説明

ラミネート体およびその形成方法

【課題】中空構造を有する粒子を含むインク組成物によって画像が形成された記録物に対してラミネートが施されたラミネート体の形成方法であって、該画像の変色を抑制することができるラミネート体の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかるラミネート体の形成方法は、中空構造を有する第1粒子、および表面に重合性官能基を有する第2粒子を含むインク組成物を用いて形成された画像を含む記録媒体に対して、前記記録媒体の少なくとも前記画像が形成された部分にシートを密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート体およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録において、白色の色材を含有するインク組成物の需要がある。白色の色材としては、酸化チタンの粉末が典型的な例であり、分散剤等とともにインク組成物に配合されることが多い。また、近年では、色材として、特許文献1に開示されているような中空構造を有する粒子が利用される例がある。
【0003】
一方、従来から、印刷物の保護等を行う目的で、各種印刷物に対してラミネートを施すことが行われている(例えば、特許文献2参照)。印刷物に対するラミネートの一般的な態様としては、表面に接着層を有するシートまたはフィルムを、印刷物に対して熱融着等によって貼り合わせて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4880465号公報
【特許文献2】特開2000−318093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、色材として中空構造を有する粒子を用いて形成した印刷物に対してラミネートを施す場合、色材の本来の色味が損なわれてしまうことがあった。具体例としては、白色の色材として中空粒子を用いた印刷物に対してラミネートを行ったときに、白色の印刷部分の白色度が低下する、あるいは透明化してしまうことがあった。発明者らは、このような不具合が、色材の中空構造に由来して生じるとの知見を得て、本発明を為すに至った。
【0006】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、中空構造を有する粒子を含むインク組成物によって画像が形成された記録物に対してラミネートが施されたラミネート体の形成方法であって、該画像の変色を抑制することができるラミネート体の形成方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、中空構造を有する粒子を含むインク組成物によって画像が形成された記録物に対してラミネートを行ったラミネート体であって、該画像の変色が抑制されるラミネート体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明にかかるラミネート体の形成方法の一態様は、
中空構造を有する第1粒子、および表面に重合性官能基を有する第2粒子を含むインク組成物を用いて形成された画像を含む記録媒体に対して、前記記録媒体の少なくとも前記画像が形成された部分にシートを密着させることを特徴とする。
【0009】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色が生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1において、
前記インク組成物は、熱重合開始剤を含み、
前記重合性官能基が、前記シートを密着させる工程において与えられる熱によって反応するようにしてもよい。
【0011】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色が生じにくいラミネート体をより少ない工程で形成することができる。
【0012】
[適用例3]
適用例2において、
前記シートを密着させる工程は、40℃以上200℃以下で行われることができる。
【0013】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色が生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記インク組成物は、放射線重合開始剤を含み、
前記重合性官能基が、前記シートを密着させる工程において与えられる放射線によって反応するようにしてもよい。
【0015】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色が生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記第1粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることができる。
【0017】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色が生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0018】
[適用例6]
本発明にかかるラミネート体の一態様は、
記録媒体と、
前記記録媒体上に形成され、重合体および第1粒子を含む画像層と、
少なくとも前記画像層を覆うように形成されたシートと、
を含むことを特徴とする。
【0019】
本適用例のラミネート体によれば、画像層の粒子に基づく色が変化しにくく、画像の信頼性を高めることができる。
【0020】
[適用例7]
適用例6において、
前記粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることができる。
【0021】
本適用例のラミネート体によれば、画像層の色の変化をさらに抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0023】
1.ラミネート体の形成方法
本実施形態のラミネート体の形成方法は、画像形成工程とラミネート工程とを含む。
【0024】
1.1.画像形成工程
画像形成工程は、記録媒体に、第1粒子および第2粒子を含むインク組成物を用いて画像を形成する工程である。
【0025】
1.1.1.記録媒体
画像形成工程で使用される記録媒体としては、インクジェット記録装置によってインク組成物(後述)の液滴を付着させるまたは塗布することができるものであれば特に限定されない。画像形成工程で使用される記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、多孔性フィルム、布(繊維製品)、多孔性セラミックスシート等の吸収性記録媒体が挙げられ、またプラスチック、ガラス等のインク吸収性を有さない基材の被塗布面にインク受容層やインク吸収層が形成されたものであってもよい。
【0026】
また、記録媒体は、グロス系、マット系、ダル系のいずれであってもよい。記録媒体の具体例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、および、インク受容層などが形成された塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムなどを挙げることができる。
【0027】
1.1.2.インク組成物
画像形成工程で使用されるインク組成物は、少なくとも第1粒子、および第2粒子を含む。画像形成工程で使用されるインク組成物は、溶剤として水を含有する水系、および溶剤として水を含有しない非水系のいずれであってもよい。以下の実施形態では、インク組成物が、溶剤として水を含有する水系のインク組成物である態様を例示する。
【0028】
1.1.2.1.第1粒子
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、中空構造を有する第1粒子を含有する。
【0029】
中空構造を有する第1粒子としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている粒子を好ましく用いることができる。
【0030】
ここで、中空構造とは、粒子に少なくとも屈折率の異なる物質が内包される構造のことを指し、例えば、いわゆるコア・シェル構造、すなわち空間がシェル(殻)によって取り囲まれた構造のことを指す。また、中空構造のコア(殻によって取り囲まれた内側)の物質は、液体でも気体でもよい。
【0031】
このような第1粒子は、少なくとも記録媒体に付着された後に、無彩色または有彩色を呈することができる。例えば、着色されていない第1粒子は、コアとシェルの屈折率の差に起因する光の散乱により、記録媒体に付着されたときに、無彩色である白色から灰色を呈することができる。また、第1粒子には、着色が可能であり、記録媒体に付着されたときに、彩度(色彩)を付与することも可能である。このような色彩は、例えば、コアまたはシェルに配置される物質を着色することや、着色しなくても、コアまたはシェルの光学的な寸法を変化させることによって、彩度を付与することができる。
【0032】
なお、無彩色、および有彩色との文言は、日本工業規格JIS Z8105の番号3008、および03009、並びに、日本工業規格JIS Z8113の番号03010、および03011に定義されるものであるが、本明細書では、無彩色とは、多少の色相を有してもよいものとする。
【0033】
またなお、本明細書において「白色のインク」とは、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に、該用紙が被覆される量のインクが吐出された印字物の明度(L*)と色度(a*、b*)が、Gretag Macbeth Spectrolino(X-Rite社製)の測色器を用いて計測した場合に、70≦L*≦100、−3.5≦a*≦1、−5≦b*≦1.5の範囲を示すインクのことをいう。
【0034】
