説明

ロール軸を支持するマグネチック軸受装置

本発明はロール軸を支持するマグネチック軸受装置に関し、特に永久磁石や電磁石を利用してロール軸を非接触式で支持するマグネチック軸受装置に関する。本発明のロール軸を支持するマグネチック軸受装置は、ロール軸に向かって形成された突出部で磁場を発生する磁石と、上記磁石を一方向に支持する胴部とを含み、上記ロール軸と上記突出部の間に空隙を形成しながら上記ロール軸を支持し、上記突出部の両側はラウンド処理されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロール軸を支持するマグネチック軸受装置に関し、特に、永久磁石や電磁石を利用してロール軸を非接触式で支持するマグネチック軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軸受は回転体分野で核心となる装置であって、回転時の機械的摩擦を最小化するために、オイルやガスを注入する方法が用いられる。
【0003】
従来の軸受回転方式は、軸受の軸が回転する方式や玉軸受を使用して回転させる方式などのように機械的接触が不可避な場合が大部分を示した。このような回転方式の軸受がメッキラインで用いられると、450〜470℃である亜鉛メッキ浴内で回転しながら次第に摩耗が発生し、不安定な回転を引き起こす。これによって、ロールが回転すると、振動と騒音が発生する。
【0004】
特に、このような振動は、鋼板が後端のガスワイピング装置であるエアナイフを通る時メッキ量の偏差を増加させて生産製品の不良を齎すことがある。
【0005】
従って、機械的接触と摩耗による問題を未然に防ぐために、ロール軸を、通常2〜3週毎に周期的に替える必要がある。しかし、設備の大型化とラインの高速化により、機械式玉軸受方式は寿命が急激に短縮し得るという問題が依然として存在する。
【0006】
一方、従来の溶融亜鉛メッキ装置では、図1に示されたように、亜鉛メッキ浴1を通過する鋼板6がシンクロール3、スタビライジングロール5、コレクティングロール4を通過した後、エアナイフ2、電磁気軸中心安定器(electromagnetic stabilizer、8)、トップロール7を通過する。亜鉛メッキ浴1内の溶融亜鉛の温度は450〜460℃で、様々な幅と厚さの鋼板6が通過することができる。
【0007】
ロール軸にかかる荷重は投入される鋼板6によって異なり、シンクロール3の場合は両端に各々最大500kgfの荷重がかかる。また、振動のような動的特性によってロールの回転方向には+−100kgfの荷重が、軸方向には最大100kgf未満の荷重が作用することができる。
【0008】
このように、溶融亜鉛メッキ工程では多様な鋼種と張力によって常に一定の力が作用しないため、高強度鋼や高張力鋼のような場合は、ロールの両端から半径方向に作用する力と軸方向に作用する力の変化にも早い応答と強い物理的特性を有し、非接触式で使用でき、寿命の長いマグネチック軸受が備えられた溶融亜鉛メッキ装置が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はロール軸を支持するマグネチック軸受装置の特性を分析し、その結果に従って電磁気力の性能に影響を及ぼす主要因子を最適設計することを目的とする。
【0010】
また、本発明は安定的な駆動のために印加される電流を制御することで、ロールと鋼板の振動を無くすことを目的とする。
【0011】
また、本発明は、エアナイフがガスワイピングを安定的に行い、メッキ量の偏差を減らし、亜鉛メッキ浴内のロール軸を半永久的に使用できるようにすることを目的とする。
【0012】
また、本発明は高価のセンサーを使用しないマグネチック軸受を用いて、従来の近接センサーを使用する場合の制御より一層速い回答速度が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面は、ロール軸に向かって形成された突出部で磁場を発生する磁石と、上記磁石を一方向に支持する胴部とを含み、上記ロール軸と上記突出部の間に空隙を形成しながら上記ロール軸を支持し、上記突出部の両側はラウンド処理されたことを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、上記磁石は電磁石または永久磁石を含むか、上記電磁石と永久磁石が混合されたものを含み、上記突出部で発生した磁場により上記ロール軸と上記突出部の間に空隙を形成しながら上記ロール軸を支持し、上記電磁石は上記ロール軸に向かって形成された突出部を備える極と上記極に巻線されているコイルとを含み、上記永久磁石は上記ロール軸に向かって形成された突出部を含み、上記永久磁石の突出部にはコイルが巻線されていることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0015】
