説明

レーダ装置

【課題】 他者との混信を抑制し、低コスト化を図ることができるレーザ装置を提供すること。
【解決手段】 計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段1,2と、計測用信号を発信する出力手段1dと、を備えたレーダ装置であって、計測用信号の発信条件をランダムに設定する発信条件設定手段3を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置にかかり、特に、PN符号に基づいて計測用信号を発信するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、周囲に存在する他車両との距離を計測するために、車両にレーザレーダ装置が装備されている。その一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されている装置は、他車両との混信が発生した場合に、GPSを用いて双方に共通の時間情報を取得し、この取得した時間情報に基づいて送信タイミングを変化させて調整する、というTDMA方式にて行われている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−159764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例におけるレーザレーダ装置では、GPS受信機を装備し、かつ、かかる情報を用いた処理が必要となるため、車載システムの構成が複雑となり、コストが増大する、という問題が生じうる。
【0005】
また、上述したようにTDMA方式を用いていることから、同時接続数を多数確保することが困難であり、必要によっては送信間隔を十分に広く取る必要がある。従って、測定時間が長くかかり、車両の周囲、特に、全方向などの他方向に存在する他車両や障害物を監視することが困難である、という問題が生じうる。
【0006】
このため、本発明では、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、他者との混信を抑制し、低コスト化を図ることができるレーザ装置を提供すること、をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一形態であるレーダ装置は、
計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、計測用信号を発信する出力手段と、を備え、他信号と識別可能なよう計測用信号を発信するレーダ装置であって、
計測用信号の発信条件をランダムに設定する発信条件設定手段を備えた、ことを特徴としている。
【0008】
上記発明によると、ランダムに設定されたPN符号のパターン、さらには、かかるPN符号に基づいた発信条件にて、計測用信号が出力手段から発信される。そして、かかる信号が計測などに用いられる。このように、発信条件はランダムに設定されていることから、他の者が用いる計測用信号と同一の発信条件となることが抑制され、計測用信号の混信を有効に抑制することができる。従って、かかる計測を利用する際の個別調整が不要となり、すべてを同一の構成にて生産することができるため、生産性の向上及びコストの低下を図ることができる。
【0009】
また、発信条件設定手段は、PN符号を設定することにより発信条件を設定する、ことを特徴としている。また、発信条件設定手段は、特定のPN符号に基づいて発信される計測用信号の繰り返し周期を設定することにより発信条件を設定する、ことを特徴としている。このとき、発信条件設定手段は、繰り返し周期にて設定された回数だけ発信制御手段が計測用信号を発信した後に、他のPN符号を設定することにより発信条件を設定する、ことを特徴としている。さらに、発信条件設定手段は、計測用信号の発信周期を設定することにより発信条件を設定する、ことを特徴としている。このとき、設定された発信周期が他の発信周期の整数倍とならないよう設定する、ことを特徴としている。
【0010】
このように、計測用信号を出力する際のパターンとなるPN符号や、PN符号パターンの繰り返し周期、さらには、発信周期など、計測用信号の発信条件をランダムに設定することで、多数の計測用信号の発信パターンを設定することができ、より他の者との混信を抑制することができる。特に、これらを組み合わせてそれぞれをランダムに設定することで、PN符号の符号長を長くする必要が無く、さらにそのパターンを増やすことができ、さらに有効に混信を抑制することができる。
【0011】
また、発信条件設定手段は、値が所定の周期にて変化する複数ビットから成るカウンタを備えると共に、所定のタイミングにて決定されるカウンタの値に基づいて計測用信号の発信条件を設定する機能を有する、ことを特徴としている。このとき、発信条件設定手段は、カウンタの予め指定されたビットの値に応じて、計測用信号の発信条件を設定する、ことを特徴としている。これにより、複数ビットからなるカウンタを用いることで、容易にランダムな発信条件を設定することができ、構成が容易となる。
【0012】
