説明

レーザ加工方法

【課題】 レーザ加工方法に関し、機能膜に影響を与えることなく、単結晶基板を高精度に且つ高効率に分割する。
【解決手段】 劈開性或いは裂開性を有する単結晶基板1の機能膜形成面2と反対側の面に設けられた光吸収膜3が焦点位置になるようにレーザ光4を局所的に照射・走査して溝5を形成する際に、溝5の形成工程に伴って生じる局所的な熱衝撃応力が、単結晶基板1の劈開或いは裂開破壊強度をわずかに超えるよう、レーザ光4のピークエネルギ及び走査速度、及び、光吸収膜3の材質及び膜厚を設定することによって、溝5の形成工程において単結晶基板1の厚さ方向にクラック7を誘発させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工方法に関するものであり、特に、SAWフィルタやレーザ能動部等の機能膜を形成した単結晶基板を高効率且つ高精度で割断するための構成に特徴のあるレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)や、青色発光ダイオード或いは青色半導体レーザ等は、有機金属気相成長法(MOCVD法)や物理気相成長方法(PVD法)等を用いて絶縁性単結晶基板上に各種の機能膜や電極を形成したのち、絶縁性単結晶基板を分割してチップ化している。
【0003】
例えば、SAWフィルタにおいてはタンタル酸リチウム(LiTaO3 )等の単結晶基板が用いられており、青色発光ダイオード或いは青色半導体レーザにおいてはサファイア基板等の単結晶基板が用いられている。
【0004】
これらの単結晶材料は脆性が高く、ある決まった方向に割れやすい性質、即ち、劈開性或いは裂開性ことが知られており、このような単結晶基板を、劈開面或いは裂開面と異なる方向に切断する場合、通常のダイヤモンドホイールを用いたダイシング法を用いた場合には、基板の欠け、割れ、エッジのチッピング等の不良が多発する問題がある。
【0005】
この様な単結晶基板を切断する場合に、ダイヤモンドホイールを用いたダイシング法に代えてレーザスクライブ法を用いることが試みられており、この場合には、まず、レーザ光を照射して切断線に沿った溝を形成し、その後、切断線に沿って力を加えて力学的に割断・分離するものである。
【0006】
しかし、溝が浅い場合には、溝に沿って分割することができないという問題があるとともに、溝形成工程の他に基板分離工程が必要になるため、生産性が低いという問題がある。
【0007】
そこで、SAWデバイス等を形成するサファイア基板をレーザスクライブする際に、サファイア基板の表面にCO2 レーザからのスポット径が100〜200μmのパルスレーザ光を照射・走査してサファイア基板の表面に溝を形成するとともに、溝の底部において蓄積された熱による応力によってサファイア基板の厚さ方向にクラックを発生させて、切断線に沿って力学的に割断することなく分離することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
なお、一般のレーザスクライブ法において、レーザ光の吸収効率を高めるために、基板の表面の切断線に沿って予め光吸収膜を形成しておくことも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−224866号公報
【特許文献2】特開昭54−126957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の特許文献1においては、機能膜形成面側からレーザ光を照射するものであるので、レーザ照射に伴って蒸発・飛散した残渣が機能膜面に付着してデバイスの機能低下の原因となる虞がある。
【0010】
また、使用しているレーザ光に対してサファイア基板はかなり透明であるので、エネルギー効率が悪いとともに、レーザ光のスポット径が大きいので、基板分割のための糊代を広くとる必要があるので、基板に示める無駄な面積が多くなるという問題がある。
【0011】
なお、レーザ光の吸収効率を高めるために上記の特許文献2に提案されているように、切断線に沿って光吸収膜を設けた場合には、エネルギー効率は高まるものの、光吸収膜パターンの形成工程が必要になるとともに、この光吸収膜としては一般に導電体膜を用いるので、その残渣が機能膜や電極に付着した場合には、短絡の原因となる虞がある。
【0012】
