ロボットの教示装置、およびロボットの制御装置
【課題】ロボットのハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロである、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作をロボットに短時間で教示する。
【解決手段】ハンドツールを備えたロボットに動作を教示する教示装置であって、部品組付け方向と直交する方向にハンドツールを平行移動させて該ハンドツールの位置を調整する平行移動操作手段60a〜62bと、ハンドツールを組付け方向と直交する方向に延びる回転中心線を中心として回転させて該ハンドツールの姿勢を調整する回転操作手段64a〜66bと、ハンドツールに作用する力とモーメントを検出する力覚センサと、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段と回転操作手段に対する操作の情報を、力覚センサの検出結果とハンドツールの位置と姿勢とに基づいて表示する表示手段50とを有する。
【解決手段】ハンドツールを備えたロボットに動作を教示する教示装置であって、部品組付け方向と直交する方向にハンドツールを平行移動させて該ハンドツールの位置を調整する平行移動操作手段60a〜62bと、ハンドツールを組付け方向と直交する方向に延びる回転中心線を中心として回転させて該ハンドツールの姿勢を調整する回転操作手段64a〜66bと、ハンドツールに作用する力とモーメントを検出する力覚センサと、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段と回転操作手段に対する操作の情報を、力覚センサの検出結果とハンドツールの位置と姿勢とに基づいて表示する表示手段50とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに動作を教示するロボットの教示装置およびロボットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業者がティーチングペンダントを使用してロボットに動作を教示することが行われている。作業者がティーチングペンダントによってロボットを所望の動作に操作することにより、その所望の動作をロボットの制御装置に記憶させる。これにより、以後、ロボットは、自動的に所望の動作を繰り返し実行することができる。
【0003】
このような教示は、ロボットに自動的に実行させる動作に必要とされる精度が高いほど、多くの時間が必要になるとともに、作業者に高い能力を要求する(熟練を必要とする)。
【0004】
例えば、ロボットが部品を把持してワークに組付ける動作(またはワークに組付け済みの部品を取外す動作)、特に嵌合いの公差がシビアな嵌込み動作を教示する場合、具体例を挙げれば、ロボットに丸軸の部品を把持させ、ワークの丸孔に該丸軸を挿入させる動作を教示する場合、その教示は困難である。理由は、丸孔の径が公差の下限値であって丸軸の径が公差の上限値である場合を想定し、丸軸を丸孔に抵抗なくスムーズに挿入できる動作をロボットに教示しなければならないからである。
【0005】
このような組付け動作を教示する場合、教示の一部として、作業者は、次の作業を実行することがある。作業者は、まず、ティーチングペンダントを介してワークに組付け済みの部品をロボットのハンド部(ハンドツール)に把持させる。次に、その状態を維持したまま、作業者はティーチングペンダントを介してハンドツールの位置と姿勢とを微小に種々に変化させ、ハンドツールに作用する力とモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定する。この作業で特定した姿勢で特定した位置を通過するように、部品を把持したハンドツールが平行移動すれば、部品は抵抗なくスムーズにワークに挿入される。
【0006】
ハンドツールに作用する力およびモーメントは、力覚センサによって知ることができる。例えば、特許文献1に記載のロボットは、部品を把持するハンドツールに力覚センサが取付けられており、力覚センサが検出した力およびモーメントはモニタに表示される。作業者は、モニタを介して力およびモーメントが提示されることにより、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを高精度に特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−262563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、ハンドツールに作用する力およびモーメントがモニタを介して提示されるため、作業者は、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置および姿勢を高精度に特定することが可能になる。しかしながら、それには、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを、作業者が、モニタを見ながら、ティーチングペンダントを介してロボットを種々に操作し、試行錯誤を重ねて探し出さなければならない。この試行錯誤に長時間かかる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、作業者が、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作、またはワークに組付け済みの部品をハンドツールによって把持して取り外す動作をロボットに教示する際、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを、力覚センサによって高精度に特定できるように、且つその特定が短時間でできるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様は、
ハンドツールを備えたロボットに対し、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作またはワークに組付け済みの部品を該ハンドツールによって把持して取り外す動作を教示するときに、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定可能なロボットの教示装置であって、
部品の組付けまたは取外し方向と直交する第1方向、または組付け/取外し方向および第1方向と直交する第2方向にハンドツールを平行移動させて該ハンドツールの位置を調整するときに作業者が操作する平行移動操作手段と、
ハンドツールを第1方向に延びる第1回転中心線または第2方向に延びる第2回転中心線を中心として回転させて該ハンドツールの姿勢を調整するときに作業者が操作する回転操作手段と、
ハンドツールに作用する第1方向の第1力、第2方向の第2力、第1回転中心線まわりの第1モーメント、および第2回転中心線まわりの第2モーメントを検出する力覚センサと、
力覚センサの検出結果と、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作の情報を、力覚センサの検出結果とハンドツールの位置と姿勢とに基づいて表示する表示手段とを有する。
【0011】
また、本発明の別の態様は、ロボットの制御装置であって上述のロボットの教示装置を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作、またはワークに組付け済みの部品をハンドツールによって把持して取外す動作をロボットに教示する際、ハンドツールに作用する力およびモーメントが表示手段を介して作業者に提示される。また、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作の情報が、表示手段を介して作業者に提示される。これにより、作業者は、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを、長時間試行錯誤することなく、高精度に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るロボットの教示装置を備えたロボットの構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すロボットの制御系を示す図である。
【図3】本発明に係る教示を説明するための図である。
【図4】本発明に係る教示を説明するための別の図である。
【図5】タッチパネルの画面を示す図である。
【図6】タッチパネル上の操作ボタンを説明するための図である。
【図7】力とモーメントの変化量を示すバーを説明するための図である。
【図8】ハンドツールの状態遷移図を示すウインドウの図である。
【図9】図8に示すウインドウを説明するための図である。
【図10】図8に示すウインドウを説明するための別の図である。
【図11】図8に示すウインドウを説明するためのさらに別の図である。
【図12】本発明に係る実施例と比較例の力FxとモーメントMyの変化を示している。
【図13】本発明に係る実施例と比較例の力FyとモーメントMxの変化を示している。
【図14】本発明の別の実施の形態に係る、ハンドツールの状態遷移図ウインドウを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る教示装置を備えたロボットの構成を概略的に示している。また、図2は、そのロボットの制御系を示している。
【0015】
図1に示すロボット10は、6つの関節10a〜10fを備えたロボットであって、その先端のツール取付けフランジ(以下、「フランジ」と称する)10gに、部品P1を把持するハンドツール12が取付けられている。また、図2に示すように、ロボット10は、関節10a〜10fそれぞれを駆動するモータM1〜M6と、これらのモータM1〜M6を制御する制御装置14とを有する。
【0016】
制御装置14は、複数のモータM1〜M6を制御するモータ制御部14aと、ハンドツール12を制御するハンドツール制御部14bとを有する。モータ制御部14aが複数のモータM1〜M6を制御することによってロボット10の姿勢を調節し、フランジ10gの位置と姿勢とを調節する、すなわちフランジ10gに取付けられているハンドツール12の位置と姿勢とを調節する。また、ハンドツール制御部14bが、ハンドツール12を制御し、該ハンドツール12に部品P1を把持させる、または把持している部品P1をリリースさせる。
【0017】
また、ロボット10は、作業者が所望する動作を該ロボット10に教示するためのティーチングペンダント16を有する。このティーチングペンダント16はロボット10を手動で操作するためのコントローラであって、タッチパネル18を備えており、作業者はタッチパネル18を介してロボット10を操作する。そのために、制御装置14は、作業者がタッチパネル18に対して実行した操作と対応した操作信号をティーチングペンダント16から受け取り、その受け取った操作信号をモータM1〜M6の制御信号に変換してモータ制御部14aに出力するティーチングペンダント制御部14cを有している。
【0018】
このティーチングペンダント制御部14cはまた、作業者がロボット10に所望の動作を教示する場合、作業者がティーチングペンダント16(タッチパネル18)に対して実行した該所望の動作と対応する操作に基づいて、所望の動作をロボット10に自動的に実行させる自動運転プログラムを作成するように構成されている。また、作成した自動運転プログラムを記憶部14dに記憶するように構成されている。例えば、タッチパネル18上に表示された「教示開始ボタン」が作業者によって押されると、それ以後の作業者のタッチパネル18に対する操作に基づいて、自動運転プログラムを作成する。このように作成された自動運転プログラムに基づいて、制御装置14は、モータ制御部14aを介して複数のモータM1〜M6を制御することにより、該プログラムに対応する動作をロボット10に実行させる。
【0019】
さらに、ティーチングペンダント制御部14cは、ティーチングペンダント16のタッチパネル18に教示を補助するための情報を表示するように構成されている。
【0020】
例えば、ロボット10のフランジ10gにはハンドツール12の先端を撮影するカメラ20が取付けられており、そのカメラ20の撮影画像がタッチパネル18に表示される。
【0021】
また、ロボット10のフランジ10gとハンドツール12との間には力覚センサ22が設けられており、力覚センサ22の検出結果がタッチパネル18に、カメラ20の撮影画像に重なった状態で表示される。この力覚センサ22は、ハンドツール12に作用する力とモーメントとを検出する。
【0022】
厳密に言えば、力覚センサ22は、ハンドツール12に作用する力とモーメントとを直接検出しているわけではなく、図3に示すように、自身に定義されているセンサ座標系ΣSに基づく力を検出している。力覚センサ22は、センサ座標系ΣSのX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMy、Z軸まわりのモーメントMzを検出する。しかしながら、力覚センサ22とハンドツール12は固定されているので、ハンドツール12に作用する力とモーメントは、力覚センサ22が検出する力とモーメントは対応している。なお、力覚センサ22は、センサ座標系ΣSのZ軸がフランジ10gのフランジ面10gaと直交するように該フランジ10gに取付けられている。
【0023】
ティーチングペンダント制御部14cがタッチパネル18に表示するその他の情報については、本実施の形態が対象とする教示の詳細とともに説明する。
【0024】
本実施の形態が対象とする教示の詳細と、その教示の補助について説明する。
【0025】
本実施の形態が対象とするロボット10に教示する動作は、図1に示すように、部品P1をワークP2に抵抗なくスムーズに組付ける動作、またはワークP2に組付け済みの部品P1を抵抗なくスムーズに取外す動作である。具体的に言えば、部品P1の軸形状の嵌合部P1a(特には、その軸径が公差の上限値)をワークP2の孔P2a(特には、その孔径が公差の下限値)にハンドツール12をセンサ座標系ΣSのZ軸方向(特許請求の範囲に記載の「組付け方向」と「取外し方向」とに対応)に移動させることにより抵抗なくスムーズに嵌込む動作、または逆に抵抗なくスムーズに引抜く動作である。
【0026】
このような動作をロボット10に教示するためには、作業者は、図3に示すように、ワークP2に組付け済みの部品P1をハンドツール12が把持したときに、該ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロ(例えば、ゼロに近い所定値)になるような該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業を、教示の一部として実行する必要がある。
【0027】
具体的に言えば、作業者は、ティーチングペンダント16によってハンドツール12をセンサ座標系ΣSのX,Y軸方向に微小に平行移動させるおよび/またはX,Y軸を中心として微小に回転させることにより、ハンドツール12の位置と姿勢とを微小に種々に変化させ、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定する。
【0028】
なお、これらの前提として、ハンドツール12は、部品P1の形状に対応し、部品P1を常に決まった姿勢で把持するように構成されている。すなわち、ハンドツール12に把持された状態の部品P1の該ハンドツール12に対する位置と姿勢とが一定であることが前提である。例えば、ハンドツール12によって把持される部品P1の把持部P1bが丸軸形状であって、ハンドツール12が三つ爪を備えて、その三つ爪により丸軸形状の把持部P1bの外周面を把持する。
【0029】
ここからは、作業者が、ティーチングペンダント16を介して、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定するときに、タッチパネル18を介してその特定作業を補助する理由について説明する。
【0030】
まず、作業者は、ワークに組付け済みの部品P1をハンドツール12が把持したときに該ハンドツール12に作用する力やモーメントを、これらが極めて微小であるため、当然ながら目視では把握できない。そのために、作業者は、ハンドツール12の力とモーメントとを検出する力覚センサ22を頼りにする。
【0031】
ところが、力覚センサ22の検出値(数値)を見ただけでは熟練者でないかぎり、ハンドツール12をどの方向に平行移動するべきか、またはどの軸を中心にいずれの方向に回転させるべきかが直感的に判断できない。その結果、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢との特定に時間がかかる。したがって、作業者がハンドツール12の平行移動方向や回転方向を直感的に判断できるように補助する必要がある。
【0032】
また、ワークP2に組付け済みの部品P1と該部品P1を把持するハンドツール12とを1つの片持ち梁Bと考えて説明すると、図4(a)に示すように、センサ座標系ΣSのX軸方向の力FxとY軸まわりのモーメントMyとが発生していると、力FxまたはモーメントMyのいずれか一方が変化すると、他方も変化する。具体的には、力Fxが増加するとモーメントMyも増加し、力Fxが減少するとモーメントMyも減少する。また、モーメントMyが増加すると力Fxも増加し、モーメントMyが減少すると力Fxも減少する。
【0033】
