータのステータコイルと制御装置のパワーモジュールとの間に、結線リング、モータバスバー、パワーケーブル、モータコネクタ、インバータバスバー、電源コネクタ等が介在することとなる。
【0005】
このようにステータコイルとパワーモジュールとの間では複数の接続部材の介在により接続距離が長くなるため、配線抵抗が増加するとともにこの抵抗増加により発熱量が増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、操舵を補助するアシスト力を発生させるのに好適なモータおよび電気式動力舵取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のモータでは、巻回された複数のコイル(62)を有するステータ(60)と、前記複数のコイルを流れる電流の電流方向を切り換える複数のスイッチング素子(36)と、前記複数のコイルからリード線(63,64)を引き出すための引出穴(53)が形成されるブラケット(52)であって、前記複数のスイッチング素子が反コイル側表面(54)に固定されるブラケットと、前記複数のスイッチング素子を制御するとともに前記複数のコイルに電力を供給する外部制御手段(30)に電気的に接続するための複数の外部接続端子(80c)を有するバスバー(80)であって、コイル側と反コイル側とを連結する複数の第1の貫通穴(82)および第2の貫通穴(83)が形成され、前記複数の第1の貫通穴に挿通した前記複数のリード線にそれぞれ電気的に接続可能に形成される複数の第1の接続端子(84)と前記複数の第2の貫通穴に挿通した前記複数のスイッチング素子の複数の接続端子(36a)にそれぞれ電気的に接続可能に形成される複数の第2の接続端子(85)とが対応する前記外部接続端子にそれぞれ電気的に接続されるバスバーと、を備えることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、モータのブラケットには、複数のコイルからリード線をそれぞれ引き出すための複数の引出穴が形成されており、そのバスバーには、コイル側と反コイル側とを連結する複数の第1の貫通穴および第2の貫通穴が形成されている。そして、複数のコイルの各リード線が、ブラケットの引出穴およびバスバーの第1の貫通穴にそれぞれ挿通されてバスバーの第1の接続端子にそれぞれ電気的に接続するように構成され、ブラケットの反コイル側表面に固定される複数のスイッチング素子の複数の接続端子が、バスバーの第2の貫通穴にそれぞれ挿通されてバスバーの第2の接続端子にそれぞれ電気的に接続するように構成されている。また、バスバーは、各スイッチング素子を制御するとともに各コイルに電力を供給する外部制御手段に電気的に接続するための複数の外部接続端子を有しており、各第1の接続端子および各第2の接続端子とが対応する外部接続端子にそれぞれ電気的に接続するように構成されている。
【0009】
このように、コイルと外部制御手段との間にはバスバーのみが介在し、パワーケーブル等の他の接続部材が廃止されるので、コイルと外部制御手段との間の接続距離が短縮される。この接続距離の短縮により、配線抵抗が減少することからモータの効率を向上させることができる。
【0010】
また、このような配線抵抗の減少による発熱量の減少に加えて、各スイッチング素子をブラケットの放熱作用により冷却するので、冷却部材を廃止もしくは小型化することができる。さらに、コイルと外部制御手段との間におけるバスバー以外の接続部材の廃止や冷却部材の廃止もしくは小型化により、モータの部品点数削減、小型化および重量低減を実現することができる。また、製造コストの低減にも貢献することができる。
したがって、操舵を補助するアシスト力を発生させるのに好適なモータを提供することができる。
【0011】
請求項2の発明では、バスバーには、反コイル側にロータの回転位置を検出する回転位置検出手段の外周を相対回転不能に支持する支持部が形成されるとともに、この支持部に支持された回転位置検出手段の複数の接続端子にそれぞれ電気的に接続可能であって対応する外部端子に電気的に接続される複数の第3の接続端子が形成される。
【0012】
