説明

リフロー装置

【課題】簡単な構成によって、薄い被加熱物に対して減圧雰囲気中でリフローを行うことを可能とする。
【解決手段】搬送治具(微粘着フィルム21、内周リング22および外周リング23)に支持されたウエハWがチャンバ3内に搬送される。ウエハWが下降され、微粘着フィルム21がヒータプレート7の加熱面に対して密着される。蓋8が下降され、弾性体41の端面によって、微粘着フィルム21が加熱面に対して押し付けられる。最初の加熱およびプリヒート時には、蓋8の内側に気密な空間に窒素ガスが充填される。さらに、蓋8の内側の空間が排気され、ほぼ真空雰囲気とされ、ヒータプレート7によって加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ほぼ真空雰囲気中ではんだ付、バンプ形成等を行うことが可能とされたリフロー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品またはプリント配線基板に対して、予めはんだ組成物を供給しておき、加熱するリフローはんだ付装置が知られている。さらに、単結晶シリコンウエハ等の半導体基板(以下、ウエハと称する)上に形成された電極上に、はんだバンプを形成するはんだバンプ形成装置が知られている。リフロー装置において、気泡によりできるはんだ付けの欠陥(ボイドと呼ばれる)が発生する。ボイドを回避する一つの方法として、被処理物が収納された容器内を真空とすることが提案されている。
【0003】
例えば、図7に示すように、密閉したチャンバ71に対して、入口および出口にそれぞれゲートバルブ72aおよび72bを設け、チャンバ71内を真空状態とする。被加熱物73がチャンバ71内で矢印方向に搬送される。最初にヒータ74に密着されることで加熱され、はんだが溶融され、はんだ付またはバンプ形成がなされる。次に冷却板75に密着されることで冷却される。冷却後にゲートバルブ72bが開けられて外に被加熱物73が排出される。
【0004】
さらに、被処理物の気泡を除去する脱泡装置を加熱処理工程中に設けることが提案されている(特許文献1参照)。脱泡装置は、上下に分割され、開閉自在の真空容器により構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−226484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7に示す構成は、被加熱物73を搬送するための搬送機構をチャンバ71内に収納する必要があり、チャンバ71が大きなサイズとなる欠点がある。さらに、チャンバ71を構成する筐体の厚みを厚くする必要があり、装置が大型化する欠点がある。
【0007】
特許文献1に記載の熱処理装置は、加熱処理とは、独立して脱泡装置を配置するもので、例えば搬送方向に対して複数のチャンバー(ゾーン)を設けるリフロー装置では、チャンバー数が増加する問題があった。さらに、ウエハの厚みが100μmのように非常に薄くなりつつある。特許文献1には、かかる薄い基板に対する処理について考慮されていない問題があった。
【0008】
したがって、この発明の目的は、簡単な構成で、ほぼ真空雰囲気ではんだを溶融させる加熱を行うことができ、さらに、薄い基板を加熱することができるリフロー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、この発明は、被加熱物をほぼ減圧雰囲気中で加熱することによってはんだ付けを行うリフローはんだ付装置であって、
外周端面が弾性を有する蓋と、
被加熱物と蓋とをそれぞれ昇降させる昇降部と、
被加熱物が降下する位置に配された加熱プレートとを備え、
被加熱物は、
枠体の端面に、開口を覆うように取り付けられた耐熱性のある微粘着フィルムと、
微粘着フィルムの粘着面に貼り付けられたワークとからなり、
被加熱物が昇降部によって下降されることによって、微粘着フィルムが加熱プレートに対して密着され、
蓋が昇降部によって下降されることによって、ワークの外周位置と、枠体の内周位置との間の領域に対して、蓋の外周端面が密着され、
