説明

リチウムイオン電池用ガラスフィルム

【課題】可撓性を有しつつ、絶縁性、耐熱性および表面の平滑性に優れ、しかも軽量の基板を創案することにより、可撓性を有し、且つ電池特性等が良好なリチウムイオン電池を作製すること。
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、厚みが300μm以下であり、且つ表面粗さ(Ra)が100Å以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用ガラスフィルムに関し、例えばアクティブICカード等に搭載されるリチウムイオン二次電池の基板(基材)に好適なガラスフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、PDA、デジタルカメラの電源として広く使用されている。リチウムイオン二次電池は、正極と負極の間でリチウムイオンが挿入、脱離することで充放電を実現している。このため、従来のリチウムイオン二次電池は、イオンの移動度が高い液体電解質が用いられてきた。
【0003】
しかし、液体電解質は、温度変化に弱く、また漏出等が生じやすく、耐久性に課題がある。さらに、液体電解質は、発火の危険性もある。このような事情に鑑み、近年、電解質を固体化する試みが鋭意検討されている(特許文献1等参照)。
【0004】
さらに、固体電解質を用いると、電解質を薄膜化することができるため、可撓性(フレキシブル性)を有するリチウムイオン二次電池を作製することが可能になり、例えばアクティブICカード等に内蔵することも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−42863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記固体電解質が形成される基板は、可撓性や絶縁性が要求されるとともに、固体電解質がスパッタ法等により高温で成膜されることに起因して、高い耐熱性が要求され、更には固体電解質の膜厚が非常に薄いことに起因して、表面の平滑性が要求される。また、アクティブICカード等に内蔵する場合は、軽量であることも要求される。
【0007】
従来、この用途の基板材料として、曲げても破損し難いプラスチック基板や金属基板が用いられていたが、絶縁性や耐熱性が不十分であることに加えて、表面に存在する微小な凹凸により、膜品位が低下しやすく、また充放電を繰り返す際に電池特性が劣化する不具合が発生しやすいといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、可撓性を有しつつ、絶縁性、耐熱性および表面の平滑性に優れ、しかも軽量の基板を創案することにより、可撓性を有し、且つ電池特性等が良好なリチウムイオン電池を作製することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、種々の検討を行った結果、基板として、厚みが300μm以下のガラスフィルムを用いるとともに、ガラスフィルムの表面粗さを規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、厚みが300μm以下であり、且つ表面粗さ(Ra)が100Å以下であることを特徴とする。ここで、「表面粗さ(Ra)」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
【0010】
ガラスを用いると、基板の絶縁性や耐熱性を高めることができる。また、ガラスフィルムの厚みを小さくすれば、基板の可撓性が向上するとともに、基板を軽量化することができる。さらに、ガラスフィルムの表面粗さ(Ra)を小さくすると、固体電解質の膜品位やリチウムイオン電池の電池特性等を高めることができる。
【0011】
第二に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、表面粗さ(Rp)が10000Å以下であることを特徴とする。ここで、「表面粗さ(Rp)」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
【0012】
第三に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、表面粗さ(Rku)が3以下であること特徴とする。ここで、「表面粗さ(Rku)」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。なお、「表面粗さ(Ra、Rp、Rku)」は、ガラスフィルムの有効面(リチウムイオン電池等のデバイスが形成される面)、すなわちガラスフィルムの切断面(端面)を除く一方の表面と他方の表面のいずれかで測定した値を指す。なお、ガラスフィルムの有効面以外の表面の表面粗さ(Ra、Rp、Rku)は特に限定されないが、リチウムイオン電池等の製造効率の観点から、上記範囲内であることが好ましい。
【0013】
第四に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、未研磨の表面を有することを特徴とする。このようにすれば、ガラスフィルムの製造効率や機械的強度を高めることができる。
【0014】
第五に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、350℃における体積抵抗率logρが5.0Ω・cm以上であることを特徴とする。ここで、「体積抵抗率logρ」は、ASTM C657の方法に基づいて測定した値を指す。
【0015】
第六に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、歪点が500℃以上であることを特徴とする。このようにすれば、高温で熱処理してもガラスフィルムが変形しにくくなるため、成膜温度を高温化することができ、結果として、固体電解質、導電膜等の膜品位を高めることができる。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
【0016】
