説明

ローラの製造方法

【課題】廃棄材料を極力減らし成型用金型の清掃工程を減らすとともに、材料注入時のエア巻き込みによるボイドが発生しないローラの製造方法を提供する。
【解決手段】(1)駒を円筒状の金型一端に配置する工程、(2)芯材の中心軸と金型の中心軸とが一致するように芯材を保持した状態で、金型の中心軸を鉛直方向に対して1°以上45°以下の範囲で傾ける工程、(3)金型の他端側から発泡弾性層材料を金型の下側領域の内壁に沿って流しこむことにより金型内に発泡弾性層材料を注入する工程、(4)金型の中心軸が鉛直方向と平行となるように金型を配置する工程、(5)発泡弾性層材料を硬化させて発泡弾性層を形成する工程、(6)金型を脱型する工程、を有することを特徴とするローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置,画像記録装置、プリンター、ファクシミリなどの画像形成装置内において使用されるローラ、より詳しくは芯材と発泡ゴム層とを有するローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置の小型化、高画質化、低価格化の要求にともない電子写真装置に組み込まれているトナー供給ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の機能性ローラは、高精度化、低価格化が要求されている。この要求に応じて、これらの機能性ローラの品質を向上・維持しながら製造コストを下げる努力が払われている。
【0003】
こうした中で、発泡ローラが注目されている。この発泡ローラの製造方法としては、成型用のパイプ金型に芯材を把持固定するための把持部をパイプ金型両端に配置した状態で、一端の把持部内に設けられた注入口より材料を注入する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、いずれの方法も製品にはならない部分(材料流路等)が存在しその部分の材料が廃棄材料となってしまい、材料ロスが発生していた。また、廃材を除去するために清掃工程が必要となり、コスト高の要因となっていた。このため、この材料ロスについての改善が求められていた。
【特許文献1】特開2005−133820号公報
【特許文献2】特開平8−207172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この材料ロスを低減させる方法として、成型用パイプ金型(以下、「金型」と記載する場合がある。)に材料を直接注入することにより廃棄材料を出さずにローラを成型する方法が挙げられる。この方法としては具体的に、成型用パイプ金型の中心軸が鉛直方向と平行となるよう金型を立てた状態で、材料を真上から注入する方法が挙げられる。この状態を模式的に表したものを図1に示す。
【0006】
しかしながら、(1)この方法では成型用パイプ金型の壁面と芯材との間が極狭となり、金型内への材料の落し位置が限定されてしまい、先に金型内に溜まった材料4’上の特定の位置に注入中の材料が落ちていた。この結果、材料落下位置5にて材料4が落下したときの衝撃によりエアを巻き込み易く、このエアが最終的に成型された発泡ローラ内でボイドとして現れてしまっていた。
【0007】
(2)更に、金型内への材料の落し位置が限定されてしまうため、材料が注入落下中に部分的に芯材や金型壁面に付着してしまい、成型品である発泡ローラにエア巻き込みやセル荒れ等の悪影響を与えていた。
【0008】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、金型内への材料の注入時に材料が被る衝撃を減らせばよいことを発見した。そして、このためには金型の内壁側面に沿って(流れるように)間接的に金型内に材料を注入すればよいことを発見した。更に、このように金型の内壁側面に沿って材料を金型内に注入する場合、金型をその中心軸が鉛直方向と平行となるように配置すると材料の粘度によっては材料が金型の内壁側面に沿って流れず芯材や金型壁面に付着してしまう。このため、材料の注入時には金型を鉛直方向に対して傾ければ良いことを発見した。
【0009】
すなわち、本発明は、廃棄材料を極力減らし、しいては成型用金型の清掃工程を減らすとともに、材料注入時のエア巻き込みによるボイドが発生しないローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は以下の構成を有することにより、解決することができる。
1.芯材と、前記芯材上に発泡弾性層とを有するローラの製造方法であって、
(1)両端が開口した円筒状の金型と、芯材保持部を備え円筒状の金型の開口一端を閉塞可能な駒と、を準備し、前記駒を円筒状の金型の開口一端に配置する工程と、
(2)前記芯材保持部を備えた駒側を下方、他端の開口側を上方とし芯材保持部により芯材の中心軸と金型の中心軸とが一致するように芯材を保持した状態で、前記金型の中心軸を鉛直方向に対して1°以上45°以下の範囲で傾ける工程と、
(3)前記金型の他端の開口側から発泡弾性層材料を金型の下側領域の内壁に沿って流しこむことにより金型内に発泡弾性層材料を注入する工程と、
(4)前記芯材保持部を備えた駒側を下方としたまま前記金型の中心軸が鉛直方向と平行となるように金型を配置する工程と、