同様に、図4(b)に示すように、Y軸方向の力FyとX軸まわりのモーメントMxとが発生していると、力FyまたはモーメントMxのいずれか一方が変化すると、他方も変化する。具体的には、力Fyが増加するとモーメントMxが減少し、力Fyが減少するとモーメントMxが増加する。また、モーメントMxが増加すると力Fyが減少し、モーメントMxが減少すると力Fyが増加する。
【0034】
そのため、作業者は、ティーチングペンダント16に対し、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyとが略同時に略ゼロになるように、具体的には力FxとモーメントMyとの差をなくしつつ両者が略ゼロになるようにハンドツール12をX軸プラス方向に平行移動させる操作、X軸マイナス方向に平行移動させる操作、Y軸中心にプラス方向に回転させる操作、Y軸中心にマイナス方向に回転させる操作の少なくとも1つを実行する必要がある。
【0035】
厳密に言えば、力Fxと、モーメントMyを仮想的長さL(例えば、図3に示すように、把持部P1bの先端(図4に示す梁Bの固定端に対応)からセンサ座標系ΣSの原点(梁Bの自由端に対応)までの長さ)で割って求まる、モーメントによって発生するセンサ座標系ΣSの原点でのせん断力My/Lとの差が略ゼロになるように、且つ力FxとモーメントMyとを略ゼロにする必要がある。
【0036】
当然ながら、この場合、作業者は、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyとに基づいて、ティーチングペンダント16に対して実行する操作、すなわち、ハンドツール12をX軸プラス方向に平行移動させる操作、X軸マイナス方向に平行移動させる操作、Y軸中心にプラス方向に回転させる操作、およびY軸中心にマイナス方向に回転させる操作の中から1つを選択しなければならない。これら複数の操作の中から、力FxとモーメントMyが、短時間に略同時に略ゼロにできる操作を選択しなければならない。この操作選択を間違えると、力FxとモーメントMyとの差が大きくなり、一方がすぐにゼロになっても他方がすぐにゼロにならないことがある。したがって、作業者が正しい操作を選択できるように補助する必要がある。なお、このことは、力FyとモーメントMxについても同様である。
【0037】
さらに、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業は、ハンドツール12の位置と姿勢とが少しずつ変化するように、ティーチングペンダント16を介してロボット10を操作することにより行われる。
【0038】
例えば、作業者が、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyとが略ゼロになるように、ハンドツール12をX軸マイナス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させる操作を繰り返し実行する。このとき、繰り返すにしたがって力FxとモーメントMyとの差が大きくなる、または繰り返してもその差が小さくならないことがある。
【0039】
この場合、作業者は、ハンドツール12をX軸マイナス方向に平行移動させる操作が適切ではないこと(誤っていること)に気が付き、これとは異なる操作を開始する。そして、しばらく様々な操作を実行した後、再度、適切でないと気付いた操作(ハンドツール12をX軸マイナス方向に平行移動させる操作)を実行することがある。これは、作業者が過去に行った操作を記憶していないことによる。したがって、作業者が誤った操作を再び繰り返さないように補助する必要がある。
【0040】
さらにまた、作業者は、ティーチングペンダント16を種々に操作して、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業を実行していると、その途中に、その作業の進捗状況やその操作の正しさ(実行中の操作が誤っていないこと)を知りたいことがある。加えて、作業者は、自身のティーチングペンダント16の操作によってハンドツール12の位置と姿勢とがどのように遷移したか知りたいことがある。したがって、作業者がこれらを知ることができるように補助する必要がある。
【0041】
ここからは、上述した補助を実行することができる構成要素、具体的にはティーチングペンダント制御部14cによってティーチングペンダント16のタッチパネル18に表示される内容について説明する。
【0042】
図5は、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢との特定を補助することが可能な、ティーチングペンダント16のタッチパネル18のGUI(Graphical User Interface)画面50を示している。
【0043】
タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、力覚センサ22が検出した力を示す力十字線52(実線)と、モーメントを示す十字線54(破線)とが表示される。これらの十字線52,54は、区別するために、異なる色で表示されている。
【0044】
力十字線52は、X軸方向の力FxとY軸方向の力Fyの両方を示しており、その画面上の位置が力Fx,Fyとに対応している。具体的には、力十字線52の交点52pの画面50の横方向Wの位置がX軸方向の力Fxを示し、画面50の縦方向Hの位置がY軸方向の力Fyを示している。また、力十字線52は、X軸方向の力FxとY軸方向の力Fyの両方がゼロである場合、その交点52pが画面50の中心を示す十字形状のセンターマーク56に一致した状態で表示される。したがって、センターマーク56から力十字線52の交点52pが離れるほど、力覚センサ22は大きい力を検出していることを示す。
【0045】
さらに、力十字線52は、その交点52pが、X軸方向の力Fxがプラス値(プラス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の右側(図面右側)に位置するように表示され、一方、力Fxがマイナス値(マイナス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の左側(図面左側)に位置するように表示される。
【0046】
さらにまた、力十字線52は、その交点52pが、Y軸方向の力Fyがプラス値(プラス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の上側(図面上側)に位置するように表示され、一方、力Fyがマイナス値(マイナス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の下側(図面下側)に位置するように表示される。
【0047】
モーメント十字線54は、X軸まわりのモーメントMxとY軸まわりのモーメントMyの両方を示しており、その画面上の位置がモーメントMx,Myとに対応している。具体的には、モーメント十字線54の交点54pの画面50の横方向Wの位置がY軸まわりのモーメントMyを仮想長さL(図3参照)で割ったせん断力My/Lを示し、画面50の縦方向Hの位置がX軸まわりのモーメントMxを仮想長さLで割ったせん断力Mx/Lを示している。また、モーメント十字線54は、X軸まわりのモーメントMxとY軸まわりのモーメントMyの両方がゼロである場合(すなわちMx/LとMy/Lがゼロである場合)、その交点54pがセンターマーク56に一致した状態で表示される。したがって、センターマーク56からモーメント十字線54の交点54pが離れるほど、力覚センサ22は大きいモーメントを検出していることを示す。
【0048】
さらに、モーメント十字線54は、その交点54pがY軸まわりのモーメントMyがプラス値(モーメントの方向が正方向)である場合はセンターマーク56より画面50の右側に表示され、一方、モーメントMyがマイナス値(モーメントの方向が逆方向)である場合はセンターマーク56より画面50の左側に表示される。
【0049】
さらにまた、モーメント十字線54は、その交点54pが、X軸まわりのモーメントMxがマイナス値(モーメントの方向が逆方向)である場合はセンターマーク56より画面50の上側に表示され、一方、モーメントMxがプラス値(モーメントの方向が正方向)である場合はセンターマーク56より画面50の下側に表示される。
【0050】
また、タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、ハンドツール12の位置と姿勢とを調整するための操作ボタン60a〜66bが表示されている。
【0051】
「X+」操作ボタン60aは、ハンドツール12をX軸プラス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「X+」操作ボタン60aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸プラス方向に所定量平行移動する。
【0052】
「X−」操作ボタン60bは、ハンドツール12をX軸マイナス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「X−」操作ボタン60bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸マイナス方向に所定量平行移動する。
【0053】
「X+」操作ボタン60aと「X−」操作ボタン60bは、画面50の下縁に沿って、「X+」操作ボタン60aが右側に、「X−」操作ボタン60bが左側に横方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出する力Fxを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0054】
例えば、図6に示すように、作業者は、交点52pがセンターマーク56より画面50の右側に位置する力十字線52を該センターマーク56に接近させたい場合、左側に位置する「X−」操作ボタン60b、すなわち十字線52の交点52pを左方向に移動させるために押すべき操作ボタンである「X−」操作ボタン60bを直感的に押すことができる。
【0055】
「Y+」操作ボタン62aは、ハンドツール12をY軸プラス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「Y+」操作ボタン62aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がY軸プラス方向に所定量平行移動する。
【0056】
「Y−」操作ボタン62bは、ハンドツール12をY軸マイナス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「Y−」操作ボタン62bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がY軸マイナス方向に所定量平行移動する。
【0057】
「Y+」操作ボタン62aと「Y−」操作ボタン62bは、画面50の左縁に沿って、「Y+」操作ボタン62aが上側に、「Y−」操作ボタン60bが下側に縦方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出する力Fyを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0058】
「A+」操作ボタン64aは、ハンドツール12をX軸中心に正方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「A+」操作ボタン64aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸中心に正方向に所定量回転する。
【0059】
「A−」操作ボタン64bは、ハンドツール12をX軸中心に逆方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「A−」操作ボタン64bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸中心に逆方向に回転する。
【0060】
「A+」操作ボタン64aと「A−」操作ボタン64bは、画面50の右縁に沿って、「A+」操作ボタン64aが下側に、「A−」操作ボタン64bが上側に縦方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出するモーメントMxを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0061】
「B+」操作ボタン66aは、ハンドツール12をY軸中心に正方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「B+」操作ボタン66aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸中心に正方向に回転する。
【0062】
「B−」操作ボタン66bは、ハンドツール12をY軸中心に逆方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「B−」操作ボタン66bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がY軸中心に逆方向に所定量回転する。
【0063】
「B+」操作ボタン66aと「B−」操作ボタン66bは、画面50の上縁に沿って、「B+」操作ボタン66aが左側に、「B−」操作ボタン66bが右側に横方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出するモーメントMyを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0064】
さらに、タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、操作ボタン60a〜66bのいずれか1つが継続して操作された(押された)ときに、該継続操作によって変化したX軸方向の力Fx,Y軸方向の力Fy、X軸まわりのモーメントMx、またはY軸まわりのモーメントMyの変化量の少なくとも1つが、バーの形態で表示される。
【0065】
例えば、図5に示すバー70aは、「B+」操作ボタン66aが継続して何度も押されることによって変化した力Fxの変化量を示しており、「B+」操作ボタン66aの継続操作が開始されてから現時点までのX軸方向の力Fxの変化量をその長さで表現している。別の観点から見みれば、バー70aは、「B+」操作ボタン66aの継続操作によって画面50の左側に移動した力十字線52の移動量を示している。
【0066】
また、例えば、図5に示すバー70bは、「B+」操作ボタン66aが継続して何度も押されることによって変化したモーメントMyの変化量を示しており、「B+」操作ボタン66aの継続操作が開始されてから現時点までのY軸まわりのモーメントMyの変化量をその長さで表現している。別の観点から見みれば、バー70bは、「B+」操作ボタン66aの継続操作によって画面50の左側に移動したモーメント十字線54の移動量を示している。なお、バー70bは、バー70aと区別できるように異なる色で表示されている。
【0067】
バー70aとバー70bは、「B+」操作ボタン66aの継続操作によって表示されたものであるので、「B+」操作ボタン66aの近傍に表示されている。これにより、作業者は、「B+」操作ボタン66aとバー70a,70bとを視野におさめながら、「B+」操作ボタン66aを確実に継続的に押すことができる。
【0068】
さらに、これに関連し、タッチパネル18には、「B+」操作ボタン66aの継続的な操作が開始される直前に実行された、「X+」操作ボタン60aの継続操作によって変化したX方向の力Fxの変化量を示すバー72aと、Y軸まわりのモーメントMyの変化量を示すバー72bとが表示されている。過去を示すバー72a,72bは、現在を示すバー70a,70bと区別できるように、バー70a,70bと異なる色で表示されている。
【0069】
このように、同一の力やモーメントに関して今現在の変化量を示すバー70a,70bと直前(過去)の変化量を示すバー72a,72bとを表示する理由を、図7を参照しながら説明する。
【0070】
図7は、センターマーク56より画面50の右側に位置する力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとを、「X−」操作ボタン60bと「B+」操作ボタン66aとを継続的に操作してセンターマーク56に接近させたときの画面50の様子を示している。具体的には、「X−」操作ボタン60bを複数回押した後、「B+」操作ボタン66aを複数回押した状態を示している。
【0071】
図7に示すように、「X−」操作ボタン60bを継続的に操作したときのX軸方向の力Fxの変化量と「B+」操作ボタン66aを継続的に操作したときの力Fxの変化量(バー70aとバー72aの長さ)はほぼ同じであるが、Y軸まわりのモーメントMyの変化量(バー70bとバー72bの長さ)が大きく異なっている。「B+」操作ボタン66aを継続的に操作したときの方が、「X−」操作ボタン60bを継続的に操作した場合に比べて、力FxとモーメントMyとの差が大きくなっている。
【0072】
したがって、作業者は、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとをセンターマーク56に略同時に一致させるためには、すなわちX軸方向の力FxとY軸まわりのモーメントMyを略同時にゼロにするためには、力FxとモーメントMyとの差の拡大幅が小さい「X−」操作ボタン60bの継続操作を実行する方がよいと判断することができる。
