説明

ロボット制御装置

【課題】
手動操作座標系を自動的に切り換えても、手動操作座標系が切り換わったことを作業者が本当に認識しない限り、意図しない方向へロボットを手動操作により移動させてしまう可能性がある。
【解決手段】
ロボット制御装置RCは、複数のユーザ座標系を表示装置30に表示させることにより、表示された複数のユーザ座標系の中からいずれか1のユーザ座標系の選択を促すCPUを備える。CPUは、自動選択された座標系をティーチペンダントTPの表示装置30に表示するようにする。さらに、手動により選択された座標系と、自動選択された座標系とが一致した場合のみ、手動操作座標系の切り替え制御を行う。自動選択された座標系と作業者が意図している座標系とが相違することがなく、安全性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接ロボット制御装置では、マニピュレータを手動操作する場合、手動操作時の手動操作座標系をティーチペンダント等の操作装置を用いてその都度選択する必要がある。
【0003】
例えば、機械座標系及びツール座標系がアーク溶接ロボット制御装置の工場出荷時に予め定義されて、該装置に内蔵された記憶手段に記憶されており、出荷後にユーザによってユーザ座標系として、ユーザ座標系1、ユーザ座標系2、ユーザ座標系3が作成されて、前記記憶手段に記憶されている場合、以下のような方法で手動操作座標系が選択される。
【0004】
・座標系選択手段として、例えばティーチペンダントのキーが用意されている。
・このキーを押す度に、機械座標系→ツール座標系→ユーザ座標系1→ユーザ座標系2→ユーザ座標系3と切り替わり、機械座標系に戻る。
【0005】
或いは、
・座標系選択手段として、例えば、専用メニューが用意されている。
・前記メニューを開くと、機械座標系、ツール座標系、ユーザ座標系1、ユーザ座標系2、ユーザ座標系3が一覧で表示され、所望の座標系を選択する。
【0006】
上記のような手動操作座標系の選択作業を軽減するための技術が特許文献1で提案されている。
特許文献1では、マニピュレータのハンド位置が所定領域にあることを検知すると、前記所定領域と対応付けられた手動操作座標系に自動的に切り換えるようにしている。そして、特許文献1では、手動操作座標系に自動的に切り換えたときに警告を発するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−110190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、手動操作座標系を自動的に切り換えたときに、警告を発するようにしても、前記手動操作座標系が切り換わったことを作業者が本当に認識しない限り、意図しない方向へロボットを手動操作により移動させてしまう可能性がある。
【0009】
又、ハンドリングロボット制御装置、塗装ロボット制御装置、スポット溶接ロボット制御装置、シーリングロボット制御装置、組立ロボット制御装置、レーザ加工ロボット制御装置等においてもマニピュレータの先端に設けたツールを手動操作して移動させる場合には同様の問題が生ずる。
【0010】
本発明の目的は、手動操作座標系の選択操作を自動化して簡素化するとともに、自動選択された手動操作座標系と作業者が意図している手動操作座標系とが相違することがないロボット制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、表示手段を有するとともに、マニピュレータを手動操作する可搬式操作手段と、ステーション又は前記ステーションに載置したワークに応じた軸方向を規定する手動操作座標系としてユーザ座標系を複数記憶する座標系記憶手段と、前記ステーションに設置されたワークに対して、前記可搬式操作手段の手動操作により前記マニピュレータの先端に取付けられたツールを移動させる際、前記ツールの位置に基づいて手動操作時の基準となるユーザ座標系を前記座標系記憶手段が記憶している前記ユーザ座標系の中から自動選択する座標系自動選択手段を備えたロボット制御装置において、複数の前記ユーザ座標系を前記表示手段に表示させることにより、表示された複数のユーザ座標系の中からいずれか1のユーザ座標系の選択を促す座標系手動選択手段を備え、前記座標系手動選択手段は、前記手動により選択されたユーザ座標系が、前記座標系自動選択手段により自動選択されたユーザ座標系と一致した場合、該一致した前記ユーザ座標系を、一致していないユーザ座標系とは異なる表示態様により明示するように前記表示手段に表示させることを特徴とするロボット制御装置を要旨としている。
