説明

レーストラック・メモリ・デバイス

【課題】 電子のスピン分極を利用したレーストラック・メモリ・デバイスを提供する。
【解決手段】 レーストラック・メモリ・ストレージ・デバイスは、磁壁をレーストラックに沿って一方向のみに移動させる。読み出し要素は、(レーストラックの中央部よりも)レーストラックの1つの端部に配置することができる。磁壁は、読み出し要素を横切って移動させると消滅するが、それらの対応する情報は、1つ又は複数のメモリ・デバイス(例えば、組み込みCMOS回路)に読み込まれる。次いで、情報は、計算ニーズに対して回路内で処理され、読み出し要素と対向するレーストラックの端部に配置された書き込み要素を用いて、その元の形式(レーストラックから読みだされたときの)か、又は何らかの計算後の異なる形式のいずれかで、レーストラックに書き戻される。こうしたレーストラックは、より単純に構築することができ、従来のレーストラック・メモリ・デバイスよりも動作の信頼性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ・ストレージ・システムに関し、具体的には、電流を用いて磁壁を読み出しデバイス及び書き込みデバイスを横切って移動させることにより、データを、磁気レーストラックの磁区又は磁壁に保存し、磁区又は磁壁から読み出すことができる、メモリ・ストレージ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーストラック・メモリ・デバイス(racetrack memory device)は、情報を磁気ナノワイヤすなわち「レーストラック(racetracks)」における磁壁の形態で格納する。磁壁は、短い(〜ナノ秒長)電流パルスを用いてナノワイヤに沿って前後に移動させられ、磁壁では、電流を搬送する電子がスピン分極される(spin polarized)。スピン分極電流はスピン角運動量を搬送し、スピン角運動量は磁壁に移行されて、磁壁を電子の流れの方向に移動させる。例えば、0と1を表す一連の磁壁は、レーストラックの中央に配置された読み出しデバイス及び書き込みデバイスを通過して、レーストラックに沿って前後に移動させることができる。従来技術では、レーストラックにリザーバを保持し、読み出しデバイス及び書き込みデバイスを横切って一連の磁壁を移動させることができるようにする。従って、これにより、一連の磁壁を損傷したり乱したりすることなく、任意の磁壁の読み出し、又は、既存の磁壁の連なり内のどこかにおける新しい1つ又は複数の磁壁の書き込みが可能になる。各々のレーストラックについて1つの読み出し及び書き込みデバイスのみを使用する場合は、リザーバは、一般に、少なくとも格納された磁壁の連なりと同じ長さであることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,834,005号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来のレーストラック・メモリ技術では、レーストラックが長くなる。レーストラックに沿って磁壁を移動させるには、特定の時間の長さについて特定の電流密度が必要である。磁壁を速く移動させるほど、必要な電流密度が高くなる。しかしながら、電流密度が高いほど、レーストラックに沿った必要な電圧の大きさは大きくなる。レーストラックが長いほど、レーストラックの抵抗が大きくなり、同じ高さの電流密度に対して必要な電圧が高くなる。また、従来のレーストラック・メモリ・デバイスは、磁気レーストラックに沿った磁壁の2方向運動を採用しており、磁壁は、読み出し及び書き込みデバイスを横切っていずれの方向にも移動させることができるようになっている。この目的のために、電子回路が、レーストラックに沿って正又は負の極性のいずれかの電流パルスを供給する。かかるレーストラックは、磁壁がレーストラックに沿っていずれの方向にも確実に移動させることができるように設計されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの実施形態は、磁性材料を含むトラックを含むデバイスを対象としており、トラックは、トラックを流れる電流に応じてトラックに沿ってシフトすることができる磁性領域を含むように設計される。これらの磁性領域は、それぞれの磁壁を含む。