説明

レーザー加工装置

【課題】 半導体ウエーハ等の被加工物の所定位置に正確に効率よく細孔を形成することができるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】 加工送り量を検出する加工送り量検出手段374と、割り出し送り量を検出する割り出し送り量検出手段433と、被加工物に形成する細孔のX,Y座標値を記憶する記憶手段を備え該記憶手段に記憶された細孔のX,Y座標値と加工送り量検出手段374および割り出し送り量検出手段433からの検出信号に基づいてレーザー光線照射手段5を制御する制御手段10とを具備し、制御手段10は次にレーザー光線を照射すべき位置をRとし、現在のチャックテーブル36とレーザー光線照射手段との相対速度をVとし、レーザー光線の励起時間をSとすると、レーザー光線照射手段に照射信号を出力する位置rをr=R−(S×V)で求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に複数の細孔を形成するレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。
【0003】
装置の小型化、高機能化を図るため、複数の半導体チップを積層し、積層された半導体チップの電極を接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造は、半導体ウエーハにおける電極が形成された箇所に貫通孔(ビヤホール)を形成し、この貫通孔に電極と接続するアルミニウム等の導電性材料を埋め込む構成である。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2003−163323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した半導体ウエーハに設けられる貫通孔(ビヤホール)は、ドリルによって形成されている。しかるに、半導体ウエーハに設けられる貫通孔(ビヤホール)は直径が100〜300μmと小さく、ドリルによる穿孔では生産性の面で必ずしも満足し得るものではない。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、半導体ウエーハ等の被加工物の所定位置に正確に効率よく細孔を形成することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を該加工送り方向(X)と直交する割り出し送り方向(Y)に相対移動せしめる割り出し送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段との相対的な加工送り量を検出する加工送り量検出手段と、
該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段との相対的な割り出し送り量を検出する割り出し送り量検出手段と、
被加工物に形成する細孔のX,Y座標値を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された細孔のX,Y座標値と該加工送り量検出手段および該割り出し送り量検出手段からの検出信号に基づいて該レーザー光線照射手段を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、次にレーザー光線を照射すべき位置をRとし、現在の該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段との相対速度をVとし、レーザー光線の励起時間をSとすると、該レーザー光線照射手段に照射信号を出力する位置rを次式に基づいて設定する、
r=R−(S×V)
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被加工物に形成する細孔のX,Y座標値を記憶し、現在のチャックテーブルとレーザー光線照射手段との相対速度およびレーザー光線の励起時間を考慮して、次にレーザー光線を照射すべき位置より所定量手前の位置でレーザー光線照射手段に照射信号を出力ので、被加工物の所定位置に正確に効率よくレーザー加工孔を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0009】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向と直角な矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す方向に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0010】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0011】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられる。
【0012】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することができる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することができる。
【0013】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0014】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ねじロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0015】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記レーザー光線照射ユニット支持機構4の可動支持基台42の割り出し送り量を検出するための割り出し送り量検出手段433を備えている。割り出し送り量検出手段433は、案内レール41に沿って配設されたリニアスケール433aと、可動支持基台42に配設されリニアスケール433aに沿って移動する読み取りヘッド433bとからなっている。この送り量検出手段433の読み取りヘッド433bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、レーザー光線照射ユニット5の割り出し送り量を検出する。なお、上記第2の割り出し送り手段43の駆動源としてパルスモータ432を用いた場合には、パルスモータ432に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、レーザー光線照射ユニット5の割り出し送り量を検出することができる。また、上記第2の割り出し送り手段43の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、レーザー光線照射ユニット5の割り出し送り量を検出することができる。
