ラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータ
【課題】外周側部材および内周側部材の半径方向に大型化することを抑制可能なラジアルピストンポンプを提供する。
【解決手段】軸線A1を中心として相対回転可能な外周側部材3および内周側部材5と、外周側部材3に設けられたカム面20と、内周側部材5に設けられて半径方向に動作可能なピストン7と、内周側部材5に設けられた流体室9とを有し、流体室9で吸入・吐出される流体の容量を変更可能な構成を備えたラジアルピストンポンプにおいて、軸線A1に沿った方向の平面内で、軸線A1と、カム面の中心線B1とが交差しており、外周側部材3と内周側部材5とを軸線A1に沿った方向に相対移動させることにより、流体室9で吸入・吐出される流体の容量を変更する容量調整機構21が設けられている。
【解決手段】軸線A1を中心として相対回転可能な外周側部材3および内周側部材5と、外周側部材3に設けられたカム面20と、内周側部材5に設けられて半径方向に動作可能なピストン7と、内周側部材5に設けられた流体室9とを有し、流体室9で吸入・吐出される流体の容量を変更可能な構成を備えたラジアルピストンポンプにおいて、軸線A1に沿った方向の平面内で、軸線A1と、カム面の中心線B1とが交差しており、外周側部材3と内周側部材5とを軸線A1に沿った方向に相対移動させることにより、流体室9で吸入・吐出される流体の容量を変更する容量調整機構21が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外周側部材と内周側部材とを相対回転させることにより、ピストンを前記部材の半径方向に動作させて、流体室に流体を吸入・吐出するラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外周側部材と内周側部材とを相対回転させることにより、ピストンを前記部材の半径方向に動作させて、油室にオイルを吸入・吐出するラジアルピストンポンプが知られており、そのラジアルピストンポンプを有する無段変速機の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1においては、ミッションケース内に、入力軸および出力軸が同軸上に、かつ、相対回転可能に配置されている。また、入力軸にはシリンダボディが取り付けられており、そのシリンダボディの外周面には、放射状に第1、第2シリンダ孔が設けられている。さらに、第1シリンダ孔には第1プランジャが摺動自在に配置されており、第2シリンダ孔には第2プランジャが摺動自在に配置されている。さらに、第1、第2シリンダ孔には、それぞれポンプポートが開口されている。一方、前記ミッションケースには第1ポンプリングが取り付けられており、この第1ポンプリングは前記シリンダボディを取り囲むように配置されている。また、前記第1ポンプリングは、前記入力軸と平行な枢軸を介して、前記ミッションケースにより揺動自在に支持されている。一方、前記出力軸には第2ポンプリングが設けられており、前記シリンダボディに対して一側方へ所定距離偏心するように配置されている。
【0003】
上記の第1シリンダ孔、第1プランジャ、第1ポンプリングなどにより、第1油圧ポンプが構成され、上記の第2シリンダ孔、第2プランジャ、第2ポンプリングなどにより、第2油圧ポンプが構成されているとともに、第1シリンダ孔と第2シリンダ孔とが接続されている。そして、前記入力軸を回転させると、前記第1プランジャの先端が前記第1ポンプリングの内周面に接触した状態で、前記第1プランジャが入力軸の半径方向に往復移動し、オイルの吸入・吐出がおこなわれる。さらに、前記シリンダボディに対する前記第1ポンプリングの偏心方向および偏心量を変えることにより、第2油圧ポンプの吸入吐出量域を反転させたり、その容量を調節できるものとされている。なお、ピストンを回転部材の半径方向に動作させるとともに、半径方向におけるピストンのストロークを可変としたトルク伝達装置が、特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−303526号公報
【特許文献2】特開平2−120520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されているラジアルピストンポンプにおいては、前記シリンダボディに対して前記第1ポンプリングを半径方向に稼働させる必要があるため、ラジアルピストンポンプが回転部材の半径方向に大型化する恐れがあった。
【0006】
この発明は上記事情を背景としてなされたものであって、軸線を中心とする半径方向に大型化することを抑制可能なラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能であり、かつ、内外周に配置された外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と内周側部材とが相対回転して前記ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される流体室とを有し、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更可能な構成を備えたラジアルピストンポンプにおいて、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記カム面の中心線とが交差しており、「前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更する容量調整機構」が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内における前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構を含むことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記軸線を中心として前記内周側部材と相対回転可能に設けられた動力伝達部材と、この動力伝達部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能な第2ピストンと、前記動力伝達部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と動力伝達部材とが相対回転して前記第2ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される第2流体室と、前記流体室から吐出された流体を前記第2流体室に供給する第1通路と、前記第2流体室から吐出された流体を前記流体室に供給する第2通路とを備えたラジアルピストンモータが設けられている。請求項3の発明において、このラジアルピストンモータは、前記流体室から前記第2流体室に流体が供給されて前記第2ピストンが半径方向の外側に向けて動作する場合に、前記第2ピストンが前記カム面に押し付けられた場合の反力で、前記動力伝達部材を前記軸線を中心として回転させる向きのトルクが発生するように構成されている。さらに、請求項3の発明において、前記容量調整機構は、「前記外周側部材と前記動力伝達部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記軸線を中心とする半径方向で前記第2ピストンのストロークを変更する機構」を含むことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、
前記容量調整機構は、
(a)前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプおよび前記ラジアルピストンモータを配置する状態と、
(b)前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプを配置し、かつ、前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの他端部までの間に、前記ラジアルピストンモータを配置する状態と
を切り替え可能な機構を含むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能に設けられ、かつ、内外周に設けられた外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に接触して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、流体が供給される流体室とを有し、前記流体室に流体を供給して前記ピストンを半径方向で外側に向けて動作させることにより、前記カム面で発生する反力で前記内周側部材を回転させる向きのトルクを生じさせるとともに、前記流体室の容量を変更可能なラジアルピストンモータにおいて、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差しており、「前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記流体室の容量を変更する容量調整機構」が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5の構成に加えて、前記容量調整機構は、「前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構」を含むことを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の構成は、請求項3または4の構成に加えて、前記容量調整機構は、「前記軸線に沿った方向の平面内で、前記外周側部材を内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることにより、前記内周側部材の回転数と動力伝達部材の回転数の比である変速比を、無段階に変更可能な構成を有している」ことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の構成は、請求項3または4の構成に加えて、前記外周側部材および内周側部材および動力伝達部材を取り付けた固定構造物が設けられており、前記内周側部材および動力伝達部材は前記軸線に沿った方向には動作することが不可能な状態で前記固定構造物に支持されており、前記外周側部材は前記軸線に沿った方向に動作可能に構成されており、前記容量調整機構は、「前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記外周側部材を、前記内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させる構成を有している」ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、軸線を中心として外周側部材と内周側部材とが相対回転すると、カム面に接触した状態でピストンが半径方向に往復動し、流体室に流体が吸入・吐出される。また、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させると、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更することができる。したがって、前記軸線を中心とする半径方向に、ラジアルピストンポンプが大型化することを抑制できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記軸線を中心とする円周方向で、前記流体室に流体が吸入される位相と、前記流体室から流体が吐出される位相とを反転させることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記流体室から吐出された流体が第2流体室に供給され、かつ、前記第2流体室から吐出された流体が前記流体室に供給される。そして、前記流体室から前記第2流体室に流体が供給されて前記第2ピストンが半径方向の外側に向けて動作する場合に、前記第2ピストンが前記カム面に押し付けられ、その反力で前記動力伝達部材を前記軸線を中心として回転させる向きのトルクが発生する。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、外周側部材の回転方向に対して、動力伝達部材の回転方向を正逆に切替可能である。
【0019】
請求項5の発明によれば、流体室に流体を供給することによりピストンをカム面に押し付け、その反力で外周側部材を回転させる向きのトルクが発生する。また、カムを軸線に沿った方向に動作させることにより、流体室の容量を変更することができ、ラジアルピストンモータが半径方向に大型化することを抑制できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、ラジアルピストンモータの内周側部材の回転方向の位相で、オイルの吸入領域と吐出領域とを逆にする(反転させる)ことができ、内周側部材を正転・逆転させることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、請求項3または4の発明と同様の効果を得られる他に、軸線に沿った方向の平面内で、前記外周側部材を内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることにより、前記内周側部材の回転数と動力伝達部材の回転数の比である変速比を、無段階に変更可能である。
【0022】
請求項8の発明によれば、請求項3または4の発明と同様の効果を得られる他に、外周側部材を軸線に沿った方向に動作させることにより、外周側部材を、内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明において、外周側部材と内周側部材とが相対回転可能である。例えば、何れか一方が回転可能であり、他方が固定されている(回転不可能)第1の構成、または、外周側部材および内周側部材の両方が、共に回転可能である第2の構成のいずれでもよい。さらに上記第1の構成と第2の構成とを切り替えることが可能であってもよい。そして、外周側部材または内周側部材の何れか一方が、動力源に対して動力伝達可能に連結され、前記動力源の動力が前記一方の部材に伝達されて、外周側部材と内周側部材とが相対回転する。ここで、前記動力源に連結される一方の部材は、カム面が設けられている部材、またはピストンが設けられている部材の何れでもよい。また、前記動力源は、熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置、電気エネルギを運動エネルギに変換する動力装置、流体の運動エネルギを回転軸の運動エネルギに変換する動力装置などのいずれであってもよい。また、この発明において、ピストンは軸線を中心とする半径方向に動作するピストンであり、形状、長さなどは問われず、ピストン、プランジャなどにより構成される。
【0024】
また、この発明におけるラジアルピストンポンプを車両に搭載することが可能である。例えば、駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に、前記ラジアルピストンポンプを配置することが可能である。さらに、この発明において、容量調整機構は、各部材同士を前記軸線に沿った方向に相対移動させる動力を発生するアクチュエータであり、例えば、油圧式アクチュエータ、電磁式アクチュエータ、手動式アクチュエータなどを用いることができる。油圧式アクチュエータは、油圧室の油圧を制御することにより、各部材同士を相対移動させる動作力が制御されるように構成される。電磁式アクチュエータは、磁気吸引力を制御することにより、各部材同士を相対移動させる動作力が制御されるように構成される。手動式アクチュエータは、人間の操作力がリンク、ワイヤ、ロッドなどを経由して伝達されて動作力が発生するように構成される。また、容量調整機構は、前記軸線を中心とする半径方向でのピストンのストローク量を制御して、ラジアルピストンポンプの容量を変更する。
