説明

モータ装置、及び携帯装置

【課題】 スプリング導電体と内部電極との接続を良好に維持すること。
【解決手段】 図1(c)に示したように、スプリング導電体6は、小型モータ1のエンドプレート2上に配設されている。エンドプレート2の表面には、位置決め突起7、固定突起が凸状に突起しており、これらがスプリング導電体6に形成された孔に勘合することによりスプリング導電体6のエンドプレート2に対する位置決めがなされる。固定突起は、熱によってかしめられ、固定部9となってスプリング導電体6をエンドプレート2に固定する。電極接続部8は、半田付けによって、内部電極とスプリング導電体6を電気的に接続する。固定部9は、電極接続部8よりも、回路基板との接点側に形成されているため、小型モータ1で振動を発生させた際、回路基板からの振動が電極接続部8に伝わらず、電極接続部8の劣化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置、及び携帯装置に関し、例えば、携帯電話で振動を発生させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話が広く普及している。これら携帯電話は、呼出音でユーザを呼び出す機能のほか、振動によってユーザを呼び出す機能も備えている。
この呼出振動は、携帯電話内部の回路基板上に固定された小型モータで偏心重りを回転させることにより発生する。
【0003】
図3に、従来の小型モータのエンドプレート側の端面、即ち、重りが取り付けられた側と対向する側の端面を示す。
エンドプレート102の表面には、回路基板から小型モータに電流を導通させるためのスプリング導電体106が取り付けられている。
【0004】
スプリング導電体106は、電極接続部118、付勢部132、通電端子部133などを備えている。
電極接続部118は、内部のコイルとつながる内部電極とスプリング導電体106を接続する部分である。より詳細には、内部電極はエンドプレート102を貫通してモータ内部から突出しており、電極接続部118にてスプリング導電体106と半田付けされている。
【0005】
付勢部132は、小型モータを回路基板に押し当てて設置した際に、その圧力で湾曲し、通電端子部133を回路基板上の電極に付勢する部分である。これによって、通電端子部133と回路基板上の電極の接触が実現される。
エンドプレート102には、凸状の係合凸部141が形成されており、一方、スプリング導電体106の一端側には係合凹部134が形成されている。
そして、スプリング導電体106をエンドプレート102に取り付ける際は、係合凹部134が係合凸部141に係合することにより、スプリング導電体106の位置決めがなされる。
このような手法でスプリング導電体106の位置決めを行う技術として次の文献がある。
【特許文献1】特許第3152650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
小型モータによって回路基板が振動すると、この振動が付勢部132を介して電極接続部118へと伝達してくる。これによって、電極接続部118に応力が発生する。
小型モータの振動は激しいため、この応力が繰り返し作用することにより、電極接続部118の半田が劣化(例えば、ひび割れ)する可能性があった。電極接続部118が劣化すると、スプリング導電体106と内部電極との導通が不安定になる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、小型モータが振動する環境下で、スプリング導電体と内部電極との接続を良好に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、一端に負荷を回転させる回転軸が形成され、他端にエンドプレートが形成されたモータ本体部と、固定部により前記エンドプレートに固定されたスプリング導電体と、を用いて構成されたモータ装置であって、前記スプリング導電体は、前記エンドプレートを貫通する内部電極と接続する電極接続部と、回路基板に当該スプリング導電体上の接点を付勢する付勢部と、を備え、前記固定部は、前記電極接続部と前記付勢部の間に設けられていることを特徴とするモータ装置を提供する(第1の構成)。
第1の構成において、前記固定部は、前記エンドプレートに形成された突起部をかしめることにより、前記スプリング導電体を固定しているように構成することもできる(第2の構成)。
第1の構成、又は第2の構成において、前記負荷として、前記回転軸の軸線上と異なる点に重心が存在する偏心重りが形成するように構成することもできる(第3の構成)。