本発明の他の実施例における上記マグネチック軸受装置は、上記ロール軸の両側の端部方向にそれぞれ形成されており、上記ロール軸が回転する時、上記ロール軸の軸方向で上記ロール軸を支持する軸方向のマグネチック軸受と、上記ロール軸の半径方向に形成されており、上記ロール軸が回転する時、上記ロール軸の半径方向で上記ロール軸を支持する半径方向のマグネチック軸受とを含むことを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0016】
本発明のさらに他の実施例において、上記磁石が電磁石の場合、上記コイルに直流電流が印加されることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の実施例において、上記コイルにはPWM(Pulse Width Modulation)ドライバーにより直流電流が印加されることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0018】
本発明のさらに他の実施例において、上記磁石が電磁石の場合、上記コイルはY結線されたことを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の実施例において、上記磁石が電磁石の場合、上記コイルに印加される電流の大きさにより上記ロール軸と上記極間の空隙が制御されることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の実施例における上記マグネチック軸受装置は、溶融亜鉛メッキ装置のシンクロ−ルに備えられ、上記シンクロ−ルのロール軸を取り囲んでいる溶融亜鉛と上記極間の空隙は0.2〜1mmの範囲であることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0021】
本発明のさらに他の実施例における上記マグネチック軸受装置は、窒素または空気を利用した冷却ガスで冷却することを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0022】
本発明のさらに他の実施例において、上記冷却ガスが上記マグネチック軸受装置の上部から下方に流れて上記マグネチック軸受装置を通過した後、上記マグネチック軸受装置の上部に上がるようにすることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0023】
本発明のさらに他の実施例において、上記冷却ガスが上記マグネチック軸受装置の上部から下方に流れてきて上記マグネチック軸受装置を通過した後上記マグネチック軸受装置の下部に流れることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0024】
本発明のさらに他の実施例において、上記マグネチック軸受装置の外部に備えられるハウジングは非磁性体を含むことを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0025】
本発明のさらに他の実施例において、上記ラウンド処理された極の突出部が上記ロール軸の円周方向に形成された長さは、上記ラウンド処理前の上記極の突出部が上記ロール軸の円周方向に形成された長さの2倍以下であることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0026】
本発明のさらに他の実施例において、上記磁石が電磁石の場合、上記コイルには交流電流が入力され、上記交流電流により発生される時変磁界によって上記ロール軸の半径方向の浮上力、及び上記ロール軸の円周方向の推進力を発生させることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0027】
本発明のさらに他の実施例における上記ロール軸の材質は、銅またはアルミニウムの伝導体であることを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0028】