第1粒子のシェル(殻)の材質としては、樹脂などの有機化合物、金属酸化物などの無機化合物により形成されることができる。また、コアに配置される物質についても特に限定されず、液体や気体とすることができる。なお、シェルの材質を、例えば、高分子化合物(樹脂)とすることや、シェルの厚みを小さくすること等により、コアに配置される物質をシェルを介して外部と置換することができる。そのため、例えば、粒子が、記録媒体に付着されたときには、粒子の内部の水分等の液体が、乾燥して外気と置き換わることによって、コアを空洞(実質的には大気)とすることができる。また、例えば、粒子は、インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞はインク組成物で満たされることができ、そのため、外部の媒質と近い比重を有するようになるため、インク組成物中における分散安定性を確保することができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0035】
第1粒子の平均粒子径(外径)(d50)は、好ましくは0.2μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.4μm以上0.8μm以下である。第1粒子の外径がこのような範囲にあれば、インク組成物中の分散を良好に保つことができ、また、記録媒体に付着された際に、所望の色を呈することができる。また、外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、所望の色が得られない場合がある。また、第1粒子の内径(すなわち、上述したコアの外径)は、0.1μm以上0.8μm以下程度が適当である。
【0036】
第1粒子の平均粒子径d50は、例えば、粒径加積曲線を用いて測定される。粒径加積曲線とは、水等の分散媒に分散された粒子について、粒子の直径、および当該粒子の存在数を求めることができる測定を行った結果を、統計的に処理して得られる曲線の一種である。本明細書における粒径加積曲線は、粒子の直径を横軸にとり、粒子の質量(粒子を球と見なしたときの体積、粒子の密度、および粒子数の積)について、直径の小さい粒子から大きい粒子に向かって積算した値(積分値)を縦軸にとったものである。
【0037】
そして、粒径d50とは、粒径加積曲線において、縦軸を規格化(測定された粒子の総質量を1と)したときに、縦軸の値が50%(0.5)となるときの、横軸の値すなわち粒子の直径のことをいう。
【0038】
粒子の粒径加積曲線は、例えば、動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置を使用することによって求めることができる。動的光散乱法は、分散している粒子にレーザー光を照射し、その散乱光を光子検出器で観測するものである。一般に分散している粒子は、通常ブラウン運動をしている。粒子の運動の速度は、粒子直径の大きな粒子ほど大きく、粒子直径の小さな粒子ほど小さい。ブラウン運動をしている粒子にレーザー光を照射すると、散乱光において、各粒子のブラウン運動に対応した揺らぎが観測される。この揺らぎを測定し、光子相関法等により自己相関関数を求め、キュムラント法およびヒストグラム法解析等を用いることで粒子の直径や、直径に対応した粒子の頻度(個数)を求めることができる。本実施形態にかかる粒子のようにサブミクロンサイズの粒子を含む試料に対しては、動的光散乱法が適しており、動的光散乱法により比較的容易に粒径加積曲線を得ることができる。動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置としては、例えば、ナノトラックUPA−EX150(日機装株式会社製)、ELSZ−2、DLS−8000(以上、大塚電子株式会社製)、LB−550(株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
【0039】
一方、粒子の粒径加積曲線は、本実施形態の粒子を含有するインク組成物、該インク組成物が付着された状態(例えば印刷物)、または、ラミネート体を形成した後の状態においても、例えば、電子顕微鏡法によって測定することができる。この方法は、電子顕微鏡写真から粒子の大きさを計測するもので、当該写真を、例えば画像処理して計測することにより、粒子の粒径加積曲線を求めることができる。より具体的には、個々の粒子の短軸径と長軸径を計測し、その面積と等しい円の直径(円相当直径)を算術的に求め、一定の視野から例えば50個以上の粒子をランダムに選択して求める方法が挙げられる。この方法によれば、インク組成物中に粒子以外の粒子(例えば顔料)が含有されている場合でも、電子顕微鏡画像上で、粒子を選別することができるため、粒子の粒径加積曲線を求めることができる。また、この測定における信頼性を高めたい場合には、計測する粒子の個数を増して求めるとよい。なお、ラミネート体である場合には、電子顕微鏡観察の試料として、ラミネート用シートを基材(紙等の記録媒体)から剥離したものとすることができ、当該剥離面(ラミネート用シート側または基材側)の表面を観察することにより、粒径加積曲線を求めることができる。
【0040】
さらに、インク組成物において、分散している粒子の粒径加積曲線を求める方法として、その他にも、遠心分離を利用する方法(以下、これを遠心法ということがある。)が挙げられる。遠心法の具体例としては、適宜な長さの遠心チューブにインク組成物を充填し、遠心操作を行った後、チューブの特定の位置(深さ)の範囲の遠心物を採取する。粒子の比重と、インク組成物の他の成分との比重差によって、遠心後の遠心チューブ内における粒子の存在位置が特定されるため、例えば、特定の範囲には、粒子が濃化している。そのため、当該遠心チューブの適宜な位置から、インク組成物の一部を採取し、これを上述の動的放射線散乱法等により測定することにより、粒子を含有するインク組成物における粒子の粒径加積曲線を求めることができる。
【0041】
上記第1粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。第1粒子の含有量(固形分)がこの範囲にあれば、例えば、インク組成物中の粒子の分散を良好に保つことができる。一方、第1粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。また、5質量%未満であると、白色度等の所望する色の濃度が不足する傾向にある。
【0042】
第1粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、例えば以下のような公知の方法を適用することができる。第1粒子の調製方法としては、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより第1粒子のエマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0043】
乳化重合法に用いるビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた第1粒子を得ることができる。
【0044】
乳化重合法に用いる界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。また、乳化重合法に用いる重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。この際の水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0045】
1.1.2.2.第2粒子
本実施形態の画像形成工程で使用するインク組成物は、第2粒子を含有する。第2粒子は、表面に重合性官能基を有する粒子である。
【0046】
第2粒子が表面に有する重合性官能基は、重合性を有する官能基であり、ラジカル重合性、カチオン重合性、およびアニオン重合性の少なくとも一種の重合性を有する官能基である。すなわち、第2粒子が表面に有する重合性官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性、およびアニオン重合性のそれぞれ単独の重合性を有してもよいし、複数の重合性を兼ね備えていてもよい。また、重合性官能基は、熱によって重合する性質および光等の放射線によって重合する性質の少なくとも一方を有する。
【0047】
インク組成物に含有される第2粒子の機能の一つとしては、上述の第1粒子を記録媒体の表面へ定着させることが挙げられる。インク組成物中の第2粒子の含有量は、インク組成物に対して0.01質量%以上30質量%以下の範囲、好ましくは、5質量%以上30質量%以下の範囲である。インク組成物中の第2粒子の含有量が、0.01質量%未満であるときには、充分な定着性が得られない場合があり、30質量%を超えると、インクジェットヘッドのノズルから吐出するときの安定性が低下することがある。
【0048】
(1)構造
第2粒子の構造としては、粒子の表面に、少なくとも一つの重合性官能基を有するものが挙げられる。また、第2粒子としては、樹枝状オリゴマー、ウレタンオリゴマーのような構造形成にかかる分子鎖と、その構造の周縁部に配置された重合性官能基と、を有する重合性オリゴマーが挙げられる。第2粒子は、この重合性オリゴマーのように、粒子の中心部と重合性官能基が配置される部位との境界が明確に画定されない粒子であってもよく、重合性オリゴマーについても粒子状の構造を有するため、第2粒子の範囲に含まれるものとし、第2粒子と称するものとする。
【0049】
(2)粒子径
第2粒子の粒子径d50は400nm程度以下が好ましく、より好ましくは5nm以上300nm以下である。第2粒子の粒子径は、例えば、上述の第1粒子の粒子径の測定に用いる動的光散乱等を用いて同様に測定することができる。
【0050】
(3)中心部の材質
第2粒子の中心部とは、第2粒子の構造のうち、重合性官能基を除く領域のことを指す。例えば、有機物粒子の表面に、少なくとも一つの重合性官能基を有する構造の第2粒子においては、中心部とは、有機物粒子のことを指し、樹枝状オリゴマー、ウレタンオリゴマーのような第2粒子においては、中心部とは、重合性官能基を除く領域のことを指す。重合性オリゴマー、ウレタンオリゴマーの構造については、後述の重合性オリゴマーの項で述べる。
【0051】
有機物粒子の表面に、少なくとも一つの重合性官能基を有する構造の第2粒子の中心部(有機物粒子)の材質としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0052】
