説明

ロアモールの取付構造

【課題】経年変化によるガタの発生、異音の発生がなく、組付作業性が良いロアモールの取付構造を提供する。
【解決手段】ロアモール101は、第1貫通穴110が形成された本体部111,本体部に連設され、積層部61のアウタパネル57及びインナパネル59と間隔を介して対向し、積層部を挟むように形成された積層部対向部113,積層部対向部に形成され、積層部のインナパネルに当接可能なインナパネル当接リップ(インナパネル弾性部)115,積層部対向部に形成され、積層部のアウタパネルに当接可能なアウタパネル当接リップ(アウタパネル弾性部)117からなり、積層部は、インナパネルが位置する面と交差する面上に形成され、インナパネルには本体部の第1貫通穴と対向する第2貫通穴121が形成され、ロアモールの第1貫通穴を挿通し、インナパネルの第2貫通穴に係合するクリップ(係合部材)123を用いて、ロアモールは積層部に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボデーのサイドシルに沿って、アウタパネルの下部と、インナパネルの下部とが積層されて形成された積層部に取り付けられるロアモールの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は自動車の側面図である。図に示すように、ボデー3のフロントドア1及びリヤドア2の下側に対向部分には、サイドシル4となっている。
図4は、図3の切断線A−Aでの断面図である。図に示すようにフロントドア1は、ドア外板を構成するアウタパネル5と、ドア内板を構成するインナパネル6とを有している。
【0003】
フロントドア1の下部には、ボデーのサイドシル4に沿って、アウタパネル5の下部と、インナパネル6の下部とが積層されて形成された積層部7が形成されている。積層部7には、サイドシル4に当接するリップ9が形成されたロアモール10が取り付けられている。
【0004】
ここで、ロアモール10の積層部7への取付構造を説明する。
ロアモール10は、インナパネル6に沿って配置され、第1貫通穴11が形成された本体部12と、本体部12に連設され、積層部7を挟むように形成された積層部対向部13とからなっている。積層部対向部13には、積層部7のインナパネル6に当接可能なインナパネル当接部13aと、積層部7のアウタパネル5に当接し、弾性を有するアウタパネルリップ部13bとが形成されている。
【0005】
積層部7は、インナパネル6が位置する面と交差する面上に形成され、更に、インナパネル6にはロアモール10の本体部12の第1貫通穴11と対向する第2貫通穴15が形成されている。
【0006】
そして、ロアモール10の第1貫通穴11を挿通し、インナパネル6の第2貫通穴15に係合する係合部材16を用いて、ロアモール10は積層部7に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−271847号公報(段落番号0002−0003、図2、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示すロアモールの取り付け構造では、以下のような問題点がある。
(1)部品の寸法誤差を吸収するために、第1貫通穴11,第2貫通穴15のうち一方の貫通穴の径は、大きめに作られ、係合部材16との間にガタが発生している。一方、積層部7は、ロアモール10の積層部対向部13のインナパネル当接部13aとアウタパネルリップ部13bとで挟まれている。そして、アウタリップ13bの弾性により、前記ガタが吸収されている。
【0008】
しかし、アウタリップ13bが劣化して弾性がなくなると、上下方向のガタが発生し、異音が発生する問題点がある。
(2)積層部7は、ロアモール10の積層部対向部13で挟まれる。ロアモール10の積層部対向部13を下方からフロントドア1の積層部7へ組み付ける際、位置調整のために、ロアモール10をインナパネル6側(車内側)に移動させる場合、アウタパネルリップ部13bがアウタパネル5に当接し、更に、アウタパネルリップ部13bが弾性変形することにより、大きな移動が可能である。しかし、ロアモール10をアウタパネル5側(車外側)に移動させる場合は、インナパネル当接部13aがインナパネル6に当接すると、それ以上の移動は禁止される。よって、組付作業性が悪い問題点がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、経年変化によるガタの発生、異音の発生がなく、組付作業性が良いロアモールの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、ボデーのサイドシルに沿って、ドアのアウタパネルの下部と、インナパネルの下部とが積層されて形成された積層部に取り付けられるロアモールの取付構造において、前記ロアモールは、前記インナパネルに沿って配置され、第1貫通穴が形成された本体部,該本体部に連設され、前記積層部のアウタパネル及びインナパネルと間隔を介して対向し、前記積層部を挟むように形成された積層部対向部,該積層部対向部に形成され、前記積層部のインナパネルに当接可能なインナパネル弾性部,前記積層部対向部に形成され、前記積層部のアウタパネルに当接可能なアウタパネル弾性部からなり、また、前記積層部は、前記インナパネルが位置する面と交差する面上に形成され、更に、前記インナパネルには前記本体部の第1貫通穴と対向する第2貫通穴が形成され、前記ロアモールの第1貫通穴を挿通し、前記インナパネルの第2貫通穴に係合する係合部材を用いて、前記ロアモールは前記積層部に取り付けられることを特徴とするロアモールの取付構造である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記インナパネル弾性部、前記アウタパネル弾性部のうちの少なくとも一方の弾性部は、弾性体でなり、断面形状がリップ形状であることを特徴とする請求項1記載のロアモールの取付構造である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記インナパネル弾性部、前記アウタパネル弾性部のうちの少なくとも一方の弾性部は、弾性体でなり、断面形状が中空形状であることを特徴とする請求項1記載のロアモールの取付構造である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1−3に係る発明によれば、ロアモールの積層部対向部には、前記積層部のインナパネルに当接可能なインナパネル弾性部と、前記積層部のアウタパネルに当接可能なアウタパネル弾性部とが形成されていることにより、経年変化によりどちらかの弾性部の弾性が劣化しても、他方の弾性部の弾性により、ロアモールのガタの発生、異音の発生がない。
