説明

リン酸系ガラス封着リング、その製造方法、およびディスプレイデバイス

【課題】リン酸系ガラス材料を用いて鉛の含有量を削減しつつも、封着性に優れ、かつ安定性に優れた通気管の先端形状に対応した複雑な形状を有する、新規なガラス封着リングを提供する。
【解決手段】パネルの通気孔と通気管とが連通するように、パネルに通気管を封着するための、リン酸系ガラス封着リング22であって、内周壁面を含み、内周壁面の表面に、通気管の受け皿となる段差部21が設けられ、バインダーを実質的に含有しない、リン酸系ガラス封着リング22とする。このリン酸系ガラス封着リングは、例えば、リン酸系ガラスフリットと、25℃の雰囲気下で固体であり沸点が400℃以下であるバインダーと、を含むフリット・バインダー混合物を成形して、段差部を含む成形体リングを得る工程と、成形体リングを加熱してバインダーを除去するバインダー除去工程と、を含む、ことにより製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルや電界放射型ディスプレイ等のディスプレイデバイスにおける通気孔と、通気管とが連通するように、当該通気孔が形成されたパネルに通気管を封着するための、リン酸系ガラス封着リングに関する。また、このリン酸系ガラス封着リングの製造方法に関する。また、このリン酸系ガラス封着リングが用いられてなるディスプレイデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)や電界放射型ディスプレイ(以下、FEDと呼ぶ)等のディスプレイデバイスは、大画面化と薄型軽量化との両方を実現しうる薄型ディスプレイデバイスとして注目されている。
【0003】
このようなディスプレイデバイスでは、一対のパネル間に発光励起源空間が形成されている。この発光励起源空間とは、例えば、PDPの場合は希ガスを主体とする放電ガスが充填された放電空間、FEDの場合は電子源が放出する電子線を減衰させることなく取り出せる真空空間に相当する空間であり、高い気密性が要求される。
【0004】
ディスプレイデバイスの製造に際しては、発光励起源空間内の雰囲気を適宜調整する必要がある。雰囲気の調整は、パネルに形成された通気孔に連通するようにして設けられた通気管を介して行われる。この通気管としては、一般に、パネルへの接合安定性を高めるため、安定性に優れた先端形状を有するもの、例えば図4Aで示すような拡径部53やフランジ部52を有するものが用いられている。また、通気管とパネルとの封着には、図4Aで示すような、リングの内周壁面の表面に、通気管の先端開口部を嵌め込む受け皿となる段差部が設けられた形状のガラス封着リングが用いられている。通気孔、通気管、およびリングの貫通孔の位置合わせを容易化するためである。なお、このような複雑なリング形状は、ひび割れ、欠け、ガラスの変質などの不良を伴わずに形成することが容易でなく、これを実現できるガラス材料は酸化鉛系ガラスに限られている。
【0005】
ここで、自然環境保護の観点から、ガラス封着リングの材料として、従来の鉛系ガラスに代えて、鉛成分を含まないガラス材料へと、その使用材料を置き換えることが求められている。その候補として、例えば酸化リン含有ガラス材料(リン酸系ガラス材料)が提案されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【特許文献1】特開2003−238199号公報
【特許文献2】特開2004−182584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1または2で開示される、リン酸系ガラス材料を用いた場合には、安定性に優れた通気管の先端形状に対応した複雑な形状で、かつ、ひび割れや変質等の欠損が少ない、ガラス封着リングを成形することが非常に難しい。なお、欠損のあるガラスリングでは、発光励起空間の気密性を維持するに十分な封着力を得ることができない。
【0007】
また、円筒形などの単純な形状のリングであれば、リン酸系ガラス材料を用いて成形することはできるものの、当該単純な形状のリングでは、ディスプレイデバイスのパネルの通気孔と通気管と封着リングとの開口位置合わせが容易でなく、ディスプレイデバイスの生産性を向上することが難しい。
【0008】
そこで、本発明は、リン酸系ガラス材料を用いつつも、封着性に優れ、かつ安定性に優れた通気管の先端形状に対応した複雑な形状を有する、ディスプレイデバイスのパネルの通気孔と通気管と封着リングとの開口位置合わせが容易であり、ひび割れや欠け、ガラスの変質などのない、新規なリン酸系ガラス封着リングを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、この新規なリン酸系ガラス封着リングの製造方法を提供することを目的とする。