したがって、本発明は、機能膜に影響を与えることなく、単結晶基板を高精度に且つ高効率に分割することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、レーザ加工方法において、劈開性或いは裂開性を有する単結晶基板1の機能膜形成面2と反対側の面に設けられた光吸収膜3が焦点位置になるようにレーザ光4を局所的に照射・走査して溝5を形成する際に、溝5の形成工程に伴って生じる局所的な熱衝撃応力が、単結晶基板1の劈開或いは裂開破壊強度をわずかに超えるよう、レーザ光4のピークエネルギ及び走査速度、及び、光吸収膜3の材質及び膜厚を設定することによって、溝5の形成工程において単結晶基板1の厚さ方向にクラック7を誘発させることを特徴とする。
【0014】
このように、単結晶基板1の機能膜形成面2と反対側の面に光吸収膜3を設け、この光吸収膜3が焦点位置になるようにレーザ光4を局所的に照射・走査して溝5を形成することによって、エネルギー効率が高まるとともに、レーザ照射に伴う残渣が機能膜に付着することがなくなる。
なお、本発明においては、立方晶系以外の結晶構造の単結晶で発生する劈開状の断裂を「裂開」という。
【0015】
また、溝5形成に伴うクラック7は機能膜形成面2側に細い線状に現れるので、各チップ間の切断のためのスペースを極力少なくすることができるので、1枚の基板から得られるチップの収率を高めることができる。
【0016】
この場合、レーザ光4の走査方向を、単結晶基板1の劈開方向或いは裂開方向からずれた方向としても、熱応力により溝5に沿って発生するクラック7を利用しているので、基板の欠け、割れ、エッジのチッピング等の不良が発生することがない。
【0017】
また、レーザ光4を単結晶基板1の機能膜形成面2側から照射することが望ましく、それによって、デバイス形成領域の位置を確認しながら各チップの間の切断線6に沿って正確にレーザ光4を照射することができる。
【0018】
また、この場合のレーザ光4は、シングルモード発振ファイバレーザの発振光であり、且つ、スポット径が100μm以下であることが望ましく、それによって、狭い幅を溝5を精度良く形成することが可能になるとともに、クラック7に伴う割断面を良好にすることができる。
【0019】
なお、この光吸収膜3は、切断線6に沿って選択的に設けても良く、特に、光吸収膜形成面側からレーザ光4を照射する場合に、予め、デバイス形成領域の位置を確認する必要がないので効果的になる。
【0020】
この場合の光吸収膜3の膜厚は1000nm以下であることが望ましく、それによって、単結晶基板1を過度に発熱させることなく、溝5を形成するとともにクラック7を発生することができる。
【0021】
また、単結晶基板1としては、LiTaO3 、LiNbO3 、或いは、サファイアが典型的なものであり、この場合に、波長が可視或いは近赤外線帯域のレーザ光4を使用することによって、機能膜形成面2側からレーザ光4を照射する場合にも、単結晶基板1でレーザ光4はほとんど吸収されないので、発熱位置を光吸収膜3とすることができ、精度の高い割断を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低出力で微小径に集光したレーザにより加工が可能なため、加工設備を安価にすることができるとともに、1回のレーザ照射で切断線に沿って溝生成と割断を同時に行うため、工程を短縮することができると同時に、希望切断線から実際の切断線が逸脱しない高精度の加工が可能になる。
【0023】
また、レーザをデフォーカスさせて割断する方式と比較し、微小デバイスパターンへのダメージが無く、且つ、より狭い分割領域を設けるだけで分離が可能になるので、有効チップ面積比率を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、分離しようとする単結晶基板のデバイス形成面と反対側の面、即ち、裏面に1000nm以下のTi膜等の極めて薄いレーザエネルギ吸収膜を設けたのち、このレーザエネルギ吸収膜が焦点位置になるように、スポット径が100μm以下のシングルモード発振光、特に、ファイバレーザの発振光を一点に集光して照射しながら走査して切断線に沿って溝を形成するとともに、単結晶基板の厚さ方向にクラックを誘発させて単結晶基板を割断するものである。
【0025】
この時、溝の形成工程に伴って生じる局所的な熱衝撃応力が、単結晶基板の劈開或いは裂開破壊強度をわずかに超えるよう、レーザ光のピークエネルギ及び走査速度、及び、レーザエネルギー吸収膜の材質及び膜厚を設定する必要がある。
【実施例1】
【0026】
ここで、図2乃至図4を参照して、本発明の実施例1の単結晶基板のレーザ加工工程を説明する。
図2参照