このようにロータの回転位置を検出する回転位置検出手段の外周をバスバーの支持部にて相対回転不能に支持した状態において、当該回転位置検出手段の各接続端子が、対応する外部端子に電気的に接続される各第3の接続端子にそれぞれ接続される。これにより、回転位置検出手段と外部制御手段とを他の接続部材等を介在させることなくバスバーのみで電気的に接続するので、モータの部品点数をより削減することができる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項1または2記載のモータにより、操舵状態に応じたアシスト力を発生させて操舵を補助する。これにより、モータの効率向上や小型化、重量低減、製造コスト低減等の、請求項1または2の各発明による作用・効果を享受した電気式動力舵取装置を実現することができる。したがって、このようなモータを採用する電気式動力舵取装置の効率向上や製造コスト低減に加えて、モータの小型化や重量低減による当該電気式動力舵取装置のエンジンルーム内への搭載性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。まず、本実施形態に係るモータを採用する電気式動力舵取装置20の構成を図1(A)(B)に基づいて説明する。
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る電気式動力舵取装置の全体構成例を示す構成図である。電気式動力舵取装置20は、主に、ステアリングホイール21、ステアリング軸22、ピニオン入力軸23、ステアリングセンサ24、減速機27、ラックアンドピニオン28、ロッド29、ECU30、モータ40等から構成されている。
【0015】
図1(A)に示すように、ステアリングホイール21には、ステアリング軸22の一端側が接続されており、このステアリング軸22の他端側にはステアリングセンサ24の入力側が接続されている。またこのステアリングセンサ24の出力側には、ラックアンドピニオン28のピニオン入力軸23の一端側が接続されている。ステアリングセンサ24は、図略のトーションバーとこのトーションバーを挟むようにトーションバーの両端に取り付けられた2つのレゾルバとからなり、トーションバーの一端側を入力、他端側を出力とする入出力間で生じるトーションバーの捻れ量等を当該2つのレゾルバにより検出することで、ステアリングホイール21による操舵トルクや操舵角を検出し得るように構成されている。
【0016】
ステアリングセンサ24の出力側に接続されるピニオン入力軸23の途中には、減速機27が連結されており、モータ40から出力されるアシスト力をこの減速機27を介してピニオン入力軸23に伝達し得るように構成されている。
【0017】
即ち、図面には示されていないが、動力伝達機構としての減速機27は、モータ40のモータ軸73に取り付けられたモータギヤと減速機27の減速ギヤとが互いに噛合可能に構成されており、モータ軸73が回転すると所定の減速比で減速機27の減速ギヤが回転することで、モータ40による駆動力(アシスト力)をピニオン入力軸23に伝達可能にしている。
【0018】
モータ40には、当該モータ40の回転角を検出可能な図略のモータ回転角センサが取り付けられており、このモータ回転角やステアリングセンサ24による操舵トルク、操舵角等に基づいてECU30によるモータ40の駆動制御が行われている。
【0019】
一方、このピニオン入力軸23の他端側には、ラックアンドピニオン28を構成する図略のラック軸のラック溝に噛合可能なピニオンギヤが形成されている。このラックアンドピニオン28では、ピニオン入力軸23の回転運動をラック軸の直線運動に変換可能にしており、またこのラック軸の両端にはロッド29が連結され、さらにこのロッド29の端部には図略のナックル等を介して操舵輪FR、FLが連結されている。これにより、ピニオン入力軸23が回転すると、ラックアンドピニオン28、ロッド29等を介して操舵輪FR、FLの実舵角を変化させることができるので、ピニオン入力軸23の回転量および回転方向に従った操舵輪FR、FLの操舵を可能にしている。
【0020】
図1(B)は、ECU30等の構成例を示す回路ブロック図である。ECU30は、主に、A/D変換器等の周辺LSIやメモリ等を備えたMPU(Micro Processor Unit)31、ステアリングセンサ24やモータ回転角センサ等による各種センサ情報(操舵トルク信号、操舵角信号、モータ回転角信号)等を入出力可能な入出力インタフェイスI/F32、およびモータ駆動回路35等から構成されている。
【0021】
モータ駆動回路35は、MPU31から出力されるPWM信号に基づいて6つのスイッチング素子(以下、FET36ともいう)をONまたはOFFすることにより得られる三相交流電流をモータ40に供給する役割を果たす。ここで、各FET36は、複数のコイルを流れる電流の電流方向を切り換える役割を果たす複数のスイッチング素子であって、後述するようにブラケット52の反コイル側表面54に固定されている。なお、図1(B)に示す符号37は、モータ40に実際に流れるモータ電流を検出し得る電流センサ37であり、この電流センサ37により検出されたモータ電流に関するセンサ情報は、モータ電流信号として入出力インタフェイスI/F32を介してMPU31に入力され得るように構成されている。
【0022】