本発明のさらに他の実施例における上記マグネチック軸受装置は、溶融亜鉛メッキ装置に備えられるシンクロール、スタビライジングロールまたはコレクティングロールのうち何れか一つのロールのロール軸を支持することを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【0029】
本発明のさらに他の実施例における上記半径方向のマグネチック軸受の胴部は、上記極を上記ロール軸の円周方向に連結して一体化したことを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、永久磁石や電磁石を利用してロール軸を非接触で支持できる上、機械的接触がないため、摩擦による騒音とエネルギー損失が少なく、半永久的で、潤滑や密封する必要がない。これにより、ロール軸の回転速度が極めて高い水準まで許容されるため、メッキ鋼板の高速生産が可能である。
【0031】
また、本発明によると、軸受の剛性及び減衰制御が利得によって調整され、臨界速度以上で安定した加速が可能であるため、軸受の交換回数が著しく減少する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の溶融亜鉛メッキ設備の概路図である。
【図2】本発明の溶融亜鉛メッキ装置において、ロールに鋼板が通過する時の状態図である。
【図3】本発明の軸方向のマグネチック軸受の構造を説明するための配置図である。
【図4】本発明の半径方向のマグネチック軸受の内部構造図である。
【図5】本発明の半径方向のマグネチック軸受の胴部の斜視図である。
【図6】本発明の半径方向のマグネチック軸受の冷却装置の第1実施例の内部構造図である。
【図7】本発明の半径方向のマグネチック軸受の冷却装置の第2実施例の内部構造図である。
【図8】本発明のラウンド処理された極の突出部の拡大図である。
【図9】本発明の半径方向のマグネチック軸受の性能曲線図である。
【図10】本発明の軸方向のマグネチック軸受の性能曲線図である。
【図11】本発明の極数による電流とコイルの巻線数の関係を示した曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上に同じ符号で示された要素は同じ要素である。
【0034】
図2は、本発明の溶融亜鉛メッキ装置において、ロールに鋼板が通過する時の状態図である。
【0035】
図2に示されたように、溶融亜鉛メッキ装置は溶融亜鉛が満たされているメッキ浴槽1と、メッキ浴槽1に浸ってロール軸11を中心に回転し、メッキ浴槽1に引き込まれた鋼板6を搬送するロール16と、ロール軸11に向かって形成された突出部で磁場を発生する磁石を備えるマグネチック軸受とを含む。このとき、マグネチック軸受はロール軸11を取り囲んでいる溶融亜鉛と突出部の間に空隙を形成しながらロール軸11を支持する。このようなマグネチック軸受装置は、溶融亜鉛メッキ装置のシンクロール、スタビライジングロール、コレクティングロールのロール軸11を支持するように用いることができ、軸方向のマグネチック軸受19と半径方向のマグネチック軸受18とで構成されている。
【0036】
半径方向のマグネチック軸受18は電磁気力に影響を及ぼす印加電流を制御することで、ロール軸11が回転する時の半径方向の偏心を最小化する役割をする。軸方向のマグネチック軸受19も半径方向のマグネチック軸受18と同様に、軸方向の偏心を最小化する役割をする。
【0037】
ロール16の回転速度は、操業ライン速度の限界である4Hz未満で、これによる振動周波数は10Hz未満である。従来の機械的摩擦を引き起こす玉軸受を使用せず、応答の早い偏向電流を利用することで、振動と摩擦による騒音を著しく減らし、動特性を確認して最適の回答速度を設定し制御する。
【0038】
ハウジング15は、軸方向のマグネチック軸受19及び半径方向のマグネチック軸受18の内部に溶融亜鉛が浸透できないようにシーリング(sealing)される。ハウジング15がシールで覆われていても半径方向のマグネチック軸受18及び軸方向のマグネチック軸受19の内部の温度が高いと、電磁気力の効率が落ちるため、冷却ガスタンク20と配管21を備えて内部のパージング(purging)ができるようにする。冷却ガスタンク20と配管21内の温度が常に250℃以下に保持されると仮定すると、シーリングの機能により、修理時や駆動中に電源上に問題が生じてもマグネチック軸受に溶融亜鉛が浸透できなくなる。
【0039】
