説明

ランキンサイクル装置

【課題】 ランキンサイクル装置において蒸発器から膨張機に供給される蒸気の圧力を目標圧力に応答性良く制御する。
【解決手段】 目標圧力設定手段M5が膨張機12に供給される蒸気の実流量および温度に基づいて該蒸気の目標圧力を設定し、予測流量演算手段M1がエンジンのスロットル開度THおよび回転数Neに基づいて膨張機12に供給される蒸気の予測流量Qsを演算し、目標回転数演算手段M6が前記予測流量Qsおよび目標圧力に基づいて膨張機12の目標回転数を演算するので、膨張機12に供給される蒸気の実流量の応答遅れの影響を受けることなく、スロットル開度THの変化に即座に応答する蒸気の予測流量Qsを用いて蒸気の圧力を目標圧力に応答性良く制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル装置において、蒸発器への蒸気の供給量を変化させることなく、膨張機の入口での蒸気圧力を目標圧力に精度良く制御すべく、蒸発器の出口での蒸気の流量および前記目標圧力に基づいてフィードフォワード値を算出するとともに、膨張機の入口での蒸気圧力および前記目標圧力の偏差に、前記蒸気の流量に基づいて算出したフィードバックゲインを乗算してフィードバック値を算出し、これらフィードフォワード値およびフィードバック値の加・減算値に基づいて膨張機の回転数を制御するものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開2004−60462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ランキンサイクル装置を高効率な状態に維持するには、エンジン負荷の変動に対して、膨張機に供給される蒸気の温度および圧力を最適値に制御する必要があり、従来の一般的な制御では、蒸発器への給水量を変化させることで蒸気温度を制御し、膨張機の回転数を変化させることで蒸気圧力を制御していた。
【0004】
この制御によれば、図12に示すように、アクセルペダルを踏み込んでアクセル開度をステップ状に増加させると、スロットル開度がステップ状に増加してエンジン出力もステップ状に増加する。エンジン出力の増加に伴って排気ガスのエネルギーが増加すると、蒸発器で発生する蒸気の温度が目標蒸気温度を超えて上昇するが(a部分参照)、蒸発器のヒートマスが存在するために蒸気温度の上昇はエンジン出力の増加に対して時間遅れを持つ。このようにして蒸気温度が上昇すると、蒸気温度の上昇を抑えるべく蒸発器に対する給水量が増加するようにフィードバック制御が行われる(b部分参照)。給水量の増加により蒸発器から膨張機への蒸気供給量が増加して蒸気圧力が増加するため、蒸気圧力を低下させるべく膨張機の回転数が増加するようにフィードバック制御が行われる。しかしながら蒸気圧力の増加が急激であると、膨張機の回転数が最大回転数に達してしまって蒸気圧力を充分に低下させることができず(c部分参照)、蒸気圧力が上限圧力を超えてオーバーシュートしてしまい(d部分参照)、膨張機の運転効率が低下したり耐久性に悪影響が及ぶ可能性がある。
【0005】
このように、膨張機の回転数を変化させて蒸気圧力を制御する場合、膨張機の入口での蒸気流量や蒸気圧力を検出してから膨張機の回転数を増加させて蒸気圧力を低下させようとしても、蒸発器の内部での圧力低下に伴って相変化(液相→飽和、飽和→気相)が加速され、結果的に蒸気流量が増加するために蒸気圧力が低下するまでに時間遅れが生じる問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ランキンサイクル装置において蒸発器から膨張機に供給される気相作動媒体の圧力を目標圧力に応答性良く制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンの排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置において、膨張機に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定する目標圧力設定手段と、エンジンのスロットル開度および回転数に基づいて膨張機に供給される気相作動媒体の予測流量を演算する予測流量演算手段と、予測流量演算手段で演算した予測流量および目標圧力設定手段で設定した目標圧力に基づいて膨張機の目標回転数を演算する目標回転数演算手段とを備えたことを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記目標回転数演算手段は、予測流量演算手段で演算した予測流量、目標圧力設定手段で設定した目標圧力および膨張機に供給される気相作動媒体の温度に基づいて膨張機の目標回転数を演算することを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記予測流量演算手段は、エンジンのスロットル開度および回転数に基づいて排気ガス流量を演算し、この排気ガス流量および排気ガス温度から排気ガスエネルギーを演算し、この排気ガスエネルギーおよび膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から前記予測流量を演算することを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記予測流量演算手