説明

ロボットにおける回転体干渉回避制御方法及び回転体干渉回避制御装置並びにこれを有する塗装装置

【課題】複雑な形状の回転ワークの場合であっても、ロボットとの干渉を起こすことなく、良好な塗装品質を得ることのできる、ロボットにおける回転体干渉回避制御方法及び回転体干渉回避制御装置ならびにこれを用いた塗装装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる、回転中心の周りに回転する回転テーブル上に載置されたワークの外形表面に対し、前記回転中心を原点として前記ワークに対して作用するようにロボットアームを駆動するロボットの制御方法は、前記回転テーブルの回転位置を検出し、制御プログラムにより、前記検出された前記回転テーブルの回転位置に基づいて前記回転テーブルの回転中心に対するロボットアーム位置を指令し、この指令されたロボットアーム位置と前記ワークの位置との距離が干渉の可能性に相当する基準値以下の場合には、ロボットアーム位置を前記ワークから遠ざけるように指令することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業用ロボット装置、例えば、塗装ロボットにおける回転体ワークの塗装の際の塗装用ガンとワークとの干渉を防止する回転体干渉回避制御方法および回転体干渉回避制御装置並びにこれを有する塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを使用した塗装装置は産業界で広く採用されており、特に塗料の余分な消費を抑え、かつ作業効率化を図るため、塗装用ガンが移動するだけでなくワークも回転させるようにして塗装を行う技術は広く知られている。
【0003】
この手法でワークの塗装を行う場合、通常は複数の小型ワークを例えば円盤状の支持台の周辺部上に円形状に配置し、この円盤状支持台を回転させ、必要に応じて各ワークを自転させて塗装を行っている。また、他の形式の回転体ワークの塗装装置の一例としては、複数の回転するワーク支持体を設けたもの(特許文献1参照)が知られている。
【0004】
従来の塗装ロボットにおいては、回転体、例えば円柱のような形状のワークに対しては、ガンとワークとを10cm程度の一定の距離だけ離れるように制御することが容易であるため、塗料を安定に噴霧することができ、塗料消費が少ない上に塗装ムラも少なく、塗装乾燥後のワークの仕上がりも良い。
【0005】
しかし、回転体ではない形状のワークの塗装においては、塗装用ガンの位置を固定してしまうと、塗装用ガンとワークの距離が刻々変化するため、塗装膜に厚い部分と薄い部分が生じる塗装ムラが発生して、満足な塗装品質が得られなかった。
【0006】
また、塗装用ガンとワークとの干渉は絶対に避けなければならないため、塗装用ガンはワークの立体的な最大外形を考慮してワークから塗装の最適距離よりも十分離隔してワークから位置されるため、塗装の作業効率が必ずしも高くはなかった。
【0007】
一方、塗装用ガンをワークに近づけるため、塗装ロボットとは異なる制御系で移動する物体に対して倣い動作を行う協調動作という制御技術が存在する。これは、スピンドルモータをサーボモータで回転させ、同期させることにより、2つのサーボ系を同期させる技術である。
【0008】
しかし、一方向に高速で回転し続けるワークに対してならい動作を行うのは実際問題として困難である。
【特許文献1】特開平10−76198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来知られているロボットを用いた塗装装置では、複雑な形状のワークを干渉なしに十分な品質で塗布できるようなものは存在していない。特に、一つまたは小数の大型ワークの場合には、塗装対象物が回転体形状となることはまれであり、そのようなワークを塗装のために回転させた時、塗装用ガンとワークの距離を均一に保つことは困難である。
【0010】
本発明は、このような複雑な形状の回転ワークの場合であっても、ロボットとの干渉を起こすことなく、良好な塗装品質を得ることのできる、ロボットにおける回転体干渉回避制御方法及び回転体干渉回避制御装置ならびにこれを用いた塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点によれば、
回転中心の周りに回転する回転テーブル上に載置されたワークの外形表面に対し、前記回転中心を原点として前記ワークに対して作用するようにロボットアームを駆動するロボットの制御方法において、
前記回転テーブルの回転位置を検出し、