【0073】
なお、図示されてはいないが、同様に、「Y+」操作ボタン62a、「Y−」操作ボタン62b、「A+」操作ボタン64a、「A−」操作ボタン64bのいずれか1つが継続的に操作されることによって変化する、Y軸方向の力FyとX軸まわりのモーメントMxの変化量もバーの形態で表示される。
【0074】
また、X軸方向の力Fxの変化量を示すバー70a,72aと、Y軸まわりのモーメントMyの変化量を示すバー70b,72bは、「Y+」操作ボタン62a、「Y−」操作ボタン62b、「A+」操作ボタン64a、「A−」操作ボタン64bのいずれか1つが操作されると、その表示が消えるようにされている。また、同様に、Y軸方向の力Fyの変化量を示すバーと、X軸まわりのモーメントMxの変化量を示すバーは、「X+」操作ボタン60a、「X−」操作ボタン60b、「B+」操作ボタン66a、「B−」操作ボタン66bのいずれか1つが操作されると、その表示が消えるようにされている。
【0075】
さらにまた、タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、ハンドツール12の状態の遷移(位置と姿勢の遷移)が表示される。
【0076】
具体的には、図8に示すように、ハンドツール12の状態の遷移は、ハンドツール12の位置と姿勢の遷移を図示化したものである状態遷移図ウインドウとして表示される。状態遷移図ウインドウ80aは、ハンドツール12のX軸方向位置の遷移とY軸を基準とする姿勢の遷移を、ハンドツール12のX軸方向の移動量ΔXとY軸まわりの回転量ΔBとによって示している。一方、状態遷移図ウインドウ80bは、ハンドツール12のY軸方向位置の遷移とX軸を基準とする姿勢の遷移を、ハンドツール12のY軸方向の移動量ΔYとX軸まわりの回転量ΔAとによって示している。
【0077】
これらの状態遷移図ウインドウ80a,80bの見方について説明する。
【0078】
状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、このウインドウ80aは、ハンドツール12を「X+」操作ボタン60aを複数回連続して押すことによりX軸方向に移動量(+ΔX1)平行移動させ、次に「B+」操作ボタン66aを複数回連続して操作してY軸中心に回転量(+ΔB1)回転させ、続いて「X−」操作ボタン60bを複数回連続して操作してX軸方向に移動量(−ΔX2)平行移動させ、最後に「B−」操作ボタン66bを複数回連続して操作してY軸中心に回転量(−ΔB2)回転させたときの、ハンドツール12のX軸方向位置の遷移と、Y軸を基準とする姿勢の遷移とを示している。
【0079】
また、状態遷移図ウインドウ80a,80bは、最新のハンドツール12の状態(位置と姿勢)が中心に位置するように、ハンドツール12の状態の遷移を示している。状態の遷移は、状態遷移の軌跡82によって示されている。
【0080】
さらに、状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、ハンドツール12の状態の遷移を示す軌跡82上に、画面50の縦方向Hに関して力十字線52とセンターマーク56とが一致したタイミングを示すマーク84(黒塗丸印)が描かれる。すなわちマーク84は、力Fxがゼロになったタイミングを示している。
【0081】
さらにまた、状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、力十字線52の横線とモーメント十字線54の横線とが一致したタイミングを示すマーク86(×印)が描かれる。すなわち、マーク86は、力FxとモーメントMyを仮想長さLで割ったせん断力My/Lとが等しくなったタイミングを示している。
【0082】
このような状態遷移図ウインドウ80a,80bを見れば、作業者は、自身の操作の履歴やこれからすべき操作を知ることができる。
【0083】
例えば、図8に示す状態遷移図ウインドウ80aを見れば、まず、作業者が、ハンドツール12をX軸方向に移動量(+ΔX1)だけ平行移動させたことがわかる。次に、作業者が、ハンドツール12をY軸中心に回転量(+ΔB1)回転させたことがわかる。続けて、作業者が、ハンドツール12をX軸方向に移動量(−ΔX2)だけ平行移動させて、力十字線52の横線とモーメント十字線54の横線とを一致させたことがわかる。また、同様に操作して、力十字線52の交点52pを、画面50の高さ方向Hに関してセンターマーク56に一致させたことがわかる。そして、作業者が、ハンドツール12をY軸中心に回転量(−ΔB2)回転させて、センターマーク56に、画面50の高さ方向H方向に関して、力十字線52とモーメント十字線54とを一致させたことがわかる。
【0084】
なお、なにも操作されていない場合は、図8の状態遷移図ウインドウ80bのように、なにも描かれない。
【0085】
このような状態遷移図ウインドウ80a,80bを表示する理由を説明する。
【0086】
まず、状態遷移図ウインドウ80a,80bに描かれている軌跡82の始点と終点とを見れば、作業者は、自身の操作により、結果として最初の状態(ハンドツール12が部品P1を把持したとき)からハンドツール12の位置と姿勢とがどのように変化したかを直感的に知ることができる。
【0087】
また、例えば、図9に示す状態遷移図ウインドウ80aが示すように、ハンドツール12をX軸マイナス方向に平行移動させる動作とY軸中心に正方向に回転させる操作を繰り返し実行し、その結果として、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとが、画面50の縦方向Hに関して離れた場合、作業者はこれらの操作が適切でないこと(誤っていること)に気付く。このとき、状態遷移図ウインドウ80aには、その誤った操作に対応する状態の遷移の軌跡82aが描かれたまま残る。
【0088】
その結果、作業者は、状態遷移図ウインドウ80aに描かれている誤った操作に対応する軌跡82aを見ることにより、誤った操作と異なる操作を実行することができる。また、作業者が新たな操作を開始する前に、図8の状態遷移図ウインドウ80a,80bを確認することにより、作業者は、誤った操作を再び実行することを防止することができる。
【0089】
さらに、状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、作業者は、マーク84、86を見れば、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとをセンターマーク56に一致させるためにすべき操作を知ることができる。
【0090】
このことを具体的に説明する。ここでは、図4と同様に、ワークP2に組付け済みの部品P1と該部品P1を把持するハンドツール12とを1つの片持ち梁Bと考えて説明する。
【0091】
図10に示すように、力をF、モーメントをMとすると、梁Bの自由端でのたわみ量σとたわみ角θは、数式1と数式2の形で表現することができる。
【数1】
【数2】
【0092】
「L」は上述した仮想長さ、「E」は梁Bのヤング率、「I」は梁Bの断面二次モーメントである。ここで、数式1と数式2を式変形すると、力FとモーメントMは数式3と数式4の形で表現できる。
【数3】
【数4】
【0093】
数式3は、たわみ量σ、たわみ角θ、力Fを変数とする平面の式(σ軸、θ軸、およびF軸を備えたσ−θ−F直交座標系における平面)と考えることができる。また、同様に、数式4は、たわみ量σ、たわみ角θ、モーメントMを変数とする平面の式(σ軸、θ軸、およびM軸を備えたσ−θ−M直交座標系における平面)と考えることができる。
【0094】
また、たわみ量σは、本実施の形態でいえば、ハンドツール12のX軸方向の移動量ΔXとY軸方向の移動量ΔYに対応している。また、たわみ角θは、ハンドツール12のX軸中心の回転量ΔAとY軸中心の回転量ΔBに対応している。したがって、数式3,4は、数式5〜8に書き換えることができる。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0095】
これらのことを踏まえて、ハンドツール12のX軸方向の移動量ΔX、Y軸中心の回転量ΔB、力Fx、およびモーメントMyの関係を図示化して図11に示す。横軸はハンドツール12のX軸方向の移動量ΔX、縦軸はY軸中心の回転量ΔBを示している。縦軸と横軸の交点は、力FxとモーメントMyとがともにゼロであるときの、移動量ΔXと回転量ΔBを示している。直線Fx=0、直線My=0、および直線Fx=My/Lは、数式5と数式6とに基づいて算出される。
【0096】
図11に示すように、力FxとモーメントMyの両方がゼロになるまでのハンドツール12の状態(位置と姿勢)の遷移を示す軌跡82を、直線Fx=0と直線Fx=My/Lとに重ねると、軌跡82は、これらの直線と複数箇所で交差する。この交差点は、図8に示すマーク84,86に該当する。
【0097】
したがって、このことから考えると、ハンドツール12を種々に操作して状態遷移図ウインドウ80a上にマーク84が少なくとも2つ現れると、その現れたマーク84を通過する直線Fx=0を推定することができる。同様に、マーク86が少なくとも2つ現れると、その現れたマーク86を通過する直線Fx=My/Lを推定することができる。そして、図11に示すように、直線Fx=0と直線Fx=My/Lの交点は力FxとモーメントMyの両方がゼロである位置を示しているので、作業者は、マーク84,86から推定した直線Fx=0と直線Fx=My/Lとに基づいて、状態遷移図ウインドウ80a上で力FxとモーメントMyの両方がゼロである位置、すなわち目標の位置を推定することができる。なお、同様に、状態遷移図ウインドウ80b上でも、力FyとモーメントMxの両方がゼロである位置を推定することができる。
【0098】
これにより、作業者は、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとをセンターマーク56に一致させるためにすべき操作を知ることができる。
【0099】
加えて、図5に示すように、ティーチングペンダント16のタッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50の横方向Wの位置に、ポインタ90a(90b)が表示される。また、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50の縦方向Hの位置に、ポインタ92a(92b)が表示される。
【0100】
ポインタ90aは一対であって、画面50の上縁と下縁とに表示されている(なお、どちらか一方の縁に1つのポインタ90aを表示してもよい)。また、ポインタ90aが表示されている画面50の横方向Wの位置は、力十字線52の縦線とモーメント十字線54の縦線が一致した位置に対応している。ポインタ90bも、ポインタ90aと同様である。
【0101】
ポインタ90a,90bの違いは、力十字線52の縦線とモーメント十字線54の縦線とが一致したタイミングの違いであり、ポインタ90aが直近のタイミングのものである。ポインタ90bは、ポインタ90aより過去のタイミング(ポインタ90aのタイミングに最も近いタイミング)のものである。また、ポインタ90a,90bは、区別するために、例えば異なる色で表示されている。
【0102】
ポインタ92aは一対であって、画面50の左縁と右縁とに表示されている(なお、どちらか一方に1つのポインタ92aを表示してもよい)。また、ポインタ92aが表示されている画面50の縦方向Hの位置は、力十字線52の横線とモーメント十字線54の横線が一致した位置に対応している。ポインタ92bも、ポインタ92aと同様である。
【0103】
ポインタ92a,92bの違いは、力十字線52の縦線とモーメント十字線54の縦線とが一致したタイミングの違いであり、ポインタ92aが最近のタイミングのものである。ポインタ92bは、ポインタ92aより過去のタイミング(ポインタ92aのタイミングに最も近いタイミング)のものである。また、ポインタ92a,92bは、区別するために、例えば異なる色で表示されている。
【0104】
ポインタ90a,90b,92a,92bを表示する理由について説明する。
【0105】
ポインタ90a,90b,92a,92bの表示は、上述したように、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50の横方向Wの位置と縦方向Hの位置とに対応して表示される。表示されるタイミングは、Fx=My/L、Fy=Mx/Lのタイミングであるので、状態遷移図ウインドウ80a,80bにおいてマーク86が現れるタイミングと同じである。
【0106】
しかしながら、状態遷移図ウインドウ80a,80bに現れるマーク86は、力十字線52とモーメント十字線54とが重なったタイミング(Fx=My/Lのタイミング、Fy=Mx/Lのタイミング)を示してはいるものの、画面50上のどの位置で2つの十字線52,54が重なったかは示していない。そのため、マーク86からでは、作業者は、力FxとモーメントMyの両方がゼロになるまでに必要な時間を予測しにくい。
【0107】
これに対し、ポインタ90a,90b,92a,92bは、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50上の位置を示している。したがって、センターマーク56とポインタ90a,90b,92a,92bとの間の距離から、作業者は、力FxとモーメントMyの両方がゼロになるまでに必要なおよその時間を予測することができる。すなわち、作業者は、力とモーメントとが略ゼロになるハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業の進捗を知ることができる。
【0108】
また、直近のタイミングに表示されたポインタ90a,92aが、過去のタイミングに表示されたポインタ90b,92bに比べて、センターマーク56に近い位置に表示されれば、作業者は、力とモーメントとが略ゼロになるハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業が、正しい方向に進んでいることを知ることができる。
【0109】
本実施の形態によれば、ハンドツール12によって部品P1を把持してワークP2に組付ける動作、またはワークP2に組付け済みの部品P1を該ハンドツール12によって把持して取外す動作をロボット10に教示する際、ハンドツール12に作用する力とモーメントとがタッチパネル18を介して作業者に提示される。また、作業者がハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定するときにすべき操作ボタン60a〜66bに対する操作の情報が、タッチパネル18を介して作業者に提示される。これにより、作業者は、ハンドツール12に作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツール12の位置と姿勢とを、長時間試行錯誤することなく、高精度に特定することができる。
【0110】
本実施の形態の効果として一例を示す。図12(a)は、実施例として、作業者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyの変化、および力FxとモーメントMyとの差の変化を示している。一方、図12(b)は、比較例として、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示されない場合における、発明者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyの変化、および力FxとモーメントMyとの差の変化を示している。なお、図中において、期間D1は、作業者が、「X+」操作ボタン60a、「X−」操作ボタン60b、「B+」操作ボタン66a、または「B−」操作ボタン66bを操作して力十字線52とモーメント十字線54とを画面50の縦方向Hに移動させている期間である。一方、期間D2は、作業者が、「Y+」操作ボタン62a、「Y−」操作ボタン62b、「A+」操作ボタン64a、または「A−」操作ボタン64bを操作して力十字線52とモーメント十字線54とを画面50の横方向Hに移動させている期間である。
【0111】
また、図12(a)に対応する図13(a)は、実施例として、作業者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FyとモーメントMxの変化、および力FyとモーメントMxとの差の変化を示している。一方、図12(b)に対応する図13(b)は、比較例として、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示されない場合における、発明者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FyとモーメントMxの変化、および力FyとモーメントMxとの差の変化を示している。
【0112】
図12(a)および図13(b)に示すように、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示される場合、力Fx,Fy、モーメントMx,Myの増減幅が小さいことから、作業者が、力覚センサ22が検出する力Fx,Fy、モーメントMx,Myが略ゼロになるように、タッチパネル18の複数の操作ボタン60a〜66bを適切に操作していることがわかる。
【0113】