第七に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、30〜380℃における熱膨張係数が30〜100×10−7/℃であることを特徴とする。「30〜380℃における熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均値を指す。
【0017】
第八に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、密度が3.0g/cm以下であることを特徴とする。ここで、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。
【0018】
第九に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、液相温度が1200℃以下および/または液相粘度が104.5dPa・s以上であることを特徴とする。ここで、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値であり、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0019】
第十に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、高温粘度102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下であることを特徴とする。ここで、「高温粘度102.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0020】
第十一に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、フィルム面積が0.1m以上であり、且つ表面突起が2ヶ/m以下であることを特徴とする。ここで、「表面突起」は、暗室内でガラスフィルムに蛍光灯の光を照射し、反射光を利用して、目視で粗検査を行った後、接触式粗さ計を用いて、1000μmの距離で突起の高さを測定したときに、突部の先端とガラスフィルムの表面との高低差(突部の高さ)が1μm以上の突起をカウントし、その個数を1mに換算して算出した値を指す。
【0021】
第十二に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、水蒸気の透過度が1g/(m・day)以下であることを特徴とする。このようにすれば、固体電解質の劣化を防止しやすくなる。ここで、「水蒸気の透過度」は、カルシウム法で評価した値を指す。
【0022】
第十三に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、酸素の透過度が1mL/(m・day)以下であることを特徴とする。このようにすれば、固体電解質の劣化を防止しやすくなる。ここで、「酸素の透過度」は、差圧式ガスクロマトグラフィー(JIS K7126に準拠)で評価した値を指す。
【0023】
第十四に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする。このようにすれば、ガラスフィルムの表面精度を高めることができる。
【0024】
第十五に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、スロットダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする。
【0025】
第十六に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、ロール状に巻き取られてなることを特徴とする。
【0026】
第十七に、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、厚み0.3mm以上の支持ガラス板に固定されてなることを特徴とする。
【0027】
第十八に、本発明のリチウムイオン電池は、上記のリチウムイオン電池用ガラスフィルムを備えたことを特徴とする。このようにすれば、上記の通り、可撓性を有し、且つ電池特性等が良好なリチウムイオン電池を得ることができる。
【0028】
第十九に、本発明の複合型電池は、上記のリチウムイオン電池と太陽電池を一体化したことを特徴とする。従来の太陽電池では、屋外で使用する場合、昼間しか発電することができず、夜間は別の電力源から電気を供給する必要がある。しかし、上記のリチウムイオン電池と太陽電池を一体化すると、昼間に太陽電池で発電した余剰の電気をリチウムイオン電池に蓄電することにより、夜間でも電気を供給することが可能になる。
【0029】
第二十に、本発明の複合型電池は、上記のリチウムイオン電池と薄膜太陽電池を一体化したことを特徴とする。このようにすれば、複合型電池に可撓性を付与できるため、設置場所の自由度が向上し、しかも複合型太陽電池の軽量化を図ることができる。
【0030】
第二十一に、本発明の有機EL素子は、上記のリチウムイオン電池を備えたことを特徴とする。従来の有機EL素子は、可撓性を有するものも知られているが、電池部に可撓性がないため、電池部を一体化すると、可撓性が失われてしまう。そのため、従来の有機EL素子は、電池部を別途接続していた。しかし、有機EL素子に上記構成を採用すると、電池部を一体化した場合でも、可撓性が損なわれず、本当の意味で、フレキシブルディスプレイやフレキシブル照明等への展開が可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、可撓性を有しつつ、絶縁性、耐熱性および表面の平滑性に優れ、しかも軽量であり、結果として、可撓性を有し、且つ電池特性等が良好なリチウムイオン電池を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】オーバーフローダウンドロー法を説明するための概念図である。