段は、エンジンのスロットル開度および回転数に基づいて排気ガスエネルギーを演算し、この排気ガスエネルギーおよび膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から前記予測流量を演算することを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、目標圧力設定手段が膨張機に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定し、予測流量演算手段がエンジンのスロットル開度および回転数に基づいて膨張機に供給される気相作動媒体の予測流量を演算し、目標回転数演算手段が前記予測流量および目標圧力に基づいて膨張機の目標回転数を演算するので、膨張機に供給される気相作動媒体の実流量の応答遅れの影響を受けることなく、スロットル開度の変化に即座に応答する気相作動媒体の予測流量を用いて該気相作動媒体の圧力を目標圧力に応答性良く制御することができる。
【0012】
請求項2の構成によれば、目標回転数演算手段が前記予測流量および目標圧力に加えて膨張機に供給される気相作動媒体の温度から膨張機の目標回転数を演算するので、膨張機の目標回転数をより精度良く演算することができる。
【0013】
請求項3の構成によれば、予測流量演算手段が排気ガス流量に加えて排気ガス温度から排気ガスエネルギーを演算し、かつ前記排気ガスエネルギーに加えて膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から気相作動媒体の予測流量を演算するので、前記予測流量を更に精度良く演算することができる。
【0014】
請求項4の構成によれば、予測流量演算手段が排気ガスエネルギーに加えて膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から気相作動媒体の予測流量を演算するので、前記予測流量を更に精度良く演算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図5は本発明の第1実施例を示すもので、図1はランキンサイクル装置の全体構成を示す図、図2は膨張機の回転数の制御系のブロック図、図3は膨張機の回転数の制御に用いるマップを示す図、図4は蒸気エネルギーおよび蒸気温度から目標蒸気圧力を検索するマップを示す図、図5は膨張機の回転数の制御系のタイムチャートである。
【0017】
図1には本発明が適用されるランキンサイクル装置Rの全体構成が示される。エンジンEの排気ガスの熱エネルギーを回収して機械エネルギーに変換するランキンサイクル装置Rは、エンジンEが排出する排気ガスで水を加熱して高温・高圧蒸気を発生させる蒸発器11と、蒸発器11で発生した高温・高圧蒸気により作動して機械エネルギーを発生する膨張機12と、膨張機12で仕事を終えた降温・降圧蒸気を冷却して水に戻す凝縮器13と、凝縮器13から排出された水を加圧して再度蒸発器11に供給する給水ポンプ14とを備える。
【0018】
図2に示すように、予測流量演算手段M1は、従来は蒸発器11からから膨張機12に供給される蒸気の流量を直接検出するか、あるいは蒸発器11に対する給水量から推定していた蒸気の流量を応答遅れなく推定するためのもので、排気ガス流量演算手段M2と、排気ガスエネルギー演算手段M3と、蒸気流量演算手段M4とを備える。
【0019】
排気ガス流量演算手段M2は、アクセル開度AP(つまりスロットル開度TH)およびエンジン回転数Neを、図3(A)に示すマップに適用して排気ガス流量Qgを演算する。図3(A)のi部分でアクセル開度APの増加に対する排気ガス流量Qgの増加率が減少するのは、エンジン回転数Neが大きいときには燃料噴射量が増加して空燃比A/Fが小さくなるためである。
【0020】
排気ガスエネルギー演算手段M3は、排気ガス温度Tgおよび空燃比A/Fを、図3(B)に示すマップに適用して排気ガスのエンタルピHgを演算し、それに排気ガス流量演算手段M2で演算した排気ガス流量Qgを乗算して排気ガスエネルギーEgを演算する。蒸気流量演算手段M4は、図3(B)で演算した排気ガスエネルギーEgおよび目標蒸気温度Tobjを、図3(C)に示すマップに適用して蒸気の予測流量Qsを算出する。
【0021】
一方、目標圧力設定手段M5は、蒸発器11から膨張機12に供給される蒸気の実流量および温度を図4のマップに適用して蒸気の目標圧力を設定する。この目標圧力は膨張機12が最大の効率で運転される蒸気圧力に相当する。
【0022】
目標回転数演算手段M6は、フィードフォワード回転数演算手段M7およびフィードバック回転数演算手段M8を備える。フィードフォワード回転数演算手段M7は、予測流量演算手段M1で演算した蒸気の予測流量Qsおよび目標圧力設定手段M5で設定した蒸気の目標圧力を、図3(D)に示すマップに適用して膨張機12のフィードフォワード回転数を演算する。蒸気の目標圧力と実圧力との偏差が入力されたフィードバック回転数演算手段M8は、前記偏差に所定のゲインを乗算してフィードバック回転数を演算する。そして目標回転数演算手段M6は、フィードフォワード回転数からフィードバック回転数を減算したものを、膨張機12の目標回転数として出力する。
【0023】