(5)前記発泡弾性層材料を硬化させて発泡弾性層を形成する工程と、
(6)前記金型を脱型する工程と、
を有することを特徴とするローラの製造方法。
【0011】
2.前記工程(2)と(3)の間に更に、前記芯材の中心軸が前記金型内の上側領域側に配置されるように芯材を傾ける工程と、
前記工程(3)と(4)の間に更に、前記芯材の中心軸が前記金型の中心軸と一致するように金型内で芯材を配置する工程と、
を有することを特徴とする上記1に記載のローラの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
以上、詳述したように本発明によれば、以下の効果を奏する。円筒状金型内に発泡弾性層材料を注入し硬化させて発泡弾性層を形成することにより、従来、発生していた廃棄材料を激減させることができる。また、この際、金型を鉛直方向に対して1°以上45°以下の範囲で傾け、金型の内壁側面に沿って芯材保持部側に流れるように発泡弾性層材料を注入することにより、エアの巻き込みを抑えることができる。このため、ボイドのない発泡ローラを安定して成型することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、芯材と、前記芯材上に発泡弾性層とを有するローラの製造方法であり、以下の工程を有する。
(1)両端が開口した円筒状の金型と、芯材保持部を備え円筒状の金型の開口一端を閉塞可能な駒と、を準備し、駒を円筒状の金型の開口一端に配置する工程。
(2)芯材保持部を備えた駒側を下方、他端の開口側を上方とし芯材保持部により芯材の中心軸と金型の中心軸とが一致するように芯材を保持した状態で、金型の中心軸を鉛直方向に対して1°以上45°以下の範囲で傾ける工程。
(3)金型の他端の開口側から発泡弾性層材料を金型の下側領域の内壁に沿って流しこむことにより金型内に発泡弾性層材料を注入する工程。
(4)芯材保持部を備えた駒側を下方としたまま金型の中心軸が鉛直方向と平行となるように金型を配置する工程。
(5)発泡弾性層材料を硬化させて発泡弾性層を形成する工程。
(6)金型を脱型する工程。
【0014】
なお、本明細書では「上側領域」、「下側領域」を以下のように定義する。図4(a)、(b)は芯材3を保持した金型1を鉛直方向12に対して、θ°(θは1以上45以下の範囲)傾けた状態を表す模式図である。この状態において、金型の他方の端部(上方の端部:他端:他端の開口側)断面の中心13を通り、且つ水平面(鉛直方向と垂直な面)11と平行な線(金型の他端において芯材又は金型の中心軸と交わる水平面11に平行な線)7を想定する(図4(a))。そして、次に図4(a)で想定した線7から更に金型の側面に沿って両側に鉛直方向12からθ°傾けた線10を引く。また、金型の一方の端部(下方の端部:一端:一端の開口側)についても、上方の端部と同様にして線10から、金型の一方の端部(下方の端部:一端)断面の中心を通り、且つ水平面(鉛直方向と垂直な面)11と平行な線14を引く。このようにして引いた各線7、10及び14によって囲まれた面15により、金型を互いに体積の等しい領域8と9に分けることができる。本明細書では、この領域8,9のうち、より上方にある領域(面15に対して上方の領域:)を「上側領域」、より下方にある領域(面15に対して下方の領域)を「下側領域」とする。
【0015】
(第一実施形態)
以下、図2により本発明の製造工程を詳しく説明する。
本発明のローラの製造方法ではまず、工程(1)において、両端が開口した円筒状の金型と、芯材保持部を備え円筒状の金型の開口一端を閉塞可能な駒と、を準備し、この駒を円筒状の金型の一端に配置する(この駒により円筒状の金型の一端の開口を閉塞させる)。この芯材保持部を備えた駒は一方の端部を完全に密閉するとともに、金型内で芯材を自由な配置で固定できるものである。例えば、芯材の中心軸と金型の中心軸を一致させたり、芯材の中心軸が金型の中心軸からずれたりするように、芯材を金型内で保持できる。なお、金型は発泡弾性層材料の硬化時には他端にも同様の駒を配置し、芯材を固定させることができる。
【0016】
本発明で用いる芯材は、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケル等の金属材料の丸棒を用いることができる。更に、これらの金属表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わない。
【0017】
また、金型の大きさは製造するローラの大きさに合わせて適宜、適当なものを選択できる。例えば、内径5mm以上40mm以下、外径10mm以上50mm以下、長さ100mm以上500mm以下の金型を用いることができる。また、材質としてはSUSを用いることが好ましい。
【0018】
次に、工程(2)では、芯材3の中心軸と金型1の中心軸とが一致するように芯材3を保持したまま金型の芯材保持部2を備えた駒側を下方、金型の他端の開口側21を上方とした配置とする。そして、この配置を保ったまま金型1の中心軸を鉛直方向に対して1°以上45°以下の範囲で傾ける(図2(a))。
【0019】
