説明

レーザを用いた部材の接合方法

【課題】 部材の材料に限定されることなく確実に部材同士を接合させることができるレーザを用いた部材の接合方法を提供する。
【解決手段】 互いに重ね合わされた第1部材11が半導体レーザ光を透過するアクリル材料で形成され、第2部材12がスズ製である。第2部材12の境界面がサンドペーパで荒された溝本数密度で0.03[/μm]以上である凹凸状の境界面12aにされ、境界面12aでのレーザ光吸収率が17%以上にされている。第1及び第2部材11,12の境界に半導体レーザ光を照射することにより、第2部材の境界面12aにおいて半導体レーザ光が吸収され、境界面12a付近のアクリル材料を局所的に溶融あるいは軟化させる。溶融あるいは軟化したアクリル樹脂が境界面12aに接着して凹凸に食い込むことによるアンカー効果によって、両部材間に強固な接合が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに重ね合わされた少なくとも一方が半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する樹脂材料で形成された同種あるいは異種材料からなる2つの部材の境界面に半導体レーザ光又はYAGレーザ光を照射することにより両部材間を接合させるレーザを用いた部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレーザを用いた部材の接合方法としては、例えば非特許文献1に示すように、重ね合せた2枚の熱可塑性樹脂板に半導体レーザを照射し、2枚の樹脂板の境界面でレーザ光を吸収させて両者を局所的に溶融して接合するレーザラップ接合法が知られている。また、これに類似した部材の接合方法としては、例えば非特許文献2に示すように、レーザ光吸収剤を塗布した2枚のガラス板を重ね合せ、YAGレーザを照射することにより両者を接合させる接合法が知られている。
【非特許文献1】長谷川達也,他,「レーザによる熱可塑性プラスチックのラップ接合」,日本機械学会論文集(C編),日本機械学会発行,2001年9月,第67巻,第611号,pp.2997−3001
【非特許文献2】船山 強,他,「YAGレーザによるガラス基板のマイクロ接合法(第1報)−レーザ透過性を利用したガラス界面の接合法の提案とその可能性検証−」,精密工学会誌,精密工学会発行,2002年9月,第68巻,第9号,pp.1231−1235
【0003】
このように、レーザ光を用いて同種あるいは異種材料からなる2つの部材、例えば樹脂材料製の部材同士あるいはガラス板同士を接合させることにより、有機溶剤系の接着剤が不要となるので、接着剤塗布の手間を省くことができ、また接着剤による環境汚染を防止できるので、家電製品、食品包装、医療器具等の広い分野での利用が期待されている。また、特に樹脂製部材と金属製部材をレーザ光照射により接合させることができれば、自動車や家電製品を中心としてさらに用途が拡大されると予想される。
【0004】
しかし、上記従来技術は、いずれも同種の樹脂板同士あるいはガラス板同士を接合させるものであって、異なった種類の樹脂材料同士、あるいは樹脂と金属材料、樹脂とセラミック材料のような異種の材料を接合させるものではなく、そのため適用範囲が非常に限定されるものであった。さらに、上記従来技術によれば、レーザ光を吸収させる物質等を接合する一方の部材中に混入したり、2枚の部材の間に挟むものであるため、加工方法や用途が限定され、また接合のコストも高価になるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決しようとするもので、部材の材料に限定されずに確実に部材同士を接合させることができるレーザを用いた部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の特徴は、互いに重ね合わされた一方が半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する材質で形成された第1部材及び第2部材の境界面に半導体レーザ光又はYAGレーザ光を照射することにより第1及び第2部材間を接合させる接合方法であって、半導体レーザ光又はYAGレーザ光の照射前に、第1及び第2部材の少なくとも一方の境界面が、半導体レーザ光又はYAGレーザ光を吸収可能なように凹凸状態にされており、凹凸状態が溝本数密度で0.03[/μm]以上であると共に、境界面におけるレーザ光吸収率が17%以上であり、半導体レーザ光又はYAGレーザ光の吸収によって第1部材及び/又は第2部材を溶融あるいは軟化させることにより、第1及び第2部材間を接合させることにある。ここで、溝本数密度γ[/μm]は、長さ1μmあたりの溝の本数を示すものであり、γ=tan(Δa)/2Raで表される。溝本数密度γの算出については、凹凸状にされた部材表面の粗さを表面粗さ計(例えば株式会社東京精密製)によって測定し、算術平均粗さRaと算術平均傾斜Δaを求め、これに基づいて行われる。なお、境界面の凹凸状態の形成については、樹脂材料、セラミック材料の場合は、例えばサンドペーパを用いた研磨処理、サンドブラスト処理、成形型の凹凸面による成形等により行われ、金属材料の場合は、サンドペーパを用いた研磨処理、サンドブラスト処理に加えて放電加工、エッチング加工、プレス加工等による処理が可能である。
