説明

レジンボンド砥石およびそれを用いた半導体チップの製造方法

【課題】 半導体チップの厚さを薄くした場合でも、信頼性の高い半導体装置を与える、レジンボンド砥石およびそれを用いた半導体チップの製造方法を提供すること。
【解決手段】
[1]コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の磁性金属により被覆された砥粒と、樹脂とを備え、かつ、前記磁性金属により被覆された砥粒は前記樹脂中に分散されたレジンボンド砥石。
[2]上記[1]に記載のレジンボンド砥石を使用して半導体ウエハを研削する工程と、前記研削後の半導体ウエハをダイシングする工程を含むことを特徴とする半導体チップの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型半導体ウエハを得るための研削用レジンボンド砥石およびそれを用いた半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器類の小型軽量化に伴い、半導体装置の形状はより小さく、より薄いものが求められている。この様な半導体装置の形状の変化に伴い、前記半導体装置に搭載される半導体チップもより薄いものが要求されてきている。
【0003】
半導体チップは通常半導体ウエハより得られることから、半導体チップを薄くするためには半導体ウエハ自体を薄くする必要がある。しかし、最初から薄い半導体ウエハを用いて半導体チップを製造した場合には、半導体ウエハの加工工程中に半導体ウエハ自体が破損する可能性がある。この様な半導体ウエハの破損等を防止するために、薄型の半導体チップを得るためには半導体ウエハ上に前もって半導体チップの基本構造を形成しておき、その後に、半導体ウエハ全体の厚みを薄くすることが通常行われる。
実際には半導体ウエハの一方の表面部には半導体チップの基本構造がそれぞれ多数形成されていることから、半導体ウエハの厚みを薄くするためには、半導体チップの基本構造が形成されていない、前記半導体ウエハの他方の裏面部を一様に研削することが必要である。
【0004】
前記の研削を実施する際には、砥石を使用して半導体ウエハの裏面を削ることが通常である。前記半導体ウエハを研削する砥石としては、砥粒の周りをニッケルや銅等の金属により被覆した砥粒を熱硬化性樹脂中に分散させた、レジンボンド砥石が代表的である(特許文献1)。
【0005】
そして前記レジンボンド砥石により半導体ウエハを研削することにより、その厚さを薄くした後、研削後の半導体ウエハをダイシングすることにより薄型の半導体チップを得ることができる。この薄型の半導体チップを用いて、FBGA、TSOP、TQFP等の薄型の半導体装置を得ることができる。
【特許文献1】特開平8−71927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記研削により前記半導体チップを薄くすればするほど、前記半導体チップを搭載した薄型半導体装置に動作不良が生じやすくなるという問題があった。
本発明の目的は、半導体チップの厚さを薄くした場合でも、信頼性の高い半導体装置を与える、レジンボンド砥石およびそれを用いた半導体チップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、レジンボンド砥石に含まれる金属が、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる場合に、得られた半導体チップの動作不良が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の磁性金属により被覆された砥粒と、樹脂とを備え、
かつ、前記磁性金属により被覆された砥粒は前記樹脂中に分散されたレジンボンド砥石を提供するものであり、
[2]磁性金属を含む接着剤によりレジンボンド砥石が固定された台座と、
前記台座と半導体ウエハとの少なくとも一方を回転させる手段と、
前記台座に備えられた前記レジンボンド砥石と半導体ウエハとを接触させる手段と、
を備えた半導体ウエハを研削するための装置であって、
前記レジンボンド砥石は上記[1]に記載のレジンボンド砥石であり、かつ前記接着剤に含まれる前記磁性金属は、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする半導体ウエハ研削用装置を提供するものであり、
[3]上記[2]に記載の半導体ウエハ研削用装置により前記半導体ウエハを研削する工程を含むことを特徴とする、厚さが50〜300μmの範囲である半導体ウエハの製造方法を提供するものであり、
[4]上記[3]に記載の製造方法により得られた半導体ウエハをダイシングする工程を含むことを特徴とする、半導体チップの製造方法を提供するものであり、
[5]上記[4]に記載の製造方法により得られた半導体チップを備えたことを特徴とする半導体装置を提供するものであり、