この時、金型1の中心軸を鉛直方向に対して傾ける角度が1°未満であると、発泡弾性層材料を金型の内壁側面に沿って安定して流すことができなくなる。一方、この角度が45°を超えると、発泡弾性層材料の粘度によっては発泡弾性層材料が芯材保持部側まで流れ込むのに長時間がかかってしまう。
【0020】
金型1の中心軸を鉛直方向に対して傾ける角度は1°以上45°以下の必要がある。この角度は、1°以上30°以下であることが好ましく、2°以上10°以下であることがより好ましい。この角度がこれらの範囲内にあることによって、エア巻き込みがなく、より安定して発泡弾性層材料を注入することができる。
【0021】
この後、工程(3)では、金型1および芯材保持部2を互いの中心軸を一致させてθ(1〜45°)傾けた状態で発泡弾性層材料を注入する。この工程ではまず、発泡弾性層材料を金型の下側領域の内壁側面上に垂らした後、発泡弾性層材料を内壁側面に沿って流すことにより金型内に発泡弾性層材料を注入する(図2(b))。
【0022】
このように金型の内壁面に沿って流れるように金型内に発泡弾性層材料4を注入することによって、既に注入された発泡弾性層材料に対して直接、発泡弾性層材料が注入、接触することがなく、発泡弾性層材料に衝撃が加わらない。このため、最終的に発泡弾性層材料の注入時にエア巻き込みによるボイドが発生せず、均一に発泡させたローラを製造することができる。
【0023】
ここで、金型の中心軸が鉛直方向と平行となるよう金型が配置されている場合は、発泡弾性層材料の粘度が低いときなどには、発泡弾性層材料が金型の内壁面に沿うように流れず、芯材や既に注入された発泡弾性層材料上に飛び散ってしまう。しかし、本発明の製造方法では、この発泡弾性層材料の注入時に金型は傾けられており、発泡弾性層材料はこの傾けられた金型の内壁面に沿うように流れるためこのようなことが起こらない。
【0024】
また、発泡弾性層材料を落とす金型内壁面上の位置は特に限定されるわけではない。ただ、発泡弾性層材料の落し位置が金型内壁面の上方であると材料が金型下部に溜まる前に発泡して芯材に付着する等の悪影響を及ぼす場合がある。従って、発泡弾性層材料を垂らす高さ(発泡弾性層材料が最初に接触する内壁の部分の高さ)は、金型の内壁面での衝突により泡が発生しないか、泡の発生が極めて抑制される高さであれば良い。具体的には、製造するローラの寸法などを勘案して可能な限り下方に設定したほうが好ましい。また、金型に材料注入口が接触する間際までの高さ以上であることが好ましい。装置構成上の制限も考慮すると、この高さは金型の最下端から400mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましい。
【0025】
工程(4)では、このようにして発泡弾性層材料の注入が完了した時点で、金型の芯材保持部を備えた一端側を下方としたまま金型の中心軸及び芯材が鉛直方向と平行となるように金型を配置する。このように配置することで、金型内に注入された発泡弾性層材料の最上面が水平方向(鉛直方向と垂直な方向)となる。
【0026】
次に、工程(5)では、金型を上記のような配置とした状態で、発泡弾性層材料に熱処理などを行い、発泡反応を行わせると共に硬化させ発泡弾性層を形成する。
【0027】
発泡弾性層材料としては、少なくとも弾性材料と発泡剤とを含有するものとを用いる。弾性材料としては具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料を使用することができる。
【0028】
また、弾性材料としてはポリウレタンフォーム,シリコーンゴムフォーム,ウレタンゴムフォームなどを用いることもできる。これらの弾性材料のうちポリウレタンフォームが好ましい。
【0029】
この場合、ポリウレタンフォームを構成するポリイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート又はその誘導体、脂肪族イソシアネート又はその誘導体、脂環族イソシアネート又はその誘導体が用いられる。これらの中で芳香族イソシアネート又はその誘導体が好ましく、特にトリレンジイソシアネート又はその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート又その誘導体が好適に用いられる。
【0030】
ポリウレタンフォームを構成するポリオール成分としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール,ポリテトラメチレンエーテルグリコール,酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール,カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール,ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0031】