当該ECU30は、後述するようにモータ40のバスバー80を介して電気的に接続されるとともにモータ40のハウジング51またはブラケット52に取り付けられることで、当該モータ40に近接して配置されている。
【0023】
このように構成することにより、電気式動力舵取装置20では、ステアリングホイール21による操舵状態をステアリングセンサ24により検出し、その操舵状態に応じたモータ指令電流をモータ40に出力するようにECU30によって制御する。これにより、電気式動力舵取装置20は、当該操舵状態に応じたアシスト力をモータ40により発生させて運転者のステアリングホイール21による操舵をアシスト可能にしている。
【0024】
ここで、本実施形態に係るモータ40の構成について、図2〜図4を用いて詳細に説明する。図2は、モータ40の断面図である。図3および図4は、モータ40の一部分解斜視図である。なお、図2では説明の便宜上、ブラケット52の引出穴53の断面と、ブラケット80の貫通穴82の断面および貫通穴83の断面と、レゾルバ90の接続端子91aの断面とを同一平面上の断面として示している。また、図3および図4では説明の便宜上、回転体であるロータ71やモータ軸73(レゾルバロータ91除く)等を省略している。また、モータ40には、回転子側に界磁用永久磁石が設けられた3相ブラシレスモータが用いられている。
【0025】
図2に示すように、モータ40は、主に、有底筒状に形成されるハウジング51と、このハウジング51の開口部51aに固定されるブラケット52と、回転磁界を発生するステータ60と、この回転磁界に応じて回転するロータ71と、ステータ60に所定の電力を供給するバスバー80と、ロータ71の回転位置を検出する回転位置検手段であるレゾルバ90とを備えている。
【0026】
本実施形態では、ハウジング51およびブラケット52は、高熱伝導率の金属材料、例えば、アルミニウム合金により形成されている。
【0027】
図2および図3に示すように、ブラケット52は、負荷側軸受74の外周を固定する軸受支持部52bが形成される略円板状の底部52aと、この底部52aの外縁に連結する環状壁部52cと、軸受支持部52bとは反対方向(反コイル側方向)が開口するように断面コ字状に形成されて環状壁部52cの内周側に連結する開口部52dとを備えている。
【0028】
底部52aのうち開口部52dから見て右側(図3にて上側)には、各コイル62のリード線64を挿通して引き出すための6個の引出穴53が形成されている。また、底部52aのうち開口部52dから見て左側(図3にて下側)の反コイル側表面54には、モータ駆動回路35を構成する6個のFET36が図略のねじ等により固定されている。このように、高熱伝導率、すなわち、放熱性の高いブラケット52に各FET36を固定することで、ブラケット52の放熱作用により各FET36を冷却している。なお、各FET36の3個の接続端子36aは、固定された反コイル側表面54に対して略垂直に突出するように形成されている。
【0029】
環状壁部52cの内方には、バスバー80のモータ側接続部80aを支持するための3個の段部52eが形成されている。開口部52dは、各段部52eによりバスバー80のモータ側接続部80aが支持されるとき、バスバー80のECU側接続部80bを支持するように形成されている。
【0030】
ハウジング51の内周面には、略円筒状のステータ60が固定されるとともに、このステータ60の内側には、モータ軸73が圧入されたロータ71が配置されている。ロータ71は、ブラケット52の軸受支持部52bに固定された負荷側軸受74とハウジング51の中央底部51bに固定された反負荷側軸受75とにより回転可能に軸支されている。ロータ71の外周面にはステータ60と対向するように周方面に複数の磁極(本実施形態では、10極)を有するリング磁石72が外嵌されている。
【0031】
図2に示すように、ステータ60は、ステータコア61と、このステータコア61に導線63が巻回されて形成される12個のコイル62とを複数のインシュレータ等により絶縁して備えている。各コイル62を構成する導線63の先端には、リード線64が接続されている。このように構成されたステータ60は、焼きばめによりハウジング51の内周面に固定されている。
【0032】
図2および図4に示すように、バスバー80は、略円環状のモータ側接続部80aと、ECU30に接続するための複数の外部接続端子80cを有する角状のECU側接続部80bとを備えている。モータ側接続部80aの中央円形開口部にはレゾルバ90のレゾルバステータ91の外周を相対回転不能に支持するレゾルバ支持部81が形成されている。
【0033】
