説明

ワイピング装置および液滴吐出装置、並びに電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器

【課題】本発明は、消耗品を極力少なくすることができると共に、高いワイピング性能を維持することができるワイピング装置を、またこれを備える液滴吐出装置、並びに電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供する。
【解決手段】機能液滴吐出ヘッド1のノズル面53をワイピング処理するワイピングブレード81と、ワイピングブレード81を洗浄処理する洗浄手段82と、ワイピングブレード81を、ワイピング処理のためのワイピング領域と洗浄処理のための洗浄領域との間で、周回運動させる周回機構84と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに代表される機能液滴吐出ヘッドのノズル面をワイピングするワイピング装置および液滴吐出装置、並びに電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワイピング装置として、機能液滴吐出ヘッドのノズル面を清掃用布により払拭洗浄する装置(クリーニング装置)が知られている。この装置では、繰出しリールから繰出し自在に繰出され、巻取りリールに巻取り自在に巻回される清掃用布が、両リール間に位置し洗浄液を吐出すると共に所定の間隙を存して配設された複数の吐出ゴム部の上面に張られており、この吐出ゴム部に位置して清掃用布に機能液滴吐出ヘッドのノズル面を当接させ、この状態で清掃用布を水平移動することで、汚れを除去するようにしている。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−171135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の装置では、機能液滴吐出ヘッドのノズル面の払拭に清掃用布を用いているため、ゴミ、ケバが発生すると共に、汚れた清掃用布はそのまま消耗品として廃棄されるため、交換作業が煩雑であり、かつランニングコストがかさむ問題があった。
【0004】
本発明は、消耗品を極力少なくすることができると共に、高いワイピング性能を維持することができるワイピング装置を、またこれを備える液滴吐出装置、並びに電気光学装置の製造方法、電気光学装置および電子機器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のワイピング装置は、機能液滴吐出ヘッドのノズル面をワイピング処理するワイピングブレードと、ワイピングブレードを洗浄処理する洗浄手段と、ワイピングブレードを、ワイピング処理のためのワイピング領域と洗浄処理のための洗浄領域との間で、周回運動させる周回機構と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、周回機構により、ワイピングブレードをワイピング領域に移動させてノズル面をワイピング処理すると共に、ワイピング後の汚れたワイピングブレードを洗浄領域に移動させ洗浄手段により洗浄処理する。この洗浄処理により、汚れが付着していないワイピングブレードで機能液滴吐出ヘッドのノズル面をワイピングすることができ、かつワイピングブレードを繰り返し使用することができる。したがって、消耗品を極力少なくすることができると共に、高いワイピング性能を維持することができる。また、簡易な構成であるため装置の小型化を実現することができる。さらに、ワイピングブレードはゴムや樹脂で形成されかつ、常に洗浄されるのでゴミ、ケバ等が発生することが無い。なお、ワイピングブレードは等間隔に複数設けることが好ましい。このようにすれば、ワイピング処理と洗浄処理を同時並行で行うことが可能となる。
【0007】
この場合、周回機構は外周面にワイピングブレードが設けられ、ワイピングブレードを周回運動させる回転ドラムと、回転ドラムの駆動源となるアクチュエータと、アクチュエータの駆動力を回転ドラムに伝達する動力伝達機構と、を有していることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、単純な構造で周回機構を構成することが可能である。また、回転ドラムを用いることで、回転ドラムの外周面に汚れが付着しても、ワイピングブレードと共に汚れを簡単に洗浄することができる。
【0009】
この場合、ワイピングブレードは、回転ドラムの外周面に着脱自在に装着されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、ワイピングブレードが劣化した場合等において対象となるワイピングブレードのみを交換すればよく、メンテナンス作業が容易である。
【0011】
この場合、周回機構は、外周面にワイピングブレードが設けられたバンド状のブレード保持部材と、外周面にブレード保持部材が装着され、ブレード保持部材を介してワイピングブレードを周回運動させる回転体と、回転体の駆動源となるアクチュエータと、アクチュエータの駆動力を回転体に伝達する動力伝達機構と、を有していることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、ブレード保持部材を着脱することができるため、ワイピングブレードが劣化した場合等において対象となるワイピングブレードをブレード保持部材と共に交換すればよく、メンテナンス作業が容易である。
【0013】
この場合、周回機構は、外周面にワイピングブレードが設けられたベルト状のブレード保持部材と、ブレード保持部材が掛け渡され、ブレード保持部材を介してワイピングブレードを周回運動させる一対のプーリと、プーリの駆動源となるアクチュエータと、アクチュエータの駆動力を一対のプーリのいずれか一方に伝達する動力伝達機構と、を有しているが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、ブレード保持部材が一対のプーリに掛け渡されているため、ワイピング領域と洗浄領域との離間距離を十分とることができ、十分な作業領域を確保すると共に、ベルト状のブレード保持部材の長さにより洗浄手段の配置の自由度を高めることができる。
【0015】
この場合、ワイピングブレードとブレード保持部材は、一体に成形されているが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、ブレード保持部材を簡単に作製することができると共に、部品点数および組立て工数を削減することができる。
【0017】
この場合、洗浄手段は、洗浄液を満たすと共に、洗浄領域に移動したワイピングブレードが洗浄液に浸漬される洗浄液槽で、構成されていることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、ワイピングブレードを洗浄液に浸漬することにより、汚れ(機能液)の溶解が促進されワイピングブレードを良好に洗浄することができる。
【0019】
この場合、洗浄液に浸漬されたワイピングブレードに接触し、ワイピングブレードをブラッシング処理するブレードクリーナーを、更に備えたことが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、ワイピングブレードをブラッシング洗浄により、強固な汚れを掻き落とすことができ、より一層ワイピングブレードを良好に洗浄することができる。なお、ブレードクリーナーの掻き取り面はブラシ状でも、スポンジ状でも良い。さらに、ブラッシング処理は、ワイピングブレードを固定としブレードクリーナーを可動(回転又は往復動)とする場合と、ブレードクリーナーを固定としワイピングブレードを周回機構により可動とする場合とのいずれであっても良い。
【0021】
この場合、洗浄手段は、ワイピングブレードに洗浄液を吹き付ける洗浄液ノズルと、洗浄液槽を供給源として洗浄液ノズルに洗浄液を送液する送液手段と、を有していることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、ワイピングブレードに対し、洗浄液ノズルから洗浄液を吹き付けることにより、ワイピングブレードに付着した汚れを吹き飛ばすことができ、より効果的にワイピングブレードの洗浄を行うことができる。また、洗浄液槽から洗浄液を汲み取って吹き付けているため、別途タンクを設ける必要がなく、かつ洗浄液を有効活用することができる。なお、送液手段はポンプでも,イジェクターでも良い。さらに、洗浄液ノズルは、洗浄液内に設けても、洗浄液外に設けても良い。
【0023】
この場合、ワイピング処理は、機能液吐出ヘッドに対しワイピングブレードを相対的に移動させることにより行われ、少なくともワイピングブレードの先端部は、移動方向に傾いていることをが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、ワイピングブレードの撓み量が小さくなり、汚れを掻き取り易い角度でノズル面に接触させることができる。このため、ノズル面に付着した汚れを確実に払拭することができる。
【0025】
この場合、ワイピング処理は、機能液吐出ヘッドに対しワイピングブレードを相対的に移動させることにより行われ、少なくともワイピングブレードの先端部は、複数に分岐して形成され、移動方向に対して順に並んでいることが、好ましい。
【0026】
この構成によれば、ワイピングブレードに設けられた複数の先端部により、ノズル面を連続的に払拭することができる。すなわち先行する分岐部により汚れが残っても後行する分岐部で汚れをとることができ確実に払拭することができる。
【0027】
本発明の液滴吐出装置は、上記したワイピング装置と、ワークに対し、機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら機能液滴を吐出して描画を行う描画装置と、を備えたことを特徴とする
【0028】
この構成によれば、定期的なワイピングブレードの洗浄および交換作業が不要になるため、装置の稼働停止時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。また、機能液滴吐出ヘッドのノズル面を汚れの無い状態に維持することができ、機能液滴吐出ヘッドの吐出性能を安定に維持することができる。