このような有機物粒子は、例えば、公知の乳化重合によって得ることができる。また、乳化重合の際には同時に、得られる有機物粒子の表面に重合性官能基を導入することも可能である。このような例としては、例えば、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルモノマー)を重合触媒、および乳化剤を存在させた水中において乳化重合するときに、重合性官能基を有する不飽和ビニル単量体とともに重合することが挙げられる。なお、有機物粒子を形成した後に、重合性官能基を別途グラフト重合等により導入してもよい。これらの方法に用いられる不飽和ビニル単量体としては、一般的に乳化重合で使用されるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類が挙げられる。
【0053】
また、有機物粒子の材質としては、重合性官能基を導入しやすいように、カルボキシル基等の反応性の比較的大きい基を有する構造を有するものがさらに好ましい。また、有機物粒子の化学構造は、架橋構造を有していてもいなくてもよい。有機物粒子が架橋構造を有する場合には、架橋性単量体に由来する構造を0.2質量%以上4質量%以下含有しているものが好ましい。
【0054】
(4)重合性官能基
第2粒子の表面に存在する重合性官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、N−メチロール基、N−メチロールエーテル基、−COOCO−基、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、イタコン酸基、オキセタン環、およびβ−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート基等を挙げることができる。
【0055】
これらのうち、カチオン性重合性を有する官能基としては、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物によって導入される基が挙げられる。
【0056】
また、第2粒子の表面に配置されるエポキシ基としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどのエポキシ化合物によって導入されるエポキシ基が挙げられる。エポキシ化合物の中でも、硬化速度に優れるという観点から、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドに由来するエポキシ基が好ましく脂環式エポキシドを用いることが特に好ましい。また、第2粒子の表面に配置されるビニルエーテルとしては、ジまたはトリビニルエーテル化合物などのビニルエーテル化合物との反応によって表面に導入される基が挙げられる。
【0057】
第2粒子の表面に配置されるオキセタン環としては、特開2001−220526号、特開2001−310937号、特開2003−341217号の各公報に記載されている公知のオキセタン化合物によって導入されるオキセタン環を挙げることができる。なお、オキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1個ないし4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用すると、第2粒子の硬化後に、被記録媒体との密着性をさらに高めることができる。
【0058】
第2粒子の表面に存在する重合性官能基としては、各種公知のラジカル重合性官能基が挙げることができる。ラジカル重合性官能基を粒子の表面に導入するために使用される化合物としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書中において、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0059】
単官能(メタ)アクリレート類としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
二官能(メタ)アクリレート類としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
三官能の(メタ)アクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0062】
四官能ないし六官能の(メタ)アクリレート類としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
また、(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0064】
芳香族ビニル類としては、スチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0065】
さらに、ラジカル重合性化合物を粒子の表面に導入するために使用される化合物としては、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)などを用いてもよい。
【0066】
これらの化合物のうち、画像記録工程で使用されるインク組成物に好適に用いうる第2粒子としては、硬化速度の観点から(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類によって表面に重合性官能基が導入されたものが好ましく、特に硬化速度の観点から(メタ)アクリレート類に由来する重合性官能基を有する第2粒子が好ましい。
【0067】
また、第2粒子は、コアシェル構造を有する粒子であって、その表面に重合性官能基を有するものであってもよい。この態様の第2粒子は、シェル部がコア部を完全に被覆している形態のみならず、コア部の一部を被覆しているものであってもよい。また、シェル部のポリマーの一部がコア部内にドメインなどを形成しているものであってもよい。さらに、コア部とシェル部の中間に、更にもう一層以上、組成の異なる層を含む3層以上の多層構造を持つものであってもよい。第2粒子は、このような粒子の表面に重合性官能基が配置されたものであってもよい。
【0068】
さらに、コアシェル構造を有する第2粒子の場合は、その中心部は、公知の手法により、多段階の乳化重合などによって製造されることができる。より具体的には、特開平4−76004号公報で開示されている方法によって製造することができる。重合に用いられる不飽和ビニル単量体の例としては、先に例示したものと同様である。
【0069】
インク組成物中の第2粒子の含量は、組成物の全固形分に対して50質量%以上95質量%以下が適当であり、好ましくは、60質量%以上92質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以上90質量%以下の範囲である。
【0070】
(5)重合性オリゴマー
第2粒子としては、上記のような粒子の表面に重合性官能基を配したもの以外にも、オリゴマーの末端等に重合性官能基を導入したものであってもよい。ここで、オリゴマーとは、相対分子質量(分子量と同義である。)の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回、一般的には約2回ないし20回程度の繰り返し構造をもつ中程度の大きさの相対分子質量を有する分子をいう。オリゴマーは、重合性プレポリマー、ベースレジンなどと呼ばれることもある。
【0071】
(5−1)ウレタンオリゴマー
第2粒子としては、ウレタンオリゴマーを用いてもよい。ウレタンオリゴマーとは、分子中にウレタン結合と重合可能な不飽和二重結合とを一以上有するものをいう。
【0072】
ウレタンオリゴマーは、官能基としてアクリロイル基を1個ないし数個有しているため、重合反応を生じ、架橋重合する性質を有している。
【0073】
ウレタンオリゴマーとしては、ポリオールと、ポリイソシアネートおよびポリハイドロオキシ化合物と、の付加反応により生じるオリゴマーを挙げることができる。また、ウレタンオリゴマーとしては、例えば、ポリエステル系ウレタンアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、ポリブタジエン系ウレタンアクリレート、ポリオール系ウレタンアクリレート等を挙げることができる。ウレタンオリゴマーの市販品としては、例えば、U−4HA、U−15HA(いずれも新中村化学工業株式会社から入手可能)等を挙げることができる。
【0074】
第2粒子として、ウレタンオリゴマーを選択する場合には、その分子量は、好ましくは500ないし20000程度、より好ましくは500ないし10000程度とするこおtが好適である。
【0075】
(5−2)樹枝状オリゴマー
第2粒子としては、樹枝状オリゴマーを用いてもよい。樹枝状オリゴマーとしては、下記一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物と下記一般式(2)で示される多価メルカプト化合物とが、マイケル付加(カルボニル基に関しβ位)により重合したものを挙げることができる。
【0076】
【化1】

【0077】
【化2】

【0078】
〔上記一般式(1)中、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは化合物R(OH)のうちn個のヒドロキシル基を式中のエステル結合に供与した残り部分を表し、R(OH)は、炭素数2〜8の非芳香族の直鎖又は分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるが、該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水結合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、又はこれらの多価アルコール又は多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルであり、ここにm≧nであり、nは2〜20の整数を表す。〕
【0079】
〔上記一般式(2)中、Rは、単結合であるか、炭素数1の炭化水素基若しくは炭素数2〜5の、骨格中に酸素原子を更に含んでいてよく、直鎖又は分枝鎖であってよい炭化水素基であるか、又はそれら炭化水素基に更に式2のチオメチル基の少なくとも一部と結合しているカルボニルオキシ基を有する基であり、pは2〜6の整数を表し、但しRが単結合を表すときはpは2を表し、Rの炭素数が1であるときはpは2〜4の整数を表す。〕
