説明

レドックスキャパシタ及びその作製方法

【課題】室温で使用可能なレドックスキャパシタ及びその作製方法を提供する。
【解決手段】レドックスキャパシタの電解質として、水素を含む非晶質半導体を用いる。水素を含む非晶質半導体の代表例としては、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、または非晶質ゲルマニウム等の半導体元素を有する非晶質半導体がある。また、水素を含む非晶質半導体の他の例としては、水素を含む酸化物半導体があり、代表例としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化バナジウム、または酸化インジウム等の一元系酸化物半導体を有する非晶質半導体がある。または、水素を含む酸化物半導体の他の例としては多元系酸化物半導体があり、代表的にはInMO(ZnO)(m>0、MはGa、Fe、Ni、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素)がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスキャパシタ及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気化学キャパシタの開発が行われている。電気化学キャパシタには、電極及び電解液の界面において正と負の電荷が静電的に蓄積された容量を利用する電気二重層キャパシタ(EDLC(Electric Double−Layer Capacitor))と、電極表面での電子移動過程(ファラデー過程)を伴って蓄積された容量を利用するレドックスキャパシタがある。
【0003】
レドックスキャパシタの電解質としては、硫酸や塩酸などの酸性水溶液や、硫酸水素セシウム等が用いられている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−109875号公報
【特許文献2】特開2007−123833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸性水溶液をレドックスキャパシタの電解質として用いると電極が腐食してしまうという問題がある。また、硫酸水素セシウムをレドックスキャパシタの電解質として用いる場合、硫酸水セシウムが構造相転移を起こす143℃付近以上で使用しなければならない。一方、室温で使用するためには、水分が必要であり、湿度を高めた雰囲気で使用しなければならず、レドックスキャパシタの大型化が問題であった。
【0006】
本発明の一態様では、室温で使用可能なレドックスキャパシタ及びその作製方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、レドックスキャパシタの電解質として、水素を含む非晶質半導体を用いることを特徴とする。水素を含む非晶質半導体としては、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、または非晶質ゲルマニウムがある。または、水素を含む非晶質半導体としては、水素を含む酸化物半導体があり、水素を含む酸化物半導体の代表例としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化バナジウム、または酸化インジウムがある。または、水素を含む非晶質半導体としては、In−M−Zn−酸化物半導体(MはAl、Ga、Fe、Ni、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素)があり、非晶質構造中にInMO(ZnO)(m>0)の結晶を含んでいてもよい。更には、In−M−Zn−酸化物半導体中に窒素を含んでいてもよい。窒素を含むことでIn−M−Zn−酸化物半導体の水素濃度を高めることができる。
【0008】
本発明の一態様は、レドックスキャパシタの電解質を、スパッタリング法、CVD法、印刷法、ゾルゲル法、ディップコート法等を用いて形成することを特徴とする。または、基板若しくは活物質上に非晶質半導体を堆積した後、水素を含む雰囲気で加熱して水素を含む非晶質半導体を電解質として形成することを特徴とする。または、基板若しくは活物質上に非晶質半導体を堆積した後、イオンドーピング法またはイオン注入法により非晶質半導体に水素を添加して、水素を含む非晶質半導体を電解質として形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様により、室温で動作が可能であり、且つ簡便な構造のレドックスキャパシタを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】レドックスキャパシタの構造を説明する断面図である。
【図2】レドックスキャパシタの充電機構を説明する図である。
【図3】レドックスキャパシタの構造を説明する断面図である。
【図4】レドックスキャパシタの構造を説明する上面図である。
【図5】レドックスキャパシタの構造を説明する断面図である。
【図6】レドックスキャパシタの構造を説明する断面図である。