【0014】
また、ロアモールを積層部に組み付ける場合、 ロアモールの積層部対向部には、前記積層部のインナパネルに当接可能なインナパネル弾性部と、前記積層部のアウタパネルに当接可能なアウタパネル弾性部とが形成されていることにより、ロアモールをインナパネル側、アウタパネル側に移動させることができるので、組付作業性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は、形態例のロアモールの取付構造を有する自動車の側面図である。図において、53はボデー、51はフロントドアである。フロントドア51の切断線B−Bでの断面図を図1に示す。
【0016】
フロントドア51の下部には、ボデーのサイドシル55に沿って、アウタパネル57の下部と、インナパネル59の下部とが積層されて形成された積層部61が形成されている。積層部61の先端部では、アウタパネル57の下側が折り込まれ、インナパネル59の下部を挟み込む加工(ヘミング加工)が施され、アウタパネル57とインナパネル59とは一体化されている。
【0017】
そして、積層部61には、サイドシル55に当接するリップ103が形成されたロアモール101が取り付けられている。
ここで、ロアモール101の積層部61への取付構造を説明する。本形態例のロアモール101は、内部に板状の芯材(ステンレスの薄板)105をに有する弾性を有する樹脂107の樹脂成形品を用いている。
【0018】
ロアモール101の断面は、インナパネル59に沿って配置され、第1貫通穴110が形成された本体部111と、本体部111に連設され、積層部61のアウタパネル57及びインナパネル59と間隔を介して対向し、積層部61を挟むように形成された積層部対向部113とに大別される。
【0019】
積層部対向部113には、積層部61のインナパネル59に当接可能なインナパネル弾性部として、弾性を有し断面形状がリップ状のインナパネル当接リップ115と、積層部61のアウタパネル57に当接可能なアウタパネル弾性部として、弾性を有し断面形状がリップ状のアウタパネル当接リップ117とが形成されている。
【0020】
また、積層部61は、インナパネル59が位置する面と交差する面上に形成され、更に、インナパネル59には本体部111の第1貫通穴110と対向する第2貫通穴121が形成されている。
【0021】
そして、ロアモール101の第1貫通穴110を挿通し、インナパネル59の第2貫通穴121に係合する係合部材としてのクリップ123を用いて、ロアモール101は積層部61に取り付けられる。
【0022】
このような構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ロアモール101の積層部対向部113には、積層部61のインナパネル59に当接可能なインナパネル当接リップ115と、積層部61のアウタパネル57に当接可能なアウタパネル当接リップ117とが形成されていることにより、経年変化によりどちらかのリップの弾性が劣化しても、他方のリップの弾性により、ロアモール101のガタの発生、異音の発生がない。
(2)ロアモール101を積層部61に組み付ける場合、ロアモール101の積層部対向部113には、積層部61のインナパネル59に当接可能なインナパネル当接リップ115と、積層部61のアウタパネル57に当接可能なアウタパネル当接リップ117とが形成されていることにより、位置調整のために、ロアモール101をインナパネル59側(車内側)、アウタパネル57側(車外側)に移動させることができるので、組付性作業性が良い。
【0023】
尚、本発明は、上記形態例に限定するものではない。上記形態例では、ロアモール101の積層部対向部113に形成したインナパネル弾性部,アウタパネル弾性部は、弾性材でなり断面形状がリップ状のものを用いたが、他には、弾性体でなり、断面形状が中空形状のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】形態例のロアモールの取付構造を有する自動車の側面図である図2のフロントドアの切断線B−Bでの断面図である。
【図2】形態例のロアモールの取付構造を有する自動車の側面図である。
【図3】図3は自動車の側面図である。
【図4】図3の切断線A−Aでの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
57 アウタパネル
59 インナパネル
61 積層部
101 ロアモール
110 第1貫通穴
111 本体部
113 積層部対向部
115 インナパネル当接リップ(インナパネル弾性部)
117 アウタパネル当接リップ(アウタパネル弾性部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデーのサイドシルに沿って、ドアのアウタパネルの下部と、インナパネルの下部とが積層されて形成された積層部に取り付けられるロアモールの取付構造において、
前記ロアモールは、前記インナパネルに沿って配置され、第1貫通穴が形成された本体部,該本体部に連設され、前記積層部のアウタパネル及びインナパネルと間隔を介して対向し、前記積層部を挟むように形成された積層部対向部,該積層部対向部に形成され、前記積層部のインナパネルに当接可能なインナパネル弾性部,前記積層部対向部に形成され、前記積層部のアウタパネルに当接可能なアウタパネル弾性部からなり、
また、前記積層部は、前記インナパネルが位置する面と交差する面上に形成され、
更に、前記インナパネルには前記本体部の第1貫通穴と対向する第2貫通穴が形成され、
前記ロアモールの第1貫通穴を挿通し、前記インナパネルの第2貫通穴に係合する係合部材を用いて、前記ロアモールは前記積層部に取り付けられることを特徴とするロアモールの取付構造。
【請求項2】
前記インナパネル弾性部、前記アウタパネル弾性部のうちの少なくとも一方の弾性部は、弾性体でなり、断面形状がリップ形状であることを特徴とする請求項1記載のロアモールの取付構造。
【請求項3】
前記インナパネル弾性部、前記アウタパネル弾性部のうちの少なくとも一方の弾性部は、弾性体でなり、断面形状が中空形状であることを特徴とする請求項1記載のロアモールの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−30607(P2008−30607A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206283(P2006−206283)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】