膨張機12にはモータ・ジェネレータ15が接続されており、このモータ・ジェネレータ15のジェネレータ負荷が減少すると膨張機12の回転数が増加し、ジェネレータ負荷が増加すると膨張機12の回転数が減少することから、膨張機12の回転数を任意に制御することができる。そして膨張機12の回転数を増加させると該膨張機12の入口での蒸気圧力が減少し、逆に膨張機12の回転数を減少させると該膨張機12の入口での蒸気圧力が増加する。
【0024】
目標回転数演算手段M6が出力する膨張機12の目標回転数と、膨張機12の実回転数(フィードバック回転数)との偏差はPIフィードバック項演算手段M9に入力され、そこで演算された目標トルクをモータ・ジェネレータ15に発生させることで、膨張機12の回転数が目標回転数にフィードバック制御される。
【0025】
上述した制御の結果を図5に示すタイムチャートに基づいて纏めると、アクセルペダルを踏み込んでアクセル開度をステップ状に増加させると、スロットル開度がステップ状に増加してエンジン出力もステップ状に増加する。このエンジン出力の増加(つまりアクセル開度あるいはスロットル開度の増加)に基づいて蒸発器11から膨張機12に供給される将来の蒸気の予測流量Qsを演算し、この予測流量Qsに基づいて膨張機12の目標回転数を演算するので、エンジン出力が増加してから実際に蒸気流量が増加するまでのタイムラグの影響を受けることなく、エンジン出力の増加すると同時に膨張機12の回転数を目標回転数に制御することができる(g部分参照)。
【0026】
その結果、エンジン出力の増加に伴って蒸発器12で発生する蒸気の温度が目標温度を超えて上昇しても(e部分参照)、その上昇量を従来の制御(図12のa部分参照)に比べて小さくすることができる。また蒸気温度の上昇を抑えるべく蒸発器11への給水量が増加するようにフィードバック制御が行われるが(f部分参照)、その給水量の増加量を従来の制御(図12のb部分参照)に比べて小さくすることができる。
【0027】
これにより、蒸気圧力は目標圧力から殆ど外れなくなり(h部分参照)、蒸気圧力が上限圧力を超えてオーバーシュートする事態を確実に回避することで、膨張機12の運転効率が低下したり耐久性に悪影響が及ぶのを防止することができる。
【0028】
図6および図7は本発明の第2実施例を示すもので、図6は膨張機の回転数の制御系のブロック図、図7はアクセル開度およびエンジン回転数から排気ガスエネルギーを検索するマップを示す図である。
【0029】
第2実施例は、第1実施例の図2における予測流量演算手段M1の構成を簡素化したものである。第1実施例の予測流量演算手段M1は排気ガス流量演算手段M2、排気ガスエネルギー演算手段M3および蒸気流量演算手段M4を備えているが、第2実施例の予測流量演算手段M1は排気ガス流量演算手段M2を備えておらず、排気ガスエネルギー演算手段M3および蒸気流量演算手段M4だけを備えている。
【0030】
第2実施例の排気ガスエネルギー演算手段M3は、アクセル開度AP(スロットル開度TH)およびエンジン回転数Neを図7に示すマップに適用して排気ガスエネルギーEgを演算する。図7に示すマップにおいて、同一のエンジン回転数Neでアクセル開度APを増加させると、排気ガス温度の上昇と排気ガス流量の増加のために、排気ガスエネルギーEgが二次関数的に増加する(j部分参照)。ただし、エンジン回転数Neが大きいときは燃料噴射量が増加し、空燃比が小さくなって排気ガス流量は減少する(k部分参照)。
【0031】
この第2実施例によれば、アクセル開度AP(スロットル開度TH)およびエンジン回転数Neだけから排気ガスエネルギーEgを演算し、排気ガス温度Tgを用いていないので、排気ガス温度Tgの変化を待つことなく、将来の蒸気の予測流量Qsを一層速やかに演算することができる。尚、空燃比A/Fは燃料噴射指令に基づいて瞬時に変化するものであるため、排気ガスエネルギーEgの演算から省いても応答性に影響を及ぼすことはない。
【0032】
図8および図9は本発明の第3実施例を示すもので、図8は膨張機の回転数の制御系のブロック図、図7はアクセル開度およびエンジン回転数から蒸気の予測流量を検索するマップを示す図である。
【0033】
第3実施例は、第2実施例の図6における予測流量演算手段M1の構成を簡素化したものである。第2実施例の予測流量演算手段M1は排気ガスエネルギー演算手段M3および蒸気流量演算手段M4を備えているが、第3実施例の予測流量演算手段M1は排気ガスエネルギー演算手段M3を備えておらず、蒸気流量演算手段M4だけを備えている。
【0034】
第3実施例の蒸気流量演算手段M4、アクセル開度AP(スロットル開度TH)およびエンジン回転数Neを図9に示すマップに適用して蒸気の予測流量Qsを演算する。この予測流量Qsは蒸気温度を最適温度に制御できた場合の蒸気流量であり、それに見合った膨張機12の目標回転数をダイレクトに設定するため、蒸発器11への給水量に依存せずに最終的な予測流量Qsを演算することができる。
【0035】
ところで、上記第1〜第3実施例において、エンジン出力の変動幅が小さい場合に、蒸気圧力の上昇を予測して膨張機12の回転数を増加させると、逆に蒸気圧力が過剰に低下してしまう可能性がある。そこで本第4実施例では、図10のフローチャートに基づいて蒸気流量の予測制御を行うか否かを判定する。
【0036】