【0007】
本発明においては、半導体レーザ光又はYAGレーザ光の照射前に、互いに重ね合わされた第1及び第2部材の少なくとも一方の境界面が荒されて溝本数密度で0.03[/μm]以上の凹凸状態になっており、半導体レーザ光又はYAGレーザ光が凹凸状態にされた境界面でレーザ光吸収率が17%以上で吸収される。そのため、境界面周囲の材料が加熱されて局所的に溶融あるいは軟化することにより、両部材間に接合が形成される。その結果、本発明によれば、部材の材料に限定されず、しかも部材間に接着剤等の余分の材料を介在させることなく簡易かつ確実に部材同士を接合させることができる。また、第1部材と第2部材が異種材料で形成されていても、荒された境界面において半導体レーザ光又はYAGレーザ光が吸収され、境界面周囲の材料を局所的に溶融あるいは軟化させることができるため、両部材間に接合を形成することが可能になる。
【0008】
また、本発明において、第1及び第2部材を共に樹脂材料製とすることができる。それにより、凹凸状に荒された境界面において半導体レーザ光又はYAGレーザ光が吸収されて、境界面両側の同種あるいは異種の樹脂材料が局所的に溶融あるいは軟化して両部材間に接合が形成される。第1,第2部材が異種の樹脂材料製である場合は、少なくとも一方の部材の境界面における凹凸状に荒された部分で半導体レーザ光又はYAGレーザ光が吸収され、境界面周囲の樹脂が部分的に溶融あるいは軟化し、溶融あるいは軟化による接合と共に溶融あるいは軟化した樹脂が境界面に設けた凹凸に対して食い込むいわゆるアンカー効果が生じる。その結果、樹脂の冷却後に、異種の樹脂同士の熱膨張の違いによる境界面でのひずみに対しても、接合力が有効に発揮され、異質の樹脂材料製の部材間にも強固な接合が形成される。
【0009】
また、本発明において、第1及び第2部材の境界面に、部分的に接合を形成することができる。このように、境界面に部分的に接合を形成することによっても、第1及び第2部材間を接合させることができる。例えば、第1部材と第2部材の境界面に部分的に凹凸状態を形成しておくことにより、半導体レーザ光又はYAGレーザ光は凹凸部分でのみ吸収されるので、凹凸部分でのみ接合を形成することができる。
【0010】
また、本発明において、境界面の凹凸状態が、樹脂材料による部材成形時に、成形型の型面に設けた凹凸より一体で形成されたものであってもよい。このように、部材形成用の成形型の型面により形成された凹凸により、境界面の凹凸状態を樹脂材料による成形時に簡易に形成することができる。
【0011】
また、本発明において、第1及び第2部材のいずれか一方の部材が半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する樹脂材料製であり、他方の部材が金属製又はセラミック製又はガラス製であり、他方の部材の境界面が凹凸状態にされていてもよい。これにより、金属製又はセラミック製又はガラス製である他方の部材の境界面における凹凸状に荒された部分で半導体レーザ光又はYAGレーザ光が吸収され、樹脂材料製の一方の部材が部分的に溶融あるいは軟化し、溶融あるいは軟化した樹脂が金属製等の他方の部材の境界面に接着すると共に、境界面に設けた凹凸に対して食い込むいわゆるアンカー効果が生じる。そのため、樹脂の冷却後に、両者の熱膨張の違いによる境界面でのひずみに対しても、アンカー効果による接合力が有効に発揮される。その結果、材質の全く異なる樹脂製の部材と金属製、セラミック製あるいはガラス製の部材間に、強固な接合が形成される。
【0012】
また、本発明の第2の特徴としては、半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する樹脂製又はガラス製の第1部材と、第1部材に重ね合わされた樹脂製又は金属製又はセラミック製又はガラス製の第2部材との間に樹脂製の接合層が挟まれており、さらに半導体レーザ光又はYAGレーザ光の照射前に、第1及び第2部材の少なくとも一方の境界面が、半導体レーザ光又はYAGレーザ光を吸収可能なように凹凸状態にされており、半導体レーザ光又はYAGレーザ光の吸収によって少なくとも接合層を溶融、軟化あるいは硬化させることにより、第1及び第2部材間を接合させることにある。なお、接合層としては、液状、粒状、板状等の熱硬化性あるいは熱可塑性の樹脂材料である。