また、カウンタは、レーダ装置が装備された物体に対する所定の操作を検出することにより変化している当該カウンタの値を決定する機能を有する、ことを特徴としている。さらに、カウンタは、レーダ装置が装備された物体に対する所定の操作を検出することにより当該カウンタの値の変化を開始する機能を有すると望ましく、特に、カウンタの値が1周する時間は、0.1[msec]以下であるとなお望ましい。例えば、レーダ装置は、車両に備えられており、カウンタは、車両のキーポジションを検出して、当該検出したキーポジションに応じて変化している当該カウンタの値を決定する機能を有する。さらに具体的には、カウンタは、車両のキーポジションが通電位置で当該カウンタの値の変化を開始すると共に、エンジン始動位置で当該カウンタの値を決定する機能を有する、ことを特徴としている。
【0013】
これにより、レーダ装置が装備された物体に対する人間の操作により、カウンタの変化が開始され、その後、さらに異なる人間の操作によりカウンタ値が決定される。従って、よりランダムにカウンタの値、すなわち、発信条件を設定することができ、測定用信号の混信を有効に抑制することができる。
【0014】
また、本発明の他の形態であるレーダ装置用制御装置は、
計測用信号を発信する出力手段を備えたレーダ装置の動作を制御するレーダ装置用制御装置であって、
計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、
PN符号、特定のPN符号に基づいて発信される計測用信号の繰り返し周期、計測信号の発信周期、のうち少なくとも1つをランダムに設定することにより発信条件を設定する発信条件設定手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の他の形態であるレーダ装置用制御プログラムは、
計測用信号を発信する出力手段を備えたレーダ装置の動作を制御するレーダ装置用制御装置に、
計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、
PN符号、特定のPN符号に基づいて発信される計測用信号の繰り返し周期、計測信号の発信周期、のうち少なくとも1つをランダムに設定することにより発信条件を設定する発信条件設定手段と、を実現するための構成を採っている。
【0016】
さらに、本発明の他の形態であるレーダ装置用発信条件設定方法は、
計測用信号を発信する出力手段と、計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、を備えたレーダ装置における発信条件を設定する方法であって、
PN符号、特定のPN符号に基づいて発信される計測用信号の繰り返し周期、計測信号の発信周期、のうち少なくとも1つをランダムに設定することにより発信条件を設定する、ことを特徴としている。
【0017】
上記構成の制御装置、プログラム、方法であっても、上述したレーダ装置同様に作用するため、上記本発明の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、発信条件がランダムに設定されることにより、他の者が用いる計測用信号と同一の発信パターンとなることが抑制され、計測用信号の混信を有効に抑制することができ、従って、かかる計測を利用する際の個別調整が不要となり、すべてを同一の構成にて生産することができるため、生産性の向上及びコストの低下を図ることができる、という従来にない優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明であるレーダ装置は、計測用信号を特定のPN(Pseudo Noise)符号を用いてスペクトラム拡散変調を行って発信することにより、他信号と識別可能なよう計測用信号を発信して、計測を行う装置である。特に、使用する上記PN符号や、設定されたPN符号の繰り返し周期、発信周期など、計測用信号の発信条件をランダムに設定することに特徴を有する。以下、レーダ装置を車両に搭載し、周囲に存在する他車両の存在(距離)を計測するために用いる場合を説明する。但し、本発明のレーダ装置は、かかる使用方法に限定されない。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図10を参照して説明する。図1は、レーダ装置の全体構成を示す機能ブロック図である。図2は、カウンタ値を説明する説明図である。図3乃至図4は、レーダ装置の一部の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図5乃至図7は、レーダ装置の動作を示すフローチャートである。図8乃至図10は、レーザ装置の様子を示す説明図である。
【0021】
[構成]
レーダ装置の構成を、図1乃至図4を参照して説明する。レーダ装置は、図1に示すように、基本構成部1と、発信条件変更部2と、符号割付/計測周期決定部3と、を備えている。
【0022】
