説明

リンク旅行時間算出装置及びプログラム

【課題】交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出するようにする。
【解決手段】第1の算出方法では、対象リンクと、上流区間と、下流区間とからなる全区間の旅行時間から、上流区間の区間1旅行時間及び下流区間の区間2旅行時間の和を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出する。第2の算出方法では、対象リンクと上流リンクとからなる区間1の旅行時間および対象リンクと下流リンクとからなる区間2の旅行時間の和から、全区間の旅行時間を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出する。第3の算出方法では、対象リンク及び上流区間からなる全区間の旅行時間から、上流区間の区間1旅行時間を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク旅行時間算出装置及びプログラムに係り、特に、収集した走行データから、対象リンクのリンク旅行時間を算出するリンク旅行時間算出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、旅行経路の全旅行時間を算出することを目的に、旅行経路の通過ポイント間の通過時間および平均通過速度について過去のデータを集計したものに、環境・条件に応じたパラメータを適用して、各ポイント間の旅行時間を補正した補正旅行時間を算出する方法が知られている(特許文献1)。この旅行時間の算出方法では、曜日や時間帯、あるいは天候などの条件による特徴的な交通状況の変化に対応する旅行時間の算出が可能である。
【0003】
また、プローブカーから得られる旅行時間データと車両感知器から得られる交通量データとを用いて、交通量配分に用いるリンクコスト関数の推定を行い、精緻なリンクコスト関数を開発するための手法が知られている(非特許文献1)。この手法では、プローブカーによる旅行時間の観測区間の距離を長くすることで信号による影響を平均化して、リンクコスト関数の推定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−342874号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】岡田良之ほか、「プローブカーデータを用いたリンクコスト関数推定に関する研究」、土木計画学研究・論文集、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、イベント開催時の交通集中による渋滞の発生や、道路工事や事故による交通状況の突発的な変化をリアルタイムに反映して、旅行時間を算出することができない、という問題がある。
【0007】
また、上記の非特許文献1に記載の技術では、観測区間の延長により旅行時間のばらつきが少なくなる効果は得られるが、観測区間の全区間を一律の走行速度(平均走行速度)で走行するものとして、リンクコスト関数の推定を行っているため、リンク単位の旅行時間を精度よく算出することができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出するリンク旅行時間算出装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために第1の発明に係るリンク旅行時間算出装置は、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の上流区間、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなる全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間の和との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、を含んで構成されている。
【0010】
第2の発明に係るプログラムは、コンピュータを、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の上流区間、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなる全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間の和との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0011】
第1の発明及び第2の発明によれば、収集手段によって、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する。そして、リンク旅行時間算出手段によって、収集手段によって収集された所定期間内の走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、対象リンクより上流の上流区間、及び対象リンクより下流の下流区間からなる全区間の旅行時間と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる上流区間の旅行時間、及び走行位置及び通過時刻に基づいて得られる下流区間の旅行時間の和との差を算出することにより、所定期間に対する対象リンクの旅行時間を算出する。
【0012】
このように、所定期間の対象リンクの上流区間及び下流区間を含む全区間の旅行時間と、所定期間の上流区間の旅行時間及び下流区間の旅行時間の和との差を算出することにより、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出することができる。
【0013】
第3の発明に係るリンク旅行時間算出装置は、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと前記対象リンクより上流の区間とからなるリンク上流区間の旅行時間、及び対象リンクと前記対象リンクより下流の区間とからなるリンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記上流の区間、及び前記下流の区間からなる全区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、を含んで構成されている。