【図2】ガラスフィルムの製造方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムの厚みは300μm以下であり、200μm以下、150μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、40μm以下、特に30μm以下が好ましい。ガラスフィルムの厚みが300μmより大きいと、可撓性が低下しやすくなり、またガラスフィルムを軽量化し難くなって、ICカードやMEMS等も軽量化し難くなる。ただし、ガラスフィルムの厚みが小さ過ぎると、ガラスフィルムの機械的強度が低下するため、ガラスフィルムの厚みは5μm以上、10μm以上、特に15μm以上が好ましい。なお、ガラスフィルムの厚みを上記範囲に規制すれば、ロール・ツー・ロールへの展開も可能になり、リチウムイオン電池の量産性を高めることができる。
【0034】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、表面粗さRaは100Å以下であり、20Å以下、10Å以下、5Å以下、4Å以下、3Å以下、特に2Å以下が好ましい。表面粗さRaが100Åより大きいと、ガラスフィルム上に形成される固体電解質の膜品位が低下しやすくなる。
【0035】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、表面粗さRpは10000Å以下、5000Å以下、3000Å以下、1000Å以下、100Å以下、特に10Å以下が好ましい。表面粗さRpが10000Åより大きいと、充放電を繰り返した際、表面の突起部分で不要な反応が起こり、電池特性が劣化しやすくなる。
【0036】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、表面粗さRkuは3以下、2以下、特に1以下が好ましい。表面粗さRkuが3より大きいと、充放電を繰り返した際、表面の突起部分で不要な反応が起こり、電池特性が劣化しやすくなる。
【0037】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、未研磨の表面を有することが好ましく、有効面の全面が未研磨であることがより好ましい。このようにすれば、ガラスフィルムの製造効率が高まるとともに、研磨傷によりガラスフィルムの機械的強度が低下する事態を防止しやすくなる。
【0038】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、350℃における体積抵抗率logρは5.0Ω・cm以上、8.0Ω・cm以上、10.0Ω・cm以上、特に12.0Ω・cm以上が好ましい。350℃における体積抵抗率logρが低過ぎると、ガラスフィルムの絶縁性が低下しやすくなり、電池特性が低下しやすくなる。
【0039】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、歪点は500℃以上が好ましい。歪点は、耐熱性の指標になる特性である。歪点が低いと、固体電解質を成膜する際にガラスフィルムが変形するおそれがある。また、リチウムイオン電池と太陽電池を一体化した複合型電池においても、太陽電池を構成する膜の成膜温度は高温であり、ガラスフィルムに耐熱性が要求される。歪点の好ましい範囲は550℃以上、580℃以上、600℃以上、620℃以上、特に650℃以上である。
【0040】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、30〜380℃における熱膨張係数は30〜100×10−7/℃が好ましい。熱膨張係数が高過ぎると、成膜プロセス等で受ける熱衝撃によってガラスフィルムが破損しやすくなる。一方、熱膨張係数が低過ぎると、ガラスフィルムの熱膨張係数が、ガラスフィルム上に形成される固体電解質の熱膨張係数に整合し難くなる。よって、熱膨張係数の好適な範囲は30〜90×10−7/℃、30〜80×10−7/℃、30〜40×10−7/℃、特に32〜40×10−7/℃である。
【0041】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、密度は3.0g/cm以下、2.8g/cm以下、2.7g/cm以下、2.6g/cm以下、2.5g/cm以下、特に2.48g/cm以下が好ましい。密度が小さい程、ガラスフィルムを軽量化することができ、ICカードやMEMS等も軽量化することができる。
【0042】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、高温粘度102.5dPa・sにおける温度は1600℃以下、1580℃以下、特に1550℃以下が好ましい。高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、ガラスの溶融温度に相当しており、高温粘度102.5dPa・sにおける温度が低い程、低温でガラスを溶融することができる。したがって、高温粘度102.5dPa・sにおける温度が低い程、溶融窯等のガラス製造設備への負担が軽減されるとともに、ガラスフィルムの泡品位が向上し、結果として、ガラスフィルムを安価に製造することができる。
【0043】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、液相温度は1200℃以下、1150℃以下、1130℃以下、1110℃以下、1100℃以下、特に1080℃以下が好ましい。液相温度が高過ぎると、オーバーフローダウンドロー法で成形し難くなり、ガラスフィルムの表面精度を高め難くなる。
【0044】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、液相粘度は104.5dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.3dPa・s以上、105.5dPa・s以上、特に105.6dPa・s以上が好ましい。液相粘度が低過ぎると、オーバーフローダウンドロー法で成形し難くなり、ガラスフィルムの表面精度を高め難くなる。
