説明

ラックバーおよびその製造方法

【課題】自動車用のステアリング装置に使用されるラックバーにおいて、軽量化を図ると同時にピニオン歯の耐久強度を高める。
【解決手段】このラックバー6は、所定の基準円SCに対応する外径を有する円筒状のバー本体11と、ピッチ平面PPに沿って形成されたラック歯12とを備えている。ラック歯12の歯幅L1は、基準円SCがピッチ平面PPによって切り取られた弦の長さL2より広い。ラックバー6全体が中空状であるため、ラックバー6が軽くなる。ラックバー6と噛み合うピニオン軸の歯元応力が減少し、ピニオン歯の耐久強度が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリング装置に使用されるラックバーおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のラックバーとしては、丸棒状(円柱状)の素材にラック歯を切削加工で形成したものが用いられてきた。
【0003】
ところが、このようなラックバーでは、ラック歯の強度を高めるべく歯幅を大きくしようとすると、必然的に素材が大断面化して重くなる。そのため、自動車の燃費が悪化するとともに、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が増え、さらに、ステアリング操作フィーリングが悪化するという不都合があった。
【0004】
そこで、近年、円筒状の素材にラック歯を形成した中空のラックバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−224822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした中空のラックバーでは、円筒状のバー本体の一部(円弧断面部分)を平坦状に塑性加工した後、その部位にラック歯を形成する。そのため、ラック歯は、バー本体の基準円(外径円)がピッチ平面によって切り取られた弦の長さ以下の歯幅しか得られない。その結果、このラックバーと噛み合うピニオン軸の歯元応力が増大し、ピニオン歯の耐久強度が低下するという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、軽量化を図ると同時にピニオン歯の耐久強度を高めることが可能なラックバーを提供することを第1の目的とする。また、このようなラックバーにおいて、ラック歯の肉厚および歯幅を確保することが可能なラックバーの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明者は、ラックバーを軽量化すべく、円筒状の素材をバー本体として採用するとともに、ラック歯の歯幅を増大させてピニオン歯の耐久強度を高めるべく、素材の上部にラック歯を形成するのに先立ち、この部位をバー本体の基準円(外径円)の外側に膨らませる形で平板状に塑性変形させることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、自動車用のステアリング装置に使用されるラックバーであって、所定の基準円に対応する外径を有する円筒状のバー本体と、ピッチ平面に沿って形成されたラック歯とを備え、前記ラック歯の歯幅は、前記基準円が前記ピッチ平面によって切り取られた弦の長さより広いラックバーとしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ラック歯の歯幅は、前記バー本体の外径に一致していることを特徴とする。
【0011】
一方、請求項3に記載の発明は、円筒状の素材の下部が下型で支持されるとともに、前記素材の外径以上の幅のパンチ挿入口が形成された上型で当該素材の上部が支持され、さらに、前記素材の中空部に心金が挿入されて当該素材の下部に接触した状態で、波形板状成形パンチを前記パンチ挿入口に挿入して前記素材の上部を押圧することにより、前記素材の上部を波形板状に塑性変形させる波形板状変形工程と、前記波形板状成形パンチに代えて平板状成形パンチを前記パンチ挿入口に挿入して前記素材の上部を押圧することにより、前記素材の上部を平板状に塑性変形させる平板状変形工程と、前記素材の上部にラック歯を形成する歯形成工程とを含むラックバーの製造方法としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記波形板状変形工程において、前記波形板状成形パンチとして、複数の凸部が形成された押圧面を有するものを用いることにより、前記素材の上部に複数の凹部を形成して波形板状に塑性変形させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の構成に加え、前記平板状変形工程において、前記素材の上部を平板状に塑性変形させる際に当