また、本発明は、振動発生源として、第3の構成のモータ装置を具備したことを特徴とする携帯装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、付勢部と電極接続部の間でスプリング導電体を固定することにより、小型モータが振動する環境下であっても、スプリング導電体と内部電極との接続を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)実施の形態の概要
図1(c)に示したように、スプリング導電体6は、小型モータ1のエンドプレート2上に配設されている。
エンドプレート2の表面には、位置決め突起7、固定突起(固定部9に形成されている)が凸状に突起しており、これらがスプリング導電体6に形成された孔に嵌合することによりスプリング導電体6のエンドプレート2に対する位置決めがなされる。固定突起は、熱によってかしめられ、固定部9となってスプリング導電体6をエンドプレート2に固定する。
【0011】
電極接続部8は、半田付けによって、内部電極(内部のコイルと導通する)とスプリング導電体6を電気的に接続する。
固定部9は、電極接続部8よりも、回路基板との接点側に形成されているため、小型モータ1で振動を発生させた際、回路基板からの振動が電極接続部8に伝わらず、電極接続部8の劣化を抑制することができる。
【0012】
(2)実施の形態の詳細
図1(a)は、本実施の形態に係る小型モータを回転軸に垂直な方向から見た正面図である。
また、図1(b)は、小型モータを側面方向(矢線A方向)に見た側面図であり、図1(c)は、小型モータの底を回転軸方向(矢線B方向)に見た底面図である。
この小型モータ1は、例えば、携帯電話、ページャといった携帯装置の内部に固定され、呼出振動を発生するのに用いられる。なお、携帯装置の構成や、携帯装置への実装方法は、従来技術と同じである。
【0013】
図1(a)に示したように、小型モータ1は、エンドプレート2、駆動部3、スプリング導電体6、回転軸5、重り4などから構成されている。
そして、スプリング導電体6の表面には、電極接続部8、固定部9が形成され、更に、スプリング導電体6の貫通孔をエンドプレート2に形成された位置決め突起7が貫通している。
小型モータ1の大きさは、駆動部3の直径で4ミリ以下程度である。
【0014】
駆動部3は、電力を回転力に変換する機能部であって、内部にロータやステータを備えている。
ロータには、コイルが巻装されており、当該コイルにブラシを介して外部から直両電流が供給されるようになっている。
そして、コイルが発生する磁界がステータの発する磁界と作用することにより、ロータが回転し、回転軸5が回転する。
このように、小型モータ1は、一般の小型ブラシモータと同じ構造を有している。
なお、これは一例であって、駆動部3の構造を限定するものではなく、どのような種類のモータを用いてもよい。
【0015】
重り4は、金属が略楕円柱状などに形成された偏心重りであり、回転軸5に取り付けらた負荷として機能している。
重り4の重心は、回転軸5の軸線とは一致しないようになっており(即ち、重心が回転軸5の軸線上にない)、回転軸5が回転すると、重り4によって振動が発生するようになっている。
【0016】
エンドプレート2は、樹脂などにより形成された盤状の部材であり、駆動部3の他端側(回転軸5、重り4が形成されている側と対向する側)に取り付けられている。エンドプレート2の盤面は、回転軸5と垂直になっている。
このように、エンドプレート2は、小型モータ1の底面部を構成している。(なお、エンドプレート2、駆動部3、及び回転軸5は、モータ本体部に該当する。)
エンドプレート2の表面には、スプリング導電体6が配設されており、電極接続部8を介して、内部電極とスプリング導電体6の導通が図られている。
【0017】
次に、図1(d)を用いてスプリング導電体6の形状について説明する。
スプリング導電体6は、プラス電極とマイナス電極となる1対からなり、左右対称な形状を有している。
スプリング導電体6は、大きくわけて、基底部31、付勢部32、通電端子部33から構成されている。
これらの各部は、例えば、型で抜いた金属板を板金加工するなどして、一体加工されている。
【0018】
基底部31は、エンドプレート2の表面に固定される部分であり、位置決め突起用孔17、内部電極用孔18、及び固定突起用孔19の3つの貫通孔が形成されている。
これら3つの貫通孔は、スプリング導電体6の略中心線上にあり、内部電極用孔18より付勢部32側に固定突起用孔19が形成され、付勢部32と対向する側に位置決め突起用孔17が形成されている。
【0019】
位置決め突起用孔17は、エンドプレート2の表面に形成された位置決め突起7(図1(c))と嵌合する貫通孔である。