まず、基本構成部1は、短パルス発生器1aと、PN符号発生器1bと、LDドライバ/計測方向選択器1cと、LD(Laser Diode(レーザダイオード))群1dと、を備えている。そして、短パルス発生器1aから発生するパルス信号を、PN符号発生器1bで特有のPN符号を用いてスペクトラム拡散変換し、このPN符号のパターンに従ってLDドライバ/測定方向選択器1cにより選択したLD群1d(レーザダイオード)中の特定のLDを発光させる。従って、短パルス発生器1aと、PN符号発生器1bと、LDドライバ/計測方向選択器1cとは、計測用信号であるパルス信号をPN符号に基づいて発信制御する発信制御手段として機能している。
【0023】
そして、実際に計測用信号であるパルスレーザを外部に発信する投光手段(出力手段)は、上述した6個のLDからなるLD群1dにて構成されている。なお、LDは、LDドライバ1Cにより切り替えて点灯することにより、機械的な機構を使用せずに測定エリアの走査が可能な構成となっている。但し、LDを1つのみとし、LD自体を可動式にするか、可動式のミラー(ガルバノミラーなど)を用いて構成してもよい。
【0024】
ここで、PN符号としては、OOC(Optical Orthogonal Code)系列を利用することが望ましい。その利点としては、このOOC系列は、光通信用の符号系列であり、ONかOFFの2つの状態で表されるためである。また、長い符号系列を使用しても、ONの回数が少ないために光源の使用頻度が下がり、寿命、省エネに効果がある。これに対し、他の多くの符号系列は、主に電波用に適しており、プラスマイナスの状態で表され無信号時が0となる。従って、光通信に適用する場合は、無信号とマイナス側の信号が同一となってしまうため、弁別性能が低下する、という問題が生じうる。但し、位相を利用するなど工夫を施すことにより、他の系列でも使用することが可能であり、必ずしもPN符号としてOOC系列を使用すること限定されない。
【0025】
次に、符号割付/計測周期決定部3について説明する。符号割付/計測周期決定部3は、図1に示すように、カウンタクロック3aと、カウンタ3bと、カウンタ始動停止部4と、を備えている。
【0026】
上記カウンタ3bは、「0」と「1」を順に、カウンタクロック3aの回転速度で繰り返し回転する8bitからなるカウンタである。また、カウンタクロック3aは、0.1msecでカウンタ3bが1周以上回る周波数のクロック(8bitカウンタでは、2.5MHz以上)である。そして、カウンタ始動停止部4により、スタート及びストップのタイミングが与えられる。
【0027】
このスタート及びストップのタイミングとして、本実施例では、後述するように、人間の操作のランダム性を利用している。これは、一般に人間の反応速度は150msec程度であり、野球の一流投手の投げる球速が160km/h以下であることから、1cm程度(自動車のキーポジションがACCからIGON)移動するのに0.2msec(約44m/sより1cmあたり0.2msec)が限界であると考えられる。従って、上述したように、0.1msecでカウンタ3bが1周以上回るクロックであるとすると、ストップのタイミングを人間がコントロールすることは不可能となる。これにより、カウンタ3bの値をランダムに決定させることができ、後述するように、計測用信号の発信条件をランダムに設定することが可能となる。
【0028】
そして、上記カウンタ3bを始動停止するカウンタ始動停止部4の一例として、本実施例では、キーイグニッションを用いる。具体的には、キーポジションが、まず車両が通電状態となるACC4aのときにカウンタが始動し、車両がエンジン始動状態となるIGON4bのときにカウンタが停止するよう構成すると望ましい。その具体的な構成としては、イグニッションスイッチのACC及びIGONは、ジャンクションブロック(J/B)に接続されているため、この各ポジションで変化する電圧を、J/B内にコンパレータを設けて検出することによりACCポジション又はIG_ONポジションであることを検出する。このように、待機電流が必要ないACCで作動し、このACCに近いキーポジションであり、かつ、エンジン始動の前後となるIGONをストップのタイミングとすることで、省エネ(バッテリー保護)を図ることもできる。但し、カウンタ始動停止部4は、上記キーポジションを用いたものであることに限定されず、レーダ装置が装備された物体に対する何らかの操作を検出することにより、カウンタ値の変化を開始し、あるいは、変化しているカウンタ値を決定するよう構成してもよい。例えば、上述したように、車両にレーダ装置が装備されている場合には、キーレスドアロック解除、ドアオープン、キー差込、Dレンジ、アクセスON、速度10km/h以上到達(速度5km/h〜速度10km/h到達)などを、その操作の時間的な前後に応じて、始動、停止の信号として用いてもよい。
【0029】
次に、上記8bitのカウンタ3bの値について詳述する。例えば、PN符号であるOOC系列の中の1種類である(341,5,1)を利用した場合には、PN符号種類が17種類あるので、8bitのカウンタ値のうち4bitを用いることで、16種類のPN符号を割り付けることが可能である。従って、図2に示すように、bit番号0〜3を、「符号No.」として割り付ける。また、bit番号4,5を、計測用信号の発信周期となる4種類の「計測周期」として割り付ける。さらに、残りのbit番号6,7を、特定のPN符号に基づいて発信される繰り返し周期となる「符合切替周期」として割り付ける。そして、上記カウンタ3bのビット値によって設定される「PN符号」、「計測周期」、「符号切替周期」は、後述するように、計測用信号の発信条件となりうる。従って、上記符号割付/計測周期決定部3は、カウンタ3bによって発信条件をランダムに設定する発信条件設定手段として機能する。