該素材の上部の肉厚を当該素材の下部の肉厚より厚くすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の構成に加え、前記歯形成工程において、前記平板状成形パンチに代えて歯形成パンチを前記パンチ挿入口に挿入して前記素材の上部を押圧することにより、前記素材の上部にラック歯を形成することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれかに記載の構成に加え、前記心金は、前記素材のラック歯を形成する部位に対向する反力部が、かまぼこ形を呈し、前記素材の内径の半分にほぼ等しい曲率半径を有する曲面状の下面と、前記素材の内径より僅かに狭い幅を有する平坦な上面とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のうちラックバーに係る発明によれば、全体が中空状であるため、中実状(丸棒状)の従来品に比べて、ラックバーを軽量化することができる。しかも、ラック歯の歯幅は、バー本体の基準円がピッチ平面によって切り取られた弦の長さより広いので、このラックバーと噛み合うピニオン軸の歯元応力を減少させ、ピニオン歯の耐久強度を高めることができる。
【0017】
本発明のうちラックバーの製造方法に係る発明によれば、ラックバーを製造する際に、素材の上部を波形板状に塑性変形させてから平板状に塑性変形させた後、この部位にラック歯を形成するようにしたことから、ラック歯の肉厚および歯幅を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動車用のステアリング装置を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態1に係るステアリング装置のラックバーとピニオン軸との噛合状態を示す斜視図である。
【図3】同実施の形態1に係るラックバーを示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のD矢視図、(c)は(a)のE−E線による拡大断面図である。
【図4】同実施の形態1に係るラックバーの製造方法における素材準備工程を示す図であって、(a)は素材の断面図、(b)は(a)のA−A線による断面図である。
【図5】同実施の形態1に係るラックバーの製造方法における歯形成部形成工程を示す素材の断面図である。
【図6】図5に示す歯形成部形成工程の詳細図であって、(a)は素材の断面図、(b)は波形板状変形工程における(a)のB−B線による断面図、(c)は平板状変形工程における(a)のB−B線による断面図である。
【図7】図6に示す素材の拡大断面図であって、(a)は図6(b)に対応する図、(b)は図6(c)に対応する図である。
【図8】同実施の形態1に係るラックバーの製造方法における歯形成工程を示す図であって、(a)は歯形成部にラック歯を形成する際の断面図、(b)は第1歯形成工程における(a)のC−C線による断面図、(c)は第2歯形成工程における(a)のC−C線による断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るラックバーの製造方法における歯形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0020】
図1乃至図8には、本発明の実施の形態1を示す。
【0021】
自動車用のステアリング装置1は、図1に示すように、ステアリングホイール2の操作力(正逆回転力)を伝達する中間シャフト3を有しており、中間シャフト3にはピニオン軸5が連結されて回転自在に支持されている。ピニオン軸5にはラックバー6が、図2に示すように、ピニオン軸5の正逆回転運動をラックバー6の往復移動運動に変換しうるように連結されている。ラックバー6の両端にはそれぞれ、図1に示すように、前輪8を操舵するためのタイロッド7が連結されている。
【0022】
このピニオン軸5は、図2に示すように、ピニオン歯5aを有している。
【0023】
また、ラックバー6は、図3に示すように、D形断面筒状の歯形成部10を有しており、歯形成部10の両側にはそれぞれ円筒状のバー本体11が歯形成部10に連通する形で一体に設けられている。歯形成部10にはラック歯12が形成されており、ラック歯12は、図2に示すように、ピニオン軸5のピニオン歯5aと噛み合っている。
【0024】
このラック歯12は、図3(c)に示すように、バー本体11の基準円SCがピッチ平面PPによって切り取られた弦の長さL2より広い歯幅L1を有している。ここで、基準円SCとは、バー本体11の外径に対応する仮想的な円である。また、ピッチ平面PPとは、ラックバー6のラック歯12がピニオン軸5のピニオン歯5aと噛み合う仮想的な平面である。
【0025】