【0029】
本発明の電気光学装置の製造方法は、上記した液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液による成膜部を形成することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の電気光学装置は、上記した液滴吐出装置を用い、ワーク上に機能液による成膜部を形成したことを特徴とする。
【0031】
これらの構成によれば、非消耗品で清浄に管理されたワイピングブレードにより、機能液滴吐出ヘッドを常に正常に保つことができる。液滴吐出装置により製造することで、ワークの生産性を向上させることができる。なお、電気光学装置(フラットパネルディスプレイ:FPD)としては、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、PDP装置、電子放出装置等が考えられる。なお、電子放出装置は、いわゆるFED(Field Emission Display)やSED(Surface-conduction Electron-Emitter Display)装置を含む概念である。さらに、電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等を包含する装置が考えられる。
【0032】
本発明の電子機器は、上記した電気光学装置の製造方法により製造した電気光学装置または上記した電気光学装置に搭載したことを特徴とする。
【0033】
この場合、電子機器としては、いわゆるフラットパネルディスプレイを搭載した携帯電話、パーソナルコンピュータのほか、各種の電気製品がこれに該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るワイピング装置およびこれを備える液滴吐出装置について説明する。液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれるものであり、インクジェットヘッドである機能液滴吐出ヘッドを用いた印刷技術(インクジェット法)により、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0035】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、機台2と、機台2上の全域に広く載置され、R・G・B3個の機能液滴吐出ヘッド17を搭載した描画装置3と、機台2上で描画装置3に添設された吸引装置61およびワイピング装置62とから成るメンテナンス装置4とを備え、メンテナンス装置4により機能液滴吐出ヘッド17のメンテナンス処理(機能維持・回復)を行うと共に、描画装置3により基板W(ワーク)上に機能液を吐出させる描画動作を行うようにしている。また、液滴吐出装置1は、各構成部品へ駆動・制御用の圧縮エアーを供給するエアー供給装置(図示省略)や、パソコン等で構成され、液滴吐出装置1の各部を制御する制御装置5(図3参照)を、備えている。
【0036】
描画装置3は、X軸テーブル12およびX軸テーブル12に直交するY軸テーブル13から成るXY移動機構11と、Y軸テーブル13に移動自在に取り付けられたキャリッジ14と、キャリッジ14に垂設したヘッドユニット15とを有している。そして、ヘッドユニット15には、機能液滴吐出ヘッド17が搭載されている。一方、基板Wは、X軸テーブル12の端部に臨む一対の基板認識カメラ(図示省略)により、X軸テーブル12に位置決めされた状態で搭載されている。
【0037】
X軸テーブル12は、X軸方向の駆動系を構成するモータ駆動のX軸スライダ21を有し、これに吸着テーブル23および基板θテーブル24等から成るセットテーブル22を移動自在に搭載して、構成されている。同様に、Y軸テーブル13は、Y軸方向の駆動系を構成するモータ駆動のY軸スライダ31を有し、これに上記のキャリッジ14を介してヘッドユニット15を移動自在に搭載して、構成されている。X軸テーブル12は、機台2上に直接支持される一方、Y軸テーブル13は、機台2上に立設した左右の支柱32に支持されており、X軸テーブル12とメンテナンス装置4とを跨ぐように延在している。
【0038】
そして、Y軸テーブル13は、これに搭載したヘッドユニット15を、X軸テーブル12の直上部に位置する描画エリア91と、メンテナンス装置4の直上部に位置するメンテナンスエリア92との相互間で、適宜移動させる。すなわち、Y軸テーブル13は、X軸テーブル12に導入した基板Wに描画動作を行う場合には、ヘッドユニット15を描画エリア91に臨ませ、機能液滴吐出ヘッド17のメンテナンス処理を行う場合には、ヘッドユニット15をメンテナンスエリア92に臨ませる。
【0039】
ヘッドユニット15は、3個の機能液滴吐出ヘッド17と、これを位置決めして装着するヘッドプレート16と、から構成されている。3個の機能液滴吐出ヘッド17は、ヘッドプレート16を介してキャリッジ14に搭載されている。
図2に示すように、各機能液滴吐出ヘッド17は、インクジェット方式で機能液を吐出するものであって、機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する2連の接続針42と、接続針42を有する機能液導入部41と、機能液導入部41の側方に連なり、制御装置5に接続される2連のコネクタ56を備えるヘッド基板43と、機能液導入部41の下方(同図では上方)に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体44とを備えている。
ヘッド本体44は、ピエゾ素子等で構成されたポンプ部51と、2本のノズル列54を相互に平行に形成したノズル面53を有するノズルプレート52と、を更に備えている。各ノズル列54は、複数の吐出ノズル55が等ピッチで並べられて構成されている。そして、コネクタ56を介してポンプ部51に駆動波形を印加することにより、各吐出ノズル55から機能液が吐出される。
【0040】
このように構成された描画装置3は、基板Wを載置したセットテーブル22がX軸方向に移動するのに同期して、機能液滴吐出ヘッド17を駆動させて基板Wに機能液を吐出して主走査を行う。次にY軸方向にヘッドユニット15が移動しY軸方向の副走査を行う。その後、基板WをX軸方向に復動させ、同期して機能液滴吐出ヘッド17を駆動することで再度主走査を行う。以上の動作を繰り返し行うことで基板Wに所望の描画を行う。
【0041】
図1に示すように、メンテナンス装置4は、機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル55から機能液を吸引する吸引装置61と、機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53に付着した機能液等の汚れをワイピング処理により除去するワイピング装置62と、を備えている。吸引装置61とワイピング装置62とは、Y軸テーブル13によるヘッドユニット15の移動軌跡上に設けられており、Y軸テーブル13により、吸引装置61、ワイピング装置62の直上部に機能液滴吐出ヘッド17を臨ませることができるようになっている。ワイピング装置62は、吸引装置61と描画装置3との間に配設されており、ヘッドユニット15は、吸引装置61の吸引動作の後ワイピング装置62に臨み、ここでワイピング処理を行った後、描画装置3に導入される。
【0042】
吸引装置61は、機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53をキャッピングするヘッドキャップ71と、機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル55からヘッドキャップ71を介して機能液を吸引する吸引ポンプと、ヘッドキャップ71を昇降させるキャップ昇降機構と、を備えている。キャップ昇降機構によりヘッドキャップ71を上昇させノズル面53に当接させておいて、吸引ポンプにより機能液滴吐出ヘッド17から機能液を吸引することにより、吐出ノズル55をクリーニングする。
【0043】
次に、図3および図4を参照して第1実施形態に係るワイピング装置62について説明する。ワイピング装置62は、機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53をワイピング処理する3個のワイピングブレード81と、各ワイピングブレード81を突設したブレード保持ドラム101(回転ドラム)を有し、ブレード保持ドラム101を介してワイピングブレード81を周回運動させる周回機構84と、洗浄液を満し、ワイピングブレード81が浸漬される洗浄液槽82と、洗浄液槽82に配設され、ワイピングブレード81をブラッシング処理するブレードクリーナー83と、上記装置主要部を一体として昇降させるワイピング昇降機構85と、から構成されている。また、洗浄液槽82の側面には、図外の洗浄液供給手段に連なる補給液パイプ122が接続され、下面には、後述する廃液タンク134に連なるドレインパイプ132が接続されている。
【0044】
ワイピング昇降機構85は、ベースとなるベースプレート111と、ベースプレート111の中央に載置された昇降シリンダ112と、上部に洗浄液槽82、ブレードクリーナー83および周回機構84等からなる装置主要部を昇降自在に支持する昇降プレート113と、ベースプレート111の四隅に立設され、昇降プレート113の上下方向のスライドをガイドする4本(同図では2本のみ図示)の昇降ガイド114と、から構成されている。各昇降ガイド114の上端部には昇降プレート113の上昇端位置を規制する度当りブロック115が設けられており、昇降プレート113が上昇端位置に上昇した状態で、ワイピングブレード81が機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53に接触するようになっている。また、昇降プレート113には、4本の昇降ガイド114が挿通される4つのガイド孔およびドレインパイプ132が遊挿される挿通開口が形成されている。
【0045】