【0016】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す方向に移動可能に支持される。
【0017】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521の先端に装着された集光器522からパルスレーザー光線を照射する。また、レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の前端部には、上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6が配設されている。この撮像手段6は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向に移動させるための移動手段53を具備している。移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザビーム照射手段52を案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザビーム照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザビーム照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、制御手段10を具備している。制御手段10はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、後述する被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、カウンター104と、入力インターフェース105および出力インターフェース106とを備えている。制御手段10の入力インターフェース105には、上記送り量検出手段374および撮像手段6等からの検出信号が入力される。そして、制御手段10の出力インターフェース106からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、後述する被加工物の設計値のデータを記憶する第1の記憶領域103aや、後述する検出値のデータを記憶する第2の記憶領域103bおよび他の記憶領域を備えている。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図2にはレーザー加工される被加工物としての半導体ウエーハ20の平面図が示されている。図2に示す半導体ウエーハ20は、シリコンウエーハからなっており、その表面20aに格子状に配列された複数の分割予定ライン201によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス202がそれぞれ形成されている。この各デバイス202は、全て同一の構成をしている。デバイス202の表面にはそれぞれ図3に示すように複数の電極203(203a〜203j)が形成されている。なお、図示の実施形態においては、203aと203f、203bと203g、203cと203h、203dと203i、203eと203jは、X方向位置が同一である。この複数の電極203(203a〜203j)部にそれぞれ貫通孔(ビヤホール)が形成される。各デバイス202における電極203(203a〜203j)のX方向(図3において左右方向)の間隔A、および各デバイス202に形成された電極203における分割予定201を挟んでX方向(図3において左右方向)に隣接する電極即ち電極203eと電極203aとの間隔Bは、図示の実施形態においては同一間隔に設定されている。また、各デバイス202における電極203(203a〜203j)のY方向(図3において上下方向)の間隔C、および各デバイス202に形成された電極203における分割予定ライン201を挟んでY方向(図3において上下方向)に隣接する電極即ち電極203fと電極203aおよび電極203jと電極203eとの間隔Dは、図示の実施形態においては同一間隔に設定されている。このように構成された半導体ウエーハ20について、図2に示す各行E1・・・・Enおよび各列F1・・・・Fnに配設されたデバイス202の個数と上記各間隔A,B,C,Dは、その設計値のデータが上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第1に記憶領域103aに格納されている。
【0021】
上述したレーザー加工装置を用い、上記半導体ウエーハ20に形成された各デバイス202の電極203(203a〜203j)部に貫通孔(ビヤホール)を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。
上記のように構成された半導体ウエーハ10は、図4に示すように環状のフレーム21に装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる保護テープ22に表面20aを上側にして貼着する。
このようにして環状のフレーム21に保護テープ22を介して支持された半導体ウエーハ20は、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープ22を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ20は、保護テープ22を介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレーム21は、クランプ362によって固定される。
【0022】
上述したように半導体ウエーハ20を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段6の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられると、チャックテーブル36上の半導体ウエーハ20は、図5に示す座標位置に位置付けられた状態となる。この状態で、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ20に形成されている格子状の分割予定ライン201がX方向とY方向に平行に配設されているか否かのアライメント作業を実施する。即ち、撮像手段6によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ20を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実行してアライメント作業を行う。
【0023】