蓋の内側に形成される空間内を減圧することによって、ほぼ真空雰囲気において加熱工程が行われるリフローはんだ付装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明では、薄いワークが枠体に張られた微粘着フィルムに貼り付けられるので、処理中にワークの反りが発生することを防止できる。この発明では、ほぼ真空雰囲気中ではんだを加熱するので、ボイドの発生を少なくできる。さらに、真空部の容積を小さくできるので、強度を必要とする部分が小さく、装置コストが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施の形態の平面図、正面図、側面図である。
【図2】この発明の一実施の形態におけるワーク搬送治具の一例の平面図および断面図である。
【図3】この発明の一実施の形態におけるワーク搬送治具の他の例の平面図および断面図である。
【図4】この発明の一実施の形態の加熱工程のチャンバを説明するための断面図である。
【図5】この発明の一実施の形態の温度プロファイルを説明するための斜視図である。
【図6】この発明の一実施の形態の各工程を説明するための略線図である。
【図7】従来のリフロー装置を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について説明する。説明は、以下の順序で行う。
<1.第1の実施の形態>
<2.変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0013】
<1.第1の実施の形態>
「リフロー装置の概要」
図1は、この発明の一実施の形態によるリフロー装置の全体の正面図、平面図、断面図である。リフロー装置は、一列に配された3個のチャンバ(ゾーン)1,2および3を有する。各チャンバ間は、隔壁で区切られ、隔壁に被加熱物としてのウエハWの搬送に必要な開口が形成される。
【0014】
チャンバ1は、搬入/搬出用のチャンバである。チャンバ1から搬送治具に取付けられたウエハWが搬入され、リフロー処理後のウエハWがチャンバ1から搬出される。ウエハWは、例えば厚みが0.5mm〜1.5mm、直径が120mm〜300mmの単結晶シリコンウエハである。ウエハに対してバンプを形成する処理、シリコンチップを導体にはんだ付けする処理、フリップチップを導体にはんだ付けする処理等がリフロー装置によってなされる。ウエハWが薄いので、後述するように、ウエハWが搬送治具によって保持されている。チャンバ1の上方の筐体部分4が開閉自在とされている。
【0015】
治具に保持されたウエハWは、ループ状のアーム5に載置される。アーム5が水平方向搬送機構6によって搬送されることによって、ウエハWが搬送される。水平方向搬送機構6は、例えばボールねじによって構成される。図1では、各チャンバにウエハWが位置している状態が示されているが、ウエハWは、チャンバ1からチャンバ2、チャンバ3と順次送られ、チャンバ3において、加熱処理される。加熱後にチャンバ3からチャンバ2に送られ、冷却され、冷却後にチャンバ1において、治具に保持されたウエハWが外に取り出される。
【0016】
加熱ゾーンとしてのチャンバ3には、加熱プレート(以下、ヒータプレートと称する)7が設けられている。ヒータプレート7は、加熱面に密着または近接した治具に取り付けられたウエハWを加熱する。ヒータプレート7に多数の小穴が形成されており、治具(ウエハWが貼り付けられた微粘着フィルム)を吸引することによって、微粘着フィルムを加熱面に密着させるようになされている。ヒータプレート7は、例えば内部にヒータを有するものが使用される。ヒータプレート7は、固定されている。
【0017】
チャンバ3には、外側への盛り上がりを有し、外周端面に弾性体を有する蓋8が昇降自在に設けられている。例えば蓋8は、開口が下側を向いた円筒状のものである。チャンバ3において、蓋8が微粘着フィルムに固定されたウエハWを覆うように、ウエハW上に置かれる。そして、蓋8の内側に形成された空間内の空気が図示しないが、真空ポンプ等によって排気される。そして、ほぼ真空雰囲気中で、加熱が行われ、はんだが溶融する。
【0018】
チャンバ3においては、後述するように、加熱(昇温加熱)、プリヒート(予熱)および本加熱がなされる。本加熱は、ほぼ真空雰囲気中で行われる。加熱およびプリヒートは、不活性ガス例えば窒素雰囲気中で行われる。窒素置換を行ったり、真空にするために、蓋8には、図示しないが、複数のポートが設けられている。複数のポートに対して、バルブを介して窒素発生装置、真空ポンプ等が接続される。
【0019】
蓋8を昇降させるためのシリンダ9がチャンバ3に設けられている。ウエハWは、シリンダ10によって昇降される。シリンダ9および10は、空気圧を利用した昇降機構である。シリンダ10は、アーム5を昇降させることによって、ウエハWを昇降させる。したがって、シリンダ10は、アーム5と一体に水平方向に移動される。