ワイピングブレード81は、ゴムや樹脂等の可撓性材料で成形され、ブレード保持ドラム101の外周面に着脱自在に装着され、かつ複数(本実施形態では3個)の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53を一度にワイピング処理できるように軸方向に十分なワイピング幅を有している(図4参照)。ノズル面53に接するワイピングブレード81の先端部は、鋭角となるように形成されており、かつ機能液滴吐出ヘッド17の移動方向に対して逆方向に屈曲している(図5(a)参照)。一方、ワイピングブレード81の下端は、断面蟻形の凸状部が軸方向に延在するように形成されている。
【0046】
また、図5(b)に示すようにワイピングブレード81の先端部を、機能液滴吐出ヘッド17の移動方向に対し屈曲させることなく、垂直に形成してもよい。また、図5(c)に示すようにワイピングブレード81の先端部を機能液滴吐出ヘッド17の移動方向に対し、二股に形成してもよい。これにより、連続的にノズル面53をワイピング処理することができる。そして、この場合には、先行する第1ブレード部を同図(a)のように屈曲させ、後行する第2ブレード部を同図(b)のように垂直に形成すること、が好ましい。すなわち、先行する第1ブレード部でノズル面53の汚れを掻き残した場合でも、第2ブレード部で確実に掻き取ることができる。なお、本実施形態のワイピングブレード81は、複数のノズル面53を一度にワイピング処理できるノズル幅を有するが、これを分割した複数の分割ブレードで構成してもよい。これにより、一部の分割ブレードが破損した場合でも該当する分割ブレードを交換することができる。
【0047】
周回機構84は、外周面に3個のワイピングブレード81が等間隔に装着したブレード保持ドラム101と、ブレード保持ドラム101を介してワイピングブレード81を周回運動させるモータ102(アクチュエータ)と、モータ102の出力軸に接続され、モータ102の出力をブレード保持ドラム101およびブレードクリーナー83にそれぞれ伝達する減速伝達部103(動力伝達機構)と、から構成されている。
【0048】
ブレード保持ドラム101は、ドラム本体とドラム本体が軸着されたドラム軸とから成り、ドラム軸で減速伝達部103に連結されている。ドラム本体の外周面には、周方向に等間隔かつ軸方向に延在するように3つの蟻溝が形成されている。この蟻溝にワイピングブレード81の凸状部が軸方向からスライド係合することで、各ワイピングブレード81がブレード保持ドラム101に着脱自在かつ抜け止め状態で装着されている。なお、本実施形態では、ワイピングブレード81と共にブレード保持ドラム101の一部も洗浄液槽82に浸漬されるためブレード保持ドラム101の外周面に汚れが付着しても、ワイピングブレード81と共に汚れを簡単に洗浄することができる。
【0049】
なお、図6に示すように、ドラム本体の代わりにバンド状のブレード保持バンド(ブレード保持部材)108とブレード保持バンド108を装着したドラム形状の回転体109で代用してもよい。この場合、ブレード保持バンド108と3個のワイピングブレード81とは一体に形成されており、一体として回転体109に装着(着脱自在)するようになっている。ワイピングブレード81が劣化した場合等において、対象となるワイピングブレード81をブレード保持バンド108と共に交換することができ、メンテナンスが容易である。
【0050】
減速伝達部103は、ギアボックス内に複数のギアから成る減速ギア列を有し、モータ102から出力された回転動力の回転方向および回転数を調整してブレード固定ドラム101およびブレードクリーナー83に伝達する。すなわち、モータ102の回転に同期して、ブレード保持ドラム101とブレードクリーナー83とが同時に回転するようになっている。もっとも、モータ102の正転および逆転で切替わるクラッチを内蔵し、モータ102の正転時にブレード保持ドラム101を回転させ、逆転時にブレードクリーナー83を回転させるようにしてもよい。なお、減速伝達部103は、ベルトを用いた巻掛伝導機構としてもよい。
【0051】
ブレードクリーナー83は、ドラム形状のクリーナー本体151と、クリーナー本体151の外周面に植設したブラシ体152と、クリーナー本体151が軸着されると共に、減速伝達部103に連結された駆動軸と、から構成されており、洗浄液で満たされた洗浄液槽82内において、ワイピングブレード81の先端部に接する位置に配置されている。ワイピングブレード81に接した状態でモータ102の駆動力を受けブレードクリーナー83が回転することで、ワピイングブレード81のブラッシング洗浄が行われる。また、ブレードクリーナー83が洗浄液槽82内に配置されることで、その目詰まりが防止され、常に清浄なブレードクリーナー83でワイピングブレード81をブラッシング洗浄することができる。なお、ブラシ体152の代わりに円筒状のスポンジ体を用いても良い。さらに、ブラッシング処理は、ワイピングブレード81を固定としブレードクリーナー83を可動(回転又は往復動)とする場合と、ブレードクリーナー83を固定としワイピングブレード81を周回機構84により可動とする場合とのいずれであってもよい。ワイピングブレード81を固定とする場合には、ブレード保持ドラム101に対応する円弧状ベースにブラシ体152を植設することが、好ましい。
【0052】
洗浄液槽82は、ステンレス等で形成された直方体形状の開放タンクであり、上端部にはブレード固定ドラム101が望む上端開口部が形成されている。なお、請求項に言うワイピング領域はワイピングブレード81が機能液滴吐出ヘッド17の直下に位置する領域であり、洗浄領域はワイピングブレード81が洗浄液槽82に浸漬される領域である。
洗浄液供給手段に連なる補給液パイプ122には、電磁弁が介設される一方、洗浄液槽82の上部には洗浄液の液位を検出する液面検出センサ123が設けられている。電磁弁124および液面検出センサ123は、制御装置5に接続されており、液面検出センサ123が所定の液位の下限を検出した場合には電磁弁124が開弁し、上限を検出した場合には閉弁する。これにより、蒸発等により洗浄液が目減りしても液位を一定に保つように洗浄液を補給することができる。
【0053】
洗浄液排出手段は、洗浄液槽82の直下においてベースプレート111上に配設した廃液タンク134と、洗浄液槽82と廃液タンク134とを接続するドレインパイプ132と、ドレインパイプ132に介設したドレインバルブ133とから構成されている。常時「閉」のドレインバルブ133を開弁することにより洗浄液の排出が可能となっている。
なお、本実施形態では採用してないが、フィルタを通して洗浄液を循環させる循環機構を備えても良い。この構成により、汚れた洗浄液をフィルタで濾過することができ一定の洗浄力を保つと共に、汚れの再付着を防止することができる。この構成により、洗浄液の交換回数も削減できランニングコストを減らすことが可能である。
また、ドレインバルブ133を電磁弁で構成すると共に制御装置5を接続し、かつ洗浄液槽82内部に制御装置5に接続された濃度計を設置し、所定の濃度を検出した場合に装置をOFFとしドレインバルブ133が自動的に開弁するようにしてもよい。なお、周回機構84の駆動軸等の貫通部分は適宜シールされていることは言うまでもない。
【0054】
以下、第1実施形態のワイピング動作について説明する。ワイピングブレード81の初期状態では、3個のうち2個のワイピングブレード81は洗浄液内に、残りの1個のワイピングブレード81は最上部にそれぞれ待機している。また、昇降シリンダ112は昇降プレート113を下降端位置(離間位置)で支持している。この状態から、制御装置5からワイプ指令が発令されると、モータ102が駆動して、ブレード保持ドラム101を120度回転させ、洗浄液内に待機している先行するワイピングブレード81を、ほぼ最上部にくる位置まで周回移動させる。上記動作と並行して、昇降シリンダ112が駆動し、昇降プレート113を介して、先行するワイピングブレード81の先端部を、ワイピング処理できる高さまで上昇させる。
【0055】
次に、Y軸テーブル13が駆動し、吸引装置61上に待機している機能液滴吐出ヘッド17を、ワイピングブレード81上を通過するように図示の矢印方向に移動させる。これにより機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53がワイピングブレード81に摺接することでワイピング処理が行われる。上記動作は、洗浄液がワイピングブレード81に付着したまま行われるため、ノズル面53に付着した汚れを掻き取るワイピング処理が良好になされる。ノズル面53の後端がワイピングブレード81を通過した機能液滴吐出ヘッド17は描画エリア91に向かって移動する一方、昇降シリンダ112は昇降プレート113を下降端位置まで下降させる。昇降シリンダ112の下降が開始されると、ブレード保持ドラム101が再度120度回転し、後行するワイピングブレード81が最上部に臨むと共に、処理後のワイピングブレード81が洗浄液内に入り、次のワイプ指令まで待機する。ワイピングブレード81が洗浄液中で待機することにより、ブレードクリーナー83でブラッシング洗浄処理した場合に汚れが落ちやすくなる。
【0056】
また、ブレード保持ドラム101の再回転と同時に、ブレードクリーナー83が回転を開始し、ここで、ブレードクリーナー83が移動中のワイピングブレード81に回転接触し、付着した汚れを掻き落すことでブラッシング洗浄処理が行われる。そして、各ワイピングブレード81が120度回転したところでブレード保持ドラム101およびブレードクリーナー83の回転を停止する。このように、3個のワイピングブレード81によりワイピング処理および洗浄処理が同時併行的に行われる。なお、本実施形態では、ワイピングブレード81が停止した状態でワイピング処理されるが、機能液滴吐出ヘッド17の移動に対してワイピングブレード81を相対的に周回運動させることでワイピング処理しても良い(この方式における好適な実施形態は後に記す)。
【0057】