次に、チャックテーブル36を移動して、半導体ウエーハ20に形成されたデバイス202における最上位の行E1の図5において最左端のデバイス202を撮像手段6の直下に位置付ける。そして、更にデバイス202に形成された電極203(203a〜203j)における図5において左上の電極203aを撮像手段6の直下に位置付ける。この状態で撮像手段6が電極203aを検出したならばその座標値(a1)を第1の加工送り開始位置座標値として制御手段10に送る。そして、制御手段10は、この座標値(a1)を第1の加工送り開始位置座標値としてランダムアクセスメモリ(RAM)103に格納する(加工送り開始位置検出工程)。このとき、撮像手段6とレーザー光線照射手段52の集光器522はX座標方向に所定の間隔を置いて配設されているので、X座標値は上記撮像手段6と集光器522との間隔を加えた値が格納される。
【0024】
このようにして図5において最上位の行E1のデバイス202における第1の加工送り開始位置座標値(a1)を検出したならば、チャックテーブル36を分割予定ライン201の間隔だけ矢印Yで示す方向に割り出し送りするとともに矢印Xで示す加工送り方向に移動して、図5において最上位から2番目の行E2における最左端のデバイス202を撮像手段6の直下に位置付ける。そして、更にデバイス202に形成された電極203(203a〜203j)における図5において左上の電極203aを撮像手段6の直下に位置付ける。この状態で撮像手段6が電極203aを検出したならばその座標値(a2)を第2の加工送り開始位置座標値として制御手段10に送る。そして、制御手段10は、この座標値(a2)を第2の加工送り開始位置座標値としてランダムアクセスメモリ(RAM)103の第2に記憶領域103bに格納する。このとき、撮像手段6とレーザー光線照射手段52の集光器522は上述したように座標方向に所定の間隔を置いて配設されているので、X座標値は上記撮像手段6と集光器522との間隔を加えた値が格納される。以後、上述した割り出し送りと加工送り開始位置検出工程を図5において最下位の行Enまで繰り返し実行し、各行に形成されたデバイス202の加工送り開始位置座標値(a3〜an)を検出して、これをランダムアクセスメモリ(RAM)103の第2に記憶領域103bに格納する。
【0025】
次に、半導体ウエーハ20の各デバイス202に形成された各電極203(203a〜203j)部に貫通孔(ビヤホール)を穿孔する穿孔工程を実施する。穿孔工程は、先ず加工送り手段37を作動しチャックテーブル36を移動して、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第2に記憶領域103bに格納されている第1の加工送り開始位置座標値(a1)をレーザー光線照射手段52の集光器522の直下に位置付ける。このように第1の加工送り開始位置座標値(a1)が集光器522の直下に位置付けられた状態が図6の(a)に示す状態である。図6の(a)に示す状態で制御手段10は、レーザー光線照射手段52を作動し集光器522から1パルスのレーザー光線を照射するように制御し、そしてチャックテーブル36を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の移動速度で加工送りするように上記加工送り手段37を制御する。なお、レーザー光線照射手段52はレーザー光線を実際に照射するまでに1μ秒程度の励起時間を要するため、制御手段10はこの励起時間が経過した後に上記加工送り手段37を制御する。従って、第1の加工送り開始位置座標値(a1)の電極203a部に1パルスのレーザー光線が照射される。このとき、集光器522から照射されるレーザー光線の集光点Pは、半導体ウエーハ20の表面20a付近に合わせる。
【0026】
一方、制御手段10は、加工送り量検出手段374の読み取りヘッド374bからの検出信号を入力しており、この検出信号をカウンター104によってカウントしている。そして、制御手段10は、チャックテーブル36従って半導体ウエーハ20の移動速度と、レーザー光線照射手段52の励起時間を考慮して、次にレーザー光線を照射すべき位置より所定量手前の位置でレーザー光線照射手段52に照射信号を出力する。この制御手段10がレーザー光線照射手段52に照射信号を出力する位置は、次のようにして決定する。即ち、図7に示すように次にレーザー光線を照射すべき電極203の位置をRとし、現在のチャックテーブル36従って半導体ウエーハ20の移動速度をV(μm/秒)とし、レーザー光線照射手段52の励起時間をS(秒)とすると、レーザー光線照射手段52に照射信号を出力する位置rは、r=R−(S×V)で求める。なお、現在のチャックテーブル36従って半導体ウエーハ20の移動速度をV(μm/秒)は、上記加工送り量検出手段374の読み取りヘッド374bから出力されるパルス信号間の時間t(秒)とすると、図示の実施形態においては上記の読み取りヘッド374b は1μm毎に1パルスのパルス信号を出力するので、V(μm/秒)=1(μm)/tで求めることができる。
【0027】
上述したように、制御手段10は次にレーザー光線を照射すべき位置Rより所定量(S×V)だけ手前のr位置でレーザー光線照射手段52に照射信号を出力するので、レーザー光線照射手段52の励起時間後に集光器522から照射される1パルスのレーザー光線は上記R位置に配設された電極203に正確に照射される。その後もカウンター104によるカウント値が次の電極203の所定量(S×V)だけ手前の上記r位置に達する都度、制御手段10はレーザー光線照射手段52に照射信号を出力する。そして、図6の(b)で示すように半導体ウエーハ20のE1行の最右端のデバイス202に形成された電極203における図3において最右端の電極203eが集光器522に達したら、制御手段10は上記加工送り手段37の作動を停止してチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、半導体ウエーハ20には、図6の(b)で示すように各電極203(図示せず)部に正確にレーザー加工孔204が形成される。
【0028】
なお、上記穿孔工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4
波長 :355nm
出力 :3W
集光スポット径 :50μm
加工送り速度 :100mm/秒
このような加工条件によって穿孔工程を実施すると、半導体ウエーハ20には深さが5μm程度のレーザー加工孔204を形成することができる。
【0029】