【0020】
チャンバ2において、本加熱が終了したウエハWが冷却される。チャンバ2には、冷却プレート11が設けられている。冷却されたウエハWがチャンバ2からチャンバ1に移送され、チャンバ1から外に取り出される。
【0021】
「搬送治具」
図2に示すように、ウエハWは、微粘着フィルム21の粘着面に貼り付けられる。ウエハWは、厚みが0.5mmのように薄いので、反りが発生し易い。微粘着フィルム21に対してウエハWを貼り付けることによって、ウエハWの反りを防止することができる。微粘着フィルム21は、高分子材料例えばPETの基材に対して微粘着力の粘着成分が塗布されたもので、はんだ付けの際に加わる熱に対して耐熱性を有する。微粘着フィルム21の粘着力は、ウエハWを処理終了後に外すのが容易であり、且つ搬送中および処理中にウエハWが剥がれない程度のものとされる。
【0022】
微粘着フィルム21は、枠体としての内周リング22に張られ、内周リング22に対して外周リング23を嵌合させることによって、たるみなく内周リングに対して張ることができる。ウエハWが微粘着フィルム21の内面に貼り付けられる。ウエハWは、円形を有し、内周リング22に張られた微粘着フィルム21も円形を有する。内周リング22に張られた微粘着フィルム21の直径は、ウエハWよりやや大きくされる。内周リング22および外周リング23は、金属材料例えばステンレスからなる。
【0023】
図3に示すように、多数の小穴24が形成され、小穴24を通じてウエハWが吸着される微粘着フィルム21’を使用しても良い。小穴24の形成位置は、ヒータプレート7に形成されている吸引用の小穴の形成位置と一致される。一致させるために、位置決め機構が付加される。または、小穴24の径がヒータプレート7に形成されている小穴の径より大きいものとされ、位置ずれの影響を受けないようにしても良い。小穴24が形成された微粘着フィルム21’を使用する時には、ヒータプレート7側から真空引きを行う必要がある。
【0024】
「加熱を行うチャンバの構成」
図4において、二点鎖線で示すように、搬送治具(微粘着フィルム21、内周リング22および外周リング23)に取り付けられたウエハWがチャンバ3内に搬送される。ウエハWがシリンダ10によって下降され、ヒータプレート7側からの吸引によって微粘着フィルム21がヒータプレート7の加熱面に対して密着される。
【0025】
さらに、シリンダ9によって蓋8が下降され、蓋8の端面に設けられた、耐熱性を有する弾性体41の端面によって、微粘着フィルム21が加熱面に対して押し付けられる。
ウエハWの外周位置と内周リング22の内側の位置との間に、微粘着フィルム21が露出する領域が形成されており、弾性体41の端面が露出している微粘着フィルム21に対して押し当てられる。さらに、弾性体41を有することによって、高さ方向に多少の機械的寸法誤差が存在していても、弾性体41と微粘着フィルム21の粘着面とが密に接触することができる。
【0026】
このように、蓋8の内側に気密な空間が形成される。蓋8には、ポート42aおよび42bが設けられている。各ポートには、配管が接続され、ポートまたは配管に対してバルブが設けられている。後述するように、蓋8の内側の空間の大気が不活性ガス(窒素)に置換される。さらに、蓋8の内側の空間が排気され、ほぼ真空雰囲気とされる。
【0027】
「リフロー処理」
上述したチャンバ3がリフロー時の温度プロファイルにしたがってウエハWの温度を制御する。図5に温度プロファイルの例の概略を示す。横軸が時間であり、縦軸がウエハWの表面温度である。最初の区間が加熱によって温度が上昇する昇温部R1であり、次の区間が温度がほぼ一定のプリヒート(予熱)部R2であり、次の区間が本加熱部R3であり、最後の区間が冷却部R4である。温度プロファイルは、図5において、実線で示すプロファイル51が代表的なものである。破線で示すプロファイル52、破線で示すプロファイル53に対してもこの発明を適用できる。
【0028】
昇温部R1は、常温からプリヒート部R2(例えば150°C〜170°C)までウエハWを加熱する期間である。プリヒート部R2は、等温加熱を行い、ウエハWの加熱ムラをなくすための期間である。本加熱部R3(例えばピーク温度で230°C〜250°C)は、はんだ例えば鉛フリーはんだが溶融し、接合またはバンプ形成が完成する期間である。R1〜R3の加熱処理がチャンバ3においてなされる。最後の冷却部R4は、急速にウエハWを冷却する期間である。ウエハWがチャンバ2において冷却プレート11によって冷却される。