制御プログラムにより、前記検出された前記回転テーブルの回転位置に基づいて前記回転テーブルの回転中心に対するロボットアーム位置を指令し、この指令されたロボットアーム位置と前記ワークの位置との距離が干渉の可能性に相当する基準値以下の場合には、ロボットアーム位置を前記ワークから遠ざけるように指令することを特徴とする回転体干渉回避制御方法が提供される。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、
回転中心の周りに回転する回転テーブル上に載置されたワークの外形表面に対し、前記回転中心を原点として前記ワークに対して作用するように駆動されるロボットアームを備えたロボット装置において、
前記回転テーブルの回転位置を検出する検出器と、
制御プログラムにより、前記検出器で検出された前記回転テーブルの回転位置に基づいて前記回転テーブルの回転中心に対するロボットアーム位置を指令するとともに、この指令されたロボットアーム位置と前記ワークの位置との距離が干渉の可能性に相当する基準値以下の場合には、ロボットアーム位置を前記ワークから遠ざけるように指令する制御装置とを備えた回転体干渉回避制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
発明にかかる回転体干渉制御方法および制御装置では、回転ワークを載置する回転テーブルの回転中心を基準として、制御プログラムにより算出されたロボットアーム指令とワーク外形位置とが基準距離以上近接している場合にはロボットアーム位置をワークから遠ざけるように制御しているので、複雑形状のワークの場合でも、ロボットアームとワークの干渉を防止することが可能となる。したがって、ロボットがワークとの干渉の回避動作を自動的に行うため、制御プログラムの作成にあたっては、オベレータはワークの回転を意識せずにプログラミングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明にかかる回転体干渉回避制御方法及び回転体干渉回避制御装置における制御方式を説明するための座標系を示す模式図であり、ここでは塗装用ロボット装置1とワーク3とを例示して、これらの関係を示している。この図1においては、説明を容易化するために、円柱状のワークが回転自在のワークテーブル(図示せず)上に支持されたものとして描かれている。
【0016】
ここで使用されるロボット1は、それぞれXYZRθ軸である第1軸から第5軸までの5軸について駆動され、先端に塗装用ガン2を有している。このロボット1自体はX軸方向移動機構と、複数のアームによるY軸およびZ軸方向移動機構と、振れ角用のR軸回転機構を有する典型的かつ良く知られたものである。
【0017】
ここで塗装用ガンの平面移動用の第1軸および第2軸であるXY軸はワークテーブルの回転中心を原点Oとし、塗装用のガンの上下方向直線駆動軸であるZ軸は回転テーブルの上面を原点とする。第4軸のR軸は塗装用ガンの向きを表すものであって、塗装用ガンの左右の振れ角を制御する。また、第5軸のθ軸は、ワークテーブルの回転中心を原点Oとして、これを通る垂直軸に対するワークの回転を表す回転軸である。これら5軸は、それぞれの軸に設けられた図示されていないサーボモータにより駆動される。
【0018】
本願発明においては、ワークの回転時の外形を正確に把握することがきわめて重要であるので、以下、ワークの外形の認識について述べる。なお、以下においては、ワークが回転体の場合にはその回転中心がワークテーブルの回転中心と正確に一致しているものとする。また、簡略化のため、塗装用ガンはX軸上のみを移動し、Y座標は常に0であるものとする。
【0019】
図1より明らかなように、ワークの底面の外形位置は、Z=0での原点OからのX座標であるXwで示されている。また、図1においては、ガンはX軸上を移動できるようになっているため、原点Oとガンの距離はX座標XGで示される。
【0020】
図2はこの円柱形状ワークを一回転(360°)させたときのワークの先端のX座標値の変化を示している。この場合には円柱であり、どの高さ位置でも半径の値が一定であるため、ワーク先端のX座標位置はZ座標値のいかんにかかわらず、常に一定になっており、塗装用ガンの先端をこれに追随させるためには塗装用ガンのX座標を変える必要はないことがわかる。
【0021】
これに対し、図3は、正四角柱ワークの形状を示す平面図である。図4はワークの中心を原点Oに置き、各角を座標軸方向にしてワークテーブルヘ載置したときの、ワーク先端のX座標位置データを示しており、45°ごとに最大値XAと最小値XBとの間で定期的に増減変化を繰り返すことがわかる。なお、この場合も柱体であるので、ある回転角度におけるX座標はZ座標値のいかんにかかわらず一定である。