【図7】レドックスキャパシタのサイクリックボルタモグラムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではないとする。なお、説明中に図面を参照するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。また、同様のものを指す際には同じハッチパターンを使用し、特に符号を付さない場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態では、レドックスキャパシタの構造の一形態について図1を用いて説明する。
【0013】
基板100上に形成される第1の集電体102と、第1の集電体102上に形成される第1の活物質104と、第1の活物質104上に形成される電解質106と、電解質106上に形成される第2の活物質108と、第2の活物質108上に形成される第2の集電体110とを有する。
【0014】
基板100は、ガラス、石英、アルミナ等のセラミック、プラスチックを用いることができる。なお、プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルム、またはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。
【0015】
第1の集電体102及び第2の集電体110の一方は正極集電体として機能し、他方は負極集電体として機能する。第1の集電体102及び第2の集電体110は、アルミニウム、ニッケル、チタン、銅、金、銀、白金、コバルト等の単体、合金あるいは化合物を用いる。
【0016】
また、第1の集電体102及び第2の集電体110は、活性炭などの導電性カーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性ポリマーを用いることができる。
【0017】
なお、図1においては図示していないが、第1の集電体102及び第2の集電体110の一方は正極端子または負極端子の一方に接続し、第1の集電体102及び第2の集電体110の他方は正極端子または負極端子の他方に接続する。
【0018】
第1の活物質104及び第2の活物質108の一方は正極活物質として機能し、他方は負極活物質として機能する。
【0019】
第1の活物質104及び第2の活物質108は、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化鉄等の一または複数を用いることができる。
【0020】
なお、第1の集電体102及び第2の集電体110に、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性ポリマーを用いる場合は、第1の活物質104及び第2の活物質108を設けずとも、導電性ポリマーが集電体と共に活物質として機能する。
【0021】
電解質106は、固体の水素を含む非晶質半導体で形成する。水素を含む非晶質半導体の代表例としては、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、または非晶質ゲルマニウム等の半導体元素を有する非晶質半導体がある。また、水素を含む非晶質半導体の他の例としては、水素を含む酸化物半導体があり、代表的には酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化バナジウム、または酸化インジウム等の一元系酸化物半導体がある。さらに、水素を含む酸化物半導体の他の例として、代表的にはIn−M−Zn−酸化物半導体(MはAl、Ga、Fe、Ni、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素)等の多元系酸化物半導体があり、非晶質構造中にInMO(ZnO)(m>0)の結晶を含んでいてもよい。更には、In−M−Zn−酸化物半導体中に窒素を含んでいてもよい。窒素を含むことでIn−M−Zn−酸化物半導体の水素濃度を高めることができる。
【0022】
また、水素を含む酸化物半導体として上記の他にも、In−Sn−酸化物半導体、In−Sn−Zn−酸化物半導体、In−Al−Zn−酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−酸化物半導体、Al−Ga−Zn−酸化物半導体、Sn−Al−Zn−酸化物半導体、In−Zn−酸化物半導体、Sn−Zn−酸化物半導体、またはAl−Zn−酸化物半導体を適用することができる。また上記金属酸化物に酸化シリコンを含ませてもよい。
【0023】
水素を含む酸化物半導体は、水和酸化物であってもよい。水和酸化物の好ましい水和数は金属の種類によって異なる。
【0024】
なお、レドックスキャパシタの周りに保護層112を設けてもよい。保護層112は、窒化シリコン、DLC(Diamond Like Carbon)、酸化シリコン等を用いることができる。レドックスキャパシタの周りに保護層112を設けることで、レドックスキャパシタの安定な動作が可能であり、劣化を低減することができる。
【0025】
本実施の形態に示すレドックスキャパシタの充放電機構について、以下に説明する。ここでは、水素を含む酸化物半導体(Mは金属、Oは酸素を示す。)で電解質を形成したレドックスキャパシタを用いて説明する。
【0026】