これに対して、図12(b)および図13(b)に示すように、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示されない場合、力Fx,Fy、モーメントMx,Myの増減幅が大きいことから、作業者が、力覚センサ22が検出する力Fx,Fy、モーメントMx,Myが略ゼロになるように、タッチパネル18の複数の操作ボタン60a〜66bを、試行錯誤しながら、時間をかけて操作していることがわかる。
【0114】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されない。
【0115】
例えば、上述の実施の形態の場合、図8に示すように、力覚センサ22の検出結果に基づいて、ハンドツール12の状態遷移図ウインドウ80a,80b上に表示されるのは、Fx=0、Fy=0、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマーク84、86であるが、これに加えてMx=0、My=0を示すマークを表示してもよい。
【0116】
これに関連して言えば、状態遷移図ウインドウ80a,80b上には、Fx=0、Fy=0を示すマーク、Mx=0、My=0を示すマーク、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマークの中から少なくとも1種類表示されればよい。
【0117】
図11に示すように、Fx=0、Fy=0を示すマーク、Mx=0、My=0を示すマーク、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマークのいずれか1種類が状態遷移図ウインドウ80a、80b上に表示されれば、直線Fx=0と直線Fy=0、直線Mx=0と直線My=0、直線Fx=My/LとFy=Mx/Lのいずれか1つを作業者は推定でき、その推定した直線から状態遷移図ウインドウ80a上のFx=0、My=0となる位置と、状態遷移図ウインドウ80b上のFy=0、Mx=0となる位置を推定することができる。しかしながら、好ましくは、状態遷移図ウインドウ80a,80b上には、Fx=0、Fy=0を示すマーク、Mx=0、My=0を示すマーク、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマークの中から少なくとも2種類を表示するのがよい。それにより、少なくとも2種類のマークから少なくとも2つの直線が推定でき、推定した少なくとも2つの直線の交点に基づいて力とモーメントがゼロとなる状態遷移図ウインドウ80a,80b上の位置を推定することできるからである。
【0118】
また、上述の実施の形態の場合、力覚センサ22は、ロボット10側(フランジ10gとハンドツール12の間)に取付けられている。これに代って、力覚センサ22をワークP2側に取付けてもよい。ワークP2に取付け済みの部品P1を把持した状態のハンドツール12に作用する力とモーメントは、ワークP2またはワークP2を固定する治具に取付けた力覚センサ22によって間接的に検出可能である。
【0119】
さらに、上述の実施形態の場合、ワークP2に取付け済みの部品P1を把持した状態のハンドツール12を平行移動または回転させるための操作ボタン60a〜66bは、図5に示すように、タッチパネル18上のボタンで構成されているが、タッチパネル18の周縁のティーチングペンダント16の部分に設けられてもよい。この場合、タッチパネル18を、単に画像を表示するだけのパネルに変更することができる。
【0120】
さらに、例えば、上述した、ワークP2に組付け済みの部品P1をハンドツール12が把持したときに、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロになる該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業は、作業者の手を介さず、自動でも実行可能である。すなわち、ワークP2に組み込まれた状態の部品P1を把持しているハンドツール12の位置と姿勢とを自動的に調整することにより、力覚センサ22が検出する力Fx,FyとモーメントMx,Myとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢とを自動的に特定する位置/姿勢特定部を、ロボット10の制御装置14に設けてもよい。
【0121】
位置/姿勢特定部は、例えば、力覚センサ22の検出値を一定の周期で取得し、取得した力覚センサ22の検出値に基づいて該検出値がゼロに近づくようなハンドツール12の平行移動量ΔX,ΔYと回転量ΔA,ΔBとを算出し、算出した平行移動量ΔX,ΔYと回転量ΔA,ΔBとに基づいてハンドツール12を平行移動且つ回転させる。また、位置/姿勢特定部は、力覚センサ22が検出する力Fx,Fy、モーメントMx,Myが略ゼロ(0に近い所定値)になると、位置と姿勢の特定を終了する。
【0122】
ただし、この場合、図5に示すように、ティーチングペンダント16のタッチパネル18(またはパネル)に、力十字線52、モーメント十字線54,バー70a,70b,72a,72b、ハンドツール12の状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bを表示するのが好ましい。それにより、作業者が、位置/姿勢特定部が実行している、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢の特定の進捗状況がわかる。
【0123】
これに関連して、位置/姿勢特定部が実行している、ハンドツール12に作用する力とモーメントが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢の特定を停止させる停止ボタンをティーチングペンダント16に設けてもよい。これにより、位置/姿勢特定部が誤った方向にハンドツールを平行移動させたり、または回転させている場合、位置/姿勢特定部を停止させることができる。
【0124】
例えば、位置/姿勢特定部が、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢の特定中、タッチパネル18のハンドツール12の状態遷移図ウインドウ80a,80bに力Fx=0、Fy=0を示すマーク84やFx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマーク86が現れない場合、作業者は、位置/姿勢特定部によるハンドツール12の位置と姿勢の調整方向が適切ではない(誤っている)と判断し、その特定を停止させることできる。
【0125】
これに関連して、位置/姿勢特定部のハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を変更させるための手段をティーチングペンダント16(タッチパネル18)に設けてもよい。
【0126】
例えば、図14のように、ティーチングペンダント制御部14cにより、タッチパネル18の状態遷移図ウインドウ80a,80bそれぞれの四隅に、作業者が押すことによって位置/姿勢特定部のハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を指示することができる調整方向指示ボタン88a1〜88b4が表示される。
【0127】
調整方向指示ボタン88a1が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを減少させる方向と回転量ΔBを増加させる方向とに限定する。
【0128】
調整方向指示ボタン88a2が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを増加させる方向と回転量ΔBを増加させる方向とに限定する。
【0129】
調整方向指示ボタン88a3が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを減少させる方向と回転量ΔBを減少させる方向とに限定する。
【0130】
調整方向指示ボタン88a4が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを増加させる方向と回転量ΔBを減少させる方向とに限定する。
【0131】
調整方向指示ボタン88b1が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを減少させる方向と回転量ΔAを増加させる方向とに限定する。
【0132】
調整方向指示ボタン88b2が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを増加させる方向と回転量ΔAを増加させる方向とに限定する。
【0133】
調整方向指示ボタン88b3が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを減少させる方向と回転量ΔAを減少させる方向とに限定する。
【0134】
調整方向指示ボタン88b4が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを増加させる方向と回転量ΔAを減少させる方向とに限定する。
【0135】
これらの調整方向指示ボタン88a1〜88b4により、位置/姿勢特定部が実行している、ハンドツール12に作用する力とモーメントが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢の特定にかかる時間が短縮可能になる。
【0136】
さらにまた、上述の実施の形態の場合、タッチパネル18の画面50に表示される力やモーメントは、力覚センサ22のセンサ座標系ΣSのX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMyであるが、これに加えてZ軸方向の力と、Z軸まわりのモーメントを表示してもよい。この場合、例えば、センターマーク56の近くに、力覚センサ22が検出したZ軸方向の力の大きさに対応して径が変化するサークルが表示される。また、サークルをアナログ時計とみたてて、針の位置でモーメントの大きさを示す。例えば12時の位置ゼロを示し、時計まわり方向が正方向のモーメントを示し、反時計まわり方向が逆方向のモーメントを示す。
【0137】
加えて、上述の実施形態の場合、タッチパネル18に表示される操作ボタンは、力覚センサ22のセンサ座標系ΣSのX軸方向にハンドツール12を平行移動させる「X+」操作ボタン60aと「X−」操作ボタン60b、Y軸方向に平行移動させる「Y+」操作ボタン62aと「Y−」操作ボタン62b、X軸中心にハンドツール12を回転させる「A+」操作ボタン64aと「A−」操作ボタン64b、Y軸中心にハンドツール12を回転させる「B+」操作ボタン66aと「B−」操作ボタン66bであるが、本発明はこれに限らない。これらの操作ボタン60a〜66bに加えて、Z軸方向にハンドツール12を平行移動させる「Z+」操作ボタン(Z軸プラス方向)と「Z−」操作ボタン(Z軸マイナス方向)、Z軸まわりにハンドツール12を回転させる「C+」操作ボタン(逆方向)と「C−」操作ボタン(正方向)を、タッチパネル18上に表示してもよい。
【0138】
最後に、本発明の構成や特徴が、種々に変形でき修正できるのは当業者にとって明らかである。特に、画面にグラフィック化されて表示される、ハンドツールに作用する力やモーメントなどの各種の情報は、そのデザインが容易に変更可能なことは明らかである。例えば、図5に示す力十字線52やモーメント十字線54は、点(ドット)にデザイン変更可能である。しかしながら、そのような変形や修正は、添付した請求の範囲から逸脱しない限りにおいて、本発明に含まれていると理解すべきである。
【符号の説明】
【0139】
60a 平行移動操作手段(「X+」操作ボタン)、 60b 平行移動操作手段(「X−」操作ボタン)、 62a 平行移動操作手段(「Y+」操作ボタン)、 62b 平行移動操作手段(「Y−」操作ボタン)、 64a 回転操作手段(「A+」操作ボタン)、 64b 回転操作手段(「A−」操作ボタン)、 66a 回転操作手段(「B+」操作ボタン)、 66b 回転操作手段(「B−」操作ボタン)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに動作を教示するロボットの教示装置およびロボットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業者がティーチングペンダントを使用してロボットに動作を教示することが行われている。作業者がティーチングペンダントによってロボットを所望の動作に操作することにより、その所望の動作をロボットの制御装置に記憶させる。これにより、以後、ロボットは、自動的に所望の動作を繰り返し実行することができる。
【0003】
このような教示は、ロボットに自動的に実行させる動作に必要とされる精度が高いほど、多くの時間が必要になるとともに、作業者に高い能力を要求する(熟練を必要とする)。
【0004】
例えば、ロボットが部品を把持してワークに組付ける動作(またはワークに組付け済みの部品を取外す動作)、特に嵌合いの公差がシビアな嵌込み動作を教示する場合、具体例を挙げれば、ロボットに丸軸の部品を把持させ、ワークの丸孔に該丸軸を挿入させる動作を教示する場合、その教示は困難である。理由は、丸孔の径が公差の下限値であって丸軸の径が公差の上限値である場合を想定し、丸軸を丸孔に抵抗なくスムーズに挿入できる動作をロボットに教示しなければならないからである。
【0005】
このような組付け動作を教示する場合、教示の一部として、作業者は、次の作業を実行することがある。作業者は、まず、ティーチングペンダントを介してワークに組付け済みの部品をロボットのハンド部(ハンドツール)に把持させる。次に、その状態を維持したまま、作業者はティーチングペンダントを介してハンドツールの位置と姿勢とを微小に種々に変化させ、ハンドツールに作用する力とモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定する。この作業で特定した姿勢で特定した位置を通過するように、部品を把持したハンドツールが平行移動すれば、部品は抵抗なくスムーズにワークに挿入される。
【0006】
ハンドツールに作用する力およびモーメントは、力覚センサによって知ることができる。例えば、特許文献1に記載のロボットは、部品を把持するハンドツールに力覚センサが取付けられており、力覚センサが検出した力およびモーメントはモニタに表示される。作業者は、モニタを介して力およびモーメントが提示されることにより、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを高精度に特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−262563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、ハンドツールに作用する力およびモーメントがモニタを介して提示されるため、作業者は、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置および姿勢を高精度に特定することが可能になる。しかしながら、それには、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを、作業者が、モニタを見ながら、ティーチングペンダントを介してロボットを種々に操作し、試行錯誤を重ねて探し出さなければならない。この試行錯誤に長時間かかる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、作業者が、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作、またはワークに組付け済みの部品をハンドツールによって把持して取り外す動作をロボットに教示する際、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを、力覚センサによって高精度に特定できるように、且つその特定が短時間でできるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様は、
ハンドツールを備えたロボットに対し、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作またはワークに組付け済みの部品を該ハンドツールによって把持して取り外す動作を教示するときに、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定可能なロボットの教示装置であって、
部品の組付けまたは取外し方向と直交する第1方向、または組付け/取外し方向および第1方向と直交する第2方向にハンドツールを平行移動させて該ハンドツールの位置を調整するときに作業者が操作する平行移動操作手段と、
ハンドツールを第1方向に延びる第1回転中心線または第2方向に延びる第2回転中心線を中心として回転させて該ハンドツールの姿勢を調整するときに作業者が操作する回転操作手段と、
ハンドツールに作用する第1方向の第1力、第2方向の第2力、第1回転中心線まわりの第1モーメント、および第2回転中心線まわりの第2モーメントを検出する力覚センサと、
力覚センサの検出結果と、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作の情報を、力覚センサの検出結果とハンドツールの位置と姿勢とに基づいて表示する表示手段とを有する。
【0011】
