説明

リードフレーム及び半導体装置

【課題】本発明は、樹脂成形において、ダイパッドの変形が起こり難いアルミニウム素材のリードフレームと、軽量で製造コストの安い半導体装置を提供する。

【解決手段】本発明のリードフレームは、アルミニウム素材を使用し、ダイパッド部に切欠き部を設けることにより、樹脂成形時におけるリードフレームの変形を抑制している。また、このリードフレームを使用して、製造したフルモールド型の樹脂封止型半導体装置とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム及び半導体装置に関し、特にアルミニウム材料を使用したリードフレーム及び樹脂封止型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、小型化及び軽量化が要求されている。これに伴いリードフレームを用いる半導体装置において、リードフレームは、多種の金属素材が検討されている。その中では、鉄または鉄合金素材のリードフレームや、銅または銅合金素材のリードフレームが主流となっている。近年の状況として、素材の高騰からコストの安いアルミニウム素材が検討されている。ただし、アルミニウム素材の硬度は、銅素材の硬度に比べ低い。
【0003】
半導体装置において、アルミまたはアルミ合金からなるリードフレームが従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照、図2)これにより、軽量化された半導体装置とすることができる。
【0004】
樹脂封止型半導体装置の樹脂封止方法において、成形金型に固定ピンを設けダイパッドを固定して、樹脂成形をおこなうことが従来技術として知られている(例えば、特許文献2参照、図2B)これにより、樹脂成形においてダイパッドの変形を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−183439号公報
【特許文献2】特開平5−326587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、半導体装置は軽量化、小型化、低コストが要求され、その中で、アルミ材料が検討されている。
【0007】
しかしながら、従来技術は、軽量化な半導体装置を得られるが、アルミニウムの硬度が低いため、樹脂成形時にリードフレームが変形するという課題がある。また、モールド金型により変形を防止できるが、固定ピンはモールド金型に設けるため、金型が複雑になり、金型のコストが上がり、半導体装置の製造コストに影響するという課題がある。
【0008】

従って、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、変形の起こり難いアルミニウムリードフレームと、製造コストの安い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下に掲げる構成とした。本発明のリードフレームは、アルミニウム素材を使用し、ダイパッド部に切欠き部を設けている。また、このリードフレームを使用して、製造したフルモールド型の樹脂封止型の半導体装置とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ダイパッド部に貫通する切欠き部を設けて、樹脂充填の応力を抑制するので、樹脂成形時に変形を抑制するリードフレームを提供することができる効果を奏する。また、従来の素材(Cu等)のリードフレームと同等に樹脂成形でき、簡単な構造の金型が使用できるので、製造が容易でコストの安い半導体装置を提供することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係るリードフレームの平面図と側面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体装置の透視平面図と透視側面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る半導体装置を製造する金型を説明する平面図と側面断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係る半導体装置の樹脂成形を説明する側面断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係るリードフレーム切欠き部を拡大した平面図と側面図である。
【図6】本発明の変形例1に係るリードフレーム切欠き部を拡大した平面図と側面図である。
【図7】本発明の変形例2に係るリードフレーム切欠き部を拡大した平面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、寸法関係の比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【実施例1】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例1に係るリードフレーム1を説明する。図1は、本発明の実施例1に係るリードフレーム1の平面図と側面図である。図2は、本発明の実施例1に係る半導体装置11の透視平面図と透視側面図である。