そして、モータ側接続部80aのうちECU側接続部80bから見て右側(図4にて上側)には、ブラケット52の引出穴53に挿通した各リード線64をコイル側から反コイル側へ挿通させるための6個の貫通穴82が形成されている。また、モータ側接続部80aのうちECU側接続部80bから見て左側(図4にて下側)には、ブラケット52の反コイル側表面54に固定した各FET36のそれぞれの接続端子36aをコイル側から反コイル側へ挿通させるための18個の貫通穴83が形成されている。
【0034】
また、モータ側接続部80aの反コイル側表面80dには、6個の接続端子84が貫通穴82近傍にて反コイル側へ突出するようにそれぞれ形成されるとともに、18個の接続端子85が貫通穴83近傍にて反コイル側へ突出するようにそれぞれ形成されている。そして、各接続端子84および各接続端子85は、対応する外部接続端子80cにそれぞれ電気的に接続されている。
【0035】
また、モータ側接続部80aの反コイル側表面80dには、レゾルバ90のレゾルバステータ91をモータ側接続部80aのレゾルバ支持部81にて支持したとき、4個の接続端子86がレゾルバステータ91の4個の接続端子91a近傍にて反コイル側へ突出するようにそれぞれ形成されている。そして、各接続端子86は、対応する外部接続端子80cにそれぞれ電気的に接続されている。
【0036】
また、モータ側接続部80aのコイル側にはブラケット52の各段部52eに支持される3つの切欠き部87が形成されている。各切欠き部87は、ブラケット52の各段部52eに支持されるとき、モータ側接続部80aのコイル側表面とブラケット52の反コイル側表面54との間に各FET36を配置可能に形成されている。
【0037】
各外部接続端子80cは、ECU側接続部80bがブラケット52の開口部52dにて支持されるとき、当該開口部52dに接触しないようにECU側接続部80bのコイル側端面からL字状に突出して形成されている。そして、各外部接続端子80cは、ECU30の図略のECU側接続端子を介してMPU31やモータ駆動回路35等が配置されている図略の制御基板に電気的に接続されるように構成されている。
【0038】
図2および図4に示すように、レゾルバ90は、レゾルバステータ91とレゾルバロータ92とを備えている。レゾルバロータ92は、バスバー80のレゾルバ支持部81にて支持されたレゾルバステータ91に対して空隙を介し対向するようにモータ軸73に固定される。このように構成されるレゾルバ90は、ECU30から対応する接続端子91aを介して入力される励磁信号に応じて、ロータ71の回転位置を検出するための検出信号を対応する接続端子91aを介してECU30に出力する。
【0039】
以上のように構成されるモータ40の組み立てについて、図3および図4を用いて説明する。
まず、6個のFET36を、ブラケット52の底部52aにおける反コイル側表面54の所定の部位に図略のねじ等により固定する。そして、ステータ60をハウジング51に焼きばめした後、上述のように各FET36を固定したブラケット52を、コイル62の各リード線64を対応する引出穴53にそれぞれ挿通させた状態でハウジング51に図略のボルト等により固定する。
【0040】
次に、各引出穴53に挿通した各リード線64を対応するバスバー80の貫通穴82にそれぞれ挿入するとともに、各FET36の接続端子36aを対応する貫通穴83にそれぞれ挿入する。そして、バスバー80のモータ側接続部80aの各切欠き部87およびECU側接続部80bをブラケット52の各段部52eおよび開口部52dに固定する。
【0041】
このとき、各リード線64が貫通穴82を挿通して対応する接続端子84の近傍にそれぞれ突出し、各接続端子36aが貫通穴83を挿通して対応する接続端子85の近傍にそれぞれ突出する。そして、レゾルバ90のレゾルバステータ91を、ブラケット52に固定されたバスバー80のレゾルバ支持部81に固定する。
【0042】
次に、各リード線64と対応する接続端子84とを溶接等でそれぞれ電気的に接続することにより、各リード線64が対応する外部接続端子80cにそれぞれ電気的に接続されることとなる。また、各接続端子36aと対応する接続端子85とを溶接等でそれぞれ電気的に接続することにより、各接続端子36aが対応する外部接続端子80cにそれぞれ電気的に接続されることとなる。また、レゾルバステータ91の各接続端子91aと対応する接続端子86とをそれぞれ溶接等で電気的に接続することにより、各接続端子91aが対応する外部接続端子80cにそれぞれ電気的に接続されることとなる。
【0043】
そして、バスバー80の各外部接続端子80cをECU30の上記各ECU側接続端子にそれぞれ接続することにより、モータ40とECU30とが電気的に接続される。このとき、モータ40のコイル62から引き出される各リード線64とECU30との間にはバスバー80のみが介在することとなる。