このように、ラックバー6は、全体が中空状であるため、中実状(丸棒状)の従来品に比べて、ラックバー6を軽量化することができる。しかも、ラック歯12の歯幅L1は、バー本体11の基準円SCがピッチ平面PPによって切り取られた弦の長さL2より広いので、このラックバー6と噛み合うピニオン軸5の歯元応力を減少させ、ピニオン歯5aの耐久強度を高めることができる。
【0026】
また、このようなラックバー6を製造する際には、次の手順による。
【0027】
まず、素材準備工程で、図4に示すように、円筒状の素材13を準備する。
【0028】
こうして円筒状の素材13が準備されたところで、歯形成部形成工程に移行し、図5に示すように、素材13にD形断面筒状の歯形成部10を2段階で形成する。それには、以下に詳述するとおり、まず波形板状変形工程で、素材13の上部13aを波形板状に塑性変形させた後、平板状変形工程で、素材13の上部13aを平板状に塑性変形させる。
【0029】
すなわち、波形板状変形工程では、図6(a)、(b)に示すように、下型15の上面の溝15aに円筒状の素材13を載置する。この溝15aは、素材13の下部13bにほぼ合致する半円形断面を呈しているため、素材13の下部13bは、その外周面が下型15で支持された状態になる。
【0030】
次いで、この素材13の上側に上型16を載置する。この上型16は、素材13の外径に等しい幅のパンチ挿入口16aが上下に貫通して形成された枠形状を有している。
【0031】
さらに、図6(a)に示すように、素材13の中空部13cに非対称の一対の心金17、18を素材13の左右両端部から挿入する。一方の心金17には、かまぼこ形の反力部17aおよび円環状の段部17bが形成されている。この反力部17aは、図7に示すように、素材13の内径(中空部13cの直径)の半分にほぼ等しい曲率半径を有する曲面状(半円断面状)の下面17cと、素材13の内径より僅かに狭い幅を有する平坦な上面17dとを備えている。他方の心金18には、円環状の段部18bが形成されている。そして、これらの心金17、18が素材13の左右両端部から挿入されると、素材13の下部13bの内周面が心金17の反力部17aの下面17cに接触すると同時に、一対の心金17、18が歯形成部10の端部近傍で互いに付き合わされ、さらに、心金17、18の段部17b、18bが素材13を左右両側から挟み込んだ状態になる。
【0032】
その後、図6(a)、(b)に示すように、上型16のパンチ挿入口16aに波形板状成形パンチ20を挿入して素材13の上部13aを下向きに強く押圧する。この波形板状成形パンチ20の下部には、図7(a)に示すように、2条の凸部20bが下向きに設けられた押圧面20aが形成されている。
【0033】
すると、素材13の上部13aは、図6(b)および図7(a)に示すように、2つの凹部13dを有する波形板状に塑性変形する。
【0034】
このとき、上型16のパンチ挿入口16aは、上述したとおり、素材13の外径に等しい幅となっているため、素材13の上部13aは、バー本体11の基準円SCの外側に膨らむように平板状に塑性変形する。また、素材13の中空部13cに挿入された一対の心金17、18が歯形成部10の端部近傍、つまり歯形成部10の中央部近傍でない部位で互いに付き合わされているため、この塑性変形を素材13の長さ方向に沿って均一に実施することができる。しかも、素材13は心金17、18の段部17b、18bによって左右両側から挟み込まれているので、素材13の長さ方向の移動を拘束して適正な部位を塑性変形させることができる。さらに、素材13の下部13bは、上述したとおり、外周面が下型15で支持されると同時に、内周面が心金17の反力部17aの下面17cに接触した状態を維持しているため、この塑性変形に伴って素材13の上部13aの材料が下部13bへ移動することは起こらない。
【0035】
また、平板状変形工程では、波形板状成形パンチ20を上型16から抜き取った後、図6(a)、(c)に示すように、平板状成形パンチ21を上型16のパンチ挿入口16aに挿入して素材13の上部13aを下向きに強く押圧する。この平板状成形パンチ21の下部には、図7(b)に示すように、平面状の押圧面21aが形成されている。なお、本来であれば、波形板状変形工程における断面図と平板状変形工程における断面図とを別個の2図面で示すべきであるが、両者は波形板状成形パンチ20と平板状成形パンチ21との違いしか存在しないため、便宜上、これらの2図面を1図面(図6(a))で簡略的に示している。
【0036】
すると、素材13の上部13aは、図6(c)および図7(b)に示すように、平板状に塑性変形する。
【0037】
