説明

レーザ手術装置

【課題】発振波長の異なる複数のレーザ発振器を用い、その発振レーザ光を種々に組み合せて使用できるようにし、多種、多様の用途に適応したレーザ手術を行うことができるようにした。
【解決手段】発振波長の異なる複数の半導体レーザ発振器11,12と、前記複数の半導体レーザ発振器の各々に対して設けられた半導体レーザ駆動回路21,22と、該半導体レーザ駆動回路21,22の夫々の駆動を制御する制御回路(CPU)3と、前記複数の半導体レーザ発振器11,12の出力レーザ光を合波する合波器4とを有し、該合波器からの出力レーザ光をレーザハンドピース30に導入するようにした。制御回路(CPU)3は、レーザ発振器11,12を駆動するパルス信号を発生し、そのパルス信号のパルス幅、パルス間隔、パルス高さ等を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いたレーザ手術装置、より詳細には、発振波長の異なる(つまり、使用目的の異なる)複数の半導体レーザ発振器をパルス駆動するに際し、該駆動パルスのパルス幅、パルス高さを調整して発振させ、各半導体レーザ発振器の出力を合波して出力することにより、一方の周波数を主成分とし、他方の周波数を補助成分とする所望のパワーのレーザ光出力を得るようにしたレーザ手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レーザは、歯科領域において、軟組織の切開、止血、蒸散、凝固等の外科的用途のほか、歯石の除去、メラニン色素の除去など歯周病への応用、更には、口内炎などの疼痛緩和等に広く応用されている。
【0003】
レーザ発振様式は、大きく分けて、連続波発振とパルス波発振とがあり、連続波の場合は、熱緩和時間がほとんどなく、大量のエネルギーを投入するので、そのままでは、痛みを伴なう。痛みの少ない治療を行うためには、連続波に比して熱蓄積の少ないパルスレーザがよい。パルスレーザの場合でも、パルスとパルスの間(パルス間隔)が、パルス当りの照射時間(パルス幅)に対して相対的に短いと熱の蓄積が生じるが、パルス幅を小さくし、パルス間隔を十分にとることによって、生体に与える熱作用を小さくすることができる。
【0004】
上述のように、パルス波レーザの場合、パルス幅を小さくすれば、1パルス当りのエネルギーが増大しても、パルス間隔を十分にとれば熱傷害は生じないが、半導体レーザの場合、発生ピークパワーがあまり大きくなく、治療に必要な十分なピークパワーを得ることができない。
【0005】
一方、レーザ治療は、レーザ光の波長により、生体への作用が異なり、例えば、810nmのレーザ光は切開性に優れるが、血液の凝固性が低く、他方、980nmのレーザ光は、その逆に、凝固性に優れ、切開性が低い。而して、従来のレーザ手術装置は、切開用には810nmのレーザ発振器のみを備え、凝固用には980nmのレーザ発振器のみを備えているというように、各用途別に単一のレーザ発振器を備えて構成されており、単一のレーザ手術装置に異なる波長のレーザ光を発生する2以上のレーザ発振器を備え、これら2以上の波長の異なるレーザ光を合波して、当該手術に適したレーザ光を得るようにする考えはなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、単一のレーザ手術装置に、発振波長の異なる複数の、少なくとも、2つのレーザ発振器を有し、これら複数のレーザ発振器の出力レーザ光を組み合せて、当該治療に適した波長のレーザ光を主成分として、他の波長のレーザ光を補助成分としてピークエネルギー値を調整し得るようにしたレーザ光を放射し得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発振波長の異なる複数の半導体レーザ発振器と、前記複数の半導体レーザ発振器の各々に対して設けられた半導体レーザ駆動回路と、該半導体レーザ駆動回路の夫々の駆動を制御する制御回路と、前記複数の半導体レーザ発振器の出力レーザ光を合波する合波器とを有し、該合波器からの出力レーザ光にて手術を行うようにしたレーザ手術装置であって、前記制御回路は、発振波長の異なる複数の半導体レーザ発振器と、前記複数の半導体レーザ発振器の各々に対して設けられた半導体レーザ駆動回路と、該半導体レーザ駆動回路の夫々の駆動を制御する制御回路と、前記複数の半導体レーザ発振器の出力レーザ光を合波する合波器とを有し、該合波器からの出力レーザ光にて手術を行うようにしたレーザ手術装置であって、前記制御回路は、前記各半導体レーザ発振器を駆動するパルス信号を発生し、前記駆動パルス信号は、各半導体レーザ発振器毎に、パルス高さ及び/又はパルス幅及び/又はパルス間隔が調節可能であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0008】