【0030】
ここで、上記各発信条件についてさらに詳述する。まず、4bitにて特定される「符号No.」は、各bitが0又は1の2種類の表示パターンをもち、0000,0001、・・・、1111のように、2種類×4bit=16種類のPN符号パターンを表示することが可能である。以下では、例えば、この16種類のパターンをそれぞれ0〜9、A〜Fと表すこととする。
【0031】
また、2bitを与えられた「計測周期」は、00、・・・、11のように、2種類×2bit=4種類のパターン表示ができる。この4種類のパターンを、4種類の周期計測間隔時間に割り当て、例えば、1msec,2msec、3msec,4msecに割り当てる。
【0032】
また、「符号切替周期」とは、上記16種類のPN符号を用いた発信を、何回繰り返すか、ということを設定する情報である。この「符号切替周期」は、2bit与えられているため、00、・・・、11のように、2種類×2bit=4種類のパターン表示ができる。この4種類のパターンを、4種類の符号切替周期として、周期1〜4に割り当てる。例えば、符号切替周期が1である場合には、「123456789ABCDEF」のように各PN符号を1回ずつ繰り返し発信し、符号切替周期が2である場合には、「112233445566778899AABBCCDDEEFF」のように各PN符号を2回ずつ繰り返し発信する。なお、上記のように、符号切替周期(回)だけ繰り返して特定のPN符号パターンで計測した後は、符号No.を1つインクリメントして、PN符号を切り替えて再度計測する。但し、切り替えた後のPN符号は、必ずしも次の符号No.のPN符号であることに限定されない。
【0033】
なお、上述した(341,5,1)OOC系列は符号数が17種類であるので、本実施例では、車両の左右にそれぞれ備えた各レーダ装置に、異なる符号を割り付けるとすると、カウンタ3bの値を右側の符号No.として使用し(No.1〜16)、左側にはカウント値+1を割り当てて使用する(No.2〜17)こととする。
【0034】
このように、上記カウンタ3bの値により、符号No.16種類+1、計測間隔4種類、符号切替間隔4種類、の組み合わせだけ計測用信号の発信条件が存在することとなる。そして、上述したように、カウンタ3bの回転周期を設定するカウンタクロック3aを28MHzとした場合には、当該カウンタ3bは0.1msecで約11週するため、人間の操作によりカウンタ値をストップさせることで、当該カウンタ値に基づく発信条件に十分なランダム性を持たせることができる。
【0035】
次に、発信条件変更部2について説明する。この発信条件変更部2は、計測トリガ発生部2aと、符号切替部2bと、計測方向設定部2cと、により構成されている。そして、上述したように、符号割付/計測周期決定部3にて決定されたカウンタ値は、発信条件変更部2の各部2a〜2cに送られて、計測用信号の発信条件が設定される。発信条件変更部2の各部2a〜2cの構成を、図3乃至図4を参照してさらに詳述する。
【0036】
図3に、符号切替部2bを示す。まず、符号割付/計測周期決定部3のカウンタ3bにて決定された符号No.は、符号切替部2b内の符号切替カウンタ2baの初期値として送られる。そして、この初期値である符号No.は、上述した基本構成部1のPN符号発生器1bに送られ、かかる符号NO.のPN符号を用いて計測用信号が発信される。
【0037】
また、カウンタ3bにて決定された符号切替周期は、閾値としてコンパレータ2bcに送られる。そして、計測が開始されると、後述する計測トリガ発生部2aより送信される計測トリガを符号切替部2b内の計測回数カウンタ2bbにてカウントする。計測回数カウンタ2bbのカウント値は、コンパレータ2bcに送られて当該コンパレータ2bcにて比較される。そして、コンパレータの閾値(符号切替周期)と計測回数カウンタ2bbのカウント値とが一致したとき、コンパレータ2bcより一致信号が符号切替カウンタ2baに出力される。すると、符号切替カウンタ2baでは、一致信号を受信することにより、符号切替カウンタ値をインクリメントすることで、計測に使用する符号No.の切替を行う。同時に、計測回数カウンタ2bbにカウンタ値のリセット信号を送り、計測回数カウンタ値をリセットする。このように、上記処理を繰り返すことにより、符号切替周期ごとに符号No.を切り替えた計測が可能となる。
【0038】
次に、図4を参照して、計測トリガ発生部2aについて詳述する。計測トリガ発生部2aには28MHzのクロックが装備され、15bitカウンタである周波数変換器2abにてクロックをカウントし、第1のコンパレータ2adにてカウンタ値と閾値との比較を行う。ここで、計測トリガ発生部2aにおける閾値とは、閾値切替部2acから送信された「28MHz×閾値=約1msec」を満たすような値である。これにより、約1msecの計測周期用クロックをコンパレータ2adにて計測可能となり、当該コンパレータ2adからは、1msecのクロック信号が計測周期カウンタ2aeに出力される。