【0012】
なお、本明細書において、「一致した前記ユーザ座標系を、一致していないユーザ座標系とは異なる表示態様により明示するように前記表示手段に表示させる」とは、「一致したユーザ座標系のみを、表示手段に表示させ、一致していないユーザ座標系を表示しない」ようにする場合と、「一致及び不一致のユーザ座標系をともに表示するが、一致したユーザ座標系については、一致していることを明示し、一致していないユーザ座標系には、不一致であることを明示する表示形態で表示させる」ことを含む。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記座標系手動選択手段が、複数の前記ユーザ座標系を前記表示手段に表示させる際、前記マニピュレータの動作を禁止する動作禁止手段と、前記手動により選択されたユーザ座標系が、前記座標系自動選択手段により自動選択されたユーザ座標系と一致した場合、該一致した前記ユーザ座標系を、一致していないユーザ座標系とは異なる表示態様により明示するように前記表示手段に表示させるとともに、前記動作禁止手段による前記マニピュレータの動作禁止を解除する動作許容手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、手動操作座標系の選択操作を自動化して簡素化するとともに、自動選択された手動操作座標系と作業者が意図している手動操作座標系とが相違することがない効果を奏する。
【0015】
請求項2の発明によれば、マニピュレータが停止した状態で、ユーザは表示手段に表示された複数のユーザ座標系の1を選択できる。又、請求項2の発明によれば、ユーザが選択したユーザ座標系と、座標系自動選択手段が選択したユーザ座標系が一致したときのみ、停止したマニピュレータの動作を解除できるため、手動操作座標系が切り換わったことを作業者が本当に認識した状態で、マニピュレータを手動操作により移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のアーク溶接ロボット制御装置の構成図。
【図2】アーク溶接ロボット制御装置のブロック図。
【図3】CPUが実行するプログラムのフローチャート。
【図4】ティーチペンダントTPの表示装置に表示された選択メニューの説明図。
【図5】(a)は他の実施形態のティーチペンダントTPの表示装置の説明図、(b)はジョグ送り以前のときの座標系の選択メニューで座標系が表示される場合の説明図、(c)はジョグ送り時の選択メニューでユーザ座標系が表示される場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明のロボット制御装置をアーク溶接ロボット制御装置に具体化した一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0018】
図1に示すアーク溶接ロボット制御装置(以下、単にロボット制御装置という)RCは、作業台16上のワークWに対してアーク溶接を自動で行うように溶接作業を行う6軸(すなわち、6個の関節軸)のマニピュレータ10を制御する。図1では、例として作業台16が1台のみの場合を示しているが、通常は、複数の作業台が設置される。又、作業台16は、単にワークWを設置するだけのフロアに固定された作業台としてもよいし、ワークWに対する溶接姿勢を最適に維持するためのポジショナとしてもよい。作業台16としてポジショナを採用する場合は、ロボット制御装置RCによってポジショナの軸が駆動制御される。
【0019】
さらに、作業台16またはポジショナは、一般的に作業ステーションとも総称される。以下では、作業台16またはポジショナを特に区別することがない限り、総称して作業ステーション(または単にステーション)と呼ぶ。
【0020】
マニピュレータ10のベース部材12は、フロア等に固定されている。ベース部材12には、前記複数の関節軸を介して連結された複数のアーム20が設けられている。最も先端側に位置するアーム20の先端部には、ツールとしての溶接トーチ(以下、単にトーチという)Tが設けられている。トーチTは、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークWに対して溶接を施す。各アーム20は図示しない各駆動モータの駆動によってトーチTを並進、回転自在に移動できるように構成されている。前記図示しない駆動モータに直結された図示しないエンコーダから各アームの関節角度が検出される。