[6]磁性金属を含むものであって、前記磁性金属はコバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、レジンボンド砥石用接着剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体チップを薄くした場合であっても信頼性の高い半導体装置を与える、レジンボンド砥石を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず最初に本発明のレジンボンド砥石について説明する。
本発明のレジンボンド砥石は、砥粒を備えることが必要である。
前記砥粒としては、例えば、ダイヤモンド、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ガーネット等の微粒等が挙げられる。前記微粒は一種もしくは二種以上であってもよい。
【0011】
前記ダイヤモンドは、天然品であっても合成品であってもよい。前記合成品を得る方法に特に限定はない。前記合成品は高温高圧法により得られるものやCVD法等の公知の方法により得られたものを使用することができる。
【0012】
また、前記のアルミナ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ガーネット等の微粒についてもいかなる方法により得られたものであっても使用することができるが、これらのものは市販品として入手することができる。
【0013】
本発明に使用する前記砥粒の粒度は、通常、#5〜#4000メッシュの範囲である。前記砥粒の形状は特に制限はない。例えば、球状等の規則性のある形状であってもよいし、不規則な形状であってもよい。また前記砥粒は全ての粒子が一次粒子である必要はなく、二次粒子、即ち凝集体であってもよい。
【0014】
次に本発明に使用する前記砥粒は、磁性金属により被覆されていることが必要である。
前記被覆は砥粒表面の全てまたは一部に施されていれば良く、砥粒の全てが被覆されていることが好ましい。
【0015】
本発明に使用する前記磁性金属は、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなることが必要である。前記磁性金属は一種または二種以上を使用することができる。
これらの磁性金属を使用したレジンボンド砥石を用いて半導体ウエハを研削することができ、この半導体ウエハより得られた薄型半導体チップを搭載した半導体装置は高い信頼性を示す。
【0016】
前記砥粒を前記磁性金属により被覆する方法としては、例えば、水、有機溶媒等の液体バインダーを用いて前記砥粒と前記磁性金属の微粒とを撹拌懸濁した後、液体バインダーを蒸発させるか、あるいは熱分解させる方法等により得ることができる。また、前記砥粒の表面に前記磁性金属を無電解メッキ等の手法等により被覆することができる。前記砥粒は個々の一次粒子の全てが前記磁性金属により被覆されている必要はなく、例えば、二次粒子も含めて前記磁性金属により実質的に被覆されていればよい。
【0017】
前記磁性金属による被覆層の厚みは、3〜50μmの範囲にあることが好ましく、5〜20μmの範囲にあればさらに好ましい。
【0018】
前記磁性金属により被覆された砥粒は、さらにガラスにより被覆されていてもよい。
前記ガラスとしては、例えば、鉛ガラス、結晶性ガラス等が挙げられる。
前記結晶性ガラスとしては、例えば、二酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化鉛、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0019】
前記磁性金属により被覆された砥粒を前記ガラスにより被覆する方法としては、例えば、まず前記磁性金属により被覆された砥粒、粘性付与剤および前記ガラスの微粉末等を水、メチルセルロース、ポリビニルアルコール等の溶媒と共に撹拌してペースト状の組成物を作製した後、前記組成物を前記磁性金属により被覆された砥粒よりも大きい孔径を有するフィルターにより分別し、ついで得られた分別物を前記ガラス粉末の軟化点よりも高い温度以上、前記砥粒の分解温度未満の温度により焼成する方法等を挙げることができる。
【0020】
本発明のレジンボンド砥石は、例えば、図1の模式断面図に例示される様に、前記砥粒1、前記磁性金属2および樹脂3を含むものであるが、次に本発明に使用する樹脂について説明する。
本発明に使用する樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等を挙げることができる。
【0021】
前記熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂組成物、ビスマレイミド樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物等を挙げることができる。