このときも、波形板状変形工程と同様、素材13の中空部13cに挿入された一対の心金17、18が歯形成部10の端部近傍、つまり歯形成部10の中央部近傍でない部位で互いに付き合わされているため、この塑性変形を素材13の長さ方向に沿って均一に実施することができる。しかも、素材13は心金17、18の段部17b、18bによって左右両側から挟み込まれているので、素材13の長さ方向の移動を拘束して適正な部位を塑性変形させることができる。また、素材13の下部13bは、外周面が下型15で支持されると同時に、内周面が心金17の反力部17aの下面17cに接触した状態を維持しているため、この塑性変形に伴って素材13の上部13aの材料が下部13bへ移動することは起こらない。したがって、図7(b)に示すように、素材13の下部13bの曲率中心Oより少し上側の位置で素材13の上部13aが平板状に塑性変形するように平板状成形パンチ21の押圧力を適宜調整することにより、平板状の上部13aの肉厚t1を下部13bの肉厚t2より厚くすることが可能となる。そのため、後述する歯形成工程において、ラック歯12を形成するための材料を確保することができる。
【0038】
その結果、図5に示すように、素材13にD形断面筒状の歯形成部10が形成される。
【0039】
このようにして、素材13に歯形成部10が形成されるとともに、この歯形成部10以外の部位に円筒状のバー本体11が形成される。
【0040】
こうして素材13に歯形成部10およびバー本体11が形成されたところで、歯形成工程に移行し、図8に示すように、2種類の歯形成パンチ(第1歯形成パンチ22および第2歯形成パンチ23)を用いて歯形成部10にラック歯12を2段階で形成する。なお、図8(a)においては、下型15、上型16および心金17、18の図示を省略している。
【0041】
それには、まず第1歯形成工程で、平板状成形パンチ21を上型16から抜き取った後、図8(b)に示すように、第1歯形成パンチ22を上型16のパンチ挿入口16aに挿入して歯形成部10を下向きに強く押圧することにより、所望の高さの半分程度の高さ・深さの山と谷を形成する。続けて、第2歯形成工程で、第1歯形成パンチ22を上型16から抜き取った後、図8(c)に示すように、第2歯形成パンチ23を上型16のパンチ挿入口16aに挿入して歯形成部10を下向きに強く押圧することにより、所望の高さ・深さの山と谷を形成する。
【0042】
すると、図8(a)に示すように、歯形成部10にラック歯12が形成される。
【0043】
このとき、歯形成部10は、バー本体11の直径と同程度の幅を有しているので、十分な歯幅L1のラック歯12を形成することができる。したがって、このラックバー6と噛み合うピニオン軸5の歯元応力を減少させ、ピニオン歯5aの耐久強度を高めることができる。加えて、上述したとおり、直前の波形板状変形工程において、素材13の平板状の上部13aにラック歯12を形成するための材料が確保されているので、十分な肉厚でラック歯12を形成することができる。また、素材13の中空部13cに挿入された一対の心金17、18が歯形成部10の端部近傍、つまり歯形成部10の中央部近傍でない部位で互いに付き合わされているため、このラック歯12の形成を素材13の長さ方向に沿って均一に実施することができる。しかも、素材13は心金17、18の段部17b、18bによって左右両側から挟み込まれているので、素材13の長さ方向の移動を拘束して適正な部位にラック歯12を形成することができる。
【0044】
こうして素材13の上部13aにラック歯12が形成されたところで、心金離脱工程に移行し、心金17、18を素材13の中空部13cから取り外して離脱させる。
【0045】
ここで、ラックバー6の製造が終了し、ラックバー6が完成する。
【0046】
このように、ラックバー6の製造に際しては、所定の下型15、上型16、心金17、18、波形板状成形パンチ20、平板状成形パンチ21、第1歯形成パンチ22および第2歯形成パンチ23を用いて、素材13の上部13aを波形板状に塑性変形させてから平板状に塑性変形させた後、この部位にラック歯12を形成するようにした。その結果、ラック歯12の肉厚および歯幅を確保することが可能となる。
[発明の実施の形態2]
【0047】
図9には、本発明の実施の形態2を示す。
【0048】
この実施の形態2では、歯形成工程において、歯形成パンチ22、23を用いてラック歯12を鍛造する代わりに、図9に示すように、大小2種類の転写ローラ25を歯形成部10上で転動させてラック歯12を形成する点を除き、上述した実施の形態1と同じ構成を有している。なお、実施の形態1と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
このとき、転写ローラ25は必ずしも大小2種類を用いる必要はなく、1種類の転写ローラ25だけでラック歯12を転動することも勿論できる。
[発明のその他の実施の形態]
【0050】