【0021】
ロボット制御装置RCには、可搬式操作手段としてのティーチペンダントTPが接続されている。ティーチペンダントTPの操作面には液晶ディスプレイ等からなる表示手段としての表示装置30及び各種キー、或いはボタンが設けられている。ティーチペンダントTPは、マニピュレータ10の動作をオペレータが教示するための装置である。
【0022】
前記キーには、マニピュレータ10を動作させるための複数の軸キーを含むキー群40、メニューキー41、選択キー42、実行キー43等を含む。これらのキー操作、或いはボタン操作により、ティーチペンダントTPは入力されたコマンド、データ、或いは、各種情報をロボット制御装置RCに出力可能である。ロボット制御装置RCは入力したコマンドに応じて、マニピュレータ10を作動させるとともに、データ、或いは、各種情報をロボット制御装置RCが備える記憶部56(図2参照)に格納可能である。
【0023】
図1に示すようにキー群40は、座標系の方向(±X,±Y,±Z)に応じた複数の軸キーが装備されている。いずれかの軸キーの押下により、その軸キーに対応した方向にマニピュレータ10が移動する。例えば、ロボット制御装置RCは、設定されている座標系の下でマニピュレータ10を移動させる場合は、キー群40内のX+軸キーを押すと、当該設定されている座標系のX+方向にマニピュレータ10が移動する。
【0024】
このように、オペレータはキー群40の軸キーを操作することにより、マニピュレータ10を所望の位置に動かして、溶接作業を行わせるための作業経路上の教示点を教示する。
【0025】
図2に示すようにロボット制御装置RCは、CPU(中央処理装置)50、マニピュレータ10を制御するための制御ソフトウェアを記憶する書換可能なEEPROM52、作業メモリとなるRAM54、及び前記作業プログラムや手動操作座標系等の各種座標系の定義パラメータ等を記憶する書換可能な不揮発性メモリからなる記憶部56を備える。
【0026】
記憶部56は、ワールド座標系、機械座標系、ツール座標系等をはじめとする各種の座標系が記憶されている。ワールド座標系は、絶対的な座標系である。機械座標系は、マニピュレータ10に固定された座標系であって、例えば、ベース部材12の特定の部位を原点とするベース座標系等が含まれる。ツール座標系はトーチTの形状やツールに接続されるワイヤの送給方向に座標系の軸が一致するように設定されている。ワールド座標系、機械座標系、及びツール座標系は、ロボット制御装置RCが工場出荷のときに予め記憶部56に記憶されている。
【0027】
又、記憶部56には、前記工場出荷後にユーザが設定した複数のユーザ座標系が記憶されている。
ユーザ座標系は、ユーザが任意に定義した直交座標系であって、例えば、ティーチペンダントTPの軸キーを操作して、基準座標系の基で原点、及び前記原点で直交する2軸上の任意の点に、トーチTを移動させてそれらの点をそれぞれ教示することにより定義されている。なお、基準座標系は、例えば、ベース座標系、或いは、ワールド座標系である。ユーザ座標系の定義は、基準座標系からユーザ座標系への変換行列により定義が可能である。なお、基準座標系の代わりに、ユーザ座標系ではない非ユーザ座標系である他の座標系を使用してもよい。
【0028】
前記機械座標系、ツール座標系、及びユーザ座標系は、それぞれ識別可能に識別データが付与されて、記憶部56から読み出し可能である。そして、読み出された座標系が手動操作の座標系として設定されると、軸キーの操作に応じて、該軸キーに対応する座標系の軸方向にトーチTが移動する。ユーザ座標系は、手動操作座標系に含まれる。
【0029】
又、記憶部56は、前記各ユーザ座標系を記憶するとともに、各ユーザ座標系と一体一でそれぞれ関連づけされた後述する複数の作業領域の定義パラメータを記憶する。
トーチTの作業領域Saについて説明する。
【0030】
図1に示すように作業領域Saは、ワークWを載置する各ステーションの載置面から上方の空間領域である。
作業領域Saの定義は、各ステーションにおいて、前記載置面から上方の空間領域を規定するために、載置面に含まれる位置、並びに載置面から上方へ離間した位置において、それぞれ少なくとも3点の座標値を、トーチTを移動して、基準座標系で教示することにより、設定される。例えば、載置面側で3点、載置面から鉛直上方において3点であれば、三角柱状の空間領域が定義される。又、載置面では4点を教示するとともに、載置面上の前記4点からそれぞれ鉛直方向に上方へ離間した4点を教示することにより、例えば、直方体状、立方体状等の柱形状をなす空間領域が定義できる。5点以上の場合も、多角柱状の空間領域が定義可能である。なお、空間領域の三次元形状は、限定するものではない。