また、この新規なリン酸系ガラス封着リングが用いられてなる、環境問題を考慮した鉛を含まない優れたガラス封着部を有し、十分な気密性を保持し、良好な画像表示性能を発揮する、ディスプレイデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリン酸系ガラス封着リングは、パネルの通気孔と通気管とが連通するように、前記パネルに前記通気管を封着するための、リン酸系ガラス封着リングであって、内周壁面を含み、前記内周壁面の表面に、前記通気管の受け皿となる段差部が設けられ、バインダーを実質的に含有しない、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は別の側面から、上記リン酸系ガラス封着リングの製造に適した方法として、リン酸系ガラスフリットと、25℃の雰囲気下で固体であり沸点が400℃以下であるバインダーと、を含むフリット・バインダー混合物を成形して、段差部を含む成形体リングを得る工程と、前記成形体リングを加熱して前記バインダーを除去するバインダー除去工程と、を含む、製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は別の側面から、通気孔が形成されたパネルと、前記通気孔と連通する通気管と、前記パネルに前記通気管を封着するリン酸系ガラス封着リングと、を含むディスプレイデバイスであって、前記リン酸系ガラス封着リングが、前記通気管の開口端面および外壁面と、前記パネルとに接合しており、バインダーを実質的に含有しない、ディスプレイデバイスを提供する。
【0013】
なお、本明細書において、バインダーを『実質的』に含有しないとは、ガラスのバインダーとして用いられる公知の有機物の含有量が1ppm未満、より詳しくは1ppb未満の範囲にあることを意味する。なお、本明細書における『ppm』とは質量百万分率を意味し、『ppb』とは質量十億分率を意味する。有機物の含有量は、例えばガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)等の公知の手法を用いて評価すればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、FEDやPDP等のディスプレイデバイスの製造に好適な、有害化学物質である鉛の使用量を削減して自然環境への悪影響を減少させるとともに、ひび割れや欠け、ガラスの変質などがなく封着性に優れた、また、安定性に優れた通気管の先端形状に対応した複雑な形状を有する、リン酸系ガラス封着リングを提供することができる。このリン酸系ガラス封着リングであると、ディスプレイデバイスにおけるパネルの通気孔と当該封着リングと通気管との開口位置合わせが容易となる。
【0015】
また、本発明によれば、このリン酸系ガラス封着リングの製造に適した方法を提供することができる。また、本発明によれば、このリン酸系ガラス封着リングが用いられたディスプレイデバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り種々の形態をとることができる。
【0017】
<1−1.ガラス封着リングの組成>
本発明の実施の形態1にかかるリン酸系ガラス封着リングは、P25−SnO系、P25−SnO−ZnO系、P25−SnO−SiO2系、P25−SnO−Al23系、P25−SnO−B23系等の、ガラスの網目構造を形成する主成分(ガラスネットワークフォーマーの主成分)として酸化リン(P25)を含有するリン酸系ガラスフリットと、25℃の雰囲気下で固体であり沸点が400℃以下である、昇華性のバインダーと、を含むフリット・バインダー混合物が成形、焼結されてなる、鉛を含まない(非鉛系)リングである。なお、詳細は後述するが、完成品のガラス封着リングは、バインダーを実質的に含有していない。
【0018】
上記リン酸系ガラスフリットは、リン酸系ガラス粉末またはリン酸系ガラス粉末と耐火性の無鉛フィラー粉末との混合粉末である。
【0019】
リン酸系ガラス粉末は、酸化物基準のモル%表示で(以下同様)、20モル%以上のP25を含有することが好ましい。他方、欠損の少ない良質なガラス封着リングを作製する観点からは、P25の含有率を、50モル%以下とすることが好ましい。含有率が50モル%を超えると耐水性が低下するからである。
【0020】
また、リン酸系ガラス粉末にSnOを15モル%以上含有させると、ガラスの軟化点を低く維持しながら、その耐水性を向上させることができる。他方、含有率が60モル%を超えるとガラスの安定性が低下する。ZnO、SiO2、Al23、B23等は、ガラスの形成を助けるとともに、ガラスの安定性の向上、熱特性の制御、耐水性の向上等の作用を発揮する一方、含有率が過剰になると、軟化点の上昇、流動性の低下、ガラスの結晶化等が発生しやすくなり、封着性が低下するため、上記各成分系における含有率を、ZnO:0.5〜10モル%、SiO2:1〜10モル%、Al23:1〜10モル%、B23:0.5〜5モル%の範囲とすることが好ましい。
【0021】
また、上記リン酸系ガラスフリットには、必要に応じ、例えばLi2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、V25、TeO2、CuO、Bi23、TiO2、MnO2、ZrO2、Nb25、MoO3、WO3、希土類酸化物等を含ませることができる。これらの成分を添加すると、ガラス組成物の熱特性を制御したり、強度を向上したりすることが一層容易となる。
【0022】
