レチクル欠陥検査装置およびレチクル欠陥検査方法
【課題】製品レチクルにTDIセンサ撮像面積に比して充分な広さの黒領域及び白領域が存在しなくても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインの調整が可能なレチクル欠陥検査方法及びレチクル欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】TDIセンサ11の各画素の出力がセンサアンプ15により増幅される。増幅された各画素の光量信号のボトム値が、オフセット/ゲイン調整手段16のボトム値記憶手段16aにより記憶され、ピーク値がピーク値記憶手段16bにより記憶される。各画素のボトム値に基づいて、オフセット算出手段16cにより各画素のオフセットが算出される。各画素のオフセットと、各画素のピーク値とに基づいて、ゲイン算出手段16dにより各画素のゲインが算出される。算出された各画素のオフセット及びゲインがレジスタ153に記憶されることで、センサアンプ15のオフセット及びゲインが調整される。
【解決手段】TDIセンサ11の各画素の出力がセンサアンプ15により増幅される。増幅された各画素の光量信号のボトム値が、オフセット/ゲイン調整手段16のボトム値記憶手段16aにより記憶され、ピーク値がピーク値記憶手段16bにより記憶される。各画素のボトム値に基づいて、オフセット算出手段16cにより各画素のオフセットが算出される。各画素のオフセットと、各画素のピーク値とに基づいて、ゲイン算出手段16dにより各画素のゲインが算出される。算出された各画素のオフセット及びゲインがレジスタ153に記憶されることで、センサアンプ15のオフセット及びゲインが調整される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクル欠陥検査装置およびレチクル欠陥検査方法に関する。本発明は、特に、TDIセンサ出力を正規化するセンサアンプ手段のオフセット及びゲインの調整に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造過程において、基板(ウェハともいう)上にパターンを形成するために、回路パターンが形成された原画パターン(レチクル或いはマスクともいう、以下レチクルと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写している。レチクルは、通常、光を透過するガラス基板に遮光材料でパターンが形成されている。遮光材料は、クロム(Cr)が広く用いられている。また、超解像技術の一つである位相シフトマスクとして、モリブデンシリサイド(MoSi)などからなる半透明膜を遮光膜とするハーフトーン型の位相シフトマスクや、ガラス基板の厚さを変えて位相シフト効果を持たせたレベンソン型の位相シフトマスクが用いられようとしている。このようなマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができる電子ビームを用いたパターン描画装置が用いられる。レチクルにパターン欠陥が存在すると、ウェハ上に欠陥が転写されてしまう。このため、レチクルの欠陥検査を行う必要がある。
【0003】
レチクルの欠陥検査方法として、ダイ・トゥ・ダイ(Die-to-Die)検査方法と、ダイ・トゥ・データベース(Die-to-Database)検査方法とが知られている。ダイ・トゥ・ダイ検査方法は、異なる位置にある同一パターンの光学画像同士を比較する方法である。一方、ダイ・トゥ・データベース検査方法は、レチクル作成時に使用した描画データ(CADデータ)から生成される参照画像と、実際のレチクルのパターンの光学画像とを比較する方法である。
【0004】
光学画像を生成するために電荷蓄積型のTDI(Time Delay Integration)センサと、このTDIセンサの出力を増幅するセンサアンプとが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。透過光で検査する場合、ハーフトーン型位相シフトマスクは遮光膜とガラス基板のコントラストがある程度得られるため、クロムマスクと同様に検出光学系で受光したセンサ画像の光強度信号でマスクパターンを認識して欠陥判定を行う手法を採用できる。欠陥の形状によっては、マスク面の反射光を利用する方がコントラストを得やすい場合があり、異物検査機能などの用途で反射検査光学系を装備した検査装置もある。
【0005】
また、上述した参照画像と光学画像の比較に先立ち、センサアンプのオフセット及びゲインの正規化調整(キャリブレーション)を行うことが知られている(例えば、特許文献2参照。)。透過光で検査する場合、特許文献2によれば、透過光を撮像するTDIセンサの撮像面積に比して充分に広い面積を有する黒領域(遮光膜領域もしくはハーフトーン膜領域)を撮像してオフセットが調整された後、TDIセンサの撮像面積に比して充分に広い面積を有する白領域(ガラス基板)を撮像してゲインが調整される。反射光で検査する場合は、クロムあるいはハーフトーン膜が存在する部分が反射して白領域となり、ガラス基板の部分は反射光が無いため黒領域となる。
【0006】
しかしながら、近年では、製品レチクルに描かれるパターンの微細化が進み、製品パターン自体に充分に広い面積の黒領域又は白領域が存在しない場合がある。また、キャリブレーション用に製品パターンとは別の、充分に広い面積の黒領域又は白領域を準備することも一部で行われているが、製品パターンが占める面積が拡大してきており、このキャリブレーション用パターンは必ずしも準備されない事態となっている。この場合、製品レチクルと同じ膜種で黒領域と白領域が形成されたオフセット/ゲイン調整用レチクル(以下「調整用レチクル」という。)が用いられる。調整用レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインが調整された後、製品レチクルに載せ換えて欠陥検査が実行される。このようなレチクルの載せ換えは、スループットの低下を招くことや、調整用レチクルと製品レチクルとの遮光膜の仕上がり精度の誤差により、センサ信号の振幅やオフセットに誤差を含んでしまう恐れがある。
【0007】
また、ガラス基板の厚みが異なると、光の透過率が異なってしまう。このため、調整用レチクルを用いて最適に調整されたセンサアンプのオフセット及びゲインが、製品レチクルでは最適にはならない可能性がある。
【0008】
以上の理由により、調整用レチクルを用いるのではなく、被検査レチクルである製品レチクル自体を用いてセンサアンプのオフセット及びゲインを調整することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−271444号公報
【特許文献2】特許第3410847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記課題に鑑み、製品レチクルにTDIセンサ撮像面積に比して充分な広さの黒領域及び白領域が存在しなくても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインの調整が可能なレチクル欠陥検査方法及びレチクル欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、画像センサをレチクルに対して相対的に移動させ、前記画像センサの各画素の出力をセンサアンプにより増幅して得られる光学画像と、光学画像に対する基準画像となる参照画像とを比較することでレチクルの欠陥検査を行う方法であって、センサアンプは画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能であり、欠陥検査の前に、レチクルのパターンの一部を画像センサにより撮像し、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶するステップと、記憶された各画素のボトム値に基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するステップと、各画素の信号振幅のオフセットと、記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
この第1の態様において、画像センサとして複数段のラインを有するTDIセンサを用いることができる。
【0013】
この第1の態様において、各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、レチクルの相対移動速度を、画像センサの画像寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くしてもよい。
【0014】
この第1の態様において、各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、画像センサの相対移動方向に概略平行なパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するステップと、取得されたエッジ位置からレチクルの回転誤差量を算出するステップと、算出された回転誤差量に基づいて、レチクルの回転アライメントを実行するステップとを更に含むようにしてもよい。エッジ位置を複数箇所で取得するステップは、エッジ位置の近傍を撮像した複数の画素の光量及び座標を取得し、取得した複数の画素の光量及び座標に基づいて所定の光量となるエッジ位置を算出するようにしてもよい。
【0015】
この第1の態様において、レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を画像センサにより撮像し、ボトム値及びピーク値を記憶するようにしてもよい。
【0016】
この第1の態様において、ステージを一方向(例えば、X方向)に移動させながらレチクルのパターンの一部を画像センサにより撮像する際、画像センサの任意の画素がレチクルの遮光部と透光部の双方に差し掛からない場合、上記一方向と直交する他方向(例えば、Y方向)に移動させながら画像センサにより撮像してもよい。ここで、画像センサとしてTDIセンサを用いる場合、ステージを他方向に移動させる際にステージ移動速度をTDIセンサのTDI動作速度よりも遅くすることが好ましい。例えば、ステージ移動速度をTDI速度の10分の1程度にするのがよい。
また、ステージを一方向と他方向の両方に同時に移動させながら画像センサによりレチクルのパターンを撮像してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様は、パターンが形成されたレチクルに光を照射する光照射機構と、レチクルを保持するステージを駆動する駆動手段と、レチクルの透過光もしくは反射光の光量信号を複数の画素で検出する画像センサと、画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、光学画像を生成すると共に、画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能なセンサアンプと、光学画像に対する基準画像となる参照画像を生成する参照画像生成手段と、光学画像と参照画像とを比較することにより、レチクルのパターンの欠陥を検査する検査手段とを備えたレチクル欠陥検査装置であって、検査手段による検査の前に、駆動手段によりステージを駆動してパターンの一部を画像センサにより撮像し、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶する記憶手段と、記憶手段により記憶された各画素のボトム値に基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するオフセット設定手段と、各画素の信号振幅のオフセットと記憶手段により記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するゲイン設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
この第2の態様において、画像センサとして光量信号を複数段のラインで蓄積するTDIセンサを用いることができる。
【0019】
この第2の態様において、記憶手段により前記ボトム値及びピーク値を記憶する際のステージの駆動速度を、画像センサの画素寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くしてもよい。
【0020】
この第2の態様において、画像センサの相対移動方向に概略平行なレチクルのパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するエッジ位置取得手段と、エッジ位置取得手段により取得されたエッジ位置からレチクルの回転誤差量を算出する回転誤差量算出手段と、回転誤差量算出手段により算出された回転誤差量に基づいて、レチクルの回転アライメントを実行するアライメント手段とを更に備えるようにしてもよい。このエッジ位置取得手段は、エッジ位置の近傍を撮像した複数の画素の座標及び光量に基づいてエッジ位置を算出するように構成することができる。
【0021】
この第2の態様において、レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を画像センサにより撮像し、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶手段により記憶することが好ましい。
【0022】
ここで、画像センサにより撮像されるパターンの一部に一方向(例えば、X方向)に延びるパターンが含まれている場合、ステージを一方向に移動させながらレチクルのパターンの一部を画像センサにより撮像すると、画像センサの任意の画素がレチクルの遮光部と透光部の双方に差し掛からないことがある。このような場合、上記一方向と直交する他方向(例えば、Y方向)に移動させながら画像センサによりパターンを撮像してもよい。この画像センサとしてTDIセンサを用いる場合、ステージを他方向に移動させる際にステージ移動速度をTDIセンサのTDI動作速度よりも遅くすることが好ましい。例えば、ステージ移動速度をTDI動作速度の10分の1程度にするのがよい。
また、ステージを一方向と他方向の両方に同時に移動させながら画像センサによりレチクルのパターンを撮像してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の態様では、欠陥検査に先立ちパターンの一部がTDIセンサにより撮像され、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値が記憶され、記憶された各画素のボトム値に基づきセンサアンプの各画素の信号振幅のオフセットが設定される。さらに、前記各画素の信号振幅のオフセットと記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインが設定される。従って、本発明の第1の態様によれば、製品レチクルにTDIセンサ撮像面積に比して充分な広さの黒領域及び白領域が存在しなくても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインの設定が可能である。