【0013】
第2の特徴によれば、例えば金属板とガラス板、ガラス板同士等のように、境界面を凹凸状態にするのみではレーザ光による接合が困難な部材の場合には、境界面において吸収されたレーザ光によって接合層を溶融、軟化あるいは硬化させることにより、凹凸状態にされた境界面の状態と合わせて、接合形成の困難な材料同士である第1及び第2部材との間の接合を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに重ね合わされた一方が半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する材質で形成された第1部材及び第2部材の境界面の凹凸状に荒された部分に半導体レーザ光又はYAGレーザ光を照射することにより、荒された境界面においてレーザ光が境界面で吸収され、境界面周囲の材料を局所的に溶融あるいは軟化させ、両部材間に接合を形成することができる。その結果、本発明においては、部材の材料に限定されず、しかも部材間に接着剤等を介在させることなく簡易かつ確実に部材同士を接合させることができる。特に、溶融あるいは軟化した樹脂が金属製等の他方の部材の境界面に設けた凹凸に対して食い込むいわゆるアンカー効果により、材質の全く異なる樹脂製の部材と金属製、セラミック製あるいは異種の樹脂製の部材間に、強固な接合が形成される。
【0015】
また、本発明においては、金属板とガラス板、ガラス板同士等のような半導体レーザ光又はYAGレーザ光の照射による接合形成が困難な場合でも、第1及び第2部材の間に樹脂製の接合層を介在させることにより、境界面において吸収されたレーザ光によって接合層を溶融、軟化あるいは硬化させることによって第1及び第2部材との間の接合を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。図1は、実施例1である樹脂材料としてアクリル樹脂製の第1部材11と、金属材料としてスズ製の第2部材12を重ね合せて、半導体レーザ光14を照射した状態を模式図により示したものである。例えば、第1部材11は厚さが3mmであり、第2部材12は厚さが0.2mmである。そして、スズ製の第2部材12の境界面12aがサンドペーパで研磨されて凹凸状にされている。ここで、サンドペーパの粗さとしては、1500番より小さければ、樹脂材料の溶融等による接合の形成が可能である。照射する半導体レーザは、波長820nm等、最大出力100W、連続発振、ビームモードTEM00(ガウス分布)であり、照射点スポット径1mm等、走査速度0.5mm/s、走査距離10mmとした。
【0017】
半導体レーザ発振器から出力されたレーザ光14は光ファイバにより伝送されてコリメータから出力され、重ね合わされた第1及び第2部材11,12の境界面付近に焦点を結ぶように照射される。これにより、第2部材12の凹凸状の境界面12aで半導体レーザ光が吸収され、境界面12a周囲のアクリル材料を局所的に溶融あるいは軟化させることにより、溶融あるいは軟化した樹脂の金属境界面12aへの接着と共に、境界面12aへの食い込みによるいわゆるアンカー効果により両部材11,12間に強固な接合を形成することができる。その結果、実施例1によれば、第1及び第2部材11,12間に接着剤等を介在させることなく簡易かつ確実に両部材11,12同士を接合させることができる。
【0018】
以上に述べたように、2枚の部材が、全く異質の材料である金属と樹脂の場合、単に界面で溶解あるいは軟化した樹脂による接合のみではなく、溶融あるいは軟化した樹脂の金属の境界面12aへの食い込みによるいわゆるアンカー効果による接合が大きく寄与し、そのために凹凸の程度を粗くする必要があるのである。サンドペーパで境界面を荒した場合の凹凸の程度とレーザ光吸収率の関係について、長さ1μmあたりの溝の本数である溝本数密度γ[/μm]=tan(Δa)/2Raにより評価した。溝本数密度γの算出については、凹凸状にされた部材表面の粗さを表面粗さ計(株式会社東京精密製)によって測定し、算術平均粗さRaと算術平均傾斜Δaを求め、これに基づいて行われる。
【0019】
種々の番手のサンドペーパにより形成された凹凸面のレーザ光吸収率についての測定結果を図2に示す。この部材12の凹凸状態を示す溝本数密度γは0.04[/μm]程度となり、レーザ光吸収率も15%程度になる。そのため、境界面付近で樹脂を溶融させるために、半導体レーザの出力を大きくする必要があるが、それにより両部材11,12に損傷が生じる。第2部材12の境界面12aをサンドペーパで処理することにより溝本数密度γは0.05〜0.15[/μm]程度まで増大し、レーザ光吸収率も17〜35%程度まで向上する。
【0020】