上記耐火性の無鉛フィラーとしては、例えば、コーディエライト、ウィレマイト、フォルステライト、アノーサイト、ジルコン、ムライト、β−ユークリプタイト、β−スポジュメン、クリストバライト、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化リンジルコニウム、石英ガラス、サイアロン、窒化珪素、炭化珪素、β−石英固溶体、および式AD2(MO43によって示される化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。ただし、上記式において、Aは、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cu、NiおよびMnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Dは、Zr、Ti、Sn、Nb、Al、ScおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素であり、Mは、P、Si、WおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0023】
ガラスフリットに含まれる耐火性の無鉛フィラーの量はとくに限定されず、例えば、0〜70質量%の範囲であり、好ましくは5〜50質量%の範囲である。ディスプレイデバイスを製造する際には、基板(パネル)の熱膨張率と、ガラス封着リングの熱膨張率との差をできるだけ小さくすることが好ましい。耐火性フィラーは、ガラスの熱膨張率を制御する作用を有している。それゆえ、ガラス封着リングに含まれる耐火性フィラーの種類や量を選択することによって、ガラス封着リングと基板の熱膨張率との差を低減できる。
【0024】
<1−2.ガラス封着リングの形状>
本発明のリン酸系ガラス封着リングは、図4Aで示すように、内周壁面を含み、当該内周壁面の表面に、ガラス通気管12の先端開口部をはめ込む受け皿となる段差部21が設けられている。
【0025】
一般に、ガラス通気管の先端部分には、図4Aで示すように、先端に近づくにつれて径が広がるフレア部(拡径部53)が設けられており、さらにその先端には環状のフランジ部52が設けられている。ガラス通気管の先端に拡径部を設けることにより、フランジ部の径すなわち先端開口部を大きくすることができ、ガラス通気管をディスプレイデバイスに対して垂直に保持する場合の安定性が増す。
【0026】
上記リン酸系ガラス封着リングは、ディスプレイデバイスのパネルに形成された通気孔と通気管とが導通するように、パネルとガラス通気管との間に設置し、ガラスフリットの軟化点以上の温度で焼成することで、ディスプレイデバイスとガラス通気管とを封着させることができる。この場合、十分な気密性を保持するため、リングの外径をフランジ部の外径よりも大きく、リングの内径をフランジ部の内径よりも小さくしておく必要がある。また、リングの貫通孔の中心軸とフランジ部の中心軸を合わせるように設置しないと十分な気密性を保持することができない。しかし、本発明のリン酸系ガラス封着リングでは、図4Aで示すように、リングの内周壁面の表面に段差部が設けられているため、この段差部にフランジ部をはめ込むことによりガラス通気管とリングの貫通孔との中心軸を容易に一致させることができる。これにより、ガラス通気管とガラス封着リングとの一体移動が容易となるため、これらとディスプレイデバイスの通気孔との軸合わせが容易にできるようになる。したがって、通気孔とガラス通気管との位置ずれによる不完全な封着が発生しにくく、ディスプレイデバイスの気密性を十分に保持することができないといった不良が発生する虞がなくなる。
【0027】
<1−3.ガラス封着リングの製造方法>
上記リン酸系ガラス封着リング(段差付ガラス封着リング)は、上記リン酸系ガラスフリットと、常温常圧(25℃、101325Pa)の雰囲気下で固体であり沸点が400℃以下である有機物バインダーと、を含むフリット・バインダー混合物を成形して、段差部を含む成形体リングを得る工程と、前記成形体リングを加熱して前記バインダーを除去するバインダー除去工程と、を含む、ことにより作製する。
【0028】
より詳しくは、リン酸系ガラスフリットに昇華性の有機物をバインダーとして含有させたフリット・バインダー混合物を段差付リング形状に成形した後、リン酸系ガラスフリットのガラス転移点以上、軟化点未満の仮焼成温度で脱バインダーおよび焼結を行うことにより作製する。
【0029】
上記昇華性の有機物としては、樟脳(沸点204℃)、ナフタレン(沸点218℃)、アントラセン(沸点354℃)などを例示することができる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。このような昇華性の有機物はリン酸系ガラスフリットのガラス転移点以上、軟化点未満の仮焼成温度、すなわち250〜450℃で完全に消失し、残存バインダーに由来する欠陥を生じることはない。また、このような昇華性の有機物は疎水性(分子内に親水性基を有さない)で強固な結着力を有するため、種々の低融点ガラスフリットからガラス封着リングを形成することができるバインダーとして有効であるが、特に耐水性が劣るリン酸系ガラスフリットを用いる場合には、これを湿気から保護し、変質させることがないので、ひび割れや欠けのない段差付ガラス封着リングを形成することができるバインダーとして有効である。
【0030】
昇華性の有機物の含有量は、リン酸系ガラスフリットに対し1質量%〜20質量%の範囲にあり、好ましくは5質量%〜15質量%の範囲にある。昇華性の有機物の含有量が1質量%を下回る場合には、リン酸系ガラスフリットを十分に結着保持することができない。一方、20質量%を上回る場合には、仮焼成後に昇華性の有機物が微量残存することがある。
【0031】