【0022】
図5は、原点Oから途中のZ座標Z1までは円柱で、Z座標Z1からZ2までは上方に向かうにしたがって半径が広がる逆円錐状を呈するワークについて、その外形のX軸とZ軸方向のデータを示すものである。
【0023】
この場合にはZ軸方向の移動に伴ってワークのX座標の位置は変化するため、塗装品質を向上させるためには、塗装用ガンはZ軸の座標変化に従ってX軸方向にも変化させる必要がある。
【0024】
このためには、Z軸座標値を選択した上で、各Z軸座標位置に対してワークをθ軸まわりに回転させ、ワークの先端座標をサンプリングしつつ、その座標を採取することにより、ワークの形状情報を得ることができる。この場合、座標の採取は教示モードで行うことができる。また、Z軸座標値はワークの形状に応じてサンプリングの程度を変えることができ、例えばZ軸方向に形状が大きく変化する場合にはZ軸方向のサンプリング精度を細かくし、錐体、柱体のようにZ軸方向の形状変化が少ないか規則性がある場合にはサンプリング精度を粗くすることができる。
【0025】
図6は、このようにして得られたワーク形状情報のデータテーブルの一例を示す図表である。このデータは単純化のためZ座標とθ座標でX座標を得るように3軸情報として示されているが、Z座標とθ座標の各組み合わせに対し、さらに塗装用ガンの方向制御用の軸であるR軸を複数の値で変化させたものを得るようにしても良い。
【0026】
一方、塗装用ガンの移動座標は、プログラムされた塗装用ガンの移動指令情報で求まる。この移動軌跡を実現するために、各軸についての駆動データが得られ、これにより、塗装用ガンが指令位置に移動させられる。
【0027】
したがって、回転テーブルの回転角度をパラメータとして、移動指令データに基づく塗装用ガンの位置とワーク形状データとを比較することにより、ワークと塗装用ガンとの干渉の有無およびワークと塗装用ガンの距離が判明することとなる。
【0028】
図7は、本発明にかかる回転体干渉回避制御装置を含むロボット制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【0029】
このロボット制御装置100は、全体の制御を行うCPU10と、これにバス11を介して接続されたキーボード入力装置12、LCDモニタ装置13、ROM14、RAM15、ロボットコントローラ20、プログラマブルコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)40を主要な構成としている。
【0030】
キーボード12は制御のための必要な入力を行うものであるが、ティーチングなどにおいては、後述するように別個の入力端末が使用されることもある。
【0031】
LCDモニタ装置13は、このロボット制御装置における入出力データを含むステータスを表示するものである。
【0032】
ROM14にはロボット制御装置としての制御プログラムが格納され、RAM15は動作プログラムの格納や制御用に必要なデータの一時記憶として用いられる。
【0033】
CPU10にはロボット制御装置の主要部をなすロボットコントローラ20が接続されており、このロボットコントローラ20はメインコントローラ21、サーボ部22,プログラマブルコントローラ(PLC)23、I/O部24を有している。
【0034】
このロボットコントローラ20の動作を説明すると、キーボード12の操作により、CPU10の指令でROMから読み出された制御プログラムはメインコントローラ21により解析され、別途入力された形状データを考慮してサーボ部22に各軸に対する駆動量を算出させる。
【0035】
この際、制御プログラムの指令に基づき、メインコントローラ21に対し形状データ等の必要なデータのティーチングが行われるが、キーボード12から形状測定結果に基づき予め準備された数値を直接入力するのみでなく、Z軸座標を変化させつつワークをθ軸の周りに回転させて例えばレーザ形状測定器で得られる外形形状を教示モードで自動入力することができる。また、オペレータが使いやすいティーチ端末機30をメインコントローラ21に直接接続してこれを用いてティーチングを行うようにしてもよい。なお、キーボードからのティーチングは煩雑であるので、ワークの形状によっては、角度の分解能を粗くしてワークの形状を入力することもある。
【0036】