発振波長の異なる複数の半導体レーザ発振器を用い、一方の波長の発振レーザ光を主レーザ光として用い、他方の波長の発振レーザ光を補助レーザ光として用いて、全体としてピークエネルギーを大きくし、かつ、主レーザ光として用いる波長の機能をより効果的にできるようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明によるレーザ手術装置の一実施例を説明するための要部構成図で、図中、10は、本発明によるレーザ手術装置で、該レーザ手術装置10には、該レーザ手術装置10の動作を制御する制御データを入力する操作パネル20が該装置10と一体に又は別体として設けられ、更には、該レーザ手術装置10の出力レーザ光を用いて治療を行うためのレーザハンドピース30が着脱自在に装着されるようになっている。
【0010】
図1において、レーザ手術装置10は、発振波長の異なる複数の、少なくとも2個の、半導体レーザ発振器11,12と、これらレーザ発振器11,12をそれぞれ独立して駆動するためのレーザ駆動回路21,22と、これらレーザ駆動回路21,22の駆動を制御するためのCPU3と、レーザ発振器11,12からレーザ光を合波する合波器4とを有し、該合波器4によって合波されたレーザ光がレーザハンドピース30に導入され、該レーザハンドピース30の図示しない先端から放射されて、種々の治療に用いられる。
【0011】
なお、図1においては、説明を簡明にするために、発振波長の異なるレーザ発振器として、2個のレーザ発振器11,12を用いる例を示したが、その数は図示例に限定されるものではなく、必要により、3個以上としてもよい。また、以降の説明において、レーザ発振器11は生体組織の切開に効果的な810nmのレーザ光を発生するレーザ発振器とし、レーザ発振器12は凝固に効果的な980nmのレーザ光を発生するレーザ発振器としたが、本発明は、これらの波長に限定されるものではなく、必要により、所望の波長のものを用いればよい。
【0012】
図2は、本発明の動作説明をするためのレーザ光の概念的パルス波形図で、図中、L1はレーザ発振器11からの810nmのレーザ光出力、L2はレーザ発振器11からの980nmのレーザ光出力で、これらが合波器4で合波されて、レーザハンドピース30の先端より放射され、所望の治療に用いられる。
【0013】
而して、図2(A)は、操作パネル20からの入力によって制御されるCPU3より、パルス幅τ、パルス間隔T、パルス高さH1,H2のパルスが各レーザ発振器11,12に入力され、これらレーザ発振器11,12から、パルス幅τ、パルス間隔Tが同じで、ピーク値が、パルス高さH1,H2に対応したレーザ光L1,L2が発生され、これら合波器4によって重ね合わされ、ピーク値がH1+H2となってレーザハンドピース30の先端より放射される。
【0014】
而して、図2(A)に示したレーザ出力光においては、レーザ光L1,L2が重畳されており、従って、ピーク値が大きく、例えば、切開に使用した場合において、810nmの主レーザ光L1のみの場合に比して、980nmの補助レーザ光L2のエネルギーをも利用することができるので、より効果的に切開することができる。血液の凝固を行う場合は、図2(B)に示すように、980nmのレーザ光L2を主レーザ光として用い、810nmのレーザ光L1を補助レーザ光として用いると、血液を凝固する場合においても、980nmの主レーザ光L2のみの場合に比して、810nmの補助レーザ光L1が加わった分だけより効果的に凝固させることができる。なお、レーザ光L1,L2のピーク値は、CPU3からのパルス高さを調整することによって任意に変えることができ、従って、切開と凝固の関係を最適に選ぶことが可能となる。
【0015】
図2(C)は、図2(D)、CPU3からの出力パルスの出力タイミングを変えて、図示例の場合、T/2だけタイミングをずらせて、パルス間隔を半分にして切開或いは凝固を行うようにしたもので、このようにすると、パルス間隔を小さくして、換言すれば、いずれか一方のみを使用する単独使用の場合に比し、パルス密度を高くすることができ、より効果的な治療を行うことができる。
【0016】
図2(C)は、切開を行う場合の例を示す図で、切開を行うのに適した810nmの主レーザ光L1に対して、凝固用の980nmの補助レーザ光L2を用いて、主レーザ光L1の実質的なピーク値を大きくした例、図2(D)は、血液の凝固を行う場合の例を示す図で、凝固を行う980nmの主レーザ光L2に対して、切開用の810nmの補助レーザ光L2を用いて、ピーク値を大きくした例、図2(E)は、810nmのレーザ光L1のみを用いて切開を行う例、図2(F)は、980nmのレーザ光L2のみを用いて凝固行う例を示し、用途に応じて、必要な波長成分のレーザ光を主成分として用い、他を補助として用いることもできる。