充電反応の場合、外部からレドックスキャパシタに電圧を印加すると、図2(A)に示すようにO1と結合しているH400が、図2(B)に示すようにO2に転位した後、図2(C)に示すようにO2と結合を形成する。このように、水素を含む非晶質半導体に電圧を印加することで、非晶質半導体中の正極側の水素がプロトンホッピングにより拡散し負極へと移動する。この結果、電子が正極から負極へと移動するめ、充電をすることができる。結晶性半導体と比較して、非晶質半導体は欠陥が多いため、水素がプロトンホッピングしやすい。
【0027】
放電反応の場合、図2(C)、図2(B)、図2(A)の順に、充電反応とは逆の反応により、非晶質半導体中の負極側の水素がプロトンホッピングにより拡散し正極へ移動すると共に、電子が負極から正極へ流れるため、電流が流れる。
【0028】
なお、非晶質半導体が、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、または非晶質ゲルマニウムの場合も同様に、欠陥が多いため、当該欠陥を介するプロトンホッピングにより水素が電極間を移動し、充放電が可能である。
【0029】
以上のことから、電解質に水素を含む非晶質半導体を用いることで、レドックスキャパシタを作製することができる。
【0030】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる構造のレドックスキャパシタの構造について、図3を用いて説明する。
【0031】
図3(A)に示すレドックスキャパシタは、基板120上に形成される電解質126と、電解質126上に形成される第1の活物質124及び第2の活物質128と、第1の活物質124上に形成される第1の集電体122と、第2の活物質128上に形成される第2の集電体130とを有する。
【0032】
図3(B)に示すレドックスキャパシタは、基板140上に形成される第1の集電体142及び第2の集電体150と、第1の集電体142上に形成される第1の活物質144と、第2の集電体150上に形成され第2の活物質148と、第1の集電体142及び第2の集電体150の側面並びに第1の活物質144及び第2の活物質148の上面及び側面を覆う電解質146を有する。
【0033】
図3に示す第1の集電体122、142、及び第2の集電体130、150は、実施の形態1に示す第1の集電体102、第2の集電体110と同様の材料を用いることができる。
【0034】
図3に示す第1の活物質124、144、及び第2の活物質128、148は、実施の形態1に示す第1の活物質104及び第2の活物質108と同様の材料を用いることができる。
【0035】
図3に示す電解質126、146は、実施の形態1に示す電解質106と同様の材料を用いることができる。
【0036】
なお、レドックスキャパシタの周りに保護層132、152を設けてもよい。保護層132、152としては、実施の形態1に示す保護層112と同様の材料を用いることができる。
【0037】
図3(A)に示すレドックスキャパシタの上面図を図4に示す。
【0038】
図4(A)に示すように、第1の集電体122と第2の集電体130を平行に配置することができる。また、図4(B)に示すように、第1の集電体122と第2の集電体130を櫛型にすることができる。このように第1の集電体122及び第2の集電体130を平行または櫛型とすることで、第1の集電体122と第2の集電体130の対向面積を広げることが可能であり、レドックスキャパシタの放電容量を増加させることができる。
【0039】
なお、第1の集電体122は正極端子及び負極端子の一方136に接続し、第2の集電体130は正極端子及び負極端子の他方134に接続する。ただし、集電体と正極端子または負極端子の接続方法を限定するものではなく、集電体と正極端子または負極端子の組み合わせは適宜変更しても構わない。
【0040】
なお、図3(B)に示すレドックスキャパシタの第1の集電体142と第2の集電体150も、図4に示す形状とすることができる。
【0041】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2より容量を増大させることが可能なレドックスキャパシタに関して、図5を用いて説明する。本実施の形態に示すレドックスキャパシタは、基板上に形成される第1の集電体または電解質が凹凸状であることを特徴とする。
【0042】
図5(A)に示すレドックスキャパシタは、基板160上に形成される凹凸状の第1の集電体162と、第1の集電体162上に形成される第1の活物質164と、第1の活物質164上に形成される電解質166と、電解質166上に形成される第2の活物質168と、第2の活物質168上に形成される第2の集電体170とを有する。
【0043】
図5(B)に示すレドックスキャパシタは、基板180上に形成される凹凸状の電解質186と、電解質186上に形成される第1の活物質184及び第2の活物質188と、第1の活物質184上に形成される第1の集電体182と、第2の活物質188上に形成される第2の集電体190とを有する。
【0044】
図5(C)に示すレドックスキャパシタは、基板200上に形成される凹凸状の第1の集電体202及び第2の集電体210と、第1の集電体202上に形成される第1の活物質204と、第2の集電体210上に形成され第2の活物質208と、第1の集電体202及び第2の集電体210の側面並びに第1の活物質204及び第2の活物質208の上面及び側面を覆う電解質206を有する。