【0014】
図1に示すように、リードフレーム1は、ヘッダー吊り部2、ダイパッド3、インナーリード4、アウターリード5、タイバー6、キャリア7、切欠き部8とで構成されている。
【0015】
ヘッダー吊り部2は、ダイパッド3とキャリア7を連結保持している。ダイパッド3は、端部をヘッダー吊り部2とインナーリード4で連結保持している。インナーリード4とアウターリード5は対になっており、電気的端子となる部位である。
【0016】
タイバー6とキャリア7は各部位を連結してリードフレーム形態としている支持枠である。タイバー6は内部にある支持枠であり、キャリア7は外周にある支持枠となっている。図1では、半導体装置1個相当の図であるが、実際のリードフレームは、タイバー6やキャリア7の延長方向に例えば10個連結された状態とすることが可能である。
【0017】
切欠き部8は、ダイパッド3上に加工され、平面上で左右端面部にある凹形状であり、垂直上の溝となっている。図5参照。また、ダイパッド3上の位置としては、平面上に見て、後述する樹脂充填口であるゲート部23とは逆の位置に設けている。
【0018】
ここで、リードフレーム1の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金が使用され、めっき等の表面処理は不要である。これにより、軽量化、低コスト化が可能である。
【0019】
さらに、インナーリード4の一箇所は、ダイパッド3と連結され、ダイパッド3はデプレス(ダウンセット)された状態とするため曲げ加工を施している。リードフレーム1の素材がアルミニウムであるため、銅や鉄素材と比較すると、素材硬度から加工部が強度的に弱くなることが懸念される。
【0020】
図2に示すように、半導体装置11は、リードフレーム1、接合材12、半導体素子13、ワイヤ14、樹脂封止体15とで構成され、3端子の半導体装置としている。
【0021】
半導体装置11は、リードフレーム1のダイパッド3の上に、接合材12を用いて半導体素子13を搭載する。また、半導体素子13上の電極からインナーリード4にワイヤ14を接合する。ワイヤ14は、ワイヤボンディング装置を用いて、アルミワイヤボンディングすることができる。
【0022】
樹脂封止体15は、ダイパッド3全体とインナーリード4と半導体素子13とワイヤ14を覆うように、フルモールド型の樹脂封止をおこない、端部からはアウターリード5が突出している。
【0023】
次に、半導体装置11の製造方法について説明する。
【0024】
リードフレーム1のダイパッド3の一方の面に、接合材12を用いて、半導体装置13を接合する。例えば、接合材12は導電性接着剤であり、半導体素子13はダイオード素子である。
【0025】
さらに半導体素子14の上面電極(図示せず)とインナーリード4の端部をワイヤ14で接合し、電気的配線をおこなう。例えば、ワイヤ14はアルミワイヤである。半導体素子14の上面電極は、一般的にアルミが使われ、インナーリードもアルミであることから、ワイヤボンディング装置により、アルミワイヤボンディングを容易におこなうことができる。
【0026】
次に、図3に示すように、半導体装置11は、樹脂成形金型20を用いて樹脂封止をおこなう。樹脂成形金型20は、モールド上金型21とモールド下金型22とで構成されている。
【0027】
図3の平面図は、モールド下金型22に、リードフレーム1が載置された状態である。モールド下金型22には、キャビティ25が掘り込まれており、リードフレーム1のダイパッド3とインナーリー4がキャビティ25に入り込んでいる。また、モールド下金型22のリードフレーム1のヘッダー吊り部2側には、樹脂の充填口であるゲート部23が設けられている。さらに、モールド下金型22のリードフレーム1のインナーリード4側には、キャビティ25内の排気口であるエアベント部24が設けられている。
【0028】
モールド上金型21は、モールド下金型22同様にキャビティ25が掘り込まれており、ゲート部とエアベント部はない。(図示省略)
【0029】
図3の側面図は、モールド上金型21とモールド下金型22にリードフレーム1が挟持された状態である。
【0030】
次に、図4は、半導体装置1の樹脂成形を説明する側面断面図である。(A)は従来の樹脂成形の状態を説明し、(B)は本発明の樹脂成形の状態を説明する。
【0031】
図4(A)が示すように、樹脂成形金型20のキャビティ25空間にダイパッド3が位置している状態略図である。トランスファーモールド成形法で、樹脂封止体15となる流動可能な溶融樹脂26がゲート部23から注入される。ダイパッド3においてヘッダー吊り部2(図示せず)からインナーリード4(図示せず)方向へ溶融樹脂25が充填されている途中経過状態図であり、モールド下金型22側のキャビティ25空間はダイパッド3がデプレスされているために狭い状態であり、溶融樹脂26の流動は遅い。これに対し、モールド上金型21側のキャビティ25空間はダイパッド3が下金型方向へデプレスされているために広い状態であり、溶融樹脂26の流動は早い。ここでは、半導体素子13は小さいので、図示を省略している。