この場合、発泡剤としては、ゴム用有機系化学発泡剤としてオキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾジカルボンアミド(ADCA)等を用いることができる。また、ポリウレタンフォーム用発泡剤として、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、メチレンクロライド等のハロゲン化炭素類;ペンタン、ブタン、プロパン等の炭化水素類、フラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルホルマート、ジメチルオキサラート、エチルアセタート等のカルボン酸アルキルエステル等、二酸化炭素等が単独又は混合して使用されるが、環境保護の観点より水を単独で使用することが好ましい。
【0032】
また、本発明の発泡弾性層材料には、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有させることができる。例えば、硫黄や有機含硫黄化合物等の加硫剤、各種加硫促進剤、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、タルク等の各種充填剤、可塑剤等の加工助剤、各種老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫助剤、尿素等の各種発泡 助剤、導電性カーボン等の導電剤、導電性調整のための各種イオン導電剤等が必要に応じて含有される。
【0033】
この後、工程(6)では、金型を脱型することによって最終的に目的とするローラを得る。
【0034】
(第二実施形態)
本実施形態は、第一実施形態の工程に加えて更に以下の工程を有する点が第一実施形態と異なる。
【0035】
前記工程(2)と(3)の間に更に、芯材の中心軸が金型内の上側領域側に配置されるように芯材を傾ける工程。
工程(3)と(4)の間に更に、芯材の中心軸が金型の中心軸と平行となるように芯材を配置する工程。
【0036】
以下に、図2(c)を用いてこの実施形態を更に詳細に説明する。すなわち、工程(2)により金型を傾けた後、芯材3の中心軸を金型1の上側領域側に傾ける。この芯材を傾ける工程は、芯材保持部2の保持部分を調節することによって可能である。次に、金型の下側領域の内壁面に沿って流れるように金型内に発泡弾性層材料4を注入する(工程(3))。
【0037】
ここで、本実施形態では、発泡弾性層材料の落し位置の幅xを広くとることができるため、工程(3)において金型内に発泡弾性層材料を注入しやすくなる。特に、金型を鉛直方向から傾ける角度が大きいとき幅xは小さくなり発泡弾性層材料を注入しにくくなるが、このような場合であっても芯材を上側領域側に傾けることにより発泡弾性層材料を金型内により注入しやすくなる。更には発泡弾性層材料の落下位置を金型内のできるだけ深い位置にすることが可能となり、発泡弾性層材料を金型内壁面の低い位置に落とすことが可能となる。この結果、より安定したローラの成型が可能となる。
【0038】
このようにして発泡弾性層材料の注入が終了した後、芯材の中心軸が金型の中心軸と一致するように芯材を配置する。この芯材の配置の調節は、芯材保持部の保持部分を調節することによって行うことができる。以下は第一実施形態と同様の工程によりローラを製造する。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、発泡弾性層材料と成形条件、製造の手順を示す。本実施例では図3に示す形状の発泡ローラを成型した。このローラの芯材としてはφ5mm、長さ260mmの芯金を使用し、発泡弾性層はφ13mm、長さ220mmとなっている。
【0040】
本実施例では、発泡ローラ成型用の金型として、パイプ金型内径がφ13mm、外径がφ20mmであり、材質がSUSの金型を使用した。まず、以下の材料(1)を混合攪拌した。
(材料(1))
FA−908(三洋化成株式会社製 ポリエーテルポリオール)
100質量部
ジエタノールアミン 0.5質量部
L5366(日本ユニカー株式会社製 シリコーン系整泡剤) 1質量部
ToyoCat−ET(東ソー株式会社製 第3級アミン触媒)0.1質量部
TEDA−L33(東ソー株式会社製 第3級アミン触媒) 0.5質量部
水(発泡剤) 2質量部。
【0041】
次に、上記材料(1)に対して、NCOインデックスが100となるように下記組成の材料(2)を混合攪拌して、発泡弾性層材料を調整した。ここで、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数を、ポリオール、架橋剤、水等の水酸基やアミノ基等のイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除した値である。例えば、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にはNCOインデックスは100となる。
【0042】
(材料(2))
T80(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=48)
29.5質量部
M200(三井武田ケミカル株式会社製イソシアネート、NCO%=31)
7.4質量部。
【0043】