【0022】
前記熱硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば二酸化ケイ素等を主成分とする無機充填剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、着色剤等の添加剤を適宜含有させることができる。
また前記熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー等のスーパーエンジニアプラスチック系樹脂組成物、ナイロン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチック系樹脂組成物等を挙げることができる。
前記熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、二酸化ケイ素等を主成分とする無機充填剤、離型剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜含有させることができる。
【0023】
本発明に使用する樹脂は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0024】
次に本発明のレジンボンド砥石を製造する方法について説明する。
前記レジンボンド砥石を製造する方法としては、例えば、前記樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、前記熱硬化性樹脂および前記磁性金属により被覆された砥粒、ならびに必要に応じて硬化剤、硬化促進剤等の添加剤を含む組成物をニーダーやロール等の混練装置により均一化した後、注型法、プレス法、トランスファーモールド法等の工程により前記組成物を所望の形状に成形することができ、本発明のレジンボンド砥石を得ることができる。
【0025】
また例えば、前記樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、前記熱可塑性樹脂および前記磁性金属により被覆された砥粒、ならびに必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を含む組成物を、タンブラー等の混合装置により予備混合した後、加熱押し出し機によりストランド状に押し出し、得られたストランドをカッティング装置等により切断することにより成形用ペレットを準備しておく。
なお、前記成形用ペレットを製造する際には、前記熱可塑性樹脂を溶融しておき、この溶融した熱可塑性樹脂に、前記磁性金属により被覆された砥粒等を適宜添加する方法により製造してもよい。
この様にして得られた前記成形用ペレットを押し出し機等により加熱溶融成形等することにより、前記成形用ペレットを所望の形状に成形することができ、本発明のレジンボンド砥石を得ることができる。
【0026】
次に本発明の半導体ウエハ研削用装置について説明する。
本発明の半導体ウエハ研削用装置について、図2を用いて詳細に説明する。なお、図2は本発明のレジンボンド砥石4を台座5に装着した半導体ウエハ研削装置の主要断面を例示したものである。
まず、本発明の半導体ウエハ研削用装置は、磁性金属を含む接着剤7によりレジンボンド砥石4が固定された台座5を備えることが必要である。
【0027】
ここで前記接着剤7の具体例としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。
【0028】
前記接着剤7には、磁性金属が含まれていることが必要である。係る磁性金属は、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金である必要がある。前記磁性金属は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記接着剤7に使用する磁性金属は、砥粒に使用するものと同じ磁性金属であることが好ましい。
【0029】
前記接着剤7に使用する磁性金属は通常微粒子であるが、その形状は特に限定はなく、球状等の規則性のある形状であってもよいし、不規則な形状であってもよい。
前記接着剤7は前記磁性金属を5〜30重量%含有するものであるが、10〜20重量%の範囲で含有するものであればさらに好ましい。
【0030】
また、本発明の半導体ウエハ研削用装置は、前記台座5と前記半導体ウエハの少なくとも一方を回転させる手段を備えることが必要である。