【0080】
一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物への一般式(2)で示される多価メルカプト化合物のマイケル付加は、得られる樹枝状オリゴマーが、その後もなお炭素−炭素二重結合に基づく放射線重合を行うことができるように、一般式(1)で示される化合物が有する炭素−炭素二重結合が、全体として0.1%以上50%以下の範囲で残存するように行われることが好ましい。
【0081】
例えば、一般式(2)で示される多価メルカプト化合物のメルカプト基の、一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物の炭素−炭素二重結合に対する付加割合は、該基および二重結合のモル比で1/200ないし1/2となるようにすることが好ましく、1/100ないし1/3となるようにすることがより好ましく、1/50ないし1/5となるようにすることが更に好ましく、1/20ないし1/8となるようにすることが特に好ましい。
【0082】
また、一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物へ一般式(2)で示される多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状オリゴマーは、重合のための十分量の官能基を有することが好ましい。このためには、樹枝状オリゴマーの分子量は、炭素−炭素二重結合1モル当たりの分子量が100ないし100000の範囲にあることが好ましい。また、樹枝状オリゴマーの好ましい分子量は、1000ないし50000であり、より好ましくは1500ないし40000、特に好ましくは2000ないし30000である。
【0083】
樹枝状オリゴマーにおいて、一般式(1)におけるアクリレート基の個数(n)は、好ましくは2ないし20であり、より好ましくは2ないし10、更に好ましくは2ないし6である。一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物の好ましい具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロバントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロバントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロバントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコールテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコールテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アルコキシ変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
樹枝状オリゴマーにおいて、一般式(2)で示される多価メルカプト化合物としては、1,2−ジメルカプトエタン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、ビスジメルカプトエタンチオール(HS−CHCH−S−CHCH−SH)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0085】
樹枝状オリゴマーの合成に際しては、必要に応じて重合防止剤を加えることができる。重合防止剤としては、(メタ)アクリレート化合物の重合防止に一般に用いられるヒドロキノン系化合物、フェノール系化合物を、本発明においても使用することができる。
【0086】
その具体例としては、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテロール、p−tert−ブチルカテコール、クレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール(BHT)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0087】
樹枝状オリゴマーの合成の完了の確認は、液体クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、その他の一般的な分析機器により確認することができる。
【0088】
樹枝状オリゴマーにおける一般式(2)で示される多価メルカプト化合物の、一般式(1)で示される多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリレート基へのマイケル付加反応は、多官能(メタ)アクリレート化合物(モノマー)と多価メルカプト化合物とを混合し、室温ないし100℃にて、塩基性触媒を添加することにより行うことができる。反応時間は、通常約30分間ないし約6時間である。
【0089】
以上例示のように製造される樹枝状オリゴマーは、中心から放射状に分子鎖が伸び、これらの分子鎖が全体として球状の構造を採っており、この球状の部分が第2粒子の中心部を形成し、その周辺部に重合性を有する官能基が配置される構造を有する。
【0090】
樹枝状オリゴマーがインク組成物に配合された場合には、第1粒子を定着させる性能の他、形成される塗膜がより良好となるが、そのメカニズムの詳細は定かではない。しかしながら、一般にチオールとアクリレートを用いた反応はラジカル重合等において酸素阻害を受けにくく低エネルギーで硬化することと、硬化収縮が少ない為密着性に優れる特性を有するものである。上述のようにチオールとアクリレートから製造される樹枝状オリゴマーにおいては、末端のチオール残基はなく厳密には同様の反応と言えないものの、硬化後の膜の強度等の特性(密着性)等を向上させるものと推定される。
【0091】
(6)第2粒子の性状
第2粒子は、エマルジョンとしてインク組成物に添加されることが好ましい。
【0092】
このようなエマルジョンは、第2粒子を濃度10質量%で水に分散させた水性エマルジョンにおいて、テフロン(登録商標)板上での接触角が70゜以上である第2粒子を選択することがさらに好ましい。さらに、第2粒子を濃度35質量%で水に分散させた水性エマルジョンの表面張力は、40×10−3N/m(40dyne/cm、20℃)以上となるようにすることが好ましい。
【0093】
1.1.2.3.その他の成分
(1)水
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、水を含有することができる。インク組成物に使用可能な水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水などである。上述の粒子の分散の妨げにならない程度であれば、水中にはイオン等が存在してもよい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、カビやバクテリアの発生を長期間抑制することができ、インク組成物を長期に安定に保つことができるためより好ましい。
【0094】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物における水の含有量は、第1粒子および第2粒子の分散が維持できる範囲で限定されないが、インク組成物の全量に対して50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。インク組成物における水の含有量が、この範囲内であると、第1粒子の分散性がより良好となり保存安定性をさらに高めることができる。
【0095】
なお、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、水以外の成分の含有量が5質量%以上50質量%以下であることを示している。本明細書では、水以外の成分のことを固形分と称することがあり、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、インク組成物における固形分の濃度が5質量%以上50質量%以下であることを指している。
【0096】
(2)重合開始剤
本実施形態の画像形成方法で使用されるインク組成物は、必要に応じて、重合開始剤を含有してもよい。例えば、インク組成物が、ラジカル重合性の官能基を有する第2粒子を含有する場合、第2粒子は熱を加えたり、放射線を照射したりすることにより、重合することができるが、その重合の速度をより高める必要がある場合には、熱重合開始剤や放射線重合開始剤を添加することができる。
【0097】
熱重合開始剤としては、第2粒子がエポキシ基を表面に有する場合は、脂肪族アミン、芳香族アミン、有機二塩基性酸無水物等、イソシアネート基を表面に有する場合には、カルボキシル基、水酸基等を有する化合物、N−メチロール基又はN−メチロールエーテル基を表面に有する場合には、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等を有する化合物が挙げられる。熱硬化剤の含有量は、熱硬化剤の種類、上記の熱硬化性ポリマーの種類やその使用量等により選定されるが、インク組成物に含有する場合には、第2粒子の質量に対して、1質量%以上500質量%程度であれば良い。
【0098】
放射線重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物等を挙げることができる。放射線重合開始剤として、さらに具体的には、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル、チオキサントン、α−ジカルボニル、およびアントラキノンを挙げることができる。
【0099】