【0025】
さらに、この発明におけるラジアルピストンモータは、流体の運動エネルギを回転部材の運動エネルギに変換する流体式モータである。また、この発明のラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータにおいて、回転可能に設けられる部材は、トルク伝達可能な部材であり、例えば、回転軸、回転円板、キャリヤ、ギヤ、コネクティングドラムなどが含まれる。また、回転不可能に固定される部材には、ケーシング、ハウジング、フレーム、ボス部、ブラケット、隔壁などが含まれる。さらに、この発明において、通路とは、流体が流通する経路であり、流路(油路)、ポート、バルブ自体、バルブ内部の通路、溝、窪みなどが含まれる。また、この発明において、流体は非圧縮性の流体であり、具体的には液体、例えば、オイル、冷却液、水などが含まれる。さらに、オイルには、焼き付き・発熱・摩耗・摺動する部位を潤滑・冷却する潤滑油、油圧機器・流体機械を動作させる作動油が含まれる。この発明における固定構造物は、ラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータが取り付けられるか、またはラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータを収容する要素であり、固定構造物は、軸線に沿った方向に移動することが不可能に配置される。この固定構造物には、ケーシング、ハウジング、ブラケット、枠部材、フレーム部材、壁部材などが含まれる。以下、この発明におけるラジアルピストンポンプの具体例を、図面に基づいて説明する。
【0026】
(具体例1)
図1は、ラジアルピストンポンプ1の具体例1を示し、このラジアルピストンポンプ1は、固定構造物、例えば、ケーシング100内に設けられている。ラジアルピストンポンプ1は回転軸2およびカム3を有している。前記回転軸2とカム3とは、軸線A1を中心として相対回転可能に構成されている。前記軸線A1は略水平に配置されており、図1は、軸線A1に沿った方向における断面図である。前記回転軸2には、動力源4が動力伝達可能に接続されている。この動力源4としては、熱エネルギを運動エネルギに変換するエンジン、または、電気エネルギを運動エネルギに変換する電動機などを用いることができる。また、前記動力源4から前記回転軸2に至る経路にクラッチ(図示せず)を設けることも可能である。また、この回転軸2と一体回転する構成のインナーレース5が設けられている。図2は、軸線A1と垂直な平面内における断面図、特に、軸線A1に沿った方向でインナーレース5の厚さ方向の中心を通過する平面内における断面図である。このインナーレース5は、軸線A1を中心として環状に構成されており、そのインナーレース5の外周には、円周方向に沿って複数のシリンダ6が配置されている。図2に示す例では、シリンダ6が8箇所形成されている。各シリンダ6は、インナーレース5の外周面に開口された円柱形状の凹部もしくは窪みである。そして、各シリンダ6内にはピストン7が各々配置されており、各ピストン7は、中心線C1に沿った平面内で、前記軸線A1を中心として半径方向に動作可能である。また各ピストン7には転動体8が取り付けられている。この転動体8はボールを用いることが可能である。一方、前記シリンダ6内には油圧室9が形成されている。この油圧室9には、圧縮コイルばね10が設けられており、前記ピストン7を前記シリンダ6の外に押し出す向きの力が、圧縮コイルばね10からピストン7に加えられる。
【0027】
前記油圧室9に接続された油圧回路の構成を、図1および図3および図4に基づいて説明する。前記ケーシング100には、吸入油路11および吐出油路12が設けられている。なお、図1に示されているケーシング100は、具体的にはケーシング100の一部を構成する隔壁、カバーなどであり、これらの隔壁、カバーは、軸線A1に対して垂直な方向に延ばされているか、または張り出している。隔壁、カバーは、ケーシング100の内部と外部とを区画する要素、またはケーシング100の内部に形成された空間同士を区画する要素のいずれでもよい。以下、ケーシング100に代えて、便宜上「隔壁100」と記す。そして、軸線A1に沿った方向で、動力源4と隔壁100との間に、前記カム3およびインナーレース5が配置されている。また、前記吸入油路11はオイルパン13に接続されている。オイルパン13は、ケーシングの内部またはケーシングの外部に設けられたオイル溜めである。一方、前記吐出油路12はオイル必要部16に接続されている。このオイル必要部16では、オイルを潤滑油として用いたり、制御機器の作動油として用いる。オイル必要部16には、ケーシング内またはケーシングの外部に設けられた油圧室、ケーシング内に設けられた動力伝達装置、具体的にはギヤ同士の噛み合い部、チェーンとスプロケットとの噛み合い部、プーリとベルトとの接触部などが含まれる。またオイル必要部には、オイルにより潤滑・冷却される軸受が含まれる。
【0028】
また、前記隔壁100には油路切替バルブ101が取り付けられている。この油路切替バルブ101は、軸線A1を中心とする円筒形状に構成されており、隔壁100に対して、油路切替バルブ101が回転不可能に、かつ、軸線A1に沿った方向にも移動不可能に固定されている。具体的には、隔壁100に設けられた孔に対して、油路切替バルブ101が圧入固定されている。そして、油路切替バルブ101には油路102,103が設けられており、油路102が吐出油路12に接続され、油路103が吸入油路11に接続されている。また、前記軸線A1に沿った方向における油路切替バルブ101の端面、具体的には、前記インナーレース5に近い側の端面には、油路104,105が形成されている。図3は、油路切替バルブ101の端面図であり、油路104,105は、軸線A1を中心として共に円弧形状に構成されている。より具体的には、油路104,105は、共に略半円形状を有している。そして、油路104が油路102と接続され、油路105が油路103と接続されている。
【0029】
一方、前記インナーレース5には、前記油圧室9に接続された油路106が設けられている。油路106は、油圧室9にそれぞれ独立して複数設けられており、各油路106が、インナーレース5の円周方向に等間隔で配置されている。そして、各油路106は、インナーレース5の端面、具体的は油路切替バルブ101に接触した側の端面に開口されている。各油路106の開口部と同一円周上に、前記油路104,105が配置されている。さらに、インナーレース5の端面と油路切替バルブ101の端面とが接触した状態で、インナーレース5と油路切替バルブ101とが相対回転することが可能となるように、インナーレース5が回転軸2に取り付けられている。インナーレース5と回転軸2とが一体回転するように連結、具体的にはスプライン結合されている。また、回転軸2およびインナーレース5は軸線A1に沿った方向には移動することが不可能となるように、軸受、およびスナップリング等(図示せず)により支持されている。したがって、インナーレース5が回転している場合、または停止している場合のいずれにおいても、油路106は油路104または油路105に対して接続することが可能である。さらに、インナーレース5が回転すると、油路106が油路104に接続された状態と、油路106が油路105に接続された状態とが交互に切り替わる。このように、油路切替バルブ101は、油圧室9を、油路104または油路105に対して選択的に接続する機構である。また、油路切替バルブ101は、インナーレース5の回転により、油圧室9に対して接続される油路が切り替わるロータリバルブである。
【0030】
前記カム3の構成を説明する。このカム3は前記ケーシング内に、前記軸線A1に沿った方向に動作可能に配置されており、かつ、カム3は、軸線A1を中心として回転することが不可能に構成されている。例えば、ケーシングに対してカム3はスプライン結合、またはセレーション結合されている。また、前記カム3には貫通孔19が設けられており、前記軸線A1と直交する平面内において、前記貫通孔19の内周面(カム面)20の形状は円形に構成されている。前記軸線A1に沿った方向、つまり、軸線A1を含む平面において、前記貫通孔19の中心線B1と、前記軸線A1とが交点P1で交差する構成を有している。さらに、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させるスライド機構21が設けられている。このスライド機構21は、前記軸線A1に沿った方向の動作力(推力)を前記カム3に与えてそのカム3を動作させ、かつ、カム3を停止させる機構である。カム3が軸線A1に沿った方向に移動すると、前記軸線A1上で交点P1の位置が移動する。このスライド機構21としては、油圧式アクチュエータ、電磁式アクチュエータ、手動式アクチュエータなどを用いることができる。前記油圧式アクチュエータは、油圧室と、この油圧室に設けられたバネなどを有しており、前記油圧室の油圧を制御することにより、前記カム3を軸線A1に沿った方向に動作させることが可能である。前記電磁式アクチュエータは、ソレノイドおよびバネなどを有しており、前記ソレノイドに対する通電量を制御して、磁気吸引力を制御し、その磁気吸引力とバネの力との関係により、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させるものである。前記手動アクチュエータは、手動動作されるレバーの操作力を、ロッド、リンク、ワイヤなどを経由させてカム3に伝達し、そのカム3を軸線A1に沿った方向に動作させる装置である。
【0031】
つぎに、前記ラジアルピストンポンプ1におけるオイルの吸入・吐出作用を説明する。まず、図1において、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1が中心線C1を通過するように、前記軸線A1に沿った方向で前記カム3の位置が停止された場合について説明する。この場合は、前記動力源4のトルクを前記回転軸2に伝達して前記インナーレース5を回転させても、前記ピストン7は前記軸線A1を中心とする半径方向に動作しない。したがって、前記油圧室9にはオイルが吸入されず、かつ、前記油圧室9からオイルが吐出もされない。これに対して、図1において、前記軸線A1に沿った方向で、前記中心線C1から前記交点P1が外れた位置にある場合、具体的には、中心線C1が交点P1よりも右側に位置するように、前記軸線A1に沿った方向における前記カム3の位置が制御された場合を説明する。この場合は、図2に示すように、前記中心線C1上で、前記中心線B1が軸線A1よりも下方に位置する。つまり、軸線A1に対して中心線B1が偏心量e2分だけ離れた位置にある。このため、前記動力源4のトルクを前記回転軸2に伝達して前記インナーレース5を回転させると、前記転動体8が前記内周面20に接触したまま転動し、かつ、前記ピストン7が前記軸線A1を中心として半径方向に動作する。図2においては、便宜上、前記インナーレース5が時計方向に回転するものとして示されている。
【0032】
そして、図2で右側半分に示すように、いずれかのピストン7が最上部に位置する位相から、ピストン7が最下部に位置する位相に至る領域D1では、前記ピストン7が半径方向でシリンダ6から突出する向きで動作する。いずれかのピストン7が最上部に位置した時点では、そのピストン7が前記シリンダ6内で下死点にある。一方、いずれかのピストン7が最下部に位置した時点では、そのピストン7が前記シリンダ6内で上死点にある。そして、前記回転軸2が回転することにともない、前記ピストン7が前記上死点から下死点向けて動作する行程に相当する領域D1では、前記油圧室9が油路105に接続されるとともに、前記油圧室9の容積が拡大されて、油圧室9内が負圧となる。このため、前記オイルパン13のオイルが油路切替バルブ101を経由して前記油圧室9に吸入される。これに対して、図2で左側半分に示すように、前記ピストン7が前記下死点から上死点向けて動作する行程に相当する領域E1では、油圧室9が油路104に接続され、かつ、前記油圧室9の容積が縮小されて油圧室9の圧力が上昇する。このため、前記油圧室9のオイルが油路102および油路12を経由して前記オイル必要部16に供給される。
【0033】
以後、前記回転軸2の回転により、各ピストン7が半径方向に往復動して、各油圧室9ではオイルの吸入・吐出が繰り返される。また、図1ないし図4の構成例では、前記内周面20の中心線B1と、前記インナーレース5の軸線A1とが交差している。このため、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させると、偏心量eが変化する。ここで、前記交点P1を前記中心線C1よりも左側の範囲内で移動させる場合について説明する。まず、前記カム3を図1で右方向に動作させると、前記偏心量e2が減少する。これに対して、前記カム3を図1で左方向に動作させると、前記偏心量e2が増加する。図5は、前記カム3の動作量(スライド量)Sに対する前記偏心量eおよび容量Vの関係を示す特性線図である。なお、動作量Sとは、前記軸線A1に沿った方向で、前記貫通孔19の端部から中心線C1までの距離(長さ)である。ここでは、前記中心線C1が前記交点P1を通過するようにカム3が停止された状態が、スライド量(距離)「零」として示されている。また、容量Vとは、前記ラジアルピストンポンプ1の容量である。より具体的には、前記インナーレース5が軸線A1の回りを1回転する間に各油圧室9から吐出されるオイルの合計体積であり、実際のピストン7のストロークに比例した容量である。すなわち、ピストン7のストロークが大きくなれば容量が増加し、ピストン7のストロークが少なくなれば容量が減少する。さらに、図5において、偏心量「零」とは、軸線A1に沿った方向で、前記中心線C1上に前記交点P1が位置していることを意味する。さらに、図5において、容量「零」とは、ラジアルピストンポンプ1からオイルが吐出されず、かつ、オイルが吸入されないことを意味する。
【0034】
この図5に示すように、前記カム3の動作量が変化することにともない、前記偏心量eおよび前記容量が変化する。具体的には、前記カム3の動作量が増加することにともない、前記偏心量eおよび前記容量が増加する特性を示す。これは、前記偏心量eが増加するほど、前記ピストン7の上死点から下死点までの間のストローク量が長くなるからである。このように、図1ないし図4に示されたラジアルピストンポンプ1は、可変容量型のオイルポンプである。また、図1ないし図4に示された例では、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させることにより、前記ラジアルピストンポンプ1の容量を変更することができる。言い換えれば、軸線A1を中心とする半径方向では、前記カム3の動作スペースを確保せずに済む。したがって、ラジアルピストンポンプ1が前記軸線A1を中心とする半径方向に大型化することを抑制できる。
【0035】
つぎに、具体例1のラジアルピストンポンプ1において、前記カム3の他の動作例を、図6に基づいて説明する。図6に基づいて説明するカム3の他の動作例は、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1が前記中心線C1の右側に位置する場合に相当する。この図6においては、中心線C1上において、軸線A1の上方に中心線B1が偏心している。具体的には、偏心量e1分だけ軸線A1と中心線B1とが離れている。この図6に示すカム3の動作例について、ラジアルピストンポンプ1の作用を、図7に基づいて説明する。この図7は、前記軸線A1と垂直な平面、特に、中心線C1に沿った方向における概念図である。この図7に示すように、前記インナーレース5が時計方向に回転すると、前記油圧室9でオイルの吸入・吐出がおこなわれる。すなわち、前記図7で上死点に位置するピストン7が下死点に移動するまでの行程に相当する領域D1では、前記油圧室9からオイルが吐出される。一方、前記図7で下死点に位置するピストン7が上死点に移動するまでの行程に相当する領域E1では、前記油圧室9にオイルが吸入される。つまり、図1と図6とを比較すると、前記軸線A1上で、交点P1と中心線C1との位置が左右逆になっているため、前記インナーレース5の回転方向が同じであっても、前記油圧室9におけるオイルの吸入・吐出が逆転(反転)する。