図3は、本発明のレジンボンド砥石4を装着した半導体ウエハ研削用装置を用いて、半導体ウエハの裏面を研削する工程を例示した模式図である。図3においては、前記台座5および前記半導体ウエハ8がそれぞれ回転する態様について例示されているが、例えば、前記半導体ウエハ8を固定しておき、前記台座5が回転する態様、前記台座5を固定しておき、前記半導体ウエハ8が回転する態様、前記半導体ウエハ8を固定しておき、前記台座5を、その中心軸に沿って回転させながら前記中心軸を半導体ウエハ8に対して公転させる態様、逆に前記台座5を固定しておき、半導体ウエハ8をその中心を通る垂線を中心軸として回転させながら前記中心軸を前記台座5に対して公転させる態様等も、前記の回転させる手段に含まれる。
なお、前記台座5および前記半導体ウエハ8がそれぞれ回転する場合には、その回転方向は互いに同じ方向であっても逆方向であってもよいが、互いに逆方向に回転することが好ましい。
【0031】
また図3に例示される通り、本発明の半導体ウエハ研削用装置は、前記台座5に備えられた前記レジンボンド砥石4と、半導体ウエハ8と、を接触させる手段を備えていることが必要である。
前記手段としては、例えば、前記レジンボンド砥石の方向へ向かって前記台座を送り出す手段、前記台座の方向へ向かって前記レジンボンド砥石を送り出す手段、前記レジンボンド砥石と前記台座とをそれぞれ互いの方向へ送り出す手段等を挙げることができる。
【0032】
次に前記半導体ウエハ研削用装置により前記半導体ウエハを研削する工程を含む半導体ウエハの製造方法について説明する。
【0033】
図3に例示する通り、半導体ウエハ研削装置の台座5は軸6を中心として回転する。
前記台座5の直径は、通常100〜500mmの範囲であり、好ましくは200〜400mmの範囲である。
前記半導体ウエハ研削用装置を用いて半導体ウエハの裏面を研削する際の、前記台座5の回転速度は通常1000〜8000rpm(回転数/分)の範囲である。
また前記レジンボンド砥石4と半導体ウエハ8とは互いに接触した状態を保ちつつ、通常0.0001〜0.1mm/秒の範囲の速度により半導体ウエハが研削される。
【0034】
一方、半導体ウエハ8は別途回転手段を備えた装置(図示せず)に装着されていて、半導体ウエハ8の中心を通る垂線を中心軸として回転する。半導体ウエハ8の裏面と半導体ウエハ研削用装置に取り付けられたレジンボンド砥石4とが互いに回転しながら接触することにより、半導体ウエハ8の裏面を研削することができる。
【0035】
前記半導体ウエハとしては、例えば、シリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、チッ化ガリウムウエハ等が挙げられる。
前記半導体ウエハの直径は通常10〜400mmの範囲であり、好ましくは100〜300mmの範囲である。
【0036】
前記研削は、荒削り工程および仕上げ削り工程に分けて行ってもよい。
通常荒削り工程は、粒度が#300〜#500メッシュの範囲の前記磁性金属により被覆された砥粒を含む本発明のレジンボンド砥石が固定された前記台座を2000〜4000rpm(回転数/分)、好ましくは2500〜3500rpm(回転数/分)の範囲において回転させ、一方半導体ウエハを100〜500rpm(回転数/分)、好ましくは200〜300rpm(回転数/分)の範囲において回転させつつ、半導体ウエハ方向へ1〜10μm/sec.好ましくは3〜8μm/sec.の範囲の速度にて前記台座を送り出しながら実施される。
【0037】
また、通常仕上げ削り工程は、粒度が#3000〜#4000メッシュの範囲の前記磁性金属により被覆された砥粒を含む本発明のレジンボンド砥石が固定された前記台座を2000〜4000rpm(回転数/分)、好ましくは2500〜3500rpm(回転数/分)の範囲において回転させ、一方半導体ウエハを100〜500rpm(回転数/分)、好ましくは200〜300rpm(回転数/分)の範囲において回転させつつ、0.1〜1μm/sec.好ましくは0.3〜0.8μm/sec.の範囲の速度にて、前記台座を半導体ウエハ方向へ送り出しながら実施される。
【0038】
前記半導体ウエハを研削する際には、通常純水を半導体ウエハ上に流して研削屑を除去しながら実施することができる。
前記純水は通常半導体ウエハを製造する際に用いられる純水であれば特に限定はない。
前記純水の流量は、通常は10〜40リットル/分、好ましくは20〜30リットル/分の範囲である。
【0039】
前記研削終了後には、半導体ウエハ上に異物を取り除いた乾燥空気等の気体を吹き付けることにより、半導体ウエハ上に付いた水分を除去することができる。
【0040】
この様にして得られた半導体ウエハの厚みは、50〜300μmの範囲であり、好ましくは60〜150μmの範囲であり、さらに好ましくは70〜120μmの範囲である。
半導体ウエハの厚みが50〜300μmの範囲であれば、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0041】
次に半導体チップの製造方法および前記半導体チップを供えた半導体装置について、一つの実施態様としてFBGAの場合を例に採り、図4に例示したフローチャートに従って説明する。
【0042】