デバイスは、トラックにおけるそれぞれの磁性領域により表されるデータを読み出すための読み出し要素をさらに含み、それぞれの磁性領域の磁壁は、それぞれの磁性領域により表されるデータが読み出されると、消滅する。デバイスは、読み出し要素によって対応するデータが読み出された後にトラックにおける磁性領域にデータを書き込むための書き込み要素をさらに含み、デバイスがシフト・レジスタとして機能するようにする。読み出し要素及び書き込み要素は、トラックの対向する端部に配置されることが有利である。好ましい実装形態においては、磁性領域は、トラックを通って1方向のみに移動させることができる。また、それぞれの磁性領域により表されるデータは、書き込み要素により磁性領域に書き戻される前に、メモリ・デバイスに書き込まれるようにできることが有利である。
【0006】
本発明の1つの態様は、デバイスのトラックに電流パルスを印加して、所与の磁性領域をトラックの1つのピン止めサイトからトラックの別のピン止めサイトに移動させるステップを含む方法である。方法は、情報をメモリ・デバイス(例えばCMOSデバイス)に読み込むステップをさらに含み、メモリ・デバイスにおいては、データに対応する情報は、それぞれの磁性領域により表され、この情報は、次に書き込み要素によってトラックの磁性領域に書き戻すことができる。代替的に、方法は、メモリ・デバイスに格納された情報を用いて計算を行うステップを含み、それにより、異なる情報が構築又は生成され、情報は、次いで書き込み要素によりトラックの磁性領域に書き込むことができる。
【0007】
本発明の別の実施形態は、磁性材料を含むトラックを含むデバイスであって、トラックは、データを表す磁性領域を含む。これらの磁性領域は、それぞれの磁壁を含み、磁壁は、トラックに印加される電流により、トラックに沿って一方向のみにシフトされる。デバイスは、トラックにおけるそれぞれの磁性領域により表されるデータを読み出すための読み出し要素も含み、それぞれの磁性領域の磁壁は、それぞれの磁性領域によって表されるデータが読み出されると、消滅する。デバイスは、読み出し要素によって対応するデータが読み出された後にトラックにおける磁性領域にデータを書き込むための書き込み要素をさらに含み、デバイスがシフト・レジスタとして機能するようにする。トラック自体は、磁壁の一方向のみの移動を促進する形状にされることが有利である。例えば、トラックは、トラックに沿って単調に減少する断面を有するものとすることができる。また、トラックは、磁性領域がトラックを通って一方向のみに移動するような形状にされたセグメントを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】磁気レーストラック・デバイスの様々な特徴を示す図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態を示す図であり、2A〜2Cを含む。
【図3】レーストラック・デバイスの磁気ナノワイヤをどのような形状にして、磁区の1方向のみへの移動を促進するかを示す図であり、3A〜3Fを含む。
【図4】磁気ナノワイヤが水平に配向されたレーストラック・デバイスを示す図である。
【図5】磁気ナノワイヤが水平に配向されたレーストラック・デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、書き込み要素15及び読み出し要素20を使用する磁気シフト・レジスタ10を含む例示的な磁気メモリ・システム100を示す。読み出し要素20及び書き込み要素15は共に、システム100の読み出し/書き込み要素を形成する。磁気シフト・レジスタ10は、好ましくはフェリ磁性材料又は強磁性材料から作られた細いワイヤ(すなわちトラック)からなるデータ・カラム25を含む。データ・カラム25の小さな区画すなわち磁区は、書き込み要素15を用いて、どちらかの方向に磁化することができる。
【0010】
トラックを製造する磁性材料の秩序パラメータ、すなわち磁化方向又は磁気モーメントの方向は、一般に、磁区の間で一つの方向から別の方向へ変化することができる。磁気モーメントの方向の変化は、データ・カラム25に情報を格納するための基礎を形成する。シフト・レジスタ10の所望の符号化スキームに応じて、データは、1)例えば30、35といった磁区などのシフト・レジスタ10の磁化領域、2)例えば36、37、38、39といった磁区を分割する磁壁、又は、3)例えば30、35などの磁区と、例えば36、37、38、39などの磁壁との両方、に格納することができる。本明細書において用いられるように、例えば36、37、38、39などの磁壁は、例えば30、35などの磁区の間の遷移磁化領域である。磁区の可能な磁化方向は、図1において、矢印136、137、138、139、140で示される。