また、本発明の別の態様は、ロボットの制御装置であって上述のロボットの教示装置を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作、またはワークに組付け済みの部品をハンドツールによって把持して取外す動作をロボットに教示する際、ハンドツールに作用する力およびモーメントが表示手段を介して作業者に提示される。また、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作の情報が、表示手段を介して作業者に提示される。これにより、作業者は、ハンドツールに作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを、長時間試行錯誤することなく、高精度に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るロボットの教示装置を備えたロボットの構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すロボットの制御系を示す図である。
【図3】本発明に係る教示を説明するための図である。
【図4】本発明に係る教示を説明するための別の図である。
【図5】タッチパネルの画面を示す図である。
【図6】タッチパネル上の操作ボタンを説明するための図である。
【図7】力とモーメントの変化量を示すバーを説明するための図である。
【図8】ハンドツールの状態遷移図を示すウインドウの図である。
【図9】図8に示すウインドウを説明するための図である。
【図10】図8に示すウインドウを説明するための別の図である。
【図11】図8に示すウインドウを説明するためのさらに別の図である。
【図12】本発明に係る実施例と比較例の力FxとモーメントMyの変化を示している。
【図13】本発明に係る実施例と比較例の力FyとモーメントMxの変化を示している。
【図14】本発明の別の実施の形態に係る、ハンドツールの状態遷移図ウインドウを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る教示装置を備えたロボットの構成を概略的に示している。また、図2は、そのロボットの制御系を示している。
【0015】
図1に示すロボット10は、6つの関節10a〜10fを備えたロボットであって、その先端のツール取付けフランジ(以下、「フランジ」と称する)10gに、部品P1を把持するハンドツール12が取付けられている。また、図2に示すように、ロボット10は、関節10a〜10fそれぞれを駆動するモータM1〜M6と、これらのモータM1〜M6を制御する制御装置14とを有する。
【0016】
制御装置14は、複数のモータM1〜M6を制御するモータ制御部14aと、ハンドツール12を制御するハンドツール制御部14bとを有する。モータ制御部14aが複数のモータM1〜M6を制御することによってロボット10の姿勢を調節し、フランジ10gの位置と姿勢とを調節する、すなわちフランジ10gに取付けられているハンドツール12の位置と姿勢とを調節する。また、ハンドツール制御部14bが、ハンドツール12を制御し、該ハンドツール12に部品P1を把持させる、または把持している部品P1をリリースさせる。
【0017】
また、ロボット10は、作業者が所望する動作を該ロボット10に教示するためのティーチングペンダント16を有する。このティーチングペンダント16はロボット10を手動で操作するためのコントローラであって、タッチパネル18を備えており、作業者はタッチパネル18を介してロボット10を操作する。そのために、制御装置14は、作業者がタッチパネル18に対して実行した操作と対応した操作信号をティーチングペンダント16から受け取り、その受け取った操作信号をモータM1〜M6の制御信号に変換してモータ制御部14aに出力するティーチングペンダント制御部14cを有している。
【0018】
このティーチングペンダント制御部14cはまた、作業者がロボット10に所望の動作を教示する場合、作業者がティーチングペンダント16(タッチパネル18)に対して実行した該所望の動作と対応する操作に基づいて、所望の動作をロボット10に自動的に実行させる自動運転プログラムを作成するように構成されている。また、作成した自動運転プログラムを記憶部14dに記憶するように構成されている。例えば、タッチパネル18上に表示された「教示開始ボタン」が作業者によって押されると、それ以後の作業者のタッチパネル18に対する操作に基づいて、自動運転プログラムを作成する。このように作成された自動運転プログラムに基づいて、制御装置14は、モータ制御部14aを介して複数のモータM1〜M6を制御することにより、該プログラムに対応する動作をロボット10に実行させる。
【0019】
さらに、ティーチングペンダント制御部14cは、ティーチングペンダント16のタッチパネル18に教示を補助するための情報を表示するように構成されている。
【0020】
例えば、ロボット10のフランジ10gにはハンドツール12の先端を撮影するカメラ20が取付けられており、そのカメラ20の撮影画像がタッチパネル18に表示される。
【0021】
また、ロボット10のフランジ10gとハンドツール12との間には力覚センサ22が設けられており、力覚センサ22の検出結果がタッチパネル18に、カメラ20の撮影画像に重なった状態で表示される。この力覚センサ22は、ハンドツール12に作用する力とモーメントとを検出する。
【0022】
厳密に言えば、力覚センサ22は、ハンドツール12に作用する力とモーメントとを直接検出しているわけではなく、図3に示すように、自身に定義されているセンサ座標系ΣSに基づく力を検出している。力覚センサ22は、センサ座標系ΣSのX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMy、Z軸まわりのモーメントMzを検出する。しかしながら、力覚センサ22とハンドツール12は固定されているので、ハンドツール12に作用する力とモーメントは、力覚センサ22が検出する力とモーメントは対応している。なお、力覚センサ22は、センサ座標系ΣSのZ軸がフランジ10gのフランジ面10gaと直交するように該フランジ10gに取付けられている。
【0023】
ティーチングペンダント制御部14cがタッチパネル18に表示するその他の情報については、本実施の形態が対象とする教示の詳細とともに説明する。
【0024】
本実施の形態が対象とする教示の詳細と、その教示の補助について説明する。
【0025】
本実施の形態が対象とするロボット10に教示する動作は、図1に示すように、部品P1をワークP2に抵抗なくスムーズに組付ける動作、またはワークP2に組付け済みの部品P1を抵抗なくスムーズに取外す動作である。具体的に言えば、部品P1の軸形状の嵌合部P1a(特には、その軸径が公差の上限値)をワークP2の孔P2a(特には、その孔径が公差の下限値)にハンドツール12をセンサ座標系ΣSのZ軸方向(特許請求の範囲に記載の「組付け方向」と「取外し方向」とに対応)に移動させることにより抵抗なくスムーズに嵌込む動作、または逆に抵抗なくスムーズに引抜く動作である。
【0026】
このような動作をロボット10に教示するためには、作業者は、図3に示すように、ワークP2に組付け済みの部品P1をハンドツール12が把持したときに、該ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロ(例えば、ゼロに近い所定値)になるような該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業を、教示の一部として実行する必要がある。
【0027】
具体的に言えば、作業者は、ティーチングペンダント16によってハンドツール12をセンサ座標系ΣSのX,Y軸方向に微小に平行移動させるおよび/またはX,Y軸を中心として微小に回転させることにより、ハンドツール12の位置と姿勢とを微小に種々に変化させ、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定する。
【0028】
なお、これらの前提として、ハンドツール12は、部品P1の形状に対応し、部品P1を常に決まった姿勢で把持するように構成されている。すなわち、ハンドツール12に把持された状態の部品P1の該ハンドツール12に対する位置と姿勢とが一定であることが前提である。例えば、ハンドツール12によって把持される部品P1の把持部P1bが丸軸形状であって、ハンドツール12が三つ爪を備えて、その三つ爪により丸軸形状の把持部P1bの外周面を把持する。
【0029】
ここからは、作業者が、ティーチングペンダント16を介して、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定するときに、タッチパネル18を介してその特定作業を補助する理由について説明する。
【0030】
まず、作業者は、ワークに組付け済みの部品P1をハンドツール12が把持したときに該ハンドツール12に作用する力やモーメントを、これらが極めて微小であるため、当然ながら目視では把握できない。そのために、作業者は、ハンドツール12の力とモーメントとを検出する力覚センサ22を頼りにする。
【0031】
ところが、力覚センサ22の検出値(数値)を見ただけでは熟練者でないかぎり、ハンドツール12をどの方向に平行移動するべきか、またはどの軸を中心にいずれの方向に回転させるべきかが直感的に判断できない。その結果、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢との特定に時間がかかる。したがって、作業者がハンドツール12の平行移動方向や回転方向を直感的に判断できるように補助する必要がある。
【0032】
また、ワークP2に組付け済みの部品P1と該部品P1を把持するハンドツール12とを1つの片持ち梁Bと考えて説明すると、図4(a)に示すように、センサ座標系ΣSのX軸方向の力FxとY軸まわりのモーメントMyとが発生していると、力FxまたはモーメントMyのいずれか一方が変化すると、他方も変化する。具体的には、力Fxが増加するとモーメントMyも増加し、力Fxが減少するとモーメントMyも減少する。また、モーメントMyが増加すると力Fxも増加し、モーメントMyが減少すると力Fxも減少する。
【0033】
同様に、図4(b)に示すように、Y軸方向の力FyとX軸まわりのモーメントMxとが発生していると、力FyまたはモーメントMxのいずれか一方が変化すると、他方も変化する。具体的には、力Fyが増加するとモーメントMxが減少し、力Fyが減少するとモーメントMxが増加する。また、モーメントMxが増加すると力Fyが減少し、モーメントMxが減少すると力Fyが増加する。
【0034】
そのため、作業者は、ティーチングペンダント16に対し、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyとが略同時に略ゼロになるように、具体的には力FxとモーメントMyとの差をなくしつつ両者が略ゼロになるようにハンドツール12をX軸プラス方向に平行移動させる操作、X軸マイナス方向に平行移動させる操作、Y軸中心にプラス方向に回転させる操作、Y軸中心にマイナス方向に回転させる操作の少なくとも1つを実行する必要がある。
【0035】
厳密に言えば、力Fxと、モーメントMyを仮想的長さL(例えば、図3に示すように、把持部P1bの先端(図4に示す梁Bの固定端に対応)からセンサ座標系ΣSの原点(梁Bの自由端に対応)までの長さ)で割って求まる、モーメントによって発生するセンサ座標系ΣSの原点でのせん断力My/Lとの差が略ゼロになるように、且つ力FxとモーメントMyとを略ゼロにする必要がある。
【0036】
当然ながら、この場合、作業者は、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyとに基づいて、ティーチングペンダント16に対して実行する操作、すなわち、ハンドツール12をX軸プラス方向に平行移動させる操作、X軸マイナス方向に平行移動させる操作、Y軸中心にプラス方向に回転させる操作、およびY軸中心にマイナス方向に回転させる操作の中から1つを選択しなければならない。これら複数の操作の中から、力FxとモーメントMyが、短時間に略同時に略ゼロにできる操作を選択しなければならない。この操作選択を間違えると、力FxとモーメントMyとの差が大きくなり、一方がすぐにゼロになっても他方がすぐにゼロにならないことがある。したがって、作業者が正しい操作を選択できるように補助する必要がある。なお、このことは、力FyとモーメントMxについても同様である。
【0037】
さらに、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業は、ハンドツール12の位置と姿勢とが少しずつ変化するように、ティーチングペンダント16を介してロボット10を操作することにより行われる。
【0038】
例えば、作業者が、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyとが略ゼロになるように、ハンドツール12をX軸マイナス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させる操作を繰り返し実行する。このとき、繰り返すにしたがって力FxとモーメントMyとの差が大きくなる、または繰り返してもその差が小さくならないことがある。
【0039】
この場合、作業者は、ハンドツール12をX軸マイナス方向に平行移動させる操作が適切ではないこと(誤っていること)に気が付き、これとは異なる操作を開始する。そして、しばらく様々な操作を実行した後、再度、適切でないと気付いた操作(ハンドツール12をX軸マイナス方向に平行移動させる操作)を実行することがある。これは、作業者が過去に行った操作を記憶していないことによる。したがって、作業者が誤った操作を再び繰り返さないように補助する必要がある。
【0040】
さらにまた、作業者は、ティーチングペンダント16を種々に操作して、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業を実行していると、その途中に、その作業の進捗状況やその操作の正しさ(実行中の操作が誤っていないこと)を知りたいことがある。加えて、作業者は、自身のティーチングペンダント16の操作によってハンドツール12の位置と姿勢とがどのように遷移したか知りたいことがある。したがって、作業者がこれらを知ることができるように補助する必要がある。
【0041】
ここからは、上述した補助を実行することができる構成要素、具体的にはティーチングペンダント制御部14cによってティーチングペンダント16のタッチパネル18に表示される内容について説明する。
【0042】
図5は、力覚センサ22が検出する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢との特定を補助することが可能な、ティーチングペンダント16のタッチパネル18のGUI(Graphical User Interface)画面50を示している。
【0043】
タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、力覚センサ22が検出した力を示す力十字線52(実線)と、モーメントを示す十字線54(破線)とが表示される。これらの十字線52,54は、区別するために、異なる色で表示されている。
【0044】
力十字線52は、X軸方向の力FxとY軸方向の力Fyの両方を示しており、その画面上の位置が力Fx,Fyとに対応している。具体的には、力十字線52の交点52pの画面50の横方向Wの位置がX軸方向の力Fxを示し、画面50の縦方向Hの位置がY軸方向の力Fyを示している。また、力十字線52は、X軸方向の力FxとY軸方向の力Fyの両方がゼロである場合、その交点52pが画面50の中心を示す十字形状のセンターマーク56に一致した状態で表示される。したがって、センターマーク56から力十字線52の交点52pが離れるほど、力覚センサ22は大きい力を検出していることを示す。
【0045】
さらに、力十字線52は、その交点52pが、X軸方向の力Fxがプラス値(プラス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の右側(図面右側)に位置するように表示され、一方、力Fxがマイナス値(マイナス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の左側(図面左側)に位置するように表示される。
【0046】
さらにまた、力十字線52は、その交点52pが、Y軸方向の力Fyがプラス値(プラス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の上側(図面上側)に位置するように表示され、一方、力Fyがマイナス値(マイナス方向の力)である場合はセンターマーク56より画面50の下側(図面下側)に位置するように表示される。
【0047】
モーメント十字線54は、X軸まわりのモーメントMxとY軸まわりのモーメントMyの両方を示しており、その画面上の位置がモーメントMx,Myとに対応している。具体的には、モーメント十字線54の交点54pの画面50の横方向Wの位置がY軸まわりのモーメントMyを仮想長さL(図3参照)で割ったせん断力My/Lを示し、画面50の縦方向Hの位置がX軸まわりのモーメントMxを仮想長さLで割ったせん断力Mx/Lを示している。また、モーメント十字線54は、X軸まわりのモーメントMxとY軸まわりのモーメントMyの両方がゼロである場合(すなわちMx/LとMy/Lがゼロである場合)、その交点54pがセンターマーク56に一致した状態で表示される。したがって、センターマーク56からモーメント十字線54の交点54pが離れるほど、力覚センサ22は大きいモーメントを検出していることを示す。