【0014】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと前記対象リンクより上流の区間とからなるリンク上流区間の旅行時間、及び対象リンクと前記対象リンクより下流の区間とからなるリンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記上流の区間、及び前記下流の区間からなる全区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0015】
第3の発明及び第4の発明によれば、収集手段によって、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する。そして、リンク旅行時間算出手段によって、収集手段によって収集された所定期間内の走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと対象リンクより上流の区間とからなるリンク上流区間の旅行時間、及び対象リンクと対象リンクより下流の区間とからなるリンク下流区間の旅行時間の和と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、上流の区間、及び下流の区間からなる全区間の旅行時間との差を算出することにより、所定期間に対する対象リンクの旅行時間を算出する。
【0016】
このように、所定期間のリンク上流区間の旅行時間及びリンク下流区間の旅行時間の和と、所定期間の全区間の旅行時間との差を算出することにより、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出することができる。
【0017】
第5の発明に係るリンク旅行時間算出装置は、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなるリンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、を含んで構成されている。
【0018】
第6の発明に係るプログラムは、コンピュータを、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなるリンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0019】
第5の発明及び第6の発明によれば、収集手段によって、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する。そして、リンク旅行時間算出手段によって、収集手段によって収集された所定期間内の走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び対象リンクより下流の下流区間からなるリンク下流区間の旅行時間と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる下流区間の旅行時間との差を算出することにより、所定期間に対する対象リンクの旅行時間を算出する。
【0020】
このように、所定期間の対象リンクを含むリンク下流区間の旅行時間と、所定期間の下流区間の旅行時間との差を算出することにより、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出することができる。
【0021】
第7の発明に係るリンク旅行時間算出装置は、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより上流の上流区間からなるリンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間内に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、を含んで構成されている。
【0022】
第8の発明に係るプログラムは、コンピュータを、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより上流の上流区間からなるリンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間内に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0023】
第7の発明及び第8の発明によれば、収集手段によって、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する。そして、リンク旅行時間算出手段によって、収集手段によって収集された所定期間内の走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び対象リンクより上流の上流区間からなるリンク上流区間の旅行時間と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる上流区間の旅行時間との差を算出することにより、所定期間内に対する対象リンクの旅行時間を算出する。
【0024】
このように、所定期間の対象リンクを含むリンク上流区間の旅行時間と、所定期間の上流区間の旅行時間との差を算出することにより、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出することができる。
【0025】
第9の発明に係るリンク旅行時間算出装置は、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の第1上流区間、及び前記対象リンクより下流の第1下流区間からなる第1全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1下流区間の旅行時間の和との差を算出する第1算出方法、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第2上流区間とからなる第1リンク上流区間の旅行時間、及び前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第2下流区間とからなる第1リンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記第2上流区間、及び前記第2下流区間からなる第2全区間の旅行時間との差を算出する第2算出方法、並びに前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第3下流区間とからなる第2リンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3下流区間の旅行時間との差を算出し、又は前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第3上流区間とからなる第2リンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3上流区間の旅行時間との差を算出する第3算出方法の何れかを、前記対象リンクの過去の交通状況、又は前記対象リンクの現在の交通状況に基づいて選択する算出方法選択手段と、前記算出方法選択手段によって選択された前記第1算出方法〜前記第3算出方法の何れか1つに従って、前記所定時間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、を含んで構成されている。