次に、図7を参照して、第2実施形態に係るワイピング装置62について説明する。この実施形態では、第1実施形態のブレードクリーナー83に代えて、ワイピングブレード81に洗浄液を吹き付ける洗浄液吹付け装置89が設けられている。洗浄液吹付け装置89は、ワイピングブレード81に洗浄液を吹き付ける洗浄液ノズル141と、洗浄液ノズル141に洗浄液を送液する送液ポンプ143(送液手段)と、送液ポンプ143の吐出側と洗浄液ノズル141とを接続する送液パイプ142と、送液ポンプ143の吸引側と洗浄液槽82とを接続する吸引パイプ145と、吸引パイプ145に介設したフィルタ144と、から構成されている。
【0058】
洗浄液ノズル141は、洗浄液槽82内において、ワイピングブレード81に対峙するように配設され、洗浄液槽82外に設けた送液ポンプ143から延びる送液パイプ142が洗浄液槽82を貫通して洗浄液ノズル141に接続されている。洗浄液ノズル141は、直下位置に移動中のワイピングブレード81に洗浄液を吹き付けるようになっており、ワイピングブレード81の吹き付け洗浄と洗浄液槽82内の洗浄液の攪拌とを行う。このように洗浄液中で洗浄液を吹き付けるので、洗浄液が飛び散ることが無い。また、攪拌された洗浄液はフィルタ144で濾過されるので一定の洗浄力を保つと共に、汚れの再付着を防止することができる。これにより、洗浄液の交換回数も削減できランニングコストを減らすことが可能である。この場合、更にブレードクリーナー83を備えて洗浄力を高めても良い。また、洗浄液ノズル141は、スリット状のものであってもよいし、アレイ状のものであってもよい。なお、図8に示すように洗浄液ノズル141の吹き付け位置は、洗浄液槽82内に限らず洗浄液槽82外でも良い。かかる場合には、洗浄液槽82の上開口部を広くし洗浄液ノズル141をいくぶん下向きに傾け、洗浄液を吹き付けることが好ましい。さらに送液ポンプ143の代わりにイジェクターを採用しても良い。
【0059】
このように構成されたワイピング装置62は、ワイピング処理については第1実施形態と同様であるが、洗浄処理では、ワイピング処理を終えて、ブレード保持ドラム101が回転を開始すると同時に送液ポンプ143が駆動し、移動中のワイピングブレード81に洗浄液ノズル141から洗浄液を吹き付ける。洗浄液ノズル141からワイピングブレード81に洗浄液が吹き付けられると、この吹き付けの水勢によりワイピングブレード81の汚れが吹きはらわれ洗浄が行われる。
【0060】
次に、図9に示す第3実施形態に係るワイピング装置62について説明する。この実施形態では、周回機構84が、外周面に3個のワイピングブレード81を等間隔に装着されたブレード保持ベルト105(ブレード保持部材)と、ブレード保持ベルト105が掛け渡された上側の従動動プーリ106および下側の駆動プーリ107と、両プーリ106、107およびブレード保持ベルト105を介してワイピングブレード81を周回運動させるモータ102と、モータ102の駆動力を駆動プーリ107およびブレードクリーナー83に伝達する減速伝達部103(動力伝達機構)と、から構成されている。
【0061】
従動プーリ106は、機能液滴吐出ヘッド17の真下に位置して、昇降プレート113に立設した支柱(図示せず)に回転自在に軸支される一方、駆動プーリ107は、洗浄液槽82内に配設されており、両プーリ106、107は、洗浄液槽82の設置スペースを考慮し鉛直方向に十分に離間して配設されている。自由回転する従動プーリ106と共に、駆動プーリ107は、減速伝達部103から伝達された回転動力によりワイピングブレード81を周回運動させる。この場合、ブレードクリーナー83の代わりに洗浄液吹付け装置89を備えても良いし、ブレードクリーナー83および洗浄液吹付け装置89を共に備えても良い。また、ワイピングブレード81とブレード保持ベルト105とを一体に成形してもよい。
【0062】
このように構成されたワイピング装置62では、ワイピングブレード81が1個は洗浄液内に、1個は最上部に、残りの1個は両プーリ106、107の中間部にそれぞれ待機している。この状態からワイプ指令が発令されるとブレード保持ベルト105が1/3周ずつ送り出され第1実施形態と同様にワイピング処理および洗浄処理が行われる。
【0063】
次に、図10に示す第4実施形態に係るワイピング装置62について説明する。この実施形態では、周回機構84が、外周面に4個のワイピングブレード81を等間隔に装着されたブレード保持ベルト105(ブレード保持部材)と、ブレード保持ベルト105が掛け渡された上側の一対の従動プーリ106および下側の駆動プーリ107と、各プーリ106、107およびブレード保持ベルト105を介してワイピングブレード81を周回運動させるモータ102と、モータ102の駆動力を駆動プーリ107およびブレードクリーナー83に伝達する減速伝達部103(動力伝達機構)と、から構成されている。
【0064】
一対の従動プーリ106は、機能液滴吐出ヘッド17の真下に位置して、昇降プレート113に立設した支柱(図示せず)に回転自在に軸支される一方、駆動プーリ107は、洗浄液槽82内に配設されており、一対の従動プーリ106は、水平方向に離間して配設され、従動プーリ106と駆動プーリ107とは鉛直方向に十分に離間して配設されている。自由回転する従動プーリ106と共に、駆動プーリ107は、減速伝達部103から伝達された回転動力により洗浄液に浸漬しているワイピングブレード81を周回運動させる。各プーリ106、107の離間寸法は洗浄液槽82の設置スペースを考慮して設定される。この場合、ブレードクリーナー83の代わりに洗浄液吹付け装置89を備えても良いし、ブレードクリーナー83および洗浄液吹付け装置89を共に備えても良い。また、ワイピングブレード81とブレード保持ベルト105とを一体に成形してもよい。
【0065】
このように構成されたワイピング装置62は、ワイピングブレード81の初期位置は、2個は洗浄液内に、残りの2個は最上部にそれぞれ待機している。この状態からワイプ指令が発令されるとブレード保持ベルト105を1/2周ごとに送り出して、2個のワイピングブレード81で第1実施形態と同様にワイピング処理を連続的に行うと共に残りの2個のワイピングブレード81で洗浄処理が同時併行的に行われる。
【0066】
なお、機能液滴吐出ヘッド17を停止させた状態でワイピングブレード81を連続的に周回運動させてもよい。この場合には、昇降プレート113が上昇端位置に固定され、ワイピングブレード81の先端部が、ノズル面53をワイピング処理できる高さに達した状態で、ワイピング処理を連続的に行う。そして、機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53の長さに対応して両従動プーリ106,106間の距離が決定される。
【0067】
以上説明したとおり、このワイピング装置62によれば、機能液滴吐出ヘッド17のノズル面53をワイピング処理すると共に、ワイピング処理後のワイピングブレード81を洗浄処理することができ、高いワイピング性能を維持したままワイピング処理を行うことができ、かつワイピングブレード81を繰り返し使用できるため消耗品を削減することができる。また、簡易な構成であるため装置の小型化を実現することが可能である。
【0068】
次に、本実施形態の液滴吐出装置1を用いて製造される電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)として、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)、さらにこれら表示装置に形成されてなるアクティブマトリクス基板等を例に、これらの構造およびその製造方法について説明する。なお、アクティブマトリクス基板とは、薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタに電気的に接続するソース線、データ線が形成された基板をいう。
【0069】
まず、液晶表示装置や有機EL装置等に組み込まれるカラーフィルタの製造方法について説明する。図11は、カラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図12は、製造工程順に示した本実施形態のカラーフィルタ500(フィルタ基体500A)の模式断面図である。
まず、ブラックマトリクス形成工程(S101)では、図12(a)に示すように、基板(W)501上にブラックマトリクス502を形成する。ブラックマトリクス502は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等により形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス502を形成するには、スパッタ法や蒸着法等を用いることができる。また、樹脂薄膜からなるブラックマトリクス502を形成する場合には、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。
【0070】
続いて、バンク形成工程(S102)において、ブラックマトリクス502上に重畳する状態でバンク503を形成する。即ち、まず図12(b)に示すように、基板501およびブラックマトリクス502を覆うようにネガ型の透明な感光性樹脂からなるレジスト層504を形成する。そして、その上面をマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム505で被覆した状態で露光処理を行う。
さらに、図12(c)に示すように、レジスト層504の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層504をパターニングして、バンク503を形成する。なお、樹脂ブラックによりブラックマトリクスを形成する場合は、ブラックマトリクスとバンクとを兼用することが可能となる。
このバンク503とその下のブラックマトリクス502は、各画素領域507aを区画する区画壁部507bとなり、後の着色層形成工程において機能液滴吐出ヘッド17により着色層(成膜部)508R、508G、508Bを形成する際に機能液滴の着弾領域を規定する。
【0071】
以上のブラックマトリクス形成工程およびバンク形成工程を経ることにより、上記フィルタ基体500Aが得られる。