即ち、ステップS1でエンジン出力Pseが閾値PSESWを超えており、蒸気圧力が許容最大圧力を超える虞があるときには(図11の実線参照)、ステップS2で第1〜第3実施例の蒸気流量の予測制御を行い、逆に前記ステップS1でエンジン出力Pseが閾値PSESWを超えておらず、蒸気圧力が許容最大圧力を超える虞がないときには(図11の鎖線参照)、ステップS3で第1〜第3実施例の蒸気流量の予測制御を行わずに従来の通常制御を行う。これにより、蒸気圧力の過剰な低下による膨張機12の出力低下を効果的に回避することができる。
【0037】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ランキンサイクル装置の全体構成を示す図
【図2】膨張機の回転数の制御系のブロック図
【図3】膨張機の回転数の制御に用いる各種マップを示す図
【図4】蒸気エネルギーおよび蒸気温度から目標蒸気圧力を検索するマップを示す図
【図5】膨張機の回転数の制御系のタイムチャート
【図6】第2実施例に係る膨張機の回転数の制御系のブロック図
【図7】アクセル開度およびエンジン回転数から排気ガスエネルギーを検索するマップを示す図
【図8】第3実施例に係る膨張機の回転数の制御系のブロック図
【図9】アクセル開度およびエンジン回転数から蒸気の予測流量を検索するマップを示す図
【図10】第4実施例に係る膨張機の回転数の制御の切換ルーチンのフローチャート
【図11】図10のフローチャートを説明するグラフ
【図12】従来の膨張機の回転数の制御系のタイムチャート
【符号の説明】
【0039】
11 蒸発器
12 膨張機
E エンジン
Eg 排気ガスエネルギー
M1 予測流量演算手段
M5 目標圧力設定手段
M6 目標回転数演算手段
Ne エンジン回転数
Qg 排気ガス流量
Qs 予測流量
Tg 排気ガス温度
TH スロットル開度
Tobj 気相作動媒体の目標温度
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル装置において、蒸発器への蒸気の供給量を変化させることなく、膨張機の入口での蒸気圧力を目標圧力に精度良く制御すべく、蒸発器の出口での蒸気の流量および前記目標圧力に基づいてフィードフォワード値を算出するとともに、膨張機の入口での蒸気圧力および前記目標圧力の偏差に、前記蒸気の流量に基づいて算出したフィードバックゲインを乗算してフィードバック値を算出し、これらフィードフォワード値およびフィードバック値の加・減算値に基づいて膨張機の回転数を制御するものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開2004−60462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ランキンサイクル装置を高効率な状態に維持するには、エンジン負荷の変動に対して、膨張機に供給される蒸気の温度および圧力を最適値に制御する必要があり、従来の一般的な制御では、蒸発器への給水量を変化させることで蒸気温度を制御し、膨張機の回転数を変化させることで蒸気圧力を制御していた。
【0004】
この制御によれば、図12に示すように、アクセルペダルを踏み込んでアクセル開度をステップ状に増加させると、スロットル開度がステップ状に増加してエンジン出力もステップ状に増加する。エンジン出力の増加に伴って排気ガスのエネルギーが増加すると、蒸発器で発生する蒸気の温度が目標蒸気温度を超えて上昇するが(a部分参照)、蒸発器のヒートマスが存在するために蒸気温度の上昇はエンジン出力の増加に対して時間遅れを持つ。このようにして蒸気温度が上昇すると、蒸気温度の上昇を抑えるべく蒸発器に対する給水量が増加するようにフィードバック制御が行われる(b部分参照)。給水量の増加により蒸発器から膨張機への蒸気供給量が増加して蒸気圧力が増加するため、蒸気圧力を低下させるべく膨張機の回転数が増加するようにフィードバック制御が行われる。しかしながら蒸気圧力の増加が急激であると、膨張機の回転数が最大回転数に達してしまって蒸気圧力を充分に低下させることができず(c部分参照)、蒸気圧力が上限圧力を超えてオーバーシュートしてしまい(d部分参照)、膨張機の運転効率が低下したり耐久性に悪影響が及ぶ可能性がある。
【0005】
このように、膨張機の回転数を変化させて蒸気圧力を制御する場合、膨張機の入口での蒸気流量や蒸気圧力を検出してから膨張機の回転数を増加させて蒸気圧力を低下させようとしても、蒸発器の内部での圧力低下に伴って相変化(液相→飽和、飽和→気相)が加速され、結果的に蒸気流量が増加するために蒸気圧力が低下するまでに時間遅れが生じる問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ランキンサイクル装置において蒸発器から膨張機に供給される気相作動媒体の圧力を目標圧力に応答性良く制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンの排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置において、膨張機に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定する目標圧力設定手段と、エンジンの出力および回転数に基づいて膨張機に供給される気相作動媒体の予測流量を演算する予測流量演算手段と、予測流量演算手段で演算した予測流量および目標圧力設定手段で設定した目標圧力に基づいて膨張機の目標回転数を演算する目標回転数演算手段