【0026】
第10の発明に係るプログラムは、コンピュータを、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の第1上流区間、及び前記対象リンクより下流の第1下流区間からなる第1全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1下流区間の旅行時間の和との差を算出する第1算出方法、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第2上流区間とからなる第1リンク上流区間の旅行時間、及び前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第2下流区間とからなる第1リンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記第2上流区間、及び前記第2下流区間からなる第2全区間の旅行時間との差を算出する第2算出方法、並びに前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第3下流区間とからなる第2リンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3下流区間の旅行時間との差を算出し、又は前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第3上流区間とからなる第2リンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3上流区間の旅行時間との差を算出する第3算出方法の何れかを、前記対象リンクの過去の交通状況、又は前記対象リンクの現在の交通状況に基づいて選択する算出方法選択手段、及び前記算出方法選択手段によって選択された前記第1算出方法〜前記第3算出方法の何れか1つに従って、前記所定時間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0027】
第9の発明及び第10の発明によれば、収集手段によって、複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する。そして、算出方法選択手段によって、収集手段によって収集された所定期間内の走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、対象リンクより上流の第1上流区間、及び対象リンクより下流の第1下流区間からなる第1全区間の旅行時間と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる第1上流区間の旅行時間、及び走行位置及び通過時刻に基づいて得られる第1下流区間の旅行時間の和との差を算出する第1算出方法、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと対象リンクより上流の第2上流区間とからなる第1リンク上流区間の旅行時間、及び対象リンクと対象リンクより下流の第2下流区間とからなる第1リンク下流区間の旅行時間の和と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、第2上流区間、及び第2下流区間からなる第2全区間の旅行時間との差を算出する第2算出方法、並びに走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと対象リンクより下流の第3下流区間とからなる第2リンク下流区間の旅行時間と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる第3下流区間の旅行時間との差を算出し、又は走行位置及び通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと対象リンクより上流の第3上流区間とからなる第2リンク上流区間の旅行時間と、走行位置及び通過時刻に基づいて得られる第3上流区間の旅行時間との差を算出する第3算出方法の何れかを、対象リンクの過去の交通状況、又は対象リンクの現在の交通状況に基づいて選択する。
【0028】
リンク旅行時間算出手段によって、算出方法選択手段によって選択された第1算出方法〜第3算出方法の何れか1つに従って、所定時間に対する対象リンクの旅行時間を算出する。
【0029】
このように、対象リンクの過去の交通状況又は現在の交通状況に基づいて選択された算出方法に従って、対象リンクのリンク旅行時間を算出することにより、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出することができる。
【0030】
上記の収集手段は、GPSセンサと無線通信部とを備えた複数の車両から送信された、GPSセンサによって測定された走行位置及び通過時刻を収集することができる。
【0031】
上記の収集手段は、車両について測定された走行位置と、予め用意された道路地図データとを照合して、車両の走行位置を、道路地図上の位置として収集することができる。
【0032】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供することも可能である。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明のリンク旅行時間算出装置及びプログラムによれば、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る交通情報生成システムを示すブロック図である。