また、市販されている重合開始剤としては、Vicure 10、30(Stauffer Chemical社製)、Irgacure 127、184、500、651、2959、907、369、379、754、1700、1800、1870、819、819DW、OXE01、Darocur 1173、TPO、ITX(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)、QuantacureCTX(Aceto Chemical社製)、Kayacure、DETX−S(日本化薬社製)、ESACURE KIP150(Lamberti社製)の商品名で入手可能な重合開始剤を挙げることができる。また、インク組成物が水系のインク組成物である場合には、重合開始剤は、水溶性を有するものがより好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、Irgacure 819DWが挙げられる。
【0100】
なお、水性のインク組成物とする場合には、重合開始剤は、必ずしも水溶性でなくてもよく、油溶性であってもよいし、難溶性であってもよい。これは、例えば、重合開始剤が油溶性である場合には、重合開始剤は、水系のインク組成物において、油相に存在することになり、また、難溶性であれば、重合開始剤は、例えば、画像形成工程の後、記録媒体上で水分がある程度除去された際に、重合性官能基に接触するようになり、所望の作用を発揮することができる。さらに、重合開始剤は、相間を移動する性質を有してもよく、インク組成物に応じて、かつ、必要に応じて適宜選択されることができる。
【0101】
(3)浸透助剤
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、必要に応じて、浸透助剤を含有してもよい。浸透助剤としては、多価アルコール類が挙げられる。多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4以上8以下のアルカンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびグリコールエーテル類が挙げられる。
【0102】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルがインク組成物に配合されると、さらに良好な記録品質を得ることができる。
【0103】
このような浸透助剤の機能の一つとしては、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることが挙げられる。また、これらのアルカンジオールは、インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、インク組成物の乾燥を防止し、インクジェット記録ヘッド部分における目詰まりを防止する効果も有する場合がある。
【0104】
また、アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4ないし8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。さらにこの中でも炭素数が6ないし8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、インク組成物の記録媒体への浸透性を高める作用が特に良好であるためより好ましい。
【0105】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に浸透助剤を含有させる場合には、浸透助剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0106】
また、多価アルコールは、複数の機能を有することができ、上記浸透助剤としての機能の他の機能の一つとしては、インクの乾燥を抑制することが挙げられ、インク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止する効果を高めることができる。さらに、多価アルコールは、一分子内の水酸基の数が、疎水性領域の大きさに対してより多い化合物であるほうが、水分を捕捉する機能が高くインク組成物の乾燥を抑制する効果が高い。
【0107】
(4)界面活性剤
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、界面活性剤を含有することができる。本実施形態のインク組成物に好適な界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤の少なくとも一種が挙げられる。これらの界面活性剤がインク組成物に配合されると、記録媒体の被記録面への濡れ性が高まり、インク組成物の記録媒体への浸透性をさらに向上させることができる。
【0108】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えばBYK−347、BYK−348、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに本実施形態のラミネート体の形成方法で使用されるインク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0109】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。
【0110】
(5)pH調整剤
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、pH調整剤を含有することができる。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に好適なpH調整剤としては、特に制限されず、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムの少なくとも一種が挙げられる。またこれらのうち、pH調整剤としてトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アミンを選択すると、インク組成物のpHの調整がより容易となる。インク組成物にpH調整剤を含有させる場合には、その含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%であり、より好ましくは0.1質量%以上2質量%以下である。
【0111】
(6)その他の成分
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、記録媒体へのインク組成物の定着を目的として、樹脂を含有してもよい。このような樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体または共重合体、あるいはその変性体、あるいはポリウレタン、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でもよい。樹脂の機能の一つとしては、第1粒子を記録媒体に定着させることが挙げられる。
【0112】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、第1粒子によって、例えば、白色(無彩色)等の画像を形成することができるが、さらに他の色材を含有してもよい。このような色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に添加することができる色材の色としては、有彩色でも無彩色でもよい。インク組成物に色材を含有させる場合には、例えば、記録媒体に塗布されたときに形成される画像に色彩を付与することができる。
【0113】
インク組成物に使用可能な染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0114】
色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。インク組成物に色材を含有させる場合には、例えば、記録媒体に塗布されたときに形成される画像に、金属放射線沢とともに、放射線沢の色を付与することができる。
【0115】
インク組成物に使用可能な染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0116】
インク組成物に使用可能な顔料としては、無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
【0117】
無機顔料としては、例えば。カーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。顔料の色としては、黒色、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであってもよい。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラックを含有させることが例示できる。
【0118】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はその平均粒径が10〜200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜150nm程度のものである。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1〜25質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%程度の範囲である。
【0119】
また、インク組成物に顔料を含有させる場合には、当該顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インク組成物に顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク組成物中の色材の含有量に対して、5〜200質量%、好ましくは30〜120質量%であり、分散すべき色材によって適宜選択するとよい。
【0120】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に使用可能な顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などを使用することができる。顔料の色としては、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであってもよい。例えば、イエロー、マゼンタ、シアンの基本3色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルーを含有させることが例示できる。