【0036】
この油圧室9におけるオイルの吸入・吐出機能を、図8の特性線図に基づいて説明する。図8においては、前記カム3のスライド量Sに対応するインナーレース5の偏心量eが示され、かつ、その偏心量eに対応する容量Vが示されている。また、図8においては、前記軸線B1に対する前記インナーレース5の偏心方向が別個に示されている。図8において、偏心方向(上)は、前記中心線B1よりも軸線A1が上に配置されている状態、つまり、図1におけるカム3の位置に相当する。これに対して、図8において、偏心方向(下)は、前記中心線B1よりも軸線A1が下に配置されている状態、つまり、図6におけるカム3の位置に相当する。また、図8に示されたスライド量、偏心量、容量の技術的意味は、図5で説明した意味と同じである。この図8に示すように、軸線A1に沿った方向で、中心線C1が交点P1を通過する位置にある場合は、偏心量「零」、容量「零」である。一方、図1に示すように、軸線A1に沿った方向で、中心線C1が交点P1よりも右側に位置する場合は、図8に示すように、スライド量S2であり、スライド量の増加にともない偏心量e2が増加し、かつ、容量が増加する特性となる。これに対して、図6に示すように、軸線A1に沿った方向で、中心線C1が交点P1よりも左側に位置する場合は、スライド量S1であり、スライド量の減少にともない偏心量e1が増加し、かつ、容量が増加する特性となる。なお、スライド量S1はスライド量S2よりも少ない。
【0037】
(具体例2)
つぎに、ラジアルピストンポンプ1の具体例2を図9に基づいて説明する。この具体例2においては、隔壁107と動力源4との間に隔壁100が配置されている。隔壁107の技術的意味は、隔壁100の場合と同じである。そして、隔壁100と隔壁107との間の空間に、ラジアルピストンポンプ1に加えて、ラジアルピストンモータ35が設けられている。この具体例2において、ラジアルピストンポンプ1の一部を構成する油路切替バルブ101が、隔壁100から突出されている向きが、具体例1とは異なる。この具体例2では、隔壁100から隔壁107に向けて油路切替バルブ101が突出して取り付けられている。また、油路切替バルブ101は軸孔108を有しており、この軸孔108内に出力軸2が配置されている。そして、出力軸2と一体回転するインナーレース5が設けられており、そのインナーレース5の端面と、油路切替バルブ101の端面とが接触されている。この具体例2において、ラジアルピストンポンプ1のその他の構成および機能は、具体例1の場合と同様である。
【0038】
つぎに、ラジアルピストンモータ35の構成を説明する。このラジアルピストンモータ35は、インナーレース26および前記カム3を有している。つまり、カム3は、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35により共用されている。また、軸線A1に沿った方向で、インナーレース5と隔壁107との間にインナーレース26が配置されている。また、インナーレース26の外周には、円周方向に沿って複数のシリンダ27が形成されている。図10は、軸線A1と垂直な平面内における断面図、特に、軸線A1に沿った方向でインナーレース26の厚さ方向の中心を通過する平面内における断面図である。図10に示す例では、シリンダ27が8箇所形成されている。各シリンダ27は、インナーレース26の外周面に開口された円柱形状の凹部もしくは窪みである。そして、各シリンダ27内にはピストン28が各々配置されており、各ピストン28は、中心線F1に沿った平面内で、前記軸線A1を中心として半径方向に動作可能である。また各ピストン28には転動体29が取り付けられている。この転動体29はボールを用いることが可能である。一方、前記シリンダ27内には油圧室30が形成されている。この油圧室30の油圧が前記ピストン28の底面に加えられる。
【0039】
前記油圧室30に接続された油圧回路の構成を、図9に基づいて説明する。前記隔壁107には、吸入油路109および吐出油路110が設けられている。また、前記吸入油路109が前記吐出油路12に接続され、前記吐出油路110が前記吸入油路11に接続されている。このように、具体例2においては、具体例1で説明したオイルパン13およびオイル必要部16は設けられていない。また、前記隔壁107には油路切替バルブ111が取り付けられている。この油路切替バルブ111は、軸線A1を中心とする円筒形状に構成されており、油路切替バルブ111は軸孔150を有する。この油路切替バルブ111は、隔壁107に対して回転不可能に、かつ、軸線A1に沿った方向には移動不可能に固定されている。具体的には、隔壁107に設けられた孔に対して、油路切替バルブ111が圧入固定されている。この油路切替バルブ111は隔壁107からインナーレース26に近づく向きで突出している。そして、油路切替バルブ111には油路112,113が設けられており、油路113が吐出油路110に接続され、油路112が吸入油路109に接続されている。また、前記軸線A1に沿った方向における油路切替バルブ111の端面、具体的には、前記インナーレース26に近い側の端面には、油路114,115が形成されている。図11は、油路切替バルブ111の端面図であり、油路114,115は、軸線A1を中心として共に円弧形状に構成されている。また、油路114の周長と油路104の周長とが同一に構成され、油路115の周長と油路105の周長とが同一に構成されている。さらに、円周方向における油路114の配置位相と、円周方向における油路104の配置位相とが一致している。また、円周方向における油路115の配置位相と、円周方向における油路105の配置位相とが一致している。そして、油路114が油路112と接続され、油路115が油路113と接続されている。
【0040】
一方、前記インナーレース26には、前記油圧室30に接続された油路116が設けられている。油路116は、油圧室30にそれぞれ独立して複数設けられており、各油路116が、インナーレース26の円周方向に等間隔で配置されている。そして、各油路116は、インナーレース26の端面、具体的は油路切替バルブ111に接触した側の端面に開口されている。各油路116の開口部と同一円周上に、前記油路114,115が配置されている。さらに、インナーレース26の端面と油路切替バルブ111の端面とが接触した状態で、インナーレース26と油路切替バルブ111とが相対回転することが可能となるように、インナーレース26が出力軸25に取り付けられている。この出力軸25は油路切替バルブ111の軸孔150内に配置されており、出力軸25は軸線A1を中心として回転可能である。また、出力軸25とインナーレース26とが一体回転可能に接続、例えばスプライン結合されている。また、出力軸25およびインナーレース26は軸線A1に沿った方向には移動することが不可能となるように、軸受、およびスナップリング等(図示せず)により支持されている。したがって、インナーレース26が回転している場合、または停止している場合のいずれにおいても、単一の油路116は、油路114または油路115の何れか一方に対して接続される。さらに、インナーレース26が回転すると、単一の油路116が油路114に接続された状態と、油路116が油路115に接続された状態とが交互に切り替わる。このように、油路切替バルブ111は、油圧室30を、吐出油路12または吸入油路11に対して選択的に接続する機構である。また、油路切替バルブ111は、インナーレース26の回転により、油圧室30に対して接続される油路が切り替わるロータリバルブである。
【0041】
上記のように構成されたインナーレース26、ピストン27、転動体29、内周面20、出力軸25、油路112,113,114,115、吸入油路109、吐出油路110などの構成により、ラジアルピストンモータ(油圧モータ)35が構成されている。なお、ラジアルピストンポンプ1における油圧室9の最大容積および最小容積は、ラジアルピストンモータ35における油圧室30の最大容積および最小容積と同じである。また、図9においては、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1からカム3の端部(端面)3Aの間に、中心線F1が配置されており、前記交点P1からカム3の端部(端面)3Bの間に、中心線C1が配置されている。この構成例では、前記端部3Bの方が端部3Aよりも動力源4に近い位置に配置されている。さらに、この具体例2においても、カム3を軸線A1に沿った方向に移動させ、かつ、停止させる機能を有するスライド機構21が設けられている。
【0042】
つぎに、この具体例2におけるラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35の作用を説明する。この具体例2においては、前記軸線A1に沿った方向で、前記中心線C1と前記中心線F1との距離は一定である。そして、具体例2においても、具体例1と同様にして前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させ、かつ、停止させることが可能である。そして、この具体例2においては、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1を隔てた両側に中心線C1と中心線F1とが配置されている。つまり、前記カム3が前記軸線A1に沿った方向に動作すると、図9において、前記交点P1の右側の領域で中心線C1が移動し、前記交点P1の左側の領域で中心線F1が移動する。そして、前記動力源4のトルクが前記回転軸2に伝達されて回転軸2が回転すると、具体例1と同様の原理により、前記ピストン7が上昇・下降する。すなわち、油路103を経由して油圧室9にオイルが吸入され、かつ、油圧室9から油路102にオイルが吐出される。なお、この具体例2においては、後述するように、油圧室9と油圧室30との間でオイルが行き来する。
【0043】
つぎに、前記ラジアルピストンモータ35の作用を、図12に基づいて説明する。この図12は、軸線A1と垂直な平面、特に、中心線F1に沿った方向の概略的な側面図である。前記インナーレース26の軸線A1は、前記中心線B1よりも下方に位置している。そして、前記ピストン28が下死点を通過すると、そのピストン28に相当する油圧室30に対して、前記油圧室9から吐出された圧油が供給される。すると、油圧室30の油圧が上昇して、前記ピストン28を押し出す向きの力が発生し、その力が前記内周面20に伝達される。すると、その反力で前記インナーレース26を図12で時計方向に回転させようとする向きのトルクが発生する。このようにして、前記インナーレース26が回転すると、前記ピストン28が下死点に位置する時点から、前記ピストン28が上死点に位置するまでの領域G1では、前記油圧室30へ圧油が供給される。
【0044】
これに対して、前記ピストン28が上死点にある位置から、下死点に移動する行程に相当する領域H1では、前記油圧室30から圧油が吐出され、その圧油は、上昇行程にあるピストン7を有する油圧室9に吸入される。このようにして、前記ラジアルピストンポンプ1から吐出されたオイルがラジアルピストンモータ35に供給されて、そのラジアルピストンモータ35が駆動される。すなわち、油圧室9と油圧室30との間で、油路102,103,112,113、および吐出油路12,110、および吸入油路11,109を介して圧油が循環する。この具体例2において、前記軸線A1上の所定位置J1から、前記カム3の端部3Bまでの距離をスライド量Sとし、図9でカム3が左側に移動するほどスライド量Sが増加することとした場合、前記カム3のスライド量S、前記ラジアルピストンポンプ1における偏心量e、前記ラジアルピストンポンプ1における容量Vの特性は、前記図5の特性と同じである。これに対して、前記カム3のスライド量S、前記ラジアルピストンモータ35における偏心量e、前記ラジアルピストンモータ35の容量Vの特性を、図14に基づいて説明する。この図14に示すように、スライド量Sが少なくなるほど、前記偏心量eが増加し、かつ、容量Vが増加する特性を示す。偏心量eとは、中心線F1上において、軸線A1と中心線B1との距離である。
【0045】
そして、この具体例2においては、前記カム3を軸線A1に沿った方向に動作させることにより、ラジアルピストンポンプ1の容量およびラジアルピストンモータ35の容量を共に変更することができる。つまり、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が、回転軸2と出力軸25との間における変速比を変更可能な変速機として機能する。特に、回転軸2と出力軸25との間における変速比を無段階(連続的)に制御することができ、無段変速機として機能する。ここで、変速比は、入力回転数を出力回転数で除して求められ、変速比は、ラジアルピストンモータ35の容量V2を、ラジアルピストンポンプ1の容量V1で除した値に等しい。具体的に説明すると、図8のように、前記インナーレース5における偏心量e1の方が、前記インナーレース26における偏心量e2よりも大きい場合、ラジアルピストンポンプ1の容量V1の方が、ラジアルピストンモータ35の容量V2よりも大きくなる。このとき、変速比は「1」未満であり、前記回転軸2の回転数よりも前記出力軸25の回転数の方が高くなり、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が増速機として機能する。ここで、変速比γは次式(1)により表される。
変速比γ=V2/V1=(e2/e1)<1 ・・・(1)
【0046】
これに対して、前記インナーレース27における偏心量e2の方が、前記インナーレース5における偏心量e1よりも大きい場合、ラジアルピストンポンプ1の容量V1の方が、ラジアルピストンモータ35の容量V2よりも少なくなる。このとき、変速比は「1」を越え、前記回転軸2の回転数よりも前記出力軸25の回転数の方が低くなり、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が減速機として機能する。ここで、変速比γは次式(2)により表される。
変速比γ=V2/V1=(e2/e1)>1 ・・・(2)
【0047】
また、具体例2では、前記カム3を軸線A1に沿った方向に動作させることにより、前記ラジアルピストンポンプ1の容量V1および前記ラジアルピストンモータ35の容量V2を連続的に変更可能であるから、前記ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が、無段変速機として機能する。ここで、前記カム3のスライド量Sと変速比γとの関係を、図14に基づいて説明する。前記偏心量e1と偏心量e2とが同一となるスライド量Sでは、前記変速比γは「1」となる。また、偏心量e1が偏心量e2未満となるスライド量Sの場合は、前記変速比γが「1」未満となる。これに対して、偏心量e2が偏心量e1を越えるスライド量Sの場合は、前記変速比γが「1」を越える。なお、この具体例2において、前記回転軸2の回転方向と、前記出力軸25の回転方向とが同一である。
【0048】