【図2】(A)リンク旅行時間を算出する第1の算出方法を説明するための図、(B)リンク旅行時間を算出する第2の算出方法を説明するための図、及び(C)リンク旅行時間を算出する第3の算出方法を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る交通情報生成装置におけるプローブカー情報収集処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る交通情報生成装置におけるリンク旅行時間計算処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図5】シミュレーションにおいてリンク旅行時間を計測した比較例の結果を示すグラフである。
【図6】シミュレーションにおいて区間旅行時間を算出した結果を示すグラフである。
【図7】プローブカー普及率とリンク旅行時間の平均誤差率との関係を示すグラフである。
【図8】リンク旅行時間を算出する第3の算出方法の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。各リンクのリンク旅行時間を表わす交通情報を生成する交通情報生成システムに本発明を適用した場合を例に説明する。
【0036】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る交通情報生成システム10は、複数のプローブカー12と、路側に設置された無線通信を行う複数の基地局14と、交通情報センター側に設けられた交通情報生成装置16とを備えている。また、各基地局14と交通情報生成装置16とは、通信回線18を介して接続されている。
【0037】
各プローブカー12は、自車両の位置を計測するためのGPSセンサ20と、GPSセンサ20によって計測した自車位置情報、計時部(図示省略)により計測した自車位置情報が示す位置の通過時刻、及び自車両を識別する車両IDを含むプローブカー情報を、無線通信により送信する無線通信部22とを備えている。各プローブカー12は、所定時間間隔でプローブカー情報を送信する。
【0038】
各基地局14は、プローブカー12の無線通信部22によって送信されたプローブカー情報を受信すると共に、通信回線18を介して、受信したプローブカー情報を交通情報生成装置16に送信する。
【0039】
交通情報生成装置16は、一般的なサーバによって構成され、CPUと、RAMと、後述するプローブカー情報収集処理ルーチン及びリンク旅行時間計算処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMと、HDDとを備えている。交通情報生成装置16は、機能的には次に示すように構成されている。交通情報生成装置16は、プローブカー12から送信されたプローブカー情報を受信する情報受信部24と、情報受信部24によって受信したプローブカー情報を収集する情報収集部26と、プローブカー情報の走行位置を、道路地図データと照合して、道路地図上の位置を特定して、後述する車両走行データ記憶部30に格納する道路地図照合部28と、道路地図上の走行位置、プローブカー情報の通過時刻、及び車両IDを含む車両走行データを記憶する車両走行データ記憶部30と、車両走行データ記憶部30に記憶された車両走行データに基づいて、対象リンクの交通状況を判断して、リンク旅行時間の算出方法を選択する算出方法選択部31と、車両走行データ記憶部30に記憶された車両走行データに基づいて、対象リンクの旅行時間を計算するための区間旅行時間を抽出する区間旅行時間抽出部32と、区間旅行時間を用いて、リンク旅行時間を計算するリンク旅行時間計算部34と、各リンクのリンク旅行時間を格納した交通情報を生成する交通情報生成部36とを備えている。
【0040】
また、交通情報生成装置16は、過去に計測された各リンクのリンク旅行時間を記憶したリンク旅行時間DB38と、曜日、時間帯、及び天候などの環境条件を判別する環境条件判別部40とを更に備えている。
【0041】
情報収集部26は、複数のプローブカー12から送信されたプローブカー情報を収集する。
【0042】
道路地図照合部28は、プローブカー情報を収集する毎に、収集したプローブカー情報に含まれる走行位置と道路地図データが表わす道路地図とを照合して、道路地図上の走行位置を特定し、特定された道路地図上の走行位置、プローブカー情報に含まれる通過時刻、及び車両IDを含む車両走行データを、車両走行データ記憶部30に格納する。
【0043】
ここで、本実施の形態の原理について説明する。
【0044】
カーナビの経路探索には、リンク旅行時間が必要であるが、VICSの交通情報は高速道路や幹線道路に限られており、一般道路の交通情報の収集には、プローブカーを利用した交通情報収集システムが有効である。このプローブカーを利用した交通情報収集システムにおいて、プローブカー情報からリンク旅行時間を取得する場合、リンク旅行時間は、そのリンクを走行した車両(プローブカー)の走行時間を表すが、一般的に走行時間は車両によってかなりバラツキを生じる。このバラツキは、主に信号による影響が大きい。具体的には、交差点から次の交差点までの所要時間を計測したときに、車両が信号交差点を青信号で通過する場合と、赤信号で停止し次の青信号まで待ち時間が必要になる場合とでは、リンク旅行時間に大きな違いが生じる。そのため、1台のプローブカーのみからリンク旅行時間を取り出すと、その値は、全車両のリンク旅行時間の平均値に対して、大きな誤差を生じる場合が多い。
【0045】
これに対し、複数の信号交差点を含む区間旅行時間は、車両走行における信号による影響が平均化されるため、区間旅行時間のバラツキはリンク旅行時間と比べて相対的に小さくなる。
【0046】
そこで、本実施の形態では、この特性を利用し、リンク旅行時間を算出する方法として、対象リンクを含む全区間旅行時間と、対象リンクの上流あるいは下流を含む区間旅行時間とに基づいて、異なる2地点間の区間旅行時間の差を計算することにより、リンク旅行時間を算出する。
【0047】
具体的には、対象リンクのリンク旅行時間の算出方法として、対象リンクを含む全区間旅行時間や、対象リンクの上流または下流を含む区間旅行時間を利用した、以下の3種類の算出方法のいずれかを適用する。
【0048】
第1の算出方法では、図2(A)及び以下の(1)式に示すように、対象リンクと、対象リンクより上流である上流区間と、対象リンクより下流である下流区間とからなる全区間の旅行時間から、上流区間の区間1旅行時間及び下流区間の区間2旅行時間の和を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出する。