【0011】
動作中の任意の所与の時間において、磁気シフト・レジスタ10は、データ領域40と、上部リザーバ45と、下部リザーバ50とからなる。データ領域40は、データを格納する磁区30、35などの連続する磁区の組を含む。磁気シフト・レジスタ10には、上部リザーバ45及び下部リザーバ50の形で長さが追加される。
【0012】
上部リザーバ45及び下部リザーバ50を組み合わせた長さは、データ領域40における磁区をそれぞれ書き込み及び読み出しする目的のための書き込み要素15及び読み出し要素20を横切ってこれらの磁区を完全にデータ領域40から移動させたときに、データ領域40における全ての磁区を収容できるように、十分に長いことが好ましい。従って、所与の時間において、磁区は、一部がデータ領域40に格納され、一部が上部リザーバ45又は下部リザーバ50に格納される。結果的に、データ領域40、上部リザーバ45及び下部リザーバ50の組み合わせによって、完全なストレージ素子が形成される。例えば、静止状態においては、上部リザーバ45に磁区がなくても良い。しかしながら、別の実施形態においては、静止状態において、下部リザーバ50に磁区がなくても良い。また、データ・カラム25は、データ領域40及び2つ又はそれ以上のリザーバ45、50を含むものとすることができ、代替的に、磁気シフト・レジスタ10は、単一のリザーバ45又は50を含むものとすることができる。
【0013】
シフト・レジスタ10の個々の領域40、45、50は、連続しており、構造及び組成を同一のものとすることができる。データ領域40は、カラム25の固定領域ではなく、むしろデータ領域40は、カラム25へのデータの書き込み及びカラム25からのデータの読み出しの目的のため、ストレージ・デバイスの動作中にカラムが上下にシフトする。従って、任意の所与の時間におけるデータ領域40は、磁気シフト・レジスタ10の異なる部分に配置されることがある。データ領域40は、一つの連続する領域とすることができるが、データ領域40内における磁区の空間的な分布及び範囲は、データ領域40が磁気シフト・レジスタ10内のどこに存在しても、ほぼ同じものとすることができる。別の実施形態においては、ストレージ領域の空間的な範囲は、この領域が特に読み出し要素20及び書き込み要素15を横切って移動する際に増大させることができる。データ領域40の一部分又は全体であっても、上部リザーバ45又は下部リザーバ50内へ移動させて、特定の磁区におけるデータにアクセスすることができる。
【0014】
図1の上部リザーバ45及び下部リザーバ50を合わせると、データ領域40とほぼ同じサイズを有するか、又はわずかに長いことが好ましい。しかしながら、他の代替的な実施形態においては、上部リザーバ45又は下部リザーバ50は、データ領域40のサイズに対して異なるサイズを有するものとすることができる。一例として、磁気シフト・レジスタ10毎に2つ以上の読み出し要素20及び書き込み要素15が使用される場合は、上部リザーバ45及び下部リザーバ50を組み合わせた長さは、データ領域40よりもかなり短かくすることができる。例えば、1つの磁気シフト・レジスタ10に対して2つの読み出し要素20と2つの書き込み要素15とが用いられ、これらがデータ領域40の長さに沿って等距離に配置される場合には、上部リザーバ45及び下部リザーバ50を合わせても、データ領域40のおよそ半分の長さを必要とするのみである。
【0015】
制御回路111(基板112を覆う)により制御される電流55は、電気接点56を介してデータ・カラム25に印加され、データ・カラム25に沿って磁区30、35内で、読み出し要素20及び書き込み要素15を通って、磁気モーメントを移動させる。磁壁の磁性材料において、磁壁を横切って通った電流は、電流の流れ方向に磁壁を移動させる。電流は、磁区を通ると「スピン分極」状態となる。このスピン分極された電流は、介在する磁壁を横切って次の磁区に入ると、スピン・トルクを発生させる。このスピン・トルクが、磁壁を移動させるものである。磁壁の速度は、例えば100乃至数百m/秒のオーダーといったように非常に早く、特定の磁区を読み出す目的又は書き込み要素によってその磁性状態を変化させる目的でその磁区を必要な位置に移動させるプロセスを、非常に短くすることができる。