【0045】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、ヤング率は10GPa以上、30GPa以上、50GPa以上、60GPa以上、70GPa以上、特に73GPa以上が好ましい。ヤング率が高い程、フィルム上に形成される膜によって発生する反りを低減しやすくなる。一方、ヤング率が高過ぎると、ガラスフィルムを湾曲させた際に発生する応力が大きくなり、ガラスフィルムが破損しやすくなる。よって、ヤング率は90GPa以下、85GPa以下、80GPa以下、特に78GPa以下が好ましい。ここで、「ヤング率」は、曲げ共振法により測定した値を指す。
【0046】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、フィルム面積は0.1m以上であり、且つ表面突起は2ヶ/m以下、1ヶ/m以下、特に0ヶ/mが好ましい。リチウムイオン電池の場合、ガラスフィルム上に微小な凹凸があると、電池反応の活性が局所的に相違し、特に急峻な突起が存在すると、その部分で異常な反応が起こり、電池特性の劣化、信頼性の低下、充放電特性の低下等が生じやすくなる。
【0047】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、水蒸気の透過度は1g/(m・day)以下、0.1g/(m・day)以下、0.01g/(m・day)以下、0.001g/(m・day)以下、0.0001g/(m・day)以下、0.00001g/(m・day)以下、0.000001g/(m・day)以下、特に0.0000001g/(m・day)以下が好ましい。リチウムイオン電池に用いられる固体電解質は、大気中の水分と反応すると、特性が著しく劣化する。よって、ガラスフィルムは、固体電解質の特性劣化を防止する上で、水蒸気の透過度が低いことが好ましい。
【0048】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、酸素の透過度は1mL/(m・day)以下、0.1mL/(m・day)以下、0.01mL/(m・day)以下、0.001mL/(m・day)以下、0.0001mL/(m・day)以下、0.00001mL/(m・day)以下、0.000001mL/(m・day)以下、特に0.0000001mL/(m・day)以下が好ましい。リチウムイオン電池に用いられる固体電解質は、大気中の酸素と反応すると、特性が著しく劣化する。よって、ガラスフィルムは、固体電解質の特性劣化を防止する上で、酸素の透過度が低いことが好ましい。
【0049】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは可撓性を有する。本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムにおいて、取り得る最小曲率半径は200mm以下、150mm以下、100mm以下、50mm以下、特に30mm以下が好ましい。取り得る最小曲率半径が小さい程、可撓性が向上する。
【0050】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 1〜30%、B 0〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量) 0〜15%含有することが好ましい。上記のようにガラス組成範囲を規定した理由を下記に示す。
【0051】
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分であり、その含有量は40〜70%、好ましくは50〜67%、より好ましくは52〜65%、更に好ましくは55〜63%、特に好ましくは56〜63%である。SiOの含有量が多過ぎると、溶融性や成形性が低下したり、熱膨張係数が低くなり過ぎて、固体電解質等の周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。一方、SiOの含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなったり、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下しやすくなる。
【0052】
Alは、歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は1〜30%である。Alの含有量が多過ぎると、ガラスに失透結晶が析出しやすくなって、オーバーフローダウンドロー法等で成形し難くなる。また、Alの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が低くなり過ぎて、固体電解質等の周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなったり、高温粘性が高くなり過ぎて、ガラスを溶融し難くなる。一方、Alの含有量が少な過ぎると、歪点が低下し、所望の耐熱性を得難くなる。上記の観点から、Alの好適な上限範囲は20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、特に16.8%未満である。また、Alの好適な下限範囲は2%以上、4%以上、5%以上、10%以上、11%以上、特に14%以上である。
【0053】
は、液相温度、高温粘度および密度を低下させる成分であり、その含有量が多過ぎると、耐水性が低下したり、ガラスが分相しやすくなる。よって、Bの含有量は0〜15%であり、好ましくは1〜15%、3〜13%、5〜12%、特に7〜11%である。
【0054】
MgO+CaO+SrO+BaOは、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分である。MgO+CaO+SrO+BaOが多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、耐失透性が低下しやすくなる。よって、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は0〜15%であり、好ましくは1〜15%、2〜15%、3〜15%、5〜14%、特に8〜13%である。