(対象リンクのリンク旅行時間)=
(全区間の旅行時間)−(区間1旅行時間+区間2旅行時間) ・・・(1)
【0049】
第2の算出方法では、図2(B)及び以下の(2)式に示すように、対象リンクと、対象リンクより上流である上流リンクと、対象リンクより下流である下流リンクとからなる全区間の旅行時間、対象リンクと上流リンクとからなる区間1の旅行時間、及び対象リンクと下流リンクとからなる区間2の旅行時間を用いて、区間1の旅行時間および区間2の旅行時間の和から、全区間の旅行時間を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出する。
(対象リンクのリンク旅行時間)=
(区間1旅行時間+区間2旅行時間)−(全区間の旅行時間) ・・・(2)
【0050】
第3の算出方法では、図2(C)及び以下の(3)式に示すように、対象リンク及び対象リンクより上流である上流区間からなる全区間の旅行時間から、上流区間の区間1旅行時間を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出する。
(対象リンクのリンク旅行時間)=
(全区間旅行時間)−(区間1旅行時間) ・・・(3)
【0051】
次に、リンク旅行時間の3種類の算出方法から何れか1つの算出方法を選択する方法について説明する。
【0052】
まず、リンク旅行時間の算出方法として、上記の第1の算出方法を基本設定として選択することとする。これは、全区間のリンク数を多く取る(例えば図2(A)で示す5リンク)ことで、1台ごとの車両のリンク旅行時間のバラツキを平均化する効果を最大限に活用するためである。
【0053】
対象リンクの交通量が少なく、交通量が少ない中でプローブカー情報を利用する場合であって、第1の算出方法での全区間(上記図2(A)の事例では5リンク)を走行するプローブカーの抽出が難しくなるような交通状況では、上記の第2の算出方法を選択する。例えば、交通情報の更新間隔の間に、第1の算出方法での全区間を走行するプローブカーが存在しなかった場合には、上記第2の算出方法を選択する。また、対象リンクにおいて、混雑・渋滞が発生し、区間旅行時間を取得するのに必要な時間が交通情報の更新間隔を超えるような状況では、上記の第2の算出方法を選択する。例えば、交通情報の更新間隔が5分ならば、それよりも短い時間で区間旅行時間を取得することが必要とされるため、上記第1の算出方法における全区間の旅行時間が、更新間隔以上となる交通状況では、全区間の旅行時間をより短い時間で取得可能な、上記第2の算出方法を選択する。
【0054】
また、交通量が増大し、渋滞が延伸する交通状況では、渋滞の先頭になるリンクの上流と下流では交通状況が大きく異なる。このような交通状況の判断は、上記の第2の算出方法で用いる全区間(図2(B)の事例では3リンク)の旅行時間から導出される平均走行速度の違いに着目して行われる。例えば、対象リンクを含む区間で渋滞が発生し、平均走行速度が20km/h以下となる区間が連続的に観測できるような交通状況では、渋滞発生区間と、その上流を含む区間旅行時間を利用してリンク旅行時間を算出する、上記第3の算出方法を選択する。
【0055】
本実施の形態では、算出方法選択部31によって、対象リンクの各々について、車両走行データ記憶部30に記憶された所定期間分(交通情報の更新間隔と同じ期間分、例えば5分間分)の当該対象リンク周辺の車両走行データに基づいて、対象リンクにおける交通状況を判断し、上述したように、上記の第1の算出方法〜第3の算出方法の何れか1つを所定期間毎に選択する。
【0056】
区間旅行時間抽出部32は、対象リンクの各々について、車両走行データ記憶部30に記憶された所定期間分の当該対象リンク周辺の車両走行データに基づいて、選択された算出方法に応じた全区間の旅行時間と、選択された算出方法に応じた上流区間の区間1旅行時間又は下流区間の区間2旅行時間とを、所定期間毎に抽出する。
【0057】
例えば、対象リンクについて、第1の算出方法が選択された場合には、所定期間内に全区間を通過した全てのプローブカー12の車両走行データから算出される全区間の旅行時間の平均値を、全区間の旅行時間として抽出する。また、所定期間内に上流区間を通過した全てのプローブカー12の車両走行データから算出される上流区間の旅行時間の平均値を、区間1旅行時間として抽出し、所定期間内に下流区間を通過した全てのプローブカー12の車両走行データから算出される下流区間の旅行時間の平均値を、区間2旅行時間として抽出する。
【0058】
リンク旅行時間計算部34は、対象リンクの各々について、抽出された全区間旅行時間と、区間1旅行時間又は区間2旅行時間とに基づいて、選択された算出方法に従って、対象リンクのリンク旅行時間を所定期間毎に計算する。
【0059】
リンク旅行時間計算部34は、対象リンクについて、選択された算出方法に必要な全区間旅行時間と、区間1旅行時間又は区間2旅行時間とが入手できなかった場合には、リンク旅行時間データベース38から、対象リンクについて過去に計算されたリンク旅行時間を抽出し、リンク旅行時間の平均値を算出すると共に、環境条件判別部40によって判別された曜日、時間帯、及び天候などの環境条件に基づいて、リンク旅行時間を補正して、対象リンクのリンク旅行時間とする。
【0060】
交通情報生成部36は、各リンクについて計算されたリンク旅行時間を格納した交通情報を生成して、最新の交通情報に更新する。
【0061】
次に、第1の実施の形態に係る交通情報生成システム10の動作について説明する。まず、走行中の各プローブカー12において、所定時間間隔で、プローブカー情報が生成され、無線通信で基地局14に対して送信される。
【0062】
このとき、交通情報生成装置16において、図3に示すプローブカー情報収集処理ルーチンが実行される。
【0063】
まず、ステップ100において、通信回線18を介して受信したプローブカー情報を取得し、ステップ102において、上記ステップ100で取得したプローブカー情報の走行位置データを、予め用意された道路地図データと照合して、道路地図上の走行位置を特定する。
【0064】
そして、ステップ104において、上記ステップ102で特定した道路地図上の走行位置と、プローブカー情報の通過時刻と、車両IDとを含む車両走行データを生成して、車両走行データ記憶部30に格納して、上記ステップ100へ戻る。
【0065】