昇華性の有機物とリン酸系ガラスフリットとの均一なフリット・バインダー混合物を得るには、例えば昇華性の有機物を前記含有量に調合したリン酸系ガラスフリット100質量部に有機溶媒を50〜150質量部加え、十分に攪拌した後、有機溶媒を30℃以下で蒸発乾固させる方法があげられる。ここでは前記フリット・バインダー混合物中の昇華性の有機物の含有量を低減させないために、可能な限り低温で、かつ短時間に蒸発乾固させることが好ましい。このため、前記昇華性の有機物を溶解する有機溶媒としては、沸点100℃以下のものが好ましく、沸点85℃以下のものが特に好ましい。例えば、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチレンクロライド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどがあげられる。
【0032】
次に、このようにして得られた前記フリット・バインダー混合物を段差付リング形状の金型成型器に充填した後、これをプレス成型して段差部を含む成形体リングを得る。
【0033】
最後に、得られた成形体リングをリン酸系ガラスフリットのガラス転移点以上、軟化点未満の仮焼成温度、すなわち250〜450℃で脱バインダーおよび焼結を行うことにより、段差付ガラス封着リングが製造される。
【0034】
完成したリン酸系ガラス封着リングは、酸化物基準で、20モル%以上の酸化リンを含有する。
【0035】
なお、上記有機物バインダーは、その昇華性により、上記バインダー除去工程によってほぼ完全に除去することができるため、残存バインダーのないガラス封着リングを作製することが容易となる。このような有機物バインダーを用いたガラス封着リングの作製方法は、ガラス材料として酸化スズ(SnO)や酸化リンを含有する場合に特に効果が高い。SnOを含有したガラスは比較的強度が低く、残存バインダーによる悪影響が特に深刻となるためである。封着リング中にバインダーが残存していると、封着作業時に、ガラスが変質したり、クラックが発生したりする原因となり、十分な封着性を得られないことがある。また、酸化リンを含有したガラスは耐水性が低く変質しやすいが、上記有機物バインダーは、いわゆる昇華性を有しているため、バインダー除去工程以外の製造作業時においても、有機物バインダーが激しく揮発して、成形体リングから遠ざかる方向に気流を発生させるため、ガラスを侵食する水分の接近を妨害することができる。すなわち、ガラス封着リングの製造時において、リン酸系ガラスを湿気から保護し、その変質を防止することができるため、欠陥の少ないリン酸系ガラス封着リングを作製することができる。特に、酸化リン−酸化スズ含有ガラス材料を用いて、複雑な外壁面形状を有するガラス封着リングを作製する場合には効果が高い。形状が複雑になるほど、その応力バランスが均一化しにくくなり、ガラスの変質や残存バインダーに起因して、欠損が発生する場合が増加するためである。
【0036】
他方、昇華性を有さない従来型のバインダーを用いた場合、例えば上記特許文献2に開示されるポリエチレンカーボネート、ポリエチレングリコール誘導体、ポリメチルスチレン等の高分子系バインダーを用いた場合には、上記バインダー除去工程における加熱によってその高分子構造を一定程度にまで分解することはできるものの、完全に除去することが難しく、バインダーが一定量以上残存してしまう。また、分解後の残滓に起因してガラス封着部材に欠損が発生することがある。また、昇華性を有するバインダーのようには激しく揮発しないため、水分の侵食を妨害することが難しく、リン酸系ガラスが変質してしまうこともある。
【0037】
上記本発明のリン酸系ガラス封着リングは、例えばディスプレイデバイスの製造に使用することができる。なお、以下では、本発明の実施の形態2にかかるPDPを例に用いて、当該ガラス封着リングの使用態様について詳しく説明する。
【0038】
<2−1.PDPの構成>
図1は、本発明のリン酸系ガラス封着リングを用いて作製されたPDPの構造を示す断面図である。このPDP51は、基板1a(前面基板)を含むフロントパネルと、基板1b(背面基板)を含むバックパネルとが対向して配置され、それらの間に放電空間2(発光励起源空間)が形成されている。基板1aおよび1bの材料は特に限定されないが、通常、ガラスが用いられる。図4Bで詳しく示すように、基板1bには通気孔11が設けられており、放電空間2とは反対側の基板1bの主面上に、通気孔11と連通するフレア部付通気管12が配置されている。
【0039】
基板1aおよび1bの周縁は周縁封止壁3によって封着されている。また、当該通気管12の通気孔側と反対側の末端(細管部)が封止されている。
【0040】
通気管12とバックパネルとの封着は、図4Aで示す上記実施の形態1にかかるリン酸系ガラス封着リング22によって形成されたガラス封着部材23が、通気管の外壁面(管外)および通気孔側の開口端面と、パネル1bとに溶着されることにより行われている。
【0041】
基板1a上には、維持電極および走査電極を含む電極群4、誘電体層5および保護層6が配置されており、基板1b上には、データ電極7、誘電体層8および隔壁9が配置されている。このPDP51は、いわゆる3電極構造を有している。なお、図1では、実際のPDPにおける隔壁やデータ電極を、その数を省略して示している。
【0042】
図1に示すPDP51を、基板1aと基板1bとを分離して見た斜視図を図2に示す。なお、図2では、周縁封止壁3およびガラス封着部材23の図示を省略し、基板1aおよび1bの一部分のみを示す。
【0043】