【0024】
本発明の第2の態様では、検査手段による検査の前にパターンの一部がTDIセンサにより撮像され、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値が記憶され、記憶された各画素のボトム値に基づきセンサアンプの各画素の信号振幅のオフセットが設定される。そして、各画素の信号振幅のオフセットと記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインが設定される。従って、本発明の第2の態様によれば、製品レチクルにTDIセンサ撮像面積に比して充分な広さの黒領域及び白領域が存在しなくても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインの設定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるレチクル欠陥検査装置100の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示されたTDIセンサ11及びセンサアンプ15の構成を示す概略図である。
【図3】図1に示されたオフセット/ゲイン調整手段16の構成を示す概略図である。
【図4】従来の製品レチクルに形成された黒領域Rb及び白領域Rwを示す概念図である。
【図5】第1の実施の形態において、制御計算機20及びオフセット/ゲイン調整手段16が主に実行するオフセット/ゲイン調整制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すルーチンで検索されるパターンを示す図である。
【図7】TDIセンサ11を示す図である。
【図8】ステージ移動速度とTDI動作速度を同期させた場合に撮像される画像の例を示す図である。
【図9】図8の直線230に沿って切り出したTDIセンサ出力を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態において、ステージ移動速度をTDI動作速度よりも遅くした場合に撮像される画像の例を示す図である。
【図11】図10の直線250に沿って切り出したTDIセンサ出力を示す図である。
【図12】TDIセンサにより撮像するパターンを示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態において、ステージ2をY方向に移動させる場合を説明するための図である。
【図14】図12に示す直線部分を撮像したときに得られるTDIセンサ出力を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態において、ステージ2をX方向とY方向の両方に同時に移動させる場合を説明するための図である。
【図16】図15に示すようにステージ2を移動させた場合に撮像される画像を示す図である。
【図17】ステージ移動方向(X,Y方向)に対してレチクル1の直交度が不十分な場合を示す図である。
【図18】レチクル1の直交度が不十分である場合にTDIセンサ11により撮像される画像の例を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態によるステージアライメント方法を行う際に探索されるパターンの例を示す図である。
【図20A】図19に示す領域Raのパターンエッジ(Xa、Ya)を示す図である。
【図20B】図19に示す領域Rbのパターンエッジ(Xb、Yb)を示す図である。
【図21】2つのパターンエッジからパターンの傾きθを算出する方法を説明するための図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態において、制御計算機20が実行するステージアライメント制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図23】本発明の変形例によるレチクル欠陥検査装置101の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態によるレチクル欠陥検査装置100の構成を示す概略図である。図2は、図1に示されたTDIセンサ11及びセンサアンプ15の構成を示す概略図である。図3は、図1に示されたオフセット/ゲイン調整手段16の構成を示す概略図である。
【0028】
図1に示すレチクル欠陥検査装置100は、検査対象であるレチクル1を保持するステージ2を有している。レチクル1は、オートローダ3からステージ2上に搬送される。オートローダ3は、オートローダ制御回路13により制御される。
【0029】
ステージ2は、X方向モータ4Aと、Y方向モータ4Bと、θ方向(水平回転方向)モータ4Cとによって、X方向、Y方向及びθ方向に駆動される。これらのモータ4A,4B,4Cの駆動制御は、ステージ制御回路14によって実行される。ステージ2のX方向及びY方向の位置は、例えば、レーザ干渉計等のレーザ測長手段5と、このレーザ測長手段5に接続された位置回路12とによって検出される。検査対象レチクルは例えばX方向に一定速度で連続移動しながらセンサの撮像が行われ、終端(ストライプエンド)でY方向に移動した後、X方向に逆向きに一定速度で連続移動しながらセンサの撮像を行うといった工程を繰り返して検査対象レチクルの検査領域全面を撮像する。
【0030】
また、レチクル欠陥検査装置100は、レーザ光を発する光源6と、光源6から発せられたレーザ光をレチクル1に照射する透過照明光学系7とを備えている。透過照明光学系7は、ミラー71及び対物レンズ72を有している。
【0031】
また、レチクル欠陥検査装置100は、レチクル1を透過した透過光を集光してTDI(Time Delay Integration)センサ11上に結像させる結像レンズ10を有している。
【0032】
画像センサたるTDIセンサ11は、図2に示すように、2次元のCCDセンサであり、例えば、2048画素×512画素(1画素が70nm×70nmの場合、144μm×36μm)の長方形の撮像領域Rsを有する。すなわち、TDIセンサ11は、TDI方向に複数段(例えば、512段)のラインL1,L2,…,L512によって構成され、各ラインLは複数の画素(例えば、2048画素)によって構成されている。TDIセンサ11のTDI方向(512段方向)とステージ2のX方向が一致するように設置し、ステージ2が移動することによりTDIセンサ11がレチクル1に対して相対的に移動することで、TDIセンサ11によりレチクル1のパターンが撮像される。図2中の右方向にTDIセンサ11が相対移動するとき、図2中の左方向(FWD)がTDIセンサ11の電荷蓄積方向(TDI方向)となる。この場合、1段目のラインL1からFWD方向のラインL2,L3,…に電荷を順次転送しながら蓄積し、最終段のラインL512から1ライン分(2048画素分)の画像信号が出力される。
【0033】
また、ステージ2の移動方向を反転させると、つまり、図2中の左方向にTDIセンサ11が相対移動すると、TDIセンサ11の電荷蓄積方向が図2中の右方向(BWD)に切り換えられる。TDIセンサ11は、その電荷蓄積方向の両端に出力部110を有している。すなわち、TDIセンサ11は、双方向から電荷を読み出し可能に構成されている。
【0034】
TDIセンサ11は、センサアンプ15と接続されている。センサアンプ15は、TDIセンサ11から入力された各画素の光量信号を正規化(キャリブレーション)し、比較回路19に出力するものである。センサアンプ15は、図2に示すように、各画素の信号を固定倍率で増幅するアナログアンプ151と、レジスタ153に記憶されたオフセット及びゲインで各画素の信号を増幅するデジタルアンプ152とを備えている。レジスタ153に記憶された各画素のオフセット及びゲインは、後述するオフセット/ゲイン調整手段16(図3参照)によって調整される。
【0035】
尚、本実施の形態では、画像センサとしてTDIセンサ11を用いているが、TDIセンサ11に代えてラインセンサやエリアセンサのような他の画像センサを用いることができる。
【0036】
また、レチクル欠陥検査装置100は、光学画像に対する比較基準となる参照画像を生成するための展開回路17及び参照回路18を備えている。展開回路17は、記憶装置21に記憶されたCADデータ(作図データ)等を展開し、展開データを参照回路18に出力するものである。参照回路18は、展開回路17から入力される展開データにリサイズ処理、コーナ丸め処理及び点広がり分布関数(PSF:point spread functions)フィルタ処理を一括して施すことにより参照画像を生成し、参照画像を比較回路19に出力するものである。記憶装置21は、例えば、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FDもしくは半導体メモリ等である。
【0037】
比較回路19は、センサアンプ15から入力される光学画像と、参照回路18から入力される参照画像とを比較し、両者のパターン形状が相違する場合にパターン形状欠陥として検出するものである。比較回路19の検査結果は、記憶装置21に格納される。よって、オペレータは、検査結果を記憶装置21から読み出してディスプレイ等の表示装置22に表示させることで確認することができる。
【0038】
レチクル欠陥検査装置100は、通常のパターン欠陥検査のほか、センサアンプ15のオフセット/ゲインの調整、ステージ2のアライメント等の全体的な制御を実行する制御計算機20を備えている。この制御計算機20には、上述した位置回路12、オートローダ制御回路13、ステージ制御回路14、センサアンプ15、オフセット/ゲイン調整手段16、展開回路17、参照回路18、比較回路19、記憶装置21及び表示装置22等が接続されている。
【0039】
上述した通り、TDIセンサ11の各画素の出力がセンサアンプ15により画素毎に増幅されて光学画像が生成される。比較回路19における欠陥検査を精度良く行うためには、光学画像を精度良く生成する必要がある。すなわち、センサアンプ15のダイナミックレンジを効率良く活用する必要がある。
【0040】
従来より、欠陥検査前にセンサアンプ15のオフセット及びゲインの調整が行われている。従来は製品パターン自体にも比較的大きな白ベタ領域や黒ベタ領域があり、TDIセンサの撮像領域より充分に広い箇所を選んで、上記キャリブレーションを行うことができた。また、製品パターン自体に大きな白ベタ領域や黒ベタ領域が無くても製品レチクルの非検査領域には転写装置用のアライメントパターンや、一部では図4に示すように、TDIセンサ撮像領域Rsに比して充分に広い面積を有する黒領域Rb及び白領域Rwが検査装置のキャリブレーションのために形成されていた。図4は、従来の製品レチクルに形成された黒領域Rb及び白領域Rwを示す概念図である。従来は、TDIセンサを黒領域Rbのような広い領域に静止させて撮像結果に基づきセンサアンプの信号振幅のオフセットを設定し、白領域Rwのような広い領域に静止させて撮像結果に基づきセンサアンプの信号振幅のゲインが設定されていた。
【0041】
しかしながら、近年においては、レチクルに描かれるパターンの微細化が進み、製品レチクルに上記充分に広い面積を有する黒領域及び白領域が形成されないことが多い。また、上述のRb,Rwのようにキャリブレーション用に製品パターンとは別の、充分に広い面積の黒領域又は白領域を準備することも一部では行われているが、製品レチクルに収録すべきパターンが広がってきており、このキャリブレーション用パターンは必ずしも準備されない事態となっている。このため、オフセット及びゲイン調整用のレチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインを調整した後、この調整用レチクルを製品レチクルに載せ換えていた。かかるレチクルの載せ換えはスループットの低下を招いてしまう。さらに、レチクルのガラス基板の厚みにより透過率が変わってしまうため、調整用レチクルを用いて調整されたセンサアンプのオフセット及びゲインが、製品レチクルに対しては最適ではない可能性がある。そうすると、欠陥検査の精度を低下させる要因となってしまう。従って、製品レチクルに充分に広い面積を有する黒領域及び白領域が形成されていない場合であっても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインを調整することが望まれている。
【0042】
そこで、本実施の形態1では、図3に示すように、センサアンプ15のオフセット及びゲインを調整するオフセット/ゲイン調整手段16を設けた。このオフセット/ゲイン調整手段16は、図3に示すように、ボトム値記憶手段16aと、ピーク値記憶手段16bと、オフセット算出手段16cと、ゲイン算出手段16dとを備えている。
【0043】
これらのボトム値記憶手段16a、ピーク値記憶手段16b、オフセット算出手段16cおよびゲイン算出手段16dは、TDIセンサ11の1ラインを構成する複数の画素毎に設けられている。すなわち、TDIセンサ11の1ライン分の2048画素で構成されている場合には、上記の手段16a〜16dは2048個ずつ設けられている。
【0044】
ボトム値記憶手段16aは、センサアンプ15により増幅された各画素の光量信号のボトム値を記憶(ホールド)するものであり、ピーク値記憶手段16bは、各画素の光量信号のピーク値を記憶(ホールド)するものである。オフセット算出手段16cは、ボトム値記憶手段16aに記憶された各画素のボトム値に基づいて、センサアンプ15の各画素のオフセットを算出するものである。ゲイン算出手段16dは、オフセット算出手段16cにより算出された各画素のオフセットとピーク値記憶手段16bにより記憶された各画素のピーク値に基づいて、センサアンプ15の各画素のゲインを算出するものである。
【0045】
以下、図5を参照して具体的な制御について説明する。図5は、第1の実施の形態において、制御計算機20及びオフセット/ゲイン調整手段16が主に実行するオフセット/ゲイン調整制御ルーチンを示すフローチャートである。図5に示すルーチンは、パターン欠陥検査を行う前に起動されるものである。
【0046】