【0029】
昇温部R1において、図6Aに示すように、窒素により置換された蓋8内の空間において、微粘着フィルム21がヒータプレート7の加熱面に密着され、ワークWが加熱される。加熱面への密着のために、ヒータプレート側から吸引を行っても良いが、シリンダ9によって蓋8の端面を加熱面に押し付けるのみでも良い。
【0030】
プリヒート部R2において、図6Bに示すように、蓋8内の空間の窒素雰囲気を保持するように、蓋8の開口を微粘着フィルム21によって覆う状態を保持して、蓋8および微粘着フィルムに貼り付けられたウエハWが上方に移動される。図6Bに示す状態は、シリンダ9および10を制御することによって実現できる。さらに、微粘着フィルム21とヒータプレート7の加熱面とを離す距離は、温度プロファイル上のプリヒート部R2の温度変化が生じるように選定される。プリヒート部R2の温度変化は、やや上昇する程度であるため、ヒータプレート7の加熱面と微粘着フィルム21との間を離間させる。
【0031】
本加熱部R3において、図6Cに示すように、蓋8内の空間の窒素がポート42a、42bの一方または両方を通じて吸引されてほぼ真空雰囲気とされると共に、微粘着フィルム21がヒータプレート7側の吸引によって、加熱面に密着される。ヒータプレート7は、伝導熱によりウエハWを加熱するために、微粘着フィルム21と加熱面とを密着させることが必要とされる。図3に示すような多数の小穴24が形成されている微粘着フィルム21’を使用する時には、ヒータプレート7側からの吸引によって、真空雰囲気を形成できると共に、微粘着フィルム24’を加熱面に密着させることができる。
【0032】
<2.変形例>
この発明は、上述したこの発明の実施の形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、チャンバ(ゾーン)を増加させて、入口側搬送部と出口側搬送部とを別に設けても良い。さらに、不活性ガスの雰囲気での加熱を受け持つチャンバと、真空雰囲気での加熱を受け持つチャンバとを別々に設けても良い。
【符号の説明】
【0033】
W・・・ウエハ
1、2、3・・・チャンバ
7・・・ヒータプレート
8・・・ヒータプレート
9、10・・・シリンダ
11・・・冷却プレート
21、21’・・・微粘着フィルム
22・・・内周リング
23・・・外周リング
24・・・小穴
41・・・弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物をほぼ減圧雰囲気中で加熱することによってはんだ付けを行うリフローはんだ付装置であって、
外周端面が弾性を有する蓋と、
被加熱物と上記蓋とをそれぞれ昇降させる昇降部と、
上記被加熱物が降下する位置に配された加熱プレートとを備え、
上記被加熱物は、
枠体の端面に、開口を覆うように取り付けられた耐熱性のある微粘着フィルムと、
上記微粘着フィルムの粘着面に貼り付けられたワークとからなり、
上記被加熱物が上記昇降部によって下降されることによって、上記微粘着フィルムが上記加熱プレートに対して密着され、
上記蓋が上記昇降部によって下降されることによって、上記ワークの外周位置と、上記枠体の内周位置との間の領域に対して、上記蓋の外周端面が密着され、
上記蓋の内側に形成される空間内を減圧することによって、ほぼ真空雰囲気において加熱工程が行われるリフローはんだ付装置。
【請求項2】
上記加熱工程の前のプリヒート工程において、上記空間内に不活性ガスが充填される請求項1記載のリフローはんだ付装置。
【請求項3】
上記プリヒート工程において、上記微粘着フィルムと上記加熱プレートとの間を離間させることによって、温度変化を緩やかなものに制御する請求項1記載のリフローはんだ付装置。
【請求項4】
上記微粘着フィルムに複数の孔が形成されている請求項1記載のリフローはんだ付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−287635(P2010−287635A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138709(P2009−138709)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】