この後、パイプ金型(円筒状の金型)と下部芯材保持部を有する駒(以下、「下駒」と称する)および上部芯材保持部を有する駒(以下、「上駒」と称する)にシリコンオイル離型剤を塗布した。その後、上駒と下駒を金型に配置する(組み込む)と共に、芯材の中心軸が金型の中心軸と一致するように下駒および上駒により芯材を保持した。そして、金型を65℃に予熱した後、上駒を外し、下駒により芯材を保持した状態で成型用金型を直立させた姿勢(金型の中心軸を鉛直方向)から2°傾けた。更に、芯金自由端側(上側)を磁力により引き付け成型用金型を傾けた方向と逆方向(上側領域側)に傾けた。
【0044】
この状態で金型の他端側(上側の端部側)から発泡弾性層材料を注入し、金型の下側領域の内壁側面に沿って芯材保持部側に流した。注入後に、芯材の中心軸が金型の中心軸と一致するように金型内で芯材を配置した後、上駒を金型の他端側(上側の端部側)に組付けた。その後、下駒側を下方としたまま金型の中心軸が鉛直方向と平行となるように金型を配置する。次に、10分間、65℃に温度制御された熱盤において挟み込み、発泡弾性層材料を硬化させて発泡弾性層を得た後、金型を脱型して目的の発泡ローラを得た。
【0045】
製造後の発泡ローラを確認したところ、この製造方法を用いることにより、従来の製造方法で発生していた廃棄材料を87%削減でき、成型した発泡ローラにボイドやエア巻き込みが見られなくなった。なお、廃棄材料削減の算出方法は、発泡弾性層材料を一度、カップに受けてからローラ状に成型する従来の成型方法と比較したものである。この方法を使用した場合に廃棄材料が生じる箇所は、(1)カップ部、(2)駒流路部、(3)成型品両端の突っ切り部、である。また、各箇所で生じる廃棄材料の内訳は、(1)カップ部80%、(2)駒流路部7%、(3)成型品両端突っ切り部13%である。本実施例においては、(1)カップ部及び(2)駒流路部において廃棄材料が生じず、廃棄材料の87%にあたる(1)カップ部及び(2)駒流路部の廃棄材料を削減することができた。
【0046】
同様に金型の傾きを直立させた姿勢から1〜45°の範囲で傾く範囲で、更に、10°、20°、30°、43°傾けて行ったが、いずれも良好な結果であった。
【0047】
(比較例)
次に、比較例に相当する事例として、金型を、角度45°を越える状態(50°)にしたところ、発泡弾性層材料の金型壁面上の流れが良くなかった。また、発泡弾性層材料の落下位置は、角度が大きい程、パイプ金型上方に位置するため材料流路が長くなり、途中で発泡し始めるケースがあったため不都合であると判断した。
【0048】
また、金型の中心軸が鉛直方向と平行となるように立てて行った場合は、発泡弾性層材料の注入中に発泡弾性層材料がパイプの金型壁面や芯金表面に付着した。また、直接、金型底面に発泡弾性層材料が落ちるようにローラを製造した場合には、泡の発生により所望のローラとしての発泡状態が得られなかった。このため、このケースも不都合があると判断した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来のローラの製造方法を説明する図である。
【図2】本発明の発泡ローラの製造方法の一例を説明する図である。
【図3】実施例で製造した発泡ローラを表す概略図である。
【図4】上側領域、下側領域を説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1 パイプ金型
2 下駒
3 芯材
4 材料(注入時)
4’ 材料(下部溜まり)
4a 材料注入口
5 材料落下位置
6 発泡弾性層
8 上側領域
9 下側領域
11 水平面
12 鉛直方向
13 金型の他端断面の中心
21 金型の他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材上に発泡弾性層とを有するローラの製造方法であって、
(1)両端が開口した円筒状の金型と、芯材保持部を備え円筒状の金型の開口一端を閉塞可能な駒と、を準備し、前記駒を円筒状の金型の開口一端に配置する工程と、
(2)前記芯材保持部を備えた駒側を下方、他端の開口側を上方とし芯材保持部により芯材の中心軸と金型の中心軸とが一致するように芯材を保持した状態で、前記金型の中心軸を鉛直方向に対して1°以上45°以下の範囲で傾ける工程と、
(3)前記金型の他端の開口側から発泡弾性層材料を金型の下側領域の内壁に沿って流しこむことにより金型内に発泡弾性層材料を注入する工程と、
(4)前記芯材保持部を備えた駒側を下方としたまま前記金型の中心軸が鉛直方向と平行となるように金型を配置する工程と、
(5)前記発泡弾性層材料を硬化させて発泡弾性層を形成する工程と、
(6)前記金型を脱型する工程と、
を有することを特徴とするローラの製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)と(3)の間に更に、前記芯材の中心軸が前記金型内の上側領域側に配置されるように芯材を傾ける工程と、
前記工程(3)と(4)の間に更に、前記芯材の中心軸が前記金型の中心軸と一致するように金型内で芯材を配置する工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−158417(P2008−158417A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349590(P2006−349590)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】