図5に示すルーチンによれば、先ず、TDIセンサ11により撮像されるパターンの検索を実行する(ステップS100)。このステップS100では、TDIセンサ11の各画素が全白パターン及び全黒パターンに少なくとも1回は差しかかるようなパターン、例えば、図6に示すようなパターン200が検索される。このパターン200のうちのハッチングを付した部分は、遮光膜(クロム膜)からなる黒パターンを示しており、パターン200のうちの白い部分は、ガラス基板からなる白パターンを示している。このパターン200は、矢印A1で示す方向に相対移動するTDIセンサ11により撮像される。
【0047】
上記ステップS100におけるパターン探索の方法は、データベース検査のデータベースとして被検査レチクルの設計データあるいは描画データを検査装置に入力もしくは記憶装置21に記憶している場合には、そのデータを制御計算機20において探索して、適切なパターン領域(プリスキャン領域)を選出することができる。あるいは、上記のデータを探索しなくても、被検査領域の中央近傍の位置や、検査範囲の端から10%程度内側に寄った位置などの決め方で、プリスキャンする領域を決めることができ、その領域の撮像を行って各画素のオフセット及びゲインが適切か否かを判別することが実用上可能である。
【0048】
次に、モータ4A,4Bを用いてステージ2を駆動して、上記ステップS100で検索されたパターンをTDIセンサ11により走査すると、TDIセンサ11の各画素の出力がセンサアンプ15により増幅される。このとき、レジスタ153に記憶された各画素のオフセット及びゲインが信号増幅に用いられる。そして、センサアンプ15から出力される各画素のボトム値及びピーク値をオフセット/ゲイン調整手段16により記憶する(ステップS102)。このステップS102では、各画素のボトム値記憶手段16aによって各画素のボトム値が記憶され、各画素のピーク値記憶手段16bによって各画素のピーク値が記憶される。
【0049】
上記ステップS100で検索されたパターン(例えば、1ストライプ分のパターン)がTDIセンサ11により走査された後、全画素分(2048画素分)のボトム値及びピーク値が記憶されたか否かを判別する(ステップS104)。このステップS104では、上記ステップS102で記憶された全画素のボトム値とピーク値がそれぞれ基準範囲内(例えば、10%以内)に収まっているか否かが判別される。このステップS104で全画素分のボトム値及びピーク値が記憶されていないと判別された場合には、上記ステップS100で検索されたパターンとは別のパターン(例えば、別の1ストライプ分のパターン)を検索する(ステップS106)。その後、上記ステップS106で検索されたパターンをTDIセンサ11により走査して、上記ステップS102の処理を再度実行する。
【0050】
上記ステップS104で全画素分のボトム値及びピーク値が記憶されたと判別された場合には、各画素のボトム値に基づいて、オフセット算出手段16cにより各画素のオフセットを算出する(ステップS108)。その後、各画素のピーク値と、上記ステップS108で算出された各画素のオフセットとに基づいて、ゲイン算出手段16dにより各画素のゲインを算出する(ステップS110)。
【0051】
その後、上記ステップS108で算出された各画素のオフセットと、上記ステップS110で算出された各画素のゲインとに基づいて、センサアンプ15の各画素のオフセット及びゲインを調整(設定)する(ステップS112)。このステップS112では、オフセット算出手段16c及びゲイン算出手段16dから出力された各画素のオフセット及びゲインが、センサアンプ15に入力される。この入力された各画素のオフセット及びゲインがレジスタ153に記憶されることで、各画素のオフセット及びゲインが調整(設定)される。その後、本ルーチンを終了する。そうすると、パターン欠陥検査が実行される。
【0052】
以上説明したように、第1の実施の形態では、パターン欠陥検査前に、TDIセンサ11によりパターンを走査し、センサアンプ15で増幅された出力信号の各画素のボトム値及びピーク値が記憶される。そして、記憶された各画素のボトム値に基づいて各画素のオフセットが算出される。算出された各画素のオフセットと、記憶されたピーク値に基づいて、各画素のゲインが算出される。その後、算出された各画素のオフセット及びゲインに基づいて、センサアンプ15の各画素のオフセット及びゲインが調整(設定)される。よって、TDIセンサの撮像面積に比して充分に広い面積の黒領域及び白領域が存在しない製品レチクルを用いて、センサアンプの各画素のオフセット及びゲインを調整することができる。これにより、TDIセンサ11の信号振幅は被検査レチクルの現物に合わせた正規化が行われるため、別の調整用レチクルを使用する場合に比べてS/N比を向上させることができる。
【0053】
また、レチクルは、製品パターンが形成されたメインチップ領域と、製品パターン以外のアライメントマークなどが形成された周辺チップ領域とを有する。メインチップ領域の面内においても遮光膜の膜厚や透明基板の厚みが不均一である場合がある。このような場合でも、TDIセンサ11によりメインチップのパターンを走査し、TDIセンサ11の信号振幅の正規化を行うことで、より実用的かつ高精度な正規化を行うことができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
次に、図7乃至図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
上記ボトム値記憶手段16a及びピーク値記憶手段16bにより各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際、通常は、ステージ2の移動速度と、TDIセンサ11内のTDI動作速度と同期させることが考えられる。このように同期させた場合に図7に示すTDIセンサ11を用いて撮像された画像の例を図8に示す。図8に示す画像210は、レチクル透過光をTDIセンサ11によって撮像したものである。従って、図8におけるハッチング部分は遮光部に対応し、白部分は透過部に対応する。このハッチング部分のセンサ出力はボトム値に近いレベルになり、白部分のセンサ出力はピーク値に近いレベルになる。
【0055】
図8における直線230に沿って切り出したセンサ出力を図9に示す。このセンサ出力は、図7においてハッチングが付された画素111の出力である。図8に示す直線230の左端はハッチング部分(黒ライン)211に位置するため、図9に示すセンサ出力はボトム値付近から切り出されている。その後、図8に示すように直線230が細い白部分(細い白ライン)212、214、216、218と細いハッチング部分(細い黒ライン)213、215、217とを交互に横切るため、図9に示すように細いピークが連続して4回得られる。その後、図8に示すように直線230が広いハッチング部分219と広い白部分220とを交互に横切るため、図9に示すように、幅が太いボトムと、幅が太いピークが得られる。
【0056】
上記直線230が最初に横切る細い白ラインパターン212、214の線幅及び間隔は共に200nmである。上述したように、TDIセンサ11の1画素の大きさは、70nm×70nmである。このように、センサ画素に対して微細なパターンを撮像する場合に、センサ画素に差し掛かるパターンの位置が理想的でないと、充分な信号振幅が得られないケースがある。
【0057】
ここで、レチクル透過光の光量は均一な分布とならず、光学系(結像レンズ10等)の影響を受けて最大光量を中心とするガウス分布となる。このため、スキャンタイミングによっては、最大光量の位置が2つの画素に分散してしまう。このように最大光量位置が2つの画素に分散された状態で撮像される場合には、最大光量位置が1つの画素の中央になるときに撮像される場合に比して、信号振幅が小さくなってしまう。
【0058】
そこで、第2の実施の形態では、ボトム値及びピーク値を記憶する際、ステージ2の移動速度を、TDIセンサ11内の画素移動速度であるTDI動作速度よりも遅くする。画素移動速度は、画素寸法と撮像周期で決まる。図10及び図11は、第2の実施の形態において、ステージ移動速度をTDI動作速度よりも遅くした場合の画像及びセンサ出力の例を示す図である。図10に示す画像240は、ステージ2の移動速度をTDI動作速度の2分の1にした場合に、レチクル透過光を図7に示すTDIセンサ11によって撮像したものである。従って、図10におけるハッチング部分は遮光部に対応し、白部分は透過部に対応する。このハッチング部分のセンサ出力はボトム値に近いレベルになり、この白部分のセンサ出力はピーク値に近いレベルになる。
【0059】
図10における直線250に沿って切り出したセンサ出力を図11に示す。このセンサ出力は、図7においてハッチングが付された画素111の出力である。図10に示す直線250の左端(切り出し開始位置)は、図8に示す直線230の左端(切り出し開始位置)と同じ位置であるため、図11に示すセンサ出力は、図9に示すセンサ出力と同じ位置から切り出されている。すなわち、図10に示す直線250はハッチング部分(黒ライン)241から切り出されているため、図11に示すセンサ出力はボトム値付近から切り出されている。その後、図10に示すように直線250が白部分(白ライン)242、244とハッチング部分(黒ライン)243、245とを交互に横切るため、図11に示すようにピークが2回得られる。
【0060】
第2の実施の形態ではステージ移動速度を遅くすることで、1本の細線が複数画素に差し掛かって撮像される。すなわち、オーバーサンプリングと同様の効果が得られる。このため、図10に示す画像240における線幅及び間隔が、図8に示す画像210における線幅及び間隔よりも広くなっている。これにより、ステージ移動速度とTDI動作速度を同期させる場合に比して、最大光量位置が1つの画素の中央になるときに撮像される機会を増やすことができる。最大光量位置が画素中央になるときに撮像することで、図11に示すように、充分な信号振幅を得ることができる。従って、微細パターンを撮像する場合であっても、ピーク値記憶手段16bにより記憶される各画素のピーク値を充分に高めることができる。このため、センサアンプ15のダイナミックレンジを充分に活用することができる。
【0061】
(第3の実施の形態)
次に、図12乃至図14を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図12は、第3の実施の形態において、TDIセンサにより撮像するパターンを示す図である。
【0062】
図12に示すパターン260は、X方向に延び、所定のピッチPを有する複数のラインパターン261、262を含んでいる。このようなパターンPを撮像する場合、TDIセンサ11の各画素の光量が0(黒パターン)〜255(白パターン)の階調をとり得るとすると、全画素の光量が63よりも小さくならなかったり、光量が192よりも大きくならなかったりする。つまり、ステージ2をX方向に移動させて(つまり、TDIセンサ11をX方向に相対移動させて)パターン260を撮像しようとすると、上記TDIセンサ11の任意の画素は、図12においてハッチングを付した黒パターン261、262のみに差し掛かるだけで、白パターンには差し掛からない可能性がある。別の画素に注目すると、その注目画素が白パターンのみに差し掛かるだけで、黒パターンには差し掛からない可能性がある。そうすると、TDIセンサ11の全画素につきボトム値とピーク値の両方を記憶することができない場合がある。
【0063】
そこで、第3の実施の形態では、図13に示すようなレチクル1とTDIセンサ11の位置関係のときに、矢印A2で示すようにステージ2をY方向に移動させる。ここで、このようにステージ2をY方向に移動させてパターン260を撮像すると、図12に示す直線263に対応するセンサ出力は、図14に示すようなセンサ出力となる。この直線263の長さは、パターンピッチPの10倍の長さとすることができる。これにより、TDIセンサ11のサンプリング誤差を考慮しても、TDIセンサ11の全ての画素が白パターンと黒パターンの両方に差し掛かる機会が得られる。従って、図12に示すようにレチクル1にX方向に延びるラインパターン261、262を含むパターンを撮像する場合であっても、各画素でボトム値とピーク値の両方を記憶することができる。
【0064】
但し、画像センサとしてTDIセンサ11を用いる場合、TDIセンサ11は電荷の蓄積を行うことから、TDI速度とY方向のステージ移動速度とが等速のとき、TDI方向が斜め(45度)になる。そこで、TDI速度よりも十分に遅い速度でステージをY方向に移動させることが好ましい。例えば、ステージ移動速度をTDI速度の10分の1にすることができる。TDIセンサ11において電荷を1画素(70nm)シフトするのに2〜3μsecかかるとき、その速度をステージ移動速度に換算すると十数mm/secとなるため、ステージ移動速度を数mm/secとすることができる。
【0065】
尚、TDIセンサ11の代わりにラインセンサを画像センサとして用いる場合、電荷の蓄積を考慮する必要がないため、撮像周期に応じたステージ移動速度にすればよい。
【0066】
また、図15に示すようなレチクル1とTDIセンサ11の位置関係のときに、矢印A3で示すようにステージ2を斜め方向に移動させることで、つまり、X方向に移動させると同時にY方向に移動させることで、図16に示すように、X軸に対して角度θ1だけパターン281、282が斜め方向に延びる画像(スキュー画像)280が撮像される。この場合も、図13に示すようにステージ2をY方向に移動させた場合と同様に、TDIセンサ11の全ての画素が白パターンと黒パターンの両方に差し掛かる機会を得ることができる。なお、ステージ2のX方向の移動速度をTDI動作速度よりも遅くすることで、上記第2の実施の形態と同様に、充分な信号振幅を得ることができる。
【0067】
(第4の実施の形態)
次に、図17から図20を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0068】
上記第1の実施の形態では、欠陥検査前に行われるセンサアンプのオフセット及びゲインの調整について説明した。
【0069】
ところで、図17に示すように、ステージ移動方向(X,Y方向)に対してレチクル1の平行度が不十分な場合がある。図17に示す例では、X方向に対して角度θ2だけレチクル1が傾いている。この場合、ステージ2をX方向に移動させてTDIセンサ11によりパターンを撮像すると、図18に示すように、X軸に対して角度θ2だけ斜め方向に延びるラインパターン291を含むパターン290が撮像されてしまう。
【0070】
そこで、このような斜め方向のパターンの撮像を防止するため、パターン欠陥検査前にステージθ回転アライメント(「マスク回転アライメント」ともいう。)が行われている。すなわち、レチクル1に形成されたパターンの水平方向とステージ2の移動方向とが平行になるように、欠陥検査前にθ方向モータ4Cによりステージ2を回転させる。