【0031】
又、ロボット制御装置RCは、マニピュレータ10の前記モータを制御するサーボドライバ58を備えている。ロボット制御装置RCのCPU50は、前記作業プログラムに従って図示しない前記エンコーダからの現在位置情報(すなわち、関節角度)等に基づき、サーボドライバ58を介して、マニピュレータ10の図示しない駆動モータを駆動制御して、トーチTを教示点に移動させることが可能である。
【0032】
前記CPU50は、座標系自動選択手段、座標系手動選択手段、動作禁止手段及び動作許容手段に相当する。前記記憶部56は、座標系記憶手段に相当する。
(作用)
さて、上記のように構成されたロボット制御装置RCの作用を、図3及び図4を参照して説明する。
【0033】
図3は、ティーチペンダントTPによりトーチTをジョグ送りしている際にCPU50が制御周期毎に実行するプログラムのフローチャートである。
S10では各アーム20の駆動モータ(図示しない)に直結されたエンコーダ(図示しない)から入力した各アームの関節角度に基づいて、トーチTの位置を算出(取得)し、その算出結果に基づいて、トーチTの位置が前記記憶部56に予め記憶されたいずれかの作業領域にあるか否かを判定する。前記記憶部56に予め記憶されたいずれの作業領域にもトーチTが位置しない場合は、CPU50はこのフローチャートを一旦終了し、いずれかの作業領域にトーチTがある場合にはS20に移行する。
【0034】
S20では、CPU50は、前回の制御周期において、トーチTが同じ作業領域内に位置していたか否かを判定する。前回と同じ作業領域にトーチTが位置していた場合には、このフローチャートを一旦終了する。又、S20において、前回と同じ作業領域ではない場合にはS30に移行する。
【0035】
S30では、CPU50は、トーチTが位置している作業領域に関連づけられている手動操作座標系、すなわち、ユーザ座標系を記憶部56から自動選択する。
S40では、CPU50は、マニピュレータ10の動作を禁止するフラグをセットする。このフラグのセットにより、オペレータのジョグ送りのために軸キーの操作があっても、マニピュレータ10の動作が禁止される。
【0036】
S50では、CPU50は、図4に示すようにティーチペンダントTPの表示装置30に対してその画面に、記憶部56に格納されている座標系の選択メニューを表示させる。そして、CPU50は、S60で、表示された座標系の選択メニューから座標系が選択されるのを待つ。本実施形態の座標系の選択メニューは、ティーチペンダントTPの選択キー42を操作することにより、画面上の選択メニューにあるいずれかの座標系が選択可能である。
【0037】
S60で、オペレータにより、選択キー42により座標系選択メニュー上のいずれかの座標系が選択され、実行キー43が操作されると、選択された座標系を示す選択信号がティーチペンダントTPからロボット制御装置RCのCPU50に入力される。
【0038】
S70では、CPU50は、入力した選択信号に基づいて、オペレータ(ユーザ)が選択した座標系と、S30で自動選択したユーザ座標系とが一致しているか否かを判定する。CPU50は、オペレータが選択した座標系と、自動選択した座標系とが一致していない場合には、不一致である旨の文を、表示装置30に表示させて、S60に戻る。
【0039】
S70において、CPU50は、オペレータが選択した座標系と、自動選択した座標系とが一致していると判定した場合には、S80に移行して、表示装置30に、選択されなかった座標系を消去して、一致した手動操作座標系の名称のみを残して表示させる。
【0040】
S90では、CPU50は、S40でフラグをリセットし、このフローチャートを一旦終了する。
このように、自動選択された座標系とオペレータ自らが選択した座標系が一致している場合に表示装置30に選択したユーザ座標系が表示される。このため、トーチTが作業領域Saに入ったときに、CPU50が自動選択したユーザ座標系を作業者が意図していることを確認した状態で当該ユーザ座標系の基で、トーチTのジョグ送りができる。
【0041】