【0016】
ここで図2、図3、図4に関して説明されるように、本発明の好ましい実施形態によると、同じ数の磁壁ビットに対して、レーストラックを短くすることができる。本発明の好ましい実施形態は、磁壁をレーストラックに沿って1方向のみに移動させれば済むレーストラックを提供し、それにより、磁壁が1方向にしか移動しないため、より信頼性の高い磁壁の移動を有するレーストラック構造体を可能にする。この点で、磁壁は読み出しされると破壊され、次いでレーストラックに再書き込みされる。
【0017】
図2A、図2B、図2Cは、磁気シフト・レジスタ10aに向けられた本発明の好ましい実施形態を示す。図2Aにおいては、シフトされた磁壁を格納するためのリザーバは存在しない。磁気ナノワイヤすなわちレーストラックは、一連の磁区及びそれらに関連づけられた磁壁が存在する、ストレージ領域40aを含む。ストレージ領域40aは、ナノワイヤの製造又は電気接点及び/又は1つ又は複数の読み出し要素20a及び書き込み要素15aの組み込みがより容易になるように、ナノワイヤ自体と同じ長さのもの、又は、ナノワイヤの長さより短いものとすることができる。
【0018】
電流のパルスを用いて、領域40a内の一連の磁壁を、矢印31aで示される単一の方向にナノワイヤに沿って移動させることができる。この矢印の方向は、ナノワイヤのいずれかの端部において電気接点56aを介してナノワイヤに印加された電流又は電流パルスの影響を受けて磁壁が移動する方向を表す。これらの接点は、ナノワイヤに沿った任意の場所、ナノワイヤのいずれかの端部、又はストレージ領域40aの外側であってもよい。
【0019】
一連の磁区が、ナノワイヤの長さに沿った方向を指す各磁区における磁化方向とともに、図2Aに概略的に示される。しかしながら、各磁区内の磁化は任意の方向を指すことができ、例えば、磁化は、ナノワイヤの長さに対して直角とするか又はナノワイヤの長さに対してある任意の方向に配列させることができることに留意されたい。また、各磁区内の磁化の分布は、特定の方向に沿って完全に整列されるわけではなく、単一の方向からいくらか方向が変位している場合があることに留意されたい。
【0020】
図2Bは、1つ又は複数の電流パルスをナノワイヤに印加してナノワイヤに沿って磁区を移動させた後の、領域40aにおける一連の磁壁の位置を示す。図2Bからわかるように、磁区のいくつかがシフトしてナノワイヤの長さから外れたため、このプロセス後の磁区の数は減少している。最終的に、図2Cにおいては、本質的に全ての磁区が、ナノワイヤの外にシフトされ、ナノワイヤ内には格納されていない。70で表示された概略的なデバイスにより示されるように、これらの磁区は、レーストラック・メモリ・デバイス100aの読み出し、書き込み、及びシフト機能をサポートする下にある超小型回路デバイス内に構築されたメモリ・デバイスに、一時的に格納される。磁区又は磁壁は、引用により本明細書に組み込まれる、2004年12月21日にParkinに対して発行された「Shiftable magnetic register and method of using the same」という名称の特許文献1において説明されるように、書き込み要素15aを用いてレーストラックに書き込み、デバイス20aを用いて読み出すことができることに留意されたい。メモリ・デバイス70と電気接点56aは、図2に示されるように隙間(例えば空気)によって分離するか、又は、絶縁層によって分離することができる。磁区は、電流パルスで読み出しデバイス20aを越えて押されることによって単純に「消滅」し、最終的に、電流パルスによって磁気ナノワイヤの端部から押し出される。磁区又は磁壁は、読み出し要素を越えて押されるとアクセスできなくなるため、レーストラックから効果的に消去される。ナノワイヤの端部は、ナノワイヤを例えばテーパー状の点又は円形若しくは楕円形に成型することによって、磁壁がナノワイヤの端部において又は端部に向かって確実に物理的に消去されるように、設計することができる。
【0021】