ハウジング15の温度低下によってハウジング15と近い領域で亜鉛ドロスが生じることがあるため、ハウジング15は二重ケーシング処理する。温度が低下すると、マグネチック軸受の性能が保持され制御量の変動が小さくなるが、これは半径方向へのロール16の振動を著しく減少させる。これにより、鋼板6が進む時の振動発生を最小化し、ガスワイピング時に有利な条件を保持することができる。軸方向のマグネチック軸受または半径方向のマグネチック軸受の外部に備えられるハウジングは非磁性体を使用する。
【0040】
図3は、本発明の軸方向のマグネチック軸受の構造を説明するための配置図である。軸方向のマグネチック軸受19としては少なくとも1個以上の永久磁石(コイルが巻線されたものでもよい)や電磁石を使用する。
【0041】
図3に示されたように、電磁石を使用する場合、軸方向のマグネチック軸受19はロール軸11に向かって形成された突出部12を備える極10と、極10に巻線されているコイル9を含み、コイル9に電流が流れて発生した磁場による電磁気力によって、ロール軸11を取り囲んでいる溶融亜鉛と突出部12の間に空隙13を形成しながらロール軸11を支持する。具体的には、軸方向のマグネチック軸受19はロール軸11の両側の端部方向にそれぞれ形成されており、鋼板がロール16の表面を通過しロール軸11が回転する時、ロール軸11の軸方向でロール軸11を支持する。このとき、半径方向のマグネチック軸受18と空隙13を形成し、半径方向のマグネチック軸受18により取り囲まれているロール軸11の両側の端部方向において、マグネチック軸受19はロール軸11と空隙13を形成する。
【0042】
永久磁石を使用する場合は、永久磁石で発生した磁場によりロール軸11を取り囲んでいる溶融亜鉛と突出部12の間に空隙を形成しながらロール軸11を支持する。この場合は、図3において、極10にコイル9が巻線されておらず、突出部12で磁場が発生してロール軸11をロール軸の方向で支持する原理と理解することができる。また、永久磁石(コイルが巻線されたものでもよい)と電磁石を混合配列して使用してもよい。
【0043】
図4は本発明の半径方向のマグネチック軸受の内部構造図で、図5は本発明の半径方向のマグネチック軸受の胴部の斜視図である。半径方向のマグネチック軸受としては少なくとも2個以上の永久磁石(コイルが巻線されたものでもよい)や電磁石を使用する。
【0044】
図4及び図5に示されたように、電磁石を使用する場合、半径方向のマグネチック軸受はロール軸11に向かって形成された突出部12を備える極10と、極10に巻線されているコイル9と、極10をロール軸11の円周方向に連結して一体化した胴部24を含む。胴部24は極10にコイル9が巻線されて形成された電磁石を支持し、軸方向のマグネチック軸受においても電磁石を支持する役割をする。磁石が永久磁石のときも、胴部24は永久磁石を支持する。
【0045】
コイル9に電流が流れて発生した磁場による電磁気力によって、ロール軸11を取り囲んでいる溶融亜鉛と突出部12の間に空隙13を形成しながらロール軸11を支持する。具体的には、半径方向のマグネチック軸受はロール軸11の半径方向に形成されており、ロール軸11が回転する時、ロール軸11の半径方向でロール軸11を支持する。
【0046】
数値の変わらないノミナル(nominal)空隙13は冷却ガスで満たされている。ノミナル空隙13と溶融亜鉛17との境界にシーリング膜が形成され、シーリング膜23は磁力に影響を受けない非磁性体であるセラミック、ステンレススチールなどを使用する。極10の突出部12は多様な形状を有することができ、これは漏れる渦電流を最小化し、電磁気力がロール軸11に接触する面積を大きくするためである。
【0047】
半径方向のマグネチック軸受は極10の個数、極10の突出部12の形状、コイル9の巻線数、コイル9に印加された偏向電流、制御周波数により、電磁力線の動特性及び力の大きさが決まる。
【0048】
本発明では、漏れ磁束を減らし、磁気力が誘導される断面積を広くするために極10の突出部12の形状を図4のように設計する。極10に近い領域の断面積は狭く、ロール軸11に近い領域の断面積は最大化する。また、安定的な制御を可能にするためには、極10の個数と面積によって突出部12の形状が変更されなければならない。これは一般的なマグネチック軸受よりさらに精密に空隙を制御することで、ロール軸11の振動を殆ど無くすことができる。ロール軸11の形状と溶融亜鉛メッキ工程ラインの特性上、鋼板の張力により常に上部に張力がかかっているため、上部では磁気力の負担が少ない。張力が極めて少なくかかると、下方向に引っ張る磁気力の極をさらに精緻に制御することができる。コイル9が巻線されている極10は回転しないため、空隙13が遠くなる方向で偏向電流を印加し磁気力をリアルタイムで制御する。