【0071】
従来のレチクルのθ回転アライメントの工程は、図4に示すように、非検査領域に形成された複数のアライメントマークMaを用いていた。そして、複数のアライメントマークMaの座標(例えば、十文字パターンの中心座標)を求めた後、レチクル1のステージ2の移動方向に対する平行度が算出され、この平行度に基づきステージ2を回転させた。アライメントマークが無いレチクルでも、例えば、被検査レチクルのパターンの中で、設計データから割り出した同一Y座標のエッジパターンを、なるべく離れたX座標距離で撮像し、ステージ走行軸に対する平行度を求め、θ回転補正する方法も採られている。
【0072】
しかしながら、この被検査レチクルのパターンを使用する方法は、検査装置を操作して撮像し、θ回転補正動作を繰り返して所定の許容回転誤差以内に収束させる作業が必要である。また、この方法では、作業者が手作業でエッジパターンを特定することが必要である。このため、装置のスループットが低下する可能性や、作業者によるパターン特定精度の影響を受けてステージθ回転アライメントの精度が低下する可能性があった。
【0073】
そこで、第4の実施の形態では、アライメンマークMaが形成されていない製品レチクルを用いたステージアライメント方法について説明する。図19乃至図22は、第4の実施の形態によるステージアライメント方法を説明するための図である。
【0074】
先ず、図19に示すように、2箇所のX座標Xa,XbでパターンエッジのY座標が同じパターン300を検索する。そして、このパターンエッジ近傍の領域Ra、Rbにおける光量Pの変化に着目する。この領域Ra、Rbは、Y方向に連続する複数の画素(例えば、4つの画素)でそれぞれ撮像される。
【0075】
ここで、図19に示されるハッチング部分(黒パターン)で測定される光量Pを0とし、白部分(白パターン)で測定される光量Pを255とする。そうすると、黒パターンと白パターンの境界であるパターンエッジの光量しきい値Pthは、その中間の128となる。図20Aに示す●は、領域Raにおけるパターンエッジ(Xa、Ya)を表している。図20Bに示す■は、領域Rbにおけるパターンエッジ(Xb、Yb)を表している。図20A及び図20Bにおいて、Y方向に並ぶ4つの四角はTDIセンサの4つの画素を表しており、各画素の底部におけるY座標を一方の縦軸に示しており、該底部における光量を他方の縦軸に示している。図20A及び図20Bに示すように、上記光量Pth(=128)を挟む2つの画素の底部のY座標をY1,Y2(Y1<Y2)とし、そのY1,Y2における光量をP1,P2とすると、光量PthであるY座標は、次式(1)のような加重平均で表すことができる。
Y=Y1+(Y2-Y1)/(P2-P1)×(Pth-P1)・・・(1)
【0076】
そして、図19のX座標Xa,Xbは50mm離れているとして、Xa,Xbにおける光量P=128となるY座標Ya,Ybを算出する。具体的には、Y座標Yaは、上式(1)に、図20Aに示すY1=70,Y2=140,P1=60,P2=130,Pth=128を代入することにより、Ya=138[nm]と算出される。また、Y座標Ybは、上式(2)に、図20Bに示すY1=140,Y2=210,P1=100,P2=255,Pth=128を代入することにより、Yb=152.6[nm]と算出される。
【0077】
そして、パターンの傾きをθ[rad]とすると、この傾きθは、図21に示すように2つのエッジ位置(Xa、Ya)及び(Xb、Yb)を結ぶ直線の傾きとして表されるため、tanθは、次式(2)のように表すことができる。
tanθ=(Yb-Ya)/(Xb-Xa)・・・(2)
【0078】
上式(2)に、Yb=152.6[nm],Ya=138[nm],Xb=75×103[nm],Xa=25×103[nm]を代入すると、θ=2.92×10−4[rad]と算出される。この算出されたθに相当する分だけモータ4Cによりステージ2を回転させることで、ステージθ回転アライメントが実行される。
【0079】
目標値θtgtは、例えば、1×10−6[rad]である。ステージθ回転アライメントを実行した後、再度Xa,Xbの箇所を撮像し、θを算出する。算出されたθがこの目標値θtgtを下回るまで、ステージθ回転アライメントが繰り返し実行される。その後、パターン欠陥検査が実行される。
【0080】
以下、図22を参照して具体的な制御について説明する。図22は、第4の実施の形態において、制御計算機20が実行するステージθ回転アライメント制御ルーチンを示すフローチャートである。図22に示すルーチンは、パターン欠陥検査を行う前に、より具体的には図5に示すルーチンと共に起動されるものである。
【0081】
図22に示すルーチンによれば、ステージ2のX軸と平行で離間するエッジ位置が同じパターンを検索する(ステップS120)。このステップS120では、記憶装置21に記憶されているCADデータを参照して、例えば、図19に示すようなパターンのほか、レチクル1の検査領域の外周近傍に形成されることが多い電源配線用のラインパターンが探索される。
【0082】
次に、離間したX座標Xa,Xbにおいて光量P=Pth(=128)となるY座標Ya,Ybを上式(1)に従って算出する(ステップS122)。このステップS122では、例えば、図19に示すように、50mm離間したXa=25,Xb=75におけるY座標が算出される。Xa,Xbの離間幅が広い方が、Ya,Ybの差分が大きくなり、後述するθの算出精度を高くとれるため好適である。このため、X方向の離間幅は、適切なパターンが存在する範囲で可能な限り広く確保するのが良い。現時点で多く流通している6インチレチクルの場合で50mm以上が好適であり、100mm以上がより好適である。
【0083】
次に、上記ステップS124で算出されたYa,Ybを用いて、上式(2)に従ってパターンの傾き(すなわち、回転誤差量)θを算出する(ステップS124)。そして、上記ステップS124で算出された傾きθが目標値θtgtよりも小さいか否かを判別する(ステップS126)。この目標値θtgtは、例えば、1×10−6[rad]である。このステップS126でθが目標値θtgtよりも大きいと判別された場合には、上記ステップS124で算出されたθだけ、モータ4Cによりステージ2を回転させる(ステップS128)。その後、ステップS120の処理に戻り、上記ステップS120,122,124の一連の処理を再び実行する。
【0084】
上記ステップS126でθが目標値θtgtよりも小さいと判別された場合には、ステージθ回転アライメントが完了したと判断される。この場合、本ルーチンを終了し、パターン欠陥検査を実行する。
【0085】
以上説明したように、第4の実施の形態では、ステージ移動方向と平行であるべきパターンの複数のエッジ位置(Xa,Ya),(Xb,Yb)が上式(1)に従って算出された後、パターンの傾き(平行度)θが上式(2)に従って算出される。この算出された傾きθに応じてステージ2のθ回転アライメントを実行することができる。従って、製品レチクルのパターンを用いて、ステージθ回転アライメントを実行することができる。よって、アライメントマークが形成されていない製品レチクルを用いてステージθ回転アライメントを実行することができる。
【0086】
さらに、エッジ位置のY座標Ya,Ybは、TDIセンサ11の画素の光量Pが閾値Pth(=128)となる座標として算出したが、この算出は上述した第1乃至第3の実施の形態で行われるボトム値及びピーク値の記憶と同時に実行することができる。よって、欠陥検査前の調整時間を短縮することができるため、欠陥検査装置のスループットを向上させることができる。
【0087】
尚、本実施の形態4においては、制御計算機20が、ステップS120及びS122の処理を実行することにより本発明における「エッジ位置取得手段」が、ステップS124の処理を実行することにより本発明における「回転誤差量算出手段」が、ステップS128の処理を実行することにより本発明における「アライメント手段」が、それぞれ実現されている。これらの手段は、ハードウェアにより構成されていてもよい。
【0088】
また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施の形態1では本発明を透過照明用のTDIセンサ11を備えたレチクル欠陥検査装置100に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、図23に示すように、反射光学系8と反射照明用のTDIセンサ11Aを更に備えたレチクル欠陥検査装置101に対しても適用可能である。レチクル欠陥検査装置101は、ビームスプリッタ81、ミラー82、ビームスプリッタ83、及び反射光をTDIセンサ11Aに結像させる対物レンズ10Aを含む反射光学系8を更に備えている。上述したセンサアンプ15の各画素のオフセット及びゲインの調整は、上記TDIセンサ11とは独立して、TDIセンサ11Aを用いて行うことができる。
【0089】
また、ステージθ回転アライメント用のパターンとして、上記第4の実施の形態では、X方向に離間するY座標同一な水平パターンエッジを使用する場合について説明したが、レチクルパターンが水平・垂直精度が充分確保されていることを前提に、Y方向に離間するX座標同一な垂直パターンエッジを使用して回転補正量を算出することでも同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0090】
100,101 レチクル欠陥検査装置
1 レチクル
2 ステージ
4A,4B,4C モータ
11,11A TDIセンサ
15 センサアンプ
151 アナログアンプ
152 デジタルアンプ
153 レジスタ
16 オフセット/ゲイン調整手段(オフセット/ゲイン設定手段)
16a ボトム値記憶手段
16b ピーク値記憶手段
16c オフセット算出手段
16d ゲイン算出手段
19 比較回路
20 制御計算機
21 記憶装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクル欠陥検査装置およびレチクル欠陥検査方法に関する。本発明は、特に、TDIセンサ出力を正規化するセンサアンプ手段のオフセット及びゲインの調整に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造過程において、基板(ウェハともいう)上にパターンを形成するために、回路パターンが形成された原画パターン(レチクル或いはマスクともいう、以下レチクルと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写している。レチクルは、通常、光を透過するガラス基板に遮光材料でパターンが形成されている。遮光材料は、クロム(Cr)が広く用いられている。また、超解像技術の一つである位相シフトマスクとして、モリブデンシリサイド(MoSi)などからなる半透明膜を遮光膜とするハーフトーン型の位相シフトマスクや、ガラス基板の厚さを変えて位相シフト効果を持たせたレベンソン型の位相シフトマスクが用いられようとしている。このようなマスクの製造には、微細な回路パターンを描画することができる電子ビームを用いたパターン描画装置が用いられる。レチクルにパターン欠陥が存在すると、ウェハ上に欠陥が転写されてしまう。このため、レチクルの欠陥検査を行う必要がある。
【0003】
レチクルの欠陥検査方法として、ダイ・トゥ・ダイ(Die-to-Die)検査方法と、ダイ・トゥ・データベース(Die-to-Database)検査方法とが知られている。ダイ・トゥ・ダイ検査方法は、異なる位置にある同一パターンの光学画像同士を比較する方法である。一方、ダイ・トゥ・データベース検査方法は、レチクル作成時に使用した描画データ(CADデータ)から生成される参照画像と、実際のレチクルのパターンの光学画像とを比較する方法である。
【0004】
光学画像を生成するために電荷蓄積型のTDI(Time Delay Integration)センサと、このTDIセンサの出力を増幅するセンサアンプとが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。透過光で検査する場合、ハーフトーン型位相シフトマスクは遮光膜とガラス基板のコントラストがある程度得られるため、クロムマスクと同様に検出光学系で受光したセンサ画像の光強度信号でマスクパターンを認識して欠陥判定を行う手法を採用できる。欠陥の形状によっては、マスク面の反射光を利用する方がコントラストを得やすい場合があり、異物検査機能などの用途で反射検査光学系を装備した検査装置もある。
【0005】
また、上述した参照画像と光学画像の比較に先立ち、センサアンプのオフセット及びゲインの正規化調整(キャリブレーション)を行うことが知られている(例えば、特許文献2参照。)。透過光で検査する場合、特許文献2によれば、透過光を撮像するTDIセンサの撮像面積に比して充分に広い面積を有する黒領域(遮光膜領域もしくはハーフトーン膜領域)を撮像してオフセットが調整された後、TDIセンサの撮像面積に比して充分に広い面積を有する白領域(ガラス基板)を撮像してゲインが調整される。反射光で検査する場合は、クロムあるいはハーフトーン膜が存在する部分が反射して白領域となり、ガラス基板の部分は反射光が無いため黒領域となる。
【0006】
しかしながら、近年では、製品レチクルに描かれるパターンの微細化が進み、製品パターン自体に充分に広い面積の黒領域又は白領域が存在しない場合がある。また、キャリブレーション用に製品パターンとは別の、充分に広い面積の黒領域又は白領域を準備することも一部で行われているが、製品パターンが占める面積が拡大してきており、このキャリブレーション用パターンは必ずしも準備されない事態となっている。この場合、製品レチクルと同じ膜種で黒領域と白領域が形成されたオフセット/ゲイン調整用レチクル(以下「調整用レチクル」という。)が用いられる。調整用レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインが調整された後、製品レチクルに載せ換えて欠陥検査が実行される。このようなレチクルの載せ換えは、スループットの低下を招くことや、調整用レチクルと製品レチクルとの遮光膜の仕上がり精度の誤差により、センサ信号の振幅やオフセットに誤差を含んでしまう恐れがある。
【0007】
また、ガラス基板の厚みが異なると、光の透過率が異なってしまう。このため、調整用レチクルを用いて最適に調整されたセンサアンプのオフセット及びゲインが、製品レチクルでは最適にはならない可能性がある。
【0008】