上記のように、プローブカー情報収集処理ルーチンを実行することにより、プローブカー情報から得られる車両走行データが、随時収集される。
【0066】
また、交通情報生成装置16において、交通情報の更新間隔(例えば5分間隔)で、道路地図上の各リンクについて、図4に示すリンク旅行時間計算処理ルーチンが各々実行される。なお、以下では、ある1つの対象リンクについてリンク旅行時間を計算する場合について説明する。
【0067】
まず、ステップ110において、対象リンクに対応する、例えば5分前から現在までの車両走行データに基づく交通状況に応じて、対象リンクのリンク旅行時間の算出方法を選択する。
【0068】
次のステップ112では、上記ステップ110で選択された算出方法及び対象リンクに対応する、全区間、上流区間、下流区間、上流リンク、又は下流リンクに関する、5分前から現在までの車両走行データに基づいて、上記ステップ110で選択された算出方法で用いる、全区間旅行時間や区間1旅行時間又は区間2旅行時間を抽出する。
【0069】
そして、ステップ114において、上記ステップ112により、選択された算出方法で用いる、全区間旅行時間や区間1旅行時間又は区間2旅行時間が抽出されたか否かを判定する。全区間旅行時間や区間1旅行時間又は区間2旅行時間が得られた場合には、ステップ116において、上記ステップ112で抽出された全区間旅行時間及び区間1旅行時間又は区間2旅行時間を用いて、選択された算出方法に従って、対象リンクのリンク旅行時間を算出して、リンク旅行時間計算処理ルーチンを終了する。
【0070】
一方、上記ステップ114において、選択された算出方法で用いる、全区間旅行時間や区間1旅行時間又は区間2旅行時間が抽出されなかったと判定された場合には、ステップ118において、リンク旅行時間データベース38から、対象リンクについて過去に計算されたリンク旅行時間を取得して、リンク旅行時間の平均値を求める。
【0071】
そして、ステップ120において、対象リンクの環境条件を判別し、ステップ122において、上記ステップ118で得られたリンク旅行時間の平均値を、上記ステップ120で判別された環境条件に応じて補正して、対象リンクのリンク旅行時間を算出し、リンク旅行時間計算処理ルーチンを終了する。
【0072】
各リンクについて、上記のリンク旅行時間計算処理ルーチンを実行することにより、道路地図上の各リンクのリンク旅行時間を計算し、計算された各リンクのリンク旅行時間を格納した交通情報を、現在の交通情報として更新する。
【0073】
更新された交通情報は、例えば、各車両に搭載されているナビゲーションシステムに送信され、ナビゲーションシステムにおいて、リアルタイムで交通状況の変化を反映したリンク旅行時間に基づいて、経路探索が行なわれる。
【0074】
本実施の形態の手法を用いた場合のシミュレーションによる実験結果について説明する。シミュレーションにおいて、上記図2(B)に示した第2の算出方法を用いて、対象リンクを含む区間旅行時間を算出する実験を行った。比較例として、対象リンクのリンク旅行時間をそのまま計測する実験を行った。
【0075】
図5に示すように、比較例で計測されたリンク旅行時間は、信号による影響が大きく、分散が大きいのに対し、図6に示すように、第2の算出方法で算出された区間旅行時間は、信号の影響が平均化され、分散が小さくなることが分かった。また、図7に示すように、プローブカーの普及率に関わらず、第2の算出方法を用いて算出した場合の方が、リンク旅行時間の平均誤差率が低く、また、プローブカー普及率が低いほど、リンク旅行時間の平均誤差率の差が大きくなることがわかった。
【0076】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る交通情報生成システムによれば、所定期間の対象リンクの上流区間及び下流区間を含む全区間の旅行時間と、所定期間の上流区間の旅行時間及び下流区間の旅行時間の和との差、所定期間の対象リンクを含むリンク上流区間の旅行時間及び対象リンクを含むリンク下流区間の旅行時間の和と、所定期間の全区間の旅行時間との差、又は所定期間の対象リンクを含むリンク上流区間の旅行時間と、所定期間の上流区間の旅行時間との差を算出することにより、交通状況をリアルタイムに反映して、精度よくリンク旅行時間を算出することができる。
【0077】
また、対象リンクの現在の交通状況に基づいて選択された算出方法に従って、対象リンクのリンク旅行時間を算出することにより、精度よくリンク旅行時間を算出することができる。
【0078】
また、プローブカー情報を、プローブカーに搭載した無線通信部を介して、交通情報センター側に設けられた交通情報生成装置で収集するシステムにおいて、プローブカーの普及率が低い状態やプローブカーの走行台数が少なく、収集するプローブカー情報が少ない状況においても、カーナビの経路探索に必要なリンク旅行時間を精度良く算出することができ、経路探索で要求される最短旅行時間経路の選定に有効な交通情報をリアルタイムに提供することが出来る。
【0079】
また、複数の信号交差点を含む区間旅行時間は、車両走行における信号による影響が平均化され、区間旅行時間のバラツキはリンク旅行時間と比べて相対的に小さくなる。この特性を利用し、リンク旅行時間を算出する方法として、そのリンクを含む区間旅行時間や、そのリンクの上流あるいは下流を含む区間旅行時間を利用して、異なる2地点間の区間旅行時間の差を計算することにより、リンク旅行時間を算出する。この値は、信号の影響による走行時間のバラツキが平均化されていることから、単独の車両から求めたリンク旅行時間に対し、全車両のリンク旅行時間の平均値に近いリンク旅行時間を得ることができる。
【0080】
なお、上記の実施の形態では、上記の第2の算出方法で用いる全区間の旅行時間から導出される平均走行速度に基づいて、第3の算出方法を選択する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、過去のプローブカー情報の蓄積データを利用して、曜日、時間帯、天候などの条件から求められる混雑又は渋滞の発生状況を参照し、対象リンクが、渋滞発生時の先頭となるリンク(ボトルネックとなるリンク)である場合には、対象リンクと上流区間を含む区間旅行時間を利用してリンク旅行時間を算出する第3の算出方法を選択するようにしてもよい。
【0081】
また、第3の算出方法として、対象リンク及び上流区間からなる全区間の旅行時間から、上流リンクの区間1旅行時間を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、図8及び以下の(4)式に示すように、対象リンク及び対象リンクより下流である下流区間からなる全区間の旅行時間から、下流リンクの区間2旅行時間を減算することにより、対象リンクのリンク旅行時間を算出するようにしてもよい。