図2A、図2B、図2Cは、デバイス70に格納される一連の磁壁を示すが、デバイス70にはいくつかの又は1つのみの磁区又は磁壁素子を格納することができるという利点がある。デバイス100aに存在する磁区又は磁壁素子の数が少ないほど、レーストラック・メモリ・デバイスをより小型にすることができるが、コストはより高くなる。本発明の1つの実施形態においては、ストレージ領域40aにおける一連の磁区/磁壁を1ユニットずつ、ナノワイヤに沿って31aの方向に徐々にシフトし、読み出し要素20aによって1回に1つの磁区又は磁壁が読み出されるようにすることができる。この磁区又は磁壁は、次いで、ナノワイヤの外にシフトされるが、その状態はメモリ・デバイス70に記録される。次の動作において、ナノワイヤから消去されたこの素子の状態は、書き込み要素15aを用いてナノワイヤの最上部に書き戻される。
【0022】
本明細書においては、方向を示す用語(上又は下など)が用いられるが、これらの用語は、本発明の実装形態をこれらの方向に限定することを意図するものではない。同様に、最上部及び最下部という表現は、単にレーストラックの対向する端部を指すに過ぎない。
【0023】
また、図2A、図2B、図2Cにおいては、レーストラックは円形の断面を有するように示されるが、このナノワイヤの形状は、1)磁壁を確実に移動させることを可能にする一方で、2)磁壁の十分な熱安定性を提供する、円形、楕円形、正方形、長方形又は任意の他の形状とすることができる。この点で、レーストラックに沿った一連の「ピン止めサイト」、すなわち、磁壁のエネルギーが減少する、トラックに沿った磁壁の好ましい位置を用いることが有利である。これらの「ピン止めサイト」は、磁壁のエネルギー的に安定な位置を定め、それにより連続するビットの間の間隔を定めるに当たって、重要な役割を担うことができる。ピン止めサイトは、そのコピーが付録として本明細書と共に提出される、2008年8月22日に出願された「Magnetic recetrack with current−controlled motion of domain walls within an undulating engery landscape」という名称の本出願人の同時係属出願番号12/197155においてより詳細に説明される。
【0024】
メモリ・デバイス70は、揮発性素子及び不揮発性素子などといった多くのメモリ・ストレージ要素のいずれか1つを含むことが有利である。例えば、このメモリ・デバイスは、SRAM、DRAM、FRAM、MRAM、PCRAM、RRAM、相変化メモリ、揮発性シリコン・メモリ、及び他のCMOSメモリ要素のうちの1つ又はこれらの組み合わせを含むことができる。メモリ・デバイスは、例えば、メモリ・デバイスと、レーストラック・メモリ・デバイスの速度、性能、耐久性、サイズ及びコストの製造との適合性に基づいて、選択することができる。
【0025】
図2において電気的な引き出し線によって概略的に示されるように、読み出し要素20aの検出回路が、磁気シフト・レジスタ10aにおける磁区に対応する信号を検出すると、その信号によって表される情報が、メモリ・デバイス70に書き込まれる。その情報は、次いで、書き込み要素15aによって磁気シフト・レジスタ10aに書き戻すことができる。このプロセスは、シフト・レジスタ10aにおける他の磁区について繰り返すことができる。
【0026】
メモリ・デバイス70は、デバイス70に書き込まれる情報を用いて計算を行う1つ又は複数の回路を含むか、又はこれらとインターフェースによって接続することができる。これら計算の結果は、他のデバイスに出力されるか、又は代替的に、書き込み要素15aによってシフト・レジスタ10aに書き戻すことができる。
【0027】
デバイス100aは、従来のリソグラフィ・プロセスを用いて、例えば最初にメモリ・デバイス70を形成することにより、製造することができる。次に、下部の電気接点56a(例えば金属で作られる)をメモリ・デバイス70の上に形成することができる。次に、読み出し要素20a、磁気ナノワイヤすなわち磁区を含むレジスタ10aのレーストラック、書き込み要素15a、及び上部の電気接点56aを順に形成することができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態の利点は、磁区及び磁壁がレーストラックに沿って単一方向にのみシフトされ、それにより、レーストラックの設計、製造、及び動作が単純化され、同一の格納ビット数に対してレーストラックをより短くすることができ、従って動作が速くかつ製造しやすいことである。磁壁が一方向のみに移動させられるので、レーストラックに沿った磁区/磁壁の電流に誘起される移動を改善できるようにレーストラックを成形することができるという利点がある。このことは、図3に示されるいくつかの例示的なデバイスによって説明される。