図2は、本発明の実施例1の単結晶基板のレーザ加工工程に用いるレーザ加工装置の概念的構成図であり、数値制御XYZステージのモータ12によって並進駆動されるXYステージ11上にホルダ14を介して加工物15を搭載するとともに、モータ17によって並進駆動されるZステージ16上に小型ファイバレーザ発振機19を搭載し、制御部21からの指令によってモータ12によって並進機構13を駆動してXYステージ11を移動させるとともに、モータ17によって並進機構18を駆動してZステージ16を移動させて焦点位置を決定し、レーザパワーサプライ22からのパワーによって集光レンズを備えた出射ヘッド20から集光したレーザ光23を加工物15の任意の位置に照射・走査するものである。
【0027】
この場合の小型ファイバレーザ発振機19は、波長が1.1μmで、数〜十数Wの低出力連続発振のシングルモード発振レーザであり、かつスポット径φは数μm以下にすることが可能であり、加工する材料表面に対し、極めて狭い領域にレーザを集光、照射することが可能である。
【0028】
図3参照
まず、裏面に厚さが、例えば、100nmのTi膜32を形成した厚さが、例えば、350μmのLiTaO3 基板31の裏面側から小型ファイバレーザ発振機19からのレーザ光23を2〜4Wの出力、例えば2.4Wの出力でスポット径を50〜60μmとして、20mm/秒の走査速度で走査することによって、LiTaO3 基板31の裏面に深さが40μm程度の溝33を形成するとほぼ同時に、溝33の底部からレーザ照射衝撃によるクサビ効果によりLiTaO3 基板31の厚さ方向にクラック34を生じさせる。
【0029】
このクラック34は、LiTaO3 基板31を完全に貫通割断しているので、特段の力を加えることなく自然に分割することができる。
【0030】
図4参照
図4は、レーザ加工を行ったLiTaO3 基板31の顕微鏡写真の模写図であり、幅が100μm以下で滑らかな縁を有する溝33が形成されているとともに、この溝33の底部にほぼ直線状に走る非常に細いクラック34が観察された。
【0031】
このことから、溝33は、クラック34が希望する切断線上から逸脱しないためのガイドの役割をするため、ほぼ直線状に走るクラック34となることが分かる。
また、クラック34は溝33内から生じるため、レーザ光23のスポット径を出来る限り小さくすることで、良好な割断面を得ることができる。
【0032】
この場合、LiTaO3 基板31の表面、即ち、デバイス形成面に幅の非常に狭いクラック34が現れて分割線となるので、レーザ照射の影響を考慮することなく、隣接するチップ間の間隔をより狭くすることができる。
【0033】
このように、本発明の実施例1においては、基板の裏面に光吸収膜を設け、この光吸収膜が焦点位置になるようにレーザ光を照射しているので、残渣の影響を考慮することなくレーザ切断が可能になるとともに、表面側に現れる分割線は非常に狭いクラックであるので、有効チップ面積比率を大きくすることができる。
【0034】
なお、レーザ走査速度を20mm/秒とした場合には、従来のダイヤモンドホイールを使用するダイシングと比較して4〜6倍の加工速度となり、スループットを大幅に向上することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、図5を参照して、本発明の実施例2の単結晶基板のレーザ加工工程を説明する。 図5参照
まず、裏面に厚さが、例えば、100nmのTi膜42を形成した厚さが、例えば、250μmのサファイア基板41の裏面側から小型ファイバレーザ発振機19からのレーザ光23を8〜10Wの出力、例えば、9Wでスポット径を50〜60μmとして、20mm/秒の走査速度で走査することによって、サファイア基板41の裏面に深さが120μm程度の溝43を形成するとほぼ同時に、溝43の底部からレーザ照射衝撃によるクサビ効果によりサファイア基板41の厚さ方向にクラック44を生じさせる。
【0036】
このクラック44は、サファイア基板41の裂開性があまり高くないので、LiTaO3 基板31に形成されるクラック34に比べてガタツキが大きくなるが、サファイア基板41を完全に貫通割断される。
【0037】
図6参照
図6は、レーザ加工を行ったサファイア基板の顕微鏡写真の模写図であり、幅が100μm程度で比較的滑らかな縁を有する溝43が形成されているとともに、この溝43の底部に蛇行して走るクラック44が観察された。
なお、この場合も、溝43がガイドとなるため、クラック44は溝43の底部から生じて希望する切断線上から逸脱することがない。
【0038】
このように、本発明の実施例2においては、基板の裏面に光吸収膜を設け、この光吸収膜が焦点位置になるようにレーザ光を照射しているので、裂開性が劣るサファイア基板の場合にも幅100μm程度の分割領域で分割することができる。