【0055】
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分である。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラスが失透しやすくなる。よって、MgOの含有量は0〜6%、0〜3%、0〜2%、0〜1%、特に0〜0.6%が好ましい。
【0056】
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分である。また、CaOは、アルカリ土類金属酸化物の中では耐失透性を高める効果が高い。しかし、CaOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆にガラスが失透しやすくなる。よって、CaOの含有量は0〜12%、0.1〜12%、3〜10%、5〜9%、6〜9%、特に7〜9%が好ましい。
【0057】
SrOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は0〜10%が好ましい。SrOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラスが失透しやすくなる。SrOの含有量は5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%以下が好ましい。
【0058】
BaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は0〜10%が好ましい。BaOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラスが失透しやすくなる。BaOの含有量は5%以下、3%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%以下が好ましい。
【0059】
上記成分のみでガラス組成を構成してもよいが、ガラスの特性を大きく損なわない範囲で、他の成分を30%以下、好ましくは20%以下まで添加することができる。
【0060】
LiOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を向上させる成分であり、更にはヤング率を向上させる成分である。しかし、LiOの含有量が多過ぎると、液相粘度が低下して、ガラスが失透しやすくなるとともに、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、固体電解質等の周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。さらに、LiOの含有量が多過ぎると、低温粘性が低下し過ぎて、所望の耐熱性を得難くなる。よって、LiOの含有量は5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましく、実質的に含有しないこと、つまり0.01%未満が最も好ましい。
【0061】
NaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を向上させる成分である。しかし、NaOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、固体電解質等の周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また、NaOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。よって、NaOの含有量は5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましく、実質的に含有しないこと、つまり0.01%未満が最も好ましい。
【0062】
Oは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であるとともに、耐失透性を高める成分であり、その含有量は0〜15%である。KOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、固体電解質等の周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなったり、歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。よって、KOの好適な上限範囲は10%以下、9%以下、8%以下、3%以下、1%以下、特に0.1%以下である。
【0063】
アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)の合量が多過ぎると、ガラスが失透しやすくなるとともに、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、固体電解質等の周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また、アルカリ金属酸化物の合量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎたり、更には液相温度付近の粘性が低下して、高い液相粘度を確保し難くなる場合がある。さらに、アルカリ金属酸化物の合量が多過ぎると、ガラスフィルムの体積抵抗率が低下しやすくなる。アルカリ金属酸化物の合量は20%以下、15%以下、10%以下、8%以下、5%以下、3%以下、1%以下、特に0.1%以下が好ましい。
【0064】
ZnOは、低温粘性を低下させずに、高温粘性を低下させる成分であるが、ZnOの含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなり過ぎる。そのため、ZnOの含有量は8%以下、6%以下、4%以下、特に3%以下が好ましい。
【0065】