【0039】
そして、計測周期カウンタ2aeでは、コンパレータ2adより出力されるクロックをカウントし、このカウント値を第2のコンパレータ2afに出力する。この第2のコンパレータ2afには、上述したカウンタ3bにて決定された「計測周期」が送信されており、この計測周期と、上記計測周期カウンタ2aeからのクロックのカウント値と、が比較される。そして、比較した結果、一致している場合にコンパレータ2afより計測トリガ信号を基本構成部1の短パルス発生部1aと符号切替部1bに出力する。同時に、計測周期カウンタ2aeはリセットされる。これにより、設定された計測周期に応じた計測トリガ信号(約1msecの倍数)を発生することができ、短パルス発生器1aや、符号切替部1bなどにより、上述したように、計測周期毎に計測用信号が発信され、また、符号の切替が行われることとなる。
【0040】
[動作]
次に、上記構成のレーダ装置の動作を、図5乃至図10を参照して説明する。まず、図5を参照して、符号の割付及び計測周期、符号切替周期の決定動作を説明する。はじめに、車両にユーザが乗り込み、キーシリンダーにキーを差し込んでキーをひねる。すると、キーポジションがACCにて、8bitのカウンタ3bが回転し始め(ステップS1にて肯定判断、ステップS2)、IG_ONでカウンタがストップする(ステップS3にて肯定判断、ステップS4)。このときのカウンタ値の各bitの値により、初期符号No.、計測周期、符号切替周期といった計測用信号の発信条件が決定される。そして、かかるカウンタ値が、発信条件変更部2に出力される(ステップS5)。
【0041】
続いて、PN符合の切替動作を、図6を参照して説明する。まず、車を始動し、システムが計測動作を開始すると、初期符号No.と符号切替周期とが発信条件変更部2にてセットされて、かかる条件により基本構成部1にて計測用信号が発信され、計測が開始される(ステップS11)。その後、計測が行われるごとに発信条件変更部2の符号切替部2bにて計測回数カウントがインクリメントされる(ステップS12,S13)。そして、計測回数カウンタの値が符号切替周期と一致したら(ステップS14にて肯定判断)、符号No.カウンタをインクリメントし、次回計測時の符号を切り替える(ステップS15)。これにより、基本構成部1にて、PN符号が切り替えられて計測用信号が出力される。そして、かかる動作は、エンジンオフなどのシステムが終了するまで繰り返される(ステップS16)。
【0042】
続いて、決定された計測周期にて計測を行う動作を、図7を参照して説明する。まず、カウンタ3bにて決定された計測周期が発信条件変更部2にてセットされる(ステップS21)。そして、計測周期カウンタがスタートし(ステップS22)、この計測周期カウンタの値が、セットされた計測周期と一致した場合に(ステップS23にて肯定判断)、計測トリガを出力する(ステップS24)。これにより、計測周期毎(例えば、1msec間隔にて)に計測を行うことができる。なお、計測トリガ出力時には、計測周期カウンタが0にリセットされる。そして、かかる動作は、エンジンオフなどのシステムが終了するまで繰り返される(ステップS25)。
【0043】
このようにすることにより、8bitにて構成されるカウンタにて、256種類の計測用信号の発信パターンが形成できる。そして、車両ごとに、かつ、エンジンを始動するごとに、ランダムに異なる発信パターンが設定されるため、車両間において用いられる計測用信号そのもの、あるいは、発信タイミングなどが一致する可能性が低くなり、計測用信号の混信の発生を有効に抑制することができる。特に、8bitカウンタにて、3種類の異なる発信条件を設定することができるため、十数種類のPN符号が用意された既存の符号方式を用いても、簡易な構成にて多様な発信条件を設定することが可能となる。
【0044】
そして、本実施例では、符号切替周期を設定したことにより、PN符号パターンや計測周期等が一致している場合であっても、例えば、図8に示すように、所定回数の計測後には符号切替により混信を回避することが可能となる。さらに、本実施例では、符号切替周期が一致している場合であっても、図9に示すように、計測周期が異なっていることで(2msecと3msec)、混信する場合も生じうるが(矢印箇所参照)、他の計測時には混信を回避することができる。
【0045】
また、図10には、複数の車両間においてPN符号と計測周期が一致しているが、各車両における符合切替回数がそれぞれ異なる場合であって、そのときの混信の様子を長期的(切替周期4で一巡する回数)に検討した結果を示す。この図においては、4台の車両間において64回中17回の混信が生じているが(図において網掛け部分、及び、矢印部分参照)、7割以上の確率で混信を回避できていることがわかる。しかも、PN符号と計測周期も一致することを考慮すると、混信する確率はかなり低いものになりうる。