つぎに、具体例2で説明したラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35において、カム3の他の動作例を、図15に基づいて説明する。この図15は、カム3を動作させて、前記交点P1の片側(図15の左側の範囲)に、前記中心線C1,F1を共に位置させる動作例である。つまり、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1から前記端部3Aの間に前記中心線F1,C1が共に配置されている。さらに、前記ラジアルピストンモータ35における偏心量e2は、ラジアルピストンモータ1における偏心量e1よりも大きい。さらに、カム3を図15に示す位置に動作させた場合における、ラジアルピストンモータ1およびラジアルピストンモータ35の作用を説明する。図15に示すように、前記交点P1の片側に、前記中心線C1,F1を共に配置した場合において、前記インナーレース5が図2に示すように時計方向に回転すると、ラジアルピストンポンプ1でおこなわれるオイルの吸入・吐出作用は、図7で説明した場合と同様である。
【0049】
これに対して、前記ラジアルピストンモータ35の作用を図16に基づいて説明する。図16は、軸線A1と垂直な平面、具体的には、中心線F1に沿った方向における平面におけるラジアルピストンモータ35の概略的な側面図である。この図16において、前記ピストン28が下死点から上死点に動作する領域H1では、前記油圧室9から吐出された圧油が油圧室30に供給されて、ピストン28が外側に押圧されるため、前記インナーレース26を図16で反時計方向に回転させる向きのトルクが発生する。また、ピストン28が上死点から下死点に動作する範囲G1では、前記油圧室30から圧油が吐出され、その圧油が、上昇行程にあるピストン7を有する油圧室9に吸入される。このように、図15に示されたカム3の動作例では、前記回転軸2が時計方向に回転するのに対して、前記出力軸25は反時計方向に回転する(逆回転する)。また、前記回転軸2の回転方向に対して、前記出力軸25の回転方向を逆にする場合、前記回転軸2と前記出力軸25との間における変速比は、前記式(2)により表される。すなわち、前記回転軸2の回転数よりも前記出力軸25の回転数の方が低くなる。つまり、前記ラジアルピストンポンプ1および前記ラジアルピストンモータ35が、減速機として機能する。
【0050】
上記の具体例1および具体例2は、請求項1ないし4、および請求項7および請求項8に係る発明に対応するものであり、具体例1および具体例2の構成と、請求項1ないし4、および請求項7および請求項8の構成との対応関係を説明すると、カム3が、この発明の外周側部材に相当し、インナーレース5が、この発明の内周側部材に相当し、インナーレース26が、この発明の動力伝達部材に相当し、内周面20が、この発明のカム面に相当し、ピストン7および転動体8が、この発明のピストンに相当し、ピストン28および転動体29が、この発明の第2ピストンに相当し、油圧室9が、この発明の流体室に相当し、油圧室30が、この発明の第2流体室に相当し、前記スライド機構21が、この発明の容量調整機構に相当し、ケーシング100が、この発明における固定構造物に相当し、油路102および吐出油路12および吸入油路109および油路112が、この発明の第1通路に相当し、油路111および吐出油路110および吸入油路11および油路103が、この発明の第2通路に相当する。さらに、具体例2は、この発明の請求項5および請求項6に対応しており、具体例2の構成と、請求項5および請求項6の構成との対応関係を説明すると、カム3が、この発明の外周側部材に相当し、インナーレース26が、この発明の内周側部材に相当する。なお、具体例2の構成において、その他の構成と、請求項5および請求項6の構成との関係は、具体例1の構成と、請求項1ないし4の構成との対応関係と同じである。上記のラジアルピストンポンプ1は、家屋、工場、建築物などに固定して設置されるオイル輸送機器(流体装置)として用いることが可能である。また、前記ラジアルピストンポンプ1を、動力源の動力を被駆動部材に伝達する、動力伝達装置またはクラッチとして用いることも可能である。例えば、車両の動力源から車輪に至る動力伝達経路に配置することが可能であり、その一例を図17に基づいて説明する。図17は、車両のパワートレーンを示す概念図であり、動力源4から車輪36に至る経路に、ラジアルピストンポンプ1を設けることが可能である。また、前記ラジアルピストンポンプ1から車輪36に至る経路には変速機37が設けられている。さらに、変速機37から車輪36に至る動力伝達経路には終減速機38が設けられている。すなわち、前記カム3を前記変速機37の入力部材に対して動力伝達可能に接続されている。この場合、前記カム3は固定ではなく回転可能である。この変速機37は、入力回転数と出力回転数との間の変速比を変更可能な動力伝達装置であり、変速機37は、有段変速機または無段変速機のいずれでもよい。有段変速機とは、変速比を段階的(不連続)に変更可能な変速機である。無段変速機とは、変速比を無段階(連続的)に変更可能な変速機である。有段変速機としては、遊星歯車式変速機、選択歯車式変速機などを用いることができる。無段変速機としては、ベルト式無段変速機、トロイダル型無段変速機を用いることが可能である。
【0051】
そして、前記動力源4から車輪36に伝達されるトルクにより前記ラジアルピストンポンプ1が駆動されてオイルの吸入・吐出がおこなわれる。また、前記転動体8と内周面20との係合力に基づいて、前記回転軸2から前記カム3にトルクが伝達される。さらに、前記カム3のスライド量、前記ラジアルピストンポンプ1の油圧室9に吸入されるオイルの流量、油圧室9から吐出されるオイルの流量などの条件を制御することにより、前記回転軸2から前記カム3を経由して前記変速機37に伝達されるトルクを制御することが可能である。一方、前記変速機37として無段変速機を用いる場合、前記ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35の両方を配置し、前記具体例2のようにカム3の動作を制御することにより、出力軸25の回転方向を正逆に切り換えれば、前記ラジアルピストンポンプ1および前記ラジアルピストンモータ34を、前後進切換装置として機能させることが可能である。すなわち、シフトポジションの操作に基づいて、前記カム3の動作を制御することとなる。具体的には、車両を前進させるシフトポジションが選択された場合、図9に基づいて説明したように、カム3の動作が制御される。これに対して、車両を後退させるシフトポジション(リバース)が選択された場合は、図15に基づいて説明したように、カム3の動作が制御される。
【0052】
ここで、スライド機構21として油圧式アクチュエータまたは電磁式アクチュエータが用いられている場合、シフトポジションが電子制御装置で検知されると、電子制御装置の制御信号に基づいてスライド機構21が制御される。一方、スライド機構21として手動式アクチュエータが用いられている場合、シフトレバーの操作力が、リンク、ワイヤ、ロッドなどを経由してスライド機構21に伝達され、カム3が動作する。なお、前述のように、ラジアルピストンモータ35は無段変速機としての機能を有しているため、ラジアルピストンポンプ35を用いる場合は、変速機37自体を設けなくともよい。さらに、この発明のラジアルピストンポンプは、動力源から車輪に至る動力伝達経路に配置する場合、車両のフロアーの下方空間にケーシングが配置することが可能である。これに対して、ラジアルピストンポンプを、車両のエンジンルーム内に配置することも可能である。なお、各構成例では、前記インナーレースが軸線方向には移動不可能(固定して)に配置されており、前記カムが軸線方向に動作可能に構成されているが、前記インナーレースが軸線方向に移動可能に設けられ、前記カムが軸線方向に移動不可能(固定)配置されている構成であっても、各構成例と同様の効果を得られる。さらに、この発明を車両に用いる場合、前記車輪は前輪または後輪のいずれでもよいし、動力源の動力が前輪および後輪の両方に伝達されるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明のラジアルピストンポンプの具体例1を示し、軸線に沿った方向の断面図である。
【図2】図1に示されたラジアルピストンポンプにおいて、軸線と垂直な平面内における断面図である。
【図3】図1に示された油路切替バルブの構成を示す端面図である。
【図4】図1に示すラジアルピストンポンプに接続された油圧回路の構成を示す概念図である。
【図5】図1に示されたラジアルピストンポンプのカムのスライド量と、ラジアルピストンポンプの容量との関係の一例を示す特性線図である。
【図6】図1に示されたラジアルピストンポンプにおいて、カムの他の動作例を示す断面図である。
【図7】図6に示されたカムの動作例において、インナーレースの位相に対するオイルの吸入・吐出の関係を示す概念図である。
【図8】図1に示されたカムの動作例、および図6に示されたカムの動作例ついて、カムのスライド量および容量を説明する特性線図である。
【図9】この発明の具体例2を示し、ラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータの断面図である。
【図10】図9に示されたラジアルピストンモータの側面断面図である。
【図11】図9に示されたラジアルピストンモータの油路切替バルブの端面図である。
【図12】図9に示されたラジアルピストンモータにおけるオイルの吸入・吐出行程を示す概念図である。
【図13】図9に示されたラジアルピストンモータにおけるカムのスライド量と、容量との関係を示す線図である。
【図14】図9に示されたラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータにおける変速比の制御特性を示す図である。
【図15】図9に示されたラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータにおいて、カムの他の動作例を示す断面図である。
【図16】図15に示されたラジアルピストンモータのピストンの位相と、油圧室におけるオイルの吸入・吐出との関係を示す概念図である。
【図17】この発明を用いることの可能な車両のパワートレーンを示す概念図である。
【符号の説明】
【0054】
1…ラジアルピストンポンプ、2…回転軸、3…カム、5,26…インナーレース、7,28…ピストン、8,29…転動体、9,30…油圧室、20…内周面、21…スライド機構、25…出力軸、35…ラジアルピストンモータ、A1…軸線、B1…中心線、100…ケーシング、102,103,111,112…油路、12,110…吐出油路、11,109…吸入油路。
【技術分野】
【0001】
この発明は、外周側部材と内周側部材とを相対回転させることにより、ピストンを前記部材の半径方向に動作させて、流体室に流体を吸入・吐出するラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外周側部材と内周側部材とを相対回転させることにより、ピストンを前記部材の半径方向に動作させて、油室にオイルを吸入・吐出するラジアルピストンポンプが知られており、そのラジアルピストンポンプを有する無段変速機の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1においては、ミッションケース内に、入力軸および出力軸が同軸上に、かつ、相対回転可能に配置されている。また、入力軸にはシリンダボディが取り付けられており、そのシリンダボディの外周面には、放射状に第1、第2シリンダ孔が設けられている。さらに、第1シリンダ孔には第1プランジャが摺動自在に配置されており、第2シリンダ孔には第2プランジャが摺動自在に配置されている。さらに、第1、第2シリンダ孔には、それぞれポンプポートが開口されている。一方、前記ミッションケースには第1ポンプリングが取り付けられており、この第1ポンプリングは前記シリンダボディを取り囲むように配置されている。また、前記第1ポンプリングは、前記入力軸と平行な枢軸を介して、前記ミッションケースにより揺動自在に支持されている。一方、前記出力軸には第2ポンプリングが設けられており、前記シリンダボディに対して一側方へ所定距離偏心するように配置されている。
【0003】
上記の第1シリンダ孔、第1プランジャ、第1ポンプリングなどにより、第1油圧ポンプが構成され、上記の第2シリンダ孔、第2プランジャ、第2ポンプリングなどにより、第2油圧ポンプが構成されているとともに、第1シリンダ孔と第2シリンダ孔とが接続されている。そして、前記入力軸を回転させると、前記第1プランジャの先端が前記第1ポンプリングの内周面に接触した状態で、前記第1プランジャが入力軸の半径方向に往復移動し、オイルの吸入・吐出がおこなわれる。さらに、前記シリンダボディに対する前記第1ポンプリングの偏心方向および偏心量を変えることにより、第2油圧ポンプの吸入吐出量域を反転させたり、その容量を調節できるものとされている。なお、ピストンを回転部材の半径方向に動作させるとともに、半径方向におけるピストンのストロークを可変としたトルク伝達装置が、特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−303526号公報
【特許文献2】特開平2−120520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されているラジアルピストンポンプにおいては、前記シリンダボディに対して前記第1ポンプリングを半径方向に稼働させる必要があるため、ラジアルピストンポンプが回転部材の半径方向に大型化する恐れがあった。
【0006】
この発明は上記事情を背景としてなされたものであって、軸線を中心とする半径方向に大型化することを抑制可能なラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能であり、かつ、内外周に配置された外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と内周側部材とが相対回転して前記ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される流体室とを有し、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更可能な構成を備えたラジアルピストンポンプにおいて、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記カム面の中心線とが交差しており、「前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更する容量調整機構」が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内における前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構を含むことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記軸線を中心として前記内周側部材と相対回転可能に設けられた動力伝達部材と、この動力伝達部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能な第2ピストンと、前記動力伝達部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と動力伝達部材とが相対回転して前記第2ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される第2流体室と、前記流体室から吐出された流体を前記第2流体室に供給する第1通路と、前記第2流体室から吐出された流体を前記流体室に供給する第2通路とを備えたラジアルピストンモータが設けられている。請求項3の発明において、このラジアルピストンモータは、前記流体室から前記第2流体室に流体が供給されて前記第2ピストンが半径方向の外側に向けて動作する場合に、前記第2ピストンが前記カム面に押し付けられた場合の反力で、前記動力伝達部材を前記軸線を中心として回転させる向きのトルクが発生するように構成されている。さらに、請求項3の発明において、前記容量調整機構は、「前記外周側部材と前記動力伝達部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記軸線を中心とする半径方向で前記第2ピストンのストロークを変更する機構」を含むことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、