【0045】
図5に示す第1の集電体162、182、202、及び第2の集電体170、190、210は、実施の形態1に示す第1の集電体102、第2の集電体110と同様の材料を用いることができる。
【0046】
図5に示す第1の活物質164、184、204、及び第2の活物質168、188、208は、実施の形態1に示す第1の活物質104及び第2の活物質108と同様の材料を用いるこことができる。
【0047】
図5に示す電解質166、186、206は、実施の形態1に示す電解質106と同様の材料を用いることができる。
【0048】
なお、レドックスキャパシタの周りに保護層172、192、212を設けてもよい。保護層172、192、212としては、実施の形態1に示す保護層112と同様の材料を用いることができる。
【0049】
基板上に形成する集電体を凹凸状とすることで、その上に積層される活物質及び電解質の接触面積が増大する。また、基板上に形成する電解質を凹凸状にすることで、その上に形成される活物質と電解質との接触面積が増大する。このため、実施の形態1及び実施の形態2と比較してレドックスキャパシタの放電容量を増大させることができる。
【0050】
(実施の形態4)
本実施の形態では、レドックスキャパシタの作製方法について説明する。本実施の形態では、実施の形態1に示すレドックスキャパシタの作製方法について説明する。
【0051】
図1に示すように、基板100上に第1の集電体102を形成する。第1の集電体102は、スパッタリング法、蒸着法、めっき法、印刷法、CVD法、インクジェット法等を用いて形成する。
【0052】
次に、第1の集電体102上に第1の活物質104を形成する。第1の活物質104は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法等を用いて形成する。
【0053】
次に、第1の活物質104上に電解質106を形成する。電解質106は、スパッタリング法、CVD法、印刷法、ゾルゲル法、ディップコート法、インクジェット法等を用いて形成する。
【0054】
スパッタリング法を用いて電解質106を形成する場合は、水素を含む半導体をターゲットに用い、スパッタリングガスとして希ガス、若しくは希ガス及び水素を用いてスパッタリングして、第1の活物質104上に、水素を含む非晶質半導体を堆積することができる。なお、スパッタリングガスに水素を用いる場合は、ターゲットは水素を含まなくともよい。代表的には、水素を含むシリコンターゲット、水素を含むゲルマニウムターゲット、または水素を含むシリコンゲルマニウムターゲットと、スパッタリングガスとして希ガスまたは/及び水素とを用いてスパッタリングして、非晶質シリコン、非晶質ゲルマニウム、または非晶質シリコンゲルマニウムを堆積する。または、水素を含む酸化亜鉛、水素を含む酸化チタン、水素を含む酸化ニッケル、水素を含む酸化バナジウム、水素を含む酸化インジウム、または水素を含むIn−M−Zn−酸化物半導体(MはAl、Ga、Fe、Ni、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素)をターゲットとして用い、スパッタリングガスとして希ガスまたは/及び水素を用いてスパッタリングして、第1の活物質104上に、水素を含む非晶質半導体を堆積することができる。なお、スパッタリングガスに水素を用いる場合は、ターゲットは水素を含まなくともよい。さらには、反応性スパッタリングを用いることができる。代表的には、亜鉛、チタン、ニッケル、バナジウム、インジウム、またはIn−M−Zn(MはAl、Ga、Fe、Ni、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素)をターゲットとして用い、スパッタリングガスとして希ガス及び酸素、若しくは希ガス、酸素及び水素を用いてスパッタリングして、第1の活物質104上に、水素を含む非晶質半導体を堆積することができる。なお、ターゲットに水素が含まれる場合は、スパッタリングガスに水素を用いなくともよい。
【0055】
または、CVD法を用いて電解質106を形成する場合は、原料ガスに水素原子を含むガスを用いたCVD法によって、水素を含む非晶質半導体を第1の活物質104上に堆積することができる。代表的には、シラン、ジシラン、または/及びゲルマンを用いたプラズマCVD法により、第1の活物質104上に、水素を含む非晶質半導体を堆積することができる。なお、原料ガスに水素、若しくは水素及び希ガスを用いてもよい。
【0056】
次に、電解質106上に、第2の活物質108を形成する。第2の活物質108は第1の活物質104と同様に形成することができる。
【0057】
次に、第2の活物質108上に第2の集電体110を形成する。第2の集電体110は、第1の集電体102と同様に形成することができる。
【0058】
この後、スパッタリング法、CVD法等により保護層112を形成してもよい。また、粘着性シートを貼り付けてもよい。
【0059】