上記実施例1においては、半導体レーザ光14の照射により、スズ製の第2部材12の境界面12aの凹凸状に荒された部分において局所的に溶融あるいは軟化したアクリル樹脂製の第1部材11が第2部材12に接着すると共に、境界面12aの凹凸に対して食い込むいわゆるアンカー効果が生じる。そのため、材質の全く異なる樹脂製の第1部材11と金属製の第2部材12間に、強固な接合が形成される。図3に示すように、レーザ出力が20W以下では良好な接合が形成されている。出力を20Wより大きくすると、大き過ぎる出力のために両部材11,12に損傷が生じる結果となった。また、第2部材12の厚さを3mmにすると、第2部材12内の熱伝導による熱の散逸が大きくなるため、レーザ出力を40〜60Wに上げることにより良好な接合が得られた。
【0021】
なお、実施例1では、第2部材12の境界面にサンドペーパを用いて研磨処理を行い凹凸状態を形成しているが、これに代えてサンドブラスト処理により境界面を簡単に凹凸状態に荒すことができる。サンドブラストで第2部材12を荒した場合の境界面12aのレーザ光吸収率についての測定結果を図2に示す。その結果、溝本数密度γが略0.03〜0.1[/μm]程度の範囲で、レーザ光吸収率が略27〜37%程度となり、この範囲で境界面の接合が安定して形成された。
【0022】
また、上記実施例1においては、金属としてスズが使用されているが、これに限らず、アルミニウム,鉄,銅等の他の金属に対しても適用され、境界面を上記凹凸状態とすることにより使用可能である。また、樹脂についてもアクリルに限らず他の樹脂材料を用いることも可能である。図3に示すように、例えばアルミニウムについて、板厚を0.2mmとした場合、レーザ出力を20〜60Wに高めることにより良好な接合が得られている。また、鋼鉄について、板厚を0.2mmとした場合、レーザ出力を20〜30Wに高めることにより良好な接合が得られている。このように、実施例1によれば、金属材料の種類に限定されず、材料の板厚及びレーザ出力を適正に設定することにより、部材間に接着剤等を介在させることなく簡易かつ確実に金属製と樹脂製の部材同士を接合させることができる。
【0023】
なお、実施例1においては、互いに異質の材質であるアクリル板等の樹脂とスズ等の金属との間の接合形成について説明しているが、金属の代りにセラミック材料、ガラス材料あるいはアクリルとは異種の樹脂材料についても、上記アンカー効果によりアクリル板等の樹脂との間に半導体レーザ光照射による接合を有効に形成することが可能である。
【0024】
つぎに、実施例2について説明する。
実施例2においては、レーザとして半導体レーザに代えて、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザを用いて板材間の接合を行ったものである。照射するYAGレーザの条件としては、波長1060nm、出力10〜150W、連続発振、ビームモードTEM00(ガウス分布)であり、照射点スポット径10,20mmであり、レーザの走査は行われていない。第1板材と第2板材の組み合わせについては、表1に示すように、樹脂と金属の組合せがNo.1:透明アクリル−スズ(SB)、No.2:透明アクリル−アルミ(SB)の2種類であり、樹脂同士の組合せがNo.3:ポリカーボネート−黒色アクリル(SB)、No.4:アセタール樹脂−黒色アクリル(SB)、の2種類である。なお、表1において、SBはサンドブラスト処理を境界面に施したことを表す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1から明かなように、透明アクリル(板厚3mm)の板材については、相手の板材が金属であるスズ(SB:板厚0.2mm)、アルミ(SB:板厚0.2mm)のいずれでもレーザ出力の調整により接合が可能であった。また、透明樹脂がポリカーボネート(板厚1mm)、アセタール樹脂(板厚1mm)でも、黒色アクリル(SB:板厚3mm)に対して接合形成が可能であった。
【0027】
以上に説明したように、実施例2では、半導体レーザに代えてYAGレーザを用いて板状部材間の接合形成を行ったものであるが、実施例1に示したと同様に、樹脂材料と金属の接合に加えて、異種の樹脂材料間の接合形成が可能であり、さらに樹脂とセラミック、ガラスとの接合形成も可能である。
【0028】
つぎに、実施例3について説明する。
実施例3においては、金属とガラスあるいはフッ化樹脂、ガラス同士のような、境界面を凹凸状態にするのみではレーザによる接合が困難な板状の第1部材と第2部材に対して、両者の境界面にフェノール、エポキシ、ポリエステル等の熱硬化性樹脂製の接着剤を塗布した接合層を設けるようにしたものである。これにより、境界面で吸収された半導体レーザ光又はYAGレーザ光によって接合層を硬化させることにより、凹凸状態にされた境界面の状態と合わせて、接合形成の困難な材料同士である第1及び第2部材との間の接合を形成することができる。なお、照射するレーザとしては、半導体レーザでもYAGレーザでも照射条件の調整により接合の形成が可能である。