【0046】
以上から、本実施例によると、計測用信号の発信条件である、その発信時に用いられるPN符号、計測周期、同一パターンの符号の繰り返し周期(符号切替周期)が、ランダムに設定されることから、他の者が用いる計測用信号と同一の発信条件となることが抑制され、計測用信号の混信を有効に抑制することができる。従って、レーザ装置ごとの利用時における個別調整が不要となり、すべてを同一の構成にて生産することができるため、生産性の向上及びコストの低下を図ることができる。特に、各発信条件の組み合わせ数といった多数の計測用信号発信パターンを設定することができるため、より他の者との混信を抑制することができる。
【0047】
ここで、上記では、PN符号としてOOC系列を用いた場合を例示したが、かかる符号を用いることに限定されない。使用するPN符号は、M系列、GOLD系列、Barker符号であってもよい。さらには、単なるBinaryコードなど、個々の装置に固有の符号を用いてもよい。
【0048】
また、上記では、発信条件を8bitのカウンタ値にて設定する場合を例示したが、かかる値にて発信条件が設定されることに限定されない。例えば、さらに多くのbitを有するカウンタを用いて、さらに多くの種類の計測周期、符号切替周期を設定可能なよう構成してもよい。
【0049】
なお、上記では、車両に搭載するレーザレーダ装置を説明したが、電波(例えば、マイクロ波)を使用するレーダ装置であったり、さらには、通信装置などに用いてもよい。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明の第2の実施例を説明する。本実施例におけるレーダ装置は、上記実施例1のものとほぼ同様の構成を採っている。これに加え、本実施例では、計測用信号の発信周期が、他の発信周期の整数倍とはならないよう設定する、ことを特徴としている。以下、詳述する。
【0051】
まず、例えば、実際に計測周期を決定する計測トリガ発生部2aが、28MHzを15bitカウントすることにより、約1.2msec周期切り替え用クロックを生成する。そして、計測周期1では、この1.2msecのクロックを使用して、1.2msecごとに計測を行う。ここで、上記実施例1の場合では、計測周期が2,3,4として設定された他の計測用信号の計測周期として上記1.2msecを単に2,3,4倍というように整数倍した周期を用いることとなる。具体的には、周期1の場合には、1回目の計測から1.2msec後に2回目の計測が行われ、さらにその後、1.2msec後、つまり、1回目の計測から2.4msec後に3回目の計測が行われる。そして、周期2の場合には、1回目の計測後1.2×2=2.4msec後に2回目の計測が行われることとなり、周期1の3回目の計測と混信が生じてしまうこととなる。
【0052】
これに対して、本実施例では、周期が2以上であっても、基本周期を上記のように整数倍に設定したものを用いるわけではない。すなわち、他の種類の計測周期として、1.2msecの倍数とは異なる計測周期を設定する。そして、例えば、計測距離50mでは、約0.3μsec+αで計測が終了するが、次回計測時の周期1との計測タイミング差が計測時間である0.3μsec以上(ここでは0.5μsecとする)となれば混信を有効に抑制することができる。さらに詳述すると、周期1の場合には、基本周期ごとに約0.5μsec間だけ計測が行われるため、基本周期×整数+0.5μsecの間に他の周期の計測が重なると混信してしまうこととなる。従って、周期2以上の場合には、基本周期の倍数から上記計測時間分だけずらして計測を行えばよい。すなわち、周期2の場合には、(基本周期×2±0.5μsec)の間隔で計測を行えば、混信回数を抑制することができる。
【0053】
以上より、基本周期、すなわち、図4に示す計測周期カウンタ2aeにて計測するクロック周期を、下記の式に基づく周期を用いるとよい。
クロック周期=((基準の周期×倍数)−(1回の計測時間))÷倍数 (式1)
そして、構成としては、図4に示した閾値切替部2acと第1のコンパレータ2adにて閾値を変更することで実現できる。
なお、ここで、上記式1を、
クロック周期=((基準の周期×倍数)+(1回の計測時間))÷倍数 (式2)
としてもよいが、計測時間が延長される方向なので、式1が望ましい。
【0054】
ここで、各周期ごとに具体的な基本周期を設定して検討してみる。例えば、周期1では、28MHzを15bitカウントして約1.2msecとし、周期2では、上記式により約0.85msecとなるようなカウント数、つまり23611カウントする。同様に、周期3では、1.03msecとなるよう28611カウント、周期4では、1.08msecとなるよう30000カウントすることで異なるクロックを生成する。これにより、周期1と周期2で同じクロックを使用した場合、周期2から見ると毎回混信することとなっていたものが、それぞれ1.2msec、0.85msecのクロックを使用することで、周期1では1.2msecごと、周期2では0.85msec×2ごとに計測が行われる。従って、1.2と0.85の最小公倍数20.4msecごとに混信が生じるだけとなり、より混信頻度を減少させることができる。