【0029】
図3Aとそれに伴う拡大図3Bは、断面積がレーストラックに沿って単調に減少するレーストラック25aを示す。従って、連続する素子A、B、Cは、系統的により小さい断面積を有する。磁壁は、典型的には断面積が最も小さいことが好ましいため、レーストラックの構造は、磁壁が一方向に、より信頼性及び反復性が高い移動をするものであることが好ましい。
【0030】
図3C及びそれに伴う拡大図3Dは、セグメントD、E、Fを有するレーストラック25aを示し、断面積は、1つの素子全体にわたって単調に減少するが、1つの素子の終端から次の素子の先端まで増加する。これにより、相当大きなシフト電流が用いられない限り、磁壁が素子間を容易に移動することが防止される。従って、この構造は、熱変動などの仮性変動に対して磁壁を安定させる。
【0031】
図3E及びそれに伴う拡大図3Fは、連続するセグメント(G、H、Iとして示される)の各組の間においてノッチ状に面積が減少するレーストラック25aを示す。ノッチは、磁壁が一方向には簡単に移動するが、反対の方向には簡単に移動しないような形状にされる。これにより、レーストラック・メモリ・デバイスの動作の信頼性が向上する。
【0032】
図4及び図5は、水平方向に配向されたレーストラックを有するが、磁壁は、例えば図2に示される「垂直」レーストラック構成に関して上述されたように一方向のみに移動させられる、レーストラック・メモリ・デバイスの実装形態を示す。これらの図は、どのようにデータがメモリ・デバイスから磁気レーストラックに読み込まれるか(図4)、及び、磁気レーストラックからメモリ・デバイスに読み出されるか(図5)も示す。
【0033】
本発明は、その精神及び本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。説明された実施形態は、あらゆる点で、例示としてのみ考えるべきであり、限定的なものであると考えるべきではない。したがって、本発明の範囲は、上記の説明ではなく、特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の等価物の意味及び範囲内にある全ての変更が、その範囲内に含まれるものである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態においては、本明細書に説明された方法のいずれかを達成する実行可能プログラム・コードがコード化された媒体が提供される。このコードは、例えば、プロセッサのランダム・アクセス・メモリ(RAM)内に、又はプロセッサのハードドライブ若しくは光学ドライブ上に、常駐することができる実行可能命令を含む。この命令は、磁気若しくは光学ディスク若しくはディスケット、ディスク・ドライブ、磁気テープ、読み出し専用電子メモリ、又は他の好適なデータ・ストレージ・デバイスに格納することができる。好ましい実施形態において、このプログラム・コードは、本明細書に開示された方法のいずれか1つ又は複数を行うためのプロセッサ又はコンピュータなどのデジタル処理装置によって、読み出すことができる。
【符号の説明】
【0035】
10、10a 磁気シフト・レジスタ
15、15a 書き込み要素
20、20a 読み出し要素
25 データ・カラム
31、31a 磁壁の移動方向
30、35 磁区
36、37、38、39 磁壁
40、40a データ領域
45 上部リザーバ
50 下部リザーバ
55 電流
56、56a 電気接点
70 メモリ・デバイス
100、100a 磁気メモリ・システム
111 制御回路
112 基板
136、137、138、139、140 磁化方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料を含むトラックであって、前記トラックは、前記トラックを流れる電流に応じて前記トラックに沿ってシフトすることができる磁性領域を含むように設計され、前記磁性領域はそれぞれの磁壁を含む、トラックと、