とを備えたことを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、エンジンの排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器と、蒸発器で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機とを備えたランキンサイクル装置において、膨張機に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定する目標圧力設定手段と、エンジンのスロットル開度またはアクセル開度と回転数とに基づいて膨張機に供給される気相作動媒体の予測流量を演算する予測流量演算手段と、予測流量演算手段で演算した予測流量および目標圧力設定手段で設定した目標圧力に基づいて膨張機の目標回転数を演算する目標回転数演算手段とを備えたことを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0009】
また請求項に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記目標回転数演算手段は、予測流量演算手段で演算した予測流量、目標圧力設定手段で設定した目標圧力および膨張機に供給される気相作動媒体の温度に基づいて膨張機の目標回転数を演算することを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0010】
また請求項に記載された発明によれば、請求項の構成に加えて、前記予測流量演算手段は、エンジンのスロットル開度および回転数に基づいて排気ガス流量を演算し、この排気ガス流量および排気ガス温度から排気ガスエネルギーを演算し、この排気ガスエネルギーおよび膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から前記予測流量を演算することを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【0011】
また請求項に記載された発明によれば、請求項の構成に加えて、前記予測流量演算手段は、エンジンのスロットル開度および回転数に基づいて排気ガスエネルギーを演算し、この排気ガスエネルギーおよび膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から前記予測流量を演算することを特徴とするランキンサイクル装置が提案される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、目標圧力設定手段が膨張機に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定し、予測流量演算手段がエンジンの出力および回転数に基づいて膨張機に供給される気相作動媒体の予測流量を演算し、目標回転数演算手段が前記予測流量および目標圧力に基づいて膨張機の目標回転数を演算するので、膨張機に供給される気相作動媒体の実流量の応答遅れの影響を受けることなく、エンジンの出力の変化に即座に応答する気相作動媒体の予測流量を用いて該気相作動媒体の圧力を目標圧力に応答性良く制御することができる。
【0013】
請求項2の構成によれば、目標圧力設定手段が膨張機に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定し、予測流量演算手段がエンジンのスロットル開度またはアクセル開度と回転数とに基づいて膨張機に供給される気相作動媒体の予測流量を演算し、目標回転数演算手段が前記予測流量および目標圧力に基づいて膨張機の目標回転数を演算するので、膨張機に供給される気相作動媒体の実流量の応答遅れの影響を受けることなく、エンジンのスロットル開度またはアクセル開度の変化に即座に応答する気相作動媒体の予測流量を用いて該気相作動媒体の圧力を目標圧力に応答性良く制御することができる。
【0014】
請求項の構成によれば、目標回転数演算手段が前記予測流量および目標圧力に加えて膨張機に供給される気相作動媒体の温度から膨張機の目標回転数を演算するので、膨張機の目標回転数をより精度良く演算することができる。
【0015】
請求項の構成によれば、予測流量演算手段が排気ガス流量に加えて排気ガス温度から排気ガスエネルギーを演算し、かつ前記排気ガスエネルギーに加えて膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から気相作動媒体の予測流量を演算するので、前記予測流量を更に精度良く演算することができる。
【0016】
請求項の構成によれば、予測流量演算手段が排気ガスエネルギーに加えて膨張機に供給される気相作動媒体の目標温度から気相作動媒体の予測流量を演算するので、前記予測流量を更に精度良く演算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図5は本発明の第1実施例を示すもので、図1はランキンサイクル装置の全体構成を示す図、図2は膨張機の回転数の制御系のブロック図、図3は膨張機の回転数の制御に用いるマップを示す図、図4は蒸気エネルギーおよび蒸気温度から目標蒸気圧力を検索するマップを示す図、図5は膨張機の回転数の制御系のタイムチャートである。
【0019】