【0121】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物には、白色の顔料を使用してもよい。インク組成物に使用可能な白色顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニア等の周期表第IV族の元素の酸化物が挙げられる。白色顔料としては、その他にも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、カオリン、クレー(粘土鉱物)、タルク、白土、水酸化アルミ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0122】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はその平均粒径が10nm以上200nm以下の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50nm以上150nm以下程度のものである。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下程度の範囲である。
【0123】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に顔料を含有させる場合には、当該顔料をインク組成物に分散させるための顔料分散剤をさらに添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するために慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インク組成物に顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク組成物中の顔料の含有量に対して、5質量%以上200質量%以下、好ましくは30質量%以上120質量%以下であり、分散すべき顔料によって適宜選択するとよい。
【0124】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物には、有機溶剤を添加してもよい。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、またはエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)の他、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等を用いることができる。
【0125】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、防腐剤、および防かび剤などの添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0126】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0127】
なお、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、他の用途にも適用が可能であり、例えば、筆記具、スタンプ、記録計、ペンプロッター、インクジェット記録装置等に適用することができる。例えば用途が、インクジェット記録方式の印刷である場合、インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2〜10mPa・sであり、より好ましくは3〜5mPa・sである。インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルからインク組成物が適量吐出され、インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、ラミネート体の形成方法に使用する場合により好適である。
【0128】
1.1.3.画像形成方法
画像形成工程における画像形成の具体的な方法としては、記録媒体に対して画像を形成する方法であれば、特に限定されず、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどの方法により行うことができる。しかし、上述のインク組成物は、インクジェット式記録ヘッドによって吐出させ、記録媒体に付着させることが好ましい。以下では、インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に上述のインク組成物を吐出し、記録媒体上に付着させてドット群を形成する方法の一例を示す。
【0129】
インクジェット式記録ヘッドの方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏放射線電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。本実施形態の画像形成工程では、上記いずれのインクジェット式記録ヘッドを用いてもよい。
【0130】
画像形成工程で用いるインクジェット記録装置としては、上記のインクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジなどを備えたものを例示できる。インクジェット式記録ヘッドには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの少なくとも4色のインクセットを収容するインクカートリッジを備えて、フルカラー印刷ができるように構成されてもよい。本実施形態では、これらのインクカートリッジの少なくとも1つに、あるいはさらに専用のカートリッジを設けてこれに、上述のインク組成物を充填し設置する。また、それ以外のカートリッジには、通常のインクなどが充填されてもよい。インクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。
【0131】
また、画像形成工程で用いるインクジェット記録装置は、紫外線照射装置を備えたものとしてもよい。さらに、画像形成工程で用いるインクジェット記録装置は、記録媒体を加熱する装置を備えたものとしてもよい。このような装置を用いることにより、ラミネート工程を行う前に、インク組成物中の第2粒子を記録媒体上で硬化させることができる。
【0132】
紫外線照射装置を備えるインクジェット記録装置としては、例えばキャリッジ側面に光照射装置が搭載されたものや、インクジェット記録装置とは別体の外部光源から記録媒体に光を導く光ファイバー等が構成されたものが挙げられる。
【0133】
インクジェット記録装置に紫外線照射装置を設ける場合、照射光源の波長は、特に制限されないが、好ましくは350nm以上、450nm以下である。光の照射量は、記録媒体に対して、好ましくは10mJ/cm以上、20000mJ/cm以下であり、より好ましくは50mJ/cm以上、15000mJ/cm以下の範囲で行う。この範囲内における紫外線照射量であれば、記録媒体上に形成されたインク組成物の塗膜の硬化反応を十分に行うことができる。
【0134】
紫外線の照射方法としては、その他にもメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプなどの光を光ガイド等によって塗膜に導いて行うことも可能である。また、光源としては、たとえば、Fusion System社等から入手可能なHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。また、光源としては、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子を用いることができ、このような光源からの紫外線を照射することもできる。
【0135】
加熱装置を備えるインクジェット記録装置としては、例えば、赤外線ランプをキャリッジに設けて記録媒体を加熱するものや、記録媒体を搬送するローラー等を加熱して記録媒体を加熱するものが挙げられる。また例えば、加熱は、記録媒体に熱源を接触させて加熱する方法、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長をもつ電磁波)などを照射し、または熱風を吹き付けるなど記録媒体に接触させずに加熱する方法などを挙げることができる。記録媒体の加熱は、印刷と同時に行っても、印刷の後に行ってもよく、印刷を行っている間を通して行ってもよい。
【0136】
記録媒体の加熱方法としては、ガイドローラー等にヒーターを設け、記録媒体に熱を加える方法、記録媒体上のインク組成物に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波加熱等が好ましく用いられる。
【0137】
記録媒体を加熱する際の温度範囲は、インク組成物中に存在する液体成分の揮発を促進することができる温度以上であることが好ましく、例えば、40℃以上、好ましくは40℃ないし80℃であり、より好ましくは40℃ないし60℃の範囲である。温度が80℃を超える場合、記録媒体の種類によっては変形等の不具合が生じて記録媒体の搬送に支障が生じたり、記録媒体が室温まで冷えた際に収縮等の不具合が起こる場合がある。
【0138】
また、加熱時間は、インク組成物中に存在する液体成分が所望の量だけ揮発するようにできれば特に制限はなく、用いる液体成分、樹脂成分・印刷速度、乾燥の効率等を加味して適宜設定することができる。
【0139】
以上のような画像形成工程により、記録媒体上に、インク組成物を用いて画像を形成することができる。記録媒体上に形成される画像の態様としては、特に限定されず、記録媒体の全面、または一部にインク組成物を付着させる。
【0140】
1.2.ラミネート工程
ラミネート工程は、画像形成工程を経ることによって、記録媒体に画像が形成された後、該記録媒体の少なくとも画像が形成された部分に、シートを密着させる工程である。本工程で使用するシートは、本明細書では、「ラミネート用シート」または単に「シート」と称することがある。シートは、例えば、基材および密着層を有する。シートは、基材および密着層の他に、他の機能を発揮する層を有してもよい。また、ラミネート用シートは、記録媒体の両面に設けられてもよく、このようにすれば、より記録媒体および画像を保護する作用を高めることができる。