ZrOは、ヤング率や歪点を高める効果があり、高温粘性を低下させる効果もある。ただし、ZrOの含有量が多過ぎると、耐失透性が極端に低下する場合がある。よって、ZrOの含有量は0〜10%、0.0001〜10%、0.001〜9%、0.01〜5%、0.01〜0.5%、特に0.01〜0.1%が好ましい。
【0066】
清澄剤として、As、Sb、SnO、CeO、F、SO、Clの群から選択された一種または二種以上を0.001〜3%添加することができる。ただし、As、Sbは、環境上の問題が指摘されているため、それぞれの含有量を0.1%未満、特に0.01%未満に制限することが好ましい。また、清澄剤は、SnO、SO、Clの群から選択された一種または二種以上が好ましく、これらの含有量は合量で0.001〜3%、0.001〜1%、0.01〜0.5%、更には0.05〜0.4%が好ましい。
【0067】
Nb、La等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、希土類酸化物は、原料自体のコストが高く、またガラス組成中に多量に添加すると、耐失透性が低下しやすくなる。よって、希土類酸化物の含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましい。
【0068】
PbO、Bi等の物質は、環境上の問題が指摘されているため、その含有量を0.1%未満に制限することが好ましい。
【0069】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、所望のガラス組成になるように、ガラス原料を調合し、これを連続溶融炉に投入し、1500〜1600℃で加熱溶融した後、清澄した上で、成形装置に供給し、溶融ガラスを成形・徐冷することで製造することができる。また、本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、ダウンドロー法(オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法、リドロー法等)、フロート法、ロールアウト法、プレス法等の種々の方法で成形することができる。
【0070】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、スロットダウンドロー法またはオーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。特に、オーバーフローダウンドロー法の場合、ガラスフィルムの表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるため、未研磨でガラスフィルムの表面精度を高めることができる。ここで、オーバーフローダウンドロー法は、図1に示す通り、溶融ガラス12を耐熱性の樋状耐火物11の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラス12を樋状耐火物11の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラスフィルム13を得る方法である。樋状耐火物11の構造や材質は、所望の寸法や表面品位を実現できる限り、特に限定されない。また、下方に延伸成形する際、力を印加する方法は特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスフィルム13に接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスフィルム13の端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。なお、液相温度が1200℃以下、且つ液相粘度が104.0dPa・s以上であれば、オーバーフローダウンドロー法でガラスフィルムを作製することができる。
【0071】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、基板形式で個別に出荷される場合、支持ガラス板に固定された状態、特に支持ガラス板に貼り合わされた状態で、リチウムイオン電池等(複合型太陽電池等を含む)の作製工程に投入されて、最終的には支持ガラス板から剥離されることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルムの取り扱い性を高めることができ、位置決めミスやパターニングのズレ等を防止しやすくなり、結果として、リチウムイオン電池等の生産性を高めることができる。また、支持ガラス板において、ガラスフィルムを固定させる側の表面粗さ(Ra)は100Å以下、20Å以下、10Å以下、5Å以下、4Å以下、3Å以下、特に2Å以下が好ましい。このようにすれば、接着剤等を使用せずに、ガラスフィルムと支持ガラス板を固定することができ、また支持ガラス板からガラスフィルムを一箇所でも剥離することができれば、その後に連続して、ガラスフィルム全体を支持ガラス板から剥離することができる。また、支持ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法で作製されてなることが好ましい。このようにすれば、支持ガラス板の表面精度を高めることができる。さらに、支持ガラス板の歪点は500℃以上、550℃以上、580℃以上、600℃以上、620℃以上、特に650℃以上が好ましい。このようにすれば、成膜(例えば、固体電解質、FTO等の導電膜の成膜)時の熱処理の際に、支持ガラス板が変形し難くなる。なお、支持ガラス板は、湾曲や破損を防止するため、0.3mm以上、特に0.5mm以上の板厚を有することが好ましい。また、支持ガラス板として、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス等が使用可能である。
【0072】
本発明のリチウムイオン電池用ガラスフィルムは、生産性を高めるために、ガラスロールの形態で供給されることが好ましい。本発明のガラスフィルムをロール状にすれば、所謂、ロール・ツー・ロールプロセスに適用することができる。効率良く、且つ低コストでリチウムイオン電池等を生産するためには、このようなロール・ツー・ロールプロセスへの展開が有効である。
【0073】