【実施例3】
【0055】
次に、本発明の第3の実施例を、図11を参照して説明する。図11は、本実施例におけるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【0056】
本実施例におけるレーダ装置は、上記実施例1,2において説明した送信側システムAに加え、受信側システムBを装備したものである。そして、本発明の特徴である送信側システムAにてランダムに設定したPN符号を、受信側システムBに通知し、当該受信側システムでは計測用信号が発信されたときと同じPN符号を使用して、受信した計測用信号を逆拡散変調することにより所定の計測が可能な構成となっている。以下、各構成について詳述する。
【0057】
送信側システムAは、図11に示すように、上記実施例1にて説明した構成とほぼ同様の構成を採っており、さらに、短パルス発生器1aからの出力値が入力される受動素子としてのSAW-DLL1eと、遅延回路1fと、が装備されている。なお、送信側システムAとしての機能は、上記の通りである。
【0058】
受信側システムBは、測定対象物で反射した信号を受信するフォトダイオード8(PD)と、フォトダイオード8からの受信信号を増幅して出力するアンプ9(バンドパスフィルタ;BPF)と、信号弁別部6と、同期捕捉部7とを有している。信号弁別部6は、さらに、受動素子としてのSAW-DLL6aと、遅延回路6bと、PN符号発生器6bと、PN符号相関器6dと、を備えている。また、同期捕捉部7は、上記SAW-DLL6aと、時間計測部7aと、演算処理部7bとから構成されている。かかる構成の送信側システムA及び受信側システムBは、以下のように動作する。
【0059】
まず、送信側システムAのレーザダイオード1dから発信された計測用信号は、測定対象物により反射されてレーダ装置側に向きを変えて伝搬する。すると、受信側システムBのフォトダイオード8が反射信号を受信する。そして、受信側システムBでは、受信した計測用信号を逆拡散変調する。このとき、受信側システムBのPN符号発生器6cは、計測用信号に使用されているPN符号の符号No.を送信側システムAのPN符号発生器1bから通知を受けており、これにより、発信時に用いたPN符号と同一のPN符号を使用して適切に受信した計測用信号を復調することが可能となる。
【0060】
そして、時間計測部7aが、送信側システムBの短パルス発生器1aから計測用信号発信時に計時開始トリガを受信したときから、計測用信号を受信したときまでの時間を計測し、その時間データを演算処理部7bに出力する。その後、演算処理部7bは、この時間データを用いて、レーダ装置から測定空間内の測定対象物までの距離を演算する。なお、その計測手法については、既知のものであるためその説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明であるレーダ装置は、車両に搭載され障害物や他車両の存在を検出する装置として使用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1における構成を示すブロック図である。
【図2】カウンタ値のデータ構成を示す説明図である。
【図3】符号切替部の構成を示すブロック図である。
【図4】計測トリガ発生部の構成を示すブロック図である。
【図5】カウンタ値決定時の動作を示すフローチャートである。
【図6】符号切替時の動作を示すフローチャートである。
【図7】計測周期に基づいた計測時の動作を示すフローチャートである。
【図8】計測時における混信の様子を示す説明図である。
【図9】計測時における混信の様子を示す説明図である。
【図10】計測時における混信の様子を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例3における構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基本構成部(発信制御手段)
2 発信条件変更部(発信制御手段)
3 符号割付/計測周期決定部(発信条件設定手段)
4 カウンタ始動停止部
1a 短パルス発生器
1b PN符号発生器
1c LDドライバ/計測方向選択器
1d レーザダイオード(出力手段)
2a 計測トリガ発生部
2b 符号切替部
2c 計測方向設定部
3a カウンタクロック
3b カウンタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、前記計測用信号を発信する出力手段と、を備え、前記PN符号を用いて他信号と識別可能なよう前記計測用信号を発信するレーダ装置であって、