なお、本実施形態においては、バンク503の材料として、塗膜表面が疎液(疎水)性となる樹脂材料を用いている。そして、基板(ガラス基板)501の表面が親液(親水)性であるので、後述する着色層形成工程においてバンク503(区画壁部507b)に囲まれた各画素領域507a内への液滴の着弾位置のばらつきを自動補正できる。
【0072】
次に、着色層形成工程(S103)では、図12(d)に示すように、機能液滴吐出ヘッド17によって機能液滴を吐出して区画壁部507bで囲まれた各画素領域507a内に着弾させる。この場合、機能液滴吐出ヘッド17を用いて、R・G・Bの3色の機能液(フィルタ材料)を導入して、機能液滴の吐出を行う。なお、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0073】
その後、乾燥処理(加熱等の処理)を経て機能液を定着させ、3色の着色層508R、508G、508Bを形成する。着色層508R、508G、508Bを形成したならば、保護膜形成工程(S104)に移り、図12(e)に示すように、基板501、区画壁部507b、および着色層508R、508G、508Bの上面を覆うように保護膜509を形成する。
即ち、基板501の着色層508R、508G、508Bが形成されている面全体に保護膜用塗布液が吐出された後、乾燥処理を経て保護膜509が形成される。
そして、保護膜509を形成した後、カラーフィルタ500は、次工程の透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)などの膜付け工程に移行する。
【0074】
図12は、上記のカラーフィルタ500を用いた液晶表示装置の一例としてのパッシブマトリックス型液晶装置(液晶装置)の概略構成を示す要部断面図である。この液晶装置520に、液晶駆動用IC、バックライト、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての透過型液晶表示装置が得られる。なお、カラーフィルタ500は図12に示したものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0075】
この液晶装置520は、カラーフィルタ500、ガラス基板等からなる対向基板521、および、これらの間に挟持されたSTN(Super Twisted Nematic)液晶組成物からなる液晶層522により概略構成されており、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置している。
なお、図示していないが、対向基板521およびカラーフィルタ500の外面(液晶層522側とは反対側の面)には偏光板がそれぞれ配設され、また対向基板521側に位置する偏光板の外側には、バックライトが配設されている。
【0076】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層側)には、図12において左右方向に長尺な短冊状の第1電極523が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極523のカラーフィルタ500側とは反対側の面を覆うように第1配向膜524が形成されている。
一方、対向基板521におけるカラーフィルタ500と対向する面には、カラーフィルタ500の第1電極523と直交する方向に長尺な短冊状の第2電極526が所定の間隔で複数形成され、この第2電極526の液晶層522側の面を覆うように第2配向膜527が形成されている。これらの第1電極523および第2電極526は、ITOなどの透明導電材料により形成されている。
【0077】
液晶層522内に設けられたスペーサ528は、液晶層522の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。また、シール材529は液晶層522内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するための部材である。なお、第1電極523の一端部は引き回し配線523aとしてシール材529の外側まで延在している。
そして、第1電極523と第2電極526とが交差する部分が画素であり、この画素となる部分に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0078】
通常の製造工程では、カラーフィルタ500に、第1電極523のパターニングおよび第1配向膜524の塗布を行ってカラーフィルタ500側の部分を作成すると共に、これとは別に対向基板521に、第2電極526のパターニングおよび第2配向膜527の塗布を行って対向基板521側の部分を作成する。その後、対向基板521側の部分にスペーサ528およびシール材529を作り込み、この状態でカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる。次いで、シール材529の注入口から液晶層522を構成する液晶を注入し、注入口を閉止する。その後、両偏光板およびバックライトを積層する。
【0079】
実施形態の液滴吐出装置1は、例えば上記のセルギャップを構成するスペーサ材料(機能液)を塗布すると共に、対向基板521側の部分にカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる前に、シール材529で囲んだ領域に液晶(機能液)を均一に塗布することが可能である。また、上記のシール材529の印刷を、機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。さらに、第1・第2両配向膜524,527の塗布を機能液滴吐出ヘッド17で行うことも可能である。
【0080】
図13は、本実施形態において製造したカラーフィルタ500を用いた液晶装置の第2の例の概略構成を示す要部断面図である。
この液晶装置530が上記液晶装置520と大きく異なる点は、カラーフィルタ500を図中下側(観測者側とは反対側)に配置した点である。
この液晶装置530は、カラーフィルタ500とガラス基板等からなる対向基板531との間にSTN液晶からなる液晶層532が挟持されて概略構成されている。なお、図示していないが、対向基板531およびカラーフィルタ500の外面には偏光板等がそれぞれ配設されている。
【0081】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層532側)には、図中奥行き方向に長尺な短冊状の第1電極533が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極533の液晶層532側の面を覆うように第1配向膜534が形成されている。
対向基板531のカラーフィルタ500と対向する面上には、カラーフィルタ500側の第1電極533と直交する方向に延在する複数の短冊状の第2電極536が所定の間隔で形成され、この第2電極536の液晶層532側の面を覆うように第2配向膜537が形成されている。
【0082】
液晶層532には、この液晶層532の厚さを一定に保持するためのスペーサ538と、液晶層532内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するためのシール材539が設けられている。
そして、上記した液晶装置520と同様に、第1電極533と第2電極536との交差する部分が画素であり、この画素となる部位に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0083】
図15は、本発明を適用したカラーフィルタ500を用いて液晶装置を構成した第3の例を示したもので、透過型のTFT(Thin Film Transistor)型液晶装置の概略構成を示す分解斜視図である。
この液晶装置550は、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置したものである。
【0084】
この液晶装置550は、カラーフィルタ500と、これに対向するように配置された対向基板551と、これらの間に挟持された図示しない液晶層と、カラーフィルタ500の上面側(観測者側)に配置された偏光板555と、対向基板551の下面側に配設された偏光板(図示せず)とにより概略構成されている。
カラーフィルタ500の保護膜509の表面(対向基板551側の面)には液晶駆動用の電極556が形成されている。この電極556は、ITO等の透明導電材料からなり、後述の画素電極560が形成される領域全体を覆う全面電極となっている。また、この電極556の画素電極560とは反対側の面を覆った状態で配向膜557が設けられている。
【0085】
対向基板551のカラーフィルタ500と対向する面には絶縁層558が形成されており、この絶縁層558上には、走査線561および信号線562が互いに直交する状態で形成されている。そして、これらの走査線561と信号線562とに囲まれた領域内には画素電極560が形成されている。なお、実際の液晶装置では、画素電極560上に配向膜が設けられるが、図示を省略している。
【0086】
また、画素電極560の切欠部と走査線561と信号線562とに囲まれた部分には、ソース電極、ドレイン電極、半導体、およびゲート電極とを具備する薄膜トランジスタ563が組み込まれて構成されている。そして、走査線561と信号線562に対する信号の印加によって薄膜トランジスタ563をオン・オフして画素電極560への通電制御を行うことができるように構成されている。
【0087】
なお、上記の各例の液晶装置520,530,550は、透過型の構成としたが、反射層あるいは半透過反射層を設けて、反射型の液晶装置あるいは半透過反射型の液晶装置とすることもできる。
【0088】
次に、図16は、有機EL装置の表示領域(以下、単に表示装置600と称する)の要部断面図である。
【0089】
この表示装置600は、基板(W)601上に、回路素子部602、発光素子部603および陰極604が積層された状態で概略構成されている。
この表示装置600においては、発光素子部603から基板601側に発した光が、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されると共に、発光素子部603から基板601の反対側に発した光が陰極604により反射された後、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されるようになっている。