【0048】
さらに、モーメント十字線54は、その交点54pがY軸まわりのモーメントMyがプラス値(モーメントの方向が正方向)である場合はセンターマーク56より画面50の右側に表示され、一方、モーメントMyがマイナス値(モーメントの方向が逆方向)である場合はセンターマーク56より画面50の左側に表示される。
【0049】
さらにまた、モーメント十字線54は、その交点54pが、X軸まわりのモーメントMxがマイナス値(モーメントの方向が逆方向)である場合はセンターマーク56より画面50の上側に表示され、一方、モーメントMxがプラス値(モーメントの方向が正方向)である場合はセンターマーク56より画面50の下側に表示される。
【0050】
また、タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、ハンドツール12の位置と姿勢とを調整するための操作ボタン60a〜66bが表示されている。
【0051】
「X+」操作ボタン60aは、ハンドツール12をX軸プラス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「X+」操作ボタン60aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸プラス方向に所定量平行移動する。
【0052】
「X−」操作ボタン60bは、ハンドツール12をX軸マイナス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「X−」操作ボタン60bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸マイナス方向に所定量平行移動する。
【0053】
「X+」操作ボタン60aと「X−」操作ボタン60bは、画面50の下縁に沿って、「X+」操作ボタン60aが右側に、「X−」操作ボタン60bが左側に横方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出する力Fxを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0054】
例えば、図6に示すように、作業者は、交点52pがセンターマーク56より画面50の右側に位置する力十字線52を該センターマーク56に接近させたい場合、左側に位置する「X−」操作ボタン60b、すなわち十字線52の交点52pを左方向に移動させるために押すべき操作ボタンである「X−」操作ボタン60bを直感的に押すことができる。
【0055】
「Y+」操作ボタン62aは、ハンドツール12をY軸プラス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「Y+」操作ボタン62aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がY軸プラス方向に所定量平行移動する。
【0056】
「Y−」操作ボタン62bは、ハンドツール12をY軸マイナス方向に所定量(例えば、0.01mm)平行移動させるためのボタンである。この「Y−」操作ボタン62bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がY軸マイナス方向に所定量平行移動する。
【0057】
「Y+」操作ボタン62aと「Y−」操作ボタン62bは、画面50の左縁に沿って、「Y+」操作ボタン62aが上側に、「Y−」操作ボタン60bが下側に縦方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出する力Fyを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0058】
「A+」操作ボタン64aは、ハンドツール12をX軸中心に正方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「A+」操作ボタン64aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸中心に正方向に所定量回転する。
【0059】
「A−」操作ボタン64bは、ハンドツール12をX軸中心に逆方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「A−」操作ボタン64bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸中心に逆方向に回転する。
【0060】
「A+」操作ボタン64aと「A−」操作ボタン64bは、画面50の右縁に沿って、「A+」操作ボタン64aが下側に、「A−」操作ボタン64bが上側に縦方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出するモーメントMxを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0061】
「B+」操作ボタン66aは、ハンドツール12をY軸中心に正方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「B+」操作ボタン66aが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がX軸中心に正方向に回転する。
【0062】
「B−」操作ボタン66bは、ハンドツール12をY軸中心に逆方向に所定量(例えば、0.001deg)回転させるためのボタンである。この「B−」操作ボタン66bが押されると、ロボット10が動作し、ハンドツール12がY軸中心に逆方向に所定量回転する。
【0063】
「B+」操作ボタン66aと「B−」操作ボタン66bは、画面50の上縁に沿って、「B+」操作ボタン66aが左側に、「B−」操作ボタン66bが右側に横方向に並んだ状態で表示されている。これにより、作業者は、力覚センサ22が検出するモーメントMyを略ゼロに近づけるための操作を直感的に実行することができる。
【0064】
さらに、タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、操作ボタン60a〜66bのいずれか1つが継続して操作された(押された)ときに、該継続操作によって変化したX軸方向の力Fx,Y軸方向の力Fy、X軸まわりのモーメントMx、またはY軸まわりのモーメントMyの変化量の少なくとも1つが、バーの形態で表示される。
【0065】
例えば、図5に示すバー70aは、「B+」操作ボタン66aが継続して何度も押されることによって変化した力Fxの変化量を示しており、「B+」操作ボタン66aの継続操作が開始されてから現時点までのX軸方向の力Fxの変化量をその長さで表現している。別の観点から見みれば、バー70aは、「B+」操作ボタン66aの継続操作によって画面50の左側に移動した力十字線52の移動量を示している。
【0066】
また、例えば、図5に示すバー70bは、「B+」操作ボタン66aが継続して何度も押されることによって変化したモーメントMyの変化量を示しており、「B+」操作ボタン66aの継続操作が開始されてから現時点までのY軸まわりのモーメントMyの変化量をその長さで表現している。別の観点から見みれば、バー70bは、「B+」操作ボタン66aの継続操作によって画面50の左側に移動したモーメント十字線54の移動量を示している。なお、バー70bは、バー70aと区別できるように異なる色で表示されている。
【0067】
バー70aとバー70bは、「B+」操作ボタン66aの継続操作によって表示されたものであるので、「B+」操作ボタン66aの近傍に表示されている。これにより、作業者は、「B+」操作ボタン66aとバー70a,70bとを視野におさめながら、「B+」操作ボタン66aを確実に継続的に押すことができる。
【0068】
さらに、これに関連し、タッチパネル18には、「B+」操作ボタン66aの継続的な操作が開始される直前に実行された、「X+」操作ボタン60aの継続操作によって変化したX方向の力Fxの変化量を示すバー72aと、Y軸まわりのモーメントMyの変化量を示すバー72bとが表示されている。過去を示すバー72a,72bは、現在を示すバー70a,70bと区別できるように、バー70a,70bと異なる色で表示されている。
【0069】
このように、同一の力やモーメントに関して今現在の変化量を示すバー70a,70bと直前(過去)の変化量を示すバー72a,72bとを表示する理由を、図7を参照しながら説明する。
【0070】
図7は、センターマーク56より画面50の右側に位置する力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとを、「X−」操作ボタン60bと「B+」操作ボタン66aとを継続的に操作してセンターマーク56に接近させたときの画面50の様子を示している。具体的には、「X−」操作ボタン60bを複数回押した後、「B+」操作ボタン66aを複数回押した状態を示している。
【0071】
図7に示すように、「X−」操作ボタン60bを継続的に操作したときのX軸方向の力Fxの変化量と「B+」操作ボタン66aを継続的に操作したときの力Fxの変化量(バー70aとバー72aの長さ)はほぼ同じであるが、Y軸まわりのモーメントMyの変化量(バー70bとバー72bの長さ)が大きく異なっている。「B+」操作ボタン66aを継続的に操作したときの方が、「X−」操作ボタン60bを継続的に操作した場合に比べて、力FxとモーメントMyとの差が大きくなっている。
【0072】
したがって、作業者は、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとをセンターマーク56に略同時に一致させるためには、すなわちX軸方向の力FxとY軸まわりのモーメントMyを略同時にゼロにするためには、力FxとモーメントMyとの差の拡大幅が小さい「X−」操作ボタン60bの継続操作を実行する方がよいと判断することができる。
【0073】
なお、図示されてはいないが、同様に、「Y+」操作ボタン62a、「Y−」操作ボタン62b、「A+」操作ボタン64a、「A−」操作ボタン64bのいずれか1つが継続的に操作されることによって変化する、Y軸方向の力FyとX軸まわりのモーメントMxの変化量もバーの形態で表示される。
【0074】
また、X軸方向の力Fxの変化量を示すバー70a,72aと、Y軸まわりのモーメントMyの変化量を示すバー70b,72bは、「Y+」操作ボタン62a、「Y−」操作ボタン62b、「A+」操作ボタン64a、「A−」操作ボタン64bのいずれか1つが操作されると、その表示が消えるようにされている。また、同様に、Y軸方向の力Fyの変化量を示すバーと、X軸まわりのモーメントMxの変化量を示すバーは、「X+」操作ボタン60a、「X−」操作ボタン60b、「B+」操作ボタン66a、「B−」操作ボタン66bのいずれか1つが操作されると、その表示が消えるようにされている。
【0075】
さらにまた、タッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、ハンドツール12の状態の遷移(位置と姿勢の遷移)が表示される。
【0076】
具体的には、図8に示すように、ハンドツール12の状態の遷移は、ハンドツール12の位置と姿勢の遷移を図示化したものである状態遷移図ウインドウとして表示される。状態遷移図ウインドウ80aは、ハンドツール12のX軸方向位置の遷移とY軸を基準とする姿勢の遷移を、ハンドツール12のX軸方向の移動量ΔXとY軸まわりの回転量ΔBとによって示している。一方、状態遷移図ウインドウ80bは、ハンドツール12のY軸方向位置の遷移とX軸を基準とする姿勢の遷移を、ハンドツール12のY軸方向の移動量ΔYとX軸まわりの回転量ΔAとによって示している。
【0077】
これらの状態遷移図ウインドウ80a,80bの見方について説明する。
【0078】
状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、このウインドウ80aは、ハンドツール12を「X+」操作ボタン60aを複数回連続して押すことによりX軸方向に移動量(+ΔX1)平行移動させ、次に「B+」操作ボタン66aを複数回連続して操作してY軸中心に回転量(+ΔB1)回転させ、続いて「X−」操作ボタン60bを複数回連続して操作してX軸方向に移動量(−ΔX2)平行移動させ、最後に「B−」操作ボタン66bを複数回連続して操作してY軸中心に回転量(−ΔB2)回転させたときの、ハンドツール12のX軸方向位置の遷移と、Y軸を基準とする姿勢の遷移とを示している。
【0079】
また、状態遷移図ウインドウ80a,80bは、最新のハンドツール12の状態(位置と姿勢)が中心に位置するように、ハンドツール12の状態の遷移を示している。状態の遷移は、状態遷移の軌跡82によって示されている。
【0080】
さらに、状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、ハンドツール12の状態の遷移を示す軌跡82上に、画面50の縦方向Hに関して力十字線52とセンターマーク56とが一致したタイミングを示すマーク84(黒塗丸印)が描かれる。すなわちマーク84は、力Fxがゼロになったタイミングを示している。
【0081】
さらにまた、状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、力十字線52の横線とモーメント十字線54の横線とが一致したタイミングを示すマーク86(×印)が描かれる。すなわち、マーク86は、力FxとモーメントMyを仮想長さLで割ったせん断力My/Lとが等しくなったタイミングを示している。
【0082】
このような状態遷移図ウインドウ80a,80bを見れば、作業者は、自身の操作の履歴やこれからすべき操作を知ることができる。
【0083】
例えば、図8に示す状態遷移図ウインドウ80aを見れば、まず、作業者が、ハンドツール12をX軸方向に移動量(+ΔX1)だけ平行移動させたことがわかる。次に、作業者が、ハンドツール12をY軸中心に回転量(+ΔB1)回転させたことがわかる。続けて、作業者が、ハンドツール12をX軸方向に移動量(−ΔX2)だけ平行移動させて、力十字線52の横線とモーメント十字線54の横線とを一致させたことがわかる。また、同様に操作して、力十字線52の交点52pを、画面50の高さ方向Hに関してセンターマーク56に一致させたことがわかる。そして、作業者が、ハンドツール12をY軸中心に回転量(−ΔB2)回転させて、センターマーク56に、画面50の高さ方向H方向に関して、力十字線52とモーメント十字線54とを一致させたことがわかる。
【0084】
なお、なにも操作されていない場合は、図8の状態遷移図ウインドウ80bのように、なにも描かれない。
【0085】
このような状態遷移図ウインドウ80a,80bを表示する理由を説明する。
【0086】
まず、状態遷移図ウインドウ80a,80bに描かれている軌跡82の始点と終点とを見れば、作業者は、自身の操作により、結果として最初の状態(ハンドツール12が部品P1を把持したとき)からハンドツール12の位置と姿勢とがどのように変化したかを直感的に知ることができる。
【0087】
また、例えば、図9に示す状態遷移図ウインドウ80aが示すように、ハンドツール12をX軸マイナス方向に平行移動させる動作とY軸中心に正方向に回転させる操作を繰り返し実行し、その結果として、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとが、画面50の縦方向Hに関して離れた場合、作業者はこれらの操作が適切でないこと(誤っていること)に気付く。このとき、状態遷移図ウインドウ80aには、その誤った操作に対応する状態の遷移の軌跡82aが描かれたまま残る。
【0088】
その結果、作業者は、状態遷移図ウインドウ80aに描かれている誤った操作に対応する軌跡82aを見ることにより、誤った操作と異なる操作を実行することができる。また、作業者が新たな操作を開始する前に、図8の状態遷移図ウインドウ80a,80bを確認することにより、作業者は、誤った操作を再び実行することを防止することができる。
【0089】
さらに、状態遷移図ウインドウ80aを例に挙げて説明すると、作業者は、マーク84、86を見れば、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとをセンターマーク56に一致させるためにすべき操作を知ることができる。
【0090】
このことを具体的に説明する。ここでは、図4と同様に、ワークP2に組付け済みの部品P1と該部品P1を把持するハンドツール12とを1つの片持ち梁Bと考えて説明する。
【0091】
図10に示すように、力をF、モーメントをMとすると、梁Bの自由端でのたわみ量σとたわみ角θは、数式1と数式2の形で表現することができる。
【数1】
【数2】
【0092】
「L」は上述した仮想長さ、「E」は梁Bのヤング率、「I」は梁Bの断面二次モーメントである。ここで、数式1と数式2を式変形すると、力FとモーメントMは数式3と数式4の形で表現できる。
【数3】
【数4】
【0093】
数式3は、たわみ量σ、たわみ角θ、力Fを変数とする平面の式(σ軸、θ軸、およびF軸を備えたσ−θ−F直交座標系における平面)と考えることができる。また、同様に、数式4は、たわみ量σ、たわみ角θ、モーメントMを変数とする平面の式(σ軸、θ軸、およびM軸を備えたσ−θ−M直交座標系における平面)と考えることができる。