前記容量調整機構は、
(a)前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプおよび前記ラジアルピストンモータを配置する状態と、
(b)前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプを配置し、かつ、前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの他端部までの間に、前記ラジアルピストンモータを配置する状態と
を切り替え可能な機構を含むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能に設けられ、かつ、内外周に設けられた外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に接触して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、流体が供給される流体室とを有し、前記流体室に流体を供給して前記ピストンを半径方向で外側に向けて動作させることにより、前記カム面で発生する反力で前記内周側部材を回転させる向きのトルクを生じさせるとともに、前記流体室の容量を変更可能なラジアルピストンモータにおいて、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差しており、「前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記流体室の容量を変更する容量調整機構」が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5の構成に加えて、前記容量調整機構は、「前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構」を含むことを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の構成は、請求項3または4の構成に加えて、前記容量調整機構は、「前記軸線に沿った方向の平面内で、前記外周側部材を内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることにより、前記内周側部材の回転数と動力伝達部材の回転数の比である変速比を、無段階に変更可能な構成を有している」ことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の構成は、請求項3または4の構成に加えて、前記外周側部材および内周側部材および動力伝達部材を取り付けた固定構造物が設けられており、前記内周側部材および動力伝達部材は前記軸線に沿った方向には動作することが不可能な状態で前記固定構造物に支持されており、前記外周側部材は前記軸線に沿った方向に動作可能に構成されており、前記容量調整機構は、「前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記外周側部材を、前記内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させる構成を有している」ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、軸線を中心として外周側部材と内周側部材とが相対回転すると、カム面に接触した状態でピストンが半径方向に往復動し、流体室に流体が吸入・吐出される。また、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させると、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更することができる。したがって、前記軸線を中心とする半径方向に、ラジアルピストンポンプが大型化することを抑制できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記軸線を中心とする円周方向で、前記流体室に流体が吸入される位相と、前記流体室から流体が吐出される位相とを反転させることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記流体室から吐出された流体が第2流体室に供給され、かつ、前記第2流体室から吐出された流体が前記流体室に供給される。そして、前記流体室から前記第2流体室に流体が供給されて前記第2ピストンが半径方向の外側に向けて動作する場合に、前記第2ピストンが前記カム面に押し付けられ、その反力で前記動力伝達部材を前記軸線を中心として回転させる向きのトルクが発生する。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、外周側部材の回転方向に対して、動力伝達部材の回転方向を正逆に切替可能である。
【0019】
請求項5の発明によれば、流体室に流体を供給することによりピストンをカム面に押し付け、その反力で外周側部材を回転させる向きのトルクが発生する。また、カムを軸線に沿った方向に動作させることにより、流体室の容量を変更することができ、ラジアルピストンモータが半径方向に大型化することを抑制できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、ラジアルピストンモータの内周側部材の回転方向の位相で、オイルの吸入領域と吐出領域とを逆にする(反転させる)ことができ、内周側部材を正転・逆転させることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、請求項3または4の発明と同様の効果を得られる他に、軸線に沿った方向の平面内で、前記外周側部材を内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることにより、前記内周側部材の回転数と動力伝達部材の回転数の比である変速比を、無段階に変更可能である。
【0022】
請求項8の発明によれば、請求項3または4の発明と同様の効果を得られる他に、外周側部材を軸線に沿った方向に動作させることにより、外周側部材を、内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明において、外周側部材と内周側部材とが相対回転可能である。例えば、何れか一方が回転可能であり、他方が固定されている(回転不可能)第1の構成、または、外周側部材および内周側部材の両方が、共に回転可能である第2の構成のいずれでもよい。さらに上記第1の構成と第2の構成とを切り替えることが可能であってもよい。そして、外周側部材または内周側部材の何れか一方が、動力源に対して動力伝達可能に連結され、前記動力源の動力が前記一方の部材に伝達されて、外周側部材と内周側部材とが相対回転する。ここで、前記動力源に連結される一方の部材は、カム面が設けられている部材、またはピストンが設けられている部材の何れでもよい。また、前記動力源は、熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置、電気エネルギを運動エネルギに変換する動力装置、流体の運動エネルギを回転軸の運動エネルギに変換する動力装置などのいずれであってもよい。また、この発明において、ピストンは軸線を中心とする半径方向に動作するピストンであり、形状、長さなどは問われず、ピストン、プランジャなどにより構成される。
【0024】
また、この発明におけるラジアルピストンポンプを車両に搭載することが可能である。例えば、駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に、前記ラジアルピストンポンプを配置することが可能である。さらに、この発明において、容量調整機構は、各部材同士を前記軸線に沿った方向に相対移動させる動力を発生するアクチュエータであり、例えば、油圧式アクチュエータ、電磁式アクチュエータ、手動式アクチュエータなどを用いることができる。油圧式アクチュエータは、油圧室の油圧を制御することにより、各部材同士を相対移動させる動作力が制御されるように構成される。電磁式アクチュエータは、磁気吸引力を制御することにより、各部材同士を相対移動させる動作力が制御されるように構成される。手動式アクチュエータは、人間の操作力がリンク、ワイヤ、ロッドなどを経由して伝達されて動作力が発生するように構成される。また、容量調整機構は、前記軸線を中心とする半径方向でのピストンのストローク量を制御して、ラジアルピストンポンプの容量を変更する。
【0025】
さらに、この発明におけるラジアルピストンモータは、流体の運動エネルギを回転部材の運動エネルギに変換する流体式モータである。また、この発明のラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータにおいて、回転可能に設けられる部材は、トルク伝達可能な部材であり、例えば、回転軸、回転円板、キャリヤ、ギヤ、コネクティングドラムなどが含まれる。また、回転不可能に固定される部材には、ケーシング、ハウジング、フレーム、ボス部、ブラケット、隔壁などが含まれる。さらに、この発明において、通路とは、流体が流通する経路であり、流路(油路)、ポート、バルブ自体、バルブ内部の通路、溝、窪みなどが含まれる。また、この発明において、流体は非圧縮性の流体であり、具体的には液体、例えば、オイル、冷却液、水などが含まれる。さらに、オイルには、焼き付き・発熱・摩耗・摺動する部位を潤滑・冷却する潤滑油、油圧機器・流体機械を動作させる作動油が含まれる。この発明における固定構造物は、ラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータが取り付けられるか、またはラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータを収容する要素であり、固定構造物は、軸線に沿った方向に移動することが不可能に配置される。この固定構造物には、ケーシング、ハウジング、ブラケット、枠部材、フレーム部材、壁部材などが含まれる。以下、この発明におけるラジアルピストンポンプの具体例を、図面に基づいて説明する。
【0026】
(具体例1)
図1は、ラジアルピストンポンプ1の具体例1を示し、このラジアルピストンポンプ1は、固定構造物、例えば、ケーシング100内に設けられている。ラジアルピストンポンプ1は回転軸2およびカム3を有している。前記回転軸2とカム3とは、軸線A1を中心として相対回転可能に構成されている。前記軸線A1は略水平に配置されており、図1は、軸線A1に沿った方向における断面図である。前記回転軸2には、動力源4が動力伝達可能に接続されている。この動力源4としては、熱エネルギを運動エネルギに変換するエンジン、または、電気エネルギを運動エネルギに変換する電動機などを用いることができる。また、前記動力源4から前記回転軸2に至る経路にクラッチ(図示せず)を設けることも可能である。また、この回転軸2と一体回転する構成のインナーレース5が設けられている。図2は、軸線A1と垂直な平面内における断面図、特に、軸線A1に沿った方向でインナーレース5の厚さ方向の中心を通過する平面内における断面図である。このインナーレース5は、軸線A1を中心として環状に構成されており、そのインナーレース5の外周には、円周方向に沿って複数のシリンダ6が配置されている。図2に示す例では、シリンダ6が8箇所形成されている。各シリンダ6は、インナーレース5の外周面に開口された円柱形状の凹部もしくは窪みである。そして、各シリンダ6内にはピストン7が各々配置されており、各ピストン7は、中心線C1に沿った平面内で、前記軸線A1を中心として半径方向に動作可能である。また各ピストン7には転動体8が取り付けられている。この転動体8はボールを用いることが可能である。一方、前記シリンダ6内には油圧室9が形成されている。この油圧室9には、圧縮コイルばね10が設けられており、前記ピストン7を前記シリンダ6の外に押し出す向きの力が、圧縮コイルばね10からピストン7に加えられる。
【0027】
前記油圧室9に接続された油圧回路の構成を、図1および図3および図4に基づいて説明する。前記ケーシング100には、吸入油路11および吐出油路12が設けられている。なお、図1に示されているケーシング100は、具体的にはケーシング100の一部を構成する隔壁、カバーなどであり、これらの隔壁、カバーは、軸線A1に対して垂直な方向に延ばされているか、または張り出している。隔壁、カバーは、ケーシング100の内部と外部とを区画する要素、またはケーシング100の内部に形成された空間同士を区画する要素のいずれでもよい。以下、ケーシング100に代えて、便宜上「隔壁100」と記す。そして、軸線A1に沿った方向で、動力源4と隔壁100との間に、前記カム3およびインナーレース5が配置されている。また、前記吸入油路11はオイルパン13に接続されている。オイルパン13は、ケーシングの内部またはケーシングの外部に設けられたオイル溜めである。一方、前記吐出油路12はオイル必要部16に接続されている。このオイル必要部16では、オイルを潤滑油として用いたり、制御機器の作動油として用いる。オイル必要部16には、ケーシング内またはケーシングの外部に設けられた油圧室、ケーシング内に設けられた動力伝達装置、具体的にはギヤ同士の噛み合い部、チェーンとスプロケットとの噛み合い部、プーリとベルトとの接触部などが含まれる。またオイル必要部には、オイルにより潤滑・冷却される軸受が含まれる。
【0028】
また、前記隔壁100には油路切替バルブ101が取り付けられている。この油路切替バルブ101は、軸線A1を中心とする円筒形状に構成されており、隔壁100に対して、油路切替バルブ101が回転不可能に、かつ、軸線A1に沿った方向にも移動不可能に固定されている。具体的には、隔壁100に設けられた孔に対して、油路切替バルブ101が圧入固定されている。そして、油路切替バルブ101には油路102,103が設けられており、油路102が吐出油路12に接続され、油路103が吸入油路11に接続されている。また、前記軸線A1に沿った方向における油路切替バルブ101の端面、具体的には、前記インナーレース5に近い側の端面には、油路104,105が形成されている。図3は、油路切替バルブ101の端面図であり、油路104,105は、軸線A1を中心として共に円弧形状に構成されている。より具体的には、油路104,105は、共に略半円形状を有している。そして、油路104が油路102と接続され、油路105が油路103と接続されている。
【0029】
一方、前記インナーレース5には、前記油圧室9に接続された油路106が設けられている。油路106は、油圧室9にそれぞれ独立して複数設けられており、各油路106が、インナーレース5の円周方向に等間隔で配置されている。そして、各油路106は、インナーレース5の端面、具体的は油路切替バルブ101に接触した側の端面に開口されている。各油路106の開口部と同一円周上に、前記油路104,105が配置されている。さらに、インナーレース5の端面と油路切替バルブ101の端面とが接触した状態で、インナーレース5と油路切替バルブ101とが相対回転することが可能となるように、インナーレース5が回転軸2に取り付けられている。インナーレース5と回転軸2とが一体回転するように連結、具体的にはスプライン結合されている。また、回転軸2およびインナーレース5は軸線A1に沿った方向には移動することが不可能となるように、軸受、およびスナップリング等(図示せず)により支持されている。したがって、インナーレース5が回転している場合、または停止している場合のいずれにおいても、油路106は油路104または油路105に対して接続することが可能である。さらに、インナーレース5が回転すると、油路106が油路104に接続された状態と、油路106が油路105に接続された状態とが交互に切り替わる。このように、油路切替バルブ101は、油圧室9を、油路104または油路105に対して選択的に接続する機構である。また、油路切替バルブ101は、インナーレース5の回転により、油圧室9に対して接続される油路が切り替わるロータリバルブである。