サーボ部22の出力はロボットコントローラ20内のプログラマブルコントローラ23を介して外部のプログラマブルコントローラ40に送られ、CPU10の制御下で、最終的にロボットアーム50の、X、Y、Z、R軸の各サーボモータおよび回転テーブルのθ軸のモータ60に対して駆動指令が出力される。
【0037】
本願発明においては、ワークの回転、すなわち回転テーブルの回転に応じた塗装用ガンの制御を行うことが前提となっているため、回転テーブルを回転させるθ軸用モータにはエンコーダ等の回転角度検出器が備えられ、その出力はI/O部24によりメインコントローラ21にフィードバックされるようになっている。
【0038】
したがって、メインコントローラにおいては、現在の回転角度を知ることができ、この回転角度に対してワークの形状とプログラムされた塗装用ガンの位置を知ることができる。
【0039】
これらを比較して、干渉を生ずる可能性がある場合には塗装用ガンを後退させる干渉回避制御を行う必要がある。
【0040】
以下にこの本発明の主要部をなす、ワークと塗装用ガンの干渉回避についての詳細に説明する。
【0041】
図8は外形と塗装用ガンとの関係を示す三次元座標系の説明図である。ここではある回転角度θ1の位置においてあるZ軸座標Z1での平面を想定し、ワーク外形と塗装用ガンの先端位置との関係を述べる。
【0042】
図8を参照すると、通常のXYZ3次元座標系において、回転角θ1における原点OとワークW外形および塗装用ガンGの立体的位置が示されている。ワーク上の点と塗装用ガンとは原点を通る同一垂直断面に属することとなる。
【0043】
制御装置により教示される塗装用ガンの位置はZ1平面での座標である。そしてこの塗装用ガンに対応するワーク外形を表す座標も同じZ1平面におけるものである。ところが、ワーク外形位置と原点との距離L1と、この外形位置に対応する塗装用ガンの原点からの距離L2とは、原点から見たこれらの位置に対する仰角はそれぞれα1およびα2であるため、(L2−L1)はZ1平面上の塗装用ガンとワークとの距離LWGとは多少異なる。
【0044】
(1)塗装用ガンとワークとの距離LWG計算
このため、次の手順に従って塗装用ガンとワークとの距離LWGを求める。
(a) 教示されたZ1平面でのワーク外形点の原点からの平面距離X1。この値は、回転角度θ1におけるワーク外形のX座標XW1である。
(b) ワーク外形点と原点間の距離L1。この値はワーク外形点のx座標値XW1とZ座標値Z1から (XW1+Z11/2として求まる。
(c) 教示されたZ1平面での塗装用ガン位置の原点からの距離X2。この値は、回転角度θ1における塗装用ガンGのX座標XG1である。
(d) 原点と塗装用ガン位置間の距離L2。この値は塗装用ガン位置のX座標値XG1とZ座標値Z1から(XG1+Z11/2として求まる。
(e) 塗装用ガンと原点とを結ぶ直線とワーク外形が交わる点における原点からワーク外形点までの距離L3。この値は、厳密には塗装用ガンと原点とを結ぶ直線とワーク外形との交点を探す必要があるが、仰角α1およびα2の差が微小であるとき、あるいはL1およびL2が大きな値であるときには、L1・(α1−α2)と近似させることができる。
(f) LWGは L2−L3として求まる。
【0045】
(2)ワークとガンの干渉可能性確認
続いて、ワークと塗装用ガンとの干渉の可能性を確認する。このため、分配処理において、原点と塗装用ガン位置の距離L2が、原点からワーク干渉領域までの距離L3よりも小さい箇所がないかどうかを確認し、次にこの干渉を避けるような回避処理が行われる。
【0046】
図9はこのような干渉可能性を確認し、回避処理を行う様子を示す説明図であり、Z軸の回りで回転する円柱状ワークの塗装を行うものとして教示された塗装用ガンを用いて、実際には完全には真円でない円柱状ワークに対して塗装を行う塗装ロボットの場合を考える。
【0047】
図9においては、横軸を回転座標、縦軸を距離で表しており、X座標XWはZ座標Z1における実測したワーク外形を示す。この例では本来真円の円柱状のワークを想定していたが、現実には真円でなく、図9のようにXWの値は変動しているものとする。また、塗装用ロボットを想定し、ロボットアームの先端には塗装用ガンが取り付けられるものとする。
【0048】
このような場合について、上述したような演算により求めたLWGを同時に示すと、XWが最も大きくなった位置でマイナスになっており、ワークと塗装用ガンとの干渉が起こることがわかる。しかも、XWの増加減少傾向とLWGの増加減少傾向は同じX座標でほぼ逆方向となっている。
【0049】