まず前記半導体ウエハの裏面を荒削り工程により処理した後、さらに前記荒削り工程後の半導体ウエハの裏面を仕上げ削り工程により処理する。
続いて、半導体ウエハをダイシング工程により切断し、半導体チップを得ることができる。
この半導体チップをFBGAの基板に貼付し、ワイヤーボンディング工程により前記半導体チップと前記基板との間に金線等による配線を施し、FBGA基板上に実装された半導体チップを半導体封止用樹脂により封止し、次いで170〜190℃の範囲により1〜10時間、好ましくは2〜6時間の範囲においてアフターキュアーを行なうことにより封止工程を実施することができる。
前記半導体封止用樹脂に特に限定はなく、市販のものを使用することができる。通常は、例えばエポキシ樹脂、フェノール系硬化剤、硬化促進剤、シリカ等の充填剤等を主成分とするエポキシ樹脂組成物等が使用される。
次にFBGAパッケージに半田ボールをリフロー工程により付けることができ、これによりFBGAパッケージを得ることができる。
本発明のレジンボンド砥石を使用して半導体ウエハを研削することにより、図4に示すフローチャートと同様の工程を経て、種々の半導体装置、例えば、TSOP、TQFP等の半導体装置を得ることができる。
【0043】
[作用]
本発明のレジンボンド砥石に含まれるコバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金は、研削工程により半導体ウエハの裏面から半導体ウエハ内部に擦り込まれる。しかしこの場合であっても、半導体ウエハの厚みが50〜300μmの範囲、好ましくは60〜150μmの範囲、さらに好ましくは70〜120μmの範囲であれば、この半導体ウエハから得られた半導体チップを用いて半導体装置を製造する条件の下では、前記コバルト等は前記半導体ウエハ内部において拡散あるいは固溶したとしても、半導体ウエハの表面に形成された半導体チップの基本構造部分には到達しない。
このことから、前記半導体チップを使用して得られた半導体装置は高い信頼性を示す。
以下に本発明の実施態様を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
まずレジンボンド砥石について説明する。#3000メッシュの粒度のダイヤモンド砥粒の外周に無電解メッキによりコバルトおよび鉄からなる合金を、約10μmの厚さとなる様に被覆した。これを以下、合金被覆砥粒Aと呼ぶ。
前記合金被覆砥粒A、鉛ガラス粉末、メチルセルロースおよび適量の純水を加えて、ペースト状の組成物を得た。その後、前記組成物を#3000メッシュのフィルターにより濾し、前記フィルターを通過した顆粒状のものに対し500℃、30分間の条件により焼結処理を施し、ガラス被膜のある合金被覆砥粒を得た。
ガラス被膜のある合金被覆砥粒と熱硬化性樹脂とを適量混合して得た熱硬化性樹脂組成物を、所望の形状の金型に充填した。前記熱硬化性樹脂組成物を、250℃、1000kg/cmの加熱加圧条件下にプレス成形を行い、レジンボンド砥石を得た。このレジンボンド砥石を以下、レジンボンド砥石Aと表現する。
【実施例2】
【0045】
次に実施例1により得られたレジンボンド砥石を備えた半導体ウエハ研削用装置について、図2を用いて説明する。
前記熱硬化性樹脂組成物を接着剤として用いて、図2に示す様に、前記レジンボンド砥石4を半導体ウエハ研削用装置の台座5に接着した。
接着後、前記接着部分を加圧しながら200℃、30分間の条件により接着剤を固化させることにより、半導体ウエハ研削用装置を得た。この半導体ウエハ研削用装置を、以下半導体ウエハ研削用装置Aと表現する。
【実施例3】
【0046】
次に実施例2により得られた前記半導体ウエハ研削用装置を使用した半導体ウエハおよび半導体チップの製造方法について、図3を用いて説明する。
主表面部にDRAM用の半導体チップ部分を作製したシリコンウエハ8の裏面を、#400メッシュの粒度をもつ、ガラス被膜のある合金被覆砥粒を含む前記レジンボンド砥石を装着した半導体ウエハ研削用装置にて最初に荒削りした後、#2000メッシュの粒度をもつ、ガラス被膜のある合金被覆砥粒を含む前記レジンボンド砥石を備えたシリコンウエハ研削用装置により研削を実施した。
得られたシリコンウエハの厚みは100μmであった。
上記シリコンウエハをダイシングすることにより、半導体チップを得た。この半導体チップを、以下半導体チップAと表現する。
【実施例4】
【0047】
次に実施例3により得られた半導体チップAを備えた半導体装置について説明する。
FBGA基板に、実施例3により得られた半導体チップを貼着した後、半導体チップと前記基板との間を金線にて、ワイヤーボンディングにより接続した。続いてこれらを半導体封止用樹脂組成物によりトランスファーモールド成形し、180℃、5時間の条件にてアフターキュアーを実施した。
前記アフターキュアー後、250℃の条件によるリフローを行って半田ボール付け工程を実施し、FBGAパッケージ形態を有するDRAMの半導体装置を得た。