図1には本発明が適用されるランキンサイクル装置Rの全体構成が示される。エンジンEの排気ガスの熱エネルギーを回収して機械エネルギーに変換するランキンサイクル装置Rは、エンジンEが排出する排気ガスで水を加熱して高温・高圧蒸気を発生させる蒸発器11と、蒸発器11で発生した高温・高圧蒸気により作動して機械エネルギーを発生する膨張機12と、膨張機12で仕事を終えた降温・降圧蒸気を冷却して水に戻す凝縮器13と、凝縮器13から排出された水を加圧して再度蒸発器11に供給する給水ポンプ14とを備える。
【0020】
図2に示すように、予測流量演算手段M1は、従来は蒸発器11からから膨張機12に供給される蒸気の流量を直接検出するか、あるいは蒸発器11に対する給水量から推定していた蒸気の流量を応答遅れなく推定するためのもので、排気ガス流量演算手段M2と、排気ガスエネルギー演算手段M3と、蒸気流量演算手段M4とを備える。
【0021】
排気ガス流量演算手段M2は、アクセル開度AP(つまりスロットル開度TH)およびエンジン回転数Neを、図3(A)に示すマップに適用して排気ガス流量Qgを演算する。図3(A)のi部分でアクセル開度APの増加に対する排気ガス流量Qgの増加率が減少するのは、エンジン回転数Neが大きいときには燃料噴射量が増加して空燃比A/Fが小さくなるためである。
【0022】
排気ガスエネルギー演算手段M3は、排気ガス温度Tgおよび空燃比A/Fを、図3(B)に示すマップに適用して排気ガスのエンタルピHgを演算し、それに排気ガス流量演算手段M2で演算した排気ガス流量Qgを乗算して排気ガスエネルギーEgを演算する。蒸気流量演算手段M4は、図3(B)で演算した排気ガスエネルギーEgおよび目標蒸気温度Tobjを、図3(C)に示すマップに適用して蒸気の予測流量Qsを算出する。
【0023】
一方、目標圧力設定手段M5は、蒸発器11から膨張機12に供給される蒸気の実流量および温度を図4のマップに適用して蒸気の目標圧力を設定する。この目標圧力は膨張機12が最大の効率で運転される蒸気圧力に相当する。
【0024】
目標回転数演算手段M6は、フィードフォワード回転数演算手段M7およびフィードバック回転数演算手段M8を備える。フィードフォワード回転数演算手段M7は、予測流量演算手段M1で演算した蒸気の予測流量Qsおよび目標圧力設定手段M5で設定した蒸気の目標圧力を、図3(D)に示すマップに適用して膨張機12のフィードフォワード回転数を演算する。蒸気の目標圧力と実圧力との偏差が入力されたフィードバック回転数演算手段M8は、前記偏差に所定のゲインを乗算してフィードバック回転数を演算する。そして目標回転数演算手段M6は、フィードフォワード回転数からフィードバック回転数を減算したものを、膨張機12の目標回転数として出力する。
【0025】
膨張機12にはモータ・ジェネレータ15が接続されており、このモータ・ジェネレータ15のジェネレータ負荷が減少すると膨張機12の回転数が増加し、ジェネレータ負荷が増加すると膨張機12の回転数が減少することから、膨張機12の回転数を任意に制御することができる。そして膨張機12の回転数を増加させると該膨張機12の入口での蒸気圧力が減少し、逆に膨張機12の回転数を減少させると該膨張機12の入口での蒸気圧力が増加する。
【0026】
目標回転数演算手段M6が出力する膨張機12の目標回転数と、膨張機12の実回転数(フィードバック回転数)との偏差はPIフィードバック項演算手段M9に入力され、そこで演算された目標トルクをモータ・ジェネレータ15に発生させることで、膨張機12の回転数が目標回転数にフィードバック制御される。
【0027】
上述した制御の結果を図5に示すタイムチャートに基づいて纏めると、アクセルペダルを踏み込んでアクセル開度をステップ状に増加させると、スロットル開度がステップ状に増加してエンジン出力もステップ状に増加する。このエンジン出力の増加(つまりアクセル開度あるいはスロットル開度の増加)に基づいて蒸発器11から膨張機12に供給される将来の蒸気の予測流量Qsを演算し、この予測流量Qsに基づいて膨張機12の目標回転数を演算するので、エンジン出力が増加してから実際に蒸気流量が増加するまでのタイムラグの影響を受けることなく、エンジン出力の増加すると同時に膨張機12の回転数を目標回転数に制御することができる(g部分参照)。
【0028】
その結果、エンジン出力の増加に伴って蒸発器12で発生する蒸気の温度が目標温度を超えて上昇しても(e部分参照)、その上昇量を従来の制御(図12のa部分参照)に比べて小さくすることができる。また蒸気温度の上昇を抑えるべく蒸発器11への給水量が増加するようにフィードバック制御が行われるが(f部分参照)、その給水量の増加量を従来の制御(図12のb部分参照)に比べて小さくすることができる。
【0029】
これにより、蒸気圧力は目標圧力から殆ど外れなくなり(h部分参照)、蒸気圧力が上限圧力を超えてオーバーシュートする事態を確実に回避することで、膨張機12の運転効率が低下したり耐久性に悪影響が及ぶのを防止することができる。
【0030】
図6および図7は本発明の第2実施例を示すもので、図6は膨張機の回転数の制御系のブロック図、図7はアクセル開度およびエンジン回転数から排気ガスエネルギーを検索するマップを示す図である。
【0031】