【0044】
このように、ステータ60の各リード線64、各FET36の接続端子36aおよびレゾルバステータ91の各接続端子91aと、それぞれ対応する外部接続端子80cとを、バスバー80の反コイル側にて溶接等によりそれぞれ電気的に接続している。このように各接続端子を接続する接続作業をバスバー80の反コイル側にて一括して実施できるため、接続作業が容易であり、作業性を向上させることができる。
【0045】
そして、このように構成されるモータ40は、各外部接続端子80cを介して接続されるECU30のモータ駆動回路35により各FET36を所定の駆動周波数でONまたはOFFすることで得られる三相交流電流が各コイル62に供給されることでリング磁石72の周囲に回転磁界を形成する。この回転磁界とリング磁石72により形成される界磁磁束との関係により、ロータ71がモータ軸73とともに回転して、操舵を補助するアシスト力が発生することとなる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るモータ40のブラケット52には、各コイル62からリード線64をそれぞれ引き出すための6個の引出穴53が形成されている。また、バスバー80には、コイル側と反コイル側とを連結する複数の貫通穴であって、引出穴53に挿通した各リード線64を挿通させるための6個の貫通穴82とブラケット52の反コイル側表面54に固定される各FET36の3つの接続端子36aを挿通させるための18個の貫通穴83がそれぞれ形成されている。そして、複数のコイル62の各リード線64が、ブラケット52の引出穴53およびバスバー80の貫通穴82に挿通されて対応する接続端子84にそれぞれ電気的に接続するように構成され、FET36の各接続端子36aが、バスバー80の貫通穴83に挿通されて対応する接続端子85にそれぞれ電気的に接続するように構成されている。また、バスバー80は、各FET36を制御するとともに各コイル62に電力を供給する外部制御手段であるECU30に電気的に接続するための複数の外部接続端子80cを有しており、各接続端子84,85が対応する外部接続端子80cに電気的に接続するように構成されている。
【0047】
このように、コイル62から引き出される各リード線64とECU30との間にはバスバー80のみが介在し、パワーケーブル等の個別の接続部材が廃止されるので、コイル62とECU30との間の接続距離が短縮される。この接続距離の短縮により、配線抵抗が減少することからモータ40の効率を向上させることができる。
【0048】
また、このような配線抵抗の減少による発熱量の減少に加えて、各FET36をブラケット52の放熱作用により冷却するので、冷却部材を廃止もしくは小型化することができる。さらに、コイル62のリード線64とECU30との間におけるバスバー80以外の接続部材の廃止や冷却部材の廃止もしくは小型化により、モータ40の部品点数削減、小型化および重量低減を実現することができる。また、製造コストの低減にも貢献することができる。
したがって、操舵を補助するアシスト力を発生させるのに好適なモータ40を提供することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るモータ40のバスバー80には、反コイル側表面80dの中央部にロータ71の回転位置を検出する回転位置検出手段であるレゾルバ90のレゾルバステータ91の外周を相対回転不能に支持するレゾルバ支持部81が形成されている。そして、このレゾルバ支持部81に支持されたレゾルバステータ91の各接続端子91aにそれぞれ電気的に接続可能であって対応する外部接続端子80cに電気的に接続される各接続端子86がバスバー80の反コイル側表面80dに形成されている。
【0050】
このようにレゾルバステータ91をバスバー80のレゾルバ支持部81にて支持した状態において、当該レゾルバステータ91の各接続端子91aが、対応する外部接続端子80cに電気的に接続される各接続端子86にそれぞれ接続される。これにより、レゾルバ90とECU30とを他の接続部材等を介在させることなくバスバー80のみで電気的に接続するので、モータ40の部品点数をより削減することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るモータ40を採用する電気式動力舵取装置20では、モータ40の効率向上や小型化、重量低減、製造コスト低減等の、請求項1または2の各発明による作用・効果を享受した電気式動力舵取装置20を実現することができる。したがって、このようなモータ40を採用する電気式動力舵取装置20の効率向上や製造コスト低減に加えて、モータ40の小型化や重量低減による当該電気式動力舵取装置20のエンジンルーム内への搭載性を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)ブラケット52の底部52aには、各引出穴53が開口部52dから見て右側に形成されるとともに各FET36が開口部52dから見て左側の反コイル側表面54に固定されることに限らず、各リード線64の引き出し易さ等の組み立て作業性を考慮して、底部52aの適宜の位置に各引出穴53を形成するとともに各FET36を固定してもよい。このとき、バスバー80の各貫通穴82および各貫通穴83は、各引出穴53および各FET36の位置に応じてモータ側接続部80aに形成される。