以上の理由により、調整用レチクルを用いるのではなく、被検査レチクルである製品レチクル自体を用いてセンサアンプのオフセット及びゲインを調整することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−271444号公報
【特許文献2】特許第3410847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記課題に鑑み、製品レチクルにTDIセンサ撮像面積に比して充分な広さの黒領域及び白領域が存在しなくても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインの調整が可能なレチクル欠陥検査方法及びレチクル欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、画像センサをレチクルに対して相対的に移動させ、前記画像センサの各画素の出力をセンサアンプにより増幅して得られる光学画像と、光学画像に対する基準画像となる参照画像とを比較することでレチクルの欠陥検査を行う方法であって、センサアンプは画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能であり、欠陥検査の前に、レチクルのパターンの一部を画像センサにより撮像し、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶するステップと、記憶された各画素のボトム値に基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するステップと、各画素の信号振幅のオフセットと、記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
この第1の態様において、画像センサとして複数段のラインを有するTDIセンサを用いることができる。
【0013】
この第1の態様において、各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、レチクルの相対移動速度を、画像センサの画像寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くしてもよい。
【0014】
この第1の態様において、各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、画像センサの相対移動方向に概略平行なパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するステップと、取得されたエッジ位置からレチクルの回転誤差量を算出するステップと、算出された回転誤差量に基づいて、レチクルの回転アライメントを実行するステップとを更に含むようにしてもよい。エッジ位置を複数箇所で取得するステップは、エッジ位置の近傍を撮像した複数の画素の光量及び座標を取得し、取得した複数の画素の光量及び座標に基づいて所定の光量となるエッジ位置を算出するようにしてもよい。
【0015】
この第1の態様において、レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を画像センサにより撮像し、ボトム値及びピーク値を記憶するようにしてもよい。
【0016】
この第1の態様において、ステージを一方向(例えば、X方向)に移動させながらレチクルのパターンの一部を画像センサにより撮像する際、画像センサの任意の画素がレチクルの遮光部と透光部の双方に差し掛からない場合、上記一方向と直交する他方向(例えば、Y方向)に移動させながら画像センサにより撮像してもよい。ここで、画像センサとしてTDIセンサを用いる場合、ステージを他方向に移動させる際にステージ移動速度をTDIセンサのTDI動作速度よりも遅くすることが好ましい。例えば、ステージ移動速度をTDI速度の10分の1程度にするのがよい。
また、ステージを一方向と他方向の両方に同時に移動させながら画像センサによりレチクルのパターンを撮像してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様は、パターンが形成されたレチクルに光を照射する光照射機構と、レチクルを保持するステージを駆動する駆動手段と、レチクルの透過光もしくは反射光の光量信号を複数の画素で検出する画像センサと、画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、光学画像を生成すると共に、画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能なセンサアンプと、光学画像に対する基準画像となる参照画像を生成する参照画像生成手段と、光学画像と参照画像とを比較することにより、レチクルのパターンの欠陥を検査する検査手段とを備えたレチクル欠陥検査装置であって、検査手段による検査の前に、駆動手段によりステージを駆動してパターンの一部を画像センサにより撮像し、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶する記憶手段と、記憶手段により記憶された各画素のボトム値に基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するオフセット設定手段と、各画素の信号振幅のオフセットと記憶手段により記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するゲイン設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
この第2の態様において、画像センサとして光量信号を複数段のラインで蓄積するTDIセンサを用いることができる。
【0019】
この第2の態様において、記憶手段により前記ボトム値及びピーク値を記憶する際のステージの駆動速度を、画像センサの画素寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くしてもよい。
【0020】
この第2の態様において、画像センサの相対移動方向に概略平行なレチクルのパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するエッジ位置取得手段と、エッジ位置取得手段により取得されたエッジ位置からレチクルの回転誤差量を算出する回転誤差量算出手段と、回転誤差量算出手段により算出された回転誤差量に基づいて、レチクルの回転アライメントを実行するアライメント手段とを更に備えるようにしてもよい。このエッジ位置取得手段は、エッジ位置の近傍を撮像した複数の画素の座標及び光量に基づいてエッジ位置を算出するように構成することができる。
【0021】
この第2の態様において、レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を画像センサにより撮像し、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶手段により記憶することが好ましい。
【0022】
ここで、画像センサにより撮像されるパターンの一部に一方向(例えば、X方向)に延びるパターンが含まれている場合、ステージを一方向に移動させながらレチクルのパターンの一部を画像センサにより撮像すると、画像センサの任意の画素がレチクルの遮光部と透光部の双方に差し掛からないことがある。このような場合、上記一方向と直交する他方向(例えば、Y方向)に移動させながら画像センサによりパターンを撮像してもよい。この画像センサとしてTDIセンサを用いる場合、ステージを他方向に移動させる際にステージ移動速度をTDIセンサのTDI動作速度よりも遅くすることが好ましい。例えば、ステージ移動速度をTDI動作速度の10分の1程度にするのがよい。
また、ステージを一方向と他方向の両方に同時に移動させながら画像センサによりレチクルのパターンを撮像してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の態様では、欠陥検査に先立ちパターンの一部がTDIセンサにより撮像され、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値が記憶され、記憶された各画素のボトム値に基づきセンサアンプの各画素の信号振幅のオフセットが設定される。さらに、前記各画素の信号振幅のオフセットと記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインが設定される。従って、本発明の第1の態様によれば、製品レチクルにTDIセンサ撮像面積に比して充分な広さの黒領域及び白領域が存在しなくても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインの設定が可能である。
【0024】
本発明の第2の態様では、検査手段による検査の前にパターンの一部がTDIセンサにより撮像され、センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値が記憶され、記憶された各画素のボトム値に基づきセンサアンプの各画素の信号振幅のオフセットが設定される。そして、各画素の信号振幅のオフセットと記憶された各画素のピーク値とに基づいて、センサアンプの各画素の信号振幅のゲインが設定される。従って、本発明の第2の態様によれば、製品レチクルにTDIセンサ撮像面積に比して充分な広さの黒領域及び白領域が存在しなくても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインの設定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるレチクル欠陥検査装置100の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示されたTDIセンサ11及びセンサアンプ15の構成を示す概略図である。
【図3】図1に示されたオフセット/ゲイン調整手段16の構成を示す概略図である。
【図4】従来の製品レチクルに形成された黒領域Rb及び白領域Rwを示す概念図である。
【図5】第1の実施の形態において、制御計算機20及びオフセット/ゲイン調整手段16が主に実行するオフセット/ゲイン調整制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すルーチンで検索されるパターンを示す図である。
【図7】TDIセンサ11を示す図である。
【図8】ステージ移動速度とTDI動作速度を同期させた場合に撮像される画像の例を示す図である。
【図9】図8の直線230に沿って切り出したTDIセンサ出力を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態において、ステージ移動速度をTDI動作速度よりも遅くした場合に撮像される画像の例を示す図である。
【図11】図10の直線250に沿って切り出したTDIセンサ出力を示す図である。
【図12】TDIセンサにより撮像するパターンを示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態において、ステージ2をY方向に移動させる場合を説明するための図である。
【図14】図12に示す直線部分を撮像したときに得られるTDIセンサ出力を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態において、ステージ2をX方向とY方向の両方に同時に移動させる場合を説明するための図である。
【図16】図15に示すようにステージ2を移動させた場合に撮像される画像を示す図である。
【図17】ステージ移動方向(X,Y方向)に対してレチクル1の直交度が不十分な場合を示す図である。
【図18】レチクル1の直交度が不十分である場合にTDIセンサ11により撮像される画像の例を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態によるステージアライメント方法を行う際に探索されるパターンの例を示す図である。
【図20A】図19に示す領域Raのパターンエッジ(Xa、Ya)を示す図である。
【図20B】図19に示す領域Rbのパターンエッジ(Xb、Yb)を示す図である。
【図21】2つのパターンエッジからパターンの傾きθを算出する方法を説明するための図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態において、制御計算機20が実行するステージアライメント制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図23】本発明の変形例によるレチクル欠陥検査装置101の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態によるレチクル欠陥検査装置100の構成を示す概略図である。図2は、図1に示されたTDIセンサ11及びセンサアンプ15の構成を示す概略図である。図3は、図1に示されたオフセット/ゲイン調整手段16の構成を示す概略図である。
【0028】
図1に示すレチクル欠陥検査装置100は、検査対象であるレチクル1を保持するステージ2を有している。レチクル1は、オートローダ3からステージ2上に搬送される。オートローダ3は、オートローダ制御回路13により制御される。
【0029】
ステージ2は、X方向モータ4Aと、Y方向モータ4Bと、θ方向(水平回転方向)モータ4Cとによって、X方向、Y方向及びθ方向に駆動される。これらのモータ4A,4B,4Cの駆動制御は、ステージ制御回路14によって実行される。ステージ2のX方向及びY方向の位置は、例えば、レーザ干渉計等のレーザ測長手段5と、このレーザ測長手段5に接続された位置回路12とによって検出される。検査対象レチクルは例えばX方向に一定速度で連続移動しながらセンサの撮像が行われ、終端(ストライプエンド)でY方向に移動した後、X方向に逆向きに一定速度で連続移動しながらセンサの撮像を行うといった工程を繰り返して検査対象レチクルの検査領域全面を撮像する。
【0030】
また、レチクル欠陥検査装置100は、レーザ光を発する光源6と、光源6から発せられたレーザ光をレチクル1に照射する透過照明光学系7とを備えている。透過照明光学系7は、ミラー71及び対物レンズ72を有している。
【0031】
また、レチクル欠陥検査装置100は、レチクル1を透過した透過光を集光してTDI(Time Delay Integration)センサ11上に結像させる結像レンズ10を有している。
【0032】