図2に示すように、基板1aには、電極群4として、ストライプ状の走査電極41および維持電極42が互いに平行に配置されており、走査電極41および維持電極42によって表示電極43が形成されている。走査電極41および維持電極42は、それぞれ、透明電極(走査電極)41aおよび透明電極(維持電極)42aに、バス電極(走査電極)41bおよびバス電極(維持電極)42bが積層された構造を有している。透明電極41aおよび42aには、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化スズ等が用いられる。バス電極41bおよび42bには、アルミニウム、銅、銀等が用いられる。走査電極41と維持電極42との間には、黒色の表示品質を向上させ、画像のコントラストを高めるためのブラックストライプと呼ばれるガラスおよび黒色顔料からなる黒色膜40が配置されている。電極群4に含まれる各電極および黒色膜40は、例えば、スクリーン印刷等の手法により基板1a上に形成できる。
【0044】
また、基板1aには、表示電極43を被覆するように誘電体層5が配置されており、誘電体層5上には(誘電体層5の放電空間2側には)、誘電体層5を保護するための保護層6が配置されている。誘電体層5は、PDP51が画像を表示する際に、電荷を蓄積するコンデンサーの役割を果たす。誘電体層5、保護層6には、それぞれ低融点ガラス、MgO等が用いられる。
【0045】
基板1bには、誘電体層8、隔壁9およびストライプ状のアドレス電極7が配置されている。誘電体層8はアドレス電極7を被覆するように配置されており、隔壁9は互いに平行となるように配置されている。隣り合う隔壁9の間には蛍光体層10が配置されており、放電空間2は、隔壁9によって画素に分割される。蛍光体層10は、赤、緑または青を発光する蛍光体を含んでいる。アドレス電極7の構成は、バス電極の構成と同様であり、誘電体層8は、誘電体層5と同様である。隔壁9は、ガラス材料および顔料等を用いて形成されている。
【0046】
基板1aおよび1bは、保護層6および隔壁9が放電空間2に面するように、かつ、ストライプ状の電極群4およびアドレス電極7が、基板1aおよび1bの主面から見て直交するように、対向して配置されている。放電空間2内には、ネオンやキセノン等の希ガスを含む放電ガスが充填されている。放電空間2内における放電ガスの圧力は、例えば、53329〜79993Pa(400〜600Torr)の範囲であればよい。
【0047】
このPDP51では、表示電極43に映像信号電圧を選択的に印加して放電ガスをプラズマ放電させ、発生した紫外線によって蛍光体層10に含まれる蛍光体を励起させ、励起した蛍光体が赤色、緑色または青色を発光することによって、カラー画像を表示する。
【0048】
このPDPでは、上記本発明の実施の形態1にかかるリン酸系ガラス封着リングを用いて、パネルの通気孔と連通するように、前記パネルに通気管が封着されているため、高い気密性が発揮される。これにより、当該封着部分におけるスローリークなどの問題の発生を抑制でき、良好な画像表示性能が発揮されるとともに、放電空間おけるガス圧が良好に保たれて正常な放電が長期的に維持される。
【0049】
<2−2.PDPの製造方法>
上記PDP51は、例えば次のようにして製造することができる。
【0050】
(フロントパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなる前面基板1aの面上に、次のようにして表示電極を作製する。なお、ここでは印刷法によって表示電極を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
【0051】
まず、ITO(透明電極)材料を所定のパターンで表面基板上に塗布し、これを乾燥させる。これと並行して、金属(Ag)粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを作製する。次に、この感光性ペーストを上記ITOパターンの上に重ねて塗布した後、形成する表示電極のパターンを有するマスクで覆う。その後、当該マスク上から露光し、現像および焼成(590〜600℃程度の焼成温度)する。これにより透明電極41a、42a上にバス電極41b、42bが形成される。バス電極の金属材料としては、この他にPt、Au、Cu、Al、Ni、Cr、酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。
【0052】
なお、このようなフォトマスク法を用いると、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバス電極を細線化することができ好ましいが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等で電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成する公知の形成方法を除外するものではない。
【0053】
次に、形成した表示電極の上から、非鉛系誘電体ガラスを含有したペーストをスクリーン印刷法等により塗布する。続いて、一定期間乾燥処理した後、所定温度で焼成して、誘電体層5を形成する。使用する非鉛系誘電体ガラス材料としては、例えば、P25−SnO系、P25−SnO−ZnO系、Bi23系、ZnO−B23−SiO2系等のガラス粉末があげられる。
【0054】
その後、誘電体層5の表面に、スパッタリング法等を用いて厚さ約1μmの酸化マグネシウムからなる保護層6を形成する。以上により、フロントパネルが作製される。