この半導体装置を、以下半導体装置Aと表現する。
得られた前記半導体装置Aを一定数用いて高温多湿条件下にて一定時間保ち、情報保持時間が64msec.を下回った場合を不良品としてカウントし、その発生割合を調べる試験を実施した。この発生割合を1とした場合の、下記比較例1および2に対する相対結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
実施例2において使用した接着剤の替わりに、市販の銅およびニッケルを含む接着剤を用いた他は、全く実施例2と同様の操作を行い、半導体ウエハ研削用装置を得た。この半導体ウエハ研削用装置を、以下半導体ウエハ研削用装置Bと表現する。
次に前記半導体ウエハ研削用装置Bを使用して、実施例3および実施例4と全く同様の操作により、FBGAパッケージ形態を有するDRAMの半導体装置Bを得た。
前記半導体装置Bを用いて、実施例4に記載の試験と同じ試験を実施した。実施例4における不良発生率を1とした場合の相対結果を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
実施例1において使用した合金の替わりに銅およびニッケルを使用し、かつ実施例2において使用した接着剤の替わりに、市販の銅およびニッケルを含む接着剤を用いた他は、全く実施例1および2と同様の操作を行い、半導体ウエハ研削用装置を得た。この半導体ウエハ研削用装置を、以下半導体ウエハ研削用装置Cと表現する。
次に前記半導体ウエハ研削用装置Cを使用して、実施例3および実施例4と全く同様の操作により、FBGAパッケージ形態を有するDRAMの半導体装置Cを得た。
前記半導体装置Cを用いて、実施例4に記載の試験と同じ試験を実施した。実施例4における不良発生率を1とした場合の相対結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のレジンボンド砥石の模式断面拡大図。
【図2】本発明の半導体研削用装置を示す主要部分断面図。
【図3】本発明の半導体研削用装置を示す主要部分斜視図。
【図4】本発明のレジンボンド砥石を使用したFBGAを例示した半導体装置の製造方法に関するフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
1 砥粒
2 磁性金属
3 樹脂
4 レジンボンド砥石
5 台座
6 軸
7 接着剤
8 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の磁性金属により被覆された砥粒と、樹脂とを備え、
かつ、前記磁性金属により被覆された砥粒は前記樹脂中に分散されたレジンボンド砥石。
【請求項2】
磁性金属を含む接着剤によりレジンボンド砥石が固定された台座と、
前記台座と半導体ウエハとの少なくとも一方を回転させる手段と、
前記台座に備えられた前記レジンボンド砥石と半導体ウエハとを接触させる手段と、
を備えた半導体ウエハを研削するための装置であって、
前記レジンボンド砥石は請求項1に記載のレジンボンド砥石であり、かつ前記接着剤に含まれる前記磁性金属は、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする半導体ウエハ研削用装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体ウエハ研削用装置により、前記半導体ウエハを研削する工程を含むことを特徴とする、厚さが50〜300μmの範囲である半導体ウエハの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法により得られた半導体ウエハをダイシングする工程を含むことを特徴とする、半導体チップの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により得られた半導体チップを備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
磁性金属を含むものであって、前記磁性金属はコバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、レジンボンド砥石用接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−150500(P2006−150500A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344628(P2004−344628)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000100997)株式会社アキタ電子システムズ (41)
【出願人】(502304367)株式会社アキタセミコンダクタ (5)
【Fターム(参考)】