【0049】
コイル9はY結線されており、コイル9にはPWM(Pulse Width Modulation)ドライバーにより直流電流が印加される。コイル9に印加される電流の大きさにより溶融亜鉛17と極10間の空隙を制御する。電磁気力は極10の数に比例し、コイル9に印加された電流の二乗に比例し、コイル9の巻線数の二乗に比例し、空隙13の二乗に反比例し、極10の突出部12により内側に形成される円の断面積に比例する。溶融亜鉛メッキ装置のシンクロ−ルに備えられるマグネチック軸受の場合、最小の電磁気力を発生させながら最小荷重500kgfを支持するために、溶融亜鉛17と極10間の空隙13の制御範囲は0.2〜1mmが好ましい。
【0050】
永久磁石を使用する場合には、ロール軸に向かって形成された突出部で磁場を発生する永久磁石で備えられるマグネチック軸受を含み、ロール軸を取り囲んでいる溶融亜鉛と永久磁石の間に空隙を形成しながらロール軸を支持する。この場合、図4において、極10にコイル9が巻線されておらず、極で磁場を発生し、ロール軸をロール軸の半径方向で支持する原理と理解することができる。また、永久磁石(コイルが巻線されたものでもよい)と電磁石を混合配置して使用してもよい。
【0051】
本発明において、軸方向のマグネチック軸受及び半径方向のマグネチック軸受には永久磁石を使用することができるが、溶融亜鉛メッキ工程ラインにおけるメッキ環境の特性上、力を可変的に与えられる電磁石を使用し、極10の個数は2個以上にする。そして、極10間の間隔を広くするために、強さの大きい磁場を発生させるハルバッハ配列(Halbach Array)を用いる。特に、張力と鋼種に大きな変化のないメッキラインでは、永久磁石を用いる受動型マグネチック軸受を使用し、永久磁石(コイルが巻線されたものでもよい)と電磁石を混用して使用してもよい。本発明における軸方向のマグネチック軸受及び半径方向のマグネチック軸受は、直流電流を印加する吸引式方式であり、軸方向の軸受がワークサイド(work side)及びドライブサイド(drive side)のロールの力の均衡を保持し、鋼板の蛇行防止のために電磁気力をリアルタイムで制御する。ロール軸11を銅やアルミニウムの伝導体で製作する場合、軸方向のマグネチック軸受及び半径方向のマグネチック軸受のコイルには交流電流が入力され、交流電流により発生される時変磁界により生成される上記ロール軸の半径方向の浮上力と上記ロール軸の円周方向の推進力を同時に発生させる反発式方式である。
【0052】
図6は本発明の半径方向のマグネチック軸受の冷却装置の第1実施例の内部構造図である。供給された冷却ガス14はメッシュスクリーン(mesh screen)22により異物が除去されてシーリング膜まで浸透する。冷却ガス14の循環方式は冷却ガス14がマグネチック軸受の上部から下方に流れてきてマグネチック軸受を通過した後、マグネチック軸受の上部に上がるU字形方式である。
【0053】
冷却ガスとしては、マグネチック軸受の効率の低減防止と磁気力が無力となるキュリー温度を避けるために窒素ガスを使用し、これを循環させて冷却させる。窒素ガスがコイル9周囲を通過した後に安定的な制御をするために、極10にコイル9が巻線されて形成された電磁石の温度を最大250℃以下に低める。雰囲気温度はマグネチック軸受の効率に直接的な影響を及ぼすため、常温に近い最小温度にする。高圧の冷却ガス14が上部から投入される場合は、圧力を支持するために図6の構造が構造的に安定的である。
【0054】
図7は本発明の半径方向のマグネチック軸受の冷却装置の第2実施例の内部構造図である。図6の構造と原理は同一であるが、冷却ガス14の循環方式は冷却ガス14がマグネチック軸受の上部から下方に流れてきてマグネチック軸受を通過した後、マグネチック軸受の下部に移動する方式である。水平方向にマグネチック軸受を支持しているため、高圧の冷却ガス14が噴射されると、不安定である。マグネチック軸受が軽量になると、循環(circulation)経路が短く、空間の制約の少ない図4を適用する。
【0055】
図8は本発明のラウンド処理された極の突出部の拡大図である。図8に示されたように、極10の突出部12の両側をラウンド処理して相互対称に形成する。極10の突出部12の両側をラウンド処理する理由は、突出部12から漏れる渦電流を最小化するためである。突出部12をラウンド処理することで、ロール軸に及ぼす磁気力の接触面積を最大化することができる。
【0056】