【0141】
一般的にシートは、熱ラミネート用である場合、密着層(糊層、シーラント層などと称される場合がある)が熱可塑性樹脂で構成されており、加熱によって熱可塑性樹脂を軟化・溶融させて糊状にし、被着物に圧着させるものである。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂(IO)、エチレン・αーオレフィン共重合体、アモルファスポリエステルなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびそれらの変性体などが挙げられる。密着層の厚さは、例えば15μm以上100μm以下とすることができる。
【0142】
また、ラミネート用シートは、市販のものを用いてもよいが、例えば、タンデム押出ラミネート、サンドイッチ押出ラミネート、ドライラミネート、など一般的に用いられている手法を用いて、基材と密着層を形成して製造することができる。この場合の加工温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは200〜280℃である。また、このような加工においては、例えば、基材と密着層の間にオゾン処理を施す等の操作を付加してもよい。
【0143】
1.2.1.基材
基材の形状は、例えば、薄膜状、フィルム状、シート状とすることができる。基材の厚みは特に限定されず、例えば、10μm以上2mm以下とすることができる。基材の機能の一つとしては、少なくとも記録媒体のインク組成物が付着した部位を覆って、当該部分を外力等から保護することが挙げられる。また基材は、記録媒体に形成された画像を基材を通して視認できる程度以上に透明であることが好ましい。さらに、基材は、記録媒体に形成された画像を基材を通して視認できる程度以上に透明であれば、着色されていてもよい。
【0144】
基材の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびポリスチレン、並びにそれらの共重合体、並びにそれらの変性体が挙げられる。また、これらの材質は、基材において延伸等により一軸または多軸の配向性が付与されてもよい。
【0145】
基材の厚みは、好ましくは6μm以上100μm以下、より好ましくは7μm以上40μm以下である。また基材には、滑剤、アンチブッロキング剤、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、その他の添加剤が配合されていてもよい。
【0146】
1.2.2.密着層
本実施形態のシートは、密着層を有する。密着層は、基材の一方の面に形成されている。密着層の厚みは、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。密着層の機能の一つとしては、記録媒体に接着、圧着または融着されることにより、記録媒体と基材とを密着させることが挙げられる。
【0147】
密着層は、例えば、記録媒体に対して、接着または熱融着可能な材質で形成される。密着層は、例えば、粘着剤や、熱可塑性樹脂により形成されることができる。熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されず、ポリエチレン、アイオノマー、ポリアクリル酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、およびそれらの変性体などが挙げられる。
【0148】
1.2.3.ラミネートの態様
本工程におけるラミネートの態様は、一般的な方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、画像が記録された記録媒体を、ラミネート用シートによって挟持し、このような積層体を、プレスまたはローラーによって圧着させる方法が挙げられる。このとき、密着層が粘着剤を含む場合であって、インク組成物中の第2粒子がラミネート工程の前に既に硬化(重合)されている場合には、加熱、放射線の照射等を行う必要はない。
【0149】
一方、密着層が粘着剤を含む場合であっても、インク組成物中の第2粒子が未硬化(未重合)の場合には、本工程において、加熱または放射線を照射して行う。他方、密着層が熱可塑性樹脂を含む場合には、ラミネート工程は、加熱して行われるが、このときの熱を利用して第2粒子の硬化を行ってもよい。さらに、密着層が熱可塑性樹脂を含む場合であって、インク組成物中の第2粒子が未硬化の場合には、加熱の他に、放射線を照射して行ってもよい。
【0150】
ラミネート工程において加熱を行う場合には、加熱によって達成される温度は、40℃以上200℃以下が好ましい。また、ラミネート工程において放射線の照射を行う場合には、例えば、該放射線をシートを透過させて照射することができる。
【0151】
1.3.第2粒子の硬化
本実施形態のラミネート体の形成方法においては、第2粒子は、画像形成工程において記録媒体にインク組成物が付着されたときから、ラミネート工程が終了するまでの間のいずれの時点で重合(硬化)してもよい。既述したが、第2粒子の重合は、画像形成工程において行われてもよいし、ラミネート工程において行われてもよい。
【0152】
これにより、第1粒子の周囲を第2粒子の重合体が覆うような構造が形成される。そのため、本実施形態のラミネート体の形成方法によれば、形成されるラミネート体において、第1粒子の空隙に、例えば、ラミネート用シートに由来する物質を侵入させにくくすることができる。したがって、本実施形態のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色が生じにくいラミネート体を形成することができる。さらに、本実施形態のラミネート体の形成方法において、ラミネート工程を加熱して行う場合には、当該加熱によって、第2粒子を重合(硬化)させることができるため、より少ない工程で、画像の変色が生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0153】
2.ラミネート体
上述の通り、本実施形態のラミネート体の形成方法によって形成されるラミネート体は、記録媒体と、記録媒体上に形成され、重合体および第1粒子を含む画像層と、少なくとも画像層を覆うように形成されたシートと、を含む。このようなラミネート体は、画像層の粒子に基づく色が変化しにくく、画像の信頼性を高めることができる。なお、前記重合体とは、上述の第2粒子が重合して形成されたものを指す。
【0154】
また、第1粒子の平均粒子径d50が、0.4μm以上0.8μm以下であるようにすれば、画像層の色の変化をさらに抑制することができる。
【0155】
なお、上述のインク組成物によって、記録媒体に形成された画像において、第1粒子を白色の色材として用いる場合、画像の白色度は、日本工業規格(JIS)Z8715:1999「色の表現方法−白色度」に記載された指標(例えば白色度指数)によって数値化することができる。このような数値を得るための測定は、例えば、日本工業規格(JIS)Z8722:2000「色の測定方法−反射および透過物体色」に記載された方法によって行うことができる。また、このような測定が可能な装置としては、一般に市販されている装置を用いることができる。一方、簡易的に白色度を評価する場合には、例えばLab表色系を評価可能な装置を用いて、L*値(明度)を用いて行うことができる。
【0156】
3.実施例および比較例
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0157】
3.1.インク組成物
3.1.1.第1粒子
第1粒子としては、表1に記載の市販品「SX8782(D)」(JSR株式会社製)を用いた。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。また、「SX8782(D)」の熱分解温度は、300℃〜330℃である。
【0158】
3.1.2.第2粒子
第2粒子としては、次の3種類を用意した。また、第2粒子の比較対象として、表面に重合性官能基を有さない粒子を以下の2種類準備した。
【0159】
(第2粒子1)
攪拌機、環流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応溶液に、イオン交換水900gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム2gを添加し、溶解後、予めイオン交換水70g、ラウリル硫酸ナトリウム1.0gにスチレン53g、ブチルアクリレート59g、グリシジルメタクリレート48g、さらに分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.16gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応容器内に連続的に1時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間の熟成を行った。続いて、予めイオン交換水70g、ラルリル硫酸ナトリウム1.0g、アクリルアミド1gにスチレン79g、ブチルアクリレート80g、およびt−ドデシルメルカプタン0.16gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応容器内に連続的に1時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間の熟成を行った。続いて、重合開始剤として過硫酸アンモニウム2gをイオン交換水20gに溶解した水溶液を反応容器内に添加し、さらに予めイオン交換水300g、ラウリル硫酸ナトリウム2g、アクリルアミド16gにスチレン298g、ブチルアクリレート297g、メタクリル酸29g、およびt−ドデシルメルカプタン0.65gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応容器内に連続的に3時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られたエマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニア水とを添加して固形分40重量%、pH8に調製した。得られたエマルジョンは、第2粒子として、樹脂粒子がコアシェル構造を有するものであって、表面張力57×10−3N/m、接触角90゜の性状を示した。このエマルジョン中の第2粒子の粒径d50は、0.09μmであった。