第2実施例は、第1実施例の図2における予測流量演算手段M1の構成を簡素化したものである。第1実施例の予測流量演算手段M1は排気ガス流量演算手段M2、排気ガスエネルギー演算手段M3および蒸気流量演算手段M4を備えているが、第2実施例の予測流量演算手段M1は排気ガス流量演算手段M2を備えておらず、排気ガスエネルギー演算手段M3および蒸気流量演算手段M4だけを備えている。
【0032】
第2実施例の排気ガスエネルギー演算手段M3は、アクセル開度AP(スロットル開度TH)およびエンジン回転数Neを図7に示すマップに適用して排気ガスエネルギーEgを演算する。図7に示すマップにおいて、同一のエンジン回転数Neでアクセル開度APを増加させると、排気ガス温度の上昇と排気ガス流量の増加のために、排気ガスエネルギーEgが二次関数的に増加する(j部分参照)。ただし、エンジン回転数Neが大きいときは燃料噴射量が増加し、空燃比が小さくなって排気ガス流量は減少する(k部分参照)。
【0033】
この第2実施例によれば、アクセル開度AP(スロットル開度TH)およびエンジン回転数Neだけから排気ガスエネルギーEgを演算し、排気ガス温度Tgを用いていないので、排気ガス温度Tgの変化を待つことなく、将来の蒸気の予測流量Qsを一層速やかに演算することができる。尚、空燃比A/Fは燃料噴射指令に基づいて瞬時に変化するものであるため、排気ガスエネルギーEgの演算から省いても応答性に影響を及ぼすことはない。
【0034】
図8および図9は本発明の第3実施例を示すもので、図8は膨張機の回転数の制御系のブロック図、図7はアクセル開度およびエンジン回転数から蒸気の予測流量を検索するマップを示す図である。
【0035】
第3実施例は、第2実施例の図6における予測流量演算手段M1の構成を簡素化したものである。第2実施例の予測流量演算手段M1は排気ガスエネルギー演算手段M3および蒸気流量演算手段M4を備えているが、第3実施例の予測流量演算手段M1は排気ガスエネルギー演算手段M3を備えておらず、蒸気流量演算手段M4だけを備えている。
【0036】
第3実施例の蒸気流量演算手段M4、アクセル開度AP(スロットル開度TH)およびエンジン回転数Neを図9に示すマップに適用して蒸気の予測流量Qsを演算する。この予測流量Qsは蒸気温度を最適温度に制御できた場合の蒸気流量であり、それに見合った膨張機12の目標回転数をダイレクトに設定するため、蒸発器11への給水量に依存せずに最終的な予測流量Qsを演算することができる。
【0037】
ところで、上記第1〜第3実施例において、エンジン出力の変動幅が小さい場合に、蒸気圧力の上昇を予測して膨張機12の回転数を増加させると、逆に蒸気圧力が過剰に低下してしまう可能性がある。そこで本第4実施例では、図10のフローチャートに基づいて蒸気流量の予測制御を行うか否かを判定する。
【0038】
即ち、ステップS1でエンジン出力Pseが閾値PSESWを超えており、蒸気圧力が許容最大圧力を超える虞があるときには(図11の実線参照)、ステップS2で第1〜第3実施例の蒸気流量の予測制御を行い、逆に前記ステップS1でエンジン出力Pseが閾値PSESWを超えておらず、蒸気圧力が許容最大圧力を超える虞がないときには(図11の鎖線参照)、ステップS3で第1〜第3実施例の蒸気流量の予測制御を行わずに従来の通常制御を行う。これにより、蒸気圧力の過剰な低下による膨張機12の出力低下を効果的に回避することができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ランキンサイクル装置の全体構成を示す図
【図2】膨張機の回転数の制御系のブロック図
【図3】膨張機の回転数の制御に用いる各種マップを示す図
【図4】蒸気エネルギーおよび蒸気温度から目標蒸気圧力を検索するマップを示す図
【図5】膨張機の回転数の制御系のタイムチャート
【図6】第2実施例に係る膨張機の回転数の制御系のブロック図
【図7】アクセル開度およびエンジン回転数から排気ガスエネルギーを検索するマップを示す図
【図8】第3実施例に係る膨張機の回転数の制御系のブロック図
【図9】アクセル開度およびエンジン回転数から蒸気の予測流量を検索するマップを示す図
【図10】第4実施例に係る膨張機の回転数の制御の切換ルーチンのフローチャート
【図11】図10のフローチャートを説明するグラフ
【図12】従来の膨張機の回転数の制御系のタイムチャート
【符号の説明】
【0041】
11 蒸発器
12 膨張機
AP アクセル開度
E エンジン
Eg 排気ガスエネルギー
M1 予測流量演算手段
M5 目標圧力設定手段
M6 目標回転数演算手段
Ne エンジン回転数
Qg 排気ガス流量
Qs 予測流量
Tg 排気ガス温度
TH スロットル開度
Tobj 気相作動媒体の目標温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)の排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器(11)と、蒸発器(11)で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機(12)とを備えたランキンサイクル装置において、
膨張機(12)に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定する目標圧力設定手段(M5)と、
エンジン(E)のスロットル開度(TH)および回転数(Ne)に基づいて膨張機(12)に供給される気相作動媒体の予測流量(Qs)を演算する予測流量演算手段(M1)と、