固定突起用孔19は、エンドプレート2に形成された固定突起と嵌合する貫通孔である。固定突起は、スプリング導電体6をエンドプレート2に配置した後、熱によってかしめられ、固定部9を形成する。
内部電極用孔18は、エンドプレート2に形成された貫通孔を貫通して、駆動部3の外部に出された内部電極を半田付けするための貫通孔である。この半田付けによって電極接続部8(図1(c))が形成される。
【0020】
このように、位置決め突起7と固定突起によってスプリング導電体6のエンドプレート2に対する位置決めがなされ、位置決め突起7と固定突起は、ガイドピンとして機能している。
なお、スプリング導電体6の固定は、かしめのほかに、固定突起と固定突起用孔19の嵌合をしまりばめにしたり、あるいは、接着剤で固定したり、更には、ねじ止めするなど、他の方法を用いてもよい。
【0021】
付勢部32は、折曲部34においてスプリング導電体6を折り曲げることにより形成されている。折り曲げ角度は、例えば、100度前後である。
付勢部32は、小型モータ1を回路基板に取り付けた際に、回路基板からの圧力によってたわみ、その際に発生する付勢部32の復元力によって通電端子部33が回路基板上の電極に付勢される。
【0022】
通電端子部33は、折曲部35において付勢部32の先端を折り曲げることによって形成されており、略球面を有する突起部36が形成されている。
通電端子部33は、回路基板上の電極と接触する部分であって、突起部36にて回路基板上の電極と接触する。
【0023】
以上のように構成されたスプリング導電体6をエンドプレート2に設置すると、図1(c)のようになり、電極接続部8にてスプリング導電体6と内部電極の導通が図られ、位置決め突起7と固定部9によって、スプリング導電体6の位置決めがなされ、更に、固定部9によってスプリング導電体6の固定がなされる。
【0024】
以上のようにして構成された小型モータ1が回路基板に配置されて駆動すると、重り4が回転し、振動を発生する。この振動は、小型モータ1から回路基板に伝達し、回路基板が収納された携帯電話などの全体を振動させる。
スプリング導電体6は、通電端子部33が回路基板に付勢されているため、付勢部32を介して振動が基底部31に伝わってくるが、この伝達振動は、固定部9によって吸収される。
このように、固定部9は、電極接続部8と付勢部32の間に設けられているため、この振動は、電極接続部8には伝わらない。
【0025】
本実施の形態の小型モータ1では、付勢部32を介して伝わってくる振動が電極接続部8に到達しないため、電極接続部8に作用する応力を低減することができ、これによって、電極接続部8の劣化(半田の割れなど)を抑制することができる。
なお、以上に説明した本実施の形態では、固定部9にて固定突起をかしめたが、更に、位置決め突起7を熱でかしめるとスプリング導電体6の固定をより強固にすることができる。
【0026】
次に、図2の各図を用いて本実施の形態の変形例について説明する。
なお、先に説明した実施の形態に対応する構成要素には同じ符号を付すこととし、説明を簡略化あるいは省略する。
図2(a)は、エンドプレート2に位置決め突起21を設けた例である。
位置決め突起21は、エンドプレート2の表面に形成された直方体状の突起物であって、周囲を構成する辺のうち、固定部9の端部41に対向する辺がそれぞれ両方の端部41と当接するようになっている。
また、電極接続部8の付勢部32側には、先の実施の形態と同様に固定部9が形成されており、付勢部32からの振動が電極接続部8に伝わらないようになっている。
【0027】
本変形例では、固定部9と位置決め突起21によってスプリング導電体6の位置決めがなされるため、図1(c)の位置決め突起7、及びスプリング導電体6の位置決め突起用孔17(図1(d))を設ける必要はない。
なお、位置決め突起21は、直方体形状としたが、これは、位置決め突起21の形状を限定するものではなく、例えば、円柱形状や楕円柱状など、スプリング導電体6の端部に当接して位置決めを行うものであればよい。
また、本変形例では、2つのスプリング導電体6が対向する内周側の端部41にて位置決め突起21を当接させたが、外周側の端部に突起を形成してこれが当接するように構成することもできる。
更に、位置決め突起21を熱でかしめてスプリング導電体6を固定するように構成すると、スプリング導電体6の固定をより強固なものにすることができる。
【0028】
図2(b)は、エンドプレート2に位置決め突起22を設けた例である。
位置決め突起22は、エンドプレート2の表面に形成された直方体状の突起物であって、一辺がスプリング導電体6の付勢部32と対向する端部42に当接するようになっている。
また、電極接続部8の付勢部32側には、先の実施の形態と同様に固定部9が形成されており、付勢部32からの振動が電極接続部8に伝わらないようになっている。