また、ラウンド処理された極10の突出部12がロール軸の円周方向に形成された長さは、ラウンド処理前の極10の突出部12がロール軸の円周方向に形成された長さの2倍以下にする。図8において、ラウンド処理された極10の突出部12がロール軸の円周方向に形成された長さはa/2+a+a/2=2aで、ラウンド処理前の極10の突出部12がロール軸の円周方向に形成された長さはaである。このような長さで極10の突出部12をラウンド処理する理由は、隣接したコイル9で発生する電磁気力に影響を及ぼさないためである。
【0057】
図9は本発明の半径方向のマグネチック軸受の性能曲線図である。図9には極数P、コイルに印加された電流I、コイルの巻線数Nによる性能を示した。
【0058】
半径方向のマグネチック軸受が空隙1.2〜1.4mm以内の領域で荷重F500kgf(実際現場条件)に耐えられるようにした。電流は直流電源を使用し、Gはノミナル空隙を示す。
【0059】
マグネチック軸受は回転力を発生させるように駆動され、受動的に回転されることができ、半径方向の空隙を保持する機能をする。ロールは鋼板の進行により常に受動的に回転する。
【0060】
図10は本発明の軸方向のマグネチック軸受の性能曲線図である。極数P、コイルに印加された電流I、コイルの巻線数Nがそれぞれ1、30、30の時、軸方向のマグネチック軸受が空隙1〜1.2mm以内の領域で荷重F100kgf(実際現場条件)に耐えられるようにした。電流は直流電源を使用し、Gはノミナル空隙を示す。軸方向のマグネチック軸受は、軸方向の空隙を保持する機能をし、軸方向でロール軸を支持するため、極は1個を使用する。
【0061】
図11は本発明の極数による電流とコイルの巻線数の関係を示した曲線図である。半径方向のマグネチック軸受が最小荷重(Fmin)600kgfの力を支持するために、コイルに印加された電流が35Aで、空隙が1.5mmであるマグネチック軸受において極数とコイルの巻線数による感度曲線を提示した。マグネチック軸受の大きさには制約がない。コイルに印加される電流は固定させ、極数を2個以上から12個まで変化させながら必要な巻線数を算定した。
【0062】
本発明は上述した実施形態及び添付の図面により限定されない。添付の請求の範囲により権利範囲を限定し、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者に自明である。
【符号の説明】
【0063】
1 メッキ浴槽
6 鋼板
9 コイル
10 極
11 ロール軸
12 突出部
13 ノミナル空隙
14 冷却ガス
15 ハウジング
16 ロール
17 溶融亜鉛
18 半径方向のマグネチック軸受
19 軸方向のマグネチック軸受
20 冷却ガスタンク
21 配管
22 メッシュスクリーン
23 シーリング膜
24 胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール軸に向かって形成された突出部で磁場を発生する磁石と、
前記磁石を一方向に支持する胴部と、
を含み、前記ロール軸と前記突出部の間に空隙を形成しながら前記ロール軸を支持し、前記突出部の両側はラウンド処理されたことを特徴とするロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項2】
前記磁石は電磁石または永久磁石を含むか、あるいは、前記電磁石と永久磁石が混合されたものを含み、前記突出部で発生した磁場により前記ロール軸と前記突出部の間に空隙を形成しながら前記ロール軸を支持し、
前記電磁石は前記ロール軸に向かって形成された突出部を備える極と前記極に巻線されているコイルとを含み、前記永久磁石は前記ロール軸に向かって形成された突出部を含み、前記永久磁石の突出部にはコイルが巻線されていることを特徴とする請求項1に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項3】
前記マグネチック軸受装置は、
前記ロール軸の両側の端部方向にそれぞれ形成されており、前記ロール軸が回転する時、前記ロール軸の軸方向で前記ロール軸を支持する軸方向のマグネチック軸受と、
前記ロール軸の半径方向に形成されており、前記ロール軸が回転する時、前記ロール軸の半径方向で前記ロール軸を支持する半径方向のマグネチック軸受と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項4】
前記磁石が電磁石の場合、前記コイルに直流電流が印加されることを特徴とする請求項2に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項5】