【0030】
前記カム3の構成を説明する。このカム3は前記ケーシング内に、前記軸線A1に沿った方向に動作可能に配置されており、かつ、カム3は、軸線A1を中心として回転することが不可能に構成されている。例えば、ケーシングに対してカム3はスプライン結合、またはセレーション結合されている。また、前記カム3には貫通孔19が設けられており、前記軸線A1と直交する平面内において、前記貫通孔19の内周面(カム面)20の形状は円形に構成されている。前記軸線A1に沿った方向、つまり、軸線A1を含む平面において、前記貫通孔19の中心線B1と、前記軸線A1とが交点P1で交差する構成を有している。さらに、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させるスライド機構21が設けられている。このスライド機構21は、前記軸線A1に沿った方向の動作力(推力)を前記カム3に与えてそのカム3を動作させ、かつ、カム3を停止させる機構である。カム3が軸線A1に沿った方向に移動すると、前記軸線A1上で交点P1の位置が移動する。このスライド機構21としては、油圧式アクチュエータ、電磁式アクチュエータ、手動式アクチュエータなどを用いることができる。前記油圧式アクチュエータは、油圧室と、この油圧室に設けられたバネなどを有しており、前記油圧室の油圧を制御することにより、前記カム3を軸線A1に沿った方向に動作させることが可能である。前記電磁式アクチュエータは、ソレノイドおよびバネなどを有しており、前記ソレノイドに対する通電量を制御して、磁気吸引力を制御し、その磁気吸引力とバネの力との関係により、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させるものである。前記手動アクチュエータは、手動動作されるレバーの操作力を、ロッド、リンク、ワイヤなどを経由させてカム3に伝達し、そのカム3を軸線A1に沿った方向に動作させる装置である。
【0031】
つぎに、前記ラジアルピストンポンプ1におけるオイルの吸入・吐出作用を説明する。まず、図1において、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1が中心線C1を通過するように、前記軸線A1に沿った方向で前記カム3の位置が停止された場合について説明する。この場合は、前記動力源4のトルクを前記回転軸2に伝達して前記インナーレース5を回転させても、前記ピストン7は前記軸線A1を中心とする半径方向に動作しない。したがって、前記油圧室9にはオイルが吸入されず、かつ、前記油圧室9からオイルが吐出もされない。これに対して、図1において、前記軸線A1に沿った方向で、前記中心線C1から前記交点P1が外れた位置にある場合、具体的には、中心線C1が交点P1よりも右側に位置するように、前記軸線A1に沿った方向における前記カム3の位置が制御された場合を説明する。この場合は、図2に示すように、前記中心線C1上で、前記中心線B1が軸線A1よりも下方に位置する。つまり、軸線A1に対して中心線B1が偏心量e2分だけ離れた位置にある。このため、前記動力源4のトルクを前記回転軸2に伝達して前記インナーレース5を回転させると、前記転動体8が前記内周面20に接触したまま転動し、かつ、前記ピストン7が前記軸線A1を中心として半径方向に動作する。図2においては、便宜上、前記インナーレース5が時計方向に回転するものとして示されている。
【0032】
そして、図2で右側半分に示すように、いずれかのピストン7が最上部に位置する位相から、ピストン7が最下部に位置する位相に至る領域D1では、前記ピストン7が半径方向でシリンダ6から突出する向きで動作する。いずれかのピストン7が最上部に位置した時点では、そのピストン7が前記シリンダ6内で下死点にある。一方、いずれかのピストン7が最下部に位置した時点では、そのピストン7が前記シリンダ6内で上死点にある。そして、前記回転軸2が回転することにともない、前記ピストン7が前記上死点から下死点向けて動作する行程に相当する領域D1では、前記油圧室9が油路105に接続されるとともに、前記油圧室9の容積が拡大されて、油圧室9内が負圧となる。このため、前記オイルパン13のオイルが油路切替バルブ101を経由して前記油圧室9に吸入される。これに対して、図2で左側半分に示すように、前記ピストン7が前記下死点から上死点向けて動作する行程に相当する領域E1では、油圧室9が油路104に接続され、かつ、前記油圧室9の容積が縮小されて油圧室9の圧力が上昇する。このため、前記油圧室9のオイルが油路102および油路12を経由して前記オイル必要部16に供給される。
【0033】
以後、前記回転軸2の回転により、各ピストン7が半径方向に往復動して、各油圧室9ではオイルの吸入・吐出が繰り返される。また、図1ないし図4の構成例では、前記内周面20の中心線B1と、前記インナーレース5の軸線A1とが交差している。このため、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させると、偏心量eが変化する。ここで、前記交点P1を前記中心線C1よりも左側の範囲内で移動させる場合について説明する。まず、前記カム3を図1で右方向に動作させると、前記偏心量e2が減少する。これに対して、前記カム3を図1で左方向に動作させると、前記偏心量e2が増加する。図5は、前記カム3の動作量(スライド量)Sに対する前記偏心量eおよび容量Vの関係を示す特性線図である。なお、動作量Sとは、前記軸線A1に沿った方向で、前記貫通孔19の端部から中心線C1までの距離(長さ)である。ここでは、前記中心線C1が前記交点P1を通過するようにカム3が停止された状態が、スライド量(距離)「零」として示されている。また、容量Vとは、前記ラジアルピストンポンプ1の容量である。より具体的には、前記インナーレース5が軸線A1の回りを1回転する間に各油圧室9から吐出されるオイルの合計体積であり、実際のピストン7のストロークに比例した容量である。すなわち、ピストン7のストロークが大きくなれば容量が増加し、ピストン7のストロークが少なくなれば容量が減少する。さらに、図5において、偏心量「零」とは、軸線A1に沿った方向で、前記中心線C1上に前記交点P1が位置していることを意味する。さらに、図5において、容量「零」とは、ラジアルピストンポンプ1からオイルが吐出されず、かつ、オイルが吸入されないことを意味する。
【0034】
この図5に示すように、前記カム3の動作量が変化することにともない、前記偏心量eおよび前記容量が変化する。具体的には、前記カム3の動作量が増加することにともない、前記偏心量eおよび前記容量が増加する特性を示す。これは、前記偏心量eが増加するほど、前記ピストン7の上死点から下死点までの間のストローク量が長くなるからである。このように、図1ないし図4に示されたラジアルピストンポンプ1は、可変容量型のオイルポンプである。また、図1ないし図4に示された例では、前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させることにより、前記ラジアルピストンポンプ1の容量を変更することができる。言い換えれば、軸線A1を中心とする半径方向では、前記カム3の動作スペースを確保せずに済む。したがって、ラジアルピストンポンプ1が前記軸線A1を中心とする半径方向に大型化することを抑制できる。
【0035】
つぎに、具体例1のラジアルピストンポンプ1において、前記カム3の他の動作例を、図6に基づいて説明する。図6に基づいて説明するカム3の他の動作例は、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1が前記中心線C1の右側に位置する場合に相当する。この図6においては、中心線C1上において、軸線A1の上方に中心線B1が偏心している。具体的には、偏心量e1分だけ軸線A1と中心線B1とが離れている。この図6に示すカム3の動作例について、ラジアルピストンポンプ1の作用を、図7に基づいて説明する。この図7は、前記軸線A1と垂直な平面、特に、中心線C1に沿った方向における概念図である。この図7に示すように、前記インナーレース5が時計方向に回転すると、前記油圧室9でオイルの吸入・吐出がおこなわれる。すなわち、前記図7で上死点に位置するピストン7が下死点に移動するまでの行程に相当する領域D1では、前記油圧室9からオイルが吐出される。一方、前記図7で下死点に位置するピストン7が上死点に移動するまでの行程に相当する領域E1では、前記油圧室9にオイルが吸入される。つまり、図1と図6とを比較すると、前記軸線A1上で、交点P1と中心線C1との位置が左右逆になっているため、前記インナーレース5の回転方向が同じであっても、前記油圧室9におけるオイルの吸入・吐出が逆転(反転)する。
【0036】
この油圧室9におけるオイルの吸入・吐出機能を、図8の特性線図に基づいて説明する。図8においては、前記カム3のスライド量Sに対応するインナーレース5の偏心量eが示され、かつ、その偏心量eに対応する容量Vが示されている。また、図8においては、前記軸線B1に対する前記インナーレース5の偏心方向が別個に示されている。図8において、偏心方向(上)は、前記中心線B1よりも軸線A1が上に配置されている状態、つまり、図1におけるカム3の位置に相当する。これに対して、図8において、偏心方向(下)は、前記中心線B1よりも軸線A1が下に配置されている状態、つまり、図6におけるカム3の位置に相当する。また、図8に示されたスライド量、偏心量、容量の技術的意味は、図5で説明した意味と同じである。この図8に示すように、軸線A1に沿った方向で、中心線C1が交点P1を通過する位置にある場合は、偏心量「零」、容量「零」である。一方、図1に示すように、軸線A1に沿った方向で、中心線C1が交点P1よりも右側に位置する場合は、図8に示すように、スライド量S2であり、スライド量の増加にともない偏心量e2が増加し、かつ、容量が増加する特性となる。これに対して、図6に示すように、軸線A1に沿った方向で、中心線C1が交点P1よりも左側に位置する場合は、スライド量S1であり、スライド量の減少にともない偏心量e1が増加し、かつ、容量が増加する特性となる。なお、スライド量S1はスライド量S2よりも少ない。
【0037】
(具体例2)
つぎに、ラジアルピストンポンプ1の具体例2を図9に基づいて説明する。この具体例2においては、隔壁107と動力源4との間に隔壁100が配置されている。隔壁107の技術的意味は、隔壁100の場合と同じである。そして、隔壁100と隔壁107との間の空間に、ラジアルピストンポンプ1に加えて、ラジアルピストンモータ35が設けられている。この具体例2において、ラジアルピストンポンプ1の一部を構成する油路切替バルブ101が、隔壁100から突出されている向きが、具体例1とは異なる。この具体例2では、隔壁100から隔壁107に向けて油路切替バルブ101が突出して取り付けられている。また、油路切替バルブ101は軸孔108を有しており、この軸孔108内に出力軸2が配置されている。そして、出力軸2と一体回転するインナーレース5が設けられており、そのインナーレース5の端面と、油路切替バルブ101の端面とが接触されている。この具体例2において、ラジアルピストンポンプ1のその他の構成および機能は、具体例1の場合と同様である。
【0038】
つぎに、ラジアルピストンモータ35の構成を説明する。このラジアルピストンモータ35は、インナーレース26および前記カム3を有している。つまり、カム3は、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35により共用されている。また、軸線A1に沿った方向で、インナーレース5と隔壁107との間にインナーレース26が配置されている。また、インナーレース26の外周には、円周方向に沿って複数のシリンダ27が形成されている。図10は、軸線A1と垂直な平面内における断面図、特に、軸線A1に沿った方向でインナーレース26の厚さ方向の中心を通過する平面内における断面図である。図10に示す例では、シリンダ27が8箇所形成されている。各シリンダ27は、インナーレース26の外周面に開口された円柱形状の凹部もしくは窪みである。そして、各シリンダ27内にはピストン28が各々配置されており、各ピストン28は、中心線F1に沿った平面内で、前記軸線A1を中心として半径方向に動作可能である。また各ピストン28には転動体29が取り付けられている。この転動体29はボールを用いることが可能である。一方、前記シリンダ27内には油圧室30が形成されている。この油圧室30の油圧が前記ピストン28の底面に加えられる。
【0039】
前記油圧室30に接続された油圧回路の構成を、図9に基づいて説明する。前記隔壁107には、吸入油路109および吐出油路110が設けられている。また、前記吸入油路109が前記吐出油路12に接続され、前記吐出油路110が前記吸入油路11に接続されている。このように、具体例2においては、具体例1で説明したオイルパン13およびオイル必要部16は設けられていない。また、前記隔壁107には油路切替バルブ111が取り付けられている。この油路切替バルブ111は、軸線A1を中心とする円筒形状に構成されており、油路切替バルブ111は軸孔150を有する。この油路切替バルブ111は、隔壁107に対して回転不可能に、かつ、軸線A1に沿った方向には移動不可能に固定されている。具体的には、隔壁107に設けられた孔に対して、油路切替バルブ111が圧入固定されている。この油路切替バルブ111は隔壁107からインナーレース26に近づく向きで突出している。そして、油路切替バルブ111には油路112,113が設けられており、油路113が吐出油路110に接続され、油路112が吸入油路109に接続されている。また、前記軸線A1に沿った方向における油路切替バルブ111の端面、具体的には、前記インナーレース26に近い側の端面には、油路114,115が形成されている。図11は、油路切替バルブ111の端面図であり、油路114,115は、軸線A1を中心として共に円弧形状に構成されている。また、油路114の周長と油路104の周長とが同一に構成され、油路115の周長と油路105の周長とが同一に構成されている。さらに、円周方向における油路114の配置位相と、円周方向における油路104の配置位相とが一致している。また、円周方向における油路115の配置位相と、円周方向における油路105の配置位相とが一致している。そして、油路114が油路112と接続され、油路115が油路113と接続されている。
【0040】