次に、制御手段10は、レーザー光線照射手段52の集光器522を図6の(b)において紙面に垂直な方向に割り出し送りするように上記第2の割り出し送り手段43を制御する。一方、制御手段10は、割り出し送り量検出手段433の読み取りヘッド433bからの検出信号を入力しており、この検出信号をカウンター104によってカウントしている。そして、カウンター104によるカウント値が電極203の図3においてY方向の間隔Cに相当する値に達したら、第2の割り出し送り手段43の作動を停止し、レーザー光線照射手段52の集光器522の割り出し送りを停止する。この結果、集光器522は上記電極203eと対向する電極203j(図3参照)の直上に位置付けられる。この状態が図8の(a)に示す状態である。図8の(a)に示す状態で制御手段10は、レーザー光線照射手段52に照射信号を出力する。この結果、上記電極203e部に1パルスのレーザー光線が照射される。そして、制御手段10は、レーザー光線照射手段52に照射信号を出力してから上記励起時間S経過後にチャックテーブル36を図8の(a)において矢印X2で示す方向に所定の移動速度で加工送りするように上記加工送り手段37を制御する。次に、制御手段10は、上述したように加工送り量検出手段374の読み取りヘッド374bからの検出信号をカウンター104によりカウントし、そのカウント値が電極203の図3においてX方向の間隔AおよびBを置いて配設された電極203の位置Rより上記所定量(S×V)だけ手前の上記r位置に達する都度、レーザー光線照射手段52に照射信号を出力する。そして、図8の(b)で示すように半導体ウエーハ20のE1行の最右端のデバイス202に形成された電極203fが集光器522に達したら、制御手段10は上記加工送り手段37の作動を停止してチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、半導体ウエーハ20には、図8の(b)で示すように各電極203(図示せず)部にレーザー加工孔204が形成される。
【0030】
以上のようにして、半導体ウエーハ20のE1行のデバイス202に形成された電極203部にレーザー加工孔204が形成されたならば、制御手段10は加工送り手段37および第2の割り出し送り手段43を作動し、半導体ウエーハ20のE2行のデバイス202に形成された電極203における上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第2の記憶領域103bに格納されている第2の加工送り開始位置座標値(a2)をレーザー光線照射手段52の集光器522の直下に位置付ける。そして、制御装置10は、レーザー光線照射手段522と加工送り手段37および第2の割り出し送り手段43を制御し、半導体ウエーハ20のE2行のデバイス202に形成された電極203部に上述した穿孔工程を実施する。以後、半導体ウエーハ20のE3〜En行のデバイス202に形成された電極203部に対しても上述した穿孔工程を実施する。この結果、半導体ウエーハ20の各デバイス202に形成された全ての電極203部にレーザー加工穴204が形成される。
【0031】
なお、上記加工条件によって穿孔工程を実施すると、半導体ウエーハ20には深さが5μm程度のレーザー加工孔204を形成することができる。従って、半導体ウエーハ20の厚さが50μmの場合は、上述した穿孔工程を10回繰り返し実施することにより、レーザー加工孔204による貫通孔を形成することができる。このためには、被加工物である半導体ウエーハ20の厚さと、1パルスのレーザー光線によって被加工物に形成できるレーザー加工孔の深さに基づいて貫通孔を形成するに必要なパルス数を上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103に予め格納しておく。そして、上記穿孔工程をカウントし、そのカウント値に貫通孔を形成するに必要なパルス数に達するまで穿孔工程を繰り返し実施する。このように、本発明によるレーザー加工装置を用いることにより、従来用いられているドリルに比して半導体ウエーハ等の被加工物に効率よく細孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】被加工物としての半導体ウエーハの平面図。
【図3】図2に示す半導体ウエーハの一部を拡大して示す平面図。
【図4】図2に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着下状態を示す斜視図。
【図5】図2に示す半導体ウエーハが図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブルの所定位置に保持された状態における座標との関係を示す説明図。
【図6】図1に示すレーザー加工装置によって実施する穿孔工程の説明図。
【図7】図1に示すレーザー加工装置によって実施する穿孔工程において、次にレーザー光線を照射する位置と照射信号を出力する位置との関係を示す説明図。
【図8】図1に示すレーザー加工装置によって実施する穿孔工程の説明図。
【符号の説明】
【0033】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31:案内レール
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:加工送り量検出手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
41:案内レール
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
433:割り出し送り量検出手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線加工手段
522:集光器
6:撮像手段
10:制御手段
20:半導体ウエーハ
201:分割予定ライン
202:デバイス
203:電極
204:レーザー加工孔
21:環状のフレーム
22:保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を該加工送り方向(X)と直交する割り出し送り方向(Y)に相対移動せしめる割り出し送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段との相対的な加工送り量を検出する加工送り量検出手段と、
該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段との相対的な割り出し送り量を検出する割り出し送り量検出手段と、
被加工物に形成する細孔のX,Y座標値を記憶する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された細孔のX,Y座標値と該加工送り量検出手段および該割り出し送り量検出手段からの検出信号に基づいて該レーザー光線照射手段を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、次にレーザー光線を照射すべき位置をRとし、現在の該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段との相対速度をVとし、レーザー光線の励起時間をSとすると、該レーザー光線照射手段に照射信号を出力する位置rを次式に基づいて設定する、
r=R−(S×V)
ことを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−255761(P2006−255761A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78571(P2005−78571)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】