以上の工程により、レドックスキャパシタを作製することができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、実施の形態1に示す構造のレドックスキャパシタの作製方法を説明したが、適宜実施の形態2または実施の形態3に示す構造のレドックスキャパシタの作製方法に適用することができる。なお、実施の形態2の図3に示すレドックスキャパシタ、並びに実施の形態3の図5(B)及び図5(C)に示すレドックスキャパシタは、第1の集電体と第2の集電体を同時に形成することが可能である。また、第1の活物質と第2の活物質を同時に形成することが可能である。このため、レドックスキャパシタの作製工程数を削減することができる。
【0061】
また、実施の形態3に示す凹凸状の第1の集電体162、凹凸状の電解質186、及び凹凸状の第1の集電体202及び第2の集電体210は、基板上に薄膜を形成し、薄膜上に凹凸状のレジストマスクをフォトリソグラフィ工程により形成した後、当該レジストマスクを用いて基板上の薄膜を異方性エッチングすることにより、形成することができる。なお、凹凸状のレジストマスクは、ハーフトーンマスクまたはグレートーンマスクを用いたフォトリソグラフィ工程により形成することができる。また、ステッパによる縮小投影露光により凹凸状のレジストマスクを形成することができる。
【0062】
本実施の形態では、半導体製造装置を用いて複数のレドックスキャパシタを同一基板上に作製することが可能であるため、生産性を高めることができる。
【0063】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4と異なる電解質106の作製方法について、説明する。
【0064】
本実施の形態では、第1の活物質104上に非晶質半導体を形成した後、非晶質半導体に水素を添加することを特徴とする。代表的には、非晶質半導体を第1の活物質104上に堆積した後、水素雰囲気で加熱することで、水素を含む非晶質半導体を電解質106として形成することができる。または、非晶質半導体を第1の活物質104上に堆積した後、イオンドーピング法またはイオン注入法により非晶質半導体に水素を添加して、水素を含む非晶質半導体を電解質106として形成することができる。
【0065】
本実施の形態では、半導体製造装置を用いて複数のレドックスキャパシタを同一基板上に作製することが可能であるため、生産性を高めることができる。
【0066】
(実施の形態6)
実施の形態1乃至実施の形態3に示すレドックスキャパシタの封止構造について、図6を用いて説明する。本実施の形態では実施の形態2に示すレドックスキャパシタを用いて説明する。
【0067】
図6(A)に示すように、レドックスキャパシタを封止部材302で封止する。この場合、図示しないが、第1の集電体122に接続する外部端子と、第2の集電体130に接続する外部端子が封止部材302の外部に突出している。なお、封止部材302の内部は、減圧されていてもよい。または、不活性ガスが充填されていてもよい。封止部材302としては、ラミネートフィルム、金属封止缶等を用いることができる。また、図6(A)においては、レドックスキャパシタが形成された基板を複数積層し、それぞれのレドックスキャパシタを直列または並列に接続してもよい。
【0068】
また、図6(B)に示すように、レドックスキャパシタを有機樹脂304で封止することができる。この場合、図示しないが、第1の集電体122に接続する外部端子と、第2の集電体130に接続する外部端子が有機樹脂304の外部に突出している。実施の形態1乃至実施の形態3に示すレドックスキャパシタは電解質が固体であるため、有機樹脂304での封止が容易となる。なお、図6(B)においては、レドックスキャパシタが形成された基板を複数積層し、それぞれのレドックスキャパシタを直列または並列に接続したものを有機樹脂304で封止してもよい。
【0069】
異なる基板上に形成されたレドックスキャパシタを直列に接続することにより、充放電の電圧を大きくすることができる。また、異なる基板上に形成されたレドックスキャパシタを並列に接続することにより、静電容量を増大させることができる。
【実施例1】
【0070】
本実施例では、電解質に水素を含むIn−Ga−Zn酸化物半導体を用いたレドックスキャパシタの作製方法及び当該レドックスキャパシタの電気特性をサイクリックボルタンメトリにより測定した結果を示す。
【0071】
ガラス基板上にスパッタリング法により厚さ100nmの水素を含むIn−Ga−Zn−酸化物半導体を電解質として形成した。このときの成膜条件を以下に示す。ターゲットの組成をIn:Ga:Zn=1:1:0.5、スパッタリングガスを30sccmのArと15sccmのO、圧力を0.4Pa、供給電力を0.5kW、電極間距離を60mm、成膜温度を室温とした。ガラス基板上に堆積したIn−Ga−Zn−酸化物半導体の組成は電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe X−ray MicroAnalyzer)分析で、O:Ga:In:Zn=61.3:15.8:16.8:6であった。また、二次イオン質量分析計(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)による水素の濃度は7×1020atoms/cmであった。
【0072】