本発明のガラスフィルムを用いて作製したリチウムイオン電池と、太陽電池とを一体化し、複合型太陽電池とすることが好ましい。従来の太陽電池は、例えば屋外で使用する場合、昼間しか発電することができず、夜間は別の電力源から電気を供給する必要がある。しかし、上記のリチウムイオン電池と太陽電池を一体化すると、昼間に太陽電池で発電した余剰の電気をリチウムイオン電池に蓄電することにより、夜間でも電気を供給することが可能になる。また、太陽電池を薄膜化合物太陽電池にすれば、複合型太陽電池にも可撓性、軽量性を付与することができ、設置場所の自由度が向上するとともに、モバイル用途等の新しい用途への展開が可能になる。
【0074】
本発明の複合型太陽電池は、ガラスフィルム、リチウムイオン電池、太陽電池の順に積層してもよく、ガラスフィルム、太陽電池、リチウムイオン電池の順に積層してもよい。前者の構造を採用すると、ガラスフィルムの平滑な面を直接利用できることから、リチウムイオン電池の性能を高めることができる。また、後者の構造を採用すると、先に太陽電池を形成することから、薄膜の形成等の太陽電池の成膜時における熱処理が、リチウムイオン電池の性能に影響を与える事態を回避することができる。さらに、ガラスフィルム上にリチウムイオン電池および太陽電池を形成した後に、その上にガラスフィルムを配置し、対向するガラスフィルムを封止する構造が更に好ましい。特に、ガラスフィルム、リチウムイオン電池、太陽電池の順に積層する構造の場合、対向面に透光性のカバーが必要になるため、ガラスフィルムを対向させて封止する構造が好ましい。さらに、本発明のガラスフィルムの両側に太陽電池およびリチウムイオン電池をそれぞれ形成することも可能である。また、このような複合型電池に有機ELデバイスや各種の電子デバイスを同時に形成することも可能である。
【実施例1】
【0075】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0076】
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜10)と比較例(試料No.11)を示している。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
次のようにして、表1、2に記載の試料を作製した。まず、表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合した後、白金ポットに投入し、1580℃で8時間溶融した。次に、カーボン板の上に溶融ガラスを流し出し、平板形状に成形した。得られたガラスについて、下記の特性を評価した。
【0080】
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
【0081】
熱膨張係数αは、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均値を測定した値である。
【0082】
歪点Ps、徐冷点Taは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
【0083】
軟化点Tsは、ASTM C338の方法に基づいて測定した値である。
【0084】
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
【0085】
液相温度TLは、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。
【0086】
液相粘度logηTLは、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0087】
ヤング率は、曲げ共振法により測定した値である。
【0088】
表1、2の試料No.1〜10について、表中に記載のガラス組成となるように調製したガラス原料を、図2に示す溶融装置14に投入し、1500〜1600℃で溶融した後、清澄装置15で清澄し、さらに攪拌装置16、供給装置17を介して成形装置18に送り、成形装置18(図1に示すオーバーフローダウンドロー装置)によりガラスフィルムを成形した。成形の際、成形体に供給する溶融ガラスの流量と成形体の温度を調整し、ガラスフィルムの厚みが100μmとなるよう調整した。得られたガラスフィルムにつき、下記の特性を評価した。なお、試料No.11については、フロート法で平板形状のガラス(厚み700μm)を作製した。
【0089】
表面粗さ(Ra、Rp、Rku)は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値である。
【0090】
体積抵抗率logρは、ASTM C657の方法に基づいて測定した値である。
【0091】
表面突起は、暗室内でガラスフィルムに蛍光灯の光を照射し、反射光を利用して、目視で粗検査を行った後、接触式粗さ計を用いて、1000μmの距離で突起の高さを測定したときに、突部の先端とガラスフィルムの表面との高低差(突部の高さ)が1μm以上の突起をカウントし、その個数を1mに換算して算出した値である。
【0092】
水蒸気の透過度は、カルシウム法で評価した値である。
【0093】
酸素の透過度は、差圧式ガスクロマトグラフィー(JIS K7126に準拠)で評価した値である。
【0094】
表1、2から明らかなように、試料No.1〜10は、厚みが100μmであるため、可撓性を有し、また表面精度等が良好であり、しかも水蒸気と酸素の透過度が低く、表面突起が観察されなかった。よって、実験で得られたガラスフィルムは、可撓性を有するリチウムイオン電池に好適に使用可能であると考えられる。一方、試料No.11は、表面粗さが大きく、表面突起の数も多かった。
【0095】
試料No.1〜10のリチウムイオン電池用ガラスフィルム(厚み30μmに調整)を用いて、リチウムイオン電池を作製した。つまり、リチウムイオン電池用ガラスフィルム上に電極材料を形成し、その上に正極材料層、電解質層、負極材料を形成して、リチウムイオン電池を作製した。得られたリチウムイオン電池と有機ELパネル(3インチ、厚み0.3mm)の電源部を接合した後に、樹脂で貼り合わせて、厚み0.4mm(電源部を含む)の有機ELパネルを作製した。なお、この有機ELパネルは曲率半径130mm程度にまで湾曲させることが可能であった。