【実施例3】
【0039】
次に、図7を参照して、本発明の実施例3の単結晶基板のレーザ加工工程を説明する。 図7参照
まず、裏面に厚さが、例えば、100nmのTi膜32を形成した厚さが、例えば、350μmのLiTaO3 基板31の表面側から小型ファイバレーザ発振機19からのレーザ光23を2〜4Wの出力、例えば、2.4Wでスポット径を50〜60μmとして、20mm/秒の走査速度で走査することによって、LiTaO3 基板31の裏面に溝35を形成するとほぼ同時に、溝35の底部からレーザ照射衝撃によるクサビ効果によりLiTaO3 基板31の厚さ方向の表面方向に向かってクラック36を生じさせる。
【0040】
このクラック36も、LiTaO3 基板31を完全に貫通割断しているので、特段の力を加えることなく自然に分割することができる。
【0041】
このように、本発明の実施例3においては、基板の裏面に光吸収膜を設け、この光吸収膜が焦点位置になるようにレーザ光を基板の表面側から照射しているので、基板の表面側に形成したデバイス領域の位置を確認しながらレーザ照射することが可能になるので、位置精度の高い割断が可能になる。
【0042】
また、使用しているレーザ光23の波長に対してLiTaO3 基板31はほぼ透明であるので、LiTaO3 基板31の途中でほとんど吸収されることはなく、Ti膜の位置で設定通りに吸収されることになる。
【実施例4】
【0043】
次に、図8を参照して、本発明の実施例4の単結晶基板のレーザ加工工程を説明する。 図8参照
まず、厚さが、例えば、350μmのLiTaO3 基板31の裏面に厚さが、例えば、100nmで幅が100μmのTi膜パターン37を分割線に沿って形成したのち、LiTaO3 基板31の裏面側から小型ファイバレーザ発振機19からのレーザ光23を2〜4Wの出力、例えば、2.4Wでスポット径を50〜60μmとして、20mm/秒の走査速度で走査することによって、LiTaO3 基板31の裏面に溝38を形成するとほぼ同時に、溝38の底部からレーザ照射衝撃によるクサビ効果によりLiTaO3 基板31の厚さ方向にクラック39を生じさせる。
【0044】
この本発明の実施例4においては、Ti膜パターン37を分割線に沿って形成しているので、裏面側からレーザ光23を照射する場合にもデバイス形成領域の位置を確認することなくレーザ照射を行うことが可能になる。
【0045】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、各実施例に記載した単結晶基板は単なる一例にすぎず、壁開性或いは裂開性を有する単結晶基板であれば良く、典型的には実施例で示したLiTaO3 及びサファイア以外にLiNbO3 が挙げられる。
【0046】
また、上記の各実施例においては、レーザエネルギー吸収膜としてTi膜を用いているが、Ti膜に限られるものではなく、使用するレーザ光の波長に対する吸収率が切断対象となる基板の吸収率より高く且つ反射率の低い材料であれば良い。
【0047】
また、上記の各実施例においては、レーザ発振器としてファイバレーザを用いているが、ファイバレーザに限られるものではなく、100μm以下の微小スポット径でシングルモード発振するものであれば良い。
【0048】
また、上記の各実施例においては、単結晶基板の裏面にTi膜を形成するように説明しているが、SAWフィルタデバイスは製造プロセスで基板裏面に100nm程度のTi膜が形成されているので、このTi膜を活用してレーザ加工しても良いものである。
【0049】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 劈開性或いは裂開性を有する単結晶基板1の機能膜形成面2と反対側の面に設けられた光吸収膜3が焦点位置になるようにレーザ光4を局所的に照射・走査して溝5を形成する際に、前記溝5の形成工程に伴って生じる局所的な熱衝撃応力が、前記単結晶基板1の劈開或いは裂開破壊強度をわずかに超えるよう、前記レーザ光4のピークエネルギ及び走査速度、及び、前記光吸収膜3の材質及び膜厚を設定することによって、前記溝5の形成工程において前記単結晶基板1の厚さ方向にクラック7を誘発させることを特徴とするレーザ加工方法。
(付記2) 上記レーザ光4の走査方向が、上記単結晶基板1の劈開方向或いは裂開方向からずれた方向であることを特徴とする付記1記載のレーザ加工方法。
(付記3) 上記レーザ光4を、上記の単結晶基板1の機能膜形成面2側から照射することを特徴とする付記1または2の記載のレーザ加工方法。
(付記4) 上記レーザ光4が、シングルモード発振ファイバレーザの発振光であり、且つ、スポット径が100μm以下であることを特徴とする付記1または2に記載のレーザ加工方法。