【0029】
本変形例では、固定部9と位置決め突起22によってスプリング導電体6の位置決めがなされるため、図1(c)の位置決め突起7、及びスプリング導電体6の位置決め突起用孔17(図1(d))を設ける必要はない。
なお、位置決め突起22は、直方体形状としたが、これは、位置決め突起22の形状を限定するものではなく、例えば、円柱形状や楕円柱状など、スプリング導電体6の端部に当接して位置決めを行うものであればよい。
更に、位置決め突起21を熱でかしめてスプリング導電体6を固定するように構成すると、スプリング導電体6の固定をより強固なものにすることができる。
【0030】
図2(c)は、スプリング導電体6に位置決め用の折曲部を設けた例である。また、図2(d)には、図2(c)において、スプリング導電体6を矢線C方向から見たところを示している。
スプリング導電体6は、例えば、金属板を型で打ち抜いたものを板金加工するなどして製造するが、打ち抜きの際にスプリング導電体6の端部に折曲部23を形成するための突起状の部分を形成しておく。そして、これを板金加工で、付勢部32と同じ方向に直角に曲げることにより折曲部23が形成される。
【0031】
本変形例では、固定部9と共に、折曲部23が小型モータ1の側面にかぶせるように当接してスプリング導電体6の位置決めがなされる。
折曲部23の形状は任意でよく、例えば、先端部を長めに作成してこれを電極として利用することもできる。
【0032】
以上、本実施の形態と、各種変形例について説明したが、これらによって次のような効果を得ることができる。
(1)固定部9が電極接続部8の付勢部32側に形成されているため、付勢部32を介して伝達してくる振動が電極接続部8に伝達するのを防ぐことができる。
(2)付勢部32からの振動が電極接続部8に伝達しないため、ひび割れなどの半田の劣化を抑制することができる。
(3)電極接続部8の劣化を抑制することができるため、回路基板と小型モータ1の電気的接続を安定化することができる。
(4)スプリング導電体6やエンドプレート2の形状が簡素であるため、これらの製造コストを低減することができる。
(5)係合ではなく、かしめなどによりスプリング導電体6を固定するため、係合ほどの部品の形状精度は必要ない。
(6)スプリング導電体6をエンドプレート2に係合させる必要がないので、組み立て作業が単純化され、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】小型モータの外観を示した図である。
【図2】各種の変形例を示した図である。
【図3】従来例を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 小型モータ
2 エンドプレート
3 駆動部
4 重り
5 回転軸
6 スプリング導電体
7 位置決め突起
8 電極接続部
9 固定部
17 位置決め突起用孔
18 内部電極用孔
19 固定突起用孔
31 基底部
32 付勢部
33 通電端子部
34 折曲部
35 折曲部
36 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に負荷を回転させる回転軸が形成され、他端にエンドプレートが形成されたモータ本体部と、
固定部により前記エンドプレートに固定されたスプリング導電体と、
を用いて構成されたモータ装置であって、
前記スプリング導電体は、前記エンドプレートを貫通する内部電極と接続する電極接続部と、回路基板に当該スプリング導電体上の接点を付勢する付勢部と、
を備え、
前記固定部は、前記電極接続部と前記付勢部の間に設けられていることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記固定部は、前記エンドプレートに形成された突起部をかしめることにより、前記スプリング導電体を固定していることを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記負荷として、前記回転軸の軸線上と異なる点に重心が存在する偏心重りが形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
振動発生源として、請求項3に記載のモータ装置を具備したことを特徴とする携帯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−215376(P2007−215376A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35267(P2006−35267)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】