一方、前記インナーレース26には、前記油圧室30に接続された油路116が設けられている。油路116は、油圧室30にそれぞれ独立して複数設けられており、各油路116が、インナーレース26の円周方向に等間隔で配置されている。そして、各油路116は、インナーレース26の端面、具体的は油路切替バルブ111に接触した側の端面に開口されている。各油路116の開口部と同一円周上に、前記油路114,115が配置されている。さらに、インナーレース26の端面と油路切替バルブ111の端面とが接触した状態で、インナーレース26と油路切替バルブ111とが相対回転することが可能となるように、インナーレース26が出力軸25に取り付けられている。この出力軸25は油路切替バルブ111の軸孔150内に配置されており、出力軸25は軸線A1を中心として回転可能である。また、出力軸25とインナーレース26とが一体回転可能に接続、例えばスプライン結合されている。また、出力軸25およびインナーレース26は軸線A1に沿った方向には移動することが不可能となるように、軸受、およびスナップリング等(図示せず)により支持されている。したがって、インナーレース26が回転している場合、または停止している場合のいずれにおいても、単一の油路116は、油路114または油路115の何れか一方に対して接続される。さらに、インナーレース26が回転すると、単一の油路116が油路114に接続された状態と、油路116が油路115に接続された状態とが交互に切り替わる。このように、油路切替バルブ111は、油圧室30を、吐出油路12または吸入油路11に対して選択的に接続する機構である。また、油路切替バルブ111は、インナーレース26の回転により、油圧室30に対して接続される油路が切り替わるロータリバルブである。
【0041】
上記のように構成されたインナーレース26、ピストン27、転動体29、内周面20、出力軸25、油路112,113,114,115、吸入油路109、吐出油路110などの構成により、ラジアルピストンモータ(油圧モータ)35が構成されている。なお、ラジアルピストンポンプ1における油圧室9の最大容積および最小容積は、ラジアルピストンモータ35における油圧室30の最大容積および最小容積と同じである。また、図9においては、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1からカム3の端部(端面)3Aの間に、中心線F1が配置されており、前記交点P1からカム3の端部(端面)3Bの間に、中心線C1が配置されている。この構成例では、前記端部3Bの方が端部3Aよりも動力源4に近い位置に配置されている。さらに、この具体例2においても、カム3を軸線A1に沿った方向に移動させ、かつ、停止させる機能を有するスライド機構21が設けられている。
【0042】
つぎに、この具体例2におけるラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35の作用を説明する。この具体例2においては、前記軸線A1に沿った方向で、前記中心線C1と前記中心線F1との距離は一定である。そして、具体例2においても、具体例1と同様にして前記カム3を前記軸線A1に沿った方向に動作させ、かつ、停止させることが可能である。そして、この具体例2においては、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1を隔てた両側に中心線C1と中心線F1とが配置されている。つまり、前記カム3が前記軸線A1に沿った方向に動作すると、図9において、前記交点P1の右側の領域で中心線C1が移動し、前記交点P1の左側の領域で中心線F1が移動する。そして、前記動力源4のトルクが前記回転軸2に伝達されて回転軸2が回転すると、具体例1と同様の原理により、前記ピストン7が上昇・下降する。すなわち、油路103を経由して油圧室9にオイルが吸入され、かつ、油圧室9から油路102にオイルが吐出される。なお、この具体例2においては、後述するように、油圧室9と油圧室30との間でオイルが行き来する。
【0043】
つぎに、前記ラジアルピストンモータ35の作用を、図12に基づいて説明する。この図12は、軸線A1と垂直な平面、特に、中心線F1に沿った方向の概略的な側面図である。前記インナーレース26の軸線A1は、前記中心線B1よりも下方に位置している。そして、前記ピストン28が下死点を通過すると、そのピストン28に相当する油圧室30に対して、前記油圧室9から吐出された圧油が供給される。すると、油圧室30の油圧が上昇して、前記ピストン28を押し出す向きの力が発生し、その力が前記内周面20に伝達される。すると、その反力で前記インナーレース26を図12で時計方向に回転させようとする向きのトルクが発生する。このようにして、前記インナーレース26が回転すると、前記ピストン28が下死点に位置する時点から、前記ピストン28が上死点に位置するまでの領域G1では、前記油圧室30へ圧油が供給される。
【0044】
これに対して、前記ピストン28が上死点にある位置から、下死点に移動する行程に相当する領域H1では、前記油圧室30から圧油が吐出され、その圧油は、上昇行程にあるピストン7を有する油圧室9に吸入される。このようにして、前記ラジアルピストンポンプ1から吐出されたオイルがラジアルピストンモータ35に供給されて、そのラジアルピストンモータ35が駆動される。すなわち、油圧室9と油圧室30との間で、油路102,103,112,113、および吐出油路12,110、および吸入油路11,109を介して圧油が循環する。この具体例2において、前記軸線A1上の所定位置J1から、前記カム3の端部3Bまでの距離をスライド量Sとし、図9でカム3が左側に移動するほどスライド量Sが増加することとした場合、前記カム3のスライド量S、前記ラジアルピストンポンプ1における偏心量e、前記ラジアルピストンポンプ1における容量Vの特性は、前記図5の特性と同じである。これに対して、前記カム3のスライド量S、前記ラジアルピストンモータ35における偏心量e、前記ラジアルピストンモータ35の容量Vの特性を、図14に基づいて説明する。この図14に示すように、スライド量Sが少なくなるほど、前記偏心量eが増加し、かつ、容量Vが増加する特性を示す。偏心量eとは、中心線F1上において、軸線A1と中心線B1との距離である。
【0045】
そして、この具体例2においては、前記カム3を軸線A1に沿った方向に動作させることにより、ラジアルピストンポンプ1の容量およびラジアルピストンモータ35の容量を共に変更することができる。つまり、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が、回転軸2と出力軸25との間における変速比を変更可能な変速機として機能する。特に、回転軸2と出力軸25との間における変速比を無段階(連続的)に制御することができ、無段変速機として機能する。ここで、変速比は、入力回転数を出力回転数で除して求められ、変速比は、ラジアルピストンモータ35の容量V2を、ラジアルピストンポンプ1の容量V1で除した値に等しい。具体的に説明すると、図8のように、前記インナーレース5における偏心量e1の方が、前記インナーレース26における偏心量e2よりも大きい場合、ラジアルピストンポンプ1の容量V1の方が、ラジアルピストンモータ35の容量V2よりも大きくなる。このとき、変速比は「1」未満であり、前記回転軸2の回転数よりも前記出力軸25の回転数の方が高くなり、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が増速機として機能する。ここで、変速比γは次式(1)により表される。
変速比γ=V2/V1=(e2/e1)<1 ・・・(1)
【0046】
これに対して、前記インナーレース27における偏心量e2の方が、前記インナーレース5における偏心量e1よりも大きい場合、ラジアルピストンポンプ1の容量V1の方が、ラジアルピストンモータ35の容量V2よりも少なくなる。このとき、変速比は「1」を越え、前記回転軸2の回転数よりも前記出力軸25の回転数の方が低くなり、ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が減速機として機能する。ここで、変速比γは次式(2)により表される。
変速比γ=V2/V1=(e2/e1)>1 ・・・(2)
【0047】
また、具体例2では、前記カム3を軸線A1に沿った方向に動作させることにより、前記ラジアルピストンポンプ1の容量V1および前記ラジアルピストンモータ35の容量V2を連続的に変更可能であるから、前記ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35が、無段変速機として機能する。ここで、前記カム3のスライド量Sと変速比γとの関係を、図14に基づいて説明する。前記偏心量e1と偏心量e2とが同一となるスライド量Sでは、前記変速比γは「1」となる。また、偏心量e1が偏心量e2未満となるスライド量Sの場合は、前記変速比γが「1」未満となる。これに対して、偏心量e2が偏心量e1を越えるスライド量Sの場合は、前記変速比γが「1」を越える。なお、この具体例2において、前記回転軸2の回転方向と、前記出力軸25の回転方向とが同一である。
【0048】
つぎに、具体例2で説明したラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35において、カム3の他の動作例を、図15に基づいて説明する。この図15は、カム3を動作させて、前記交点P1の片側(図15の左側の範囲)に、前記中心線C1,F1を共に位置させる動作例である。つまり、前記軸線A1に沿った方向で、前記交点P1から前記端部3Aの間に前記中心線F1,C1が共に配置されている。さらに、前記ラジアルピストンモータ35における偏心量e2は、ラジアルピストンモータ1における偏心量e1よりも大きい。さらに、カム3を図15に示す位置に動作させた場合における、ラジアルピストンモータ1およびラジアルピストンモータ35の作用を説明する。図15に示すように、前記交点P1の片側に、前記中心線C1,F1を共に配置した場合において、前記インナーレース5が図2に示すように時計方向に回転すると、ラジアルピストンポンプ1でおこなわれるオイルの吸入・吐出作用は、図7で説明した場合と同様である。
【0049】
これに対して、前記ラジアルピストンモータ35の作用を図16に基づいて説明する。図16は、軸線A1と垂直な平面、具体的には、中心線F1に沿った方向における平面におけるラジアルピストンモータ35の概略的な側面図である。この図16において、前記ピストン28が下死点から上死点に動作する領域H1では、前記油圧室9から吐出された圧油が油圧室30に供給されて、ピストン28が外側に押圧されるため、前記インナーレース26を図16で反時計方向に回転させる向きのトルクが発生する。また、ピストン28が上死点から下死点に動作する範囲G1では、前記油圧室30から圧油が吐出され、その圧油が、上昇行程にあるピストン7を有する油圧室9に吸入される。このように、図15に示されたカム3の動作例では、前記回転軸2が時計方向に回転するのに対して、前記出力軸25は反時計方向に回転する(逆回転する)。また、前記回転軸2の回転方向に対して、前記出力軸25の回転方向を逆にする場合、前記回転軸2と前記出力軸25との間における変速比は、前記式(2)により表される。すなわち、前記回転軸2の回転数よりも前記出力軸25の回転数の方が低くなる。つまり、前記ラジアルピストンポンプ1および前記ラジアルピストンモータ35が、減速機として機能する。
【0050】
上記の具体例1および具体例2は、請求項1ないし4、および請求項7および請求項8に係る発明に対応するものであり、具体例1および具体例2の構成と、請求項1ないし4、および請求項7および請求項8の構成との対応関係を説明すると、カム3が、この発明の外周側部材に相当し、インナーレース5が、この発明の内周側部材に相当し、インナーレース26が、この発明の動力伝達部材に相当し、内周面20が、この発明のカム面に相当し、ピストン7および転動体8が、この発明のピストンに相当し、ピストン28および転動体29が、この発明の第2ピストンに相当し、油圧室9が、この発明の流体室に相当し、油圧室30が、この発明の第2流体室に相当し、前記スライド機構21が、この発明の容量調整機構に相当し、ケーシング100が、この発明における固定構造物に相当し、油路102および吐出油路12および吸入油路109および油路112が、この発明の第1通路に相当し、油路111および吐出油路110および吸入油路11および油路103が、この発明の第2通路に相当する。さらに、具体例2は、この発明の請求項5および請求項6に対応しており、具体例2の構成と、請求項5および請求項6の構成との対応関係を説明すると、カム3が、この発明の外周側部材に相当し、インナーレース26が、この発明の内周側部材に相当する。なお、具体例2の構成において、その他の構成と、請求項5および請求項6の構成との関係は、具体例1の構成と、請求項1ないし4の構成との対応関係と同じである。上記のラジアルピストンポンプ1は、家屋、工場、建築物などに固定して設置されるオイル輸送機器(流体装置)として用いることが可能である。また、前記ラジアルピストンポンプ1を、動力源の動力を被駆動部材に伝達する、動力伝達装置またはクラッチとして用いることも可能である。例えば、車両の動力源から車輪に至る動力伝達経路に配置することが可能であり、その一例を図17に基づいて説明する。図17は、車両のパワートレーンを示す概念図であり、動力源4から車輪36に至る経路に、ラジアルピストンポンプ1を設けることが可能である。また、前記ラジアルピストンポンプ1から車輪36に至る経路には変速機37が設けられている。さらに、変速機37から車輪36に至る動力伝達経路には終減速機38が設けられている。すなわち、前記カム3を前記変速機37の入力部材に対して動力伝達可能に接続されている。この場合、前記カム3は固定ではなく回転可能である。この変速機37は、入力回転数と出力回転数との間の変速比を変更可能な動力伝達装置であり、変速機37は、有段変速機または無段変速機のいずれでもよい。有段変速機とは、変速比を段階的(不連続)に変更可能な変速機である。無段変速機とは、変速比を無段階(連続的)に変更可能な変速機である。有段変速機としては、遊星歯車式変速機、選択歯車式変速機などを用いることができる。無段変速機としては、ベルト式無段変速機、トロイダル型無段変速機を用いることが可能である。
【0051】
そして、前記動力源4から車輪36に伝達されるトルクにより前記ラジアルピストンポンプ1が駆動されてオイルの吸入・吐出がおこなわれる。また、前記転動体8と内周面20との係合力に基づいて、前記回転軸2から前記カム3にトルクが伝達される。さらに、前記カム3のスライド量、前記ラジアルピストンポンプ1の油圧室9に吸入されるオイルの流量、油圧室9から吐出されるオイルの流量などの条件を制御することにより、前記回転軸2から前記カム3を経由して前記変速機37に伝達されるトルクを制御することが可能である。一方、前記変速機37として無段変速機を用いる場合、前記ラジアルピストンポンプ1およびラジアルピストンモータ35の両方を配置し、前記具体例2のようにカム3の動作を制御することにより、出力軸25の回転方向を正逆に切り換えれば、前記ラジアルピストンポンプ1および前記ラジアルピストンモータ34を、前後進切換装置として機能させることが可能である。すなわち、シフトポジションの操作に基づいて、前記カム3の動作を制御することとなる。具体的には、車両を前進させるシフトポジションが選択された場合、図9に基づいて説明したように、カム3の動作が制御される。これに対して、車両を後退させるシフトポジション(リバース)が選択された場合は、図15に基づいて説明したように、カム3の動作が制御される。
【0052】
ここで、スライド機構21として油圧式アクチュエータまたは電磁式アクチュエータが用いられている場合、シフトポジションが電子制御装置で検知されると、電子制御装置の制御信号に基づいてスライド機構21が制御される。一方、スライド機構21として手動式アクチュエータが用いられている場合、シフトレバーの操作力が、リンク、ワイヤ、ロッドなどを経由してスライド機構21に伝達され、カム3が動作する。なお、前述のように、ラジアルピストンモータ35は無段変速機としての機能を有しているため、ラジアルピストンポンプ35を用いる場合は、変速機37自体を設けなくともよい。さらに、この発明のラジアルピストンポンプは、動力源から車輪に至る動力伝達経路に配置する場合、車両のフロアーの下方空間にケーシングが配置することが可能である。これに対して、ラジアルピストンポンプを、車両のエンジンルーム内に配置することも可能である。なお、各構成例では、前記インナーレースが軸線方向には移動不可能(固定して)に配置されており、前記カムが軸線方向に動作可能に構成されているが、前記インナーレースが軸線方向に移動可能に設けられ、前記カムが軸線方向に移動不可能(固定)配置されている構成であっても、各構成例と同様の効果を得られる。さらに、この発明を車両に用いる場合、前記車輪は前輪または後輪のいずれでもよいし、動力源の動力が前輪および後輪の両方に伝達されるように構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明のラジアルピストンポンプの具体例1を示し、軸線に沿った方向の断面図である。