【0055】
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなる背面基板1bの表面上に、スクリーン印刷法により金属(Ag)を主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ約5μmのアドレス電極7を形成する。
【0056】
続いて、形成したアドレス電極の上から、非鉛系誘電体ガラスを含有したペーストを、スクリーン印刷法等を用いて厚さ約20〜30μmで塗布する。続いて、一定期間乾燥処理した後、所定温度で焼成して、誘電体膜8を形成する。
【0057】
次に、誘電体膜8の上であって、隣り合うアドレス電極の間毎に、高さ約60〜100μmの隔壁9を形成する。この隔壁9は、例えば、誘電体膜8の形成に用いる非鉛系誘電体ガラスを含有したペーストを用い、これを繰り返しスクリーン印刷したものを焼成することにより形成できる。
【0058】
最後に、隔壁の側壁と、隣り合う隔壁の間で露出している誘電体膜とに接して、赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光体インク(15×10-3Pa・s)を、ポンプにて径60μmのノズルから隣接隔壁間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁9の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後、500℃付近で10分間焼成して、蛍光体層10を形成する。以上により、バックパネルを作製することができる。
【0059】
なお、上記RGB各色蛍光体としては、例えば以下を用いることができる。
赤色蛍光体;Y23:Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn2+
青色蛍光体;BaMgAl1017:Eu2+
【0060】
また、上記蛍光体インクは、例えば、体積平均粒径2.0μmの各蛍光体材料50質量%と、エチルセルロース1.0質量%と、溶剤(α-ターピネオール)49質量%とをサンドミルで撹拌混合することにより調製できる。
【0061】
(PDPの作製)
フロントパネルまたはバックパネルの少なくとも一方のパネルの主面上に、当該主面の周縁を一周するように、非鉛系ガラスフリットを含有したガラスペーストを塗布する。この非鉛系ガラスフリットとしては、Bi23系、ZnO−B23−SiO2系などの低融点ガラス粉末またはこれらの低融点ガラス粉末と耐火性の無鉛フィラー粉末の混合粉末を例示することができる。
【0062】
その後、塗布したペーストを一定時間乾燥させた後、ガラスペースト中の非鉛系ガラスの軟化点付近、例えば350〜450℃で仮焼成することにより、ガラスパネルの周縁封着部材14を形成する。焼成時間としては例えば30分とすることができる。
【0063】
次に、図3Aで示すように、フロントパネルの電極群4とバックパネルのアドレス電極7とが直交するように、両パネルを対向して配置する。さらに、バックパネルの通気孔11と連通するように、例えば図4Aで示すように、フレア部付通気管12を、そのフランジ部52が段差部21と接触するように、ガラス封着リング22に嵌め込んだ後、パックパネルの通気孔と通気管とが連通するようにして配置する。
【0064】
続いて、上記ガラス封着リング22および周縁封着部材14に含まれる非鉛系ガラスの軟化点よりも30〜50℃高い温度、例えば380〜500℃で30分間の焼成を行うことにより、図3Bで示すように、パネル間を封着する周縁封止部材3を形成する。また、当該焼成によって、図4Bで示すように、ガラス封着リング22の少なくとも一部を溶融してガラス封着部材23を形成し、パネルに通気管を溶着する。なお、通気管として、図5Aで示すような円筒形状の拡径部53を有する円筒部付通気管13や、図6Aで示すような釣鐘形状の拡径部53を有する釣鐘部付通気管14を用いた場合にも、それぞれ同様に、図5Bや図6Bに示すガラス封着部材23を形成することができる。
【0065】
その後、通気管12を介して、放電空間2の内部が高真空状態(約1.0×10-4Pa)になるまで排気した後、内部が所定の圧力(ここでは約66.5〜101kPa)になるまでNe-Xe系やHe-Ne-Xe系、He-Ne-Xe-Ar系等の放電ガスを封入する。次に、通気管12の通気孔側と反対側の末端(基板1b側とは反対側の末端(細管部))を加熱し、当該末端の管壁を融着させ、放電空間2の気密を保持する。以上でPDP51が完成する。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について、実施の形態1にかかるリン酸系ガラス封着リングを用いて作製したPDPを例として説明する。なお、本発明はこれらによって限定されない。
【0067】
(実施例1)
実施例1は、図4Aで示すフレア部付通気管12と、当該フレア部付通気管の受け皿となる段差部21が内周壁面に設けられた、リン酸系ガラス封着リング22と、を用いて作製したPDPである。
【0068】
(1)フリット・バインダー混合物の調製