このことから、前述したような複雑な演算を行って正確にワーク外形と塗装用ガンの干渉の有無を確認することは必ずしも必要なく、ワークの外形変化を正確に知ることができれば、ワークと塗装用ガンの干渉を効果的に防止し、かつ良好な品質の塗装に必要な距離を確保できることがわかる。
【0050】
図9に戻ると、XG1はワークWの本来の予定外形位置と一致し、塗装用ガンが最もワークWに接近できる位置である。また、XG2は塗装を行う上で必要な距離XMをXG1に加えた距離を表しており、ワークが正確な真円円柱状であれば、この位置に塗装用ガンが存在することにより、最適な塗装が可能となるものと考えられる。
【0051】
しかし、ここでも実際のワークの形状がXG2よりも大きくなっている部分ではワークと塗装用ガンの干渉が起きることになる。
【0052】
そこで、本発明においては、X座標のみを監視し、ワークWの形状XWが予定形状XG1よりも小さい外形のときには、教示された塗装用ガン位置XG2を用い、ワークWの形状XWが予定形状XG1よりも大きい外形のときには、ワーク形状XWに必要な距離XMを加えた値を塗装用ガン位置XGとして教示するようにしている。
【0053】
これにより、塗装用ガンは教示軌道を外れて回転するワークを回避することができる。
【0054】
以上の処理手順を整理したものを図10のフローチャートに示す。
【0055】
まず、Z軸方向高さ位置を基準値例えば0に設定し、ワークの外周位置、すなわち回転中心(Z軸)からワーク外形までの距離XWをワークの回転角度θnを角度 n=0のときを基準として変化させることにより求める(ステップS1)。したがって、外周形状はこの基準位置からの角度θと原点からの距離Xwの組み合わせとして得られる。
【0056】
この場合、回転角度を細かくするほど外形精度は向上するが、それに比例してデータ量が増加して、データ入力、演算、処理に時間がかかるため、必要に応じてデータを取得する回転角度の数を減少させることができる。例えば、原点に対して点対称、線対称の場合、特に円形の場合には取得すべきデータ量を減少させることができる。なお、回転角度は、通常360°であるが、制御プログラムで塗装範囲が限定されているときにはその範囲のみでも良い。
【0057】
次に、Z軸方向に高さ位置を変化させてステップS1と同様にワーク断面形状を求める(ステップS2)。この場合、特に回転テーブルの基準角度、例えばθ=0のときのワークの垂直断面を基準断面という。
【0058】
ステップS1およびS2で求められた外周形状、ワーク断面形状についての測定結果は、図6に示したようなワーク形状データテーブルとして記憶され(ステップS3)、任意の回転角度θおよび高さ位置に対して回転中心からワーク表面までの距離を求めることができる。
【0059】
次に、プログラムにより与えられる、塗装用ガン位置を求めるため、θをθ0(初期値)とする(ステップS4)。
【0060】
次に、このθ0座標に対してロボットアーム位置を求める(ステップS5)。このときに求められるのは、予定外形に近接したXG1と、これより所定距離遠ざけたXG2である。
【0061】
次に、予め記憶されたワーク形状データXWを読み出す(ステップS6)。
【0062】
次に、ワーク位置と塗装用ガンの位置関係を調べて、塗装用ガンの位置XGを決定する(ステップS7)。すなわち、ワーク形状データXWがXG1より小さいときにはロボットアーム位置を本来の教示位置であるXG2とする(ステップS8)。一方、ワーク形状データXWがXG1より大きいときにはロボットアーム位置をこの外形に一定距離XMを加えた距離XW+XMとする(ステップS9)。
【0063】
次に、角度を増加させるが(ステップS10)、必要範囲での軌道探索が終了したかどうかを確認し(ステップS11)、終了した場合には全体の処理を終了し、終了していない場合には、ステップS5に戻って処理を繰り返すことにより塗装用ガンの軌跡を確定する。このようにして得られた軌跡は、図9において実線XGとして示されている。
【0064】
以上の実施例では、塗装用ロボットを想定してロボットアーム先端に塗装用ガンを有する例で説明したが、このようなロボットに限られることなく、回転体ワークに対して処理を行うあらゆる産業用ロボットにおいてロボットアームの先端部における回転体ワークとの干渉回避に適用できるものである。
【0065】
このように、ワークの回転に応じて得られた実際の形状をもとに、干渉あるいは品質低下のおそれがあるほどワークに近接した状態を避けるように塗装用ガンの位置を決定しているので、プログラムにより教示された位置指令では干渉や不十分な塗装品質を招く場合でも、ワークの実際形状にもとづいてプログラムで指令された軌道から外れて最適位置に自動修正することが可能となる。