【0090】
回路素子部602と基板601との間にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上(発光素子部603側)に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。この半導体膜607の左右の領域には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度陽イオン打ち込みによりそれぞれ形成されている。そして陽イオンが打ち込まれない中央部がチャネル領域607cとなっている。
【0091】
また、回路素子部602には、下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、このゲート絶縁膜608上の半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置には、例えばAl、Mo、Ta、Ti、W等から構成されるゲート電極609が形成されている。このゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には、透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。また、第1、第2層間絶縁膜611a、611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ連通するコンタクトホール612a,612bが形成されている。
【0092】
そして、第2層間絶縁膜611b上には、ITO等からなる透明な画素電極613が所定の形状にパターニングされて形成され、この画素電極613は、コンタクトホール612aを通じてソース領域607aに接続されている。
また、第1層間絶縁膜611a上には電源線614が配設されており、この電源線614は、コンタクトホール612bを通じてドレイン領域607bに接続されている。
【0093】
このように、回路素子部602には、各画素電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615がそれぞれ形成されている。
【0094】
上記発光素子部603は、複数の画素電極613上の各々に積層された機能層617と、各画素電極613および機能層617の間に備えられて各機能層617を区画するバンク部618とにより概略構成されている。
これら画素電極613、機能層617、および、機能層617上に配設された陰極604によって発光素子が構成されている。なお、画素電極613は、平面視略矩形状にパターニングされて形成されており、各画素電極613の間にバンク部618が形成されている。
【0095】
バンク部618は、例えばSiO、SiO2、TiO2等の無機材料により形成される無機物バンク層618a(第1バンク層)と、この無機物バンク層618a上に積層され、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストにより形成される断面台形状の有機物バンク層618b(第2バンク層)とにより構成されている。このバンク部618の一部は、画素電極613の周縁部上に乗上げた状態で形成されている。
そして、各バンク部618の間には、画素電極613に対して上方に向けて次第に拡開した開口部619が形成されている。
【0096】
上記機能層617は、開口部619内において画素電極613上に積層状態で形成された正孔注入/輸送層617aと、この正孔注入/輸送層617a上に形成された発光層617bとにより構成されている。なお、この発光層617bに隣接してその他の機能を有する他の機能層をさらに形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成することも可能である。
正孔注入/輸送層617aは、画素電極613側から正孔を輸送して発光層617bに注入する機能を有する。この正孔注入/輸送層617aは、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(機能液)を吐出することで形成される。正孔注入/輸送層形成材料としては、公知の材料を用いる。
【0097】
発光層617bは、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかに発光するもので、発光層形成材料(発光材料)を含む第2組成物(機能液)を吐出することで形成される。第2組成物の溶媒(非極性溶媒)としては、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な公知の材料を用いることが好ましく、このような非極性溶媒を発光層617bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層617aを再溶解させることなく発光層617bを形成することができる。
【0098】
そして、発光層617bでは、正孔注入/輸送層617aから注入された正孔と、陰極604から注入される電子が発光層で再結合して発光するように構成されている。
【0099】
陰極604は、発光素子部603の全面を覆う状態で形成されており、画素電極613と対になって機能層617に電流を流す役割を果たす。なお、この陰極604の上部には図示しない封止部材が配置される。
【0100】
次に、上記の表示装置600の製造工程を図17〜図25を参照して説明する。
この表示装置600は、図17に示すように、バンク部形成工程(S111)、表面処理工程(S112)、正孔注入/輸送層形成工程(S113)、発光層形成工程(S114)、および対向電極形成工程(S115)を経て製造される。なお、製造工程は例示するものに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0101】
まず、バンク部形成工程(S111)では、図18に示すように、第2層間絶縁膜611b上に無機物バンク層618aを形成する。この無機物バンク層618aは、形成位置に無機物膜を形成した後、この無機物膜をフォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。このとき、無機物バンク層618aの一部は画素電極613の周縁部と重なるように形成される。
無機物バンク層618aを形成したならば、図19に示すように、無機物バンク層618a上に有機物バンク層618bを形成する。この有機物バンク層618bも無機物バンク層618aと同様にフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。
このようにしてバンク部618が形成される。また、これに伴い、各バンク部618間には、画素電極613に対して上方に開口した開口部619が形成される。この開口部619は、画素領域を規定する。
【0102】
表面処理工程(S112)では、親液化処理および撥液化処理が行われる。親液化処理を施す領域は、無機物バンク層618aの第1積層部618aaおよび画素電極613の電極面613aであり、これらの領域は、例えば酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理される。このプラズマ処理は、画素電極613であるITOの洗浄等も兼ねている。
また、撥液化処理は、有機物バンク層618bの壁面618sおよび有機物バンク層618bの上面618tに施され、例えば四フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)される。
この表面処理工程を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド17を用いて機能層617を形成する際に、機能液滴を画素領域に、より確実に着弾させることができ、また、画素領域に着弾した機能液滴が開口部619から溢れ出るのを防止することが可能となる。
【0103】
そして、以上の工程を経ることにより、表示装置基体600Aが得られる。この表示装置基体600Aは、図2に示した液滴吐出装置1のセットテーブル22に載置され、以下の正孔注入/輸送層形成工程(S113)および発光層形成工程(S114)が行われる。
【0104】
図20に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(S113)では、機能液滴吐出ヘッド17から正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を画素領域である各開口部619内に吐出する。その後、図21に示すように、乾燥処理および熱処理を行い、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、画素電極(電極面613a)613上に正孔注入/輸送層617aを形成する。
【0105】
次に発光層形成工程(S114)について説明する。この発光層形成工程では、上述したように、正孔注入/輸送層617aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で、正孔注入/輸送層617aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617a上に吐出しても、正孔注入/輸送層617aと発光層617bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層617bを均一に塗布できない虞がある。
そこで、非極性溶媒並びに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層617aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面処理(表面改質処理)を行うことが好ましい。この表面処理は、発光層形成の際に用いる第2組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質材を、正孔注入/輸送層617a上に塗布し、これを乾燥させることにより行う。