なお、上述した実施の形態1、2では、上型16のパンチ挿入口16aの幅が素材13の外径に等しい場合について説明した。しかし、素材13の外径より広い幅のパンチ挿入口16aを有する上型16を代用することもできる。
【0051】
また、上述した実施の形態1、2では、2条の凸部20bが形成された押圧面20aを有する波形板状成形パンチ20を用いる場合について説明した。しかし、凸部20bの条数は2つに限るわけではなく、複数であれば何条でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、自動車用のステアリング装置など各種の装置・機器に幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1……ステアリング装置
2……ステアリングホイール
3……中間シャフト
5……ピニオン軸
5a……ピニオン歯
6……ラックバー
7……タイロッド
8……前輪
10……歯形成部
11……バー本体
12……ラック歯
13……素材
13a……上部
13b……下部
13c……中空部
13d……凹部
15……下型
15a……溝
16……上型
16a……パンチ挿入口
17、18……心金
17a……反力部
17b、18b……段部
17c……下面
17d……上面
20……波形板状成形パンチ
20a……押圧面
20b……凸部
21……平板状成形パンチ
21a……押圧面
22……第1歯形成パンチ
23……第2歯形成パンチ
25……転写ローラ
L1……ラック歯の歯幅
L2……弦の長さ
PP……ピッチ平面
SC……基準円
t1……素材の上部の肉厚
t2……素材の下部の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のステアリング装置に使用されるラックバーであって、
所定の基準円に対応する外径を有する円筒状のバー本体と、ピッチ平面に沿って形成されたラック歯とを備え、
前記ラック歯の歯幅は、前記基準円が前記ピッチ平面によって切り取られた弦の長さより広いことを特徴とするラックバー。
【請求項2】
前記ラック歯の歯幅は、前記バー本体の外径に一致していることを特徴とする請求項1に記載のラックバー。
【請求項3】
円筒状の素材の下部が下型で支持されるとともに、前記素材の外径以上の幅のパンチ挿入口が形成された上型で当該素材の上部が支持され、さらに、前記素材の中空部に心金が挿入されて当該素材の下部に接触した状態で、波形板状成形パンチを前記パンチ挿入口に挿入して前記素材の上部を押圧することにより、前記素材の上部を波形板状に塑性変形させる波形板状変形工程と、
前記波形板状成形パンチに代えて平板状成形パンチを前記パンチ挿入口に挿入して前記素材の上部を押圧することにより、前記素材の上部を平板状に塑性変形させる平板状変形工程と、
前記素材の上部にラック歯を形成する歯形成工程と
を含むことを特徴とするラックバーの製造方法。
【請求項4】
前記波形板状変形工程において、前記波形板状成形パンチとして、複数の凸部が形成された押圧面を有するものを用いることにより、前記素材の上部に複数の凹部を形成して波形板状に塑性変形させることを特徴とする請求項3に記載のラックバーの製造方法。
【請求項5】
前記平板状変形工程において、前記素材の上部を平板状に塑性変形させる際に当該素材の上部の肉厚を当該素材の下部の肉厚より厚くすることを特徴とする請求項3または4に記載のラックバーの製造方法。
【請求項6】
前記歯形成工程において、前記平板状成形パンチに代えて歯形成パンチを前記パンチ挿入口に挿入して前記素材の上部を押圧することにより、前記素材の上部にラック歯を形成することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のラックバーの製造方法。
【請求項7】
前記心金は、前記素材のラック歯を形成する部位に対向する反力部が、かまぼこ形を呈し、前記素材の内径の半分にほぼ等しい曲率半径を有する曲面状の下面と、前記素材の内径より僅かに狭い幅を有する平坦な上面とを備えることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載のラックバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−154422(P2012−154422A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14136(P2011−14136)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(508217249)國本工業株式会社 (4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】