【0032】
このとき、流動量の大きいほうの溶融樹脂26が先にエアベント24側の側面(キャビティエンド)に到達し、モールド下金型22方向へ樹脂の流れが方向転換し、ダイパッド3端部を押しつける力が働く。これにより、ダイパッド3の端部がモールド下金型22方向への変形が発生する。このときは、モールド下金型22側の溶融樹脂25はまだ、キャビティエンドに到達してない(図中右側)。キャビティ25内部に溜まっている空気はエアベント部24から溶融樹脂26によって、押し出される。
【0033】
図4(B)が示すように、本発明の半導体装置においては、リードフレーム1のダイパッド3に切欠き部8が備わっている状態で、樹脂封止をおこなう。従来と同様に溶融樹脂26がゲート部23から注入される。溶融樹脂26の流動状態は初期の段階においては、従来と同一である。キャビティ25のモールド上金型21側を流れる溶融樹脂26はダイパッド3の切欠き部8に到達すると、その凹形状の空間をダイパッド3のモールド上金型21面からモールド下金型22面へ流れ出し、上面側の勢いを弱める。下面側へ流れ出した溶融樹脂26は下面側の溶融樹脂26と合流する。このとき、上面側から、溶融樹脂26によりダイパッド3の端部を押す力が弱まり、下面側からの押す力とで、ダイパッド3の端部の変形させる力を打ち消し合うので、変形がない。
【0034】
樹脂充填が終了すると、樹脂成形金型20から樹脂封止体15が成形されたリードフレーム1を取り出し、不要な部位であるヘッダー吊り部2、タイバー6、キャリア7を切断する。 以上により、1つの半導体装置11が完成する。
【0035】
次に、上述の実施例1に係るリードフレーム1と半導体装置11の効果を説明する。
【0036】
本発明の実施例1に係るリードフレームは、アルミ素材を用いて、ダイパッド部に切欠き部を設け、フルモールド型樹脂成形をしている。これにより、樹脂成形において、リードフレームの変形を抑制することが可能である。
【0037】
また、本発明の実施例1に係る半導体装置は、上述のアルミリードフレームを用いるので、軽量化がおこなえ、樹脂成形において、簡単な構造の金型が使用できるので、製造が容易でコストの安い半導体装置とすることが可能である。
【0038】
上述のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0039】
上述の例では、切欠き部8をダイパッド3に垂直な凹形状溝としたが、流動方向に傾斜を備えた形状としてもよい。これにより、溶融樹脂26が切欠き部8に入り込み易くなる。図6参照。
【0040】
また、切欠き部8は、平面上で左右端面部にある凹形状としたが、リードフレーム1のダイパッド3が厚さのある異形条リードフレームとして用いた場合、断面上で凹形状としてもよい。図7参照。
【0041】
また、切欠き部8の数量は任意である。
【0042】
また、リードフレーム1の表面には適宜めっきを設けてもよい。この場合には、一般的な亜鉛置換めっきを施し、ニッケルめっきするとよい。これにより、接合材にはんだを用いることができ、強固な接着ができる。
【0043】
また、切欠き部8は図面上では、コの字形状としたが、略Uの字形状であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、リードフレーム
2、ヘッダー吊り部
3、ダイパッド
4、インナーリード
5、アウターリード
6、タイバー
7、キャリア
8、切欠き部
11、半導体装置
12、接合材
13、半導体素子
14、ワイヤ
15、樹脂封止体
20、樹脂成形金型
21、モールド上金型
22、モールド下金型
23、ゲート部
24、エアベント部
25、キャビティ
26、溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置に用いられるダイパッドを有するリードフレームおいて、アルミまたはアルミ合金の素材からなり、前記ダイパッドに切欠き部を設けていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記リードフレームの断面は前記ダイパッドの厚さが厚い異形状であり、前記切欠き部は前記ダイパッドの平面上で凹形状であることを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2に記載のリードフレームを用いて樹脂封止する半導体装置において、半導体素子が搭載された前記ダイパッド全体を覆うフルモールド型の樹脂封止体であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74215(P2013−74215A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213548(P2011−213548)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】