【0017】
図3は、本発明によるレーザ手術装置の一実施例を説明するための全体外観図で、図示例の場合、操作パネル20は、レーザ手術装置10のパネル面に一体的に設けられている。図4は、図3に示したレーザ手術装置にキーボード部(操作パネル部)の詳細を示す図である。
【0018】
図4に示す操作パネル20において、21は、例えば、液晶表示面、22は設定値記憶表示面で、術者は、レーザ治療に先立って、使用するレーザ発振器11,12のレーザ出力を決定するため、電源スイッチ23をオンする。ここで、レーザ発振器11のみを使用する時は、レーザ11と表示されている部分を押す。すると、レーザ11と表示された領域が点灯表示される。次いで、パルス幅と表示された部分を押すと、該パルス幅と表示された領域が点灯表示され、液晶表示面21に、レーザ11の標準パルス幅が表示される。このパルス幅を調整するには、調整ボタン26を押して所望の値にし、所望の値になったところで、設定ボタン27を押すと、レーザ11の表示とパルス幅の表示が交差する領域(斜線にて示す)に、設定されたレーザ11のパルス幅が点灯表示される。以下、同様にして、レーザ11のパルス間隔、パルス高さが設定され、点灯表示される。レーザ発振器12のみを使用する場合は、レーザ12と表示された部分を押して、以降、レーザ発振器11の場合と同様にして、パルス幅、パルス間隔、パルス高さ等を調整、設定して表示する。その後、駆動ボタン28を押すと、レーザ発振器11が発振する。なお、駆動ボタン28は、レーザハンドピース30の手元に設けておいてもよい。
【0019】
以上は、レーザ発振器11,12を単独で駆動する場合(図2の(E)又は(F)の場合)であるが、レーザ発振器11,12を同時に駆動する場合には、設定に先立って、同時と表示された部分24を押し、その後、レーザ11及び12について、前述のごとくして、パルス幅、パルス間隔、パルス高さを設定し、駆動ボタン28を押すと、例えば、図2(A),図2(B)に示したレーザ光が出力される。
【0020】
また、設定に先立って、個別と表示された部分25を押した後、前述のごとくして、レーザ11,12について、各々パルス幅、パルス間隔、パルス高さを設定すると、図2(C)或いは図2(D)に示したレーザ光が出力される。
【0021】
上述のように、本発明によると、発振波長の異なる複数のレーザ発振器を用い、その発振レーザ光を種々に組み合せて使用できるようにしたので、多種、多様の用途に適応したレーザ手術を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるレーザ手術装置の一実施例を説明するための要部構成図である。
【図2】本発明によって得られるレーザ出力光の例を説明するための図である。
【図3】本発明によるレーザ手術装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図4】図3に示したレーザ手術装置のパネル表示面の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0023】
1,12…レーザ発振器、21,22…レーザ駆動回路、3…CPU、4…合波器、10…レーザ手術装置、20…操作パネル、30…レーザハンドピース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振波長の異なる複数の半導体レーザ発振器と、前記複数の半導体レーザ発振器の各々に対して設けられた半導体レーザ駆動回路と、該半導体レーザ駆動回路の夫々の駆動を制御する制御回路と、前記複数の半導体レーザ発振器の出力レーザ光を合波する合波器とを有し、該合波器からの出力レーザ光にて手術を行うようにしたレーザ手術装置であって、前記制御回路は、前記各半導体レーザ発振器を駆動する駆動パルス信号を発生し、前記駆動パルス信号は、各半導体レーザ発振器毎に、パルス高さ及び/又はパルス幅及び/又はパルス間隔が調節可能であることを特徴とするレーザ手術装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−423(P2006−423A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180379(P2004−180379)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】