(対象リンクのリンク旅行時間)=
(全区間旅行時間)−(区間2旅行時間) ・・・(4)
【0082】
また、所定期間分の車両走行データに基づいて判断される対象リンクの現在の交通状況に基づいて、リンク旅行時間の算出方法を選択する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、過去のプローブカー情報の蓄積データを利用して、対象リンクの過去の交通状況を判断し、判断された過去の交通状況に基づいて、リンク旅行時間の算出方法を選択してもよい。この場合、曜日、時間帯などの環境条件を考慮した過去の交通状況を判断するようにしてもよい。
【0083】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
第2の実施の形態では、路側に設けられた複数の車両感知器からの出力に基づいて、車両走行データを収集している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0085】
第2の実施の形態に係る交通情報生成システムは、路側に設けられた複数の車両感知器(図示省略)を備え、各車両感知器と交通情報生成装置16とは、通信回線18を介して接続されている。
【0086】
車両感知器は、路側に所定間隔で複数設置されており、各車両感知器が、走行路上の感知範囲の車両の存在を感知して、車両の存在を感知したことを示す情報、感知した時刻情報、車両感知器の位置情報、及び車両を識別する車両ID情報を、通信回線18を介して、交通情報生成装置16へ送信する。
【0087】
交通情報生成装置16は、情報受信部24によって、車両感知器から送信された情報を受信する。情報収集部26は、情報受信部24によって受信した車両感知器からの情報を収集する。道路地図照合部28は、車両感知器からの情報を収集する毎に、収集した情報に対応する車両感知器の設置位置と道路地図データが表わす道路地図とを照合して、道路地図上の位置を特定し、特定された道路地図上の位置(走行位置)、及び車両感知器が車両の存在を感知した時刻(通過時刻)を含む車両走行データを、車両走行データ記憶部30に格納する。
【0088】
なお、第2の実施の形態に係る交通情報生成システムの他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
このように、車両感知器からの出力を、通信回線を介して交通情報センター側に設けられた交通情報生成装置で収集するシステムにおいて、カーナビの経路探索に必要なリンク旅行時間を精度良く算出することができる。
【0090】
なお、上記の第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、第1の算出方法、第2の算出方法、及び第3の算出方法の何れか1つを選択するのではなく、第1の算出方法、第2の算出方法、及び第3の算出方法のうちの何れか1つを用いて、リンク旅行時間を算出するようにしてもよい。また、第1の算出方法、第2の算出方法、及び第3の算出方法のうちの2種類の算出方法の組み合わせから、何れか1つを選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 交通情報生成システム
12 プローブカー
14 基地局
16 交通情報生成装置
18 通信回線
20 GPSセンサ
22 無線通信部
24 情報受信部
26 情報収集部
28 道路地図照合部
30 車両走行データ記憶部
31 算出方法選択部
32 区間旅行時間抽出部
34 リンク旅行時間計算部
36 交通情報生成部
38 リンク旅行時間データベース
40 環境条件判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の上流区間、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなる全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間の和との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、
を含むリンク旅行時間算出装置。
【請求項2】
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと前記対象リンクより上流の区間とからなるリンク上流区間の旅行時間、及び対象リンクと前記対象リンクより下流の区間とからなるリンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記上流の区間、及び前記下流の区間からなる全区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、
を含むリンク旅行時間算出装置。
【請求項3】
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなるリンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、
を含むリンク旅行時間算出装置。
【請求項4】
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより上流の上流区間からなるリンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間内に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、
を含むリンク旅行時間算出装置。
【請求項5】
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の第1上流区間、及び前記対象リンクより下流の第1下流区間からなる第1全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1下流区間の旅行時間の和との差を算出する第1算出方法、
前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第2上流区間とからなる第1リンク上流区間の旅行時間、及び前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第2下流区間とからなる第1リンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記第2上流区間、及び前記第2下流区間からなる第2全区間の旅行時間との差を算出する第2算出方法、並びに