このような処理を施すことで、正孔注入/輸送層617aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617aに均一に塗布することができる。
【0106】
そして次に、図22に示すように、各色のうちのいずれか(図22の例では青色(B))に対応する発光層形成材料を含有する第2組成物を機能液滴として画素領域(開口部619)内に所定量打ち込む。画素領域内に打ち込まれた第2組成物は、正孔注入/輸送層617a上に広がって開口部619内に満たされる。なお、万一、第2組成物が画素領域から外れてバンク部618の上面618t上に着弾した場合でも、この上面618tは、上述したように撥液処理が施されているので、第2組成物が開口部619内に転がり込み易くなっている。
【0107】
その後、乾燥工程等を行うことにより、吐出後の第2組成物を乾燥処理し、第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、図23に示すように、正孔注入/輸送層617a上に発光層617bが形成される。この図の場合、青色(B)に対応する発光層617bが形成されている。
【0108】
同様に、機能液滴吐出ヘッド17を用い、図24に示すように、上記した青色(B)に対応する発光層617bの場合と同様の工程を順次行い、他の色(赤色(R)および緑色(G))に対応する発光層617bを形成する。なお、発光層617bの形成順序は、例示した順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決めることも可能である。また、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0109】
以上のようにして、画素電極613上に機能層617、即ち、正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが形成される。そして、対向電極形成工程(S115)に移行する。
【0110】
対向電極形成工程(S115)では、図25に示すように、発光層617bおよび有機物バンク層618bの全面に陰極604(対向電極)を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等によって形成する。この陰極604は、本実施形態においては、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。
この陰極604の上部には、電極としてのAl膜、Ag膜や、その酸化防止のためのSiO2、SiN等の保護層が適宜設けられる。
【0111】
このようにして陰極604を形成した後、この陰極604の上部を封止部材により封止する封止処理や配線処理等のその他処理等を施すことにより、表示装置600が得られる。
【0112】
次に、図26は、プラズマ型表示装置(PDP装置:以下、単に表示装置700と称する)の要部分解斜視図である。なお、同図では表示装置700を、その一部を切り欠いた状態で示してある。
この表示装置700は、互いに対向して配置された第1基板701、第2基板702、およびこれらの間に形成される放電表示部703を含んで概略構成される。放電表示部703は、複数の放電室705により構成されている。これらの複数の放電室705のうち、赤色放電室705R、緑色放電室705G、青色放電室705Bの3つの放電室705が組になって1つの画素を構成するように配置されている。
【0113】
第1基板701の上面には所定の間隔で縞状にアドレス電極706が形成され、このアドレス電極706と第1基板701の上面とを覆うように誘電体層707が形成されている。誘電体層707上には、各アドレス電極706の間に位置し、且つ各アドレス電極706に沿うように隔壁708が立設されている。この隔壁708は、図示するようにアドレス電極706の幅方向両側に延在するものと、アドレス電極706と直交する方向に延設された図示しないものを含む。
そして、この隔壁708によって仕切られた領域が放電室705となっている。
【0114】
放電室705内には蛍光体709が配置されている。蛍光体709は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、赤色放電室705Rの底部には赤色蛍光体709Rが、緑色放電室705Gの底部には緑色蛍光体709Gが、青色放電室705Bの底部には青色蛍光体709Bが各々配置されている。
【0115】
第2基板702の図中下側の面には、上記アドレス電極706と直交する方向に複数の表示電極711が所定の間隔で縞状に形成されている。そして、これらを覆うように誘電体層712、およびMgOなどからなる保護膜713が形成されている。
第1基板701と第2基板702とは、アドレス電極706と表示電極711が互いに直交する状態で対向させて貼り合わされている。なお、上記アドレス電極706と表示電極711は図示しない交流電源に接続されている。
そして、各電極706,711に通電することにより、放電表示部703において蛍光体709が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0116】
本実施形態においては、上記アドレス電極706、表示電極711、および蛍光体709を、図2に示した液滴吐出装置1を用いて形成することができる。以下、第1基板701におけるアドレス電極706の形成工程を例示する。
この場合、第1基板701を液滴吐出装置1のセットテーブル22に載置された状態で以下の工程が行われる。
まず、機能液滴吐出ヘッド17により、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴としてアドレス電極形成領域に着弾させる。この液体材料は、導電膜配線形成用材料として、金属等の導電性微粒子を分散媒に分散したものである。この導電性微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、またはニッケル等を含有する金属微粒子や、導電性ポリマー等が用いられる。
【0117】
補充対象となるすべてのアドレス電極形成領域について液体材料の補充が終了したならば、吐出後の液体材料を乾燥処理し、液体材料に含まれる分散媒を蒸発させることによりアドレス電極706が形成される。
【0118】
ところで、上記においてはアドレス電極706の形成を例示したが、上記表示電極711および蛍光体709についても上記各工程を経ることにより形成することができる。
表示電極711の形成の場合、アドレス電極706の場合と同様に、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴として表示電極形成領域に着弾させる。
また、蛍光体709の形成の場合には、各色(R,G,B)に対応する蛍光材料を含んだ液体材料(機能液)を機能液滴吐出ヘッド17から液滴として吐出し、対応する色の放電室705内に着弾させる。
【0119】
次に、図27は、電子放出装置(FED装置あるいはSED装置ともいう:以下、単に表示装置800と称する)の要部断面図である。なお、同図では表示装置800を、その一部を断面として示してある。
この表示装置800は、互いに対向して配置された第1基板801、第2基板802、およびこれらの間に形成される電界放出表示部803を含んで概略構成される。電界放出表示部803は、マトリクス状に配置した複数の電子放出部805により構成されている。
【0120】
第1基板801の上面には、カソード電極806を構成する第1素子電極806aおよび第2素子電極806bが相互に直交するように形成されている。また、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bで仕切られた部分には、ギャップ808を形成した導電性膜807が形成されている。すなわち、第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807により複数の電子放出部805が構成されている。導電性膜807は、例えば酸化パラジウム(PdO)等で構成され、またギャップ808は、導電性膜807を成膜した後、フォーミング等で形成される。
【0121】
第2基板802の下面には、カソード電極806に対峙するアノード電極809が形成されている。アノード電極809の下面には、格子状のバンク部811が形成され、このバンク部811で囲まれた下向きの各開口部812に、電子放出部805に対応するように蛍光体813が配置されている。蛍光体813は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、各開口部812には、赤色蛍光体813R、緑色蛍光体813Gおよび青色蛍光体813Bが、上記した所定のパターンで配置されている。
【0122】
そして、このように構成した第1基板801と第2基板802とは、微小な間隙を存して貼り合わされている。この表示装置800では、導電性膜(ギャップ808)807を介して、陰極である第1素子電極806aまたは第2素子電極806bから飛び出す電子を、陽極であるアノード電極809に形成した蛍光体813に当てて励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0123】
この場合も、他の実施形態と同様に、第1素子電極806a、第2素子電極806b、導電性膜807およびアノード電極809を、液滴吐出装置1を用いて形成することができると共に、各色の蛍光体813R,813G,813Bを、液滴吐出装置1を用いて形成することができる。
【0124】