【0096】
また、試料No.1〜10のリチウムイオン電池用ガラスフィルム(厚み30μmに調整)を用いて、リチウムイオン電池を作製した。つまり、リチウムイオン電池用ガラスフィルム上に電極材料を形成し、その上に正極材料層、電解質層、負極材料を形成して、リチウムイオン電池を作製した。得られたリチウムイオン電池と薄膜シリコン太陽電池の電源部を接合した後に、樹脂で貼り合わせた。作製した複合型太陽電池に太陽光を照射したところ、リチウムイオン電池に電荷が充電された。
【実施例2】
【0097】
試料No.1〜10のリチウムイオン電池用ガラスフィルム(厚み50μmに調整)を
支持ガラス板(日本電気硝子株式会社製無アルカリガラスOA−10G、0.7mm厚、表面粗さ(Ra)=2Å)の表面上に載置し、接着剤等を使用せずに、両者を貼り合わせた。次に、リチウムイオン電池用ガラスフィルム上にFTO膜を成膜温度550℃で成膜した後、FTO膜上に薄膜化合物太陽電池を形成した。続いて、薄膜化合物太陽電池の上に、正極材料層、電解質層、負極材料を形成して、リチウムイオン電池を作製した上で、支持ガラス板を剥離することにより、複合型太陽電池を作製した。なお、この複合型太陽電池は曲率半径130mm程度にまで湾曲させることが可能であった。また、作製した複合型太陽電池のガラスフィルム側から太陽光を照射したところ、リチウムイオン電池に電荷が充電された。
【符号の説明】
【0098】
11 樋状耐火物
12 溶融ガラス
13 ガラスフィルム
14 溶融装置
15 清澄装置
16 攪拌装置
17 供給装置
18 成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが300μm以下であり、且つ表面粗さ(Ra)が100Å以下であることを特徴とするリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項2】
表面粗さ(Rp)が10000Å以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項3】
表面粗さ(Rku)が3以下であること特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項4】
未研磨の表面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項5】
350℃における体積抵抗率logρが5.0Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項6】
歪点が500℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項7】
30〜380℃における熱膨張係数が30〜100×10−7/℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項8】
密度が3.0g/cm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項9】
液相温度が1200℃以下および/または液相粘度が104.5dPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項10】
高温粘度102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項11】
フィルム面積が0.1m以上であり、且つ表面突起が2ヶ/m以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかにリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項12】
水蒸気の透過度が1g/(m・day)以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項13】
酸素の透過度が1mL/(m・day)以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項14】
オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項15】
スロットダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項16】
ロール状に巻き取られてなることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項17】
厚み0.3mm以上の支持ガラス板に固定されてなることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルム。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれかに記載のリチウムイオン電池用ガラスフィルムを備えたことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項19】
請求項18に記載のリチウムイオン電池と太陽電池を一体化したことを特徴とする複合型電池。
【請求項20】
太陽電池が薄膜太陽電池であることを特徴とする請求項19に記載の複合型電池。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載のリチウムイオン電池を備えたことを特徴とする有機EL素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−215498(P2010−215498A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36831(P2010−36831)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】