前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第3下流区間とからなる第2リンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3下流区間の旅行時間との差を算出し、又は前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第3上流区間とからなる第2リンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3上流区間の旅行時間との差を算出する第3算出方法の何れかを、前記対象リンクの過去の交通状況、又は前記対象リンクの現在の交通状況に基づいて選択する算出方法選択手段と、
前記算出方法選択手段によって選択された前記第1算出方法〜前記第3算出方法の何れか1つに従って、前記所定時間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、
を含むリンク旅行時間算出装置。
【請求項6】
前記収集手段は、GPSセンサと無線通信部とを備えた前記複数の車両から送信された、前記GPSセンサによって測定された前記走行位置及び前記通過時刻を収集する請求項1〜請求項5の何れか1項記載のリンク旅行時間算出装置。
【請求項7】
前記収集手段は、車両について測定された走行位置と、予め用意された道路地図データとを照合して、前記車両の走行位置を、道路地図上の位置として収集する請求項1〜請求項6の何れか1項記載のリンク旅行時間算出装置。
【請求項8】
コンピュータを、
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の上流区間、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなる全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間の和との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンクと前記対象リンクより上流の区間とからなるリンク上流区間の旅行時間、及び対象リンクと前記対象リンクより下流の区間とからなるリンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記上流の区間、及び前記下流の区間からなる全区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより下流の下流区間からなるリンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記下流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータを、
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、及び
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、及び前記対象リンクより上流の上流区間からなるリンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記上流区間の旅行時間との差を算出することにより、前記所定期間内に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータを、
複数の車両の各々について計測された、該車両の走行位置及び該走行位置の通過時刻を収集する収集手段、
前記収集手段によって収集された所定期間内の前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、対象リンク、前記対象リンクより上流の第1上流区間、及び前記対象リンクより下流の第1下流区間からなる第1全区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1上流区間の旅行時間、及び前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第1下流区間の旅行時間の和との差を算出する第1算出方法、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第2上流区間とからなる第1リンク上流区間の旅行時間、及び前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第2下流区間とからなる第1リンク下流区間の旅行時間の和と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンク、前記第2上流区間、及び前記第2下流区間からなる第2全区間の旅行時間との差を算出する第2算出方法、並びに前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより下流の第3下流区間とからなる第2リンク下流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3下流区間の旅行時間との差を算出し、又は前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる、前記対象リンクと前記対象リンクより上流の第3上流区間とからなる第2リンク上流区間の旅行時間と、前記走行位置及び前記通過時刻に基づいて得られる前記第3上流区間の旅行時間との差を算出する第3算出方法の何れかを、前記対象リンクの過去の交通状況、又は前記対象リンクの現在の交通状況に基づいて選択する算出方法選択手段、及び
前記算出方法選択手段によって選択された前記第1算出方法〜前記第3算出方法の何れか1つに従って、前記所定時間に対する前記対象リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−22649(P2011−22649A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164733(P2009−164733)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】