リン酸−酸化スズ系ガラスフリットとして、酸化物基準のモル%表示で、P25:30モル%、SnO:60モル%、ZnO:10モル%の組成を有するガラス粉末90質量%を準備し、当該ガラスフリットと、バインダーとしての樟脳10質量%との混合物100質量部に対して、溶剤としてアセトンを100質量部加えた後、これをボールミルにて10分間混練した。その後、30℃以下の雰囲気下に30分間置き、添加したアセトンを蒸発させ、混合物を乾固させることにより、フリット・バインダー混合物を調製した。
【0069】
(2)リン酸系ガラス封着リングの作製
上記フリット・バインダー混合物を、段差付リング形状の金型成型器に充填した後、プレス成型し、段差部を含む成形体リングを形成した後、360℃に加熱してバインダーを除去するとともに、当該成形体リングを焼成することにより、上記形状のリン酸系ガラス封着リングを作製した。
【0070】
(3)PDPの作製
上記リン酸系ガラス封着リングを用いて、図1で示すPDPを作製した。当該PDPを作製する際の具体的な手順は、上記実施の形態2にかかるPDPの製造方法に従った。なお、フロントパネルとバックパネルとの周縁部の封着およびガラス通気管とバックパネルとの封着は同時に行い、それぞれの封着温度を450℃とした。放電空間には、放電ガスとしてXe−Neガスを、その圧力が0.53気圧(400Torr)となるように充填した。
【0071】
(実施例2)
実施例2は、上記ガラス粉末80質量%と、耐火性無鉛フィラーとしてのコーディエライト20質量%と、バインダーとしての樟脳10質量%との混合物を用いて調製したフリット・バインダー混合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして作製したPDPである。
【0072】
(実施例3)
実施例3は、樟脳に代えてナフタレンをバインダーに用い、アセトンに代えてエタノールを溶剤に用いて調製したフリット・バインダー混合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして作製したPDPである。
【0073】
(比較例1)
比較例1は、樟脳に代えてポリエチレンカーボネート(質量平均分子量:5万)をバインダーに用い、アセトンに代えて1,2−ジクロロエタンを溶剤に用いて調製したフリット・バインダー混合物を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして作製したPDPである。
【0074】
(従来例1)
従来例1は、ガラスフリットとして、リン酸系ガラスフリットに代えて、酸化物基準のモル%表示で、PbO:66モル%、B23:30モル%、SiO2:4モル%の組成を有する酸化鉛系ガラス粉末60質量%と、耐火性フィラーとしてのチタン酸鉛40質量%との混合物からなる酸化鉛系ガラスフリットを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして作製したPDPである。
【0075】
〔リングの評価〕
実施例1〜3、比較例1および従来例1で用いたリングについて、室温(25℃)から400℃まで加熱した際の発生ガスをガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により測定し、リング中の残存バインダー量を求めた。この結果を表1に示す。
【0076】
〔PDPの評価〕
実施例1〜3、比較例1および従来例1のPDPの点灯試験を行い、パネルの輝度を評価した。輝度の評価は、輝度計(ディスプレイカラーアナライザー)を用いて、製造直後のPDPと、点灯開始から1000時間後(長期点灯試験後)のPDPとに対して行った。この結果を表1に示す。なお、表1では、製造直後の従来例1のPDPから得た輝度を100%とした場合における、各サンプルの測定輝度の相対値を示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1で示すように、実施例1〜3および従来例1のガラス封着リングは、いずれもバインダーを実質的に含有しないことが確認された。他方、比較例1では、40ppmの残存バインダーが存在していた。
【0079】
また、目視や顕微鏡観察により、実施例1〜3、比較例1および従来例1で用いたガラス封着部材におけるひび割れや欠けを観察したところ、実施例1〜3および従来例1ではこのような欠損は認められなかったのに対し、比較例1では欠損が認められた。また、実施例1〜3、比較例1および従来例1で用いたフリット・バインダー混合物を20cmφ×10cmの円柱形に成形した後、360℃にて焼成したものとの比較により、それぞれのガラス封着リングにおけるガラスの変質を評価したところ、実施例1〜3および従来例1では変質は認められなかったのに対し、比較例1では変質が認められた。
【0080】
また、実施例1〜3のPDPでは、表1で示すように、長期点灯試験後にも、それぞれの初期値および従来例の初期値に等しい輝度で点灯し、優れた点灯性能を発揮することが認められたのに対し、比較例1のPDPでは、初期値においても60%程度の点灯輝度しか得られず、また長期点灯試験後では点灯すら観察されず、点灯性能に著しく劣ることが判った。これは、比較例1で用いたガラス封着リングは初期欠陥が多く、またバインダーが残存しているため、通気孔と通気管との封着性が低くなり、PDPの放電空間の気密性を高められないことに起因するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、FEDやPDP等のディスプレイデバイスの製造に好適な、有害化学物質である鉛の使用量を削減して自然環境への悪影響を減少させるとともに、封着性に優れ、かつ安定性に優れた通気管の先端形状に対応した複雑な形状を有するガラス封着リングを提供することに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のリン酸系ガラス封着リングを用いて作製されたディスプレイデバイスの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のリン酸系ガラス封着リングを用いて作製されたディスプレイデバイスの構造の一例を説明するための模式図である。