画像センサたるTDIセンサ11は、図2に示すように、2次元のCCDセンサであり、例えば、2048画素×512画素(1画素が70nm×70nmの場合、144μm×36μm)の長方形の撮像領域Rsを有する。すなわち、TDIセンサ11は、TDI方向に複数段(例えば、512段)のラインL1,L2,…,L512によって構成され、各ラインLは複数の画素(例えば、2048画素)によって構成されている。TDIセンサ11のTDI方向(512段方向)とステージ2のX方向が一致するように設置し、ステージ2が移動することによりTDIセンサ11がレチクル1に対して相対的に移動することで、TDIセンサ11によりレチクル1のパターンが撮像される。図2中の右方向にTDIセンサ11が相対移動するとき、図2中の左方向(FWD)がTDIセンサ11の電荷蓄積方向(TDI方向)となる。この場合、1段目のラインL1からFWD方向のラインL2,L3,…に電荷を順次転送しながら蓄積し、最終段のラインL512から1ライン分(2048画素分)の画像信号が出力される。
【0033】
また、ステージ2の移動方向を反転させると、つまり、図2中の左方向にTDIセンサ11が相対移動すると、TDIセンサ11の電荷蓄積方向が図2中の右方向(BWD)に切り換えられる。TDIセンサ11は、その電荷蓄積方向の両端に出力部110を有している。すなわち、TDIセンサ11は、双方向から電荷を読み出し可能に構成されている。
【0034】
TDIセンサ11は、センサアンプ15と接続されている。センサアンプ15は、TDIセンサ11から入力された各画素の光量信号を正規化(キャリブレーション)し、比較回路19に出力するものである。センサアンプ15は、図2に示すように、各画素の信号を固定倍率で増幅するアナログアンプ151と、レジスタ153に記憶されたオフセット及びゲインで各画素の信号を増幅するデジタルアンプ152とを備えている。レジスタ153に記憶された各画素のオフセット及びゲインは、後述するオフセット/ゲイン調整手段16(図3参照)によって調整される。
【0035】
尚、本実施の形態では、画像センサとしてTDIセンサ11を用いているが、TDIセンサ11に代えてラインセンサやエリアセンサのような他の画像センサを用いることができる。
【0036】
また、レチクル欠陥検査装置100は、光学画像に対する比較基準となる参照画像を生成するための展開回路17及び参照回路18を備えている。展開回路17は、記憶装置21に記憶されたCADデータ(作図データ)等を展開し、展開データを参照回路18に出力するものである。参照回路18は、展開回路17から入力される展開データにリサイズ処理、コーナ丸め処理及び点広がり分布関数(PSF:point spread functions)フィルタ処理を一括して施すことにより参照画像を生成し、参照画像を比較回路19に出力するものである。記憶装置21は、例えば、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FDもしくは半導体メモリ等である。
【0037】
比較回路19は、センサアンプ15から入力される光学画像と、参照回路18から入力される参照画像とを比較し、両者のパターン形状が相違する場合にパターン形状欠陥として検出するものである。比較回路19の検査結果は、記憶装置21に格納される。よって、オペレータは、検査結果を記憶装置21から読み出してディスプレイ等の表示装置22に表示させることで確認することができる。
【0038】
レチクル欠陥検査装置100は、通常のパターン欠陥検査のほか、センサアンプ15のオフセット/ゲインの調整、ステージ2のアライメント等の全体的な制御を実行する制御計算機20を備えている。この制御計算機20には、上述した位置回路12、オートローダ制御回路13、ステージ制御回路14、センサアンプ15、オフセット/ゲイン調整手段16、展開回路17、参照回路18、比較回路19、記憶装置21及び表示装置22等が接続されている。
【0039】
上述した通り、TDIセンサ11の各画素の出力がセンサアンプ15により画素毎に増幅されて光学画像が生成される。比較回路19における欠陥検査を精度良く行うためには、光学画像を精度良く生成する必要がある。すなわち、センサアンプ15のダイナミックレンジを効率良く活用する必要がある。
【0040】
従来より、欠陥検査前にセンサアンプ15のオフセット及びゲインの調整が行われている。従来は製品パターン自体にも比較的大きな白ベタ領域や黒ベタ領域があり、TDIセンサの撮像領域より充分に広い箇所を選んで、上記キャリブレーションを行うことができた。また、製品パターン自体に大きな白ベタ領域や黒ベタ領域が無くても製品レチクルの非検査領域には転写装置用のアライメントパターンや、一部では図4に示すように、TDIセンサ撮像領域Rsに比して充分に広い面積を有する黒領域Rb及び白領域Rwが検査装置のキャリブレーションのために形成されていた。図4は、従来の製品レチクルに形成された黒領域Rb及び白領域Rwを示す概念図である。従来は、TDIセンサを黒領域Rbのような広い領域に静止させて撮像結果に基づきセンサアンプの信号振幅のオフセットを設定し、白領域Rwのような広い領域に静止させて撮像結果に基づきセンサアンプの信号振幅のゲインが設定されていた。
【0041】
しかしながら、近年においては、レチクルに描かれるパターンの微細化が進み、製品レチクルに上記充分に広い面積を有する黒領域及び白領域が形成されないことが多い。また、上述のRb,Rwのようにキャリブレーション用に製品パターンとは別の、充分に広い面積の黒領域又は白領域を準備することも一部では行われているが、製品レチクルに収録すべきパターンが広がってきており、このキャリブレーション用パターンは必ずしも準備されない事態となっている。このため、オフセット及びゲイン調整用のレチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインを調整した後、この調整用レチクルを製品レチクルに載せ換えていた。かかるレチクルの載せ換えはスループットの低下を招いてしまう。さらに、レチクルのガラス基板の厚みにより透過率が変わってしまうため、調整用レチクルを用いて調整されたセンサアンプのオフセット及びゲインが、製品レチクルに対しては最適ではない可能性がある。そうすると、欠陥検査の精度を低下させる要因となってしまう。従って、製品レチクルに充分に広い面積を有する黒領域及び白領域が形成されていない場合であっても、製品レチクルを用いてセンサアンプのオフセット及びゲインを調整することが望まれている。
【0042】
そこで、本実施の形態1では、図3に示すように、センサアンプ15のオフセット及びゲインを調整するオフセット/ゲイン調整手段16を設けた。このオフセット/ゲイン調整手段16は、図3に示すように、ボトム値記憶手段16aと、ピーク値記憶手段16bと、オフセット算出手段16cと、ゲイン算出手段16dとを備えている。
【0043】
これらのボトム値記憶手段16a、ピーク値記憶手段16b、オフセット算出手段16cおよびゲイン算出手段16dは、TDIセンサ11の1ラインを構成する複数の画素毎に設けられている。すなわち、TDIセンサ11の1ライン分の2048画素で構成されている場合には、上記の手段16a〜16dは2048個ずつ設けられている。
【0044】
ボトム値記憶手段16aは、センサアンプ15により増幅された各画素の光量信号のボトム値を記憶(ホールド)するものであり、ピーク値記憶手段16bは、各画素の光量信号のピーク値を記憶(ホールド)するものである。オフセット算出手段16cは、ボトム値記憶手段16aに記憶された各画素のボトム値に基づいて、センサアンプ15の各画素のオフセットを算出するものである。ゲイン算出手段16dは、オフセット算出手段16cにより算出された各画素のオフセットとピーク値記憶手段16bにより記憶された各画素のピーク値に基づいて、センサアンプ15の各画素のゲインを算出するものである。
【0045】
以下、図5を参照して具体的な制御について説明する。図5は、第1の実施の形態において、制御計算機20及びオフセット/ゲイン調整手段16が主に実行するオフセット/ゲイン調整制御ルーチンを示すフローチャートである。図5に示すルーチンは、パターン欠陥検査を行う前に起動されるものである。
【0046】
図5に示すルーチンによれば、先ず、TDIセンサ11により撮像されるパターンの検索を実行する(ステップS100)。このステップS100では、TDIセンサ11の各画素が全白パターン及び全黒パターンに少なくとも1回は差しかかるようなパターン、例えば、図6に示すようなパターン200が検索される。このパターン200のうちのハッチングを付した部分は、遮光膜(クロム膜)からなる黒パターンを示しており、パターン200のうちの白い部分は、ガラス基板からなる白パターンを示している。このパターン200は、矢印A1で示す方向に相対移動するTDIセンサ11により撮像される。
【0047】
上記ステップS100におけるパターン探索の方法は、データベース検査のデータベースとして被検査レチクルの設計データあるいは描画データを検査装置に入力もしくは記憶装置21に記憶している場合には、そのデータを制御計算機20において探索して、適切なパターン領域(プリスキャン領域)を選出することができる。あるいは、上記のデータを探索しなくても、被検査領域の中央近傍の位置や、検査範囲の端から10%程度内側に寄った位置などの決め方で、プリスキャンする領域を決めることができ、その領域の撮像を行って各画素のオフセット及びゲインが適切か否かを判別することが実用上可能である。
【0048】
次に、モータ4A,4Bを用いてステージ2を駆動して、上記ステップS100で検索されたパターンをTDIセンサ11により走査すると、TDIセンサ11の各画素の出力がセンサアンプ15により増幅される。このとき、レジスタ153に記憶された各画素のオフセット及びゲインが信号増幅に用いられる。そして、センサアンプ15から出力される各画素のボトム値及びピーク値をオフセット/ゲイン調整手段16により記憶する(ステップS102)。このステップS102では、各画素のボトム値記憶手段16aによって各画素のボトム値が記憶され、各画素のピーク値記憶手段16bによって各画素のピーク値が記憶される。
【0049】
上記ステップS100で検索されたパターン(例えば、1ストライプ分のパターン)がTDIセンサ11により走査された後、全画素分(2048画素分)のボトム値及びピーク値が記憶されたか否かを判別する(ステップS104)。このステップS104では、上記ステップS102で記憶された全画素のボトム値とピーク値がそれぞれ基準範囲内(例えば、10%以内)に収まっているか否かが判別される。このステップS104で全画素分のボトム値及びピーク値が記憶されていないと判別された場合には、上記ステップS100で検索されたパターンとは別のパターン(例えば、別の1ストライプ分のパターン)を検索する(ステップS106)。その後、上記ステップS106で検索されたパターンをTDIセンサ11により走査して、上記ステップS102の処理を再度実行する。
【0050】
上記ステップS104で全画素分のボトム値及びピーク値が記憶されたと判別された場合には、各画素のボトム値に基づいて、オフセット算出手段16cにより各画素のオフセットを算出する(ステップS108)。その後、各画素のピーク値と、上記ステップS108で算出された各画素のオフセットとに基づいて、ゲイン算出手段16dにより各画素のゲインを算出する(ステップS110)。
【0051】
その後、上記ステップS108で算出された各画素のオフセットと、上記ステップS110で算出された各画素のゲインとに基づいて、センサアンプ15の各画素のオフセット及びゲインを調整(設定)する(ステップS112)。このステップS112では、オフセット算出手段16c及びゲイン算出手段16dから出力された各画素のオフセット及びゲインが、センサアンプ15に入力される。この入力された各画素のオフセット及びゲインがレジスタ153に記憶されることで、各画素のオフセット及びゲインが調整(設定)される。その後、本ルーチンを終了する。そうすると、パターン欠陥検査が実行される。
【0052】
以上説明したように、第1の実施の形態では、パターン欠陥検査前に、TDIセンサ11によりパターンを走査し、センサアンプ15で増幅された出力信号の各画素のボトム値及びピーク値が記憶される。そして、記憶された各画素のボトム値に基づいて各画素のオフセットが算出される。算出された各画素のオフセットと、記憶されたピーク値に基づいて、各画素のゲインが算出される。その後、算出された各画素のオフセット及びゲインに基づいて、センサアンプ15の各画素のオフセット及びゲインが調整(設定)される。よって、TDIセンサの撮像面積に比して充分に広い面積の黒領域及び白領域が存在しない製品レチクルを用いて、センサアンプの各画素のオフセット及びゲインを調整することができる。これにより、TDIセンサ11の信号振幅は被検査レチクルの現物に合わせた正規化が行われるため、別の調整用レチクルを使用する場合に比べてS/N比を向上させることができる。
【0053】
また、レチクルは、製品パターンが形成されたメインチップ領域と、製品パターン以外のアライメントマークなどが形成された周辺チップ領域とを有する。メインチップ領域の面内においても遮光膜の膜厚や透明基板の厚みが不均一である場合がある。このような場合でも、TDIセンサ11によりメインチップのパターンを走査し、TDIセンサ11の信号振幅の正規化を行うことで、より実用的かつ高精度な正規化を行うことができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
次に、図7乃至図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
上記ボトム値記憶手段16a及びピーク値記憶手段16bにより各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際、通常は、ステージ2の移動速度と、TDIセンサ11内のTDI動作速度と同期させることが考えられる。このように同期させた場合に図7に示すTDIセンサ11を用いて撮像された画像の例を図8に示す。図8に示す画像210は、レチクル透過光をTDIセンサ11によって撮像したものである。従って、図8におけるハッチング部分は遮光部に対応し、白部分は透過部に対応する。このハッチング部分のセンサ出力はボトム値に近いレベルになり、白部分のセンサ出力はピーク値に近いレベルになる。
【0055】
図8における直線230に沿って切り出したセンサ出力を図9に示す。このセンサ出力は、図7においてハッチングが付された画素111の出力である。図8に示す直線230の左端はハッチング部分(黒ライン)211に位置するため、図9に示すセンサ出力はボトム値付近から切り出されている。その後、図8に示すように直線230が細い白部分(細い白ライン)212、214、216、218と細いハッチング部分(細い黒ライン)213、215、217とを交互に横切るため、図9に示すように細いピークが連続して4回得られる。その後、図8に示すように直線230が広いハッチング部分219と広い白部分220とを交互に横切るため、図9に示すように、幅が太いボトムと、幅が太いピークが得られる。