【0094】
また、たわみ量σは、本実施の形態でいえば、ハンドツール12のX軸方向の移動量ΔXとY軸方向の移動量ΔYに対応している。また、たわみ角θは、ハンドツール12のX軸中心の回転量ΔAとY軸中心の回転量ΔBに対応している。したがって、数式3,4は、数式5〜8に書き換えることができる。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0095】
これらのことを踏まえて、ハンドツール12のX軸方向の移動量ΔX、Y軸中心の回転量ΔB、力Fx、およびモーメントMyの関係を図示化して図11に示す。横軸はハンドツール12のX軸方向の移動量ΔX、縦軸はY軸中心の回転量ΔBを示している。縦軸と横軸の交点は、力FxとモーメントMyとがともにゼロであるときの、移動量ΔXと回転量ΔBを示している。直線Fx=0、直線My=0、および直線Fx=My/Lは、数式5と数式6とに基づいて算出される。
【0096】
図11に示すように、力FxとモーメントMyの両方がゼロになるまでのハンドツール12の状態(位置と姿勢)の遷移を示す軌跡82を、直線Fx=0と直線Fx=My/Lとに重ねると、軌跡82は、これらの直線と複数箇所で交差する。この交差点は、図8に示すマーク84,86に該当する。
【0097】
したがって、このことから考えると、ハンドツール12を種々に操作して状態遷移図ウインドウ80a上にマーク84が少なくとも2つ現れると、その現れたマーク84を通過する直線Fx=0を推定することができる。同様に、マーク86が少なくとも2つ現れると、その現れたマーク86を通過する直線Fx=My/Lを推定することができる。そして、図11に示すように、直線Fx=0と直線Fx=My/Lの交点は力FxとモーメントMyの両方がゼロである位置を示しているので、作業者は、マーク84,86から推定した直線Fx=0と直線Fx=My/Lとに基づいて、状態遷移図ウインドウ80a上で力FxとモーメントMyの両方がゼロである位置、すなわち目標の位置を推定することができる。なお、同様に、状態遷移図ウインドウ80b上でも、力FyとモーメントMxの両方がゼロである位置を推定することができる。
【0098】
これにより、作業者は、力十字線52の交点52pとモーメント十字線54の交点54pとをセンターマーク56に一致させるためにすべき操作を知ることができる。
【0099】
加えて、図5に示すように、ティーチングペンダント16のタッチパネル18には、ティーチングペンダント制御部14cにより、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50の横方向Wの位置に、ポインタ90a(90b)が表示される。また、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50の縦方向Hの位置に、ポインタ92a(92b)が表示される。
【0100】
ポインタ90aは一対であって、画面50の上縁と下縁とに表示されている(なお、どちらか一方の縁に1つのポインタ90aを表示してもよい)。また、ポインタ90aが表示されている画面50の横方向Wの位置は、力十字線52の縦線とモーメント十字線54の縦線が一致した位置に対応している。ポインタ90bも、ポインタ90aと同様である。
【0101】
ポインタ90a,90bの違いは、力十字線52の縦線とモーメント十字線54の縦線とが一致したタイミングの違いであり、ポインタ90aが直近のタイミングのものである。ポインタ90bは、ポインタ90aより過去のタイミング(ポインタ90aのタイミングに最も近いタイミング)のものである。また、ポインタ90a,90bは、区別するために、例えば異なる色で表示されている。
【0102】
ポインタ92aは一対であって、画面50の左縁と右縁とに表示されている(なお、どちらか一方に1つのポインタ92aを表示してもよい)。また、ポインタ92aが表示されている画面50の縦方向Hの位置は、力十字線52の横線とモーメント十字線54の横線が一致した位置に対応している。ポインタ92bも、ポインタ92aと同様である。
【0103】
ポインタ92a,92bの違いは、力十字線52の縦線とモーメント十字線54の縦線とが一致したタイミングの違いであり、ポインタ92aが最近のタイミングのものである。ポインタ92bは、ポインタ92aより過去のタイミング(ポインタ92aのタイミングに最も近いタイミング)のものである。また、ポインタ92a,92bは、区別するために、例えば異なる色で表示されている。
【0104】
ポインタ90a,90b,92a,92bを表示する理由について説明する。
【0105】
ポインタ90a,90b,92a,92bの表示は、上述したように、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50の横方向Wの位置と縦方向Hの位置とに対応して表示される。表示されるタイミングは、Fx=My/L、Fy=Mx/Lのタイミングであるので、状態遷移図ウインドウ80a,80bにおいてマーク86が現れるタイミングと同じである。
【0106】
しかしながら、状態遷移図ウインドウ80a,80bに現れるマーク86は、力十字線52とモーメント十字線54とが重なったタイミング(Fx=My/Lのタイミング、Fy=Mx/Lのタイミング)を示してはいるものの、画面50上のどの位置で2つの十字線52,54が重なったかは示していない。そのため、マーク86からでは、作業者は、力FxとモーメントMyの両方がゼロになるまでに必要な時間を予測しにくい。
【0107】
これに対し、ポインタ90a,90b,92a,92bは、力十字線52とモーメント十字線54とが重なった画面50上の位置を示している。したがって、センターマーク56とポインタ90a,90b,92a,92bとの間の距離から、作業者は、力FxとモーメントMyの両方がゼロになるまでに必要なおよその時間を予測することができる。すなわち、作業者は、力とモーメントとが略ゼロになるハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業の進捗を知ることができる。
【0108】
また、直近のタイミングに表示されたポインタ90a,92aが、過去のタイミングに表示されたポインタ90b,92bに比べて、センターマーク56に近い位置に表示されれば、作業者は、力とモーメントとが略ゼロになるハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業が、正しい方向に進んでいることを知ることができる。
【0109】
本実施の形態によれば、ハンドツール12によって部品P1を把持してワークP2に組付ける動作、またはワークP2に組付け済みの部品P1を該ハンドツール12によって把持して取外す動作をロボット10に教示する際、ハンドツール12に作用する力とモーメントとがタッチパネル18を介して作業者に提示される。また、作業者がハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定するときにすべき操作ボタン60a〜66bに対する操作の情報が、タッチパネル18を介して作業者に提示される。これにより、作業者は、ハンドツール12に作用する力およびモーメントが略ゼロの該ハンドツール12の位置と姿勢とを、長時間試行錯誤することなく、高精度に特定することができる。
【0110】
本実施の形態の効果として一例を示す。図12(a)は、実施例として、作業者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyの変化、および力FxとモーメントMyとの差の変化を示している。一方、図12(b)は、比較例として、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示されない場合における、発明者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FxとモーメントMyの変化、および力FxとモーメントMyとの差の変化を示している。なお、図中において、期間D1は、作業者が、「X+」操作ボタン60a、「X−」操作ボタン60b、「B+」操作ボタン66a、または「B−」操作ボタン66bを操作して力十字線52とモーメント十字線54とを画面50の縦方向Hに移動させている期間である。一方、期間D2は、作業者が、「Y+」操作ボタン62a、「Y−」操作ボタン62b、「A+」操作ボタン64a、または「A−」操作ボタン64bを操作して力十字線52とモーメント十字線54とを画面50の横方向Hに移動させている期間である。
【0111】
また、図12(a)に対応する図13(a)は、実施例として、作業者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FyとモーメントMxの変化、および力FyとモーメントMxとの差の変化を示している。一方、図12(b)に対応する図13(b)は、比較例として、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示されない場合における、発明者の操作によって変化した、力覚センサ22が検出する力FyとモーメントMxの変化、および力FyとモーメントMxとの差の変化を示している。
【0112】
図12(a)および図13(b)に示すように、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示される場合、力Fx,Fy、モーメントMx,Myの増減幅が小さいことから、作業者が、力覚センサ22が検出する力Fx,Fy、モーメントMx,Myが略ゼロになるように、タッチパネル18の複数の操作ボタン60a〜66bを適切に操作していることがわかる。
【0113】
これに対して、図12(b)および図13(b)に示すように、バー70a,70b,72a,72b、状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bがタッチパネル18に表示されない場合、力Fx,Fy、モーメントMx,Myの増減幅が大きいことから、作業者が、力覚センサ22が検出する力Fx,Fy、モーメントMx,Myが略ゼロになるように、タッチパネル18の複数の操作ボタン60a〜66bを、試行錯誤しながら、時間をかけて操作していることがわかる。
【0114】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されない。
【0115】
例えば、上述の実施の形態の場合、図8に示すように、力覚センサ22の検出結果に基づいて、ハンドツール12の状態遷移図ウインドウ80a,80b上に表示されるのは、Fx=0、Fy=0、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマーク84、86であるが、これに加えてMx=0、My=0を示すマークを表示してもよい。
【0116】
これに関連して言えば、状態遷移図ウインドウ80a,80b上には、Fx=0、Fy=0を示すマーク、Mx=0、My=0を示すマーク、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマークの中から少なくとも1種類表示されればよい。
【0117】
図11に示すように、Fx=0、Fy=0を示すマーク、Mx=0、My=0を示すマーク、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマークのいずれか1種類が状態遷移図ウインドウ80a、80b上に表示されれば、直線Fx=0と直線Fy=0、直線Mx=0と直線My=0、直線Fx=My/LとFy=Mx/Lのいずれか1つを作業者は推定でき、その推定した直線から状態遷移図ウインドウ80a上のFx=0、My=0となる位置と、状態遷移図ウインドウ80b上のFy=0、Mx=0となる位置を推定することができる。しかしながら、好ましくは、状態遷移図ウインドウ80a,80b上には、Fx=0、Fy=0を示すマーク、Mx=0、My=0を示すマーク、Fx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマークの中から少なくとも2種類を表示するのがよい。それにより、少なくとも2種類のマークから少なくとも2つの直線が推定でき、推定した少なくとも2つの直線の交点に基づいて力とモーメントがゼロとなる状態遷移図ウインドウ80a,80b上の位置を推定することできるからである。
【0118】
また、上述の実施の形態の場合、力覚センサ22は、ロボット10側(フランジ10gとハンドツール12の間)に取付けられている。これに代って、力覚センサ22をワークP2側に取付けてもよい。ワークP2に取付け済みの部品P1を把持した状態のハンドツール12に作用する力とモーメントは、ワークP2またはワークP2を固定する治具に取付けた力覚センサ22によって間接的に検出可能である。
【0119】
さらに、上述の実施形態の場合、ワークP2に取付け済みの部品P1を把持した状態のハンドツール12を平行移動または回転させるための操作ボタン60a〜66bは、図5に示すように、タッチパネル18上のボタンで構成されているが、タッチパネル18の周縁のティーチングペンダント16の部分に設けられてもよい。この場合、タッチパネル18を、単に画像を表示するだけのパネルに変更することができる。
【0120】
さらに、例えば、上述した、ワークP2に組付け済みの部品P1をハンドツール12が把持したときに、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロになる該ハンドツール12の位置と姿勢とを特定する作業は、作業者の手を介さず、自動でも実行可能である。すなわち、ワークP2に組み込まれた状態の部品P1を把持しているハンドツール12の位置と姿勢とを自動的に調整することにより、力覚センサ22が検出する力Fx,FyとモーメントMx,Myとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢とを自動的に特定する位置/姿勢特定部を、ロボット10の制御装置14に設けてもよい。
【0121】
位置/姿勢特定部は、例えば、力覚センサ22の検出値を一定の周期で取得し、取得した力覚センサ22の検出値に基づいて該検出値がゼロに近づくようなハンドツール12の平行移動量ΔX,ΔYと回転量ΔA,ΔBとを算出し、算出した平行移動量ΔX,ΔYと回転量ΔA,ΔBとに基づいてハンドツール12を平行移動且つ回転させる。また、位置/姿勢特定部は、力覚センサ22が検出する力Fx,Fy、モーメントMx,Myが略ゼロ(0に近い所定値)になると、位置と姿勢の特定を終了する。
【0122】
ただし、この場合、図5に示すように、ティーチングペンダント16のタッチパネル18(またはパネル)に、力十字線52、モーメント十字線54,バー70a,70b,72a,72b、ハンドツール12の状態遷移図ウインドウ80a,80b、ポインタ90a,90b,92a,92bを表示するのが好ましい。それにより、作業者が、位置/姿勢特定部が実行している、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢の特定の進捗状況がわかる。
【0123】
これに関連して、位置/姿勢特定部が実行している、ハンドツール12に作用する力とモーメントが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢の特定を停止させる停止ボタンをティーチングペンダント16に設けてもよい。これにより、位置/姿勢特定部が誤った方向にハンドツールを平行移動させたり、または回転させている場合、位置/姿勢特定部を停止させることができる。
【0124】
例えば、位置/姿勢特定部が、ハンドツール12に作用する力とモーメントとが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢の特定中、タッチパネル18のハンドツール12の状態遷移図ウインドウ80a,80bに力Fx=0、Fy=0を示すマーク84やFx=My/L、Fy=Mx/Lを示すマーク86が現れない場合、作業者は、位置/姿勢特定部によるハンドツール12の位置と姿勢の調整方向が適切ではない(誤っている)と判断し、その特定を停止させることできる。
【0125】
これに関連して、位置/姿勢特定部のハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を変更させるための手段をティーチングペンダント16(タッチパネル18)に設けてもよい。
【0126】
例えば、図14のように、ティーチングペンダント制御部14cにより、タッチパネル18の状態遷移図ウインドウ80a,80bそれぞれの四隅に、作業者が押すことによって位置/姿勢特定部のハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を指示することができる調整方向指示ボタン88a1〜88b4が表示される。
【0127】
調整方向指示ボタン88a1が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを減少させる方向と回転量ΔBを増加させる方向とに限定する。
【0128】
調整方向指示ボタン88a2が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを増加させる方向と回転量ΔBを増加させる方向とに限定する。
【0129】