【図3A】図1に示すディスプレイデバイスの製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図3B】図1に示すディスプレイデバイスの製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図4A】本発明のリン酸系ガラス封着リング、および当該リングに嵌合させる通気管の一例を説明するための断面図である。
【図4B】本発明のリン酸系ガラス封着リングによる、通気孔と通気管との封着態様の一例を説明するための断面図である。
【図5A】本発明のリン酸系ガラス封着リング、および当該リングに嵌合させる通気管の別例を説明するための断面図である。
【図5B】本発明のリン酸系ガラス封着リングによる、通気孔と通気管との封着態様の別例を説明するための断面図である。
【図6A】本発明のリン酸系ガラス封着リング、および当該リングに嵌合させる通気管の別例を説明するための断面図である。
【図6B】本発明のリン酸系ガラス封着リングによる、通気孔と通気管との封着態様の別例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1a、1b 基板
2 放電空間
3 周縁封止壁
4 電極群
5、8 誘電体層
6 保護層
7 アドレス電極
9 隔壁
10 蛍光体層
11 通気孔
12 フレア部付通気管
13 円筒部付通気管
14 釣鐘部付通気管
22 ガラス封着リング
23 ガラス封着部材
40 黒色膜
41 走査電極
41a 透明電極(走査電極)
41b バス電極(走査電極)
42 維持電極
42a 透明電極(維持電極)
42b バス電極(維持電極)
43 表示電極
51 PDP
52 フランジ部
53 拡径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの通気孔と通気管とが連通するように、前記パネルに前記通気管を封着するための、リン酸系ガラス封着リングであって、
内周壁面を含み、
前記内周壁面の表面に、前記通気管の受け皿となる段差部が設けられ、
バインダーを実質的に含有しない、
リン酸系ガラス封着リング。
【請求項2】
酸化物基準で、20モル%以上の酸化リンを含有する、請求項1に記載のリン酸系ガラス封着リング。
【請求項3】
酸化スズをさらに含有する、請求項1または2に記載のリン酸系ガラス封着リング。
【請求項4】
パネルの通気孔と通気管とが連通するように、前記パネルに前記通気管を封着するための、リン酸系ガラス封着リングの製造方法であって、
前記リン酸系ガラス封着リングが、内周壁面を含み、前記内周壁面の表面に、前記通気管の受け皿となる段差部が設けられ、バインダーを実質的に含有せず、
リン酸系ガラスフリットと、25℃の雰囲気下で固体であり沸点が400℃以下であるバインダーと、を含むフリット・バインダー混合物を成形して、段差部を含む成形体リングを得る工程と、
前記成形体リングを加熱して前記バインダーを除去するバインダー除去工程と、
を含む、
リン酸系ガラス封着リングの製造方法。
【請求項5】
前記バインダーが、樟脳、ナフタレンおよびアントラセンからなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項4に記載のリン酸系ガラス封着リングの製造方法。
【請求項6】
前記フリット・バインダー混合物中の前記バインダーの含有率が、前記リン酸系ガラスフリットに対して、1質量%以上20質量%以下の範囲にある請求項4または5に記載のリン酸系ガラス封着リングの製造方法。
【請求項7】
前記バインダー除去工程の加熱温度が、200℃以上450℃以下の範囲にある請求項4〜6のいずれかに記載のリン酸系ガラス封着リングの製造方法。
【請求項8】
前記リン酸系ガラスフリットが、酸化物基準で、20モル%以上の酸化リンを含有する、請求項4〜7のいずれかに記載のリン酸系ガラス封着リングの製造方法。
【請求項9】
前記リン酸系ガラスフリットが酸化スズをさらに含有する、請求項4〜8のいずれかに記載のリン酸系ガラス封着リングの製造方法。
【請求項10】
通気孔が形成されたパネルと、前記通気孔と連通する通気管と、前記パネルに前記通気管を封着するリン酸系ガラス封着リングと、を含むディスプレイデバイスであって、
前記リン酸系ガラス封着リングが、前記通気管の開口端面および外壁面と、前記パネルとに接合しており、バインダーを実質的に含有しない、
ディスプレイデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2007−134221(P2007−134221A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327504(P2005−327504)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】