(付記5) 上記光吸収膜3を、切断線6に沿って選択的に設けたことを特徴とする付記1乃至4いずれか1に記載のレーザ加工方法。
(付記6) 上記光吸収膜3の膜厚が、1000nm以下であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1に記載のレーザ加工方法。
(付記7) 上記単結晶基板1が、LiTaO3 、LiNbO3 、或いは、サファイアのいずれかであり、且つ、上記レーザ光4の波長が可視或いは近赤外線帯域であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1に記載のレーザ加工方法。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の活用例としては、SAWフィルタを形成した単結晶基板のレーザ切断が典型的であるが、SAWフィルタデバイスに限られるものではなく、青色発光ダイオードや青色半導体レーザ、或いは、強誘電体基板を用いた光偏向素子等の光デバイスの基板分割をはじめとした各種の単結晶基板の分割に適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1の単結晶基板のレーザ加工工程に用いるレーザ加工装置の概念的構成図である。
【図3】本発明の実施例1の単結晶基板のレーザ加工工程の説明図である。
【図4】レーザ加工を行ったLiTaO3 基板の顕微鏡写真の模写図である。
【図5】本発明の実施例2の単結晶基板のレーザ加工工程の説明図である。
【図6】レーザ加工を行ったサファイア基板の顕微鏡写真の模写図である。
【図7】本発明の実施例3の単結晶基板のレーザ加工工程の説明図である。
【図8】本発明の実施例4の単結晶基板のレーザ加工工程の説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 単結晶基板
2 機能膜形成面
3 光吸収膜
4 レーザ光
5 溝
6 切断線
7 クラック
11 XYステージ
12 モータ
13 並進機構
14 ホルダ
15 加工物
16 Zステージ
17 モータ
18 並進機構
19 小型ファイバレーザ発振機
20 出射ヘッド
21 制御部
22 レーザパワーサプライ
23 レーザ光
31 LiTaO3 基板
32 Ti膜
33 溝
34 クラック
35 溝
36 クラック
37 Ti膜パターン
38 溝
39 クラック
41 サファイア基板
42 Ti膜
43 溝
44 クラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
劈開性或いは裂開性を有する単結晶基板の機能膜形成面と反対側の面に設けられた光吸収膜が焦点位置になるようにレーザ光を局所的に照射・走査して溝を形成する際に、前記溝の形成工程に伴って生じる局所的な熱衝撃応力が、前記単結晶基板の劈開或いは裂開破壊強度をわずかに超えるよう、前記レーザ光のピークエネルギ及び走査速度、及び、前記光吸収膜の材質及び膜厚を設定することによって、前記溝の形成工程において前記単結晶基板の厚さ方向にクラックを誘発させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
上記レーザ光の走査方向が、上記単結晶基板の劈開方向或いは裂開方向からずれた方向であることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
上記レーザ光を、上記の単結晶基板の機能膜形成面側から照射することを特徴とする請求項1または2の記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
上記レーザ光が、シングルモード発振ファイバレーザの発振光であり、且つ、スポット径が100μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
上記単結晶基板が、LiTaO3 、LiNbO3 、或いは、サファイアのいずれかであり、且つ、上記レーザ光の波長が、可視及び近赤外線帯域であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−82232(P2006−82232A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266315(P2004−266315)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】