前記コイルにはPWM(Pulse Width Modulation)ドライバーにより直流電流が印加されることを特徴とする請求項4に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項6】
前記磁石が電磁石の場合、前記コイルはY結線されたことを特徴とする請求項2に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項7】
前記磁石が電磁石の場合、前記コイルに印加される電流の大きさにより前記ロール軸と前記極間の空隙が制御されることを特徴とする請求項2に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項8】
前記マグネチック軸受装置は、溶融亜鉛メッキ装置のシンクロ−ルに備えられ、前記シンクロ−ルのロール軸を取り囲んでいる溶融亜鉛と前記極間の空隙は0.2〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項7に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項9】
前記マグネチック軸受装置は、窒素または空気を利用した冷却ガスで冷却することを特徴とする請求項1に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項10】
前記冷却ガスが前記マグネチック軸受装置の上部から下方に流れてきて前記マグネチック軸受装置を通過した後前記マグネチック軸受装置の上部に上がるようにすることを特徴とする請求項9に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項11】
前記冷却ガスが前記マグネチック軸受装置の上部から下方に流れてきて前記マグネチック軸受装置を通過した後前記マグネチック軸受装置の下部に流れることを特徴とする請求項9に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項12】
前記マグネチック軸受装置の外部に備えられるハウジングは非磁性体を含むことを特徴とする請求項1に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項13】
前記ラウンド処理された極の突出部が前記ロール軸の円周方向に形成された長さは、前記ラウンド処理前の前記極の突出部が前記ロール軸の円周方向に形成された長さの2倍以下であることを特徴とする請求項2に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項14】
前記磁石が電磁石の場合、前記コイルには交流電流が入力され、前記交流電流により発生される時変磁界により生成される前記ロール軸の半径方向の浮上力、及び前記ロール軸の円周方向の推進力を発生させることを特徴とする請求項2に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項15】
前記ロール軸の材質は、銅またはアルミニウムの伝導体であることを特徴とする請求項14に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項16】
前記マグネチック軸受装置は、溶融亜鉛メッキ装置に備えられるシンクロール、スタビライジングロールまたはコレクティングロールのうち何れか一つのロールのロール軸を支持することを特徴とする請求項1に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。
【請求項17】
前記磁石は前記ロール軸に向かって形成された突出部を備える極を含み、前記半径方向のマグネチック軸受の胴部は前記極を前記ロール軸の円周方向に連結して一体化したことを特徴とする請求項3に記載のロール軸を支持するマグネチック軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−526249(P2012−526249A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509730(P2012−509730)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002872
【国際公開番号】WO2010/128804
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】