第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807は、図28(a)に示す平面形状を有しており、これらを成膜する場合には、図28(b)に示すように、予め第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807を作り込む部分を残して、バンク部BBを形成(フォトリソグラフィ法)する。次に、バンク部BBにより構成された溝部分に、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bを形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)し、その溶剤を乾燥させて成膜を行った後、導電性膜807を形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)する。そして、導電性膜807を成膜後、バンク部BBを取り除き(アッシング剥離処理)、上記のフォーミング処理に移行する。なお、上記の有機EL装置の場合と同様に、第1基板801および第2基板802に対する親液化処理や、バンク部811,BBに対する撥液化処理を行うことが、好ましい。
【0125】
また、他の電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等の装置が考えられる。上記した液滴吐出装置1を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、各種の電気光学装置を効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】液滴吐出装置の平面模式図である。
【図2】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るワイピング装置の正面模式図である。
【図4】第1実施形態に係るワイピング装置の側面模式図である。
【図5】(a)〜(c)は、ワイピングブレードの断面図である。
【図6】回転体にブレード固定バンドを装着した正面図である。
【図7】第2実施形態に係るワイピング装置の正面模式図である。
【図8】洗浄液吹付け装置を外部に設けた第2実施形態に係るワイピング装置の正面模式図である。
【図9】第3実施形態に係るワイピング装置の正面模式図である。
【図10】第4実施形態に係るワイピング装置の正面模式図である。
【図11】カラーフィルタ製造工程を説明するフローチャートである。
【図12】(a)〜(e)は、製造工程順に示したカラーフィルタの模式断面図である。
【図13】本発明を適用したカラーフィルタを用いた液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図14】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第2の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図15】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第3の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図16】有機EL装置である表示装置の要部断面図である。
【図17】有機EL装置である表示装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図18】無機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図19】有機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図20】正孔注入/輸送層を形成する過程を説明する工程図である。
【図21】正孔注入/輸送層が形成された状態を説明する工程図である。
【図22】青色の発光層を形成する過程を説明する工程図である。
【図23】青色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図24】各色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図25】陰極の形成を説明する工程図である。
【図26】プラズマ型表示装置(PDP装置)である表示装置の要部分解斜視図である。
【図27】電子放出装置(FED装置)である表示装置の要部断面図である。
【図28】表示装置の電子放出部廻りの平面図(a)およびその形成方法を示す平面図(b)である。
【符号の説明】
【0127】
1…液滴吐出装置 17…機能液滴吐出ヘッド 53…ノズル面 62…ワイピング装置 81…ワイピングブレード 82…洗浄液槽 83…ブレードクリーナー 84…周回機構 101…ブレード固定ドラム(回転ドラム) 102…モータ(アクチュエータ) 103…減速伝達部(動力伝達機構) 105…ブレード保持ベルト(ブレード保持部材) 106…上段プーリ 107…下段プーリ 108…ブレード保持バンド(ブレード保持部材) 109…回転体 141…洗浄液ノズル 143…送液ポンプ 508…着色層 W(ワーク)…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液滴吐出ヘッドのノズル面をワイピング処理するワイピングブレードと、
前記ワイピングブレードを洗浄処理する洗浄手段と、
前記ワイピングブレードを、前記ワイピング処理のためのワイピング領域と前記洗浄処理のための洗浄領域との間で、周回運動させる周回機構と、を備えたことを特徴とするワイピング装置。
【請求項2】
前記周回機構は、
外周面に前記ワイピングブレードが設けられ、前記ワイピングブレードを周回運動させる回転ドラムと、
前記回転ドラムの駆動源となるアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動力を前記回転ドラムに伝達する動力伝達機構と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のワイピング装置。
【請求項3】
前記ワイピングブレードは、前記回転ドラムの外周面に着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項2に記載のワイピング装置。
【請求項4】
前記周回機構は、
外周面に前記ワイピングブレードが設けられたバンド状のブレード保持部材と、
外周面に前記ブレード保持部材が装着され、前記ブレード保持部材を介して前記ワイピングブレードを周回運動させる回転体と、
前記回転体の駆動源となるアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動力を前記回転体に伝達する動力伝達機構と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のワイピング装置。
【請求項5】
前記周回機構は、
外周面に前記ワイピングブレードが設けられたベルト状のブレード保持部材と、
前記ブレード保持部材が掛け渡され、前記ブレード保持部材を介して前記ワイピングブレードを周回運動させる一対のプーリと、
前記プーリの駆動源となるアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動力を前記一対のプーリのいずれか一方に伝達する動力伝達機構と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のワイピング装置。
【請求項6】
前記ワイピングブレードと前記ブレード保持部材とは、一体に成形されていることを特徴とする請求項4または5に記載のワイピング装置。
【請求項7】
前記洗浄手段は、洗浄液を満たすと共に、前記洗浄領域に移動した前記ワイピングブレードが前記洗浄液に浸漬される洗浄液槽で、構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のワイピング装置。
【請求項8】
前記洗浄液に浸漬された前記ワイピングブレードに接触し、前記ワイピングブレードを相対的にブラッシング処理するブレードクリーナーを、更に備えたことを特徴とする請求項7に記載のワイピング装置。
【請求項9】
前記洗浄手段は、
前記ワイピングブレードに洗浄液を吹き付ける洗浄液ノズルと、
前記洗浄液槽を供給源として前記洗浄液ノズルに洗浄液を送液する送液手段と、を有していることを特徴とする請求項7または8に記載のワイピング装置。
【請求項10】
前記ワイピング処理は、前記機能液吐出ヘッドに対し前記ワイピングブレードを相対的に移動させることにより行われ、
少なくとも前記ワイピングブレードの先端部は、前記移動方向に傾いていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のワイピング装置。
【請求項11】
前記ワイピング処理は、前記機能液吐出ヘッドに対し前記ワイピングブレードを相対的に移動させることにより行われ、
少なくとも前記ワイピングブレードの先端部は、複数に分岐して形成され、前記移動方向に対して順に並んでいることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のワイピング装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載のワイピング装置と、
ワークに対し、前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら機能液滴を吐出して描画を行う描画装置と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワーク上に機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の液滴吐出装置を用い、前記ワーク上に機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項15】
請求項13に記載の電気光学装置の製造方法により製造した電気光学装置または請求項14に記載の電気光学装置を、搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−163751(P2007−163751A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358894(P2005−358894)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】