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1) 本実施形態のロボット制御装置RCは、複数のユーザ座標系を表示装置30(表示手段)に表示させることにより、表示された複数のユーザ座標系の中からいずれか1のユーザ座標系の選択を促すCPU50(座標系手動選択手段)を備える。そして、ロボット制御装置RCのCPU50は、手動により選択されたユーザ座標系が、自動選択されたユーザ座標系と一致した場合、該一致したユーザ座標系のみを、ティーチペンダントTPの表示装置30(表示手段)に表示させる。この結果、手動操作座標系の選択操作を自動化して簡素化するとともに、自動選択された手動操作座標系と作業者が意図している手動操作座標系とが相違することがない。
【0042】
(2) 本実施形態のロボット制御装置RCのCPU50は、複数のユーザ座標系を表示装置30に表示させる際、マニピュレータ10の動作を禁止する動作禁止手段として機能する。又、ロボット制御装置RCのCPU50は、手動により選択されたユーザ座標系が、自動選択されたユーザ座標系と一致した場合、一致したユーザ座標系のみを、表示装置30に表示させるとともに、前記動作禁止手段による前記マニピュレータの動作禁止を解除する動作許容手段として機能する。この結果、マニピュレータ10が停止した状態で、オペレータは表示装置30に表示された複数のユーザ座標系の1つを選択できる。
【0043】
さらに、オペレータが選択したユーザ座標系と、CPU50が選択したユーザ座標系が一致したときのみ、停止したマニピュレータ10の動作を解除できるため、手動操作座標系が切り換わったことをオペレータが本当に認識した状態で、マニピュレータ10を手動操作により移動させることができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図3、及び図5を参照して説明する。第2実施形態のロボット制御装置RCのハード構成は、第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と同じ構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、ジョグ送りする前において、いずれかの座標系を選択する場合は、図5(a)に示すように、操作面に設けられた座標設定モードキー44を操作すると、CPU50は、表示装置30の画面に、記憶部56に格納されている座標系の選択メニューの1つを表示させる。そして、切り換えキー45を操作する毎に、記憶部56に記憶されている全ての座標系のうちの1つが順に表示されるようにされている。図5(b)には、ベース座標系、ワーク座標系、テーブル座標系、ユーザ座標系1〜ユーザ座標系nが順に切り換えられることが示されている。
【0046】
又、第2実施形態では、ジョグ送りする際には、第1実施形態の図3に示すフローチャートの各ステップを同様に実行するが、S50、S60及びS80の処理の一部が異なっている。
【0047】
S50では、CPU50は、ティーチペンダントTPの表示装置30に対してその画面に、座標系の選択メニューとして、記憶部56に記憶されている複数のユーザ座標系の内、1つのユーザ座標系が表示される。
【0048】
そして、S60において、オペレータが、切り換えキー45を操作する毎に、記憶部56に記憶されているユーザ座標系の1つが順に表示されるようにされている。図5(c)には、ユーザ座標系1〜ユーザ座標系nが順に切り換えられることが示されている。
【0049】
S60において、オペレータにより、表示装置30の画面にいずれか1つのユーザ座標系が表示されている状態で、実行キー43が操作されると、表示されているユーザ座標系が選択されたものとして、そのユーザ座標系を示す選択信号がティーチペンダントTPからロボット制御装置RCのCPU50に入力される。
【0050】
S70での処理は第1実施形態と同様である。S70において、CPU50は、オペレータが選択した座標系と、自動選択した座標系とが一致していると判定した場合には、S80では、表示装置30に一致した手動操作座標系の名称をそのまま表示させる。
【0051】
本実施形態においても、第1実施形態で説明した(1)、(2)の効果を奏することができる。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
・ なお、空間領域の定義は、ステーションの載置面の座標値が分かっている場合は、載置面から離間した上方の位置の座標値を数値入力で行うようにしてもよい。又、作業領域Saの定義は、他の公知の方法で行うようにしてもよい。