【0056】
上記直線230が最初に横切る細い白ラインパターン212、214の線幅及び間隔は共に200nmである。上述したように、TDIセンサ11の1画素の大きさは、70nm×70nmである。このように、センサ画素に対して微細なパターンを撮像する場合に、センサ画素に差し掛かるパターンの位置が理想的でないと、充分な信号振幅が得られないケースがある。
【0057】
ここで、レチクル透過光の光量は均一な分布とならず、光学系(結像レンズ10等)の影響を受けて最大光量を中心とするガウス分布となる。このため、スキャンタイミングによっては、最大光量の位置が2つの画素に分散してしまう。このように最大光量位置が2つの画素に分散された状態で撮像される場合には、最大光量位置が1つの画素の中央になるときに撮像される場合に比して、信号振幅が小さくなってしまう。
【0058】
そこで、第2の実施の形態では、ボトム値及びピーク値を記憶する際、ステージ2の移動速度を、TDIセンサ11内の画素移動速度であるTDI動作速度よりも遅くする。画素移動速度は、画素寸法と撮像周期で決まる。図10及び図11は、第2の実施の形態において、ステージ移動速度をTDI動作速度よりも遅くした場合の画像及びセンサ出力の例を示す図である。図10に示す画像240は、ステージ2の移動速度をTDI動作速度の2分の1にした場合に、レチクル透過光を図7に示すTDIセンサ11によって撮像したものである。従って、図10におけるハッチング部分は遮光部に対応し、白部分は透過部に対応する。このハッチング部分のセンサ出力はボトム値に近いレベルになり、この白部分のセンサ出力はピーク値に近いレベルになる。
【0059】
図10における直線250に沿って切り出したセンサ出力を図11に示す。このセンサ出力は、図7においてハッチングが付された画素111の出力である。図10に示す直線250の左端(切り出し開始位置)は、図8に示す直線230の左端(切り出し開始位置)と同じ位置であるため、図11に示すセンサ出力は、図9に示すセンサ出力と同じ位置から切り出されている。すなわち、図10に示す直線250はハッチング部分(黒ライン)241から切り出されているため、図11に示すセンサ出力はボトム値付近から切り出されている。その後、図10に示すように直線250が白部分(白ライン)242、244とハッチング部分(黒ライン)243、245とを交互に横切るため、図11に示すようにピークが2回得られる。
【0060】
第2の実施の形態ではステージ移動速度を遅くすることで、1本の細線が複数画素に差し掛かって撮像される。すなわち、オーバーサンプリングと同様の効果が得られる。このため、図10に示す画像240における線幅及び間隔が、図8に示す画像210における線幅及び間隔よりも広くなっている。これにより、ステージ移動速度とTDI動作速度を同期させる場合に比して、最大光量位置が1つの画素の中央になるときに撮像される機会を増やすことができる。最大光量位置が画素中央になるときに撮像することで、図11に示すように、充分な信号振幅を得ることができる。従って、微細パターンを撮像する場合であっても、ピーク値記憶手段16bにより記憶される各画素のピーク値を充分に高めることができる。このため、センサアンプ15のダイナミックレンジを充分に活用することができる。
【0061】
(第3の実施の形態)
次に、図12乃至図14を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図12は、第3の実施の形態において、TDIセンサにより撮像するパターンを示す図である。
【0062】
図12に示すパターン260は、X方向に延び、所定のピッチPを有する複数のラインパターン261、262を含んでいる。このようなパターンPを撮像する場合、TDIセンサ11の各画素の光量が0(黒パターン)〜255(白パターン)の階調をとり得るとすると、全画素の光量が63よりも小さくならなかったり、光量が192よりも大きくならなかったりする。つまり、ステージ2をX方向に移動させて(つまり、TDIセンサ11をX方向に相対移動させて)パターン260を撮像しようとすると、上記TDIセンサ11の任意の画素は、図12においてハッチングを付した黒パターン261、262のみに差し掛かるだけで、白パターンには差し掛からない可能性がある。別の画素に注目すると、その注目画素が白パターンのみに差し掛かるだけで、黒パターンには差し掛からない可能性がある。そうすると、TDIセンサ11の全画素につきボトム値とピーク値の両方を記憶することができない場合がある。
【0063】
そこで、第3の実施の形態では、図13に示すようなレチクル1とTDIセンサ11の位置関係のときに、矢印A2で示すようにステージ2をY方向に移動させる。ここで、このようにステージ2をY方向に移動させてパターン260を撮像すると、図12に示す直線263に対応するセンサ出力は、図14に示すようなセンサ出力となる。この直線263の長さは、パターンピッチPの10倍の長さとすることができる。これにより、TDIセンサ11のサンプリング誤差を考慮しても、TDIセンサ11の全ての画素が白パターンと黒パターンの両方に差し掛かる機会が得られる。従って、図12に示すようにレチクル1にX方向に延びるラインパターン261、262を含むパターンを撮像する場合であっても、各画素でボトム値とピーク値の両方を記憶することができる。
【0064】
但し、画像センサとしてTDIセンサ11を用いる場合、TDIセンサ11は電荷の蓄積を行うことから、TDI速度とY方向のステージ移動速度とが等速のとき、TDI方向が斜め(45度)になる。そこで、TDI速度よりも十分に遅い速度でステージをY方向に移動させることが好ましい。例えば、ステージ移動速度をTDI速度の10分の1にすることができる。TDIセンサ11において電荷を1画素(70nm)シフトするのに2〜3μsecかかるとき、その速度をステージ移動速度に換算すると十数mm/secとなるため、ステージ移動速度を数mm/secとすることができる。
【0065】
尚、TDIセンサ11の代わりにラインセンサを画像センサとして用いる場合、電荷の蓄積を考慮する必要がないため、撮像周期に応じたステージ移動速度にすればよい。
【0066】
また、図15に示すようなレチクル1とTDIセンサ11の位置関係のときに、矢印A3で示すようにステージ2を斜め方向に移動させることで、つまり、X方向に移動させると同時にY方向に移動させることで、図16に示すように、X軸に対して角度θ1だけパターン281、282が斜め方向に延びる画像(スキュー画像)280が撮像される。この場合も、図13に示すようにステージ2をY方向に移動させた場合と同様に、TDIセンサ11の全ての画素が白パターンと黒パターンの両方に差し掛かる機会を得ることができる。なお、ステージ2のX方向の移動速度をTDI動作速度よりも遅くすることで、上記第2の実施の形態と同様に、充分な信号振幅を得ることができる。
【0067】
(第4の実施の形態)
次に、図17から図20を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0068】
上記第1の実施の形態では、欠陥検査前に行われるセンサアンプのオフセット及びゲインの調整について説明した。
【0069】
ところで、図17に示すように、ステージ移動方向(X,Y方向)に対してレチクル1の平行度が不十分な場合がある。図17に示す例では、X方向に対して角度θ2だけレチクル1が傾いている。この場合、ステージ2をX方向に移動させてTDIセンサ11によりパターンを撮像すると、図18に示すように、X軸に対して角度θ2だけ斜め方向に延びるラインパターン291を含むパターン290が撮像されてしまう。
【0070】
そこで、このような斜め方向のパターンの撮像を防止するため、パターン欠陥検査前にステージθ回転アライメント(「マスク回転アライメント」ともいう。)が行われている。すなわち、レチクル1に形成されたパターンの水平方向とステージ2の移動方向とが平行になるように、欠陥検査前にθ方向モータ4Cによりステージ2を回転させる。
【0071】
従来のレチクルのθ回転アライメントの工程は、図4に示すように、非検査領域に形成された複数のアライメントマークMaを用いていた。そして、複数のアライメントマークMaの座標(例えば、十文字パターンの中心座標)を求めた後、レチクル1のステージ2の移動方向に対する平行度が算出され、この平行度に基づきステージ2を回転させた。アライメントマークが無いレチクルでも、例えば、被検査レチクルのパターンの中で、設計データから割り出した同一Y座標のエッジパターンを、なるべく離れたX座標距離で撮像し、ステージ走行軸に対する平行度を求め、θ回転補正する方法も採られている。
【0072】
しかしながら、この被検査レチクルのパターンを使用する方法は、検査装置を操作して撮像し、θ回転補正動作を繰り返して所定の許容回転誤差以内に収束させる作業が必要である。また、この方法では、作業者が手作業でエッジパターンを特定することが必要である。このため、装置のスループットが低下する可能性や、作業者によるパターン特定精度の影響を受けてステージθ回転アライメントの精度が低下する可能性があった。
【0073】
そこで、第4の実施の形態では、アライメンマークMaが形成されていない製品レチクルを用いたステージアライメント方法について説明する。図19乃至図22は、第4の実施の形態によるステージアライメント方法を説明するための図である。
【0074】
先ず、図19に示すように、2箇所のX座標Xa,XbでパターンエッジのY座標が同じパターン300を検索する。そして、このパターンエッジ近傍の領域Ra、Rbにおける光量Pの変化に着目する。この領域Ra、Rbは、Y方向に連続する複数の画素(例えば、4つの画素)でそれぞれ撮像される。
【0075】
ここで、図19に示されるハッチング部分(黒パターン)で測定される光量Pを0とし、白部分(白パターン)で測定される光量Pを255とする。そうすると、黒パターンと白パターンの境界であるパターンエッジの光量しきい値Pthは、その中間の128となる。図20Aに示す●は、領域Raにおけるパターンエッジ(Xa、Ya)を表している。図20Bに示す■は、領域Rbにおけるパターンエッジ(Xb、Yb)を表している。図20A及び図20Bにおいて、Y方向に並ぶ4つの四角はTDIセンサの4つの画素を表しており、各画素の底部におけるY座標を一方の縦軸に示しており、該底部における光量を他方の縦軸に示している。図20A及び図20Bに示すように、上記光量Pth(=128)を挟む2つの画素の底部のY座標をY1,Y2(Y1<Y2)とし、そのY1,Y2における光量をP1,P2とすると、光量PthであるY座標は、次式(1)のような加重平均で表すことができる。
Y=Y1+(Y2-Y1)/(P2-P1)×(Pth-P1)・・・(1)
【0076】
そして、図19のX座標Xa,Xbは50mm離れているとして、Xa,Xbにおける光量P=128となるY座標Ya,Ybを算出する。具体的には、Y座標Yaは、上式(1)に、図20Aに示すY1=70,Y2=140,P1=60,P2=130,Pth=128を代入することにより、Ya=138[nm]と算出される。また、Y座標Ybは、上式(2)に、図20Bに示すY1=140,Y2=210,P1=100,P2=255,Pth=128を代入することにより、Yb=152.6[nm]と算出される。
【0077】
そして、パターンの傾きをθ[rad]とすると、この傾きθは、図21に示すように2つのエッジ位置(Xa、Ya)及び(Xb、Yb)を結ぶ直線の傾きとして表されるため、tanθは、次式(2)のように表すことができる。
tanθ=(Yb-Ya)/(Xb-Xa)・・・(2)
【0078】
上式(2)に、Yb=152.6[nm],Ya=138[nm],Xb=75×103[nm],Xa=25×103[nm]を代入すると、θ=2.92×10−4[rad]と算出される。この算出されたθに相当する分だけモータ4Cによりステージ2を回転させることで、ステージθ回転アライメントが実行される。
【0079】
目標値θtgtは、例えば、1×10−6[rad]である。ステージθ回転アライメントを実行した後、再度Xa,Xbの箇所を撮像し、θを算出する。算出されたθがこの目標値θtgtを下回るまで、ステージθ回転アライメントが繰り返し実行される。その後、パターン欠陥検査が実行される。
【0080】
以下、図22を参照して具体的な制御について説明する。図22は、第4の実施の形態において、制御計算機20が実行するステージθ回転アライメント制御ルーチンを示すフローチャートである。図22に示すルーチンは、パターン欠陥検査を行う前に、より具体的には図5に示すルーチンと共に起動されるものである。
【0081】
図22に示すルーチンによれば、ステージ2のX軸と平行で離間するエッジ位置が同じパターンを検索する(ステップS120)。このステップS120では、記憶装置21に記憶されているCADデータを参照して、例えば、図19に示すようなパターンのほか、レチクル1の検査領域の外周近傍に形成されることが多い電源配線用のラインパターンが探索される。
【0082】
次に、離間したX座標Xa,Xbにおいて光量P=Pth(=128)となるY座標Ya,Ybを上式(1)に従って算出する(ステップS122)。このステップS122では、例えば、図19に示すように、50mm離間したXa=25,Xb=75におけるY座標が算出される。Xa,Xbの離間幅が広い方が、Ya,Ybの差分が大きくなり、後述するθの算出精度を高くとれるため好適である。このため、X方向の離間幅は、適切なパターンが存在する範囲で可能な限り広く確保するのが良い。現時点で多く流通している6インチレチクルの場合で50mm以上が好適であり、100mm以上がより好適である。
【0083】
次に、上記ステップS124で算出されたYa,Ybを用いて、上式(2)に従ってパターンの傾き(すなわち、回転誤差量)θを算出する(ステップS124)。そして、上記ステップS124で算出された傾きθが目標値θtgtよりも小さいか否かを判別する(ステップS126)。この目標値θtgtは、例えば、1×10−6[rad]である。このステップS126でθが目標値θtgtよりも大きいと判別された場合には、上記ステップS124で算出されたθだけ、モータ4Cによりステージ2を回転させる(ステップS128)。その後、ステップS120の処理に戻り、上記ステップS120,122,124の一連の処理を再び実行する。
【0084】
上記ステップS126でθが目標値θtgtよりも小さいと判別された場合には、ステージθ回転アライメントが完了したと判断される。この場合、本ルーチンを終了し、パターン欠陥検査を実行する。