【図2】図1に示されたラジアルピストンポンプにおいて、軸線と垂直な平面内における断面図である。
【図3】図1に示された油路切替バルブの構成を示す端面図である。
【図4】図1に示すラジアルピストンポンプに接続された油圧回路の構成を示す概念図である。
【図5】図1に示されたラジアルピストンポンプのカムのスライド量と、ラジアルピストンポンプの容量との関係の一例を示す特性線図である。
【図6】図1に示されたラジアルピストンポンプにおいて、カムの他の動作例を示す断面図である。
【図7】図6に示されたカムの動作例において、インナーレースの位相に対するオイルの吸入・吐出の関係を示す概念図である。
【図8】図1に示されたカムの動作例、および図6に示されたカムの動作例ついて、カムのスライド量および容量を説明する特性線図である。
【図9】この発明の具体例2を示し、ラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータの断面図である。
【図10】図9に示されたラジアルピストンモータの側面断面図である。
【図11】図9に示されたラジアルピストンモータの油路切替バルブの端面図である。
【図12】図9に示されたラジアルピストンモータにおけるオイルの吸入・吐出行程を示す概念図である。
【図13】図9に示されたラジアルピストンモータにおけるカムのスライド量と、容量との関係を示す線図である。
【図14】図9に示されたラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータにおける変速比の制御特性を示す図である。
【図15】図9に示されたラジアルピストンポンプおよびラジアルピストンモータにおいて、カムの他の動作例を示す断面図である。
【図16】図15に示されたラジアルピストンモータのピストンの位相と、油圧室におけるオイルの吸入・吐出との関係を示す概念図である。
【図17】この発明を用いることの可能な車両のパワートレーンを示す概念図である。
【符号の説明】
【0054】
1…ラジアルピストンポンプ、2…回転軸、3…カム、5,26…インナーレース、7,28…ピストン、8,29…転動体、9,30…油圧室、20…内周面、21…スライド機構、25…出力軸、35…ラジアルピストンモータ、A1…軸線、B1…中心線、100…ケーシング、102,103,111,112…油路、12,110…吐出油路、11,109…吸入油路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能に配置され、かつ、内外周に配置された外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と内周側部材とが相対回転して前記ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される流体室とを有し、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更可能な構成を備えたラジアルピストンポンプにおいて、
前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記カム面の中心線とが交差しており、
前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更する容量調整機構が設けられていることを特徴とするラジアルピストンポンプ。
【請求項2】
前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内における前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構を含むことを特徴とする請求項1に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項3】
前記軸線を中心として前記内周側部材と相対回転可能に設けられ、かつ、動力伝達をおこなう動力伝達部材と、この動力伝達部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能な第2ピストンと、前記動力伝達部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と動力伝達部材とが相対回転して前記第2ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される第2流体室と、前記流体室から吐出された流体を前記第2流体室に供給する第1通路と、前記第2流体室から吐出された流体を前記流体室に供給する第2通路とを備えたラジアルピストンモータが設けられており、
前記ラジアルピストンモータは、前記流体室から前記第2流体室に流体が供給されて前記第2ピストンが半径方向の外側に向けて動作する場合に、前記第2ピストンが前記カム面に押し付けられた場合の反力で、前記動力伝達部材を前記軸線を中心として回転させる向きのトルクが発生するように構成されているとともに、
前記容量調整機構は、前記外周側部材と前記動力伝達部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記軸線を中心とする半径方向で前記第2ピストンのストロークを変更する機構を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項4】
前記容量調整機構は、
前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプおよび前記ラジアルピストンモータを配置する状態と、
前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプを配置し、かつ、前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの他端部までの間に、前記ラジアルピストンモータを配置する状態と
を切り替え可能な機構を含むことを特徴とする請求項3に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項5】
回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能に、かつ、内外周に設けられた外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、流体が供給される流体室とを有し、前記流体室に流体を供給して前記ピストンを半径方向で外側に向けて動作させることにより、前記カム面で発生する反力で前記内周側部材を回転させる向きのトルクを生じさせるとともに、前記流体室の容量を変更可能なラジアルピストンモータにおいて、
前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差しており、前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記流体室の容量を変更する容量調整機構が設けられていることを特徴とするラジアルピストンモータ。
【請求項6】
前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構を含むことを特徴とする請求項5に記載のラジアルピストンモータ。
【請求項7】
前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記外周側部材を内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることにより、前記内周側部材の回転数と動力伝達部材の回転数の比である変速比を、無段階に変更可能な構成を有していることを特徴とする請求項3または4に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項8】
前記外周側部材および内周側部材および動力伝達部材を取り付けた固定構造物が設けられており、前記内周側部材および動力伝達部材は前記軸線に沿った方向には動作することが不可能な状態で前記固定構造物に支持されており、前記外周側部材は前記軸線に沿った方向に動作可能に構成されており、
前記容量調整機構は、前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記外周側部材を、前記内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させる構成を有していることを特徴とする請求項3または4に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項1】
回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能に配置され、かつ、内外周に配置された外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と内周側部材とが相対回転して前記ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される流体室とを有し、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更可能な構成を備えたラジアルピストンポンプにおいて、
前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記カム面の中心線とが交差しており、
前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記流体室で吸入・吐出される流体の容量を変更する容量調整機構が設けられていることを特徴とするラジアルピストンポンプ。
【請求項2】
前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内における前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構を含むことを特徴とする請求項1に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項3】
前記軸線を中心として前記内周側部材と相対回転可能に設けられ、かつ、動力伝達をおこなう動力伝達部材と、この動力伝達部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能な第2ピストンと、前記動力伝達部材に設けられ、かつ、前記外周側部材と動力伝達部材とが相対回転して前記第2ピストンが前記軸線を中心として半径方向に動作した場合に流体が吸入・吐出される第2流体室と、前記流体室から吐出された流体を前記第2流体室に供給する第1通路と、前記第2流体室から吐出された流体を前記流体室に供給する第2通路とを備えたラジアルピストンモータが設けられており、
前記ラジアルピストンモータは、前記流体室から前記第2流体室に流体が供給されて前記第2ピストンが半径方向の外側に向けて動作する場合に、前記第2ピストンが前記カム面に押し付けられた場合の反力で、前記動力伝達部材を前記軸線を中心として回転させる向きのトルクが発生するように構成されているとともに、
前記容量調整機構は、前記外周側部材と前記動力伝達部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記軸線を中心とする半径方向で前記第2ピストンのストロークを変更する機構を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項4】
前記容量調整機構は、
前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプおよび前記ラジアルピストンモータを配置する状態と、
前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの一端部までの間に、前記ラジアルピストンポンプを配置し、かつ、前記軸線に沿った方向で、前記交点から前記カムの他端部までの間に、前記ラジアルピストンモータを配置する状態と
を切り替え可能な機構を含むことを特徴とする請求項3に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項5】
回転する場合の中心となる軸線を中心として相対回転可能に、かつ、内外周に設けられた外周側部材および内周側部材と、前記外周側部材に設けられ、かつ、中心線を取り囲むように形成された環状のカム面と、前記内周側部材に設けられ、かつ、前記カム面に追従して前記軸線を中心とする半径方向に動作可能なピストンと、前記内周側部材に設けられ、かつ、流体が供給される流体室とを有し、前記流体室に流体を供給して前記ピストンを半径方向で外側に向けて動作させることにより、前記カム面で発生する反力で前記内周側部材を回転させる向きのトルクを生じさせるとともに、前記流体室の容量を変更可能なラジアルピストンモータにおいて、
前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差しており、前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記流体室の容量を変更する容量調整機構が設けられていることを特徴とするラジアルピストンモータ。
【請求項6】
前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記軸線と前記中心線とが交差する交点の両側で、前記外周側部材と内周側部材とを前記軸線に沿った方向に相対移動させる機構を含むことを特徴とする請求項5に記載のラジアルピストンモータ。
【請求項7】
前記容量調整機構は、前記軸線に沿った方向の平面内で、前記外周側部材を内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させることにより、前記内周側部材の回転数と動力伝達部材の回転数の比である変速比を、無段階に変更可能な構成を有していることを特徴とする請求項3または4に記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項8】
前記外周側部材および内周側部材および動力伝達部材を取り付けた固定構造物が設けられており、前記内周側部材および動力伝達部材は前記軸線に沿った方向には動作することが不可能な状態で前記固定構造物に支持されており、前記外周側部材は前記軸線に沿った方向に動作可能に構成されており、
前記容量調整機構は、前記外周側部材を前記軸線に沿った方向に動作させることにより、前記外周側部材を、前記内周側部材および動力伝達部材に対して相対移動させる構成を有していることを特徴とする請求項3または4に記載のラジアルピストンポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−121420(P2009−121420A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298536(P2007−298536)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]