調整方向指示ボタン88a3が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを減少させる方向と回転量ΔBを減少させる方向とに限定する。
【0130】
調整方向指示ボタン88a4が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔXを増加させる方向と回転量ΔBを減少させる方向とに限定する。
【0131】
調整方向指示ボタン88b1が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを減少させる方向と回転量ΔAを増加させる方向とに限定する。
【0132】
調整方向指示ボタン88b2が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを増加させる方向と回転量ΔAを増加させる方向とに限定する。
【0133】
調整方向指示ボタン88b3が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを減少させる方向と回転量ΔAを減少させる方向とに限定する。
【0134】
調整方向指示ボタン88b4が作業者によって押されると、位置/姿勢特定部は、ハンドツール12の位置と姿勢の調整方向を、移動量ΔYを増加させる方向と回転量ΔAを減少させる方向とに限定する。
【0135】
これらの調整方向指示ボタン88a1〜88b4により、位置/姿勢特定部が実行している、ハンドツール12に作用する力とモーメントが略ゼロのハンドツール12の位置と姿勢の特定にかかる時間が短縮可能になる。
【0136】
さらにまた、上述の実施の形態の場合、タッチパネル18の画面50に表示される力やモーメントは、力覚センサ22のセンサ座標系ΣSのX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMyであるが、これに加えてZ軸方向の力と、Z軸まわりのモーメントを表示してもよい。この場合、例えば、センターマーク56の近くに、力覚センサ22が検出したZ軸方向の力の大きさに対応して径が変化するサークルが表示される。また、サークルをアナログ時計とみたてて、針の位置でモーメントの大きさを示す。例えば12時の位置ゼロを示し、時計まわり方向が正方向のモーメントを示し、反時計まわり方向が逆方向のモーメントを示す。
【0137】
加えて、上述の実施形態の場合、タッチパネル18に表示される操作ボタンは、力覚センサ22のセンサ座標系ΣSのX軸方向にハンドツール12を平行移動させる「X+」操作ボタン60aと「X−」操作ボタン60b、Y軸方向に平行移動させる「Y+」操作ボタン62aと「Y−」操作ボタン62b、X軸中心にハンドツール12を回転させる「A+」操作ボタン64aと「A−」操作ボタン64b、Y軸中心にハンドツール12を回転させる「B+」操作ボタン66aと「B−」操作ボタン66bであるが、本発明はこれに限らない。これらの操作ボタン60a〜66bに加えて、Z軸方向にハンドツール12を平行移動させる「Z+」操作ボタン(Z軸プラス方向)と「Z−」操作ボタン(Z軸マイナス方向)、Z軸まわりにハンドツール12を回転させる「C+」操作ボタン(逆方向)と「C−」操作ボタン(正方向)を、タッチパネル18上に表示してもよい。
【0138】
最後に、本発明の構成や特徴が、種々に変形でき修正できるのは当業者にとって明らかである。特に、画面にグラフィック化されて表示される、ハンドツールに作用する力やモーメントなどの各種の情報は、そのデザインが容易に変更可能なことは明らかである。例えば、図5に示す力十字線52やモーメント十字線54は、点(ドット)にデザイン変更可能である。しかしながら、そのような変形や修正は、添付した請求の範囲から逸脱しない限りにおいて、本発明に含まれていると理解すべきである。
【符号の説明】
【0139】
60a 平行移動操作手段(「X+」操作ボタン)、 60b 平行移動操作手段(「X−」操作ボタン)、 62a 平行移動操作手段(「Y+」操作ボタン)、 62b 平行移動操作手段(「Y−」操作ボタン)、 64a 回転操作手段(「A+」操作ボタン)、 64b 回転操作手段(「A−」操作ボタン)、 66a 回転操作手段(「B+」操作ボタン)、 66b 回転操作手段(「B−」操作ボタン)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドツールを備えたロボットに対し、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作またはワークに組付け済みの部品を該ハンドツールによって把持して取り外す動作を教示するときに、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定可能なロボットの教示装置であって、
部品の組付けまたは取外し方向と直交する第1方向、または組付け/取外し方向および第1方向と直交する第2方向にハンドツールを平行移動させて該ハンドツールの位置を調整するときに作業者が操作する平行移動操作手段と、
ハンドツールを第1方向に延びる第1回転中心線または第2方向に延びる第2回転中心線を中心として回転させて該ハンドツールの姿勢を調整するときに作業者が操作する回転操作手段と、
ハンドツールに作用する第1方向の第1力、第2方向の第2力、第1回転中心線まわりの第1モーメント、および第2回転中心線まわりの第2モーメントを検出する力覚センサと、
力覚センサの検出結果と、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作の情報を、力覚センサの検出結果とハンドツールの位置と姿勢とに基づいて表示する表示手段とを有するロボットの教示装置。
【請求項2】
表示手段が、
作業者の平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作によって変化したハンドツールの位置の変化量と姿勢の変化量とに基づいて、ハンドツールの位置と姿勢の遷移図を表示する請求項1に記載のロボットの教示装置。
【請求項3】
表示手段が、
ハンドツールの位置と姿勢の遷移図として、
第1力または第2モーメントのいずれか一方を横軸にし、他方を縦軸にしてハンドツールの位置と姿勢の遷移を軌跡で示す第1の遷移図と、
第2力または第1モーメントのいずれか一方を横軸にし、他方を縦軸にしてハンドツールの位置と姿勢の遷移を軌跡で示す第2の遷移図とを表示する請求項2に記載のロボットの教示装置。
【請求項4】
表示手段が、
第1の遷移図上において、力覚センサがゼロの第1力を検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、力覚センサがゼロの第2モーメントを検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、または力覚センサが検出した第1力と第2モーメントが所定の関係にあるときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置の少なくとも1つにマークを表示し、且つ、
第2の遷移図上において、力覚センサがゼロの第2力を検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、力覚センサがゼロの第1モーメントを検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、または力覚センサが検出した第2力と第1モーメントが所定の関係にあるときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置の少なくとも1つにマークを表示する請求項3に記載のロボットの教示装置。
【請求項5】
表示手段が、平行移動操作手段または回転操作手段のいずれか一方に対して作業者が継続操作しているとき、該継続操作によって変化したハンドツールに作用する力の変化量とモーメントの変化量とを表示する請求項1から4のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項6】
表示手段が、
力覚センサが検出した第1および第2力に対応する画面上の位置に第1十字線を表示し、
力覚センサが検出した第1および第2モーメントに対応する画面上の位置に第2十字線を表示し、
第1十字線の交点の画面横方向位置が第1力に対応し、
第1十字線の交点の画面縦方向位置が第2力に対応し
第2十字線の交点の画面横方向位置が第1モーメントに対応し、且つ、
第2十字線の交点の画面縦方向位置が第2モーメントに対応している請求項1から5のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項7】
表示手段が、
第1十字線の横線と第2十字線の横線とが重なった画面上の縦方向位置にマークを表示し、且つ、
第1十字線の縦線と第2十字線の縦線とが重なった画面上の横方向位置にマークを表示する請求項6に記載のロボットの教示装置。
【請求項8】
平行移動操作手段は、
第1方向にハンドツールを平行移動させる第1平行移動操作手段と、第2方向にハンドツールを平行移動させる第2平行移動操作手段とから構成され、
回転操作手段は、
第1回転中心線を中心としてハンドツールを回転させる第1回転操作手段と、第2回転中心線を中心としてハンドツールを回転させる第2回転操作手段とから構成され、
表示手段がタッチパネルで構成され、
第1平行移動操作手段、第2平行移動操作手段、第1回転操作手段、および第2回転操作手段が、タッチパネルに表示された操作ボタンで構成されている請求項1から7のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項9】
第2部品に組み込まれた状態の第1部品を把持しているハンドツールの位置と姿勢を自動的に調整することにより、力覚センサが検出する第1および第2力と第1および第2モーメントとが略ゼロのハンドツールの位置と姿勢を自動的に特定する位置/姿勢特定手段と、
位置/姿勢特定手段によるハンドツールの位置と姿勢の特定を中断させるときに作業者が操作する自動特定停止手段とを有する請求項1から8のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項10】
位置/姿勢特定手段のハンドツールの位置と姿勢の調整方向を変更するための調整方向変更手段を有する請求項9に記載のロボットの教示装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のロボットの教示装置を有するロボットの制御装置。
【請求項1】
ハンドツールを備えたロボットに対し、ハンドツールによって部品を把持してワークに組付ける動作またはワークに組付け済みの部品を該ハンドツールによって把持して取り外す動作を教示するときに、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを特定可能なロボットの教示装置であって、
部品の組付けまたは取外し方向と直交する第1方向、または組付け/取外し方向および第1方向と直交する第2方向にハンドツールを平行移動させて該ハンドツールの位置を調整するときに作業者が操作する平行移動操作手段と、
ハンドツールを第1方向に延びる第1回転中心線または第2方向に延びる第2回転中心線を中心として回転させて該ハンドツールの姿勢を調整するときに作業者が操作する回転操作手段と、
ハンドツールに作用する第1方向の第1力、第2方向の第2力、第1回転中心線まわりの第1モーメント、および第2回転中心線まわりの第2モーメントを検出する力覚センサと、
力覚センサの検出結果と、ハンドツールに作用する力とモーメントとが略ゼロの該ハンドツールの位置と姿勢とを作業者が特定するときにすべき平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作の情報を、力覚センサの検出結果とハンドツールの位置と姿勢とに基づいて表示する表示手段とを有するロボットの教示装置。
【請求項2】
表示手段が、
作業者の平行移動操作手段および回転操作手段に対する操作によって変化したハンドツールの位置の変化量と姿勢の変化量とに基づいて、ハンドツールの位置と姿勢の遷移図を表示する請求項1に記載のロボットの教示装置。
【請求項3】
表示手段が、
ハンドツールの位置と姿勢の遷移図として、
第1力または第2モーメントのいずれか一方を横軸にし、他方を縦軸にしてハンドツールの位置と姿勢の遷移を軌跡で示す第1の遷移図と、
第2力または第1モーメントのいずれか一方を横軸にし、他方を縦軸にしてハンドツールの位置と姿勢の遷移を軌跡で示す第2の遷移図とを表示する請求項2に記載のロボットの教示装置。
【請求項4】
表示手段が、
第1の遷移図上において、力覚センサがゼロの第1力を検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、力覚センサがゼロの第2モーメントを検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、または力覚センサが検出した第1力と第2モーメントが所定の関係にあるときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置の少なくとも1つにマークを表示し、且つ、
第2の遷移図上において、力覚センサがゼロの第2力を検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、力覚センサがゼロの第1モーメントを検出したときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置、または力覚センサが検出した第2力と第1モーメントが所定の関係にあるときのハンドツールの位置と姿勢に対応する位置の少なくとも1つにマークを表示する請求項3に記載のロボットの教示装置。
【請求項5】
表示手段が、平行移動操作手段または回転操作手段のいずれか一方に対して作業者が継続操作しているとき、該継続操作によって変化したハンドツールに作用する力の変化量とモーメントの変化量とを表示する請求項1から4のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項6】
表示手段が、
力覚センサが検出した第1および第2力に対応する画面上の位置に第1十字線を表示し、
力覚センサが検出した第1および第2モーメントに対応する画面上の位置に第2十字線を表示し、
第1十字線の交点の画面横方向位置が第1力に対応し、
第1十字線の交点の画面縦方向位置が第2力に対応し
第2十字線の交点の画面横方向位置が第1モーメントに対応し、且つ、
第2十字線の交点の画面縦方向位置が第2モーメントに対応している請求項1から5のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項7】
表示手段が、
第1十字線の横線と第2十字線の横線とが重なった画面上の縦方向位置にマークを表示し、且つ、
第1十字線の縦線と第2十字線の縦線とが重なった画面上の横方向位置にマークを表示する請求項6に記載のロボットの教示装置。
【請求項8】
平行移動操作手段は、
第1方向にハンドツールを平行移動させる第1平行移動操作手段と、第2方向にハンドツールを平行移動させる第2平行移動操作手段とから構成され、
回転操作手段は、
第1回転中心線を中心としてハンドツールを回転させる第1回転操作手段と、第2回転中心線を中心としてハンドツールを回転させる第2回転操作手段とから構成され、
表示手段がタッチパネルで構成され、
第1平行移動操作手段、第2平行移動操作手段、第1回転操作手段、および第2回転操作手段が、タッチパネルに表示された操作ボタンで構成されている請求項1から7のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項9】
第2部品に組み込まれた状態の第1部品を把持しているハンドツールの位置と姿勢を自動的に調整することにより、力覚センサが検出する第1および第2力と第1および第2モーメントとが略ゼロのハンドツールの位置と姿勢を自動的に特定する位置/姿勢特定手段と、
位置/姿勢特定手段によるハンドツールの位置と姿勢の特定を中断させるときに作業者が操作する自動特定停止手段とを有する請求項1から8のいずれか1項に記載のロボットの教示装置。
【請求項10】
位置/姿勢特定手段のハンドツールの位置と姿勢の調整方向を変更するための調整方向変更手段を有する請求項9に記載のロボットの教示装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のロボットの教示装置を有するロボットの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−125990(P2011−125990A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289375(P2009−289375)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト 作業知能(生産分野)の開発 機種切り替えが迅速かつ長時間連続操業可能なロボットセル生産システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト 作業知能(生産分野)の開発 機種切り替えが迅速かつ長時間連続操業可能なロボットセル生産システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
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