予測流量演算手段(M1)で演算した予測流量(Qs)および目標圧力設定手段(M5)で設定した目標圧力に基づいて膨張機(12)の目標回転数を演算する目標回転数演算手段(M6)と、
を備えたことを特徴とするランキンサイクル装置。
【請求項2】
前記目標回転数演算手段(M6)は、予測流量演算手段(M1)で演算した予測流量(Qs)、目標圧力設定手段(M5)で設定した目標圧力および膨張機(12)に供給される気相作動媒体の温度に基づいて膨張機(12)の目標回転数を演算することを特徴とする、請求項1に記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
前記予測流量演算手段(M1)は、エンジン(E)のスロットル開度(TH)および回転数(Ne)に基づいて排気ガス流量(Qg)を演算し、この排気ガス流量(Qg)および排気ガス温度(Tg)から排気ガスエネルギー(Eg)を演算し、この排気ガスエネルギー(Eg)および膨張機(12)に供給される気相作動媒体の目標温度(Tobj)から前記予測流量(Qs)を演算することを特徴とする、請求項2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
前記予測流量演算手段(M1)は、エンジン(E)のスロットル開度(TH)および回転数(Ne)に基づいて排気ガスエネルギー(Eg)を演算し、この排気ガスエネルギー(Eg)および膨張機(12)に供給される気相作動媒体の目標温度(Tobj)から前記予測流量(Qs)を演算することを特徴とする、請求項2に記載のランキンサイクル装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)の排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器(11)と、蒸発器(11)で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機(12)とを備えたランキンサイクル装置において、
膨張機(12)に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定する目標圧力設定手段(M5)と、
エンジン(E)の出力および回転数(Ne)に基づいて膨張機(12)に供給される気相作動媒体の予測流量(Qs)を演算する予測流量演算手段(M1)と、
予測流量演算手段(M1)で演算した予測流量(Qs)および目標圧力設定手段(M5)で設定した目標圧力に基づいて膨張機(12)の目標回転数を演算する目標回転数演算手段(M6)と、
を備えたことを特徴とするランキンサイクル装置。
【請求項2】
エンジン(E)の排気ガスの熱エネルギーで液相作動媒体を加熱して気相作動媒体を発生させる蒸発器(11)と、蒸発器(11)で発生した気相作動媒体の熱エネルギーを機械エネルギーに変換する容積型の膨張機(12)とを備えたランキンサイクル装置において、
膨張機(12)に供給される気相作動媒体の実流量および温度に基づいて該気相作動媒体の目標圧力を設定する目標圧力設定手段(M5)と、
エンジン(E)のスロットル開度(TH)またはアクセル開度(AP)と回転数(Ne)とに基づいて膨張機(12)に供給される気相作動媒体の予測流量(Qs)を演算する予測流量演算手段(M1)と、
予測流量演算手段(M1)で演算した予測流量(Qs)および目標圧力設定手段(M5)で設定した目標圧力に基づいて膨張機(12)の目標回転数を演算する目標回転数演算手段(M6)と、
を備えたことを特徴とするランキンサイクル装置。
【請求項3】
前記目標回転数演算手段(M6)は、予測流量演算手段(M1)で演算した予測流量(Qs)、目標圧力設定手段(M5)で設定した目標圧力および膨張機(12)に供給される気相作動媒体の温度に基づいて膨張機(12)の目標回転数を演算することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
前記予測流量演算手段(M1)は、エンジン(E)のスロットル開度(TH)および回転数(Ne)に基づいて排気ガス流量(Qg)を演算し、この排気ガス流量(Qg)および排気ガス温度(Tg)から排気ガスエネルギー(Eg)を演算し、この排気ガスエネルギー(Eg)および膨張機(12)に供給される気相作動媒体の目標温度(Tobj)から前記予測流量(Qs)を演算することを特徴とする、請求項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項5】
前記予測流量演算手段(M1)は、エンジン(E)のスロットル開度(TH)および回転数(Ne)に基づいて排気ガスエネルギー(Eg)を演算し、この排気ガスエネルギー(Eg)および膨張機(12)に供給される気相作動媒体の目標温度(Tobj)から前記予測流量(Qs)を演算することを特徴とする、請求項に記載のランキンサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−200493(P2006−200493A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14995(P2005−14995)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】