【0160】
(第2粒子2)
第2粒子として、市販品のウレタン系オリゴマー、U−15HA(新中村化学工業株式会社製)を用意した。
【0161】
(第2粒子3)
第2粒子として、樹枝状ポリマーを用意した。樹枝状ポリマーは、1L容の4つ口フラスコ内に、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)20g(メルカプト基0.19モル)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物212g(炭素−炭素二重結合2.12モル)、ハイドロキノン0.1g、およびベンジルジメチルアミン0.01gを加え、60℃で12時間反応させて得た。得られた樹枝状ポリマーにつき、ヨードメトリー法にてメルカプト基の消失を確認した。ゲル濾過クロマトグラフィーによれば、得られた樹枝状ポリマーの分子量は、11000であった。
【0162】
(粒子1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、および滴下漏斗をそなえたフラスコに過硫酸カリウム0.5重量部と純水80重量部とを加えて溶解し、攪拌しながら、内温を70℃まで加熱した。一方、下記の成分を混合し、攪拌して乳化物を調製した。この乳化物を滴下漏斗を用いて上記フラスコ内に3時間かけて徐々に滴下して乳化重合を行った。得られたエマルジョンにアンモニアを添加してpH8に調製し、固形分40重量%で粒子の平均粒子径が0.15μm、表面張力が67mN/m、接触角88゜のエマルジョンを得た。なお、当該粒子には、重合性官能基を導入しておらず、これを粒子1とした。
【0163】
(粒子2)
まず1L容の4つ口フラスコ内に、グリシジルメタクリレート120g、メチルメタクリレート80g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを300g入れ、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AlBN)を8g投入し、80℃で6時間、重合を行った。これに続いてアクリル酸61g、及びトリフェニルホスフィン1gを投入し、120℃で24時間反応させた。得られた溶液の酸価を測定したところ0であり、反応が終了していることが確認された。このようにして得られたポリマー粒子の分子量は、15000であった。なお、粒子2は、重合性の官能基を有さない粒子である。
【0164】
3.1.3.インク組成物の調製
上記記載の第1粒子、第2粒子1ないし3、粒子1および2、多価アルコール、親水性物質、pH調整剤、界面活性剤、並びにイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例1〜8、および比較例1〜6のインク組成物を得た。なお、表1の実施例1〜8、および比較例1〜6に記載されている数値の単位は、質量%であり、粒子等についてはいずれも固形分換算で表記した。
【0165】
【表1】

【0166】
多価アルコールは、試薬として入手したグリセリンを用いた。
【0167】
浸透助剤としては、試薬として入手した1,2−ヘキサンジオールを用いた。
【0168】
pH調整剤としては、試薬として入手したトリエタノールアミンを用いた。
【0169】
樹脂としては、スチレンアクリル酸共重合体「UF−5022」(東亜合成株式会社製、アニオン性スチレンアクリル樹脂)を用いた。
【0170】
界面活性剤としては、「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)(ポリシロキサン系界面活性剤)を用いた。
【0171】
熱重合開始剤としては、アルマテックスH700(三井化学株式会社より入手)を用いた。
【0172】
光重合開始剤としては、Irgacure 819DW(チバ・スペシャルティケミカルズから入手)を用いた。
【0173】
水は、試薬として入手したイオン交換水を用いた。
【0174】
3.2.ラミネート用シート
ラミネート用シートは、密着層に低密度ポリエチレンを含有するタイプの株式会社プライムポリマー製、商品名「ウルトゼックス」を入手して用いた。低密度ポリエチレンのTgは、−125℃である。
【0175】
3.3.評価方法
3.3.1.ラミネート体の作成
まず、表1に記載された各例のインク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。そしてインクカートリッジをプリンタに装着し、記録媒体として、インクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)に対して印刷を行った。印刷は、720×720dpiの解像度で行い、パターンは、100%dutyのベタパターンとした。得られた印刷物は、目視観察では白色を呈した。なお、ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のものを装着した。これは、ダミーとして用いたもので、印刷には用いなかった。
【0176】
なお、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
次に、得られた印刷物を乾燥させた後、ラミネート用シートによって狭持し、栄和化工株式会社製、型式L−1−5ラミネート装置によって、ラミネート体を形成した。ラミネート装置には、温度調節可能な加熱装置が付属しており、紫外線照射装置として、キセノンランプを光源とし、光ファイバーにて、記録媒体とラミネートシートとが接合される直前の部分に紫外線を含む光が照射されるように設置した。
【0177】
各実施例および各比較例において、加熱したものについては設定温度を、光照射をおこなったものについては●を表1に記入した。
【0178】
3.3.2.ラミネート体の評価
各実施例および各比較例のラミネート体のエージング試験を行った。
【0179】
まず、各実施例および各比較例のラミネート体の白色度を、それぞれL*値を測定することによって評価した。測定は、標準黒色紙に各試料を載せて行った。用いた装置は、Gretag Macbeth SpectroscanおよびSpectrolino(X−Rite社製)であり、放射線源はD50とした。
【0180】
次に各試料のエージングを、それぞれ60℃にて1週間実施した。そして、再び各試料のラミネート体の白色度を、それぞれ上記と同様にL*値によって評価した。
【0181】
評価基準は、
A:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が3未満
B:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が3以上5未満
C:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が5以上10未満
D:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が10以上
とし、各試料の結果を表1に併記した。なお、ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が大きいほど、目視観察では白さが低下して透明感を生じる傾向があった。
【0182】
3.4.評価結果
表1をみると、実施例の試料は、いずれも、ラミネート後のエージング特性に優れていた。すなわち、中空構造を有する第1粒子および表面に重合性官能基を有する第2粒子を含むインク組成物を用いて形成した実施例のラミネート体は、画像の透明化が生じにくいことが判明した。これに対して、中空構造を有する第1粒子および表面に重合性官能基を有さない第2粒子を含むインク組成物を用いて形成した比較例のラミネート体は、画像の透明化が生じやすいことが判明した。
【0183】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有する第1粒子、および表面に重合性官能基を有する第2粒子を含むインク組成物を用いて形成された画像を含む記録媒体に対して、前記記録媒体の少なくとも前記画像が形成された部分にシートを密着させるラミネート体の形成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記インク組成物は、熱重合開始剤を含み、
前記重合性官能基が、前記シートを密着させる工程において与えられる熱によって反応することを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記シートを密着させる工程は、40℃以上200℃以下で行われることを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記インク組成物は、放射線重合開始剤を含み、
前記重合性官能基が、前記シートを密着させる工程において与えられる放射線によって反応することを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記第1粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項6】
記録媒体と、
前記記録媒体上に形成され、重合体および第1粒子を含む画像層と、
少なくとも前記画像層を覆うように形成されたシートと、
を含むことを特徴とするラミネート体。
【請求項7】
請求項6において、
前記粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることを特徴とするラミネート体。

【公開番号】特開2012−6278(P2012−6278A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144613(P2010−144613)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】