【0066】
なお、上述した実施例では教示された位置を変更する場合にX方向に原点から離れるように移動するようにしているが、塗装用ガン位置と原点を結ぶ直線上を原点から離れる方向に遠ざけるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明にかかる回転体干渉回避制御方法及び回転体干渉回避制御装置における制御方式を説明するための座標系を示す模式図である。
【図2】円柱形状ワークを一回転(360°)させたときのワークの先端のX座標値の変化を示すグラフである。
【図3】正四角柱ワークの形状を示す平面図である。
【図4】図3に示した正四角柱ワークのワーク先端のX座標位置データを示すグラフである。
【図5】一部に逆円錐状を有するワークについて、その外形のX軸とZ軸方向のデータを示すグラフである。
【図6】ワーク形状情報を記憶するデータテーブルの一例を示す図表である。
【図7】本発明にかかる回転体干渉回避制御装置を含むロボット制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】通常のXYZ3次元座標系において、回転角θ1における原点OとワークW外形および塗装用ガンGの立体的位置を示す説明図である。
【図9】ワークとガンの干渉可能性を確認し、回避処理を行う様子を示す説明図である。
【図10】本発明による干渉回避制御手順を簡略に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
10 CPU
11 バス
12 キーボード入力装置
13 LCDモニタ装置
14 ROM
15 RAM
20 ロボットコントローラ
21 メインコントローラ
22 サーボ部
23 PLC
24 I/O部
30 ティーチ端末機
40 PLC
50 ロボットアーム
60 モータ
70 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心の周りに回転する回転テーブル上に載置されたワークの外形表面に対し、前記前記回転テーブル上の前記回転中心を原点としてロボットアームを前記ワークに対して作用するように駆動するロボットの制御方法において、
あらかじめ前記ワークの外形表面の三次元形状を前記原点からの距離として求めて記憶しておき、
前記回転テーブルの回転位置を検出し、
前記検出された回転位置に基づいて、制御プログラムにより指令されたロボットアームの三次元上の指令位置を求め、
この指令されたロボットアーム位置と前記ワークの外形位置間の距離を所定の基準値とを比較し、前記基準値よりも大きいときには指令位置をそのまま用い、前記基準値以下の場合には、ロボットアーム位置を前記ワークから遠ざけるように指令することを特徴とする回転体干渉回避制御方法。
【請求項2】
前記ロボットアーム位置を前記ワークから遠ざける場合には、前記ロボットアームを同一高さ位置の平面上で前記原点から離れるように移動させることを特徴とする回転体干渉回避制御方法。
【請求項3】
回転中心の周りに回転する回転テーブル上に載置されたワークの外形表面に対し、前記前記回転テーブル上の前記回転中心を原点としてロボットアームを前記ワークに対して作用するように駆動するロボットの制御装置において、
あらかじめ前記ワークの外形表面の三次元形状を前記原点からの距離として求める手段と、
前記ワーク外形表面を表す前記原点からの距離を記憶する手段と、
前記回転テーブルの回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記検出された回転位置に基づいて、制御プログラムにより指令されたロボットアームの三次元上の位置指令を発生する分配手段と、
この指令されたロボットアーム位置と前記ワークの外形位置間の距離を所定の基準値とを比較し、前記基準値よりも大きいときには指令位置をそのまま用い、前記基準値以下の場合には、ロボットアーム位置を前記ワークから遠ざけるように指令する制御手段とを備えたことを特徴とする回転体干渉回避制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−320009(P2007−320009A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155619(P2006−155619)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】