【0029】
なお、上記実施例1,2,3に示したレーザを用いた部材の接合方法については、一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、互いに重ね合わされた一方が半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する材質で形成された同種あるいは異種の2つの部材の境界面の凹凸状に荒された部分に半導体レーザ光又はYAGレーザ光を照射することにより、レーザ光が境界面で吸収され、境界面周囲の材料を局所的に溶融あるいは軟化させることに加えて凹凸状の境界面のアンカー効果により、両部材間に強固な接合を形成することができるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1である半導体レーザを用いた部材の接合方法を概略的に示す模式図である。
【図2】実施例1において部材境界面に形成された凹凸の溝本数密度とレーザ光吸収率との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1においてレーザ出力に対する金属材料の接合形成結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
11…第1部材、12…第2部材、12a…境界面、14…半導体レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わされた一方が半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する材質で形成された第1部材及び第2部材の境界面に半導体レーザ光又はYAGレーザ光を照射することにより該第1及び第2部材間を接合させる接合方法であって、
前記半導体レーザ光又はYAGレーザ光の照射前に、前記第1及び第2部材の少なくとも一方の境界面が、該半導体レーザ光又はYAGレーザ光を吸収可能なように凹凸状態にされており、凹凸状態が溝本数密度で0.03[/μm]以上であると共に、境界面におけるレーザ光吸収率が17%以上であり、該半導体レーザ光又はYAGレーザ光の吸収によって前記第1部材及び/又は第2部材を溶融あるいは軟化させることにより、該第1及び第2部材間を接合させることを特徴とするレーザを用いた部材の接合方法。
【請求項2】
前記第1及び第2部材が共に樹脂材料製であることを特徴とする請求項1に記載のレーザを用いた部材の接合方法。
【請求項3】
前記第1及び第2部材の境界面に、部分的に接合を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザを用いた部材の接合方法。
【請求項4】
前記境界面の凹凸状態が、前記樹脂材料による部材成形時に、成形型の型面に設けた凹凸により一体で形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザを用いた部材の接合方法。
【請求項5】
前記第1及び第2部材のいずれか一方の部材が半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する樹脂材料製であり、他方の部材が金属製又はセラミック製又はガラス製であり、該他方の部材の境界面が凹凸状態にされていることを特徴とする請求項1に記載のレーザを用いた部材の接合方法。
【請求項6】
半導体レーザ光又はYAGレーザ光を透過する樹脂製又はガラス製の第1部材と、該第1部材に重ね合わされた樹脂製又は金属製又はセラミック製又はガラス製の第2部材との間に樹脂製の接合層が挟まれており、さらに前記半導体レーザ光又はYAGレーザ光の照射前に、前記第1及び第2部材の少なくとも一方の境界面が、該半導体レーザ光又はYAGレーザ光を吸収可能なように凹凸状態にされており、該半導体レーザ光又はYAGレーザ光の吸収によって少なくとも前記接合層を溶融、軟化あるいは硬化させることにより、該第1及び第2部材間を接合させることを特徴とするレーザを用いた部材の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−162288(P2008−162288A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16255(P2008−16255)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【分割の表示】特願2004−350252(P2004−350252)の分割
【原出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(805000018)財団法人名古屋産業科学研究所 (55)
【Fターム(参考)】