前記計測用信号の発信条件をランダムに設定する発信条件設定手段を備えた、ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記発信条件設定手段は、前記PN符号を設定することにより前記発信条件を設定する、ことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記発信条件設定手段は、特定の前記PN符号に基づいて発信される前記計測用信号の繰り返し周期を設定することにより前記発信条件を設定する、ことを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記発信条件設定手段は、前記繰り返し周期にて設定された回数だけ前記発信制御手段が前記計測用信号を発信した後に、他の前記PN符号を設定することにより前記発信条件を設定する、ことを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記発信条件設定手段は、前記計測用信号の発信周期を設定することにより前記発信条件を設定する、ことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記発信条件設定手段は、前記発信周期を他の発信周期の整数倍とはならないよう設定する、ことを特徴とする請求項5記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記発信条件設定手段は、値が所定の周期にて変化する複数ビットから成るカウンタを備えると共に、所定のタイミングにて決定される前記カウンタの値に基づいて前記計測用信号の発信条件を設定する機能を有する、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記発信条件設定手段は、前記カウンタの予め指定されたビットの値に応じて、前記計測用信号の発信条件を設定する、ことを特徴とする請求項7記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記カウンタは、前記レーダ装置が装備された物体に対する所定の操作を検出することにより変化している当該カウンタの値を決定する機能を有する、ことを特徴とする請求項7又は8記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記カウンタは、前記レーダ装置が装備された物体に対する所定の操作を検出することにより当該カウンタの値の変化を開始する機能を有する、ことを特徴とする請求項9記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記カウンタの値が1周する時間は、0.1[msec]以下である、ことを特徴とする請求項9又は10記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記レーダ装置は、車両に備えられており、
前記カウンタは、前記車両のキーポジションを検出して、当該検出したキーポジションに応じて変化している当該カウンタの値を決定する機能を有する、
ことを特徴とする請求項9,10又は11記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記カウンタは、前記車両のキーポジションが通電位置で当該カウンタの値の変化を開始すると共に、エンジン始動位置で当該カウンタの値を決定する機能を有する、ことを特徴とする請求項12記載のレーダ装置。
【請求項14】
計測用信号を発信する出力手段を備えたレーダ装置の動作を制御するレーダ装置用制御装置であって、
前記計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、
前記PN符号、特定の前記PN符号に基づいて発信される前記計測用信号の繰り返し周期、前記計測信号の発信周期、のうち少なくとも1つをランダムに設定することにより前記発信条件を設定する発信条件設定手段と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置用制御装置。
【請求項15】
計測用信号を発信する出力手段を備えたレーダ装置の動作を制御するレーダ装置用制御装置に、
前記計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、
前記PN符号、特定の前記PN符号に基づいて発信される前記計測用信号の繰り返し周期、前記計測信号の発信周期、のうち少なくとも1つをランダムに設定することにより前記発信条件を設定する発信条件設定手段と、
を実現するためのレーダ装置用制御プログラム。
【請求項16】
計測用信号を発信する出力手段と、前記計測用信号を所定のPN符号に基づいた発信条件にて発信制御する発信制御手段と、を備えたレーダ装置における前記発信条件を設定する方法であって、
前記PN符号、特定の前記PN符号に基づいて発信される前記計測用信号の繰り返し周期、前記計測信号の発信周期、のうち少なくとも1つをランダムに設定することにより前記発信条件を設定する、
ことを特徴とするレーダ装置用発信条件設定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−322849(P2006−322849A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147144(P2005−147144)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】