前記トラックにおけるそれぞれの磁性領域により表されるデータを読み出すための読み出し要素であって、前記それぞれの磁性領域の前記磁壁は、前記それぞれの磁性領域により表される前記データが読みだされると消滅する、読み出し要素と、
前記読み出し要素により対応するデータが読みだされた後に前記トラックにおける磁性領域にデータを書き込むための書き込み要素と、
を含み、それによりシフト・レジスタとして機能する、デバイス。
【請求項2】
前記トラックと電気通信を行う少なくとも1つの電気要素をさらに含み、前記電気要素は、前記トラックを通して磁性領域を移動させる電流源に接続することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記読み出し要素は、前記トラックの1つの端部に配置され、前記書き込み要素は、前記トラックの別の端部に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記それぞれの磁性領域により表される前記データは、前記書き込み要素により磁性領域に書き戻される前にメモリ・デバイスに書き込まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記メモリ・デバイスは、CMOSデバイスである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記磁性領域は、前記トラックを通って一方向のみに移動させることができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
所与の磁性領域が前記トラックの1つのピン止めサイトから前記トラックの別のピン止めサイトに移動するように、前記いずれかの請求項に記載の前記デバイスの前記トラックに電流パルスを印加することを含む方法。
【請求項8】
磁性材料を含むトラックであって、前記トラックはデータを表す磁性領域を含み、前記磁性領域はそれぞれの磁壁を含み、前記トラックに印加された電流が、磁性領域を前記トラックに沿って一方向のみにシフトさせる、トラックと、
前記トラックにおけるそれぞれの磁性領域により表されるデータを読み出すための読み出し要素であって、前記それぞれの磁性領域の前記磁壁は、前記それぞれの磁性領域により表される前記データが読み出されると消滅する、読み出し要素と、
前記読み出し要素により対応するデータが読みだされた後に前記トラックにおける磁性領域にデータを書き込むための書き込み要素と、
を含み、それによりシフト・レジスタとして機能する、デバイス。
【請求項9】
前記トラックは、前記トラックに沿って単調に減少する断面積を有する、請求項1乃至6及び8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記トラックは、前記磁性領域が前記トラックを通って一方向にのみ移動するような形状にされたセグメントを含む、請求項1乃至6及び8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
前記トラックの前記断面積は、所与のセグメントの1つの端部から該所与のセグメントの対向する端部に向かって減少するが、前記所与のセグメントの前記対向する端部から前記所与のセグメントに隣接するセグメントに向かって増大する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
隣接するセグメントは、それぞれのノッチにより分離され、各ノッチは、前記ノッチに隣接する任意のセグメントの前記断面積より小さい断面積を有する、請求項10に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−514853(P2012−514853A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544003(P2011−544003)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063425
【国際公開番号】WO2010/076050
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
2.RRAM
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】