次に、集電体として厚さ0.5mm、幅10mm、長さ63mmのカーボン板を2つ準備し、当該カーボン板に酸化ルテニウムを含む混練物を塗布した後、酸化ルテニウムを含む混練物が塗布された面を電解質に押圧した。このときの2つのカーボン板の間隔を1mmとした。また、このときの酸化ルテニウム混練物は、0.05gの酸化ルテニウムと1mlの水とを混錬したものを使用した。
【0073】
次に、二つのカーボン板の間の絶縁性を保つために、露出しているIn−Ga−Zn−酸化物半導体に粘着性シートを圧着してレドックスキャパシタを作製した。
【0074】
次に、レドックスキャパシタの電気特性をサイクリックボルタンメトリにより測定した。このときの測定条件は、充放電の電圧を0V〜1V、スキャン速度を100mV/s、サイクル数を5回、測定間隔を100msとした。このときのサイクリックボルタモグラムを図7に示す。
【0075】
図7から、電解質にIn−Gz−Zn−酸化物半導体を用いたレドックスキャパシタを作製することができたことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む非晶質半導体で形成された電解質を有することを特徴とするレドックスキャパシタ。
【請求項2】
請求項1において、前記水素を含む非晶質半導体は、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、または非晶質ゲルマニウムであることを特徴とするレドックスキャパシタ。
【請求項3】
請求項1において、前記水素を含む非晶質半導体は、水素を含む酸化物半導体であることを特徴とするレドックスキャパシタ。
【請求項4】
請求項3において、前記水素を含む酸化物半導体は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化バナジウム、または酸化インジウムであることを特徴とするレドックスキャパシタ。
【請求項5】
請求項3において、前記水素を含む非晶質半導体は、In−M−Zn−酸化物半導体(MはAl、Ga、Fe、Ni、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素)であることを特徴とするレドックスキャパシタ。
【請求項6】
基板上に形成され、且つ第1の集電体に接する第1の活物質上に、水素を含む非晶質半導体を用いて電解質を形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項7】
請求項6において、前記電解質に接する第2の活物質及び前記第2の活物質に接する第2の集電体を形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項8】
基板上に水素を含む非晶質半導体を用いて電解質を形成した後、前記電解質に接する第1の活物質及び第2の活物質を形成し、前記第1の活物質に接する第1の集電体、及び前記第2の活物質に接する第2の集電体を形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項9】
基板上に第1の集電体及び第2の集電体を形成し、前記第1の集電体に接する第1の活物質を形成し、前記第2の集電体に接する第2の活物質を形成した後、前記第1の活物質及び前記第2の活物質に接する、水素を含む非晶質半導体を用いて電解質を形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか一項において、前記電解質は、水素を含むターゲットをスパッタリングして形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項11】
請求項6乃至9のいずれか一項において、前記電解質は、ターゲットを水素でスパッタリングして形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項12】
請求項6乃至9のいずれか一項において、前記電解質は、水素原子を含む原料ガスを用いたCVD法により形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項13】
請求項6乃至9のいずれか一項において、前記基板、前記第1の活物質、または前記第2の活物質上に非晶質半導体を堆積した後、水素雰囲気で加熱して、前記電解質として前記水素を含む非晶質半導体を形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。
【請求項14】
請求項6乃至9のいずれか一項において、前記基板、前記第1の活物質、または前記第2の活物質上に非晶質半導体を堆積した後、前記非晶質半導体に水素を添加して、前記電解質として前記水素を含む非晶質半導体を形成することを特徴とするレドックスキャパシタの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97030(P2011−97030A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208802(P2010−208802)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】