【0085】
以上説明したように、第4の実施の形態では、ステージ移動方向と平行であるべきパターンの複数のエッジ位置(Xa,Ya),(Xb,Yb)が上式(1)に従って算出された後、パターンの傾き(平行度)θが上式(2)に従って算出される。この算出された傾きθに応じてステージ2のθ回転アライメントを実行することができる。従って、製品レチクルのパターンを用いて、ステージθ回転アライメントを実行することができる。よって、アライメントマークが形成されていない製品レチクルを用いてステージθ回転アライメントを実行することができる。
【0086】
さらに、エッジ位置のY座標Ya,Ybは、TDIセンサ11の画素の光量Pが閾値Pth(=128)となる座標として算出したが、この算出は上述した第1乃至第3の実施の形態で行われるボトム値及びピーク値の記憶と同時に実行することができる。よって、欠陥検査前の調整時間を短縮することができるため、欠陥検査装置のスループットを向上させることができる。
【0087】
尚、本実施の形態4においては、制御計算機20が、ステップS120及びS122の処理を実行することにより本発明における「エッジ位置取得手段」が、ステップS124の処理を実行することにより本発明における「回転誤差量算出手段」が、ステップS128の処理を実行することにより本発明における「アライメント手段」が、それぞれ実現されている。これらの手段は、ハードウェアにより構成されていてもよい。
【0088】
また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施の形態1では本発明を透過照明用のTDIセンサ11を備えたレチクル欠陥検査装置100に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、図23に示すように、反射光学系8と反射照明用のTDIセンサ11Aを更に備えたレチクル欠陥検査装置101に対しても適用可能である。レチクル欠陥検査装置101は、ビームスプリッタ81、ミラー82、ビームスプリッタ83、及び反射光をTDIセンサ11Aに結像させる対物レンズ10Aを含む反射光学系8を更に備えている。上述したセンサアンプ15の各画素のオフセット及びゲインの調整は、上記TDIセンサ11とは独立して、TDIセンサ11Aを用いて行うことができる。
【0089】
また、ステージθ回転アライメント用のパターンとして、上記第4の実施の形態では、X方向に離間するY座標同一な水平パターンエッジを使用する場合について説明したが、レチクルパターンが水平・垂直精度が充分確保されていることを前提に、Y方向に離間するX座標同一な垂直パターンエッジを使用して回転補正量を算出することでも同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0090】
100,101 レチクル欠陥検査装置
1 レチクル
2 ステージ
4A,4B,4C モータ
11,11A TDIセンサ
15 センサアンプ
151 アナログアンプ
152 デジタルアンプ
153 レジスタ
16 オフセット/ゲイン調整手段(オフセット/ゲイン設定手段)
16a ボトム値記憶手段
16b ピーク値記憶手段
16c オフセット算出手段
16d ゲイン算出手段
19 比較回路
20 制御計算機
21 記憶装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像センサをレチクルに対して相対的に移動させ、前記画像センサの各画素の出力をセンサアンプにより増幅して得られる光学画像と、前記光学画像に対する基準画像となる参照画像とを比較することで前記レチクルの欠陥検査を行う方法であって、
前記センサアンプは画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能であり、
前記欠陥検査の前に、前記レチクルのパターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶するステップと、
記憶された各画素のボトム値に基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するステップと、
前記各画素の信号振幅のオフセットと、記憶された各画素のピーク値とに基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するステップとを含むことを特徴とするレチクル欠陥検査方法。
【請求項2】
前記画像センサは複数段のラインを有するTDIセンサであることを特徴とする請求項1記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項3】
前記各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、前記レチクルの相対移動速度が、前記画像センサの画素寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くされることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項4】
前記各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、前記画像センサの相対移動方向に概略平行なレチクルパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するステップと、
取得されたエッジ位置から前記レチクルの回転誤差量を算出するステップと、
算出された回転誤差量に基づいて、前記レチクルの回転アライメントを実行するステップとを更に含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項5】
前記レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記ボトム値及びピーク値を記憶することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項6】
パターンが形成されたレチクルに光を照射する光照射機構と、
前記レチクルを保持するステージを駆動する駆動手段と、
前記レチクルの透過光もしくは反射光の光量信号を複数の画素で検出する画像センサと、
前記画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、光学画像を生成すると共に、画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能なセンサアンプと、
前記光学画像に対する基準画像となる参照画像を生成する参照画像生成手段と、
前記光学画像と前記参照画像とを比較することにより、前記レチクルのパターンの欠陥を検査する検査手段とを備えたレチクル欠陥検査装置であって、
前記検査手段による検査の前に、前記駆動手段により前記ステージを駆動して前記パターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された各画素のボトム値に基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するオフセット設定手段と、
前記各画素の信号振幅のオフセットと前記記憶手段により記憶された各画素のピーク値とに基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するゲイン設定手段とを備えたことを特徴とするレチクル欠陥検査装置。
【請求項7】
前記画像センサは前記光量信号を複数段のラインで蓄積するTDIセンサであることを特徴とする請求項6記載のレチクル欠陥検査装置。
【請求項8】
前記記憶手段により前記ボトム値及びピーク値を記憶する際の前記ステージの駆動速度が、前記画像センサの画素寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くされることを特徴とする請求項6又は請求項7記載のレチクル欠陥検査装置。
【請求項9】
前記画像センサの相対移動方向に概略平行なレチクルのパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するエッジ位置取得手段と、
前記エッジ位置取得手段により取得されたエッジ位置から前記レチクルの回転誤差量を算出する回転誤差量算出手段と、
前記回転誤差量算出手段により算出された回転誤差量に基づいて、前記レチクルの回転アライメントを実行するアライメント手段とを更に備えたことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査装置。
【請求項10】
前記レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を前記記憶手段により記憶することを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査装置。
【請求項1】
画像センサをレチクルに対して相対的に移動させ、前記画像センサの各画素の出力をセンサアンプにより増幅して得られる光学画像と、前記光学画像に対する基準画像となる参照画像とを比較することで前記レチクルの欠陥検査を行う方法であって、
前記センサアンプは画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能であり、
前記欠陥検査の前に、前記レチクルのパターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶するステップと、
記憶された各画素のボトム値に基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するステップと、
前記各画素の信号振幅のオフセットと、記憶された各画素のピーク値とに基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するステップとを含むことを特徴とするレチクル欠陥検査方法。
【請求項2】
前記画像センサは複数段のラインを有するTDIセンサであることを特徴とする請求項1記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項3】
前記各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、前記レチクルの相対移動速度が、前記画像センサの画素寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くされることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項4】
前記各画素のボトム値及びピーク値を記憶する際に、前記画像センサの相対移動方向に概略平行なレチクルパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するステップと、
取得されたエッジ位置から前記レチクルの回転誤差量を算出するステップと、
算出された回転誤差量に基づいて、前記レチクルの回転アライメントを実行するステップとを更に含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項5】
前記レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記ボトム値及びピーク値を記憶することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査方法。
【請求項6】
パターンが形成されたレチクルに光を照射する光照射機構と、
前記レチクルを保持するステージを駆動する駆動手段と、
前記レチクルの透過光もしくは反射光の光量信号を複数の画素で検出する画像センサと、
前記画像センサの各画素の出力を画素毎に増幅し、光学画像を生成すると共に、画素毎に信号振幅のゲイン及びオフセットを調整可能なセンサアンプと、
前記光学画像に対する基準画像となる参照画像を生成する参照画像生成手段と、
前記光学画像と前記参照画像とを比較することにより、前記レチクルのパターンの欠陥を検査する検査手段とを備えたレチクル欠陥検査装置であって、
前記検査手段による検査の前に、前記駆動手段により前記ステージを駆動して前記パターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された各画素のボトム値に基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のオフセットを設定するオフセット設定手段と、
前記各画素の信号振幅のオフセットと前記記憶手段により記憶された各画素のピーク値とに基づいて、前記センサアンプの各画素の信号振幅のゲインを設定するゲイン設定手段とを備えたことを特徴とするレチクル欠陥検査装置。
【請求項7】
前記画像センサは前記光量信号を複数段のラインで蓄積するTDIセンサであることを特徴とする請求項6記載のレチクル欠陥検査装置。
【請求項8】
前記記憶手段により前記ボトム値及びピーク値を記憶する際の前記ステージの駆動速度が、前記画像センサの画素寸法と撮像周期で決まる画素移動速度に比して遅くされることを特徴とする請求項6又は請求項7記載のレチクル欠陥検査装置。
【請求項9】
前記画像センサの相対移動方向に概略平行なレチクルのパターンの複数箇所のエッジ位置を取得するエッジ位置取得手段と、
前記エッジ位置取得手段により取得されたエッジ位置から前記レチクルの回転誤差量を算出する回転誤差量算出手段と、
前記回転誤差量算出手段により算出された回転誤差量に基づいて、前記レチクルの回転アライメントを実行するアライメント手段とを更に備えたことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査装置。
【請求項10】
前記レチクルのメインチップ領域に形成された製品パターンの一部を前記画像センサにより撮像し、前記センサアンプにより増幅された各画素の光量信号のボトム値及びピーク値を前記記憶手段により記憶することを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載のレチクル欠陥検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−300426(P2009−300426A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19905(P2009−19905)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]