【0053】
(2)バスバー80は、ブラケット52の各段部52eおよび開口部52dにより支持されることに限らず、例えば、ブラケット52の反コイル側に配置された状態にてハウジング51に支持されてもよい。
【0054】
(3)コイル62を構成する導線63の先端にそれぞれリード線64を接続し、当該各リード線64をブラケット52の各引出穴53およびバスバー80の各貫通穴82を介して対応する接続端子84に電気的に接続することに限らず、コイル62を構成する導線63の先端をリード線としてそのまま引き出して各引出穴53および各貫通穴82を介して対応する接続端子84に電気的に接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1(A)は、本発明の一実施形態に係る電気式動力舵取装置の全体構成例を示す構成図で、図1(B)は、ECU等の構成例を示す回路ブロック図である。
【図2】モータの断面図である。
【図3】モータの一部分解斜視図である。
【図4】モータの一部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
20…電気式動力舵取装置
30…ECU(外部制御手段)
35…モータ駆動回路
36…FET(スイッチング素子)
36a…接続端子
40…モータ
52…ブラケット
53…引出穴
54…反コイル側表面
60…ステータ
62…コイル
63…導線
64…リード線
71…ロータ
80…バスバー
80c…外部接続端子
81…レゾルバ支持部(支持部)
82…貫通穴(第1の貫通穴)
83…貫通穴(第2の貫通穴)
84…接続端子(第1の接続端子)
85…接続端子(第2の接続端子)
86…接続端子(第3の接続端子)
90…レゾルバ(回転位置検出手段)
91…レゾルバステータ
91a…接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された複数のコイルを有するステータと、
前記複数のコイルを流れる電流の電流方向を切り換える複数のスイッチング素子と、
前記複数のコイルからリード線を引き出すための引出穴が形成されるブラケットであって、前記複数のスイッチング素子が反コイル側表面に固定されるブラケットと、
前記複数のスイッチング素子を制御するとともに前記複数のコイルに電力を供給する外部制御手段に電気的に接続するための複数の外部接続端子を有するバスバーであって、コイル側と反コイル側とを連結する複数の第1の貫通穴および第2の貫通穴が形成され、前記複数の第1の貫通穴に挿通した前記複数のリード線にそれぞれ電気的に接続可能に形成される複数の第1の接続端子と前記複数の第2の貫通穴に挿通した前記複数のスイッチング素子の複数の接続端子にそれぞれ電気的に接続可能に形成される複数の第2の接続端子とが対応する前記外部接続端子にそれぞれ電気的に接続されるバスバーと、
を備えるモータ。
【請求項2】
前記複数のコイルへの通電により発生する回転磁界に応じて回転するロータの回転位置を検出する回転位置検出手段を備え、
前記バスバーには、反コイル側に前記回転位置検出手段の外周を相対回転不能に支持する支持部が形成されるとともに、この支持部に支持された前記回転位置検出手段の複数の接続端子にそれぞれ電気的に接続可能であって対応する前記外部端子に電気的に接続される複数の第3の接続端子が形成されることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
操舵状態を検出し、この操舵状態に応じたアシスト力を、請求項1または2記載のモータにより発生させて操舵をアシストすることを特徴とする電気式動力舵取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−124772(P2009−124772A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292694(P2007−292694)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】