【0053】
・ 第1実施形態では、S80において、選択されなかった座標系を消去して、一致した手動操作座標系のみを残して表示させるようにした。これに代えて、「一致及び不一致のユーザ座標系をともに表示するが、一致したユーザ座標系については、一致していることを明示し、一致していないユーザ座標系には、不一致であることを明示する表示形態で表示させる」ようにしてもよい。
【0054】
具体的には、下記のように一致、不一致を区別化して表示する態様がある。
(1) 一致したユーザ座標系の文字は、○印等の符号を付け、不一致のユーザ座標系の文字には×印等の符号を付けて表示して、どの座標系が一致しているのかが分かるように表示すること。
【0055】
(2) 一致したユーザ座標系の文字又は該文字の背景色は、点滅状態で表示し、不一致のユーザ座標系の文字又は該文字の背景色は点滅させないで表示すること。
(3) 不一致のユーザ座標系の文字には、二重線等で消し線を付けた状態で表示し、一致したユーザ座標系の文字には、消し線なしで表示すること。
【0056】
(4) 一致したユーザ座標系の文字自体、或いは該文字の背景色には、明るい色で明示し、不一致のユーザ座標系の文字、或いは背景色を暗い色にして一致したユーザ座標系の表記を不一致のユーザ座標系の表示よりも明示すること。
【0057】
・ 前記実施形態では、アーク溶接ロボット制御装置に具体化したが、他のロボット制御装置、例えば、ハンドリングロボット制御装置、塗装ロボット制御装置、スポット溶接ロボット制御装置、シーリングロボット制御装置、組立ロボット制御装置、レーザ加工ロボット制御装置等のロボット制御装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…マニピュレータ、30…表示装置(表示手段)、
50…CPU(座標系自動選択手段、座標系手動選択手段、動作禁止手段及び動作許容手段)、
56…記憶部(座標系記憶手段)、
RC…ロボット制御装置、T…トーチ(ツール)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段を有するとともに、マニピュレータを手動操作する可搬式操作手段と、ステーション又は前記ステーションに載置したワークに応じた軸方向を規定する手動操作座標系としてユーザ座標系を複数記憶する座標系記憶手段と、前記ステーションに設置されたワークに対して、前記可搬式操作手段の手動操作により前記マニピュレータの先端に取付けられたツールを移動させる際、前記ツールの位置に基づいて手動操作時の基準となるユーザ座標系を前記座標系記憶手段が記憶している前記ユーザ座標系の中から自動選択する座標系自動選択手段を備えたロボット制御装置において、
複数の前記ユーザ座標系を前記表示手段に表示させることにより、表示された複数のユーザ座標系の中からいずれか1のユーザ座標系の選択を促す座標系手動選択手段を備え、前記座標系手動選択手段は、前記手動により選択されたユーザ座標系が、前記座標系自動選択手段により自動選択されたユーザ座標系と一致した場合、該一致した前記ユーザ座標系を、一致していないユーザ座標系とは異なる表示態様により明示するように前記表示手段に表示させることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記座標系手動選択手段が、複数の前記ユーザ座標系を前記表示手段に表示させる際、前記マニピュレータの動作を禁止する動作禁止手段と、
前記手動により選択されたユーザ座標系が、前記座標系自動選択手段により自動選択されたユーザ座標系と一致した場合、該一致した前記ユーザ座標系を、一致していないユーザ座標系とは異なる表示態様により明示するように前記表示手段に表示させるとともに、前記動作禁止手段による前記マニピュレータの動作禁止を解除する動作許容手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のロボット制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−91273(P2012−91273A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240714(P2010−240714)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】